(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】パーフルオロエーテルフッ素ゴム及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
C08F 214/26 20060101AFI20241105BHJP
C08F 214/16 20060101ALI20241105BHJP
C08F 214/14 20060101ALI20241105BHJP
C08F 2/26 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F214/16
C08F214/14
C08F2/26 Z
(21)【出願番号】P 2023515689
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 CN2021093277
(87)【国際公開番号】W WO2022052498
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】202010940066.4
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521495079
【氏名又は名称】中昊晨光化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】余金龍
(72)【発明者】
【氏名】劉波
(72)【発明者】
【氏名】鐘子強
(72)【発明者】
【氏名】張廷健
(72)【発明者】
【氏名】肖忠良
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/078738(WO,A1)
【文献】特表2009-513795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110818825(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100062(US,A1)
【文献】特表2016-501311(JP,A)
【文献】特表2016-540088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08F 2/00- 2/60
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08C 19/00- 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロエーテルフッ素ゴムの製造方法であって、前記パーフルオロエーテルフッ素ゴムは多段重合法で製造され、
ここで、各段階の重合反応における重合モノマーはいずれもテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルを含
み、
各段階の重合反応における重合モノマーはさらに加硫点モノマーを含み、前記加硫点モノマーはパーフルオロヨードオレフィンであり、
前記多段重合法は三段重合法であり、前記製造方法は、
(1)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された前段重合モノマーに対して前段重合反応を行うステップと、
(2)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された中段重合モノマーを再び添加して中段重合反応を行うステップと、
(3)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された後段重合モノマーを再び添加して重合反応を行い、反応生成物を収集するステップとを含み、
前記前段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(1-3):(60-70):(30-40)であり、
前記中段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(0.1-1):(35-55):(40-65)であり、
前記後段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(1-3):(60-70):(30-40)であり、
前記前段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は1-3%であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は60-70%であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は30-40%であり、
前記中段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は0.1-1%であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は35-55%であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は40-65%であり、
前記後段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は1-3%であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は60-70%であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は30-40%であることを特徴とするパーフルオロエーテルフッ素ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記前段重合モノマー、中段重合モノマー及び後段重合モノマーの質量比は(20-35):(30-60):(20-35)で
あることを特徴とする
