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特許7581544エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20241105BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B66B1/18 R
B66B3/00 J
B66B3/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024003775
(22)【出願日】2024-01-15
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第6984722(JP,B1)
【文献】特開2014ー221680(JP,A)
【文献】特開2018-203421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のエレベータに通信可能に接続され、
建物内のいずれかの階床で発生した乗場呼びを登録する乗場呼び登録部と、
前記建物内の階床ごとに、前記乗場呼び登録部に登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる際の優先度である応答優先度を算出する応答優先度算出部と、
前記建物内の階床ごとに、所定値より長い待ち時間を許容する待ち利用者である待ち許容利用者がエレベータ乗場にいるか否かを判定する第1判定部と、
前記応答優先度算出部で算出された応答優先度に基づいて、前記乗場呼び登録部に登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる割当制御部と、を備え、
前記応答優先度算出部は、前記第1判定部において、前記待ち許容利用者がエレベータ乗場にいると判定された階の応答優先度を、前記待ち許容利用者がエレベータ乗場にいないと判定された階の応答優先度よりも低く算出する、エレベータ群管理装置。
【請求項2】
前記応答優先度算出部は、前記建物内の階床ごとに、前記待ち許容利用者の人数またはすべての待ち利用者の人数に対する前記待ち許容利用者の人数の割合を算出し、算出した値が大きい程、前記応答優先度を低く算出する、請求項1に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項3】
前記応答優先度算出部は、前記第1判定部において、前記待ち許容利用者と前記待ち許容利用者以外の待ち利用者とがエレベータ乗場にいると判定された階の前記応答優先度を、前記待ち許容利用者のみがエレベータ乗場にいると判定された階の応答優先度よりも高くする、請求項1に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項4】
前記応答優先度算出部は、階床に応じて、または時間帯に応じて、それぞれ予め設定された指標に基づいて前記応答優先度を算出する、請求項1に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項5】
前記第1判定部は、携帯端末を視認している待ち利用者、イヤホンを装着している待ち利用者、予め登録された、所定値より長い待ち時間を許容する意思がある利用者、または、所定値より長い待ち時間を許容する意思があることを示す行動をとった待ち利用者を、前記待ち許容利用者として認識する、請求項1に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項6】
前記建物内の各階床のエレベータ乗場に設置されたスピーカ装置に通信可能に接続され、
前記第1判定部で、携帯端末を視認している待ち利用者がエレベータ乗場にいると判定された階床のスピーカ装置から、待ち時間が長くなることを報知する音声情報を出力させる情報出力制御部と、
前記階床ごとに、エレベータ乗場で携帯端末を視認していた待ち利用者が、出力された前記音声情報に反応したか否かを判定する第2判定部と、をさらに備え、
前記応答優先度算出部は、前記第2判定部において、エレベータ乗場で携帯端末を視認していた待ち利用者が前記音声情報に反応したと判定された階床の応答優先度を上げるように更新し、
前記割当制御部は、前記応答優先度算出部により更新された応答優先度に基づいて、前記乗場呼び登録部に登録された乗場呼びに対する割り当て内容を更新する、請求項5に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項7】
