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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】熱橋
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/38 20060101AFI20241105BHJP
   G21C 3/326 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G21C3/38 110
G21C3/326
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023544582
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 GB2022050086
(87)【国際公開番号】W WO2022157484
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】2100949.3
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーストン、ジェレミー・ヘンリー
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04073834(US,A)
【文献】特開2009-156679(JP,A)
【文献】特開2007-127484(JP,A)
【文献】特開2001-033574(JP,A)
【文献】特開昭54-152784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/38
G21C 3/30
G21C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガス冷却原子炉燃料ブロックであって、
燃料チャンネルと、
冷却材チャンネルと
を備え、前記燃料チャンネルは、燃料要素を備え、
前記燃料チャンネルは、前記燃料要素と前記燃料チャンネルとを熱的に結合する熱橋を更に備え、
前記熱橋は、前記原子炉燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、
それによって、前記燃料要素から前記燃料ブロックへの熱伝達を改善し、
それによって、前記冷却材チャンネルへの熱伝達を改善し、ここにおいて前記熱橋は前記燃料要素と前記燃料チャンネルを熱的に結合する粉末状物質であり、前記燃料ブロック、前記燃料チャンネル、及び前記燃料要素の熱膨張及び収縮、並びに中性子照射に起因する前記燃料チャンネルの体積変化を可能にする、高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項2】
前記粉末状物質は、粒子サイズが100μm未満の粒子である、請求項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項3】
前記熱橋は、金属及びそれらの合金、半金属、炭素、並びに熱伝導性セラミックスを備えるグループから選択される、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項4】
前記熱橋は、黒鉛である、請求項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項5】
前記熱橋は、可燃性毒物を更に備える、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項6】
前記可燃性毒物は、炭化ホウ素である、請求項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
【請求項7】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載の燃料ブロックを備える、高温ガス冷却原子炉システム。
【請求項8】
前記冷却材チャンネルは、低伝導率ガスを備える、請求項に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
【請求項9】
前記低伝導率ガスは、窒素である、請求項に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
【請求項10】