、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記前段重合モノマーは重合モノマーの総質量の20-35%を占め、前記中段重合モノマーは重合モノマーの総質量の30-60%を占め、前記後段重合モノマーは重合モノマーの総質量の20-35%を占めることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記後段重合モノマーの質量は前段重合モノマーの質量と同じで
あることを特徴とする
、請求項
2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記後段重合モノマーにおける各成分の割合は前段重合モノマーにおける各成分の割合と同じであることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記多段重合法の総重合時間は2-4hであり、
及び/又は、前記前段重合反応及び後段重合反応の重合圧力はそれぞれ独立して2.8-3.5MPaから選択され、前記中段重合反応の重合圧力は1.6-2.5MPaであり、
及び/又は、前記前段重合反応、中段重合反応及び後段重合反応の反応温度はそれぞれ独立して60-95℃から選択され、
及び/又は、中段重合モノマーを添加する前に、未反応の前段重合モノマーを回収し
、
及び/又は、さらにステップ(3)で得られた反応生成物中の未反応の後段重合モノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得ることを含むことを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
後段重合モノマーを添加する前に、未反応の中段重合モノマーを回収することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記多段重合法の分散媒は水であり、
及び/又は、前記前段重合反応の系はさらに開始剤を含み
、
及び/又は、前記前段重合反応の系はさらにパーフルオロオクタン酸塩を乳化剤として含み
、
及び/又は、前記前段重合反応の系はさらに連鎖移動剤を含
むことを特徴とする請求項
1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記開始剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム又は過マンガン酸カリウムのうちのいずれか一種又は少なくとも二種の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
100重量部の水媒体を基準として、前記開始剤の使用量は0.0001-8重量部であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
100重量部の水媒体を基準として、前記乳化剤の使用量は0.01-5重量部であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記連鎖移動剤は1,2-ジヨードパーフルオロエタン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン又は1,4-ジヨードパーフルオロブタンのうちのいずれか一種又は少なくとも二種の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
重合モノマーの総質量を基準として、前記連鎖移動剤の使用量は0.01-5%であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記製造方法は、
(1)反応器に脱イオン水を添加し、酸素含有量≦30ppmになるまで真空排気した後に乳化剤を添加し、60-95℃まで加熱するステップと、
(2)前段重合モノマーを添加し、反応器を2.8-3.5MPaに昇圧し、次に開始剤及び連鎖移動剤を添加し、前段重合反応を行い、前段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の20-35%になった時に、未反応のモノマーを回収するステップと、
(3)中段重合モノマーを添加し、次に1.6-2.5MPaまで減圧して中段重合反応を行い、中段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の30-85%になった時に、未反応のモノマーを回収するステップと、
(4)後段重合モノマーを添加し、次に2.8-3.5MPaまで昇圧して後段重合反応を行い、後段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の20-35%になった時に、未反応のモノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得るステップと、
(5)エマルジョンに対して凝集、洗浄、乾燥を行い、前記パーフルオロエーテルフッ素ゴムを得るステップとを含むことを特徴とする請求項
1に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれかに記載の製造方法で製造されたパーフルオロエーテルフッ素ゴム。
【請求項16】
請求項
15に記載のパーフルオロエーテルフッ素ゴムの石油化学工業材料、自動車工業材料、半導体材料、航空宇宙材料又は器械材料における
使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素含有エラストマーの技術分野に属し、パーフルオロエーテルフッ素ゴム及びその製造方法並びに応用に関し、特にテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合組成物及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロエーテルフッ素ゴムは、主にテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)を主な共重合モノマーとして採用し、通常、さらにパーフルオロ臭素、ヨウ素、シアノ基含有化合物などの加硫点モノマーを含んで共重合して形成される。パーフルオロエーテルフッ素ゴムを加硫した後の製品は優れた耐高温性能及び耐媒体性能を備え、それは石油化学工業、半導体工業等の業界に好まれる。
