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特許7581453情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20241105BHJP
   F16D 55/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B66B5/02 W
F16D55/06 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023150051
(22)【出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 謙斗
(72)【発明者】
【氏名】植野 研
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536079(JP,A)
【文献】特開2020-085112(JP,A)
【文献】国際公開第2023/026411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を具備し、
前記時系列データは、前記機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータであり、
前記機器は、電磁ブレーキを含む
情報処理装置。
【請求項2】
前記電磁ブレーキは、昇降機に搭載される請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記動作データは、前記電磁ブレーキのブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形を表すデータである請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記時系列データは、前記複数の極値点間の距離のうちの上位4つの距離が計算された極値点に基づいて分割され、
前記動作データは、前記分割された時系列データから抽出される
請求項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記時系列データに対して、前記時系列データに生じているノイズを除去する前処理を実行する前処理手段と、
前記前処理が実行された時系列データの複数の極値点を特定する特定手段と
を更に具備する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記時系列データ上の第1時点の前後に位置する複数の第2時点の各々において計測された物理量よりも前記第1時点において計測された物理量が大きい場合及び前記複数の第2時点の各々において計測された物理量よりも前記第1時点において計測された物理量が小さい場合に、前記第1時点を前記極値点として特定する特定手段を更に具備する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記抽出された動作データに基づいて、前記機器の状態を診断する診断手段を更に具備する請求項1~のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抽出された動作データに基づいて、前記機器の動作に関する特徴量を計算する計算手段を更に具備し、
前記診断手段は、前記計算された特徴量に基づいて前記機器の状態を診断する
請求項記載の情報処理装置。
【請求項9】
電磁ブレーキが搭載された昇降機と、
前記電磁ブレーキの状態を診断するために用いられる情報処理装置と
を具備し、
前記情報処理装置は、前記電磁ブレーキが動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記電磁ブレーキの特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を含む
情報処理システム。
【請求項10】
機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出することを具備し、
前記時系列データは、前記機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータであり、
前記機器は、電磁ブレーキを含む
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段として機能させ、
前記時系列データは、前記機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータであり、
前記機器は、電磁ブレーキを含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、昇降路内を昇降動作する昇降機(エレベータ)には電磁ブレーキのような機器が搭載されている。
【0003】
このような機器の点検(状態監視)は技術者によって行われることが一般的であり、当該機器の点検においては、例えば機器の動作音の確認または器具を用いた当該機器を構成する部品の測定等が行われる。
【0004】
これに対して、機器の点検を自動で行う場合には、例えば機器が動作する際に当該機器に供給される電流のような物理量を計測(検出)し、当該物理量から機器の状態を診断することが行われている。
【0005】
しかしながら、機器が動作する際に計測される物理量は機器の経年劣化や当該機器に対する調整作業(保守作業)等によって変化する場合が多く、当該物理量に基づいて機器の状態を適切に診断することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-060099号公報
