(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】アルギン酸液剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/734 20060101AFI20241105BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241105BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241105BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20241105BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61K31/734
A61K9/08
A61K47/02
A61P19/04
A61J1/05 310
(21)【出願番号】P 2023019905
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2019504609の分割
【原出願日】2018-03-06
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2017043095
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人科学技術振興機構(現、国立研究開発法人科学技術振興機構)産学共同実用化開発事業 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秋一
(72)【発明者】
【氏名】中原 基
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/054181(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/102855(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114355(WO,A1)
【文献】特開昭63-132833(JP,A)
【文献】特開平02-172913(JP,A)
【文献】特開平11-005743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61J 1/05
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1価金属塩を含有する、アルギン酸の1価金属塩水溶液を滅菌ないし無菌ろ過し、容器に充填した後、
(i)ろ液を濃縮し、密封すること、あるいは、
(ii)ろ液を凍結乾燥した後に無菌的に復水し、密封すること、
のいずれかを含むことを特徴とする製造方法により製造されるアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤が、(a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上である、密封容器または気密容器に充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤の3か月間の粘度低下率が、
1)2~8℃で保存した場合に3%未満、
2)25℃で保存した場合に7%未満、
3)40℃で保存した場合に47%未満、
のいずれかを満たす、アルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項2】
1価金属塩を含有する、アルギン酸の1価金属塩水溶液を滅菌ないし無菌ろ過し、容器に充填した後、ろ液を凍結乾燥した後に無菌的に復水し、密封することを特徴とする製造方法により製造されるアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤が、(a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上である、密封容器または気密容器に充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤の3か月間の粘度低下率が、
1)2~8℃で保存した場合に3%未満、
2)25℃で保存した場合に7%未満、
3)40℃で保存した場合に47%未満、
のいずれかを満たす、アルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項3】
1価金属塩を含有する、アルギン酸の1価金属塩水溶液を滅菌ないし無菌ろ過し、ろ液を濃縮した後に、容器に無菌的に充填し、密封することを特徴とする製造方法により製造されるアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤が、(a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上である、密封容器または気密容器に充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のアルギン酸塩水溶液製剤であって、前記アルギン酸塩水溶液製剤の3か月間の粘度低下率が、
1)2~8℃で保存した場合に3%未満、
2)25℃で保存した場合に7%未満、
3)40℃で保存した場合に47%未満、
のいずれかを満たす、アルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項4】
成分(b)の1価金属塩が塩化ナトリウムである請求項1~3のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項5】
密封容器または気密容器がバイアルまたはシリンジである請求項1~4のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項6】
成分(a)、(b)及び(c)からなる請求項1~5のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項7】
医薬品または医療機器として用いるための、請求項1~6のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項8】
密封容器または気密容器の容量が2~50mlである請求項1~7のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項9】
密封容器または気密容器の空気が窒素ガス置換されている請求項1~8のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項10】
さらに糖を含有する請求項1~9のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項11】
1)成分(a)が、GPC-MALS法による重量平均分子量が25万で、濃度が1.5質量%~3質量%であるか、
2)成分(a)が、GPC-MALS法による重量平均分子量が15万で、濃度が2質量%~5質量%であるか、または
3)成分(a)が、GPC-MALS法による重量平均分子量が7.2万で、濃度が3質量%~7質量%である、請求項1~10のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項12】
成分(a)/成分(b)の質量比が、100/70~100/10である、請求項1~11のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項13】
