(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】部品実装用ノズル及び部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2023539432
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028846
(87)【国際公開番号】W WO2023012912
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和広
(72)【発明者】
【氏名】野里女 正広
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-018905(JP,A)
【文献】特開2006-054365(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162699(WO,A1)
【文献】実開平02-020397(JP,U)
【文献】特開平01-215099(JP,A)
【文献】特開2012-004306(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置における前記ノズルであって、
前記ノズルは、先端に部品の吸着面を備えた軸状のノズル本体部と、このノズル本体部における前記先端よりも基端側の位置で当該ノズル本体部を中心として前記吸着面と平行に外向きに広がる部品背景面を備えた背景形成部と、を備え、
前記ノズル本体部は、その中心軸に沿って前記先端の側から視たときに、基端部が前記吸着面によって隠れるように形成され、
前記部品及び前記ノズルで反射する前記照明光の反射光を二次光源と見做したときに、当該ノズルは、その輝度が前記部品の輝度よりも高くなるように構成され
、
前記照明光の下で前記部品認識カメラにより前記ノズルを部品未吸着状態で撮像したときに、前記部品背景面が、前記吸着面よりも暗く写るように前記ノズル本体部が構成されている、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装用ノズルにおいて、
前記ノズル本体部の基端部にくびれ部が形成されている、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品実装用ノズルにおいて、
前記ノズル本体部は、その先端から基端に向かって外径が小さくなる、テーパ形状である、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の部品実装用ノズルにおいて、
前記ノズル本体部は、前記吸着面を備えたフランジ状の先端部を有する、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の部品実装用ノズルにおいて、
前記ノズル本体部と前記背景形成部とは、同一材料により一体に形成され、
前記ノズル本体部の基端部は、前記部品背景面に繋がるR部分を含む、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか一項に記載の部品実装用ノズルにおいて、
前記ノズル本体部と前記背景形成部とは、同一材料により一体に形成され、
前記ノズル本体部の基端部は、前記部品背景面に繋がるR部分を含み、
前記ノズル本体部は、その中心軸に沿って前記先端の側から視たときに、前記R部
分と前記部品背景面との境界部が前記吸着面の外縁部よりも内側にある、ことを特徴とする部品実装用ノズル。
【請求項7】
部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置において、
前記ノズルとして、請求項1
乃至6の何れか一項に記載の部品実装用ノズルを備えている、ことを特徴とする部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品供給部から部品を吸着して取り出し、この部品を基板上に搬送して実装(搭載)する部品実装用ノズル、及びこの部品実装用ノズルを備えた部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動可能なヘッドにより部品供給部から部品(チップ部品)を取り出して基板上に搬送し、当該部品を基板の所定位置に実装する部品実装装置が知られている。例えば特許文献1には、ヘッドに備えられた部品実装用のノズルで部品を負圧吸着して搬送する、部品実装装置が開示されている。この部品実装装置では、搬送中の部品がその下方から部品認識カメラによって撮像され、その画像に基づき、ノズルに対する部品の位置ずれ(吸着ずれ)が認識される。そして、その位置ずれに応じたヘッドの位置補正が行われることにより、部品の実装精度が高められる。
