(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光治療進度測定装置の作動方法、プロセッサおよび光治療システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A61N5/067
(21)【出願番号】P 2023517006
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017216
(87)【国際公開番号】W WO2022230178
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 迪
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212423(JP,A)
【文献】国際公開第2012/076631(WO,A1)
【文献】国際公開第99/006113(WO,A1)
【文献】特開2006-167046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光薬剤による患部の光治療の進度を測定する光治療進度測定
装置の作動方法であって、
前記患部に治療光が照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である第1蛍光強度を
光検出部により検出すること、および、
前記光検出部により検出される前記第1蛍光強度
と、前記蛍光薬剤に関連する参照データ
とを用いて前記患部の光治療の進度を表す進度情報を
演算部にて算出することを含み、
前記参照データが、前記光治療に関与しない前記患部中の前記蛍光薬剤に関連付いた蛍光強度に基づき決定される、光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項2】
前記参照データが、
前記光治療中に前記患部に再集積する前記蛍光薬剤の蛍光の強度である第2蛍光強度のデータであるか、または、
再集積する前記蛍光薬剤の蛍光の強度を含まない前記蛍光薬剤の蛍光の強度の前記治療光の照射による時間変化を表すプリセットデータである、請求項1に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項3】
前記第1蛍光強度を時系列に記憶し該第1蛍光強度の時間変化を表す強度データを
強度データ生成部にて生成することをさらに含み、
前記演算部にて前記進度情報を算出することが、
複数の前記プリセットデータの中から、前記強度データと最も類似する1つのプリセットデータを前記参照データとして選択すること、
選択された前記プリセットデータを用いて前記第1蛍光強度の単位時間当たりの補正変化量を算出すること、および、
前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量の積算値を前記補正変化量を用いて算出することを含み、
前記積算値が前記進度情報である請求項2に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項4】
前記治療光よりも弱い測定光を前記患部に照射すること、および、
前記測定光が前記患部に照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である前記第2蛍光強度を
前記光検出部にて検出することをさらに含み、
前記演算部にて前記進度情報を算出することが、前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量と前記第2蛍光強度の単位時間当たりの変化量との間の一致度を算出することを含み、
該一致度が前記進度情報である請求項2に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項5】
前記測定光を照射することは、
前記患部に照射される前記治療光の強度を調整する治療光調整部により前記患部に照射される前記治療光の強度を第1強度から該第1強度よりも弱い第2強度に切り替えることを含み、前記測定光は、前記第2強度に減弱された前記治療光である、請求項4に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項6】
前記治療光を出力する治療光源の出力を
前記治療光調整部により切り替えることによって、前記患部に照射される前記治療光の強度が前記第1強度と前記第2強度との間で切り替えられる、請求項5に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項7】
前記患部までの前記治療光の照射距離が
前記治療光調整部により変更されることによって、前記患部に照射される前記治療光の強度が前記第1強度と前記第2強度との間で切り替えられる、請求項5に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項8】
前記演算部により前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量が負であるか否かを判断することをさらに含み、
前記演算部により前記進度情報を算出することは、前記変化量が負ではないと判断された後に行われる、請求項1に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項9】
前記進度情報に基づいて、前記患部の光治療が完了したか否かを