成分(a)におけるM/G比が、0.4~2.0である、請求項1~12のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項14】
成分(a)のアルギン酸の1価金属塩が、日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が、100EU/g未満のものである、請求項1~13のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液性製剤。
【請求項15】
1)2~8℃で保存することによる有効期間または使用期限が2年または3年であるか、または
2)2~8℃で2年間保存した後の粘度低下率が、40%未満であるとの保存安定性を有する、請求項1~14のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項16】
ろ液を、非酸化雰囲気下において乾燥して濃縮することを特徴とする製造方法により製造される、請求項1~15のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項17】
成分(a)のアルギン酸の1価金属塩がアルギン酸ナトリウムである、請求項1~16のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項18】
前記アルギン酸塩水溶液製剤の粘度低下率が、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度をもとに求められたものである、請求項1~17のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項19】
軟骨再生剤、軟骨疾患治療剤、軟骨損傷補填剤、椎間板疾患治療剤および半月板疾患治療剤から選択される製剤に用いられる医薬品または医療機器として使用される、請求項1~18のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項記載のアルギン酸塩水溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品または医療機器として有用なアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、特にGPC-MALS法による重量平均分子量が5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、回転粘度計を用いて20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上であるアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、経時的粘度低下を抑制したアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、アルギン酸の1価金属塩のバイアル入り水溶液製剤、すぐに使用可能(ready-to-use)なアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、保存安定性を有するアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、無菌のアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、密封容器または気密容器に充填されたアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤、アルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジ、それらの製造方法、アルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤の経時的粘度低下抑制剤、アルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤の経時的粘度低下を抑制する方法並びにアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム(以下、アルギン酸Naとも記す)凍結乾燥製剤などのアルギン酸の1価金属塩凍結乾燥製剤を水に溶解してなる水溶液を、関節軟骨における軟骨欠損部に注入して、軟骨再生を行ったり、治療したりすることが知られている(特許文献1)。
一方、工業用アルギン酸ナトリウムには、不純物電解質として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどが含まれており、これらは約40%以上のアルコールにより抽出される性質を利用して該不純物電解質を除去できること、及びアルギン酸ナトリウム水溶液に、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどを添加した場合の粘度、pH,構造粘度、流動曲線や毛管上昇性などの特性の変化が調べられている(非特許文献1及び2)。
又、粉末状と溶液状のアルギン酸ナトリウムの加熱による粘度低下を検討し、いずれも加熱により粘度は低下するが、溶液状の方が粘度低下率は大きいことが報告されている(非特許文献3及び4)。
又、アルギン酸ナトリウム溶液にクエン酸ナトリウムを添加することにより、アルギン酸ナトリウム溶液の経時的粘度低下が抑制されることが報告されている(非特許文献5)。
【0003】
アルギン酸ナトリウム水溶液については、アルギン酸ナトリウムの含有量が5質量%で、銅クロロフィリンナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、サッカリンナトリウム、エタノール及び香料を含有する、消化性潰瘍用剤アルロイドG内服液5%が販売されている。また、特許文献2には、エンドトキシン20EU/g以下のアルギン酸塩溶液を取得する方法が開示されており、1.8%AG溶液の調製として、低粘性アルギン酸塩パウダー(アルギン酸(E400)のナトリウム塩)に生理溶液(0.9%NaCl)を添加し、撹拌して1.8%AG溶液を調製したことが開示されている。同様に、特許文献3には、ポリサッカライド(例えば、アルギネート)を 生理溶液(水に0.15 MNaCl)に溶解し、ホモゲナイザーで激しく撹拌して、アルギネート2%(w/v)を含むアルギネートサンプルを調製したこと、およびこれを0.2μmナイロンメンブランでろ過して殺菌したことが開示されている。ここで使用されているアルギネートは、VLVG(非常に低粘度)及びLVG(低粘度)のものである。さらに、特許文献4には、周手術期間に使用される手術創傷或は吻合口の癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用が開示され、分子量が20,000~26,000のアルギン酸ナトリウム3%~18%(w/v)と、塩化ナトリウムが1.5%(w/v)以上で、且つナトリウムイオンの濃度が6.9%(w/v)で、残量の通常用注射液とからなる高張液組成物が開示されている。特許文献5には、アルギン酸塩を0.5-10wt%、及び、溶解したC2-7のモノ又はジカルボキシレートを含み、粘度が25℃で少なくとも300cp、pHが6.5-7.5の滅菌された水性組成物が開示されており、その実施例において、塩化ナトリウムが0.8質量%加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2008/102855号公報
【文献】特許5684575号公報
【文献】US20150352144A号公報
【文献】特表2010-514707号公報
