IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7581383位置特定のための衛星組合せを選択する方法
<>
  • 特許-位置特定のための衛星組合せを選択する方法 図1
  • 特許-位置特定のための衛星組合せを選択する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】位置特定のための衛星組合せを選択する方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/28 20100101AFI20241105BHJP
【FI】
G01S19/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022574169
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021064626
(87)【国際公開番号】W WO2021245058
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102020206975.1
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュトローベル
(72)【発明者】
【氏名】モハンマド トゥリアン
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281553(JP,A)
【文献】特開2012-108015(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046914(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0065729(KR,A)
【文献】特開2009-121971(JP,A)
【文献】Yun-En Lee et al.,"Combined Algorithm for Satellite Selection for Open-sky and Constrained Environments",Proceedings of the 30th International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of Navigation (ION GNSS+ 2017) ,日本,The Institute of Navigation,2017年09月,pp. 3680-3693,DOI:10.33012/2017.15178, ISSN:2331-5911
【文献】An-Lin Tao et al.,"Ionospheric correction and satellite selection techniques for medium-range baseline RTK positioning with GPS and QZSS",Proceedings of the 2015 International Technical Meeting of The Institute of Navigation (ITM 2015) ,The Institute of Navigation,2015年01月,pp. 343-352,ISSN:2330-3646
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS受信機(8)において、各GNSS衛星(6)の衛星信号(5)の分散度を考慮して、複数の可視のGNSS衛星(6)から、位置特定を実行するためのGNSS衛星(6)の組合せを選択する方法であって、前記方法は、
a)前記衛星信号(5)の前記分散度を考慮する、予め定められた基準カタログ(15)に従って、少なくとも2つの異なるソートアルゴリズム(11,12,13)を用いて前記複数の可視のGNSS衛星(6)をソートし、各前記予め定められた基準カタログ(15)に従って、低い分散度を有する衛星信号(5)を有するGNSS衛星(6)を求める少なくとも2つの衛星プレソート物(10)を求めるステップであって、各前記衛星プレソート物(10)は、前記複数の可視のGNSS衛星(6)をソートすることにより提供された前記複数の可視のGNSS衛星(6)のリスティングを含む、ステップと、
b)ステップa)において作成された前記衛星プレソート物(10)に重み付けする重み付け関数(17,18)を選択するステップと、
c)重み付された最終的な衛星ソート物(20)が生じるように、各前記重み付け関数(17,18)に従って前記衛星プレソート物(10)を重み付けすることによって最終的な衛星ソート物(20)を作成するステップと、
d)前記最終的な衛星ソート物(20)に基づいて、衛星組合せ選択(21)を実行するステップと、