前記原子炉は、直接サイクルシステムである、請求項のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
【請求項11】
請求項10のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉システムにおける冷却を改善する方法であって、前記方法は、
前記燃料要素と前記燃料チャンネルとの間に熱橋を設けることと、
低伝導率ガスを前記冷却材チャンネル中に流入させることと
を備える、方法。
【請求項12】
燃料ブロックを備える直接サイクル高温窒素冷却原子炉システムであって、前記燃料ブロックは、
燃料チャンネルと、
冷却材チャンネルと
を備え、前記燃料チャンネルは、核分裂性物質を備え、
前記燃料チャンネルは、前記核分裂性物質と前記燃料チャンネルとを熱的に結合する、黒鉛粉末の形態の熱橋を更に備え、
前記熱橋は、前記燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、
前記熱橋は、炭化ホウ素の形態の可燃性毒物を更に備え、
それによって、燃料要素から前記燃料ブロックへの熱伝達を改善し、
それによって、前記冷却材チャンネルへの熱伝達を改善する、直接サイクル高温窒素冷却原子炉システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス冷却原子炉用の熱橋に関する。
【背景技術】
【0002】
高温ガス冷却原子炉は、非常に高い出口温度(一般に700℃を超える)を達成するために不活性ガス冷却材と組み合わせてウラン又はプルトニウムなどの燃料要素を一般に使用する黒鉛減速第4世代原子炉である。そのようなHTGRは、過去50年にわたって開発されており、そのうちの2つは、日本原子力研究開発機構によって運用されているHTTRと、中国の清華大学によって運用されているHTR-10であり、運用され続けている。
【0003】
HTGRは、冷却材が炉心を通って流れ、当該技術分野において一般的であるような二次冷却材ループ又は関連する熱交換器を必要とせずに、例えばターボ機械を介して仕事エネルギーを抽出するために使用されるように、直接サイクル設計と組み合わせて使用され得る。そのような設計は、非常に効率的であり、全体的な原子炉サイズを最小限に抑えることを可能にし、このことから、それらの用途を、制限された空間、例えば、航空機、船舶、及び潜水艦において特に適したものにする。
【0004】
HTGR直接サイクル原子炉内で最も一般的に用いられる冷却材流体はヘリウムであり、それは、ヘリウムが代替ガスに対して著しい利点を有する、即ち、ガスが不活性であり、それによって冷却材漏れの場合に設計を本質的に安全にするからである。ヘリウムは、しかしながら、ヘリウムに適した現在のターボ機械の設計が未熟であることに起因して、高温ガスを仕事エネルギーに変換することが困難である。そのような設計の未熟さは、そのような原子炉及び関連するターボ機械の設計及び建造における高い費用支出に起因して、ヘリウムベースの直接サイクルガス原子炉の利用に対する重大な商業的障壁を呈する。
【0005】
更に、原子炉の効率は、燃料要素と燃料チャンネルとの間の燃料チャンネル間隙によって低減される。燃料チャンネル間隙は、発熱、核分裂生成物の蓄積、及び経時的な中性子照射に起因して生じる、燃料ブロック及び燃料要素の異なる膨張率に起因する燃料ブロックの熱体積変化に加えて、燃料要素の製造における製造公差誤差に対応するために存在する。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によると、高温ガス冷却原子炉燃料ブロックが提供され、高温ガス冷却原子炉燃料ブロックは、燃料チャンネルと、冷却材チャンネルとを備え、燃料チャンネルは、燃料要素を備え、燃料チャンネルは、燃料要素と燃料チャンネルとを熱的に結合する熱橋を更に備え、熱橋は、原子炉燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、それによって、燃料要素から燃料ブロックへの熱伝達を改善し、それによって、冷却材チャンネルへの熱伝達を改善する。高温ガス原子炉は、600℃以上の作動温度を意味すると解釈される。
【0007】
窒素などの低伝導率不活性ガスは、既存の商用オフザシェルフ(COTS)ターボ機械設計と共に容易に使用されることができ、それによって、そのような原子炉を設計及び建設する初期費用支出を低減することができる。しかしながら、冷却材ガスとしての窒素の使用は、ヘリウム0.15W/mKと比較して窒素0.025W/mKのより低い熱伝導率値に起因して、燃料要素と冷却材との間の熱伝達におけるトレードオフを示す。同じ熱デューティを達成するために、窒素の質量流量は、ヘリウムの同じ仕事出力を達成するために著しく増加する必要がある。