【文献】US8927524B号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】化学工業雑誌61巻7号1958 p.871-874
【文献】化学工業雑誌61巻7号1958 p.874-877
【文献】室蘭工業大学研究報告 1957 Vol.2 No.3 p.609-616
【文献】室蘭工業大学研究報告 1960 Vol.3 p.443-449
【文献】Biomaterials 1985 Vol.6 p.68-69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制した低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。
本発明は、バイアル入り低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制したバイアル入り低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。
本発明は、すぐに使用可能(ready-to-use)な低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制したすぐに使用可能(ready-to-use)な低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。
本発明は、無菌の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制した、無菌の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。
本発明は、密封容器または気密容器に充填された、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制した、密封容器または気密容器に充填された、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供することを目的とする。
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、経時的粘度低下を抑制した、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
本発明は、経時的粘度低下を抑制した低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の経時的粘度低下抑制剤を提供することを目的とする。
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の経時的粘度低下を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば軟骨再生剤のような、生体内に直接注入する医薬品、医療機器を、すぐに使用可能(ready-to-use)な製剤とするためには、当該製剤は無菌である必要がある。低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤を得るために、アルギン酸の1価金属塩の水溶液製剤を無菌化する際、加熱を伴う滅菌や電子線等による滅菌を行うと、アルギン酸の低分子化や粘度低下が生じるため好ましくない。一方で、例えば軟骨再生剤として用いるような高粘度のアルギン酸水溶液を無菌ろ過(0.22umフィルター)するためには、高い圧をかける必要があったり、ろ過に長時間を要したりして、工業生産上等の理由からいずれも好ましくない。また、例えば、凍結乾燥製剤のようなアルギン酸の1価金属塩の固形製剤を用時溶解して用いる場合、無菌性を維持するためにはクリーンベンチ等、相応の設備、施設が必要であり、また、アルギン酸の1価金属塩の均一な高濃度溶液とするためには溶解に時間を要する場合があり、より利便性の高い製剤が求められている。
そこで、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のすぐに使用可能(ready-to-use)な水溶液製剤を得る方法について、鋭意検討した結果、驚くべきことに、先ず、低濃度のアルギン酸の1価金属塩の水溶液を調製し、これに所定量の1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解し、得られた水溶液を無菌ろ過し、バイアルに充填して非酸化雰囲気下で常法による乾燥、例えば減圧乾燥等により、アルギン酸の1価金属塩濃度を濃縮すると、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の水溶液であって、粘度低下が抑制された水溶液製剤が得られ、かつこの水溶液製剤は、経時的な粘度低下を効率的に抑制できるとの知見に基づいて本発明を完成した。
或いはまた、低濃度のアルギン酸の1価金属塩の水溶液を調製し、これに所定量の1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解し、得られた水溶液を無菌ろ過し、バイアルやシリンジ等の容器に充填する前に、非酸化雰囲気下で常法による乾燥、例えば減圧乾燥等により、アルギン酸の1価金属塩水溶液を濃縮した後に、前記容器に充填し、密封することによっても、目的とする低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の水溶液であって、粘度低下が抑制された水溶液製剤が得られ、かつこの水溶液製剤の経時的な粘度低下を効率的に抑制できることを確認した。
【0008】
すなわち、本発明は、上記目的を達成する以下の態様を有する。
(1-1)(a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上である、密封容器または気密容器に充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-2)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩が水溶性の無機塩である(1-1)のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-3)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩が塩化ナトリウムである(1-1)または(1-2)のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-4)密封容器または気密容器がバイアルである(1-1)~(1-3)のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-5)密封容器または気密容器がシリンジである(1-1)または(1-3)のアルギン酸塩水溶液製剤のプレフィルドシリンジ。
(1-6)成分(a)、(b)及び(c)からなる(1-1)~(1-5)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-7)前記保存安定性を有する製剤の3か月間の粘度低下率が、
1)2~8℃で保存した場合に3%未満、
2)25℃で保存した場合に7%未満、
3)40℃で保存した場合に47%未満、
のいずれかを満たす、(1-1)~(1-6)のアルギン酸塩水溶液製剤。
【0009】