を含み、
ステップa)において、前記複数の可視のGNSS衛星(6)のうちの任意の第1及び第2のGNSS衛星(6)に関する、前記第1のGNSS衛星(6)と前記GNSS受信機(8)の現在位置との間の第1の方向と、前記第2のGNSS衛星(6)と前記GNSS受信機(8)の現在位置との間の第2の方向との間の角度に基づくソートアルゴリズム(11)に従って少なくとも1つのソートを行い、重み付けを、各前記第1及び第2のGNSS衛星(6)の前記角度に基づく角度パラメータに基づいて行い、
ステップa)において、幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズム(12)に従って少なくとも1つのソートを行い、重み付けを、各前記GNSS衛星(6)の周回軌道の幾何学的なパラメータに基づいて行い、
ステップa)において、不正確な測定を伴う前記GNSS衛星(6)を位置特定から除外するために、前記角度に基づくソートアルゴリズム(11)又は前記幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズム(12)によって、疑似距離測定のモデル化された分散度を使用する、方法。
【請求項2】
ステップb)において、前記GNSS受信機(8)から前記GNSS衛星(6)への視線ベクトルが基本的に中断され得る複雑な環境が存在する場合に、第1の重み付け関数(17)を選択する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の重み付け関数(17)を用いて、幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズム(12)に従って特定された衛星プレソート物(10)を、低減された重み付け係数(19)で考慮する、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)において、オープンスカイ条件が存在し、前記GNSS受信機(8)から前記GNSS衛星(6)への視線ベクトルが基本的に自由である場合に、第2の重み付け関数(18)を選択する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の重み付け関数(18)を用いて、仰角に基づくソートアルゴリズム(11)に従って特定された衛星プレソート物(10)を、低減された重み付け係数(19)で考慮する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されているGNSS受信機(8)。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項に記載のコンピュータプログラムが格納されている電子記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
全地球航法衛星システム(GNSS)を用いて、地球のあらゆる地点において位置特定を実行することが可能である。GNSS衛星は、地球周回軌道内に存在しており、GNSS受信機によって受信され、受信機と衛星との間の距離を計算するために使用され得る符号化された信号を送信する。これは、GNSS衛星から受信機への信号伝搬時間によって発生する時間差を、距離特定のために使用することによって行われる。衛星までの距離を、GNSS受信機の位置の推定のために使用することができ、十分な数の衛星によって信号が受信されることが、これに対する前提条件となる。典型的には、5個以上の衛星による信号の受信が可能な場合には、正確な位置特定が可能である。現在、約120個のGNSS衛星が地球周回軌道内に存在する。これは、地球上のあらゆる地点において、幾何学的地平線において最大で約65個の衛星が可視であることを意味する。
【0002】
典型的には、GNSS受信機が同時に追跡することができる衛星の数には制限がある。極めて多くのGNSS衛星が利用可能であるので、実際には、可視の衛星の数は、GNSS受信機による衛生の追跡能力を超えてさらに増加してきている。このことから、高い可用性を保証するため、及び、位置特定の計算コストを低く抑制するためには、可視の衛星のどのような組合せが、良好な位置特定を実行するために最も適しているのかが問題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の開示
従って、位置特定のための衛星の組合せを選択する新規のアプローチが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書においては、GNSS受信機において、各GNSS衛星の衛星信号の分散度を考慮して、複数の可視のGNSS衛星から、位置特定を実行するためのGNSS衛星の組合せを選択する方法を説明する。本方法は、