【0003】
前記ノズルは、部品を吸着するノズル軸と、このノズル軸が垂直に貫通するように設けられた反射板とを備え、側方から照射される照明光を反射板で反射させることにより、ノズルに吸着された部品に対してその後方(上方)から照明光を照射する。つまり、部品認識カメラは、部品の投影画像を撮像する。
【0004】
特許文献1の部品実装装置は、既述の通り、部品の投影画像に基づいて部品を認識する構成である。これに対して、部品下面で照明光を反射させ、当該反射光を部品認識カメラで受光することにより取得される画像(反射画像)に基づいて部品を認識する部品実装装置も広く知られている。
【0005】
この種の部品実装装置では、例えば
図12Aに示すタイプのノズル100が適用されるケースが多い。ノズル100は、部品105の外径サイズとほぼ同等の吸着面102aを先端(下端)に備えるノズル本体部102と、ノズル本体部102の上端に一体に形成された鍔状の背景形成部104とを備える。背景形成部104は、画像上、吸着面102aに吸着された部品105の背後に、無地の背景を形成する部位である。背景を形成することで、部品105を明確にして認識精度を向上させる狙いがある。しかし、ここに、次のような課題がある。
【0006】
表面輝度(照明光の反射光を二次照明と見做したときの輝度)が相対的に低い部品(黒又は黒に近いグレーの部品)が実装対象となる場合、ノズル100は、その表面輝度が部品105の表面輝度よりも相対的に高くなるように(白くなるように)形成される。これは、部品105の画像と、背景形成部104を含むノズル100の画像とのコントラスト差を大きくし、部品105を際立たせて認識精度を高めるためである。しかし、この構成によると、
図12Bに示すように、ノズル本体部102の基端部が薄暗くリング状に写る現象が発生し易くなる。そのため、
図12Cに示すように、例えば画像上で部品のエッジ部分とノズル本体部102の基端部とが重なっていると、部品105の認識精度に影響が出来る場合がある。
【0007】
既述のような現象は、ノズル本体部102の基端部に形成されているR部102b(裾野状の部分)による照明光の反射の具合に起因する。そこで、ノズル100の加工精度を高めてR部102bを無くすことが考えられるが、完全に無くすことは物理的に難しい。また、ノズル本体部102と背景形成部104とを別体とし、ノズル本体部102を背景形成部104の孔部に挿入(嵌合)して一体化することにより、R部102bを無くすことも考えられる。しかし、背景形成部104とノズル本体部102との間に隙間が出来ると、当該隙間における照明光の反射の影響で、類似した現象が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされてものであり、その目的は、部品実装用ノズルにおいて、吸着部品の画像認識の精度を向上させること、また、吸着部品の画像認識の精度の向上を通じて、基板への部品の実装精度を向上させることを目的とする。
【0010】
本発明の一局面に係る部品実装用ノズルは、部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置における前記ノズルであって、前記ノズルは、先端に部品の吸着面を備えた軸状のノズル本体部と、このノズル本体部における前記先端よりも基端側の位置で当該ノズル本体部を中心として前記吸着面と平行に外向きに広がる部品背景面を備えた背景形成部と、を備え、前記ノズル本体部は、その中心軸に沿って前記先端の側から視たときに、基端部が前記吸着面によって隠れるように形成されている。
【0011】
このノズルの構成によれば、ノズル本体部の基端部(根元部分)が吸着面に隠れるため、ノズル本体の基端部が薄暗くリング状に写る現象が抑制ないし解消される。そして、当該現象が抑制ないし解消されることで、画像上、部品のエッジ部分がより鮮明となり、ノズルに吸着された部品の画像認識の精度が向上する。
【0012】
また、本発明の一局面に係る部品実装装置は、部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置であって、前記ノズルとして、上記部品実装用ノズルを備えている。
【0013】