(1-8)医薬品または医療機器として用いるための、(1-1)~(1-7)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-9)密封容器または気密容器の容量が2~50mlである(1-1)~(1-8)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-10)密封容器または気密容器へのアルギン酸塩水溶液の充填量が5~20mlである(1-1)~(1-9)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-11)密封容器または気密容器へのアルギン酸塩の充填量が乾燥アルギン酸ナトリウムとして50~500mgである(1-1)~(1-10)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-12)密封容器または気密容器がバイアルである(1-9)~(1-11)のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-13)密封容器または気密容器がシリンジである(1-9)~(1-11)のアルギン酸塩水溶液製剤のプレフィルドシリンジ。
(1-14)密封容器または気密容器の空気が窒素ガス置換されている(1-1)~(1-13)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-15)密封容器または気密容器がバイアルである(1-14)のアルギン酸塩水溶液製剤。
(1-16)密封容器または気密容器がシリンジである(1-14)のアルギン酸塩水溶液製剤のプレフィルドシリンジ。
(2-1)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を含有する、アルギン酸の1価金属塩水溶液を滅菌ないし無菌ろ過し、容器に充填した後、ろ液を濃縮すること、あるいは凍結乾燥した後に無菌的に復水し、密封することを特徴とする、(1-1)~(1-16)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤の製造方法。
(2-2)容器がバイアルである(2-1)のアルギン酸塩水溶液製剤の製造方法。
(2-3)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を含有する、アルギン酸の1価金属塩水溶液を滅菌ないし無菌ろ過し、ろ液を濃縮した後に、容器に無菌的に充填し、密封することを特徴とする、(1-1)~(1-16)のいずれかのアルギン酸塩水溶液製剤の製造方法。
(2-4)密封容器または気密容器がバイアルである(2-3)のアルギン酸塩水溶液製剤の製造方法。
(2-5)容器がシリンジである(2-3)のアルギン酸塩水溶液製剤のプレフィルドシリンジの製造方法。
(3-1)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を有効成分とするアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の経時的粘度低下抑制剤。
(4-1)アルギン酸の1価金属塩水溶液に、1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を含有させることを特徴とするアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の経時的粘度低下を抑制する方法。
(5)(a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上であるアルギン酸塩水溶液が充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のバイアル。
(6) (a)GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩及び(c)水を含有し、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%であり、回転粘度計を用いて、20℃で測定した粘度が2700mPa・s以上である、密封容器または気密容器に充填された、すぐに使用可能(ready-to-use)な、保存安定性を有する、無菌のアルギン酸塩水溶液である組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間保管や貯蔵しておいても、アルギン酸の1価金属塩水溶液製剤中のアルギン酸の1価金属塩の経時的粘度低下を効率的に抑制できるアルギン酸の1価金属塩水溶液製剤を提供できる。又、成分(a)と成分(b)を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過し、非酸化雰囲気下で乾燥してアルギン酸の1価金属塩濃度を濃縮する工程を採用することにより、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の水溶液であって、粘度低下が抑制された水溶液製剤が得られ、かつこの水溶液製剤は、経時的な粘度低下を抑制できるという工業的生産上大きなメリットを享有できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のアルギン酸ナトリウム濃度2質量%水溶液の25℃/60%RH(加速条件)及び40℃/75%RH(苛酷条件)での経時による粘度変化の評価結果を示す図である。
【
図2】実施例2における各種分子量のアルギン酸ナトリウム水溶液製剤の40℃/75%RH保存時の塩化ナトリウムの粘度低下抑制効果を示す図である。
【
図3】実施例3における40℃/75%RH保存時の塩化ナトリウムの粘度低下抑制効果を示す図である。
【
図4】実施例3における25℃/60%RH保存時の塩化ナトリウムの粘度低下抑制効果を示す図である。
【
図5】実施例3における2~8℃保存時の塩化ナトリウムの粘度低下抑制効果を示す図である。
【
図6】実施例4における本発明のアルギン酸ナトリウム水溶液製剤の25℃/60%RH保存時および2~8℃保存時の長期保存時の経時による粘度変化を示す図である。
【
図7】実施例5における本発明のアルギン酸ナトリウム水溶液製剤の40℃/75%RH保存時の長期保存時の経時による粘度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩(a)の構成成分であるアルギン酸は、海藻から抽出し、精製して製造される天然多糖類の一種である。又、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)が重合したポリマーである。アルギン酸の工業的な製造方法には、酸法とカルシウム法などがあるが、本発明ではいずれの製法で製造されたものも使用することができるが、精製によりHPLC法による定量値が90~110質量%の範囲に含まれるものが好ましい。市販品としては、例えば、キミカアルギンシリーズとして、(株)キミカより販売されているもの、好ましくは、高純度食品・医薬品用グレードのものを購入して使用することができる。市販品を、さらに適宜精製して使用することも可能である。
本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩としては、アルギン酸のカルボキシル基の水素カチオンが、ナトリウムやカリウムなどの1価金属カチオン、特にアルカリ金属カチオンとイオン交換したものが好ましい。これらのうち、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム又はこれらの混合物などが好ましく、特に、アルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0013】
本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩としては、GPC-MALS法による重量平均分子量5万~40万のものを用いる。このうち、10万~40万のものが好ましい。ここで、重量平均分子量の上限が30万であるのがさらに好ましい。