【文献】特許第5653537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、機器の状態を診断するために有用なデータを得ることが可能な情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る情報処理装置は、機器が動作する際に検出された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を具備する。前記時系列データは、前記機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータである。前記機器は、電磁ブレーキを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図。
図2】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】情報処理装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図4】時系列データの一例を示す図。
図5】時系列データにおいて特定される複数の極値点の一例を示す図。
図6】複数の極値点間の距離の一例を説明するための図。
図7】時系列データと複数の極値点間の距離との対応関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
本実施形態に係る情報処理装置は、例えば昇降路内を昇降動作する昇降機(エレベータ)に搭載されている電磁ブレーキのような機器(以下、対象機器と表記)の状態を診断するために用いられる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置10は、データ入力部11、パラメータ入力部12、前処理部13、極値点特定部14、距離計算部15、データ分割部16、データ抽出部17、特徴量計算部18、状態診断部19及び出力部20を含む。
【0012】
データ入力部11は、対象機器が動作する際に計測される物理量の時系列データを入力する。なお、本実施形態における時系列データは、時間の経過に従って複数の時点において計測された物理量(の変化)を表すデータであり、例えば対象機器を動作させるために当該対象機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータ等を含む。
【0013】
パラメータ入力部12は、例えば極値点特定部14の処理において用いられるパラメータを入力する。
【0014】
前処理部13は、データ入力部11によって入力された時系列データに対して、当該時系列データに生じているノイズを除去する前処理を実行する。
【0015】
極値点特定部14は、パラメータ入力部12によって入力されたパラメータを用いて、前処理部13によって前処理が実行された時系列データの複数の極値点を特定する。なお、極値点とは、時系列データにおける一定の範囲(期間)内で最大値(極大値)となる時点及び当該一定の範囲(期間)内で最小値(極小値)となる時点をいう。
【0016】
具体的には、例えば時系列データ上の第1時点の前後に位置する複数の第2時点よりも当該第1時点において計測された物理量が大きい(つまり、第1及び第2時点において計測された物理量の中で当該第1時点において計測された物理量が最大値となる)場合、極値点特定部14は、当該第1時点を極値点(極大値点)として特定する。同様に、例えば時系列データ上の第1時点において計測された物理量が小さい(つまり、第1及び第2時点において計測された物理量の中で当該第1時点において計測された物理量が最小値となる)場合、極値点特定部14は、当該第1時点を極値点(極小値点)として特定する。換言すれば、極値点とは、時系列データ(波形)において接線の傾きが0となる物理量(極大値または極小値)が計測された時点であるということができる。
【0017】
なお、極値点特定部14は、時系列データ上の各時点を上記した第1時点とする処理を繰り返し実行することによって、時系列データに存在する複数の極値点を特定することができる。
【0018】
距離計算部15は、極値点特定部14によって特定された複数の極値点に基づいて、時系列データにおける当該複数の極値点間の距離を計算する。なお、時系列データは複数の時点において計測された物理量を表すデータであるところ、複数の極値点間の距離とは、一方の極値点(時点)と他方の極値点(時点)との時間的な差分を意味する。
【0019】
データ分割部16は、距離計算部15によって計算された距離に基づいて、時系列データを分割する。具体的には、データ分割部16は、距離計算部15によって上位の距離(つまり、長い距離)が計算された極値点を分割点(基準)として時系列データを複数の区間に分割する。
【0020】
データ抽出部17は、データ分割部16によって分割された時系列データから対象機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する。具体的には、データ分割部16によって時系列データが複数の区間に分割されている場合、データ抽出部17は、当該複数の区間のうちの少なくとも1つの区間において検出されている時系列データを動作データとして抽出する。
【0021】
特徴量計算部18は、データ抽出部17によって抽出された動作データに基づいて、対象機器の動作に関する特徴量を計算する。