a)衛星信号の分散度を考慮する、予め定められた基準カタログに従って、少なくとも2つの異なるソートアルゴリズムを用いて可視のGNSS衛星をソートし、予め定められた各基準カタログに従って、低い分散度を有する衛星信号を有するGNSS衛星を求める少なくとも2つの衛星プレソート物を求めるステップと、
b)ステップa)において作成された衛星プレソート物に重み付けする重み付け関数を選択するステップと、
c)重み付された最終的な衛星ソート物が生じるように、各重み付け関数に従って衛星プレソート物を重み付けすることによって最終的な衛星ソート物を作成するステップと、
d)最終的な衛星ソート物に基づいて、衛星組合せ選択を実行するステップと、
を含む。
【0005】
衛星のどのような組合せが位置特定に利用されるべきかを、リアルタイムで、このように判断することは、1つの課題である。位置特定のための衛星の最適な組合せは、幾何学的な考察にも、衛星によって供給される信号データの、場合によって発生する誤差にも基づくべきである。ここで、発生するこのような誤差は、特に、各信号データの開始時間における時間的な誤差である。
【0006】
低い計算コストで衛星の最適な組合せを選択することは、1つの特別な課題である。なぜなら、衛星の最適な組合せの選択は、極めて多くの変数を伴う最適化問題であり、この最適化問題は基本的には、極めて高い計算コストを用いることによってしか、正確に解決することができないからである。この点において、本明細書においては、標準化された手法によって、この問題の良好な解決に至るアプローチが説明されており、この解決は、常に最善の解決であるとは言えないが、多くのケースにおいて、解決の極めて高い質をもたらす。特に、この方法を自動車用途において使用するためには、衛星の適当な組合せを見出すための計算コストを低く抑制する必要がある。本明細書において説明される手法は、衛星相互の適当な組合せを見出すための種々異なるアプローチを組み合わせることができる。これは、ステップa)において、少なくとも2つ(好ましくは、少なくとも3つ)の異なる衛星プレソート物を作成するために、種々異なる基準カタログを使用することができることによって行われる。これらの衛星プレソート物は、説明される方法によって、相互に組合せ可能である。基準カタログを、それに従って衛星信号の分散度を推定することができる規則と解することが可能である。ソートアルゴリズムは、各基準カタログの技術的な実装であり、この基準カタログに従って衛星がソートされる。ソートアルゴリズムは、好ましくは、このソートアルゴリズムに、利用可能な追加パラメータ(角度、補正データ等)を伴う衛星信号が伝送され、次いで、ソートアルゴリズムが出力変数として、衛星のリスティングを提供するように実装されている。このリスティングにおいては、衛星は、各基準カタログによって推定された分散度に従ってソートされている。好ましくは、関連性の上昇に伴って衛星がソートされるように、このリスティングが行われる。即ち、このリスティングの最初には、各基準カタログに従って分散度が低い衛星が来る。基準カタログによる、相応のソートアルゴリズムを用いて作成されたこのようなリストは、衛星プレソート物と称される。
【0007】
特に有利には、ステップa)において、角度に基づくソートアルゴリズムに従って少なくとも1つのソートが行われ、重み付けが、各GNSS衛星の角度パラメータに基づいて行われる。
【0008】
このような角度に基づくソートアルゴリズムは、特に、GNSS衛星とGNSS受信機との間の信号伝搬ベクトルの幾何学的な形状及び角度を考察する。
【0009】
さらに、有利には、ステップa)において、幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムに従って少なくとも1つのソートが行われ、重み付けが、各GNSS衛星の周回軌道の幾何学的なパラメータに基づいて行われる。
【0010】
このような幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムは、特に、各GNSS衛星の周回軌道の幾何学的な形状を考察する。
【0011】
さらに、有利には、ステップa)において、測定誤差に基づくソートアルゴリズムに従って少なくとも1つのソートが行われ、重み付けが、格納され、推定された分散度データに基づいて行われる。
【0012】
測定誤差に基づくソートアルゴリズムは、実質的に、格納されている分散度データに基づいており、この分散度データは、特にSVデータモジュールから提供可能である。
【0013】