一般に天然物由来の高分子物質は、単一の分子量を持つのではなく、種々の分子量を持つ分子の集合体であるため、ある一定の幅を持った分子量分布として測定される。代表的な測定手法はゲルろ過クロマトグラフィーである。ゲルろ過クロマトグラフィーにより得られる分子量分布の代表的な情報としては、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/ Mn)があげられる。
分子量の大きい高分子の平均分子量への寄与を重視したのが重量平均分子量であり、下記式で表される。
Mw = Σ(WiMi) / W =Σ(HiMi) /Σ(Hi)
数平均分子量は、高分子の総重量を高分子の総数で除して算出される。
Mn = W /ΣNi = Σ(MiNi) /ΣNi =Σ(Hi) /Σ(Hi/Mi)
ここで、W は高分子の総重量、Wiはi番目の高分子の重量、Miはi番目の溶出時間における分子量、Niは分子量Miの個数、Hiはi番目の溶出時間における高さである。
【0014】
天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが知られている(ヒアルロン酸の例:Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Health Sci., Vol.117, pp135-139(1999)、Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Inst. Health Sci., Vol.121, pp30-33(2003))。アルギン酸塩の分子量測定については、固有粘度(Intrinsic viscosity)から算出する方法、SEC-MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)により算出する方法が記載された文献がある(ASTM F2064-00 (2006), ASTM International発行)。なお、当該文献では、サイズ排除クロマトグラフィー(=ゲルろ過クロマトグラフィー)により分子量を測定するにあたっては、プルランを標準物質として用いた較正曲線により算出するだけでは不十分とし、多角度光散乱検出器(MALLS)を併用すること(=SEC-MALLSによる測定)を推奨している。従って、本発明においては、SEC-MALLSによるアルギン酸塩の重量平均分子量(Mw)を採用している(FMC Biopolymer社、PRONOVATM sodium alginates catalogue)。ここで、SEC-MALLSは、GPC(SEC)に多角度光散乱検出器(MALS)を接続することにより、ポリマーの絶対分子量を求める方法である。
【0015】
よって、本明細書中においてアルギン酸塩の分子量を特定する場合は、特段のことわりがない限り、SEC-MALLS(GPC-MALS法)より算出される重量平均分子量である。SEC-MALLSの好適な測定条件としては、例えば、プルランを標準物質とした較正曲線を用いることが挙げられる。標準物質として用いるプルランの分子量としては、少なくとも160万、78.8万、40.4万、21.2万および11.2万のものを標準物質として用いることが好ましい。その他、溶離液(200mM硝酸ナトリウム溶液)、カラム条件などを特定できる。カラム条件としては、ポリメタクリレート樹脂系充填剤を用い、排除限界分子量1000万以上のカラムを少なくとも1本用いることが好ましい。代表的なカラムは、TSKgel GMPWx1(直径7.8mm×300mm)(東ソー株式会社製)である。
【0016】
また、本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩としては、例えば、回転粘度計を用いて日局粘度測定法により測定した1%液の粘度(20℃)が、50~2万mPa・sのものを用いるのが好ましく、より好ましくは50~1万mPa・s、より好ましくは100~5千mPa・s、より好ましくは300~800mPa・s、さらに好ましくは300~600mPa・sである。又、医薬品または医療機器としてすぐに使用可能(ready-to-use)な製剤としては、例えば、回転粘度計を用いて日局粘度測定法により測定した粘度(20℃)が、2700mPa・s以上のものが好ましく、3000mPa・s以上のものがより好ましく、3300mPa・s以上のものがさらに好ましい。
また、本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩としては、その最終使用用途に応じて、適切なM/G比のものを用いるのがよい。M/G比が、0.4~2.0のものを用いるのが好ましく、より好ましくは0.6~1.8、さらに好ましくは0.8~1.6である。これらのM/G比のアルギン酸の1価金属塩は、軟骨疾患治療に有用である。
また、本発明で使用するアルギン酸の1価金属塩としては、エンドトキシンレベルを低下させたものを使用する。日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が、100EU/g未満のものを用いるのが好ましく、より好ましくは75EU/g未満、さらに好ましくは50EU/g未満である。このようなエンドトキシンレベルを低下させたものは、公知の方法またはそれに準じる方法によって行うことができる。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを精製する、菅らの方法(例えば、特開平9-324001号公報など参照)、β1,3-グルカンを精製する、吉田らの方法(例えば、特開平8-269102号公報など参照)、アルギネート、ゲランガム等の生体高分子塩を精製する、ウィリアムらの方法(例えば、特表2002-530440号公報など参照)、ポリサッカライドを精製する、ジェームスらの方法(例えば、国際公開第93/13136号パンフレットなど参照))、ルイスらの方法(例えば、米国特許第5589591号明細書など参照)、アルギネートを精製する、ハーマンフランクらの方法(例えば、Appl Microbiol Biotechnol (1994)40:638-643など参照)等またはこれらに準じる方法によって実施することができる。本発明の低エンドトキシン処理は、それらに限らず、洗浄、フィルター(エンドトキシン除去フィルターや帯電したフィルターなど)によるろ過、限外ろ過、カラム(エンドトキシン吸着アフィニティーカラム、ゲルろ過カラム、イオン交換樹脂によるカラムなど)を用いた精製、疎水性物質、樹脂または活性炭などへの吸着、有機溶媒処理(有機溶媒による抽出、有機溶剤添加による析出・沈降など)、界面活性剤処理(例えば、特開2005-036036号公報など参照)など公知の方法によって、あるいはこれらを適宜組合せて実施することができる。これらの処理の工程に、遠心分離など公知の方法を適宜組み合わせてもよい。アルギン酸の種類などに合わせて適宜選択するのが望ましい。
【0017】
本発明の成分(b)として用いる1価金属塩及びアンモニウム塩としては、水溶性の無機塩があげられる。このうち、1価金属塩としては、ナトリウムやカリウムなどの1価金属の塩、特にアルカリ金属の水溶性塩が好ましいものとしてあげられる。具体的には、無機塩として、アルカリ金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などがあげられる。これらのうち、塩酸塩が好ましく、特に塩化ナトリウムや塩化カリウムが好ましい。最も好ましくは塩化ナトリウムである。
又、アンモニウム塩としては、水溶性の塩化アンモニウムなどが好ましいものとしてあげられる。