【0003】
CN107868163Aには耐低温パーフルオロエーテルエラストマーの製造方法が開示され、該製造方法における加硫点モノマーはエラストマーセグメントに均一に分散することができず、かつTFEの活性が強いためTFEのホモセグメントが増加し、さらにその製品の加硫性能が劣り、かつ加硫ゴムの硬度が大きく、加工しにくい。
【0004】
CN1120343Aには低温パーフルオロエーテルエラストマーの製造方法が開示され、該特許出願は高分子量のパーフルオロポリエーテルとパーフルオロエラストマーを採用してブレンドして変性パーフルオロエーテルエラストマーを製造し、重合過程において改質モノマーのパーフルオロポリエーテルを添加するため、重合体系の活性が弱くなることにより重合時間が長くなり、工業化生産に不利であり、同時に重合が完了した後、重合体系に残ったパーフルオロポリエーテルを回収処理することができず、環境保護に不利である。
【0005】
したがって、応用要件を満たすために、製造加工時間が短く、加硫後に加工性が優れるパーフルオロエーテルフッ素ゴムを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、パーフルオロエーテルフッ素ゴム及びその製造方法並びに応用を提供することを目的とする。本発明の提供するパーフルオロエーテルフッ素ゴムの製造方法は重合時間を短縮し、製造効率を向上させることができ、かつ最後に得られたパーフルオロエーテルフッ素ゴムの加工性能が良好であり、かつ強度が高いと同時に硬度及び圧縮変形が低くなり、耐媒体性能が良好である。
【0007】
その目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0008】
第一態様において、本発明はパーフルオロエーテルフッ素ゴムの製造方法を提供し、前記パーフルオロエーテルフッ素ゴムは多段重合法で製造され、
ここで、各段階の重合反応における重合モノマーはいずれもテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルを含む。
【0009】
ワンステップ重合法(ワンポット法)に比べて、本発明は多段重合法を採用し、テトラフルオロエチレンの均一な分布を確保することができ、セグメント中のテトラフルオロエチレンの単独重合セグメントが少ないため、最後のパーフルオロエーテルフッ素ゴムの硬度が小さく、圧縮変形が低くなる。
【0010】
本発明において、各段階の重合反応における重合モノマーはさらに加硫点モノマーを含み、好ましくは前記加硫点モノマーはパーフルオロヨードオレフィンであり、さらに好ましくはI(CF2)2OCF=CF2である。
【0011】
本発明の多段重合法において、各段階の重合にいずれも一部の加硫点モノマーが添加され、加硫点モノマーの分布が均一であることを確保することができ、さらに最後のゴムの加硫性能が良好になり、加工性能も良好になる。
【0012】
加硫点モノマーをポリマーに導入することにより、パーフルオロエーテルフッ素ゴムは過酸化物加硫系を採用して架橋加硫を行うことができ、同時に、ヨウ素原子はラジカルの作用で非常に脱ラジカルしやすく、過酸化物の加硫に役立つ。この加硫点モノマーはある程度でパーフルオロエーテルフッ素ゴムの加工性能を向上させることに役立つ。
【0013】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記多段重合法は三段重合法であり、前記製造方法は、
(1)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された前段重合モノマーに対して前段重合反応を行うステップと、
(2)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された中段重合モノマーを再び添加して中段重合反応を行うステップと、
(3)加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルで構成された後段重合モノマーを再び添加して重合反応を行い、反応生成物を収集するステップとを含む。
【0014】
本発明において前記前段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(1-3):(60-70):(30-40)である。
【0015】
本発明において、前記1-3は1.5、2、2.5等であってもよく、前記60-70は62、64、65、68等であってもよく、前記30-40は32、34、35、36、38等であってもよい。
【0016】
前記中段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(0.1-1):(35-55):(40-65)である。
【0017】
本発明において、前記0.1-1は0.2、0.4、0.5、0.6、0.8等であってもよく、前記35-55は38、40、42、45、48、50、52等であってもよく、前記40-65は42、45、48、50、52、55、58、60、62等であってもよい。
【0018】
前記後段重合モノマー中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルのモル比は(1-3):(60-70):(30-40)である。
【0019】
本発明において、前記1-3は1.5、2、2.5等であってもよく、前記60-70は62、64、65、68等であってもよく、前記30-40は32、34、35、36、38等であってもよい。
【0020】
本発明は多段重合法で得られたパーフルオロエーテルフッ素ゴムはA-B-Aブロック形態を有し、両側のAブロックは三元共重合の加硫点モノマー/TFE/PAVE(加硫点モノマー/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)であり、Bブロックにおけるパーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量が高く、最後のパーフルオロエーテルフッ素ゴムが良好な柔軟性を有することを確保することができ、製品の加工応用に役立つ。本発明の提供するパーフルオロエーテルフッ素ゴム中の加硫点モノマー及びテトラフルオロエチレンの分布がいずれも均一であるため、その硬度及び圧縮変形が低く、加工性が良好である。
