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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】押圧作動式ダブル流体ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20241105BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B65D47/34 100
B65D81/32 S
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130023
(22)【出願日】2023-08-09
(65)【公開番号】P2024032671
(43)【公開日】2024-03-12
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】22192530.8
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ペリエ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ヒューバー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ミュラー
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0302064(US,A1)
【文献】特開平7-165251(JP,A)
【文献】特開2004-210328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 81/32
B65D 83/00
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧作動式ダブル流体ディスペンサ(1)であって、
第1のキャビティ(4a)と、前記第1のキャビティ(4a)から分離された第2のキャビティ(4b)と、を有する容器(2)と、
前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティを覆って前記容器に組み付けられる一般的なキャップの形態の分配ポンプ装置(6)と、を含み、
前記分配ポンプ装置は、ベース部品(7)と、非圧縮状態から圧縮状態まで押圧で移動可能な弾性可撓性ポンプ膜(18)を含むポンプ機構(16)を含むキャップ部品(8)と、を含み、
前記ポンプ機構(16)は、前記ポンプ膜(18)の下側から延び、前記ベース部品のスロットに挿入される分離壁(20)をさらに含み、前記分離壁は、第1のポンプチャンバ(22a)を第2のポンプチャンバ(22b)から分離し、前記第1のポンプチャンバおよび前記第2のポンプチャンバはともに、前記ポンプ膜(18)より下方の容積内に設けられ、前記第1のポンプチャンバは、第1の入口チャネル(10a)および第1の出口チャネル(11a)に流体的に接続されており、前記第2のポンプチャンバは、第2の入口チャネル(10b)および第2の出口チャネル(11b)に流体的に接続されており、前記入口チャネルは、それぞれの前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティを、それぞれの前記第1のポンプチャンバおよび前記第2のポンプチャンバに流体的に相互接続し、入口バルブ(13a、13b)が、前記入口チャネルと前記ポンプチャンバとの間に位置付けられ、前記キャビティからそれぞれの前記ポンプチャンバへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されており、前記出口チャネルは、前記ポンプチャンバを前記流体ディスペンサの出口ノズル(12)に相互接続し、出口バルブ(24a、24b)が、前記出口チャネルに位置付けられ、前記ポンプチャンバから前記出口ノズルへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されていることを特徴とする、押圧作動式ダブル流体ディスペンサ。
【請求項2】
前記キャップ部品(8)は、硬質上壁(26)を含み、前記ポンプ膜(18)は、前記硬質上壁の上方に突出している、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項3】
前記ポンプ膜、および前記キャップ部品の少なくとも上壁は、射出成形された多材料部品として一体的に形成され、前記キャップ部品の前記上壁は、硬質熱可塑性ポリマーで形成され、前記ポンプ膜は、熱可塑性弾性ポリマーで形成されている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項4】
前記分離壁は、前記ポンプ膜(18)と同じ材料で、前記ポンプ膜と一体的に形成された柔軟な部分(20a)と、前記ポンプ膜を形成しているポリマーよりも硬質である別のポリマーで形成された硬質部分(20b)と、を含む、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項5】