本発明では、成分(a)/成分(b)の質量比が、100/70~100/10であるのが好ましく、より好ましくは、100/60~100/20であり、最も好ましくは100/約45である。成分(b)が塩化ナトリウムの場合、すぐに使用可能(ready-to-use)な製剤中の塩化ナトリウム濃度が生理食塩水相当の濃度となる様に、成分(a)に対して成分(b)を配合するのが最も好ましい。
【0018】
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、成分(a)の濃度が1.5質量%以上、成分(b)の濃度が0.5~2質量%である。ここで、成分(a)の好ましい濃度は使用するアルギン酸の分子量に依存し、後述の実施例に記載のALG-1(GPC-MALS法による平均分子量25万)を使用する場合には1.5質量%~3質量%であるのが好ましく、より好ましくは1.8質量%~2.5質量%であり、最も好ましくは、2質量%である。後述の実施例に記載のALG-2(GPC-MALS法による平均分子量15万)を使用する場合には2質量%~5質量%であるのが好ましく、より好ましくは2.5質量%~4質量%であり、最も好ましくは、3.5質量%である。GPC-MALS法による平均分子量7.2万のアルギン酸を使用する場合には、3質量%~7質量%であるのが好ましく、より好ましくは4質量%~6質量%であり、最も好ましくは4.5~5質量%である。
又、成分(b)の濃度は、0.5~2%であるのが好ましく、より好ましくは0.9%である。
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤には、その性能を損なわない範囲で、マンニトール、キシリトール、白糖などの糖を追加成分として含有させることができるが、成分(a)と成分(b)と水(c)のみから構成されるのが好ましい。一方、本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、C2-7のモノ又はジカルボキシレートを含有しないのが好ましい。また、本発明のアルギン酸水溶液製剤は、クエン酸ナトリウムを含有しないのが好ましい。また、本発明のアルギン酸水溶液製剤は、カルシウム塩を含有しないのが好ましい。また、本発明のアルギン酸水溶液製剤は、アルギン酸が架橋されていないものが好ましい。
ここで用いる水としては、注射用水が好ましい。
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤の粘度は、通常、2700mPa・s以上の値を示し、好ましくは3000mPa・s以上の値を示し、より好ましくは3300mPa・s以上の値を示す。
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤の粘度は、常法に従い測定することができる。例えば、回転粘度計法の、共軸二重円筒形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)、円すい-平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)等を用いて測定することができる。好ましくは、日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従うことが望ましい。本発明において粘度測定は20℃の条件で行うことが望ましい。例えば、コーンプレート型粘度計を用いて測定する場合、以下のような測定条件で測定することができる。試料溶液の調製は、MilliQ水を用いて行う。測定温度は20℃とする。コーンプレート型粘度計の回転数は、アルギン酸1価金属塩の1%溶液測定時は1rpm、2%溶液測定時は0.5rpmとし、これを目安にして決定する。読み取り時間は、アルギン酸1価金属塩の1%溶液測定の場合は2分間測定し、開始1分から2分までの平均値とする。2%溶液測定の場合は2.5分間測定し、開始0.5分から2.5分までの平均値とする。試験値は3回の測定の平均値とする。
本発明における粘度の測定は、後述の実施例に記載の通り、回転粘度計であるレオストレスRS600(Thermo Haake GmbH社製)で2軸円筒状の金属製カップを用いて、20℃における粘度を3分間測定しそのうち開始1分後から2分後までの平均を測定値とした。
【0019】
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、冷蔵、好ましくは2~8℃で保存することが好ましい。冷蔵保存することにより、アルギン酸の1価金属塩の分解が抑制され、粘度低下が抑制される。本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、2~8℃で保存することによる有効期間または使用期限が2年または3年であることが好ましい。本発明のアルギン酸塩水溶液製剤を2~8℃で2年間保存した後の粘度低下率は、通常40%未満であり、好ましくは30%未満であり、さらに好ましくは20%未満である。粘度低下率は、加速試験結果、統計処理等により外挿することが可能である。
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は好ましくは保存安定性を有する。本発明において、保存安定性を有するとは、当該製剤を以下の各条件で3か月間保存した後の粘度低下率が、
1)2~8℃で保存した場合に3%未満、
2)25℃、湿度60%で保存した場合に7%未満、
3)40℃、湿度75%で保存した場合に47%未満、
のいずれかを満たすものをいう。
なお、2~8℃で保存した場合の、3か月間保存した後の好ましい粘度低下率は2%未満であり、より好ましくは1.5%未満であり、25℃、湿度60%で保存した場合の、3か月間保存した後の好ましい粘度低下率は6%未満であり、より好ましくは5%未満であり、40℃、湿度75%で保存した場合の、3か月間保存した後の好ましい粘度低下率は45%未満であり、より好ましくは43%未満である。
【0020】
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、医薬品または医療機器として用いることができる。具体的には、軟骨再生剤、軟骨疾患治療剤、軟骨損傷補填剤、椎間板疾患治療剤および半月板疾患治療剤等に用いる医薬品または医療機器として使用することができる。本発明のアルギン酸塩水溶液製剤は、すぐに使用可能(ready-to-use)なように調製されたものであるが、注射用水、生理食塩水等の溶媒を加えて希釈して、目的とする用途に適した濃度、粘度の溶液として使用することもできる。当該溶液を、スポンジなどの担体に含浸させて使用することもできる。また、当該溶液に、塩化カルシウム溶液などの架橋剤を添加して、溶液をゲル化して使用することもできる。また、本発明のアルギン酸塩水溶液をバイアル等の容器から取り出し、そのまま、又は希釈して患部に塗布等の使用も可能である。
本発明のアルギン酸塩水溶液製剤の好ましい製造方法を次に説明する。
すなわち、(a)アルギン酸の1価金属塩及び(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過し、バイアル等の容器に充填し、次いで、乾燥により所定の濃度まで濃縮する方法によって製造するのが好ましい。
また(a)アルギン酸の1価金属塩及び(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過し、バイアル等の容器に充填し、次いで、凍結乾燥したものを無菌的に復水して製造することもできる。