【0008】
先行技術では、燃料チャンネルは、典型的には、その中に位置する燃料要素を備え、燃料要素と燃料チャンネルを形成する壁との間に燃料チャンネル間隙がある。この間隙は、以前に上記で説明されたように、膨張を可能にする。
【0009】
この燃料チャンネル間隙の不足は、ヘリウムの熱伝導率がより高いことに起因してヘリウム冷却原子炉では重大ではないが、窒素が原子炉冷却材として使用される場合には重大な熱障壁を呈する。これは、窒素がヘリウムと比較してより低い熱伝導率を有することに起因し、故に、冷却材出口温度の低減が窒素によって達成され、それによって、原子炉の全体的な効率を低減する。
【0010】
原子炉燃料ブロック、燃料要素、燃料チャンネル、及び冷却材チャンネルは、高温ガス冷却原子炉に適合する任意の設計のものであり得る。1つのそのような例は、General Atomics(登録商標)GT-MHRである。GT-MHR燃料ブロックは、六角形の断面を備え、それにおいて、六角形の平面から垂直軸に延在する複数の燃料チャンネル及び冷却材チャンネルが設けられ、使用中の燃料要素が発生する熱を吸収するために冷却材ガスが冷却材チャンネルを通って流される。
【0011】
燃料ブロックは、小さい中性子吸収断面積を備える適切な中性子減速材を提供する任意の適切な物質、例えばベリリウム又は黒鉛、より好ましくは黒鉛から作られ得る。燃料ブロックの平面は、任意の適切な形状、例えば、円形、正方形、長方形、五角形、六角形、八角形、又は任意のより高い辺の形状であり得る。GT-MHR燃料ブロックの例では、これは、六角形の平面を備える。好ましくは、燃料ブロックの平面形状は、複数の燃料ブロックが原子炉中でモザイク状になることを可能にする。燃料要素は、原子炉内で核分裂を受けて維持することが可能な物質である。燃料要素は、核分裂性物質、例えばウラン又はプルトニウムであって、それらの塩、例えばこれらの元素の酸化物、二酸化物、又は炭化物、例えば酸化ウラン、酸化プルトニウム、二酸化ウラン、二酸化プルトニウム、又は炭化ウランなどを含む、ウラン又はプルトニウムであり得る。燃料は、混合酸化物燃料(MOX)を作り出す酸化物の混合物であり得る。燃料は、等方性物質の層でコーティングされたウラン又はプルトニウム酸化物の燃料核を備える三重構造等方性(TRISO:tristructural-isotropic)又は四重構造等方性(QUADRISO:quadstructural-isotropic)燃料であり得る。そのような等方性物質は、黒鉛状炭素又はセラミックス、例えば熱分解炭素又は炭化ケイ素から選択され得る。そのような燃料は、燃料核上に存在する等方性層に起因して、中性子照射、腐食、及び酸化に対して構造的に耐性があり、従って、より高い動作温度に耐えることができ、それらの適用を高温ガス冷却原子炉にとって理想的なものにする。更に、そのような特性は、原子炉の最高動作温度を超えても燃料要素が溶融しない、即ちメルトダウンが起こり得ないので、原子炉の安全特性を高める。燃料要素は、燃料コンパクト、例えば特定の燃料棒集合体に使用するためのペブルコンパクトに圧縮され得るグレインのような粒状のコンシステンシーで提供され得る。好ましくは、燃料は、TRISO燃料である。
【0012】
本構成では、熱橋は、燃料要素と燃料チャンネルとを熱的に結合する。熱橋は、熱橋で燃料チャンネル間隙を充填することによって、燃料要素と燃料チャンネルとの間の熱伝達を著しく増加させ、それによって、燃料要素から燃料ブロックへの熱伝達を改善する。これは、同じ熱効率を達成するために冷却材の質量流量を増加させる必要なしに冷却材チャンネルへの全体的な熱伝達を改善し、それによって全体として原子炉の効率を改善する効果を有する。
【0013】
原子炉が通常600℃~2000℃の範囲内の作動温度で動作する場合に、燃料要素と燃料チャンネルとの間で熱を効率的に伝達するために、熱橋は、原子炉燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備える。好ましくは、熱橋は、600℃より高い温度で固体である。好ましくは、熱橋は、1000℃より高い温度で固体である。より好ましくは、熱橋は、2000℃まで固体である。
【0014】