【0022】
状態診断部19は、特徴量計算部18によって計算された特徴量に基づいて、対象機器の状態を診断する。
【0023】
出力部20は、状態診断部19による診断結果を出力する。なお、状態診断部19による診断結果には、例えば対象機器が正常または異常であること等が含まれる。
【0024】
図2は、情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す。図2に示すように、情報処理装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103、入力デバイス104、表示デバイス105及び通信デバイス106等を備える。
【0025】
CPU101は、情報処理装置10内の各コンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサから構成されていてもよいし、複数のプロセッサから構成されていてもよい。CPU101は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU101によって実行されるプログラムには、オペレーティングシステム(OS)及び各種アプリケーションプログラム等が含まれる。
【0026】
入力デバイス104は、各種データを入力するように構成されたデバイスであり、例えばマウス及びキーボード等を含む。表示デバイス105は、各種データを表示するように構成されたデバイスであり、例えばディスプレイ等を含む。通信デバイス106は、外部装置と例えば有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0027】
図2においては不揮発性メモリ102及び主メモリ103のみが示されているが、情報処理装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のような他の記憶装置を更に備えていてもよい。
【0028】
本実施形態において、図1に示す各部11~20の一部または全ては、図2に示すCPU101に所定のプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。このプログラムは、ネットワークを介して情報処理装置10にダウンロードされてもよいし、記憶媒体に格納されて頒布されてもよい。
【0029】
ここでは各部11~20の一部または全てがソフトウェアによって実現されるものとして説明したが、各部11~20の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【0030】
以下、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の処理手順の一例について説明する。
【0031】
以下の説明においては、対象機器が昇降機に搭載される電磁ブレーキであるものとして説明する。なお、電磁ブレーキは、電流または電圧を供給することによって生じる電磁力によりブレーキを作用させるように動作する機器である。
【0032】
データ入力部11は、時系列データを入力する(ステップS1)。上記したように対象機器が電磁ブレーキである場合、ステップS1において入力される時系列データは、例えば当該電磁ブレーキに供給される電流の波形(ブレーキ電流波形)を表すデータである。この場合、時系列データは、例えば電磁ブレーキに供給される電流を計測する電流センサから入力される。なお、ステップS1においては、予め保持(蓄積)されている時系列データのうちの例えば入力デバイス104を用いて指定された時系列データが入力されてもよい。
【0033】
ここで、図4は、ステップS1において入力される時系列データの一例を示す。図4に示すように、時系列データは、複数の時点の各々において計測された電流値を含むブレーキ電流波形を表している。
【0034】
以下の説明においては時系列データがブレーキ電流波形を表すデータであるものとして説明するが、ステップS1において入力される時系列データは、電磁ブレーキに供給される電圧の波形(ブレーキ電圧波形)を表すデータであってもよい。
【0035】
ステップS1の処理が実行されると、前処理部13は、当該ステップS1において入力された時系列データに対して前処理を実行する(ステップS2)。なお、ステップS2において実行される前処理は、例えば時系列データに生じているノイズを除去するための処理であればよい。具体的には、前処理としては、例えば移動平均フィルタ、LOESS平滑化またはHodrick-Prescottフィルタ等の処理が考えられる。ステップS2の処理が実行されることによって、時系列データは、ノイズが低減されたデータに加工される。
【0036】
なお、本実施形態においては時系列データに生じているノイズを除去するために前処理が実行されるが、当該時系列データに生じているノイズが少ないと想定される場合には、ステップS2の処理は省略されてもよい。換言すれば、前処理を実行するか否かは、例えば電磁ブレーキが設置される環境等従って決定されてもよい。
【0037】
ここで、上記したパラメータ入力部12によって入力されたパラメータが極値点特定部14内に保持されているものとする。この場合、極値点特定部14は、当該極値点特定部14内に保持されているパラメータを用いて、時系列データの複数の極値点を特定する(ステップS3)。
【0038】