また、(a)アルギン酸の1価金属塩及び(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過し、乾燥により所定の濃度まで濃縮し、次いで、バイアル、シリンジ等の容器に充填する方法によって製造することもできる。
また、(a)アルギン酸の1価金属塩及び(b)1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過した後、バイアル、シリンジ等の容器に充填する方法によって製造することもできる。
【0021】
より具体的には、成分(a)と成分(b)を、注射用水に溶解して水溶液を調製する。この際、成分(a)であるアルギン酸の1価金属塩の濃度を0.1質量%以上1.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上1.3質量%以下、さらに好ましくは、0.3質量%以上1.2質量%以下となるようにするのがよい。成分(b)である塩は、使用した成分(a)に対して、成分(a)/成分(b)の質量比が、100/70~100/10となる量、より好ましくは100/60~100/20となる量で用いるのがよい。しかしながら、乾燥による濃縮後に、成分(b)の濃度が0.5~2質量%になるように調整しておくのが肝要である。水への成分(a)と成分(b)の添加順序は任意とすることができるが、成分(a)、成分(b)の順で加えるのが好ましい。通常、室温で溶解させるが、場合により、溶液を40℃程度まで加温、加熱または冷却してもよい。溶解に際して、任意の攪拌機を用いてもよい。
本発明では、成分(a)と成分(b)を溶解した水溶液の粘度(20℃)が、40~800mPa・sとなるようにするのが好ましい。ここで、水溶液の粘度は、回転粘度計であるレオストレスRS600(Thermo Haake GmbH社製)で2軸円筒状の金属製カップを用いて、20℃で測定した値を用いることができる。
溶解後、本発明では、水溶液を濾過して、好ましくは無菌濾過を行って、エンドトキシンレベルを低下させる。この際、ろ過フィルター、例えば、0.22umフィルターを用いるのが好ましい。
なお、本発明の無菌の製剤とは、例えば、日本薬局方に規定される無菌試験法に適合する製剤を意味する。
【0022】
本発明では、成分(a)と成分(b)を溶解した水溶液、あるいは成分(a)と成分(b)を溶解してなる水溶液をバイアル等の容器に充填した後、好ましくは、例えば窒素気流中のような非酸化雰囲気下において、常法により乾燥、例えば減圧乾燥や常圧乾燥により濃縮し、アルギン酸の1価金属塩の濃度を1.5%以上とすることができる。あるいは、本発明では、成分(a)と成分(b)を溶解した水溶液、あるいは成分(a)と成分(b)を溶解してなる水溶液を、好ましくは、例えば窒素気流中のような非酸化雰囲気下において、常法により乾燥、例えば減圧乾燥や常圧乾燥により濃縮し、アルギン酸の1価金属塩の濃度を1.5%以上とした後に、バイアル、シリンジ等の容器に充填することができる。本発明のアルギン酸の1価金属塩の水溶液を充填するバイアル、シリンジ等の容器は、容量が2~50mlであるものが好ましい。また、本発明のアルギン酸の1価金属塩の水溶液の充填量は、バイアル、シリンジ等の容器の容量の1~90%程度とするのが好ましい。例えば、容器へのアルギン酸塩水溶液の充填量として、5~20mlが挙げられる。また、容器へのアルギン酸塩の充填量として、乾燥アルギン酸ナトリウムとして50~500mgが挙げられ、好ましくは50~150mgであり、90~110mgであるものがより好ましい。
濃縮終了後、あるいは容器への充填後、バイアル等の容器中の空気を窒素ガス、好ましくは乾燥窒素ガスで置換し、次いで、キャップ、シール等により密封するのが好ましい。バイアル等に用いるキャップとしてはゴム製、特に、臭化ブチルゴム製のものが好ましい。尚、バイアルとしては、ガラス製バイアルなど市販の種々の材料でできたものを用いることができる。また、バイアルの内壁をシリコーン等でコーティングすることも可能である。本発明の水溶液製剤を充填する密封容器または気密容器として、バイアルが挙げられるが、バイアルに代えて、アンプル、シリンジ、ソフトバッグ等を用いることも可能であり、バイアルまたはシリンジが好ましい。シリンジを用いた場合には、プレフィルドシリンジとして、すぐに使用することが可能(ready-to-use)であり、より利便性が高い。
【0023】
本発明は、さらに、1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を含有することを特徴とするアルギン酸の1価金属塩アルギン酸塩水溶液製剤の経時的粘度低下抑制剤を提供する。又、本発明は、アルギン酸の1価金属塩アルギン酸塩水溶液製剤に、1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩を含有させることを特徴とするアルギン酸の1価金属塩アルギン酸塩水溶液製剤の経時的粘度低下を抑制する方法を提供する。
これらの態様において、1価金属塩及びアンモニウム塩から選ばれる塩である成分(b)を、アルギン酸の1価金属塩である成分(a)に対して、成分(a)/成分(b)の質量比が、100/70~100/10の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは、100/60~100/20の範囲で用いることにより、アルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の経時的粘度低下を抑制することができる。
本発明は、また、成分(a)と成分(b)を溶解してなる水溶液を、無菌ろ過し、非酸化雰囲気下で乾燥してアルギン酸の1価金属塩濃度を濃縮する工程を含む、アルギン酸の1価金属塩水溶液製剤の安定化方法を提供する。
【実施例】
【0024】
次に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
以下の方法により、アルギン酸ナトリウム水溶液製剤を調製した。
(1)アルギン酸ナトリウム水溶液の調製方法
精製アルギン酸ナトリウム((株)キミカより購入:ALG-1(平均分子量25万:GPC-MALS法により測定:純度(定量値)98%:粘度(1質量%溶液、20℃)525mPa・s:M/G比1.2)、塩化ナトリウム(メルク(株)社製)及び水(注射用水:大塚製薬(株)社製)を用いた。
滅菌済みの1~2L容量の容器に、精製アルギン酸ナトリウムと塩化ナトリウムを、注射用水と共に入れ、室温で攪拌して溶解させ、アルギン酸ナトリウム濃度1%の水溶液を調製した。
次いで、この調製薬液を、クリーンベンチ内で0.22μmフィルター(ミリポア社製)を用いて無菌ろ過を行った。
(2)濃縮
上記の方法で調製した調製薬液を、バイアルあたり、乾燥アルギン酸ナトリウムとして102mgとなるように、20ml容量のガラスバイアルに充填し、凍結乾燥装置を用いて、常法にて濃縮した後、バイアル内の空気を乾燥窒素ガスで置換し、次いで、キャップして密封状態にし、アルギン酸ナトリウム2質量%、塩化ナトリウム0.9質量%の水溶液製剤を調製した。
【0025】
(3)アルギン酸Na水溶液製剤の経時安定性
上記(2)で得られたアルギン酸Na濃度2質量%水溶液の経時的な粘度の変化を評価するため、25℃、60%RH(加速条件)及び40℃、75%RH(苛酷条件)の恒温恒湿室に保存して、経時による粘度変化を評価した。
粘度の測定は、回転粘度計であるレオストレスRS600(Thermo Haake GmbH社製)で2軸円筒状の金属製カップを用いて、20℃における粘度を3分間測定しそのうち開始1分後から2分後までの平均を測定値とした。
(4)結果
得られた結果を
図1に示す。