判定部により判定することをさらに含む、請求項1に記載の光治療進度測定
装置の作動方法。
【請求項10】
蛍光薬剤による患部の光治療の進度を測定するプロセッサであって、
前記患部に治療光が照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である第1蛍光強度を検出する光検出部と、
前記第1蛍光強度および参照データを用いて前記患部の光治療の進度を表す進度情報を算出する演算部とを備え、
前記参照データが、前記光治療に関与しない前記患部中の前記蛍光薬剤に関連付いた蛍光強度に基づき決定される、プロセッサ。
【請求項11】
前記参照データが、前記光治療中に前記患部に再集積する前記蛍光薬剤の蛍光の強度である第2蛍光強度のデータであるか、または、
再集積する前記蛍光薬剤の蛍光の強度を含まない前記蛍光薬剤の蛍光の強度の前記治療光の照射による時間変化を表すプリセットデータである、請求項10に記載のプロセッサ。
【請求項12】
前記第1蛍光強度を時系列に記憶し該第1蛍光強度の時間変化を表す強度データを生成する強度データ生成部と、
複数の前記プリセットデータを記憶する記憶部とをさらに備え、
前記演算部が、
前記複数のプリセットデータの中から、前記強度データと最も類似する1つのプリセットデータを前記参照データとして選択し、
選択された前記プリセットデータを用いて前記第1蛍光強度の単位時間当たりの補正変化量を補正し、
前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量の積算値を前記補正変化量を用いて算出し、前記積算値が前記進度情報である、請求項11に記載のプロセッサ。
【請求項13】
前記光検出部は、前記治療光よりも弱い測定光が前記患部に照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である前記第2蛍光強度をさらに検出し、
前記演算部が、前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量と前記第2蛍光強度の単位時間当たりの変化量との間の一致度を算出し、該一致度が前記進度情報である、請求項11に記載のプロセッサ。
【請求項14】
前記患部に照射される前記治療光の強度を調整する治療光調整部をさらに備え、
該治療光調整部は、前記患部に照射される前記治療光の強度を第1強度と該第1強度よりも弱い第2強度との間で切り替え、前記測定光は前記第2強度に減弱された前記治療光である、請求項13に記載のプロセッサ。
【請求項15】
前記演算部は、
前記第1蛍光強度の単位時間当たりの変化量が負であるか否かを判断し、
前記変化量が負ではないと判断された後に前記進度情報を算出する、請求項10に記載のプロセッサ。
【請求項16】
前記進度情報に基づいて、前記患部の光治療が完了したか否かを判定する判定部をさらに備える、請求項10に記載のプロセッサ。
【請求項17】
患部に治療光を照射し前記患部を蛍光薬剤によって光治療する光治療システムであって、
前記治療光を出力する治療光源と、
前記治療光を前記患部に照射する治療光照射部と、
請求項16に記載のプロセッサと、
該プロセッサの前記判定部の判定結果を報知する報知部とを備える光治療システム。
【請求項18】
前記患部に照射される前記治療光の強度を調整する治療光調整部をさらに備え、
前記判定部によって前記患部の光治療が完了したと判定された場合に、前記治療光調整部が前記治療光の強度を低減する、請求項17に記載の光治療システム。
【請求項19】
前記患部の画像を取得する画像取得部と、
該画像取得部によって取得された前記画像を表示する表示部とをさらに備え、
該表示部が前記進度情報を表示する、請求項17に記載の光治療システム。
【請求項20】
前記表示部が、前記進度情報を前記画像内の前記患部に重ねて表示する、請求項19に記載の光治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療進度測定方法、光治療進度測定装置および光治療システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患部に治療光を照射し患部内の蛍光薬剤を励起することによって患部を治療する光治療が知られている(例えば、特許文献1参照。)。光治療が進むにつれて蛍光薬剤が消費され、それに伴って患部において発生する蛍光の強度が減衰する。特許文献1では、蛍光の強度が所定の閾値以下となったときに、患部への治療光の照射を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光薬剤の蛍光強度は、全ての患部において同一の速度で単調に減衰するとは限らず、患部毎に多様な挙動を示す。例えば、蛍光強度の減衰速度が患者毎に異なる。