以下、ステップS3の処理について説明する。まず、時系列データの長さ(電流値が計測された時間的な長さ)をTとし、当該時系列データをxとする。更に、時系列データxにおける電流値が計測された各時点をt,t,…,tとし、当該各時点t,t,…,tにおいて計測された電流値をx,x,…,xとする。また、極値点を特定するためのパラメータをLとする。このパラメータLが上記したパラメータ入力部12によって入力されたパラメータ(極値点特定部14内に保持されているパラメータ)に相当する。なお、パラメータLは、時間的は範囲を表す。パラメータLは、適切に極値点を特定することができるように、実際に取得された過去の時系列データ等を解析することによって予め定められているものとする。
【0039】
ここで、上記した各時点t,t,…,tのうちのk番目の時点tに着目し、当該時点tの前後のパラメータLの範囲において計測された電流値(つまり、部分時系列データ)をxk-L,…,x,…,xk+Lと表現するものとする。この部分時系列データ(における電流値xk-L,…,x,…,xk+L)の中で電流値xが最大値である場合、当該電流値xを極大値とみなし、時点tを極値点(極大値点)として特定することができる。一方、この部分時系列データ(における電流値xk-L,…,x,…,xk+L)の中で電流値xが最小値である場合、当該電流値xを極小値とみなし、時点tを極値点(極小値点)として特定することができる。
【0040】
ここでは時点tに着目して実行される処理について説明したが、ステップS3においては、当該処理を各時点t,t,…,tの全てについて実行することによって、時系列データに存在する全ての極値点(つまり、時系列データ全体の極値点)を特定することができる。
【0041】
図5は、図4に示す時系列データにおいて特定される複数の極値点の一例を示す。図5に示すように、例えば時点tにおいて計測された電流値xは、図示しない当該時点tの前後のパラメータLの範囲にある他の電流値よりも値が大きいため、当該時点tは極値点(極大値点)として特定されている。詳しい説明においては省略するが、時点t、t及びtについても同様に極値点として特定されている。
【0042】
なお、時系列データには電流計測時の微小な電磁ノイズが生じているため、例えば時点t1~taのような定常電流が供給されるような区間(期間)においては極値点が密に特定される。
【0043】
一方、電流値が大きく変化する時点t~tのような区間(期間)においては、無視することができる程度に電磁ノイズの影響が小さいため、極値点が特定されにくい(つまり、極値点が疎に特定される)。
【0044】
なお、本実施形態において説明した極値点の特定方法は一例であり、当該極値点は、他の方法で特定されてもよい。
【0045】
再び図3に戻ると、距離計算部15は、ステップS3において特定された複数の極値点間の距離を計算する(ステップS4)。なお、ステップS4においては、時系列データにおいて特定された複数の極値点のうちの隣接する2つの極値点間の距離が計算される。
【0046】
極値点間の距離においては様々な定義が考えられるが、例えば上記した図5において説明した時点t及びtが極値点であるものとすると、ステップS4において計算される2つの極値点間の距離は、t-tにより計算されるものとする。
【0047】
なお、この場合における2つの極値点間の距離は、時点tと時点tとの間の期間において計測されている電流値の数であってもよい。つまり、時点tにおいてi番目の電流値が計測されており、時点tにおいてj番目の電流値が計測されている場合には、極値点間の距離は、j-iにより計算されてもよい。
【0048】
また、本実施形態において説明する時点t等は、電流値が計測された時刻等であってもよいし、時系列データにおいて電流値が計測された順番等を表すものであってもよい。
【0049】
ここで、図6を参照して、図5において説明した複数の極値点間の距離の一例について説明する。図6においては、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。また、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。更に、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。また、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。更に、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。また、例えば隣接する極値点として特定された時点t及びtに関して、当該極値点間の距離であるt-tが時点tに対応づけてプロットされている。詳しい説明については省略するが、他の極値点間の距離についても同様である。
【0050】
図6に示す例では、極値点間の距離のピークが4つ存在することがわかる。具体的には、4つのピーク(つまり、上位4つの距離)は、時点tに対応づけてプロットされている時点t及びt間の距離、時点tに対応づけてプロットされている時点t及びt間の距離、時点tに対応づけてプロットされている時点t及びt間の距離、時点tに対応づけてプロットされている時点t及びt間の距離である。
【0051】
再び図3に戻ると、データ分割部16は、ステップS4において計算された距離(のピーク)に基づいて、時系列データを分割する(ステップS5)。
【0052】
データ抽出部17は、ステップS5において時系列データが分割された結果に基づいて、電磁ブレーキの特徴的な動作としてブレーキ吸引動作及びブレーキ釈放動作を表す動作データ(部分時系列データ)を抽出する(ステップS6)。なお、ブレーキ吸引動作とは、例えば電流(または電圧)の供給を開始することによってブレーキを作用させる動作をいう。一方、ブレーキ釈放動作とは、例えば電流(または電圧)の供給を停止することによってブレーキの作用を解放する動作をいう。