前記硬質部分は、前記キャップ部品の上壁と同じ材料で前記キャップ部品の前記上壁と一体的に形成されている、請求項4に記載の流体ディスペンサ。
【請求項6】
前記入口バルブは、前記ポンプ膜と同じ材料で作られている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項7】
前記出口バルブは、前記ポンプ膜と同じ材料で作られている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項8】
前記入口バルブは、多材料射出成形部品として前記キャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項9】
前記出口バルブは、多材料射出成形部品として前記キャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項10】
前記入口バルブは、前記キャップ部品の上壁(26)に固定されたアンカー部分(14)と一体的に形成された可撓性シールリップ(15)を含み、前記可撓性シールリップは、前記ベース部品(7)上に形成された前記入口チャネル(10a、10b)の上端部に設けられたバルブシート(27)を圧迫する、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項11】
前記分離壁(20)は、非作動位置から前記ポンプチャンバが空になる作動位置まで前記ポンプ膜が押されたときに弾性的につぶれるように構成された柔軟な部分(20a)を含む、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項12】
前記出口バルブは、前記出口チャネルの出口端部(29)を圧迫し、液体が前記ポンプチャンバから排出されるときに弾性的に付勢されるように構成された可撓性膜を含む、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項13】
前記キャップ部品は、前記出口バルブ前記可撓性膜を前記出口チャネルの前記出口端部から離して弾性変位させることができるように構成された、前記出口チャネルの前記出口端部(29)に対向する穴(36)または空間を含む、請求項12に記載の流体ディスペンサ。
【請求項14】
前記ベース部品の外面は、前記出口バルブの下流の排出された流体を前記流体ディスペンサの前記出口ノズル(12)に導くために、前記出口チャネルの前記出口端部を取り囲むくぼみまたは突起(38)として形成されたアフターバルブチャネル(37)を含む、請求項12に記載の流体ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの流体を同時に分配するための流体ディスペンサに関し、2つの流体はそれぞれ、別の容器部分に収容されている。流体ディスペンサは、例えばポンプ作動部分を手で押すことにより、押圧作動される。流体は、典型的には、さまざまな物質の液体およびゲルを含み得、これらは、使用前には分離したままであることが望ましく、使用時に予め決められた割合で互いに組み合わせられるべきである。このようなダブル流体ディスペンサは、例えば、クリーム、ゲル、ならびに医薬活性化合物、精油、賦形剤、植物衛生化合物、および他のそのような物質を含有する可能性がある他の物質の局所塗布のために、化粧品産業または製薬産業で使用され得る。
【背景技術】
【0002】
流体ディスペンサが、容器内の流体が消費された後に処分され得る、低コストの使い捨て装置であるべき多くの用途がある。使用前に2つの流体を分離したままにしておくことには、さまざまな理由があり得、例えば、分配される前に流体間の相互作用を回避することで貯蔵期間を延ばすため、または、一緒に溶けない物質の適切な混合もしくは投与量を確保するため、である。流体ディスペンサが手で使用可能であるべき、多くの用途がある。
【0003】
低コストの押圧作動式ダブル流体ディスペンサが一般に知られている。従来の設計では、典型的には、2つのポンプ機構があり、これらは、各容器から流体を引き出し、2つの流体を、例えば、共通の出口までのY字型の導管を介して、合流させ、共通の出口において、両方の流体が同時に分配される。多くの従来のシステムは、非常に多くの部品を必要とするため、製造コストと組立コストが増加し、また、ディスペンサがかさばる。さらに、多くの従来のディスペンサは、ばねおよびバルブのための金属部品を、例えばプラスチックのハウジングの中に含んでいる場合があり、これは、使用後に使い捨て構成要素をリサイクルするのには理想的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のことを考慮すると、本発明の目的は、製造するのに経済的でありながら、2つの流体を予め決められた容積比で確実かつ正確に分配することを可能にする、押圧作動式ダブル流体ディスペンサを提供することである。
【0005】