前記応答優先度算出部は、前記建物の階床ごとに、携帯端末を視認している待ち利用者のうち、前記音声情報に反応した待ち利用者の人数または携帯端末を視認している待ち利用者の人数に対する前記音声情報に反応した待ち利用者の人数の割合を算出し、算出した値が大きい程、前記応答優先度が高くなるように更新する、請求項6に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項8】
建物内に設置された複数台のエレベータに通信可能に接続されたエレベータ群管理装置が、
前記建物内の階床ごとに、所定値より長い待ち時間を許容する待ち利用者である待ち許容利用者がエレベータ乗場にいるか否かを判定し、
前記建物内の階床ごとに、発生した乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる際の優先度である応答優先度を、前記待ち許容利用者がエレベータ乗場にいると判定された階に関しては、前記待ち許容利用者がエレベータ乗場にいないと判定された階よりも低くなるように算出し、
算出した応答優先度に基づいて、発生した乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる、エレベータ群管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の複数台のエレベータを群管理する群管理装置は、いずれかの階床で乗場呼びが発生した際に、利用者の待ち時間、乗りかごの乗車率等に基づいて、この乗場呼びに応答するエレベータを決定する。
【0003】
このように乗場呼びに割り当てるエレベータを決定することで、効率良く複数台のエレベータを運転することができるとともに、利用者に対して利便性の高いサービスを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-149282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、エレベータを利用する際には、利用者により、または利用状況により、待ち時間に関する許容度合いが異なる。例えば、近年はスマートフォン等のモバイル端末が普及しているため、エレベータの利用者が待ち時間にこのようなモバイル端末を用いてコンテンツを視聴したり、検索操作を行ったりしていると待ち時間が苦にならず、ある程度の長い待ち時間を許容する場合もある。
【0006】
これに鑑み、上述したような利用者ごとの待ち時間に対する許容の度合いを考慮して、より多くの利用者に満足度の高いサービスを提供するための技術が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータ利用者の満足度を向上させるようにエレベータの群管理を行うエレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ群管理装置は、複数台のエレベータに通信可能に接続され、応答優先度算出部と第1判定部と割当制御部とを備える。応答優先度算出部は、建物内の階床ごとに、登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる際の応答優先度を算出する。第1判定部は、建物内の階床ごとに、所定値より長い待ち時間を許容する待ち利用者である待ち許容利用者がエレベータ乗場にいるか否かを判定する。割当制御部は、応答優先度に基づいて登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる。また応答優先度算出部は、第1判定部において、待ち許容利用者が乗場にいると判定された階の応答優先度を、待ち許容利用者が乗場にいないと判定された階の応答優先度よりも低く算出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】一実施形態によるエレベータ群管理装置の構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態によるエレベータ群管理装置が各階床に関して実行する応答優先度更新処理を示すフローチャートである。
図4】一実施形態によるエレベータシステム内で、所定のタイミングで、発生した乗場呼びに対して実行されるエレベータの割り当て処理に関する説明図である。
図5】一実施形態によるエレベータシステム内で、応答優先度更新後に変更される割り当て内容に関する説明図である。