光治療を終了するタイミングを適切に判断するためには、光治療の終盤における蛍光強度が重要である。しかし、光治療の終盤における蛍光強度は、励起光の照射を続けたとしても蛍光強度が十分に下がることなく、蛍光強度が低値の期間においてむしろ減衰から上昇に転じる場合すら有ることを、発明者は発見した。結果、患部における蛍光薬剤の消費量、すなわち光治療の進度を必ずしも正確に反映するとは限らない。したがって、蛍光薬剤からの蛍光強度のみに基づいて、光治療の正確な進度をリアルタイムに把握することは難しい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、患部の光治療の正確な進度をリアルタイムに測定することができる光治療進度測定方法、光治療進度測定装置および光治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、蛍光薬剤による患部の光治療の進度を測定する光治療進度測定装置の作動方法であって、前記患部に治療光が照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である第1蛍光強度を光検出部により検出すること、および、前記光検出部により検出される前記第1蛍光強度と、前記蛍光薬剤に関連する参照データとを用いて前記患部の光治療の進度を表す進度情報を演算部にて算出することを含み、前記参照データが、前記光治療に関与しない前記患部中の前記蛍光薬剤に関連付いた蛍光強度に基づき決定される、光治療進度測定装置の作動方法である。
【0007】
本発明の他の態様は、蛍光薬剤による患部の光治療の進度を測定するプロセッサであって、前記患部に治療光が照射されることによって前記患部において発生する蛍光の強度である第1蛍光強度を検出する光検出部と、前記第1蛍光強度および参照データを用いて前記患部の光治療の進度を表す進度情報を算出する演算部とを備え、前記参照データが、前記光治療に関与しない前記患部中の前記蛍光薬剤に関連付いた蛍光強度に基づき決定される、プロセッサである。
【0008】
本発明の他の態様は、患部に治療光を照射し前記患部を蛍光薬剤によって光治療する光治療システムであって、前記治療光を出力する治療光源と、前記治療光を前記患部に照射する治療光照射部と、上記のプロセッサと、該光治療進度測定装置の判定部の判定結果を報知する報知部とを備える光治療システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、患部の光治療の正確な進度をリアルタイムに測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光治療進度測定装置および光治療システムの全体構成図である。
【
図2】光治療中の患部の蛍光強度の時間変化の例を示す図である。
【
図4】記憶部に記憶される複数のプリセットデータを示す図である。
【
図5】プリセットデータを用いた積算値の算出方法を説明する図である。
【
図6】
図1の光治療進度測定装置および光治療システムの作用を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る光治療進度測定装置および光治療システムの全体構成図である。
【
図8】第1蛍光強度および第2蛍光強度の各々の単位時間当たりの変化量の時間変化の例を示す図である。
【
図9】
図7の光治療進度測定装置および光治療システムの作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る光治療進度測定方法、光治療進度測定装置および光治療システムについて図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る光治療システム100は、内視鏡1によって患部Aを観察しながら、光応答性の蛍光薬剤によって患部Aを光治療する内視鏡システムである。患部Aは、例えば、食道のような上部消化管の癌である。蛍光薬剤は、患部Aに集積する特性を有する蛍光分子であり、励起光によって励起されることで活性化し治療効果を発揮する。蛍光薬剤は、例えば、パニツムマブ-IR700複合体またはヘマトポルフィリン誘導体である。
【0012】
光治療システム100は、体内の患部Aを観察する内視鏡1と、患部Aを照明するための照明光L1を発生する照明光源2と、患部Aを治療するための治療光L2を発生する治療光源3と、内視鏡1を経由して体内に挿入され治療光L2を患部Aに照射するプローブ(治療光照射部)4と、内視鏡画像を処理する画像処理部5と、内視鏡画像を表示する表示部(報知部)6とを備える。内視鏡1の基端には、内視鏡プロセッサ101が接続されている。
【0013】
内視鏡1は、軟性または硬性の長尺のスコープ7と、画像取得部8とを有する。スコープ7には、スコープ7を長手方向に貫通する処置具チャネル7aが設けられている。また、スコープ7の先端面には、照明窓7bおよび受光窓7cが設けられている。内視鏡1は、照明光源2から供給された照明光L1を照明窓7bから患部Aに向かって射出する。また、内視鏡1は、患部Aにおいて反射された照明光L1を受光窓7cにおいて受光し、患部Aの内視鏡画像を撮像素子を有する画像取得部8によって取得する。
【0014】
照明光源2は、白色の照明光L1を出力する。
治療光源3は、蛍光薬剤の励起波長を有する励起光である治療光L2を出力する。
プローブ4は、治療光L2を導光する光ファイバを有する長尺の光ファイバプローブであり、処置具チャネル7a内に挿入される。プローブ4の基端は、治療光源3と接続され、治療光L2がプローブ4の先端から患部Aに照射される。
画像処理部5は、画像取得部8から内視鏡画像を受け取り、必要に応じて内視鏡画像に処理を施した後に内視鏡画像を表示部6に出力する。
表示部6は、液晶ディスプレイ等の任意の表示装置である。
【0015】