【0053】
ここで、図7を参照して、ステップS5及びS6の処理について説明する。図7は、図4に示す時系列データと、図6に示す複数の極値点間の距離との対応関係を示している。
【0054】
図7に示すように、データ分割部16は、上記した複数の極値点間の距離のうちの4つのピーク(つまり、上位4つの距離が計算された極値点)を分割点として時系列データを分割する。この場合、時系列データは、時点tから時点tまでの区間において計測された電流(値)の波形を表す部分時系列データD1、時点tから時点tまでの区間において計測された電流(値)の波形を表す部分時系列データD2、時点tから時点tまでの区間において計測された電流(値)の波形を表す部分時系列データD3、時点tから時点tまでの区間において計測された電流(値)の波形を表す部分時系列データD4、及び時点tから時点tまでの区間において計測された電流(値)の波形を表す部分時系列データD5に分割される。
【0055】
この場合、データ抽出部17は、上記したように時系列データが分割された5つの部分時系列データD1~D5のうちの2番目の部分時系列データD2及び4番目の部分時系列データD4を動作データとして抽出する。なお、部分時系列データD2は、ブレーキ吸引動作波形を表す動作データに相当する。また、部分時系列データD4は、ブレーキ釈放動作波形を表す動作データに相当する。
【0056】
なお、ここでは対象機器として電磁ブレーキを想定しており、当該電磁ブレーキのブレーキ電流波形を表す時系列データの場合、上記したように2番目及び4番目の部分時系列データを動作データ(ブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形)として抽出することが予め定められているものとする。すなわち、本実施形態においては、例えば時系列データ(対象機器)の種別等に応じて、上記したように時系列データが分割されることによって得られる複数の部分時系列データのうち、いずれの部分時系列データを動作データとして抽出すべきかが予め定められているものとする。
【0057】
再び図3に戻ると、特徴量計算部18は、ステップS6において抽出された動作データに基づいて、電磁ブレーキの動作に関する特徴量を計算する(ステップS7)。
【0058】
上記したように動作データとして部分時系列データD2が抽出されている場合、特徴量計算部18は、当該部分時系列データD2によって表されるブレーキ吸引動作波形の特徴量を計算する。なお、ブレーキ吸引動作波形の特徴量は、例えばブレーキ吸引動作波形の長さを含む。ブレーキ吸引動作波形(部分時系列データD2)が時点tから時点tまでの区間において計測された電流の波形である場合、ブレーキ吸引動作波形の長さは、t-tによって計算される。このように計算されるブレーキ吸引動作波形の長さは、ブレーキ吸引動作時間(つまり、電磁ブレーキへの電流の供給を開始してからブレーキが作用するまでの時間)に相当する。
【0059】
同様に、上記したように動作データとして部分時系列データD4が抽出されている場合、特徴量計算部18は、当該部分時系列データD4によって表されるブレーキ釈放動作波形の特徴量を計算する。なお、ブレーキ釈放動作波形の特徴量は、例えばブレーキ釈放動作波形の長さを含む。ブレーキ釈放動作波形(部分時系列データD4)が時点tから時点tまでの区間において計測された電流の波形である場合、ブレーキ釈放動作波形の長さは、t-tによって計算される。このように計算されるブレーキ釈放動作波形の長さは、ブレーキ釈放動作時間(つまり、電磁ブレーキへの電流の供給を停止してからブレーキの作用が解放されるまでの時間)に相当する。
【0060】
なお、ステップS7において計算される特徴量は、後述する電磁ブレーキの状態を診断するために有意なものであればよく、例えばブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形における電流値の変化量(最大値と最小値との差分)等であってもよい。
【0061】
ステップS7の処理が実行されると、状態診断部19は、当該ステップS7において計算された特徴量(ブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間)に基づいて、電磁ブレーキの状態を診断する(ステップS8)。
【0062】
ここで、電磁ブレーキの状態は、ステップS7において計算された特徴量に対する所定の演算結果に基づいて診断され得る。具体的には、例えばステップS1~S7の処理が予め定められた期間内(例えば、1日の間)に繰り返し実行されているものとすると、状態診断部19は、当該期間内に計算されたブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間のばらつき度合いを演算し、当該演算結果に基づいて電磁ブレーキの状態を診断することができる。これによれば、例えばブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間の少なくとも一方に閾値を超えるばらつきが生じているような場合には、状態診断部19は、電磁ブレーキの状態が異常であると診断することができる。一方、例えばブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間の両方に閾値を超えるようなばらつきが生じていない場合には、状態診断部19は、電磁ブレーキの状態が正常であると診断することができる。なお、上記したブレーキ吸引動作時間ブレーキ釈放動作時間のばらつき度合いは、例えば標準偏差等を利用して計算することができる。