図6】一実施形態によるエレベータシステム内で、各乗場のスピーカ装置からアナウンス情報を出力させたときに実行される応答優先度の変更処理に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態として、建物内の複数台のエレベータを管理するエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステム1について説明する。
【0011】
〈一実施形態によるエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図1は、本実施形態によるエレベータシステム1の構成を示す全体図である。エレベータシステム1は、15階建ての建物内に設置されたA号機エレベータ10A、B号機エレベータ10B、およびC号機エレベータ10Cと、建物内の1階~15階それぞれのエレベータ乗場(以下、単に「乗場」と記載する)FL1~FL15に設けられた乗場呼び登録装置21-1~21-15、カメラ装置22-1~22-15、およびスピーカ装置23-1~23-15と、エレベータ群管理装置(以下、単に「群管理装置」と記載する)30とを備える。群管理装置30は昇降路上部に設置され、A号機エレベータ10A、B号機エレベータ10B、C号機エレベータ10C、乗場呼び登録装置21-1~21-15、カメラ装置22-1~22-15、およびスピーカ装置23-1~23-15に通信可能に接続される。
【0012】
以降、乗場FL1~FL15のうち、いずれであるかを特定しない場合には、乗場FLと記載する。
【0013】
本実施形態においては、建物内に3台のエレベータが設置された場合について説明するが、これには限定されず、2台または4台以上のエレベータが設置されていてもよい。また、本実施形態においては、建物内の階床数が15の場合について説明するが、これには限定されず、2以上であれば何階床でもよい。
【0014】
A号機エレベータ10Aは、昇降路の上部に設置された巻き上げ機11Aと、巻き上げ機11Aに掛け渡されたロープ12Aの一端に吊り下げられた乗りかご13Aと、巻き上げ機11Aに信号線を介して接続されるとともに乗りかご13Aにテールコード14Aを介して接続されたA号機制御装置15Aとを有する。B号機エレベータ10BおよびC号機エレベータ10Cは、A号機エレベータ10Aと同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0015】
乗場呼び登録装置21-1~21-15はそれぞれ、乗場FL1~FL15にいる利用者が乗場呼び登録操作を行うための装置である。カメラ装置22-1~22-15はそれぞれ、乗場FL1~FL15を撮影して撮像情報を群管理装置30に送信する。スピーカ装置23-1~23-15はそれぞれ、群管理装置30から送信された音声情報を乗場FL1~FL15に出力する。
【0016】
図2は、群管理装置30の詳細な構成を示すブロック図である。群管理装置30は、A号機エレベータ10A、B号機エレベータ10B、およびC号機エレベータ10Cを群管理するものであり、記憶部31と、CPU32とを有する。
【0017】
記憶部31は、乗場呼び登録部311と、応答優先度記憶部312とを有する。乗場呼び登録部311は、乗場呼び登録装置21-1~21-15のいずれかで利用者により行われた操作に基づいて発生した乗場呼びの情報を登録する。応答優先度記憶部312は、後述するようにCPU32で算出される応答優先度の情報を記憶する。
【0018】
CPU32は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ群管理プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。
【0019】
CPU32は、動作情報取得部321と、撮像情報取得部322と、第1判定部323と、応答優先度算出部324と、割当制御部325と、動作指示部326と、情報出力制御部327と、第2判定部328とを有する。
【0020】
動作情報取得部321は、A号機制御装置15AからA号機エレベータ10Aの動作状況を示す情報を取得し、B号機制御装置15BからB号機エレベータ10Bの動作状況を示す情報を取得し、C号機制御装置15CからからC号機エレベータ10Cの動作状況を示す情報を取得する。
【0021】
撮像情報取得部322は、カメラ装置22-1~22-15が撮影した撮像情報を取得する。第1判定部323は、階床ごとに、所定値(例えば1分)より長い待ち時間を許容する待ち利用者である待ち許容利用者がエレベータ乗場にいるか否かを判定する。本実施形態において第1判定部323は、撮像情報取得部322が取得した撮像情報を解析して検知した、携帯端末を視認している待ち利用者を、待ち許容利用者として認識する。