この部品実装装置によれば、上述したような部品実装用ノズルを備えているため、ノズルに吸着された部品の画像認識の精度が向上する。このように部品の画像認識精度が向上することで、ノズルに対する部品の吸着ずれ等の補正精度が向上し、その結果、基板への部品の実装精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る部品実装装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、ヘッドユニット及び部品認識カメラの概略図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態に係るノズルの正面図(片側断面図)である。
【
図5】
図5は、部品が吸着された状態のノズルの下面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るノズルの正面図(片側断面図)である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の変形例に係るノズルの正面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係るノズルの正面図(片側断面図)である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の変形例に係るノズルの正面図(片側断面図)である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の変形例に係るノズルの正面図(片側断面図)である。
【
図11C】
図11Cは、部品が吸着された状態の第2実施形態のノズルの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳述する。
【0016】
[部品実装装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る部品実装装置1(本発明に係る部品実装用ノズルを備えた部品実装装置)の全体構成を示す、上面視の平面図である。部品実装装置1は、電子部品等の部品をプリント基板等の基板Pに実装する装置である。部品実装装置1は、基台2、コンベア4、部品供給部5、ヘッドユニット6、及び部品認識カメラ16を含む。
【0017】
基台2は、部品実装装置1が備える各種の機器の搭載ベースである。コンベア4は、基台2上にX方向に延びるように設置された、基板Pの搬送ラインであり、一対のベルト式コンベア4aで構成されている。コンベア4は、機外から所定の実装作業位置に基板Pを搬入し、実装作業後に基板Pを実装作業位置から機外へ搬出する。コンベア4は、基板Pを実装作業位置で保持する図略のクランプ機構を有する。なお、
図1中に示す基板Pの位置が、実装作業位置である。
【0018】
部品供給部5は、チップ部品(小型の表面実装部品)を供給するエリアであり、Y方向において、コンベア4の両側に各々設けられている。部品供給部5には、複数のテープフィーダ5aが設置され、各テープフィーダ5aによりチップ部品(以下、単に部品と称す)が供給される。テープフィーダ5aは、一定間隔で部品が収納されたテープを繰り出しながら、部品を供給する。
【0019】
ヘッドユニット6は、部品供給部5において部品をピッキングし、実装作業位置へ移動すると共に、基板Pにチップ部品を実装する。
図2に示すように、ヘッドユニット6は、ピッキングの際に部品を吸着して保持し、実装の際に保持している部品をリリースする複数のヘッド20を備える。ヘッド20は、ヘッドユニット4に対するZ方向への進退(昇降)移動と、軸回りの回転移動とが可能である。各ヘッド20の構造については、後に詳述する。
【0020】
部品実装装置1は、ヘッドユニット6を、少なくとも部品供給部5と実装作業位置において保持された基板Pとの間の上方空間を、水平方向(X及びY方向)に移動させる駆動機構10を備える。駆動機構10は、直交型ロボットで構成されている。すなわち、駆動機構10は、基台2に設置された一対の高架フレームに各々固定された固定レール12と、固定レール12に沿ってY方向に移動するビーム14と、ビーム14に沿ってX方向に移動する図外のユニット支持部とを備える。このユニット支持部にヘッドユニット6が組付けられている。ビーム14及びユニット支持部材は各々モータの駆動力で移動する。これらビーム14及びユニット支持部材の移動により、ヘッドユニット6がX-Y方向の任意の位置に移動する。
【0021】