コンパクトな押圧作動式ダブル流体ディスペンサを提供することが有利である。
【0006】
製造から処分に至るまで環境への影響を最小限に抑える押圧作動式ダブル流体ディスペンサを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1に記載の手で作動される流体ディスペンサを提供することによって達成された。従属請求項には、本発明のさまざまな有利な実施形態が記載されている。
【0008】
本明細書で開示されるのは、押圧作動式ダブル流体ディスペンサであり、これは、第1のキャビティと、第1のキャビティから分離された第2のキャビティと、を有する容器と、第1のキャビティおよび第2のキャビティを覆って容器に組み付けられる一般的なキャップの形態の分配ポンプ装置と、を含み、分配ポンプ装置は、ベース部品と、非圧縮状態から圧縮状態まで指またはプレス装置によって移動可能な弾性可撓性ポンプ膜を含むポンプ機構を含むキャップ部品と、を含む。ポンプ機構は、ポンプ膜の下側から延び、ベース部品のスロットに挿入される分離壁をさらに含み、分離壁は、第1のポンプチャンバを第2のポンプチャンバから分離し、第1および第2のポンプチャンバはともに、ポンプ膜より下方の容積内に設けられる。第1のポンプチャンバは、第1の入口チャネルおよび第1の出口チャネルに流体的に接続されており、第2のポンプチャンバは、第2の入口チャネルおよび第2の出口チャネルに流体的に接続されている。入口チャネルは、それぞれの第1および第2のキャビティを、それぞれの第1および第2のポンプチャンバに流体的に相互接続する。バルブが、入口チャネルとポンプチャンバとの間に位置付けられ、キャビティからそれぞれのポンプチャンバへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されている。出口チャネルは、ポンプチャンバをディスペンサの出口ノズルに相互接続し、出口バルブが、出口チャネルに位置付けられ、ポンプチャンバから出口ノズルへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されている。
【0009】
有利な実施形態では、キャップ部品は、硬質上壁を含み、ポンプ膜は、硬質上壁の上方に突出している。
【0010】
有利な実施形態では、ポンプ膜、およびキャップ部品の少なくとも上壁は、射出成形された多材料部品として一体的に形成され、キャップハウジング上壁(cap housing top wall)は、硬質熱可塑性ポリマーで形成され、シール膜は、熱可塑性弾性ポリマーで形成される。
【0011】
有利な実施形態では、分離壁は、ポンプ膜と同じ材料で、ポンプ膜と一体的に形成された柔軟な部分と、シール膜のポリマーよりも硬質である別のポリマーで形成された硬質部分と、を含む。
【0012】
有利な実施形態では、硬質部分は、キャップ部品の上壁と同じ材料でキャップ部品の上壁と一体的に形成される。
【0013】
有利な実施形態では、入口バルブは、ポンプ膜と同じ材料で作られている。
【0014】
有利な実施形態では、出口バルブは、ポンプ膜と同じ材料で作られている。
【0015】
有利な実施形態では、入口バルブは、多材料射出成形部品としてキャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている。
【0016】
有利な実施形態では、出口バルブは、多材料射出成形部品としてキャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている。
【0017】
有利な実施形態では、入口バルブは、キャップ部品の上壁に固定されたアンカー部分と一体的に形成された可撓性シールリップを含み、可撓性シールリップは、ベース部品上に形成された入口チャネルの上端部に設けられたバルブシートを圧迫する。
【0018】
有利な実施形態では、分離壁は、非作動位置からポンプチャンバが空になる作動位置までポンプ膜が押されたときに弾性的につぶれるように構成された柔軟な部分を含む。
【0019】
有利な実施形態では、出口バルブは、出口チャネルの出口端部を圧迫し、液体がポンプチャンバから排出されるときに弾性的に付勢されるように構成された可撓性膜を含む。
【0020】
有利な実施形態では、キャップ部品は、バルブの可撓性膜を出口オリフィスから離して弾性変位させることができるように構成された、出口オリフィスに対向する穴または空間を含む。
【0021】
有利な実施形態では、ベース部品の外面は、出口バルブの下流の排出された流体を流体ディスペンサの出口ノズルに導くために、出口オリフィスを取り囲むくぼみまたは突起として形成されたアフターバルブチャネル(after-valve channel)を含む。
【0022】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による流体ディスペンサの斜視分解組立図である。
図2図1の流体ディスペンサの分配ポンプ装置部分の分解組立斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による流体ディスペンサの斜視断面図である。