SVデータモジュールは、種々異なるソースから、データを受け取る又は求めることができる。例えば、GNSS信号が符号化されているデータをSVデータモジュールによって求めることができ、SVデータモジュールによってGNSSデータから抽出することができる。SVデータモジュールは、例えば、所定の期間又は時点ごとに、規則的に新たな補正データを提供する補正データサービスを用いる他のデータソースからの分散度データも格納することができる。SVデータモジュールによって提供されるデータは、規則的に、現存する期間又は時点だけに関連して規定されるのではなく、通常、現存する位置及び速度にも関連して規定されている。このデータは、特に、伝搬時間誤差(バイアス及びドリフト)を補正するための情報を含む。
【0014】
角度に基づくソートアルゴリズム、及び、幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムは、例えば、「Geometric Dilution of Precision (GDOP)」を最小化することによって衛星の組合せを求めるアプローチに基づいている。「Geometric Dilution of Precision」とは、ドイツ語に翻訳すると、およそ「Verringerung der Ganauigkeit 精度低下率」を意味する。この精度低下率は、最小化されるべきである。精度低下率によって、測定値の散乱幅に対する尺度が意図される。これは、衛星同士の相対位置及び観測者(GNSS受信機)に対する相対位置に関連している。基本的には、第1の衛星とGNSS受信機の現在位置との間の第1の方向と、第2の衛星とGNSS受信機の現在位置との間の第2の方向との間の角度が、信号誤差によってわずかな精度低下率しか生じないような角度であるケースが有利である。極めて低い角度又は180°付近の角度は、不都合である。GDOPは、通常は、可視の衛星の特定の組合せが、位置特定にとってどの程度良好に適しているのかを示すパラメータとして提示される。この場合、1.0という値が最も良い値である。1より小さい値は、過剰決定された値であり、使用することはできない。より大きい値によって、使用される可視の衛星の組合せの最適化の可能性が示唆される。
【0015】
本明細書において説明される方法によれば、上述の種々異なるソートアルゴリズムの組合せは、幾何学的な形状も、衛星によって提供された信号データの場合によって生じる誤差も考慮するアプローチとして使用される。この手法は、GNSS位置特定システムに適用可能であり、特に自動車分野に適している。さらに、本明細書において説明される手法は、限られた計算コストしか要求せず、従って、限られたコンピュータリソースしか要求しない。
【0016】
本明細書において説明されるアプローチは、位置特定において実際に生じている誤差の原因が、幾何学的な形状でもあり、信号誤差に関する格納されている情報でもあるということに基づいている。
【0017】
測定誤差に基づくソートアルゴリズムによって除去することができる信号誤差は、実質的に、衛星と各GNSS受信機との間の信号伝搬において遅延が発生することによって生じる。これは、対流圏又は電離圏によって引き起こされる。衛星位置特定の不正確さと、特に、衛星からGNSS受信機までの経路上において(例えば、建物における)反射によって引き起こされる、信号の非直線的な伝送区間に基づく不正確さとは、さらなる不正確さ又は信号誤差を生じさせる。従って、位置誤差を回避する位置特定に対する衛星の最適な組合せを求めるために、(従来のGDOPアプローチと同様に)幾何学的な形状だけを考慮するのではなく、このような信号誤差も考慮することが有利である。
【0018】
本明細書において説明される方法は、最終的に、補正データの利用可能な分散度とともに、及び、幾何学的な形状とともに、測定の全体的な分散度を考慮する。衛星は、この方法の枠内において、求められた観測分散度に基づいてソートされ、次いで、相応に選択される。
【0019】
特に不正確な測定を伴う特定の衛星を、位置特定から除外することを目的として、ステップa)において、角度に基づくソートアルゴリズム又は幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムによって、疑似距離測定のモデル化された分散度が使用される。
【0020】
疑似レンジングは、GNSS受信機を用いた測位の際の、基本的に知られている方法である。いわゆる疑似距離が位置特定に利用される。疑似距離は、本当の(実際の)距離から、一定の、しかし最初は未知の値だけ偏差している。初めに、使用される衛星から観察者の受信機までの、無線信号の伝搬時間が測定される。ここから、誤差を伴わない、衛星までの受信機の現在の距離が得られる。誤差は、一方では、衛星及び受信機における誤りのある、(即ち)異なっている時間測定によって引き起こされる。他方では、誤差に、さらなる影響が付随していることがある。これらのさらなる影響には、例えば、対流圏又は電離圏又は(例えば、建物における)反射等による、上記において既に説明した誤差が含まれる。