【0021】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記前段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は1-3%であり、例えば1.5%、2%、2.5%等であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は60-70%であり、例えば62%、64%、65%、68%等であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は30-40%であり、例えば32%、34%、35%、36%、38%等である。
【0022】
前記中段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は0.1-1%であり、例えば0.2、0.4、0.5、0.6、0.8等であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は35-55%であり、例えば38、40、42、45、48、50、52等であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は40-65%であり、例えば42、45、48、50、52、55、58、60、62等である。
【0023】
前記後段重合モノマーの総モル数を100%とすると、前記加硫点モノマーの含有量は1-3%であり、例えば1.5%、2%、2.5%等であり、前記テトラフルオロエチレンの含有量は60-70%であり、例えば62%、64%、65%、68%等であり、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量は30-40%であり、例えば32%、34%、35%、36%、38%等である。
【0024】
本発明において前記前段重合モノマー、中段重合モノマー及び後段重合モノマーの質量比は(20-35):(30-60):(20-35)である。
【0025】
前記20-35は22、25、28、30、32等であってもよく、前記30-60は35、40、45、50、55等であってもよく、前記20-35は22、25、28、30、32等であってもよい。
【0026】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記前段重合モノマーは重合モノマーの総質量の20-35%を占め、例えば22%、24%、25%、28%、30%、32%等であり、前記中段重合モノマーは重合モノマーの総質量の30-60%を占め、例えば35%、40%、45%、50%、55%等であり、前記後段重合モノマーは重合モノマーの総質量の20-35%を占め、例えば22%、24%、25%、28%、30%、32%等である。
【0027】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記後段重合モノマーの質量は前段重合モノマーの質量と同じである。
【0028】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記後段重合モノマーにおける各成分の割合は前段重合モノマーにおける各成分の割合と同じである。
【0029】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記多段重合法の総重合時間は2-4hであり、例えば2.2h、2.5h、2.8h、3.0h、3.2h、3.5h、3.8h等である。
【0030】
本発明の製造方法を採用すると、反応時間を大幅に短縮することができ、従来の90h以上から4h以下に短縮し、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0031】
本発明において前記前段重合反応及び後段重合反応の重合圧力はそれぞれ独立して2.8-3.5MPaから選択され、例えば2.9MPa、3.0MPa、3.1MPa、3.2MPa、3.3MPa、3.4MPa等であり、前記中段重合反応の重合圧力は1.6-2.5MPaであり、例えば1.7MPa、1.8MPa、1.9MPa、2.0MPa、2.2MPa、2.4MPa等である。
【0032】
本発明において前記前段重合反応、中段重合反応及び後段重合反応の反応温度はそれぞれ独立して60-95℃から選択され、例えば65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃等である。
【0033】
テトラフルオロエチレン単量体とパーフルオロアルキルビニルエーテル単量体の共重合過程でのReactivity Ratioの差が大きいため、本発明は異なる重合段階で異なる重合プロセスを採用するように制御することにより、前段重合と後段重合の重合圧力が高く、中段重合過程で重合圧力を低下させ、硬度が高すぎることを回避することができ、柔軟性単量体であるパーフルオロアルキルビニルエーテルの重合体セグメントでの導入量を増加させ、材料の柔軟性を増加させる。したがって、本発明の提供するパーフルオロエーテルフッ素ゴム中の加硫点モノマー、テトラフルオロエチレンはいずれも均一に分布することにより、それが優れた引張強度を有すると同時にその硬度及び圧縮変形が低くなり、耐媒体性能及び加工性が良好である。
【0034】
本発明において、前段及び後段の重合圧力が低いと、ポリマーの両側のパーフルオロアルキルビニルエーテルの含有量が増加し、フッ素含有量が低下し、ポリマーの耐媒体性能及び良好な強度に不利である。中段の重合圧力が高いと、ポリマーの中部のテトラフルオロ含有量が高くなり、ポリマーの剛性が強くなり、ポリマーの硬度指標が増加し、ポリマーの加工応用に不利である。