図4a】本発明の実施形態による流体ディスペンサを通る断面図であり、断面図は垂直平面を通っている。
図4b】本発明の実施形態による流体ディスペンサを通る断面図であり、断面図は垂直平面を通っている。
図4c図4aの線4c-4cを通る断面図である。
図5】本発明の一実施形態による流体ディスペンサの、分配ポンプ装置部分のキャップ部品を取り外した状態の斜視断面図である。
図6】本発明の一実施形態による流体ディスペンサの分配ポンプ装置のキャップ部品の底面側から見た斜視図である。
図7】完全に組み立てられた流体ディスペンサの図5と同様の断面図である。
図8】流体ディスペンサの分配ポンプ装置の斜視詳細断面図であり、特にディスペンサの出口を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図を参照すると、容器2と、容器2に組み付けられた分配ポンプ装置6と、を含む、押圧で使用可能なダブル流体ディスペンサ1が図示されている。容器2は、第1の流体を収容するための第1のキャビティ4aと、第2の流体を収容するための第2のキャビティ4bと、を含み、第1および第2のキャビティは、同一の容積を有し得るか、または、キャビティのうちの一方は、第2の流体に対する第1の流体の分配比率に応じて、他方のキャビティよりも小さい容積を有し得る。例えば、特定の用途では、第1の流体と第2の流体との比率は、1対1、または1対2、または1対3、または分配される流体の種類に応じて特別に構成されたさまざまな他の比率とすることができる。
【0025】
背景のセクションで述べたように、流体は、異なる用途、典型的には化粧品または医薬品産業における局所的用途のために、さまざまな組成および粘度を含み得る。
【0026】
容器2は、例えば、周辺ハウジング部品31に相補的なロックショルダーを有する分配ポンプ装置6を固定するための底部ショルダー30を画定するフランジを形成するリム3を有する開口側を含む。ディスペンサ1は、ガスケット5をさらに含み、これは、分配ポンプ装置6とリム3の上方部分との間に挟まれ、例えば、ガスケット5受容くぼみ32内に嵌合し、ガスケット5に設けられたオリフィスを通って延びる供給チューブ9a、9bを介して分配ポンプ装置6にキャビティを相互接続する流体接続を除き、第1のキャビティ4aおよび第2のキャビティ4bを密封的に閉鎖する。
【0027】
分配ポンプ装置6は、ベース部品7と、ベース部品7とは別個に形成され、これに組み付けられるキャップ部品8と、を含む。
【0028】
ベース部品7は、入口チャネル10aを有する第1の供給チューブ9aと、入口チャネル10bを有する第2のチューブ9bと、を含む。第1および第2の供給チューブは、対応する第1のキャビティ4aおよび第2のキャビティ4b内に延び、図示のように垂直に配置されたときにほぼ空になるまでキャビティから液体を送り出すために、キャビティの底面34に近接する端部33まで延びている。換言すれば、ディスペンサ1は、実質的に水平な面に置かれ、使用者が流体ディスペンサ1の上部を指で押圧することによって作動されることが意図されるが、分配される流体は、出口ノズル12を介して横方向に、例えば、多くの分配装置でそれ自体周知であるように、概ね水平方向に、排出される。作動は、ポンピング動作を行うために流体ディスペンサの上部を押す可動ピストンまたは他のタイプの押圧機構を有する機械的または電気的な装置によって行われてもよい。
【0029】
ベース部品7は、第1の出口チャネル11aと、第2の出口チャネル11bと、をさらに含む。
【0030】
キャップ部品8は、第1の入口バルブ13aおよび第2の入口バルブ13bと、ポンプ機構16と、第1の出口バルブ24aおよび第2の出口バルブ24bと、を含む。
【0031】
ポンプ機構16は、弾性ポンプ膜18と、ポンプ膜の下側から延び、ポンプ膜の下の容積を第1のポンプチャンバ22aと第2のポンプチャンバ22bとに分離する分離壁20と、を含む。分離壁は、ベース部品7に設けられたスロット35内に延びており、スロットは、分離壁を挟んで第1のポンプチャンバ22aを第2のポンプチャンバ22bから密封的に分離するように、分離壁に密封的に係合している。分離壁は、ベース部品の受容スロット35に挿入される硬質部分20bと、ポンプ膜18がベース部品に向かって変形され、解放されたときに次のポンプサイクルに備えて自然な位置に跳ね返ることを可能にする、柔軟な部分20aと、を含む。
【0032】
ポンプ膜18は、分配される流体と適合性があり、かつ、作動時に膜がベース部品に対して圧迫され得るのを保証するのに十分な弾性率を有する、弾性ポリマー材料で形成され得、その自然な位置に戻り、付勢されていない自然な位置に弾性的に戻るときにそれぞれの流体キャビティ4a、4bから流体を引き出すのに十分なばね力を有する。ポンプ膜に適した弾性ポリマーの例としては、熱可塑性エラストマーおよびシリコーンゴムが挙げられる。
【0033】