部品認識カメラ16は、ヘッドユニット6により部品供給部5から基板Pへ搬送される部品を撮像する。部品認識カメラ16が撮像した画像に基づきヘッド20による部品の吸着状態が認識され、その認識結果に基づきヘッドユニット6の移動位置が補正される。これにより基板Pに対する部品の実装位置の精度が高められる。
【0022】
部品認識カメラ16は、基台2上の各部品供給部5と実装作業位置(コンベア4)との間に配置されている。
図2に示すように、部品認識カメラ16は、カメラ本体17と照明装置18とを含む。カメラ本体17は、イメージセンサ(CCDやCMOS)と、当該イメージセンサに部品の画像を結像させるための光学系とを備える。照明装置18は、ドーム状に配列された複数のLEDを備え、ヘッド20に保持された部品に対して下方から照明光を照射する。この構成により、部品認識カメラ16は、ヘッド20に保持された部品に対して下方から照明光を照射し、部品で反射した反射光をカメラ本体17で受光する。これにより部品を撮像する。
【0023】
[ヘッド20の構造]
図3は、ヘッド20の正面図である。ヘッド20は、昇降シャフト21aと、その下端部に連結されたノズルユニット21bとを備えた、総じてZ方向(上下方向)に延在する軸状の構造を有する。
【0024】
昇降シャフト21aは、Z方向への進退(昇降)移動と、軸回りの回転移動となるようにヘッドユニット6に支持されており、図外のモータの駆動力により作動する。この昇降シャフト21aの作動により、ヘッドユニット6に対してヘッド20が昇降及び回転する。
【0025】
ノズルユニット21bは、昇降シャフト21aの下端部に連結されるホルダ22と、Z方向の進退(昇降)移動が可能となるようにホルダ22に保持されたノズルシャフト23と、ノズルシャフト23の下端部に固定されたノズル25と、ノズルシャフト23の外周に装着されたコイルスプリング24とを備える。
【0026】
部品のピックアップ時には、ヘッド20(ノズルユニット21b)下端のノズル25によって部品が吸着される。部品の吸着時には、ヘッド20が下降し、ノズル25が部品に対して上方から当接する。この際、コイルスプリング24の弾発力に抗してノズル25がノズルシャフト23と共にホルダ22に対して上昇する、変位吸収機能が発揮される。この変位吸収機能により、部品に対するノズル25の衝突荷重が軽減される。
【0027】
図4Aは、ノズル25の側面図(片側断面図)であり、
図4Bは、ノズル25の下面図である。ノズル25は、先端(下端)に部品の吸着面26aを備えた円筒状のノズル本体部26と、このノズル本体部26の基端(上端)に繋がる円筒状の背景形成部27とを備える。ノズル25は、金属材料により一体に形成されている。つまり、ノズル本体部26と背景形成部27とは同一の金属材料により一体に形成されている。なお、ノズル25は金属材料に限らず、セラミックや樹脂材料で構成される場合もある。
【0028】
背景形成部27の外径はノズル本体部26の外径よりも大きく、ノズル25は、外径が互いに異なる2つの円筒部がZ方向に並んだ、段付き円筒形状と言える。
【0029】
ノズル25は、その中心軸Oに沿ってZ方向に貫通する吸引孔28を有する。吸引孔28は、ノズルシャフト23、ホルダ22及び昇降シャフト21aの各々の内部通路、及びバルブ等を介して図外の負圧供給源に連通している。これら内部通路及び吸引孔28を通じてノズル25の先端に負圧が供給される。これにより、吸着面26aに部品が吸着される。吸着面26aは、ノズル25の中心軸Oに直交する平面で形成されている。
【0030】
背景形成部27は、ノズル25に吸着された部品(以下、単に吸着部品という場合がある)が部品認識カメラ16によって撮像される際に、部品の背景を形成する部位である。背景形成部27の下端には、ノズル本体部26を中心として吸着面26aと平行に外向きに広がる円環状の部品背景面27aが形成されている。この構成により、ノズル25の中心軸Oに沿って吸着部品が下方から部品認識カメラ16で撮像されると、画像上、部品の背後に部品背景面27aによる無地の背景が形成される。
【0031】
当例において、実装対象となる部品の色は、黒又は黒に近いグレーである。そのため、ノズル25は、部品に比してより明るく(白く)写るように構成されている。つまり、照明装置18から照射されて部品表面及びノズル表面で反射する反射光を二次光源と見做したとき、ノズル25の輝度が部品の輝度よりも高くなるように、照明光を拡散反射させる処理や加工が施されている。なお、以下の説明において「輝度」とは、この二次光源の輝度を指す。
【0032】