図1における結果から、25℃(加速条件)では、粘度低下が緩やかであることから冷所保存で、2年間安定性を担保できる可能性があることがわかった。特に、25℃、60%RHの加速条件において、3か月間の粘度低下率が1%未満であることがわかる。また、40℃、75%RHの2か月間の結果から、3か月間の粘度低下率は約40%と推定された。
【0026】
実施例2
実施例1の方法に準じて、分子量の異なるアルギン酸ナトリウムを用いて、アルギン酸ナトリウム水溶液製剤を調製した。
(1)アルギン酸ナトリウム水溶液の調製方法および濃縮
精製アルギン酸ナトリウムALG-1(実施例1と同じ)およびALG-2((株)キミカより購入:平均分子量15万:GPC-MALS法により測定)を用いて、アルギン酸ナトリウム2質量%(ALG-1)および3.5質量%(ALG-2)の水溶液製剤を調製した。塩化ナトリウム濃度はいずれも0.9質量%である。
(2)アルギン酸Na水溶液製剤の経時安定性
上記(1)で得られた各アルギン酸Na水溶液の経時的な粘度の変化を評価するため、40℃、75%RH(苛酷条件)の恒温恒湿室に保存して、実施例1の方法に準じて経時による粘度変化を評価した。
(3)結果
得られた結果を
図2に示す。
図2における苛酷条件の結果から、冷所保存で、2年間安定性を担保できる可能性があることがわかった。また、ALG-1およびALG-2の、40℃、75%RHの苛酷条件における3週間の結果から推定した3か月間の粘度低下率はそれぞれ、約39%、約45%であることがわかった。
【0027】
実施例3
以下の方法により、各種アルギン酸ナトリウム凍結乾燥製剤を調製した後、無菌的に復水しアルギン酸ナトリウム水溶液製剤としたものについて、実施例1の方法に準じて経時的な粘度を測定、評価した。
(1)アルギン酸ナトリウム水溶液の調製方法
実施例1で用いたのと同じ精製アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム(メルク(株)社製)及び水(注射用水:大塚製薬(株)社製)を用いた。
滅菌済みの1~2L容量の容器に、精製アルギン酸ナトリウム単独(アルギン酸ナトリウム 5.1g/L)、又は精製アルギン酸ナトリウムと塩化ナトリウム(アルギン酸ナトリウム 5.1g/L:NaCl 2.25g/L)を、注射用水と共に入れ、室温で攪拌して溶解させ、使用原薬液を調製した。
次いで、使用原薬液を、クリーンベンチ内で0.22μmフィルター(ミリポア社製)を用いて無菌ろ過を行い、20ml容量のガラスバイアルにバイアルあたり、乾燥アルギン酸ナトリウムとして、102mgとなるように充填を行った。
【0028】
(2)凍結乾燥
アルギン酸ナトリウム水溶液を充填したガラスバイアルを、凍結乾燥装置を用いて、下記の条件で、凍結乾燥した。
凍結・乾燥条件:270分かけて-40℃まで冷却し、この温度で、600分保持して完全に凍結させた後、240分かけて温度を-10℃に上昇させ、この温度で、凍結乾燥機の庫内が3Pa以下となるまで減圧し、約120時間保持して、水分含量約2質量%まで乾燥した。
凍結乾燥後、バイアル中の空気を乾燥窒素ガスで置換し、次いで、キャップして密封状態にし、これを以下の試験に供した。
(3)アルギン酸ナトリウム2質量%溶液の経時安定性
上記(2)で得られたアルギン酸ナトリウム凍結乾燥品を、水(注射用水:大塚製薬(株)社製)に溶解して、下記のアルギン酸ナトリウム濃度2質量%水溶液1と2を調製した。又、精製アルギン酸ナトリウム単独の凍結乾燥品を、生理食塩水に溶解して、下記のアルギン酸ナトリウム濃度2質量%水溶液3を調製した。
水溶液1:凍結乾燥時にNaClあり:注射用水で調製(実施例3-1)
水溶液2:凍結乾燥時にNaClなし:注射用水で調製(参考例3-2)
水溶液3:凍結乾燥時にNaClなし:生理食塩水で調製(参考例3-3)
【0029】
これらのアルギン酸ナトリウム2質量%溶液の40℃/75%RH、25℃/60%RH及び2~8℃における経時安定性を経時による粘度変化で評価した。粘度を実施例1と同様の方法で測定した。
得られた結果を
図3~
図5に示す。
図3における結果から、凍結乾燥時にNaClが存在すると、粘度低下が緩やかである(水溶液1:実施例3-1:粘度低下の傾き-548、3か月間の粘度低下率約38%)ことから、経時による粘度低下を抑制できることがわかる。これに対して、凍結乾燥時にNaClが存在しないと、経時による粘度低下が大きく(水溶液2:参考例3-2:粘度低下の傾き-623、3か月間の粘度低下率約49%)、凍結乾燥時にNaClが存在せず、その後添加しても経時による粘度低下を抑制できないことがわかる(水溶液3:参考例3-3:粘度低下の傾き-702、3か月間の粘度低下率約54%)。なお、実施例3-1の製剤は、40℃、75%RHの条件において、3か月間の粘度低下率が47%未満であることがわかる。
【0030】
図4の結果からも、凍結乾燥時にNaClが存在すると、経時による粘度低下を抑制できるが、凍結乾燥時にNaClが存在しないと、経時による粘度低下が大きく、又、凍結乾燥時にNaClが存在せず、その後添加しても経時による粘度低下を抑制できないことがわかる。なお、実施例3-1の製剤は、25℃、60%RHの条件において、3か月間の粘度低下率が7%未満であることがわかる。
図5の結果からも、凍結乾燥時にNaClが存在すると、経時による粘度低下を抑制できるが、凍結乾燥時にNaClが存在しないと、経時による粘度低下が大きく、又、凍結乾燥時にNaClが存在せず、その後添加しても経時による粘度低下を抑制できないことがわかる。なお、実施例3-1の製剤は、2~8℃の保存条件において、3か月間の粘度低下率が3%未満であることがわかる。
【0031】
実施例4
実施例3-1で調製したアルギン酸ナトリウム2質量%溶液(水溶液1)の、25℃/60%RH及び2~8℃における、18か月までの経時安定性を経時による粘度変化で評価した。粘度を実施例1と同様の方法で測定した。
得られた結果を
図6に示す。
図6における結果から、凍結乾燥時にNaClが存在すると、復水後の水溶液製剤が長期間安定であることが確認された。本試験の結果から、実施例3-1の製剤は、25℃、60%RHの条件における3か月間の平均粘度低下率が約6%であり、7%未満であることがわかる。また、実施例3-1の製剤は、2~8℃の保存条件において18か月間実質的な粘度低下が認められず、3か月間の平均粘度低下率が約3%未満であることがわかる。
【0032】
実施例5
実施例1の(1)で調製し、無菌ろ過した調製薬液1.6kgを、無菌的に容量5Lの輸液バッグに充填し、乾燥窒素ガスを輸液バック内に通気させて、クリーンベンチ内で適宜加温、攪拌しながら常圧にて濃縮し、アルギン酸ナトリウム2質量%、塩化ナトリウム0.9質量%の調製薬液を得た(lot 1)。加温条件を変更した以外は、前記同様にして、調剤薬液を得た(lot 2)。この薬液を、無菌的に20mL容量のガラスバイアルに充填し、キャップして密封し、アルギン酸ナトリウム水溶液製剤を得た。別に、前記薬液を、無菌的に20mL容量のシリンジに充填し、キャップして密封し、アルギン酸ナトリウム水溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジを得た。ここで、無菌的に充填する操作は、クリーンベンチ内で行った。
バイアルに充填した前記のアルギン酸ナトリウム2質量%溶液(lot 1、lot 2)について、40℃/70%RHにおける、2か月までの経時安定性を経時による粘度変化で評価した。粘度を実施例1と同様の方法で測定した。
得られた結果を
図7に示す。
図7における本試験の結果から、40℃、75%RHの2か月間の結果から推定される、実施例5の製剤(lot 1、lot 2)の3か月間の粘度低下率は、それぞれ約35%および約37%であり、凍結乾燥後に復水した水溶液製剤と同等の安定性であった。