図に示されるように、膜は、キャップ部品の硬質上壁の上方に突出する一般的な球形ドーム形状を有していてもよいが、周囲の硬質上面の上方に突出する他のさまざまな非球形形状が提供されてもよく、例えば、膜を取り囲むキャップ表面の硬質部分の上方に突出し、使用者が膜を、典型的には指で押し下げるにつれて変動する容積を有するポンプチャンバ容積を膜の下方に提供する、テーパー付き円錐形、円筒形、または不規則な形状が提供される。
【0034】
分離壁の柔軟な部分20aは、有利には、ポンプ膜18と一体的に形成され、同じ材料で作られ得る。分離壁の硬質部分20bは、キャップ部品8の上壁26と一体的に形成され、キャップ部品の硬質上壁と同じポリマー材料で形成され得る。キャップ部品の硬質部分は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)のような、分配される液体に適合するさまざまな熱可塑性ポリマーで作られ得る。
【0035】
特に、シール膜の材料、ならびにキャップの上壁およびキャップの他の硬質部品の材料は、有利には、多構成要素成形プロセスで一緒に射出成形され得るポリマー材料で作られ得る。2構成要素射出成形プロセスは、それ自体、さまざまな用途で知られているが、本発明の範囲におけるこのようなプロセスは、構成要素数を削減し、組み立てを簡素化し、分配ポンプ装置の嵩張りを低減する上で大きな利点をもたらす。
【0036】
第1のポンプチャンバ22aおよび第2のポンプチャンバ22bはそれぞれ、対応する入口バルブ13a、13bを介して対応する第1の入口チャネル10aおよび第2の入口チャネル10bの上方に配置され、ポンプ膜が、ベース部品の上面に対して圧迫されたつぶれた位置から移動すると、液体は、第1のポンプチャンバ22aおよび第2のポンプチャンバ22bの容積に対応する割合でそれぞれの第1のキャビティ4aおよび第2のキャビティ4bから引き出される。入口バルブは、有利には、弾性ポリマーで、好ましくはポンプ膜18と同じ材料で作られた、例えば傘バルブまたはベルビルバルブ(umbrella or Belleville valve)に類似した、可撓性フラップの形態とすることができる。よって、入口バルブ13a、13bのエラストマー材料は、前述したように、2構成要素射出成形プロセスでキャップ部品8の硬質ポリマー部分と共に同様に形成され得る。しかし、変形例では、入口バルブは、ポンプ膜の材料とは異なる材料で作られてもよい。
【0037】
図示の実施形態では、入口バルブは、中央のアンカー部分またはステム14と、そこから延びる可撓性の傘状または円盤状のシールリップ15と、を含み、シールリップ15は、閉鎖位置では、入口チャネルが形成された供給チューブの上端部のバルブシート27を圧迫する。液体がポンプチャンバ内に引き込まれているとき、バルブのシールリップ15がバルブシート27から持ち上がり、液体が容器のそれぞれのキャビティ4a、4bからそれぞれのポンプキャビティ22a、22bに流れ込むことを可能にする。
【0038】
図示された実施形態で見ることができるように、分離壁20は、ポンプチャンバの一方22aが他方のポンプチャンバ22bよりも大きな容積を有するように、非対称に位置付けられ得、相対的な容積は、第1および第2のキャビティから分配される液体の比率を定める。第1および第2のキャビティは、ポンプ比率に実質的に対応する容積を備えることができるが、実質的に等価な容積を、異なる量の液体で満たしたものを提供することも可能である。
【0039】
分離壁20の柔軟な部分20aは、ポンプチャンバ22a、22bが最大限の容積を有する非作動位置に弾性ポンプ膜18を押し戻すのに役立つ弾性付勢力を提供する。
【0040】
図3および図5で最もよく見ることができるように、例えばスロット上に面取りされた空の部分を設けることによって、スロット35に隣接するベース部品の上面28にくぼみ40を設けることができ、これにより、ポンプ膜18が完全に作動した位置に押し下げられたときに、分離壁の可撓性部分20aの一部がつぶれて入ることができる。
【0041】
供給チューブは、硬質容器内の実質的に一定の容積のキャビティ内に延びる実質的に硬質のチューブとして示されているが、本発明の範囲内で、分配される液体が封入されていて、液体が抽出されるにつれてつぶれる、薄い可撓性容器バッグを提供することが可能である。このような解決策は、例えば、流体が分配されているときに容器のキャビティに入る空気による酸化または汚染を避けることが望ましい場合に使用され得る。このような構成では、供給チューブを省略するか、または、かなり短くすることができる。
【0042】
硬質容器および一定容積のキャビティを有する図示されるような実施形態では、空気は、バルブによって、または、一般に密封的に嵌め合わされ得るが、空気を容器に入れるいくらかの能力を有する分配ポンプ装置6と容器2との間の界面におけるガス漏れによって、容器のキャビティに入ることができる。
【0043】