ノズル25の材質にもよるが、例えば、材質が金属の場合には、表面研磨、サンドブラスト、放電加工、薬品処理、メッキ処理、及び塗装処理等が、前記処理加工の代表例である。当例では、ノズル表面の面粗度Raが0.8~6.3μm程度となるようにノズル25が形成されている。この構成により、画像上、部品と、その背景とのコントラスト差が大きくなって部品のエッジ部分が際立ち、部品がより認識され易くなる。
【0033】
図4Aに示すように、ノズル本体部26の外径は、その基端部を除き、軸方向に亘って同一である。ノズル本体部26の基端部(根元部分)には、くびれ部26cが形成されている。くびれ部26cは、ノズル本体部26の外周面26bの全周に亘って連続的に形成された断面円弧状の溝である。くびれ部26cは、その円弧面と部品背景面27aとの境界部Bpが、ノズル本体部26の外周面26bの位置(符号Lで示すラインの位置)よりもノズル25の径方向内側に位置するように形成されている。なお、くびれ部26cの上端面は、背景形成部27の部品背景面27aと段差無く連続しており、当該部品背景面27aと連続した面を形成している。
【0034】
[作用効果]
実施形態のノズル25は、先端(下端)に部品の吸着面26aを備えた円筒状のノズル本体部26と、その基端(上端)に繋がる円筒状の背景形成部27とを備える。部品は、ノズル本体部26の先端に吸着されて、部品供給部5から基板Pへの搬送中に、部品認識カメラ16により下方から撮像される。この際、実施形態のノズル25によると、画像上、部品の背後に部品背景面27aによる無地の背景が形成されるため、部品の認識処理において部品の背景部分の画像がノイズとなり難い。また、ノズル25は、黒又は黒に近いグレーの部品を想定して、当該部品よりも輝度が高くなるように構成されているため、画像上、部品と背景部分とのコントラスト差が大きくなり易く、部品のエッジ部分が際立つ。そのため、高い精度で部品を認識することができる。
【0035】
しかも、ノズル25のノズル本体部26は、基端部(根元部分)にくびれ部26cが設けられており、当該基端部以外は、軸方向に亘って外径が同一である。つまり、ノズル本体部26は、その先端が最大径Dmと言える。この構成によると、
図4Bに示すように、中心軸Oに沿って下方からノズル25を視た場合に、つまり、部品認識カメラ16で撮像した場合に、ノズル本体部26の基端部(根元部分)が吸着面26aで隠れる。そのため、ノズル本体部26の基端部が薄暗いリング状に写る現象(
図12B参照)が抑制ないし解消される。そして、この現象が抑制ないし解消されることで、
図5に示すように、画像上、部品Cのエッジ部分がより鮮明となり、ノズル25に吸着された部品Cの画像認識の精度が向上する。
【0036】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係るノズル25Aの正面図(片側断面図)である。第2実施形態のノズル25Aも、先端(下端)に部品の吸着面26aを備えたノズル本体部26と、その基端(上端)に繋がる背景形成部27とを備える。
【0037】
ノズル本体部26は、その先端(下端)から基端に向かって外径が小さくなる、テーパ形状(円錐台形状)である。ノズル本体部26の基端部には、第1実施形態のようなくびれ部26cは設けられていない。ノズル本体部26の基端部には、R部26dが形成されており、ノズル本体部26は、このR部26dを介して背景形成部27(部品背景面27a)に繋がっている。R部26dは、ノズル本体部26の先端側から基端側に向かって末広がりとなるように湾曲した部分である。ノズル本体部26は、このR部26dと部品背景面27aとの境界部Bpが、ノズル本体部26の最大径Dmの位置(符号Lで示すラインの位置)、すなわち、ノズル本体部26の先端外周の位置よりも径方向内側に位置するように形成されている。
【0038】
第2実施形態のノズル25Aのノズル本体部26も、その先端が最大径Dmとなるように形成されているため、中心軸Oに沿って下方からノズル25Aを視た場合には、ノズル本体部26の基端部(根元部分)が吸着面26aに隠れる。これにより、ノズル本体部26の基端部が薄暗いリング状に写る現象(
図12B参照)が抑制ないし解消される。従って、第2実施形態のノズル25Aによれば、第1実施形態のノズル25と同様に、吸着部品の画像認識の精度が向上する。
【0039】