図2は、分子標的抗体と蛍光物質との複合体であるパニツムマブ-IR700複合体を用いた光治療の実験結果に関する。光治療が進むにつれて患部Aにおける蛍光薬剤が消費され、それに伴って蛍光強度Fは減衰する。したがって、医師は、蛍光強度Fの減衰に基づいて、光治療が進んでいることを認識することができる。ただし、蛍光強度Fは、曲線aのように単調に減衰するとは限らず、曲線bおよび曲線cのように、光治療の終盤において上昇することがある。また、蛍光強度Fの減衰の速度も、条件等に応じて異なる。したがって、患部Aに投与された必要量の蛍光薬剤が消費されたか否か、つまり光治療が完了したか否かを、蛍光強度Fのみに基づいて判断することは難しい。
【0016】
蛍光強度Fが単調に減衰しない原因の1つは、光治療中の蛍光薬剤の再集積であると考えられる。すなわち、十分量の蛍光薬剤が静脈注射によって患者に投与された後、蛍光薬剤の一部は、患部Aに取り込まれずに血液とともに再循環し、光治療の終盤において、患部Aに再集積して蛍光強度Fの上昇を引き起こす。したがって、
図3に示されるように、蛍光強度F(曲線b参照。)は、光治療の開始前に患部Aに予め集積していた蛍光薬剤が発生する蛍光の強度(曲線d参照。)と、光治療の開始後に患部Aに再集積する蛍光薬剤が発生する蛍光の強度(曲線e参照。)との和である。
期間Iでは、光治療前に患部Aに予め集積した蛍光薬剤の蛍光が支配的であり、高い治療効果が得られる。期間IIでは、予め集積した蛍光薬剤の蛍光と再集積した蛍光薬剤の蛍光が混在し、治療効果はわずかである。期間IIIでは、再集積した蛍光薬剤の蛍光が支配的であり、患部Aに予め集積した蛍光薬剤に由来する光治療効果はほとんど得られない。
【0017】
光治療システム100は、医師が患部Aの光治療を終了するか否かを判断することを支援するために、患部Aの光治療の進度を測定する光治療進度測定装置10を備える。
図1に示されるように、光治療進度測定装置10は、蛍光強度(第1蛍光強度)Fを検出する光検出部11と、検出された蛍光強度Fを時系列に記憶する強度データ生成部12と、予め用意された複数のプリセットデータを記憶する記憶部13と、患部Aの光治療の進度を表す進度情報を算出する演算部14と、進度情報に基づいて患部Aの光治療が完了したか否かを判定する判定部15と、治療光L2の強度を調整する治療光調整部16とを備える。
【0018】
光治療進度測定装置10は、中央演算処理装置のような少なくとも1つのプロセッサと、RAM(random access memory)およびROM(read-only memory)のような記憶装置とを有する。記憶装置に記憶されたプログラムに従ってプロセッサが処理を実行することによって、強度データ生成部12、演算部14、判定部15および治療光調整部16の後述の処理が実現される。記憶部13は、記憶装置からなる。
【0019】
スコープ7の先端面には、蛍光Lfを選択的に透過させ蛍光Lfとは異なる波長域の光を遮断するバリアフィルタ7dが設けられている。光検出部11は、バリアフィルタ7dを透過した蛍光Lfの強度Fを検出し、蛍光強度Fを強度データ生成部12に送信する。例えば、光検出部11は、内視鏡プロセッサ101内またはスコープ7内に設けられた撮像素子を有し、蛍光強度Fの情報を含む蛍光画像を取得する。蛍光画像は、画像処理部5を経由して表示部6に送信され表示部6に表示されてもよい。光検出部11は、撮像素子以外の任意の種類の光検出器を有していてもよい。
【0020】
強度データ生成部12は、蛍光強度Fを時系列に記憶することによって強度データを生成する。例えば、強度データ生成部12は、蛍光画像の平均輝度値を強度値として記憶する。強度データは、
図2および
図3に示される曲線a,b,cのような、蛍光強度Fの時間変化を表すデータである。
図4に示されるように、記憶部13に予め記憶されている複数のプリセットデータD1,D2,D3,…は、再集積する蛍光薬剤の蛍光強度を含まない、治療光L2の照射による蛍光薬剤の蛍光強度の時間変化を表すデータである。
【0021】
例えば、プリセットデータD1,D2,D3,…は、試験管内の蛍光薬剤に治療光L2を照射し蛍光強度を経時的に検出および記憶することによって取得され、光治療を行う前に作業者によって記憶部13に記憶される。患部Aの蛍光強度の減衰の仕方は、測定距離、蛍光薬剤の濃度および治療光L2の照射強度等の様々なパラメータに応じて変化する。したがって、異なるパラメータの下で取得された複数のプリセットデータD1,D2,D3,…が、記憶部13に記憶される。
【0022】
演算部14は、蛍光強度Fが減衰しているか否かをリアルタイムで判断し、蛍光強度Fが初めて減衰しなくなったときに、強度データおよびプリセットデータを用いて進度情報の算出を開始する。
具体的には、演算部14は、光検出部11によって蛍光強度Fが検出される都度、その時点での蛍光強度Fの単位時間当たりの変化量ΔFを算出する。例えば、時刻ti(i=1,2,3,…)に蛍光強度F(ti)が検出された場合、時刻tiにおける変化量ΔF(ti)は、蛍光強度F(ti)と、直前の時刻ti-1に検出された蛍光強度F(ti-1)とを用いて下式から算出される。
ΔF(ti)=(F(ti)-F(ti-1))/(ti-ti-1)
【0023】
変化量ΔFが負である場合、すなわち蛍光強度Fが減衰している場合、演算部14は進度情報を算出しない。変化量ΔFが負ではない場合、すなわち変化量ΔFがゼロまたは正であり蛍光強度Fが一定または上昇している場合、演算部14は、進度情報を算出するための後述の処理を実行する。
【0024】
図5は、強度データおよびプリセットデータを用いた進度情報の算出方法を説明している。
進度情報は、治療開始から現時点までの蛍光強度Fの単位時間当たりの変化量を積算した積算値Iである。