使用中、燃料ブロック及び燃料要素は、例えば、原子炉が使用中であるとき、即ち、核分裂中及び原子炉がオフラインであるときに、原子炉内の温度変化に起因して膨張及び収縮し得る。燃料ブロック及びチャンネルはまた、核分裂生成物の蓄積及び経時的な中性子照射に起因して更に膨張及び収縮し得る。燃料要素及び燃料チャンネルはまた、互いに異なる速度で膨張及び収縮する。そのため、熱橋は、燃料ブロック、燃料チャンネル、及び燃料要素の体積変化に対応するために弾性的に圧縮可能であり得る。そのような弾性は、熱橋が、燃料要素と冷却材チャンネルとの間の熱伝達を他の点では低減するであろう空隙を作り出すことなく、燃料ブロック、燃料チャンネル、及び燃料要素の膨張及び収縮中に、燃料要素と燃料チャンネルとに同時に熱接触したままである、即ち当接することを可能にする。
【0015】
熱橋は固体であるが、熱橋は液体又は気体であり得ると考えられる。しかしながら、燃料ブロック内に圧縮可能な液体又は気体を含有する際には、重大な製造上の課題が存在し得ることが認識されるであろう。収容された流体の急速な膨張は、それ自体が爆発の危険を示すであろう。更に、流体が、中性子照射によって引き起こされた燃料ブロック内の微視的な亀裂に浸透し得、それは、燃料ブロックの完全性を損ない得る。好ましくは、熱橋は、固体である。
【0016】
熱橋は、弾性物質、発泡物質若しくは粉末状物質、又はそれらの混合物のブロックであり得る。好ましくは、熱橋は、粉末状物質である。
【0017】
熱橋は、好ましくは、粉末状物質であり得、粉末状物質は、粒子であり得、それは、球状、丸形、角状、薄片状、円筒状、針状、立方体状、又は不規則形状であり得る。好ましくは、粒子は、球状であり得る。
【0018】
粉末状物質の粒子サイズは、0.1~500μm、好ましくは1~200μm、より好ましくは100μm未満の範囲内、より好ましくは1~100μmの範囲内であり得、この値は、粒子の平均最長寸法によって決定される。熱橋は、多峰性又は二峰性の粒子サイズ分布を備え得る。
【0019】
熱橋は、低中性子断面積及び高熱伝導率を備える任意の物質、例えば、金属及びそれらの合金、半金属、炭素又は熱伝導性セラミックスから作られ得る。好ましくは、熱橋は、モリブデン(同位体92及び94)、ニオブ、炭化ケイ素又は炭素(黒鉛)を備えるグループから選択される物質から作られ得る。より好ましくは、熱橋は、黒鉛状炭素から作られる。
【0020】
熱橋は、黒鉛状粉末のみを含有し得る。
【0021】
本発明者らは、黒鉛状物質が容易に市販入手可能であり、低コストであり、融点が高く、熱伝導率が高く、中性子断面積が小さいことを見出した。その上、黒鉛は、空気又は水と接触しても燃焼しないので、黒鉛は、液体ナトリウム冷却原子炉と比較して危険が低減される。
【0022】
燃料チャンネル間隙は、可燃性毒物を更に備え得る。前記可燃性毒物は、核燃料の寿命の初期に過剰な反応性によって引き起こされる中性子を容易に吸収するような大きい中性子断面積を備える。可燃性毒物の存在は、毒物が「燃焼」される、即ち中性子を吸収するので、原子炉の寿命にわたって減少する。
【0023】
可燃性毒物は、ホウ素又はガドリニウムの化合物を備えるグループから選択され得る。好ましくは、可燃性毒物は、炭化ホウ素である。
【0024】
可燃性毒物は、熱橋の一部であり得るか、又は熱橋とは別個であり得るが燃料チャンネル間隙中に共堆積され得、例えば、燃料要素を囲む熱橋に隣接する個別の層であり得る。可燃性毒物が熱橋の一部である場合、熱橋及び可燃性毒物は、粉末粒子の均質なブレンドであり得る。好ましくは、熱橋は、可燃性毒物を備える。
【0025】
熱橋は、熱橋及び可燃性毒物として炭化ホウ素のみを含有し得る。
【0026】
好ましくは、熱橋は、可燃性毒物として炭化ホウ素を有する黒鉛状粉末を、好ましくは粉末粒子の均質なブレンドとして備える。
【0027】
第2の態様によると、本明細書で定義されるような燃料ブロックを備える高温ガス冷却原子炉システムが提供される。
【0028】
高温ガス冷却原子炉システム燃料の冷却材チャンネルは、従来のガスタービン機械が機械を修正する必要なく冷却材ガスを使用することを可能にするために、ガスタービン中で容易に使用され得るガスを備え得る。1つのそのような好ましいガスは、窒素である。それは、ヘリウムと比較してより低い伝導率のガスである(25℃で0.1W/mK未満の熱伝導率)。
【0029】