【0022】
応答優先度算出部324は、階床ごとに、乗場呼び登録部311に登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる際の優先度である応答優先度を算出する。その際、応答優先度算出部324は、第1判定部323において、待ち許容利用者が乗場にいると判定された階の応答優先度を、待ち許容利用者が乗場にいないと判定された階の応答優先度よりも低く算出する。また応答優先度算出部324は、後述する第2判定部328において、乗場で携帯端末を視認していた待ち利用者が音声情報に反応したと判定した階の応答優先度を高くする。
【0023】
割当制御部325は、乗場呼び登録部311に乗場呼びが登録されたときに、動作情報取得部321が取得した情報と、応答優先度記憶部312に記憶された各階床の応答優先度とに基づいて、登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる。具体的には、割当制御部325は、乗場呼び登録部311に登録された複数の乗場呼びのうち、発生した階床の応答優先度が高い程、早く乗りかごが到着するように、各乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる。
【0024】
動作指示部326は、割当制御部325が割り当てたエレベータの制御装置に、応答させる乗場呼びの情報を送信することで応答動作の実行を指示する。情報出力制御部327は、第1判定部323が、携帯端末を視認している待ち利用者が乗場FLにいると判定した階床のスピーカ装置から、所定の音声情報を出力させる。第2判定部328は、撮像情報取得部322が取得した撮像情報を解析して、乗場FLで携帯端末を視認していた待ち利用者が、出力された音声情報に反応したか否かを判定する。
【0025】
〈一実施形態によるエレベータシステム1の動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1の動作について、説明する。エレベータシステム1の稼動中、群管理装置30の動作情報取得部321は、所定時間間隔で、A号機制御装置15AからA号機エレベータ10Aの動作状況を示す情報を取得し、B号機制御装置15BからB号機エレベータ10Bの動作状況を示す情報を取得し、C号機制御装置15CからからC号機エレベータ10Cの動作状況を示す情報を取得する。また、撮像情報取得部322は、所定時間間隔で、カメラ装置22-1~22-15が撮影した撮像情報を順次取得する。
【0026】
図3は、エレベータシステム1の稼動中に、群管理装置30が階床ごとに実行する応答優先度更新処理を示すフローチャートである。
【0027】
群管理装置30が1階に関して応答優先度更新処理を実行する場合には、第1判定部323が、撮像情報取得部322がカメラ装置22-1から取得した撮像情報を解析して、1階の乗場FL1に、携帯端末を視認している待ち利用者がいるか否かを判定する(S1)。携帯端末は、待ち利用者が携帯するスマートデバイス等の端末である。
【0028】
1階の乗場FL1に携帯端末を視認している待ち利用者が入場すると、カメラ装置22-1で撮影された撮像情報に基づいて第1判定部323がこれを検知する。
【0029】
第1判定部323が、1階の乗場FL1に携帯端末を視認している待ち利用者が入場したことを検知すると(S1の「YES」)、応答優先度算出部324が、応答優先度記憶部312に記憶されている1階の応答優先度を下げる処理を行う(S2)。
【0030】
その後、一定期間、例えば予め設定された30秒~1分程度の期間が経過すると(S3の「YES」)、群管理装置30は、応答優先度記憶部312に記憶された1階の応答優先度を更新する処理を実行する(S4)。群管理装置30は、1階に携帯端末を視認している待ち利用者がいなくなるまで、ステップS3およびS4の処理を繰り返す。携帯端末を視認している待ち利用者がいなくなると、ステップS1に戻る。
【0031】
群管理装置30は、建物内のすべての階床に関して、ステップS1~S5の処理を実行する。これにより、携帯端末を視認している待ち利用者がいる階床の応答優先度が適宜調整される。
【0032】
このように実行される各階の応答優先度の更新処理と、発生した乗場呼びに対して実行されるエレベータの割り当て処理との具体例について、図4および5を参照して説明する。
【0033】