図5には、積算値Iの時間変化を表す積算データが示されている。積算値Iは、患部Aへの治療光L2の照射によって患部Aにおいて消費された蛍光薬剤の消費量、すなわち患部Aの光治療の進度を表す。
【0025】
図5に示されるように、演算部14は、複数のプリセットデータの中から、強度データと最も類似する1つのプリセットデータを参照データとして選択する。具体的には、演算部14は、強度データにおける蛍光強度Fの時間変化の曲線を、複数のプリセットデータにおける蛍光強度Gの時間変化の曲線と比較し、強度データの曲線と最も形状が類似する曲線のプリセットデータを選択する。
次に、演算部14は、変化量ΔFが負ではないと初めて判断された後の補正変化量ΔF’を参照データを用いて算出し、補正変化量ΔF’と、変化量ΔFが負ではないと初めて判断される前の変化量ΔFとを用いて積算値Iを算出する。
図5において、時刻t
kは、変化量ΔFが負ではないと初めて判断された時刻である。
【0026】
補正変化量ΔF’は、患部Aに再集積する蛍光薬剤の蛍光強度の単位時間当たりの変化量を除去するように補正された変化量ΔFに相当し、患部Aでの蛍光薬剤の再集積が無い場合に期待される、患部Aに予め集積した蛍光薬剤の蛍光強度の正味の変化量である。変化量ΔFのみを用いて積算値Iを算出した場合、
図5の積算データにおいて鎖線で示されるように、積算値Iは、再集積する蛍光薬剤の蛍光強度に影響され、例えば、単調増加しなくなる。これに対し、変化量ΔFが負ではないと初めて判断された後、変化量ΔFに代えて補正変化量ΔF’を用いることによって、
図5の積算データにおいて実線で示されるように、再集積する蛍光薬剤の蛍光強度の影響が排除された積算値Iを算出することができる。
【0027】
具体的には、演算部14は、現時点と対応する時刻における蛍光強度Gの単位時間当たりの減衰率αを補正係数として算出する。時刻tiにおける減衰率α(ti)は、時刻ti,ti-1における蛍光強度G(ti),G(ti-1)を用いて下式から算出される。
α(ti)=1 - G(ti)/G(ti-1)
次に、演算部14は、蛍光強度F(ti)の直前に検出された蛍光強度F(ti-1)に減衰率α(ti)を乗算することによって、現時点tiでの補正変化量ΔF’(ti)を算出する。次に、演算部14は、補正変化量ΔF’(ti)を時刻ti-1の積算値I(ti-1)に加算することによって、積算値I(ti)を算出する。演算部14は、蛍光強度Fが検出される都度、減衰率α、補正変化量ΔF’および積算値Iを算出する。
【0028】
判定部15は、積算値Iを所定の閾値Thと比較する。積算値Iが閾値Th以下である場合、判定部15は、所定の閾値以下となったという判定結果を出力する。積算値Iが閾値Thよりも大きい場合、判定部15は、所定の閾値を超えたという判定結果を出力する。判定部15の判定結果は、治療光調整部16に送信されるとともに、表示部6に表示されることによって医師に報知される。
【0029】
治療光調整部16は、患部Aに照射される治療光L2の強度を判定部15の判定結果に基づいて調整する。具体的には、所定の閾値以下と判定された場合、治療光調整部16は、治療光源3からの治療光L2の出力を維持することによって、患部Aに照射される治療光L2の強度を維持する。一方、所定の閾値を超えたと判定された場合、治療光調整部16は、治療光源3を制御して治療光源3からの治療光L2の出力を低下または停止させることによって、患部Aに照射される治療光L2の強度を低減させる。
【0030】
次に、光治療システム100および光治療進度測定装置10の作用について、
図6を参照して説明する。
光治療システム100を使用して患部Aを光治療するために、まず、例えば患者に静脈注射することによって蛍光薬剤が患部Aに投与される。静脈注射後、蛍光薬剤が患部Aに集積するまで時間を要する。静脈注射から所定時間(例えば、24時間)後、医師は、照明光源2を点灯し、表示部6に表示される内視鏡画像を観察しながら内視鏡1を患者の体内に挿入し、内視鏡1の先端を患部Aの近傍に配置する。次に、医師は、内視鏡1の処置具チャネル7aを経由してプローブ4を体内に挿入することによってプローブ4の先端を患部Aの近傍に配置し、治療光源3を点灯させる。これにより、プローブ4の先端から患部Aへの治療光L2の照射が開始され、患部Aの光治療が開始される(ステップS1)。
【0031】
光治療中、医師は、表示部6に表示される内視鏡画像内の患部Aの蛍光強度Fの減衰に基づいて光治療が進行していることを確認する。ただし、蛍光強度Fは、光治療中に患部Aに再集積する蛍光薬剤に影響されるので、蛍光強度Fが必ずしも光治療の進度を正確に表すとは限らない。したがって、光治療が完了したか否かを蛍光強度Fのみに基づいて判断することは難しい。
【0032】
本実施形態によれば、光治療中、光治療進度測定方法が光治療進度測定装置10によって実行される。
光治療進度測定方法は、治療光L2の照射によって患部Aにおいて発生する蛍光Lfの強度Fを検出するステップS2,S11と、蛍光強度Fを記憶し蛍光強度Fの時間変化を表す強度データを生成するステップS3,S12と、蛍光強度Fの変化量ΔFを判定するステップS4,S5と、光治療の進度を表す進度情報を算出するステップS6~S8と、進度情報に基づいて患部Aの光治療が完了したか否かを判定するステップS9とを含む。
【0033】