この構成は、ヘリウムを使用することができるが、従来のガスタービン機械を使用するための熱交換器、又はヘリウムを受け入れるのに適した修正された機械のうちのいずれかを必要とするであろう。逆に、本発明者らは、高温ガス冷却原子炉内での窒素の使用が、作動流体として空気を使用する既存のガスタービンに適合し、このことから、その適用が、直接サイクル高温ガス冷却原子炉に特に有用であることを見出した。
【0030】
高温ガス冷却原子炉システムは、直接サイクルシステムを備え得る。そのようなシステムは、二次冷却材回路及び関連する熱交換器の必要性をなくし、代わりに、ガスが原子炉を通って移動し、加熱され、次いでターボ機械を直接駆動する一次ループのみを利用することができる。
【0031】
第3の態様によると、本明細書で定義されるような高温ガス冷却原子炉における冷却を改善する方法が提供され、本方法は、
I)燃料要素と燃料チャンネルとの間に熱橋を設けるステップと、
II)冷却材チャンネル中に冷却材流を提供するステップと、
III)そのため、使用中、熱橋は、燃料要素と燃料ブロックとの間の熱伝達を改善し、
IV)それによって、冷却材チャンネル中の冷却材流への熱伝達を改善するステップと
を備える。
【0032】
熱橋は、燃料ブロックの製造段階中に燃料チャンネル中に挿入され得るか、又は燃料ブロックの挿入後に原子炉内にその場で挿入され得る。
【0033】
更なる態様によると、燃料ブロックを備える直接サイクル高温窒素冷却原子炉システムが提供され、燃料ブロックは、燃料チャンネルと、冷却材チャンネルとを備え、燃料チャンネルは、核分裂性物質を備え、燃料チャンネルは、核分裂性物質と燃料チャンネルとを熱的に結合する、黒鉛粉末の形態の熱橋を更に備え、熱橋は、原子炉の燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、熱橋は、炭化ホウ素の形態の可燃性毒物を更に備え、それによって、燃料要素から燃料ブロックへの熱伝達を改善する。
【0034】
ここで、本発明のいくつかの構成が、例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】高温ガス冷却原子炉燃料ブロックの構成を示す。
図2】本発明による熱橋を詰められた燃料要素を備える燃料チャンネルの平面図を示す。
図3】燃料チャンネルから冷却材チャンネルへの熱伝導率図を示す。
図4】熱橋を有する及び有しない窒素冷却材と、熱橋を有しないヘリウムガス冷却材とを比較するグラフを示す。
図5】高温ガス冷却原子炉システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照すると、先行技術における燃料ブロック構成100の例が提供されている。この特定の例では、燃料ブロック102は、複数の燃料チャンネル106及び冷却材チャンネル104を備えるGeneral Atomics GT-MHR高温ガス冷却原子炉燃料ブロックであり、燃料チャンネル106は、複数の燃料要素(図示せず)を備える。燃料ブロック102は、複数の隣接する燃料ブロック(図示せず)が炉心中でモザイク状になることを可能にする六角形の断面を備える。使用時、冷却材ガスは、燃料ブロック102を通って延在する燃料チャンネル106及び冷却材チャンネル104によって画定される長手方向軸Zに流れる。燃料要素の製造公差誤差に対応することに加えて、燃料要素及び燃料チャンネル106の熱膨張及び中性子照射膨張を可能にするために設けられた燃料チャンネル間隙があるので、冷却材ガスは、燃料チャンネル106と燃料要素との間の間隙中にも流れる。
【0037】
図2を参照すると、燃料要素208を備える燃料チャンネル206の平面図構成200が提供されており、燃料要素208は、熱橋210によって囲まれている。本構成では、燃料チャンネルは、円筒状コンパクトに圧縮されたTRISO酸化ウランベースの核分裂性物質であり、燃料チャンネル206は、黒鉛で作られる。本構成では、熱橋は、燃料要素の周りに詰められた50μmの球状粒子サイズを有する固体黒鉛粉末である。本構成では、熱橋210は、粉末粒子間の間隙のために弾性的に圧縮可能であり、それによって、燃料ブロック、燃料チャンネル、及び燃料要素の熱膨張及び収縮、並びに中性子照射に起因する燃料チャンネルの体積変化を可能にする。熱橋210は、その寿命の初期に燃料要素208の追加の反応性を相殺するのに役立つ炭化ホウ素の形態の可燃性毒物(図示せず)を更に備え、毒物は、中性子が吸収されるにつれてその寿命にわたって徐々に燃焼する。
【0038】