【0021】
衛星同士は、通常、自身の時間測定に関して極めて正確に(即ち、実質的に誤差を伴わずに)同期されている。従って、誤差は、特に、GNSS受信機における時間測定における誤差によって生じる。これに相応して、通常、GNSS衛星とGNSS受信機との間のすべての距離測定には、同等の伝搬時間誤差が伴い、これは疑似距離又は「Pseudo-Range」と称されることがあり、十分な衛星測定が存在するケースにおいては、衛星測定からそれ自体を容易に補正することができる。このような過程は、疑似距離測定と称される。
【0022】
疑似距離測定のモデル化された分散度は、測定された分散度と、補正データに基づいて推定された分散度との組合せによって求められる。
obsVar=measVar+estVar
【0023】
モデル化された分散度は、各衛星が地平線上方の低い位置にある場合に大きくなり、特に、そこで信号反射が発生することを支持する理由が存在する場合に大きくなる。ここまで、本明細書において説明されるアプローチによって、基本的に、地平線上方の低い位置角度を有する衛星に対してネガティブランキングが作成され、信号反射が発生する可能性がある場合にも、ネガティブランキングが作成される。地平線上方の低い位置角度も、信号反射の確率も存在する場合には、このランキングは、特にネガティブである。
【0024】
測定された分散度measVarは、(この名称が既に表しているように)測定に基づいて求められ、その際に、測定された分散度が、地平線上方における衛星の高さ及び発生し得る信号反射を考慮した現実に関して補正される。
【0025】
推定された分散度estVarは、利用可能な補正データに基づいて特定され、この補正データは、特に、時点、衛星の各周回軌道、コード-位相のずれ、電離圏の影響及び対流圏の影響を考慮する。
【0026】
幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムにおいて衛星の各組合せを選択するために幾何学的な形状をどのように使用することができるかについての重要な考察は、コストを規定し、最小化可能な、いわゆるコスト関数に基づいている。
【0027】
ここでは、GDOPに対する代替手段であるコスト関数が挿入される。コスト関数が、GNSS受信機から各衛星への(仮想の)視線又は接続線を表す視線ベクトルの方向を、次のように考慮することが推定されている。
【数1】
【0028】
ここでは、θは、2つの衛星i及びjに対する視線ベクトル間の角度である。コスト関数は、各衛星に対して、あらゆる時点において実行され、このコスト関数が最も小さい、衛星の組合せが選択される。
【0029】
さらに、有利には、ステップb)において、GNSS受信機からGNSS衛星への視線ベクトルが基本的に中断され得る複雑な環境が存在する場合に、第1の重み付け関数が選択される。
【0030】
さらに、有利には、第1の重み付け関数を用いて、幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムに従って特定された衛星プレソート物が、低減された重み付け係数を用いて考慮される。
【0031】
また、ステップb)において、オープンスカイ条件が存在し、GNSS受信機からGNSS衛星への視線ベクトルが基本的に自由である場合に、第2の重み付け関数が選択されることは有利である。
【0032】
オープンスカイ条件又は「Open Sky」は、GNSS受信機による位置特定に関する、確立された技術的な用語である。オープンスカイとは、GNSS受信機に対して少なくとも実質的に自由な視野が存在しており、従って、GNSS受信機の視界から幾何学的に地平線上方に位置する衛星のうちのすべての衛星又は少なくとも大部分の衛星の信号が、直接的な経路において(即ち、信号反射等を伴わずに)受信可能であることを意味している。
【0033】
さらに、有利には、第2の重み付け関数を用いて、角度に基づくソートアルゴリズムに従って特定された衛星プレソート物が、低減された重み付け係数を用いて考慮される。
【0034】
本明細書において説明される方法は、好ましくは、2つのケース、即ち、複雑な環境のケースと、衛星への自由な視野(オープンスカイ又は「open sky」)のケースとを区別する。
【0035】
複雑な環境においては、GNSS衛星は、特定のパターンに従ってソートされる。このパターンは、例えば、各衛星に対して配向(視線)がどのように存在するかに応じて、コスト関数に対してネガティブポイントを付与し得る。
・角度を基礎として、仰角に基づいて、
・幾何学的な形状を基礎として、衛星の各周回軌道に基づいて、
・測定誤差を基礎として、既知の又は予期される測定誤差に基づいて、
3つの異なるフィールドでポイントが付与される。
【0036】
衛星のソートは、これらの様々なパターンにおけるランキングの重み付けされた組合せに基づいて行われる。