【0035】
本発明の好ましい技術的解決手段として、中段重合モノマーを添加する前に、未反応の前段重合モノマーを回収し、好ましくは後段重合モノマーを添加する前に、未反応の中段重合モノマーを回収する。
【0036】
本発明の好ましい技術的解決手段として、さらにステップ(3)で得られた反応生成物中の未反応の後段重合モノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得ることを含む。
【0037】
本発明の好ましい技術的解決手段として、前記多段重合法の分散媒は水である。
【0038】
本発明において、前記前段重合反応の系はさらに開始剤を含み、好ましくは前記開始剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム又は過マンガン酸カリウムのうちのいずれか一種又は少なくとも二種の組み合わせであり、好ましくは、100重量部の水媒体を基準として、前記開始剤の使用量は0.0001-8重量部であり、例えば0.1重量部、0.5重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部等である。
【0039】
本発明において、前記前段重合反応の系はさらにパーフルオロオクタン酸塩を乳化剤として含み、好ましくは、100重量部の水媒体を基準として、前記乳化剤の使用量は0.01-5重量部であり、例えば1重量部、2重量部、3重量部、4重量部等である。
【0040】
本発明において、前記前段重合反応の系はさらに連鎖移動剤を含み、前記連鎖移動剤は好ましくは1,2-ジヨードパーフルオロエタン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン又は1,4-ジヨードパーフルオロブタンのうちのいずれか一種又は少なくとも二種の組み合わせであり、好ましくは、重合モノマーの総質量を基準として、前記連鎖移動剤の使用量は0.01-5%であり、例えば0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%等である。
【0041】
本発明は具体的な実施形態を提供し、前記製造方法は、
(1)反応器に脱イオン水を添加し、酸素含有量≦30ppmになるまで真空排気した後に乳化剤を添加し、60-95℃まで加熱するステップと、
(2)前段重合モノマーを添加し、反応器を2.8-3.5MPaに昇圧し、次に開始剤及び連鎖移動剤を添加し、前段重合反応を行い、前段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の20-35%になった時に、未反応のモノマーを回収するステップと、
(3)中段重合モノマーを添加し、次に1.6-2.5MPaまで減圧して中段重合反応を行い、中段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の30-85%になった時に、未反応のモノマーを回収するステップと、
(4)後段重合モノマーを添加し、次に2.8-3.5MPaまで昇圧して後段重合反応を行い、後段重合モノマーの添加量が重合モノマーの総質量の20-35%になった時に、未反応のモノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得るステップと、
(5)エマルジョンに対して凝集、洗浄、乾燥を行い、前記パーフルオロエーテルフッ素ゴムを得るステップとを含む。
【0042】
本発明のエマルションに対する凝集、洗浄及び乾燥はいずれも本分野の一般的なプロセスであり、ここでは説明を省略する。
【0043】
第二態様において、本発明は第一態様に記載の製造方法で製造されたパーフルオロエーテルフッ素ゴムを提供する。
【0044】
本発明の提供する製造方法で得られたパーフルオロエーテルフッ素ゴムは高い引張強度を有し、20MPa以上に達することができ、破断伸び率が200%に達することができ、硬度及び圧縮変形が低くなり、耐媒体性及び加工性が良好である。
【0045】
第三態様において、本発明は第二態様に記載のパーフルオロエーテルフッ素ゴムの石油化学工業材料、半導体材料における応用を提供する。
【0046】
従来の技術に対して、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は多段重合の方法を採用することにより、セグメント中のテトラフルオロエチレン及び加硫点モノマー等が均一に分布し、さらに最後の材料の硬度が低く、加硫性能が良好であることを保証する。
(2)本発明の採用する製造方法で最後に製造されたゴムはA-B-Aブロック形態を有し、特定の構造を有して得られたゴムが高い引張強度を有すると同時に硬度が低く、加工性が良好であることを保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に発明を実施するための形態により本発明の技術的解決手段をさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は単に本発明の理解を助けるものであり、本発明を具体的に限定するものではないことを理解すべきである。
【0048】
実施例1
パーフルオロエーテルフッ素ゴムであって、製造方法は以下のとおりである。
(1)50Lの反応器に30Lの脱イオン水を添加し、排気処理を行って酸素含有量≦30ppmになった時に、35gのパーフルオロオクタン酸アンモニウムを添加し、反応器内の内容物を85℃に加熱する。
(2)I(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロメチルビニルエーテルによってモル比が1:60:39で構成された前段重合モノマーを投入し、反応器の圧力を3.0MPaに上昇させ、15gの過硫酸カリウム及び25gの1,2-ジヨードパーフルオロエタンを添加して前段重合反応を開始し、前段重合モノマーの添加量が2.5kgになった時に、未反応のモノマーを回収する。