図3を参照すると、燃料チャンネル306と冷却材チャンネル304との間の熱伝導率図300が提供されている。使用中、燃料要素308は、核分裂性生成物、例えばウラン235の分割時の核分裂に起因して熱エネルギーを生成する。この熱エネルギーは、燃料要素308の中心から、抵抗R1によって示される燃料要素308の縁部に伝達されなければならない。熱橋がなければ、熱は、抵抗R2で示される燃料チャンネルガス間隙を横断しなければならない。このガス間隙は、冷却材チャンネル304も通って流れる冷却材ガスで充填される。そのような間隙は、燃料ブロック302及び燃料コンパクト308に対する冷却材ガスの低い熱伝導率に起因して、燃料要素308と燃料チャンネル壁306との間の熱伝達を著しく低減する。伝達される熱は、次いで、R3の抵抗を有する燃料ブロック302を横断して冷却材チャンネル304に至り、冷却材ガスは、対流によって加熱される。本発明では、抵抗R2は、実際には燃料要素308に当接する燃料ブロックの延長部である熱橋310を設けることに起因して著しく低減される。この例では、R3の抵抗は、熱橋中の黒鉛粒子間に隙間を設けることに起因して、R2よりも大きい。実際には、抵抗R2は、熱橋310中の粉末粒子間の非常に小さい間隙に起因して、R3よりも僅かに高くあり得る。R2が熱橋310である場合、抵抗は、R2が単に冷却材ガスである場合よりも常に低く、従って、熱橋310を設けることによって、燃料要素308と冷却材チャンネル304との間の熱伝達が大幅に改善されることが分かる。
【0039】
図4を参照すると、熱橋を有する及び有しない窒素冷却材と、熱橋を有しないヘリウムガス冷却材とを比較するグラフ400が提供されている。Y軸は、キロワットの燃料ブロック出力のX軸に対してプロットされた燃料要素と燃料チャンネル壁との間のケルビンの差を示す。線420は、冷却材ガスとして窒素を利用するいかなる熱橋も有しない燃料ブロックを示す。線430は、冷却材ガスとしてヘリウムを利用するいかなる熱橋も有しない燃料ブロックを示す。線440は、冷却材ガスとして窒素を利用する本発明の熱橋を有する燃料ブロックを示す。グラフ400から分かるように、熱橋を有しない窒素冷却材420の利用は、窒素がヘリウムの約1/6の熱伝導率を有するため、熱橋を有しないヘリウム冷却材430よりも著しく効率的でない。そのため、燃料ブロック出力に応じて、燃料チャンネル間隙にわたる著しい温度差が示されている。シミュレーションが、窒素冷却材440を有する熱橋を使用して行われる場合、温度差は、高伝導率ヘリウム冷却材の温度差未満であり、従って、熱橋の使用は、ヘリウム冷却材単独の使用よりも高い熱効率をもたらし、熱橋420を有しない窒素冷却材よりも遙かに効率的であり得ることが分かる。
【0040】
図5を参照すると、原子炉516を備える高温ガス冷却原子炉システム500が提供されており、原子炉は、少なくとも1つの黒鉛燃料ブロック502を備える。本発明では、黒鉛燃料ブロック502は、燃料チャンネル506及び冷却材チャンネル504を備えるGeneral Atomics(登録商標)GT-MHR燃料ブロックであり、燃料チャンネルは、複数のTRISO燃料要素508を備え、燃料要素508は、燃料チャンネル506内に直列に取り付けられた円筒状カプセルに形成される。燃料チャンネル306は、各燃料要素508を囲む熱橋510を更に備え、熱橋は、黒鉛粉末である。本構成では、高温ガス冷却原子炉システム500は、二次冷却材ループ又は関連する熱交換器を必要とせずにターボ機械514を直接駆動する一次回路ループ512を提供された直接サイクルシステムである。この例では、冷却材ガスは窒素である。
【0041】
いくつかの好ましい構成が示され、説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が行われ得ることが当業者によって認識されるであろう。
【0042】
本出願に関連して本明細書と同時に又は本明細書より前に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧に供される全ての文献及び文書に注意が向けられ、全てのそのような文献及び文書の内容は、参照によって本明細書に援用される。
【0043】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)中に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。