【0037】
例えば、仰角は、30%で考慮されるものとしてよい。さらに、幾何学的な形状は、10%で考慮されるものとしてよく、場合によって生じる測定誤差は、60%で考慮されるものとしてよい。
【0038】
自由な視野においては、例えば、10%での仰角の考慮及び30%での幾何学的な形状の考慮に対して、各重み付けを適合させることができる。
【0039】
本明細書においては、上述の方法を実施するように構成されているGNSS受信機、上述の方法を実施するコンピュータプログラム製品及びこのようなコンピュータプログラム製品が格納されている電子記憶媒体についても記載される。
【0040】
以下において説明される各図面は、説明された方法を詳細に描写する。本開示は、各図面における図に限定されるものではなく、ここでは、1つの好ましい実施例が示されているだけである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】GNSS受信機を示す図である。
図2】説明された方法の実施の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1には、GNSS受信機8が示されており、GNSS受信機8は、GNSS衛星6を用いて位置特定を実行することができる。GNSS衛星6からの衛星信号5は、ナビゲーションフィルタモジュール1によって受信される。ナビゲーションフィルタモジュール1は、GNSS信号を信号トラッカモジュール2に伝送する。信号トラッカモジュール2は、本明細書において説明された方法を実施するように構成されており、位置特定のためのGNSS衛星6の選択又は組合せを行う。このために、信号トラッカモジュール2は、SVデータモジュール4によって提供されたデータも用いる。このデータには、例えば、電離圏又は対流圏を考慮するための補正データが含まれる。
【0043】
位置特定用のGNSS衛星6の求められた組合せは、位置特定モジュール3に引き渡される。次いで、位置特定モジュール3は、GNSS衛星6のこの組合せに基づいて各位置を特定し、他の制御装置9への位置データ提供7を実行する。このような制御装置9は、例えば、自動車内の他のシステムの一部であるものとしてよい。
【0044】
図2は、説明された方法を実施するための詳細な図解を示している。図2に示されたモジュール及びアルゴリズムは、好ましくは、信号トラッカモジュール2内に実装されている。
【0045】
最初に、衛星信号5が求められ、種々異なるソートアルゴリズム11,12,13によって処理される。これは、ステップa)に相当する。角度に基づくソートアルゴリズム11においては、各GNSS衛星6の角度パラメータに基づいて重み付け及びソートが行われる。幾何学的な形状に基づくソートアルゴリズムにおいては、各GNSS衛星6の周回軌道のパラメータに基づいて重み付け及びソートが行われる。測定誤差に基づくソートアルゴリズムにおいては、格納され、推定された分散度データに基づいて重み付け及びソートが行われる。
【0046】
各ソートアルゴリズムは、好ましくは、基準カタログ15を含み、この基準カタログ15は、ランキング順序14に従ってソートされており、この基準カタログ15は、衛星プレソート物10を定めるために、この順序に従って処理される。好ましくは、各基準に対して、基準カタログ15内にコストパラメータ16が格納されており、これらのコストパラメータ16は、基準カタログの各基準が衛星プレソート物10にどのように作用するのかを示している。
【0047】
このようにして、3つの異なる衛星プレソート物10が生じ、次いで、これらの衛星プレソート物10が、それぞれ重み付け関数17,18に従って重み付けされ、これによって最終的な衛星ソート物20が求められる。これは、説明された方法のステップc)に相当する。衛星プレソート物10と比較して、最終的な衛星ソート物20において、個々のGNSS衛星の位置がずれていることがある。好ましくは、第1の重み付け関数17が存在しており、この第1の重み付け関数17は、GNSS受信機からGNSS衛星への視線ベクトルが基本的に中断され得る、複雑な環境が存在する場合に選択される。好ましくは、第2の重み付け関数18が存在しており、この第2の重み付け関数18は、自由視野が存在し、GNSS受信機からGNSS衛星への視線ベクトルが基本的に自由である場合に選択される。適当な重み付け関数17,18の選択は、選択モジュール22を用いて行われる。この選択モジュール22は、特に、正しい重み付け関数17,18を選択するために、(推測される)現在の位置も考慮する。これは、説明された方法のステップb)に相当する。
【0048】
次に、最終的な衛星ソート物20に基づいて、衛星組合せ選択21が行われる。これは、説明された方法のステップd)に相当する。
図1
図2