第1のポンプチャンバ22aおよび第2のポンプチャンバ22bは、ポンプチャンバを出口バルブ24a、24bを介して出口ノズル12に相互接続するそれぞれの出口チャネル11a、11bにさらに接続されている。出口ノズル12は、単一の出口オリフィスを有し、ここで、2つの出口チャネル11b、11aから来る流体が混合され、同時に単一のノズルオリフィスから分配される。
【0044】
出口バルブ24a、24bは、出口チャネル11a、11bのそれぞれの出口オリフィス29を覆い、ポンプ機構16の流体排出動作中に流体圧力によって出口チャネルオリフィス29から離れて弾性的に曲がる、可撓性弾性膜またはフラップの形態で提供され得る。出口オリフィス29は、バルブ閉鎖位置で弾性フラップが圧迫する突起によって囲まれ得る。出口オリフィス29に対向する穴36または空間は、出口オリフィスから離れるバルブ膜の弾性変位を可能にするためにキャップ部品に設けられ得る。
【0045】
排出された流体を出口ノズル12に導くために、アフターバルブチャネル37が設けられている。アフターバルブチャネル37は、ベース部品の外面にくぼみとして設けられるか、または、出口バルブ24a、24bの弾性膜を密封的に圧迫する、出口オリフィスおよび出口ノズルオリフィスを囲む突起38を設けることによって設けられ得る。
【0046】
出口バルブ弾性部材は、有利には、ポンプ膜の材料と類似または同一の弾性ポリマーで作られ、多構成要素射出成形プロセスでキャップ部品の硬質ポリマー部分と共に射出成形されるように構成され得る。しかし、変形例では、出口バルブは、ポンプ膜の材料とは異なる材料で作られてもよい。
【0047】
ポンプ膜と、入口バルブまたは出口バルブの可撓性構成要素とについて、同じ材料を有することが好ましいが、本発明の範囲内で、例えば3構成要素成形プロセスを使用して、バルブとポンプ膜とに異なる材料を使用することも可能であろう。とはいえ、使用される材料の数を減らし、コスト削減のため2構成要素成形プロセスを有することが好ましい。
【0048】
本発明の範囲内で、シールをキャップ部品とは別に製造し、接着、溶接によって、または単に機械的固定、例えば対応するキャビティに圧入する、ある弾性を有するスタッドを有することによって、シールをキャップ部品に組み付けることも可能である。このような構成でも、ポンプ膜および分離壁をキャップ部品の上壁26と2構成要素射出成形することによってもたらされる利点の恩恵を受けることができる。
【0049】
キャップ部品8は、上壁と、そこから延びる実質的に円筒形の周壁27と、を有し、ベース部品上にキャップ部品を軸方向に挿入することによってベース部品7上に組み立てることができる一般的なキャップ形状を形成することができる。キャップ部品をベース部品にロックするために、ラッチ39もしくは他の固定機構、または溶接部もしくは接着部を設けてもよい。
【0050】
分配ポンプ装置6は、全体として、例えば、容器2のリム3上に適合するベース部品から延びる実質的に円筒形の周壁31を有することにより、一般的なキャップ形状を有することもできる。しかし、本発明の範囲内で、リムは円筒状の円形形状を有する必要はなく、例えば楕円形または正方形または多角形または不規則な形状を有していてもよく、そうすると、ベース部品は、容器上に適合するように対応する形状を有することに留意されたい。
【0051】
〔特徴部のリスト〕
流体ディスペンサ1
容器2
リム3
外側フランジ
底部ショルダー30
ガスケット設置くぼみ32
第1の容器キャビティ4a
第2の容器キャビティ4b
底面34
ガスケット5
ポンプ6
ベース部品7
上面28
周壁31
第1の供給チューブ9a
入口チャネル10a
端部33
第2の供給チューブ9b
入口チャネル10b
端部33
スロット35
第1の出口チャネル11a
第2の出口チャネル11b
チャネル出口オリフィス29
出口12
バルブシート27
キャップ部品8
入口バルブ13
シールリップ15
アンカー部分(ステム)14
ポンプ機構16
ポンプ膜18
分離壁20
柔軟な部分20a
硬質部分20b
第1のポンプチャンバ22a
第2のポンプチャンバ22b
出口バルブ24
アンカー部分
シールリップ
上壁26
周壁27
バルブ膜変位穴36
アフターバルブチャネル37
シール突起38
固定ラッチ39
カバー30
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 押圧作動式ダブル流体ディスペンサ(1)であって、
第1のキャビティ(4a)と、前記第1のキャビティ(4a)から分離された第2のキャビティ(4b)と、を有する容器(2)と、
前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティを覆って前記容器に組み付けられる一般的なキャップの形態の分配ポンプ装置(6)と、を含み、
前記分配ポンプ装置は、ベース部品(7)と、非圧縮状態から圧縮状態まで押圧で移動可能な弾性可撓性ポンプ膜(18)を含むポンプ機構(16)を含むキャップ部品(8)と、を含み、