光治療の開始後、光検出部11によって蛍光強度Fが検出され(ステップS2)、強度データ生成部12によって蛍光強度Fが時系列に記憶され強度データが生成される(ステップS3)。次に、演算部14によって、蛍光強度Fの単位時間当たりの変化量ΔFが算出され(ステップS4)、変化量ΔFが負であるか否か、すなわち蛍光強度Fが単調に減衰しているか否かが判断される(ステップS5)。変化量ΔFが負である場合(ステップS5のYES)、ステップS2~S4が繰り返される。
【0034】
変化量ΔFが負ではない場合(ステップS5のNO)、演算部14によって、強度データおよび参照データを用いて患部Aの進度情報が算出される(ステップS6~S8)。具体的には、複数のプリセットデータの中から、強度データと最も類似するプリセットデータが参照データとして選択される(ステップS6)。次に、演算部14によって、参照データを用いて蛍光強度Fの補正変化量ΔF’が算出され、ステップS4において算出された変化量ΔFと補正変化量ΔF’とを用いて進度情報である積算値Iが算出される。
【0035】
次に、判定部15によって、積算値Iが所定の閾値Thと比較される(ステップS9)。積算値Iが閾値Th以下であると判定された場合(ステップS9のNO)、光治療の未完了を示す情報が表示部6に表示されることによって、光治療の未完了が医師に報知される(ステップS10)。その後、積算値Iが閾値Th以下であると判定されるまで、ステップS11,S12,S7,S8の蛍光強度Fの検出、強度データの生成および進度情報の算出が繰り返される。
【0036】
積算値Iが閾値Thよりも大きいと判定された場合(ステップS9のYES)、光治療の完了を示す情報が表示部6に表示されることによって、光治療の完了が医師に報知される(ステップS13)。また、患部Aに照射される治療光L2の強度が治療光調整部16によって低減される(ステップS14)。
【0037】
医師は、表示部6に表示される判定結果に基づいて、光治療を終了するか否かを判断する。具体的には、所定の閾値Th以下となったという判定結果が出力された場合、医師は、患部Aへ治療光L2を照射し続ける。一方、所定の閾値Thを超えたという判定結果が出力された場合、医師は、治療光源3を消灯させることによって患部Aへの治療光L2の照射を終了し、患部Aの光治療を終了する。
【0038】
前述したように、光治療中、医師は、光治療が完了したか否かを患部Aの蛍光強度Fのみに基づいて判断することは難しい。本実施形態によれば、予め用意された複数のプリセットデータD1,D2,D3,…が記憶部13に記憶されている。プリセットデータD1,D2,…は、治療光L2の照射によって単調減少する蛍光薬剤の蛍光強度のデータであり、再集積する蛍光薬剤の蛍光強度を含まない。すなわち、プリセットデータD1,D2,D3,…は、光治療中に蛍光薬剤の患部Aへの再集積が発生しない場合の、治療光L2の照射による患部Aの蛍光強度Fの典型的な時間変化のモデルである。
【0039】
このようなプリセットデータD1,D2,D3,…のいずれかを用いることによって、再集積する蛍光薬剤の蛍光強度の単位時間の変化量が除外された補正変化量ΔF’が算出される。そして、補正変化量ΔF’を用いて、光治療によって消費された蛍光薬剤の正確な消費量を表す積算値Iを進度情報として算出することができ、光治療の正確な進度を測定することができる。また、進度情報に基づいて光治療が完了したか否かを正確に判定することができる。
【0040】
また、蛍光強度Fは、患部Aにおける蛍光薬剤の消費量と直接関係するパラメータであり、蛍光強度Fから進度情報をリアルタイムに算出することができる。これにより、光治療の正確な進度をリアルタイムに測定し、光治療が完了したか否かをリアルタイムに判定することができる。
蛍光強度以外の情報を用いて光治療の進度を間接的に測定する場合、光治療の進度をリアルタイムに測定することは難しい。
【0041】
本実施形態において、参照データから算出される減衰率αを蛍光強度Fに乗算することによって、補正変化量ΔF’を算出することとしたが、補正変化量ΔF’の算出方法はこれに限定されるものではなく、再集積する蛍光薬剤に由来する変化量が除外された、患部に予め集積した蛍光薬剤に由来する正味の変化量ΔF’を算出することができる限りにおいて、任意の算出方法を用いることができる。
【0042】
一変形例において、蛍光強度Fが減衰しないとの初めての判断以降、参照データの蛍光強度G(ti)の単位時間当たりの変化量ΔG(ti)を補正変化量ΔF’(ti)として用いてもよい。
他の変形例において、蛍光強度Fが減衰しないとの初めての判断以降、参照データの蛍光強度G(ti)を強度データの蛍光強度F(ti)として用いてもよい。すなわち、蛍光強度Fが減衰しないと初めて判断された後の強度データの蛍光強度Fが、参照データの蛍光強度Gに置換され、蛍光強度Gの単位時間当たりの変化量ΔGが補正変化量ΔF’として算出される。
これらの変形例によれば、補正変化量ΔF’が参照データのみから予測されるので、蛍光強度Fが減衰しないと初めて判断された後、蛍光強度Fを検出および記憶する必要がない。したがって、進度情報の算出にかかる処理を単純化することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光治療進度測定方法、光治療進度測定装置および光治療システムについて図面を参照して説明する。