【0063】
ここで説明したステップS8の処理は一例であり、電磁ブレーキの状態を診断するために他の処理が実行されてもよい。具体的には、電磁ブレーキの状態は、ステップS7において計算された特徴量(例えば、ブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間)を閾値と比較する(つまり、電磁ブレーキが異常であるということができる程度に当該ブレーキ吸引動作時間及びブレーキ釈放動作時間が長いまたは短いかを判定する)ことによって診断されてもよい。
【0064】
また、上記したステップS8の処理は、例えば人工知能(AI:Artificial Intelligence)、機械学習またはディープラーニングのような技術に基づいて生成される学習モデルを利用して実行されてもよい。具体的には、例えば動作データに基づいて計算された特徴量及び当該動作データに応じた電磁ブレーキの状態(異常または正常等)を含む予め用意された学習データを学習させることによって、当該動作データを入力することによって機器の状態を診断(推定)するように構築された学習モデルを生成しておくことによって、ステップS7において計算された特徴量を当該学習モデルに入力することによって当該学習モデルから出力される機器の状態の診断結果を取得することが可能となる。なお、学習モデルは、特徴量ではなく動作データを入力することによって機器の状態を診断するように構築されていてもよい。
【0065】
ステップS8の処理が実行されると、出力部20は、当該ステップS8における処理結果(つまり、電磁ブレーキの状態の診断結果)を出力する(ステップS9)。ステップS9において診断結果は、例えば表示デバイス105に表示するために当該表示デバイス105に出力されてもよいし、外部装置に送信するために通信デバイス106に出力されてもよい。
【0066】
上記したように本実施形態に係る情報処理装置10は、対象機器が動作する際に計測された物理量の時系列データを入力し、当該時系列データの複数の極値点を特定し、当該時系列データにおける複数の極値点間の距離を計算し、当該計算された距離に基づいて時系列データを分割し、当該分割された時系列データから対象機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する。
【0067】
ここで、上記した対象機器の一例である昇降機に搭載される電磁ブレーキの状態を診断するために、当該電磁ブレーキが動作する際に計測されたブレーキ電流波形を表す時系列データを利用することを考える。この場合において電磁ブレーキの状態を適切に診断するためには、時系列データ(ブレーキ電流波形)から電磁ブレーキの特徴的な動作を表す部分時系列データ(ブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形)を抽出する必要があるが、ブレーキ電流波形における電流値や極値点の数(つまり、電磁ブレーキの特性)は、当該電磁ブレーキに対する定期的な調整作業(保守作業)によって変化する可能性がある。このような調整前後で異なるブレーキ電流波形における電流値の変化量等から予め定められた同一の閾値を用いて適切にブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形(の開始時点及び終了時点)を抽出することは困難である。
【0068】
これに対して、本実施形態においては、上記したように調整前後でブレーキ電流波形における電流値等が変化したとしても、複数の極値点間の距離のピークが4点存在するという特徴は当該調整前後で変わらない(つまり、電磁ブレーキの特性が変化しても変わらない)点に着目してブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形を抽出する構成を採用することにより、機器の状態を診断するために有用なデータを得ることが可能である。
【0069】
また、本実施形態においては、上記したように抽出されたブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形(に基づいて計算された特徴量)に基づいて電磁ブレーキの状態を診断する構成により、調整作業(保守作業)によって電磁ブレーキの特性が変化した場合であっても高い精度で電磁ブレーキの状態を診断することが可能となる。
【0070】
更に、本実施形態においては、時系列データに対してノイズを除去する前処理を実行する構成であってもよい。このような構成によれば、時系列データに生じているノイズの影響を低減し、当該時系列データからより適切にブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形を抽出することが可能となる。
【0071】
なお、本実施形態においては対象機器が昇降機に搭載される電磁ブレーキであるものとして主に説明したが、本実施形態は、当該電磁ブレーキを搭載する昇降機及び情報処理装置10を備える情報処理システム(昇降機システム)として実現されていてもよい。
【0072】