また、ノズル25Aは、ノズル本体部26の形状がその先端から基端に向かって外径が小さくなる、テーパ形状(円錐台形状)である。そのため、例えば公差内で部品認識カメラ16の光軸がノズル25の中心軸Oに対して相対的に傾いていた場合でも、ノズル本体部26の外周面26bが画像に写り難くい。よって、この点でも、吸着部品の画像認識の精度向上に寄与するという利点もある。すなわち、部品認識カメラ16により中心軸Oに沿ってノズル25Aを撮像する場合には、中心軸Oに直交する吸着面26a及び部品背景面27aでの照明光の反射率が最も高く、よって、吸着面26a及び部品背景面27a以外の面は画像上薄暗く写る。ノズル外周面が写り込むと、部品の認識に影響が出ることが考えられるが、第2実施形態のノズル25Aによれば、上記の通り、構造的にノズル本体部26の外周面26bが画像に写り難くい。従って、第2実施形態のノズル25Aによれば、吸着部品の画像認識の精度向上に寄与すると言える。
【0040】
なお、第2実施形態のノズル25Aについては、その変形例として、
図7に示すような構成を採用してもよい。
図7に示すノズル25Bは、ノズル本体部26の基端部に、第1実施形態と同様のくびれ部26cを備えている。このノズル25Bの構成によれば、例えば部品認識カメラ16の光軸がノズル25の中心軸Oに対して相対的に傾いている場合でも、ノズル本体部26の基端部が吸着面26aに隠れ易くなる。そのため、ノズル本体部26の基端部が薄暗くリング状に写る、既述の現象(
図12B)がより高度に抑制ないし解消される。従って、吸着部品の画像認識の精度がより一層向上する。
【0041】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係るノズル25Cの正面図(片側断面図)である。第3実施形態に係るノズル25Cも、第1実施形態のノズル25と同様に、先端(下端)に部品の吸着面26aを備えた円筒状のノズル本体部26と、その基端(上端)に繋がる円筒状の背景形成部27とを備える。
【0042】
ノズル本体部26の外径は、基端部および先端部を除き、軸方向に亘って同一である。ノズル本体部26の基端部には、第1実施形態のようなくびれ部26cは設けられていない。ノズル本体部26の基端部には、R部26dが形成されており、ノズル本体部26は、このR部26dを介して背景形成部27(部品背景面27a)に繋がっている。
【0043】
ノズル本体部26は、下方に向かって先広がりに形成されたフランジ状先端部261を備えている。このフランジ状先端部261の端面(下面)が吸着面26aである。なお、ノズル本体部26の前記R部26dと部品背景面27aとの境界部Bpは、フランジ状先端部261の外周面の位置(符号Lで示すラインの位置)よりもノズル25Cの径方向内側に位置している。これにより、ノズル本体部26は、その先端が最大径Dmとなっている。
【0044】
このように、第3実施形態のノズル25Cも、その先端が最大径Dmとなるように形成されているため、中心軸Oに沿って下方からノズル25Cを視た場合には、ノズル本体部26の基端部(根元部分)が吸着面26aで隠れる。これにより、ノズル本体部26の基端部が薄暗いリング状に写る現象(
図12B参照)が抑制ないし解消される。従って、第1,第2実施形態のノズル25、25A、25Bと同様に、吸着部品の画像認識の精度が向上する。
【0045】
なお、
図8に示すノズル25Cは、ノズル本体部26の先端にフランジ状先端部261が一体に形成されている。しかし、
図9に示すように、フランジ状先端部261のみが別部材で構成されていてもよい。
【0046】
図9に示すノズル25Dは、ノズル本体部26が、背景形成部27に繋がる円筒状の本体主部262と、その先端(下端)に固定されたフランジ状先端部261とで構成されている。背景形成部27及び本体主部262は、同一の金属材料により一体に形成されている。フランジ状先端部261は、本体主部262よりも外径が大きくかつZ方向に扁平な金属製の円環部材(例えば円形シム等)が本体主部262の先端(下端)に接合されることにより、当該円環部材により形成されている。
【0047】
図9に示すノズル25Dも、実質的な構成は、
図8に示したノズル25Cと同等である。よって、
図8に示したノズル25Cと同様の作用効果を享受する。なお、この場合、フランジ状先端部261の外周面は、
図10に示すようなテーパ形状であってもよい。詳しくは、ノズル25Dの基端(上)側から先端(下)側に向かって先広がりのテーパ形状であってもよい。この構成によれば、例えば部品認識カメラ16の光軸がノズル25の中心軸Oに対して相対的に傾いていても、フランジ状先端部261の外周面が画像に写り込み難くい。そのため、吸着部品の画像認識の精度向上に寄与すると言える。これは、第2実施形態のノズル25Aにおけるノズル本体部26の形状(テーパ形状)の利点と基本的に同じであり、画像上にフランジ状先端部261の外周面が写り込んで、部品の認識に影響が出ることが抑制されるためである。なお、