本実施形態に係る光治療システム200は、光治療進度測定装置20が、再集積した蛍光薬剤の蛍光強度である第2蛍光強度のデータを参照データとして取得し、第2蛍光強度のデータを用いて進度情報を算出する点において、第1実施形態の光治療システム100と相違する。本実施形態においては、第1実施形態と相違する点において説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7に示されるように、光治療システム200は、内視鏡1と、照明光源2と、治療光源3と、プローブ4と、画像処理部5と、表示部6と、光治療進度測定装置20とを備える。
光治療進度測定装置20は、光検出部11と、演算部14と、判定部15と、治療光調整部16とを備える。
【0045】
本実施形態において、治療光調整部16は、治療光源3の出力を、高出力の第1出力と低出力の第2出力との間で切り替えることによって、患部Aに照射される光を治療光L2と測定光L3との間で切り替える。治療光L2は、光治療に必要な第1強度を有する光である。蛍光薬剤は、任意の光強度の励起光で蛍光を発するが、十分に高い光強度でのみ光治療効果を発揮する。光治療効果を発揮した蛍光薬剤は、蛍光分子の分子構造が崩れて蛍光を発しなくなる特性を有する。測定光L3は、第1強度よりも小さい第2強度を有し、蛍光薬剤に光治療効果を発揮させない弱い光である。すなわち、測定光L3は、治療光L2を減弱させた光である。例えば、第1強度は約100mWであり、第2強度は数nWである。測定光L3は、予め患部に集積した未消費の蛍光薬剤と、患部Aに再集積し患部Aに結合していない蛍光薬剤との両方に作用して、これら2種類の状態の蛍光薬剤からの蛍光の総和としての蛍光Lfを発生させる。
【0046】
光検出部11は、第1蛍光強度F1と第2蛍光強度F2を交互に検出し、蛍光強度F1,F2を演算部14に出力する。第1蛍光強度F1は、治療光L2の照射によって患部Aにおいて発生する蛍光Lfの強度であり、患部Aに予め集積した蛍光薬剤と再集積した蛍光薬剤とが発生する蛍光Lfの強度である。第2蛍光強度F2は、測定光L3の照射によって患部Aにおいて発生する蛍光Lfの強度であり、患部Aに再集積した蛍光薬剤が発生する蛍光の強度である。演算部14が第1蛍光強度F1と第2蛍光強度F2とを区別するために、第1蛍光強度F1および第2蛍光強度F2は、治療光L2および測定光L3とそれぞれ関連付けてられている。
【0047】
演算部14は、光検出部11によって第1蛍光強度F1が検出される都度、その時点での第1蛍光強度F1の単位時間当たりの変化量ΔF1を算出し、光検出部11によって第2蛍光強度F2が検出される都度、その時点での第2蛍光強度F2の単位時間当たりの変化量ΔF2を算出する。ΔF1およびΔF2は、第1実施形態のΔFと同様の方法によって算出される。次に、演算部14は、変化量ΔF1と変化量ΔF2との間の一致度を進度情報として算出する。例えば、一致度は、ΔF1とΔF2との間の差または比を用いて表され、ΔF1とΔF2との差がゼロに近い程、一致度は高くなる。
【0048】
図8に示されるように、患部Aの光治療の完了時、患部Aの蛍光強度F1の変化は再集積した蛍光薬剤の蛍光強度F2の変化が支配的となるので、変化量ΔF1は変化量ΔF2と等しくまたは略等しくなる。したがって、患部Aの光治療が完了に近付くにつれて、一致度は高くなる。
変化量ΔF1と変化量ΔF2は、異なる強度の光L2,L3に基づく量である。したがって、変化量ΔF1,ΔF2が同一強度の光L2,L3を照射した場合の値となるように変化量ΔF1,ΔF2を規格化し、規格化された変化量ΔF1,ΔF2を用いて一致度を算出してもよい。
【0049】
判定部15は、一致度を所定の閾値Thと比較する。一致度が閾値Th以下である場合、判定部15は、一致度が所定の閾値Th以下であるという判定結果を出力する。一致度が閾値Thよりも大きい場合、判定部15は、一致度が所定の閾値Thを超えたという判定結果を出力する。
【0050】
次に、光治療システム200および光治療進度測定装置20の作用について、
図9を参照して説明する。
第1実施形態と同様に、光治療中、
図9に示される光治療進度測定方法が光治療進度測定装置20によって実行される。
光治療進度測定方法は、患部Aに治療光L2を照射するステップS21と、治療光L2の照射によって患部Aにおいて発生する蛍光の強度である第1蛍光強度F1を検出するステップS22と、患部Aに測定光L3を照射するステップS24と、測定光L3の照射によって患部Aにおいて発生する蛍光の強度である第2蛍光強度F2を検出するステップS25と、蛍光強度F1,F2を用いて進度情報を算出するステップS23,S26,S27と、進度情報に基づいて患部Aの光治療が完了したか否かを判定するステップS28とを含む。
【0051】
光治療の開始後、治療光L2および測定光L3が交互に患部Aに照射され(ステップS21,S24)、第1蛍光強度F1および第2蛍光強度F2が交互に光検出部11によって検出される(ステップS22,S25)。そして、演算部14によって、第1蛍光強度F1および第2蛍光強度F2の各々の単位時間当たりの変化量ΔF1,ΔF2が算出され(ステップS23,S26)、変化量ΔF1と変化量ΔF2との一致度が進度情報として算出される(ステップS27)。
【0052】
次に、判定部15によって、一致度が所定の閾値Thと比較される(ステップS28)。一致度が閾値Th以下である場合(ステップS28のNO)、所定の閾値Th以下であると判定部15によって判定され、その旨の判定結果が医師に報知される(ステップS10)。閾値Th以下である旨の判定後、閾値Thを超えたと判定されるまで、ステップS21~S27が繰り返される。