図4は、所定のタイミングで、発生した乗場呼びに対して実行されるエレベータの割り当て処理に関する説明図である。このタイミングでは、1~3階の乗場に携帯端末を視認している利用者がいないため第1判定部323が携帯端末を視認している待ち利用者を検知せず(S1の「NO」)、応答優先度算出部324で1~3階の応答優先度「0」が算出され、応答優先度記憶部312に記憶されている。
【0034】
ここで、1階、2階、および3階で乗場呼びが発生すると、発生した乗場呼びの情報が乗場呼び登録部311に登録される。乗場呼びの情報が登録されると、割当制御部325が、動作情報取得部321が取得した情報と、応答優先度記憶部312に記憶された各階床の応答優先度とに基づいて、発生した乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる。この例では、各階の応答優先度に差がないため、建物内の待ち利用者の待ち時間の総計がなるべく少なくなるように、各乗場呼びに対していずれかのエレベータが割り当てられている。
【0035】
具体的には、A号機エレベータ10Aの乗りかご13Aが15階にあり、B号機エレベータ10Bの乗りかご13Bが5階~14階の間にあり(図示せず)、C号機エレベータ10Cの乗りかご13Cが5階付近にある状態で、3階で発生した乗場呼びにA号機エレベータ10Aが割り当てられ、2階で発生した乗場呼びにC号機エレベータ10Cが割り当てられ、1階で発生した乗場呼びにB号機エレベータ10Bが割り当てられている。このとき、乗りかご13Aが乗場呼びに応答して3階に到着するまでにかかる時間(予測到着時間)は70秒であり、乗りかご13Cが乗場呼びに応答して2階に到着するまでにかかる時間は5秒である。
【0036】
動作指示部326は、割当制御部325が割り当てた情報に基づいて、A号機エレベータ10AのA号機制御装置15Aに3階で発生した乗場呼びの情報を送信し、B号機エレベータ10BのB号機制御装置15Bに1階で発生した乗場呼びの情報を送信し、C号機エレベータ10CのC号機制御装置15Cに2階で発生した乗場呼びの情報を送信する。
【0037】
ここで、1階の乗場FL1に携帯端末を視認している待ち利用者が1人入場すると、カメラ装置22-1で撮影された撮像情報に基づいて第1判定部323が、1階に携帯端末を視認している待ち利用者が1人いると判定する。また、2階の乗場FL2に携帯端末を視認している待ち利用者が3人入場すると、カメラ装置22-2で撮影された撮像情報に基づいて第1判定部323が、2階に、携帯端末を視認している待ち利用者が3人いると判定する(S1の「YES」)。
【0038】
第1判定部323がこれらの利用者を検知すると、応答優先度算出部324が、検知した利用者がいる階床への応答優先度を下げる処理を行う(S2)。具体的には、検知した利用者がいる階床ごとに、検知した待ち利用者数に基づいて応答優先度を新たに算出し、算出した値で応答優先度記憶部312内の情報を更新する。
【0039】
例えば応答優先度算出部324は、1階に、携帯端末を視認している待ち利用者を1人検知したことから、1階の新たな応答優先度「-1」を算出し、この値で応答優先度記憶部312に記憶されている1階の応答優先度を更新する。また応答優先度算出部324は、2階に、携帯端末を視認している待ち利用者を3人検知したことから、2階の新たな応答優先度「-3」を算出し、この値で応答優先度記憶部312に記憶されている2階の応答優先度を更新する。
【0040】
図5は、図4のように割り当てた各乗場呼びに対するエレベータの割り当て内容を、更新後の応答優先度に基づいて変更する場合の例を示す説明図である。上述したように応答優先度が更新されると、3階よりも2階の方が、応答優先度が低くなる。しかし、図4のように割り当てられた状態では、3階の乗場呼びに応答する乗りかご13Cの方が、1階の乗場呼びに応答する乗りかご13Aよりも、乗場呼びの発生階に早く到着することになり、応答優先度との整合がとれない。
【0041】
そこで割当制御部325は、図5に示すように、3階で発生した乗場呼びに応答させるエレベータをA号機エレベータ10AからC号機エレベータ10C変更し、2階で発生した乗場呼びに応答させるエレベータをC号機エレベータ10CからA号機エレベータ10Aに変更することを検討する。
【0042】
このように割り当てを変更すると、3階の乗場呼びに対する予測到着時間は5秒となり、最初の割り当て時の予測到着時間70秒よりも65秒短縮され、改善効果のスコアが65として算出される。ここで、この変更によりペナルティとして課せられるスコアが0であり、変更の実行に要する改善効果のスコアの閾値が60として予め設定されていた場合、算出されたスコア65は閾値のスコア60を超えているため、変更が実行される。