図8に示したノズル25Cについても、フランジ状先端部261の外周面がテーパ形状であってもよい。
【0048】
[第4実施形態]
図11Aは、第4実施形態に係るノズル25Eの正面図(片側断面図)である。第4実施形態に係るノズル25Eの基本的な構成は、以下の点を除き、第2実施形態のノズル25Aと共通である。
【0049】
第4実施形態のノズル25Eは、部品背景面27aが、吸着面26aに比して若干薄暗く写るように構成されている。つまり、部品背景面27aの輝度が、吸着面26aの輝度に比して若干低くなるように、例えば、部品背景面27aに前記処理加工が施されている。
図11Aでは、処理加工の部分を誇張して図示している。
【0050】
このノズル25Eの構成によると、部品の認識精度をより高めることが可能となる。すなわち、既述の第2実施形態のノズル25A(
図6)では、ノズル25Aの全体の輝度が略同一であり、部品Cが吸着面26aの中心からずれて吸着された場合には、
図11Cに示すように、吸着面26aの残余部分(部品Cからはみ出した部分)が部品Cの影となって薄暗く写る場合がある。この場合には、背景部分が相対的に明るく写る結果、当該残余部分が部品Cと誤認されるおそれがある。しかし、第4実施形態のノズル25Eによれば、部品背景面27aの輝度が、吸着面26aの輝度に比して元々低い分、薄暗く写った前記残余部分と背景部分とのコントラスト差が小さくなる。これにより、
図11Bに示すように、画像上、部品Cがそれ以外の部分から相対的に際立ち、部品Cが認識され易くなる。実際の部品の実装作業では、吸着面26aの中心からずれて部品Cが吸着される場合が比較的多いことに鑑みると、第3実施形態のノズル25Eによれば、部品の認識精度を高めることが可能となる。
【0051】
なお、部品背景面27aと吸着面26aとの具体的な輝度差は、部品Cの輝度、吸着面26aの面積、中心軸Oに沿った吸着面26aと部品背景面27aとの間隔等の諸条件により異なり、吸着面26aの前記処理加工と部品背景面27aの前記処理加工とに差をもたせることで好適な輝度差を得ることができる。例えば、相対的に面粗度が小さい方が、正反射成分が増えて画像が暗く写るため、吸着面26の面粗度Raを3.2~6.3μmの範囲で設定する一方で、部品背景面27aの面祖度Raを0.1~3.2μmの範囲内であって且つ吸着面26よりも面粗度Raを小さくなるように設定することにより、好適な輝度差が実現される。
【0052】
[変形例等]
以上説明した部品実装装置1及びノズル25は、本発明に係る部品実装装置及び部品実装用ノズルの好ましい実施形態の例示である。部品実装装置及び部品実装用ノズルの具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、以下のような構成も本発明に属すると言える。
【0053】
実施形態のノズル25A、25C、25Eでは、ノズル本体部26と背景形成部27とが一体に形成されている。しかし、ノズル本体部26及び背景形成部27は、これが個別に形成されて互いに合体された構造でもよい。例えば、円筒状の部材がこれよりも外径の大きい円環状の部材の孔部に嵌入されることにより、円環状の部材により背景形成部27が形成され、円筒状の部材のうち円環状部材から外部露出した部分によりノズル本体部26が形成された構造であってもよい。このような構造のノズルには、ノズル本体部26の基端部にそもそも既述のようなR部26dが形成されない。しかし、背景形成部27(孔部の内周面)とノズル本体部26との間に隙間が形成されているような場合には、当該隙間における照明光の反射の具合で、R部26dの場合と同様に、画像上、ノズル本体部26の基端部に薄暗いリング状の部分が形成され得る。従って、実施形態のノズル25A、25C、25Eのような構造は、既述のように、ノズル本体部26及び背景形成部27が個別に形成されて互いに合体された構造についても有用である。
【0054】
また、実施形態のノズル25、25A~25Eは、その表面(全体)の輝度が部品の輝度よりも高くなるように形成されているが、例えば、吸着面26a及び部品背景面27aの輝度のみが部品の輝度よりも高くなるように形成してもよい。特に、外周面26bが比較的画像に写り難い第2実施形態のノズル25A、25Bについては、そのような構成を採用することが可能である。
【0055】
以上説明した本発明をまとめると以下の通りである。
【0056】