前記ポンプ機構(16)は、前記ポンプ膜(18)の下側から延び、前記ベース部品のスロットに挿入される分離壁(20)をさらに含み、前記分離壁は、第1のポンプチャンバ(22a)を第2のポンプチャンバ(22b)から分離し、前記第1のポンプチャンバおよび前記第2のポンプチャンバはともに、前記ポンプ膜(18)より下方の容積内に設けられ、前記第1のポンプチャンバは、第1の入口チャネル(10a)および第1の出口チャネル(11a)に流体的に接続されており、前記第2のポンプチャンバは、第2の入口チャネル(10b)および第2の出口チャネル(11b)に流体的に接続されており、前記入口チャネルは、それぞれの前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティを、それぞれの前記第1のポンプチャンバおよび前記第2のポンプチャンバに流体的に相互接続し、バルブ(13)が、前記入口チャネルと前記ポンプチャンバとの間に位置付けられ、前記キャビティからそれぞれの前記ポンプチャンバへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されており、前記出口チャネルは、前記ポンプチャンバを前記ディスペンサの出口ノズル(12)に相互接続し、出口バルブ(24a、24b)が、前記出口チャネルに位置付けられ、前記ポンプチャンバから前記出口ノズルへの方向にのみ流体の流れを可能にするように構成されていることを特徴とする、押圧作動式ダブル流体ディスペンサ。
(2) 前記キャップ部品(8)は、硬質上壁(26)を含み、前記ポンプ膜(18)は、前記硬質上壁の上方に突出している、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(3) 前記ポンプ膜、および前記キャップ部品の少なくとも上壁は、射出成形された多材料部品として一体的に形成され、前記キャップハウジング上壁は、硬質熱可塑性ポリマーで形成され、前記シール膜は、熱可塑性弾性ポリマーで形成されている、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(4) 前記分離壁は、前記ポンプ膜(18)と同じ材料で、前記ポンプ膜と一体的に形成された柔軟な部分(20a)と、前記シール膜の前記ポリマーよりも硬質である別のポリマーで形成された硬質部分(22b)と、を含む、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(5) 前記硬質部分は、前記キャップ部品の上壁と同じ材料で前記キャップ部品の前記上壁と一体的に形成されている、実施態様4に記載の流体ディスペンサ。
【0053】
(6) 前記入口バルブは、前記ポンプ膜と同じ材料で作られている、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(7) 前記出口バルブは、前記ポンプ膜と同じ材料で作られている、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(8) 前記入口バルブは、多材料射出成形部品として前記キャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(9) 前記出口バルブは、多材料射出成形部品として前記キャップ部品と一体的に形成された射出成形構成要素で作られている、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(10) 前記入口バルブは、前記キャップ部品の上壁(26)に固定されたアンカー部分(14)と一体的に形成された可撓性シールリップ(15)を含み、前記可撓性シールリップは、前記ベース部品(7)上に形成された前記入口チャネル(10a、10b)の上端部に設けられたバルブシート(27)を圧迫する、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
【0054】
(11) 前記分離壁(20)は、非作動位置から前記ポンプチャンバが空になる作動位置まで前記ポンプ膜が押されたときに弾性的につぶれるように構成された柔軟な部分(20a)を含む、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(12) 前記出口バルブは、前記出口チャネルの出口端部(29)を圧迫し、液体が前記ポンプチャンバから排出されるときに弾性的に付勢されるように構成された可撓性膜を含む、実施態様1に記載の流体ディスペンサ。
(13) 前記キャップ部品は、前記バルブの可撓性膜を前記出口オリフィスから離して弾性変位させることができるように構成された、前記出口オリフィス(29)に対向する穴(36)または空間を含む、実施態様12に記載の流体ディスペンサ。
(14) 前記ベース部品の外面は、前記出口バルブの下流の排出された流体を前記流体ディスペンサの出口ノズル(12)に導くために、前記出口オリフィスを取り囲むくぼみまたは突起(38)として形成されたアフターバルブチャネル(37)を含む、実施態様12に記載の流体ディスペンサ。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8