【0044】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)中に開示された各特徴は、別段に明記されない限り、同一、同等、又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。このことから、別段に明記されない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の一例に過ぎない。
【0045】
本発明は、前述の構成(複数可)の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)中に開示された特徴のうちの任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップのうちの任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせに及ぶ。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
高温ガス冷却原子炉燃料ブロックであって、
燃料チャンネルと、
冷却材チャンネルと
を備え、前記燃料チャンネルは、燃料要素を備え、
前記燃料チャンネルは、前記燃料要素と前記燃料チャンネルとを熱的に結合する熱橋を更に備え、
前記熱橋は、前記原子炉燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、
それによって、前記燃料要素から前記燃料ブロックへの熱伝達を改善し、
それによって、前記冷却材チャンネルへの熱伝達を改善する、高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C2]
前記熱橋は、弾性的に圧縮可能である、C1に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C3]
前記熱橋は、粉末状物質である、C1又は2に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C4]
前記粉末状物質は、粒子サイズが100μm未満の粒子である、C3に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C5]
前記熱橋は、金属及びそれらの合金、半金属、炭素、並びに熱伝導性セラミックスを備えるグループから選択される、C1~4のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C6]
前記熱橋は、黒鉛である、C5に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C7]
前記熱橋は、可燃性毒物を更に備える、C1~6のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C8]
前記可燃性毒物は、炭化ホウ素である、C7に記載の高温ガス冷却原子炉燃料ブロック。
[C9]
C1~8のうちのいずれか一項に記載の燃料ブロックを備える、高温ガス冷却原子炉システム。
[C10]
前記冷却材チャンネルは、低伝導率ガスを備える、C9に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
[C11]
前記低伝導率ガスは、窒素である、C10に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
[C12]
前記原子炉は、直接サイクルシステムである、C9~11のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉システム。
[C13]
C9~12のうちのいずれか一項に記載の高温ガス冷却原子炉システムにおける冷却を改善する方法であって、前記方法は、
前記燃料要素と前記燃料チャンネルとの間に熱橋を設けることと、
低伝導率ガスを前記冷却材チャンネル中に流入させることと
を備える、方法。
[C14]
燃料ブロックを備える直接サイクル高温窒素冷却原子炉システムであって、前記燃料ブロックは、
燃料チャンネルと、
冷却材チャンネルと
を備え、前記燃料チャンネルは、核分裂性物質を備え、
前記燃料チャンネルは、前記核分裂性物質と前記燃料チャンネルとを熱的に結合する、黒鉛粉末の形態の熱橋を更に備え、
前記熱橋は、前記原子炉燃料ブロックの作動温度よりも高い融点を備え、
前記熱橋は、炭化ホウ素の形態の可燃性毒物を更に備え、
それによって、燃料要素から前記燃料ブロックへの熱伝達を改善し、
それによって、前記冷却材チャンネルへの熱伝達を改善する、直接サイクル高温窒素冷却原子炉システム。
図1
図2
図3
図4
図5