本発明の一局面に係る部品実装用ノズルは、部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置における前記ノズルであって、前記ノズルは、先端に部品の吸着面を備えた軸状のノズル本体部と、このノズル本体部における前記先端よりも基端側の位置で当該ノズル本体部を中心として前記吸着面と平行に外向きに広がる部品背景面を備えた背景形成部と、を備え、前記ノズル本体部は、その中心軸に沿って前記先端の側から視たときに、基端部が前記吸着面によって隠れるように形成されている。
【0057】
このノズルの構成によれば、ノズル本体部の基端部(根元部分)が吸着面に隠れるため、ノズル本体の基端部が薄暗くリング状に写る現象が抑制ないし解消される。そして、当該現象が抑制ないし解消されることで、画像上、部品のエッジ部分がより鮮明となり、ノズルに吸着された部品の画像認識の精度が向上する。
【0058】
上記の部品実装用ノズルにおいては、前記ノズル本体部の基端部にくびれ部が形成されていてもよい。
【0059】
この構成によると、ノズルの中心軸に沿った方向から視た場合に、ノズル本体部の基端部の外周面が完全に隠れるため、ノズル本体の基端部が薄暗くリング状に写る、既述の現象がより高度に抑制ないし解消される。
【0060】
上記の部品実装用ノズルの構成において、前記ノズル本体部は、その先端から基端に向かって外径が小さくなる、テーパ形状であってもよい。
【0061】
この構成によると、既述の現象を抑制ないし解消することに加えて、部品認識カメラの光軸の傾き等により、ノズル本体部の外周面が薄暗く写ることが抑制される。そのため、この点でも吸着部品の画像認識の精度向上に寄与する。
【0062】
上記の部品実装用ノズルにおいて、前記ノズル本体部は、前記吸着面を備えたフランジ状の先端部を有していてもよい。
【0063】
この構成によると、ノズル本体部のうち、先端部よりも背景形成部側の形状の自由度が向上する。従って、先端部よりも背景形成部側の形状を、例えば外径が一定のシンプルなノズル形状としながら、既述の作用効果を享受することが可能となる。
【0064】
なお、上記のような部品実装用ノズルの構成は、前記ノズル本体部と前記背景形成部とが、同一材料により一体に形成され、前記ノズル本体部の基端部は、前記部品背景面に繋がるR部分を含む場合に有用である。
【0065】
前記ノズル本体部と前記背景形成部とが同一材料により一体に形成される場合には、ノズル本体部の基端部に湾曲した前記R部分が必ず形成され、このR部分を加工により完全に無くすことは難しい。ノズル本体の基端部が薄暗くリング状に写る現象は、このR部分での照明光の反射に起因する。そのため、上記のような部品実装用ノズルの構成は、ノズル本体部と背景形成部とが、同一材料により一体に形成されている場合に有用である。これにより、当該ノズルに吸着された部品の画像認識の精度を向上させることが可能となる。
【0066】
上記の部品実装用ノズルにおいては、前記照明光の下で前記部品認識カメラにより前記ノズルを部品未吸着状態で撮像したときに、前記部品背景面が、前記吸着面よりも暗く写るように前記ノズル本体部が構成されていてもよい。
【0067】
この構成によれば、部品が吸着面の中心からずれて吸着された場合の当該部品の画像認識の精度を高めることが可能となる。すなわち、部品が吸着面の中心からずれて吸着された状態では、吸着面の残余部分(部品からはみ出た部分)が部品の影となって薄暗く写り、当該残余部分が部品と誤認されるおそれがある。しかし、吸着面よりも部品背景面の輝度が低くいと、吸着面の前記残余部分が薄暗く写っても、当該残余部分と背景部分とのコントラスト差が小さくなる。これにより、画像上、部品画像が相対的に他の部分よりも際立ち、部品が認識され易くなる。その結果、部品背景面と吸着面の輝度が同一の場合に比べて、部品の画像認識の精度が向上する。
【0068】
また、本発明の一局面に係る部品実装装置は、部品実装用のノズルを備え、部品供給部において供給される部品を前記ノズルにより吸着して基板に搬送するヘッドと、前記ノズルに吸着された部品に照明光を照射してその反射光を受光することにより当該部品を撮像する部品認識カメラと、を備えた部品実装装置であって、前記ノズルとして、上述した何れかの部品実装用ノズルを備えている。
【0069】
この部品実装装置によれば、上述したような部品実装用ノズルを備えているため、ノズルに吸着された部品の画像認識の精度が向上する。このように部品の画像認識精度が向上することで、ノズルに対する部品の吸着ずれ等の補正精度が向上し、その結果、基板への部品の実装精度が向上する。