また、本実施形態においては電磁ブレーキに供給される電流(または電圧)の波形を表す時系列データから当該電磁ブレーキのブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形を抽出する(つまり、情報処理装置10が電磁ブレーキの状態を診断するために用いられる)場合について主に説明したが、本実施形態に係る情報処理装置10は、機器が動作する際に検出された物理量の時系列データから当該機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する構成であればよく、電磁ブレーキ以外の機器の状態を診断するために用いられても構わない。なお、機器が動作する際に検出される物理量としては電流(値)または電圧(値)等が考えられるが、他の物理量(例えば、温度等)であってもよい。
【0073】
また、本実施形態においては情報処理装置10が図1に示す機能部11~20を含むものとして説明したが、当該情報処理装置10は、当該機能部11~20のうちの少なくとも一部が省略された構成であっても構わない。具体的には、情報処理装置10は例えば機器の状態を診断するために用いられる動作データを抽出する機能部のみを有し、機器の状態を診断する機能部については情報処理装置10の外部に配置されても構わない。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0075】
前述した実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
[1]
機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を具備する情報処理装置。
[2]
前記時系列データは、前記機器に供給される電流または電圧の波形を表すデータである[1]記載の情報処理装置。
[3]
前記機器は、昇降機に搭載される電磁ブレーキを含む[1]または[2]記載の情報処理装置。
[4]
前記動作データは、前記電磁ブレーキのブレーキ吸引動作波形及びブレーキ釈放動作波形を表すデータである[3]記載の情報処理装置。
[5]
前記時系列データは、前記複数の極値点間の距離のうちの上位4つの距離が計算された極値点に基づいて分割され、
前記動作データは、前記分割された時系列データから抽出される
[1]~[4]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[6]
前記時系列データに対して、前記時系列データに生じているノイズを除去する前処理を実行する前処理手段と、
前記前処理が実行された時系列データの複数の極値点を特定する特定手段と
を更に具備する[1]~[5]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[7]
前記時系列データ上の第1時点の前後に位置する複数の第2時点の各々において計測された物理量よりも前記第1時点において計測された物理量が大きい場合及び前記複数の第2時点の各々において計測された物理量よりも前記第1時点において計測された物理量が小さい場合に、前記第1時点を前記極値点として特定する特定手段を更に具備する[1]~[6]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[8]
前記抽出された動作データに基づいて、前記機器の状態を診断する診断手段を更に具備する[1]~[7]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[9]
前記抽出された動作データに基づいて、前記機器の動作に関する特徴量を計算する計算手段を更に具備し、
前記診断手段は、前記計算された特徴量に基づいて前記機器の状態を診断する
[8]記載の情報処理装置。
[10]
電磁ブレーキが搭載された昇降機と、
前記電磁ブレーキの状態を診断するために用いられる情報処理装置と
を具備し、
前記情報処理装置は、前記電磁ブレーキが動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記電磁ブレーキの特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を含む
情報処理システム。
[11]
機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出することを具備する情報処理方法。
[12]
コンピュータを、機器が動作する際に計測された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、前記時系列データから前記機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0076】
10…情報処理装置、11…データ入力部、12…パラメータ入力部、13…前処理部、14…極値点特定部、15…距離計算部、16…データ分割部、17…データ抽出部、18…特徴量計算部、19…状態診断部、20…出力部、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…主メモリ、104…入力デバイス、105…表示デバイス、106…通信デバイス。
【要約】
【課題】機器の状態を診断するために有用なデータを得ることが可能な情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、機器が動作する際に検出された物理量の時系列データの複数の極値点間の距離に基づいて、時系列データから機器の特徴的な動作を表す動作データを抽出する抽出手段を具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7