一致度が閾値Thよりも大きい場合(ステップS28のYES)、所定の閾値Thを超えたと判定部15によって判定され、その旨の判定結果が医師に報知され(ステップS13)、治療光L2の強度が治療光調整部16によって低減される(ステップS14)。
【0053】
このように、本実施形態によれば、光治療中、患部Aに再集積する蛍光薬剤の第2蛍光強度F2が参照データとして取得される。光治療が完了に近付く程、変化量ΔF1は変化量ΔF2に近付き、変化量ΔF1と変化量ΔF2との一致度は患部Aの光治療の正確な進度を表す。このような一致度を進度情報として算出することができ、光治療の正確な進度を測定することができる。また、進度情報に基づいて光治療が完了したか否かを、医師が正確に判定することができる。
また、一致度が蛍光強度F1,F2からリアルタイムに算出される。これにより、光治療の正確な進度をリアルタイムに測定し、光治療が完了したか否かを医師がリアルタイムに判定することができる。
【0054】
本実施形態において、光治療進度測定装置20が、光治療の開始と同時に光治療の進度の測定を開始することとしたが、これに代えて、第1実施形態と同様に、変化量ΔF1が初めて負でなくなったときに、光治療の進度の測定を開始してもよい。
すなわち、光治療開始後、演算部14は、第1蛍光強度F1が検出される度に変化量ΔF1を算出する。治療光調整部16は、光治療開始から変化量ΔF1が初めて負でなくなるまで治療光源3から治療光L2を出力させ、変化量ΔF1が初めて負でなくなって以降、治療光L2および測定光L3を交互に治療光源3から出力させる。
この構成によれば、初めて変化量ΔF1が負になるまでずっと治療光L2が患部Aに照射されるので、患部Aの治療時間を短縮することができる。
【0055】
本実施形態において、治療光L2と測定光L3との間の切り替えが、治療光源3の出力の切り替えによって行われることとしたが、これに代えて、患部Aまでの治療光L2の照射距離が変更されることによって行われてもよい。照射距離は、治療光L2が射出されるプローブ4の先端から患部Aまでの距離である。照射距離の変更は、例えば、医師がプローブ4を長手方向に往復させることによって手動で行われるか、または、図示しないモータがプローブ4を往復させることによって自動で行われる。
照射距離を長くすることによって、患部Aに照射される治療光L2の強度を低下させ、低強度の治療光L2を測定光L3として使用することができる。
また、本実施形態において、治療光源3とは別に、測定光L3を発生し出力する測定光源が設けられていてもよい。
【0056】
上記第1および第2実施形態において、表示部6は、判定部15の判定結果に加えて、またはこれに代えて、進度情報を表示してもよい。例えば、表示部6は、進度情報として、積算値I、変化量ΔF1,ΔF2および一致度の数値を表示してもよく、これらの時間変化を表すグラフを表示してもよい。
【0057】
また、表示部6は、各患部Aの光治療の進度を表す表示を進度情報として内視鏡画像に重ねて表示してもよい。この構成によれば、医師は、内視鏡画像内の患部Aに付される表示に基づき、各患部Aの進度を容易に把握することができる。
例えば、内視鏡画像内の各患部Aに「P1」、「P2」、「P3」および「P4」のいずれかが付される。「P1」は、蛍光強度Fが単調に減衰し光治療が進行している段階を示す。「P2」は、蛍光強度Fの時間変化が略ゼロであり光治療の進行が停止した段階を示す。「P3」は、蛍光強度Fが上昇し光治療と蛍光薬剤の再集積の両方が進行する段階を示す。「P4」は、光治療の進行が停止し蛍光薬剤の再集積のみが進行する段階を示す。
【0058】
上記第1および第2実施形態において、報知部が、判定部15の判定結果を表示する表示部6であることとしたが、これに代えて、他の手段を用いて判定結果を報知してもよい。例えば、報知部は、判定結果に応じた音を出力してもよい。
上記第1および第2実施形態において、光治療進度測定装置10,20が、内視鏡システムの一部であることとしたが、これに代えて、内視鏡システムとは独立した装置であってもよい。例えば、光治療進度測定装置10,20は、内視鏡プロセッサ101とは別体の装置であり、内視鏡1の外側に配置されるプローブを経由して患部Aの蛍光Lfの検出および患部Aへの測定光L3の照射を行ってもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、参照データが、光治療中に患部に再集積する蛍光薬剤の蛍光の強度である第2蛍光強度のデータであるか、または、再集積する蛍光薬剤の蛍光の強度を含まない蛍光薬剤の蛍光の強度の治療光の照射による時間変化を表すプリセットデータである場合を例に説明したが、参照データは、上記に限らず、光治療に関与しない患部中の蛍光薬剤に関連付いた蛍光強度に基づき、治療光L2による光治療の終盤の蛍光強度に含まれ得る、光治療に関与しない患部中の蛍光薬剤に基づく蛍光と関連付けて決定されるデータであれば、他の参照データであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
100,200 光治療システム
10,20 光治療進度測定装置
3 治療光源
4 プローブ(治療光照射部)
6 表示部(報知部)
8 画像取得部
11 光検出部
12 強度データ生成部
13 記憶部
14 演算部
15 判定部
16 治療光調整部
A 患部
D1,D2,D3 プリセットデータ
F,F1 第1蛍光強度
F2 第2蛍光強度
ΔF,ΔF1,ΔF2 変化量
I 積算値