(3)反応器内にI(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロメチルビニルエーテルによってモル比が0.1:35:64.9で構成された中段重合モノマーを導入し、重合圧力を2.0MPaに調整して中段重合反応を行い、中段重合モノマーの添加量が3.3kgになった時に、未反応のモノマーを回収する。
(4)引き続き反応器内にI(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロメチルビニルエーテルによってモル比が1:60:39で構成された後段重合モノマーを投入し、反応器の圧力を3.0MPaに上昇させ、後段重合モノマーの添加量が2.5kgになった時に、反応を終了し、未反応のモノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得る。
(5)エマルジョンを機械的に凝集し、洗浄し、100℃で真空乾燥し、約7.5kgのパーフルオロエーテルフッ素ゴム製品を得る。
【0049】
実施例2
パーフルオロエーテルフッ素ゴムであって、製造方法は以下のとおりである。
(1)50Lの反応器に30Lの脱イオン水を添加し、排気処理を行って酸素含有量≦30ppmになった時に、50gのパーフルオロオクタン酸アンモニウムを添加し、反応器内の内容物を90℃に加熱する。
(2)I(CF2)2OCF=CF2、テトラフルオロエチレン、パーフルオロプロピルビニルエーテルによってモル比が3:67:30で構成された前段重合モノマーを投入し、反応器の圧力を3.5MPaに上昇させ、40gの過硫酸カリウム及び50gの1,4-ジヨードパーフルオロブタンを添加して前段重合反応を開始し、前段重合モノマーの添加量が3.5kgになった時に、未反応のモノマーを回収する。
(3)反応器内にI(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロプロピルビニルエーテルによってモル比が1:55:44で構成された中段重合モノマーを導入し、重合圧力を2.5MPaに調整して中段重合反応を行い、中段重合モノマーの添加量が3.0kgになった時に、未反応のモノマーを回収する。
(4)引き続き反応器内にI(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロプロピルビニルエーテルによってモル比が3:67:30で構成された後段重合モノマーを投入し、反応器の圧力を3.5MPaに上昇させ、後段重合モノマーの添加量が3.5kgになった時に、反応を終了し、未反応のモノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得る。
(5)エマルジョンを機械的に凝集し、洗浄し、100℃で真空乾燥し、パーフルオロエーテルフッ素ゴム製品を得る。
【0050】
実施例3
実施例1との相違点は、本比較例において、ステップ(3)における中段重合反応の圧力が3.0MPaであることである。
【0051】
実施例4
実施例1との相違点は、本比較例において、ステップ(2)の前段重合反応及びステップ(4)の後段重合反応の圧力がいずれも2.0MPaであることである。
【0052】
実施例5
実施例1との相違点は、本比較例において、ステップ(3)で導入されたI(CF2)2OCF=CF2、TFE及びパーフルオロメチルビニルエーテルのモル比が0.1:50:49.9であることである。
【0053】
比較例1
パーフルオロエーテルフッ素ゴムであって、製造方法は以下のとおりである。
(1)50Lの反応器に30Lの脱イオン水を添加し、排気処理を行って酸素含有量≦30ppmになった時に、35gのパーフルオロオクタン酸アンモニアを添加し、反応器内の内容物を85℃に加熱する。
(2)I(CF2)2OCF=CF2、TFE、パーフルオロメチルビニルエーテルをモル比が1:45:55となるように投入し、重合モノマーの総添加量が8.3kgであり、反応器の圧力を3.0MPaに上昇させ、15gの過硫酸カリウム及び25gの1,2-ジヨードパーフルオロエタンを添加して重合反応を開始し、固形分含有量が21%程度になった時に、未反応のモノマーを回収し、パーフルオロエーテルフッ素ゴムを含有するエマルジョンを得る。
(5)エマルジョンを機械的に凝集し、洗浄し、100℃で真空乾燥し、約8.0kgのパーフルオロエーテルフッ素ゴム製品を得る。
【0054】
性能試験
実施例1-及び比較例1で製造されたゴム生ゴム(パーフルオロエーテルフッ素ゴム製品)に加硫処理を行い、加硫配合成分は表1に示すとおりである。
【0055】
【0056】
生ゴム及び加硫後のサンプルに対して性能試験を行い、そのムーニー粘度、フッ素含有量、機械的性能(引張強度及び破断伸び率)、硬度及び圧縮変形を試験し、試験結果は表2に示すとおりである。
【0057】
【0058】
実施例及び性能試験から分かるように、本発明の提供する製造方法で製造されたパーフルオロエーテルフッ素ゴムは優れた引張強度及び破断伸び率を有すると同時に、硬度及び圧縮変形が低くなり、かつ加工性能が良好である。
【0059】
実施例1と実施例1-2との比較から分かるように、本発明の多段重合反応の圧力は本発明の限定範囲内にある必要があり、その場合に限って優れた引張強度を有すると同時にその硬度及び圧縮変形が低くなり、耐媒体性能及び加工性が良好になる。実施例1と実施例3との比較から分かるように、中段重合反応時の原料投入比は本発明の限定範囲内にある必要がある。実施例1と比較例1との比較から分かるように、多段重合法で得られたパーフルオロエーテルフッ素ゴムはより低い硬度及び圧力変形性能を有し、かつ硫化性能が良好であり、加工性能が良好である。
【0060】
出願人は、本発明は上記実施例により本発明のパーフルオロエーテルフッ素ゴム及びその製造方法並びに応用を説明したが、本発明は上記詳細な方法に限定されず、すなわち本発明が上記詳細な方法に依存しなければ実施できないことを意味しないと声明する。当業者であれば、本発明の任意の改良、本発明の製品の各原料の等価置換及び補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、いずれも本発明の保護範囲及び開示範囲内にあることを理解すべきである。