【0043】
このように割り当てを変更することで、2階よりも応答優先度が高い3階に、2階よりも早く乗りかご13Cを応答させ、3階よりも応答優先度が低い2階に、3階よりも遅く乗りかご13Aを応答させ、応答優先度との整合をとることができる。
【0044】
動作指示部326は、割当制御部325が割り当てたエレベータの制御装置に、変更後の乗場呼びの情報を送信することで応答動作の変更を指示する。
【0045】
ステップS2で、応答優先度算出部324が、検知した利用者がいる階床への応答優先度を下げる処理を行った後、一定期間が経過すると(S3の「YES」)、群管理装置30は、応答優先度記憶部312に記憶された階床ごとの応答優先度を更新する処理を実行する(S4)。
【0046】
応答優先度算出部324が実行する応答優先度を更新するための更新処理例について、説明する。まず、情報出力制御部327が、携帯端末を視認している待ち利用者が検知された階床である1階のスピーカ装置23-1および2階のスピーカ装置23-2から、乗りかごの到着が遅くなるため待ち時間が長くなることを報知するアナウンス情報を出力させる。このアナウンス情報の出力後、第2判定部328は、撮像情報取得部322が取得した、アナウンス情報を出力させた1階および2階の撮像情報に基づいて、携帯端末を視認している待ち利用者のうちアナウンス情報に反応した待ち利用者がいるか否かを判定する。
【0047】
第2判定部328が、アナウンス情報を出力させた階床の乗場FLに、携帯端末から目を外す等、アナウンス情報を気にして反応を示した待ち利用者がいることを検知すると、応答優先度算出部324が、これらの待ち利用者は携帯端末を視認しているものの集中度合いは低いと認識し、検知した待ち利用者数に基づいてこれらの待ち利用者がいる階床の応答優先度を更新する。
【0048】
例えば、図6に示すように、1階のスピーカ装置23-1および2階のスピーカ装置23-2からアナウンス情報を出力させたときに、2階にいる携帯端末を視認している3人の待ち利用者のうち、2人がアナウンス情報に反応した場合、応答優先度算出部324は、2階の応答優先度の補正値「+2」を算出する。応答優先度算出部324は、算出した補正値「+2」を、応答優先度記憶部312に記憶されている2階の応答優先度「-3」に加算して、2階の新たな応答優先度「-1」を算出し、更新する。
【0049】
ここで、応答優先度算出部324は、携帯端末を視認している待ち利用者がアナウンス情報に対して反応しなかった1階に関しては、携帯端末を視認している待ち利用者が携帯端末に集中していると認識し、ステップS2で下げた応答優先度をそのまま維持する。
【0050】
このように応答優先度が更新されると、割当制御部325は、動作情報取得部321が取得した情報と、更新後の各階床の応答優先度とに基づいて、登録された乗場呼びに応答するエレベータの割り当てを適宜変更する。
【0051】
動作指示部326は、割当制御部325が割り当てたエレベータの制御装置に、変更後の乗場呼びの情報を送信することで応答動作の変更を指示する。
【0052】
以上の実施形態によれば、エレベータの長い待ち時間を許容する待ち利用者がいる階床で発生した乗場呼びに関しては、その乗場呼びへの応答の優先度を下げることで、エレベータの待ち時間に関する建物内の待ち利用者全体の満足度を向上させることができる。
【0053】
上述した実施形態において、応答優先度算出部324は、階床ごとに携帯端末を視認している待ち利用者の人数を算出し、算出した人数が多い程、応答優先度を低く算出する場合について説明した。しかしこれには限定されず、応答優先度算出部324が階床ごとに、すべての待ち利用者の人数に対する、携帯端末を視認している待ち利用者の人数の割合を算出し、算出した値が大きい程、応答優先度を低く算出してもよい。
【0054】
また上述した実施形態において、応答優先度算出部324は、携帯端末を視認している待ち利用者のうちの音声情報に反応した待ち利用者の人数を算出し、算出した人数が多い程、応答優先度が高くなるように更新する場合いついて説明した。しかしこれには限定されず、応答優先度算出部324が階床ごとに、携帯端末を視認している待ち利用者の人数に対する音声情報に反応した待ち利用者の人数の割合を算出し、算出した値が大きい程、応答優先度が高くなるように更新してもよい。これにより、携帯端末の使用等をしていない、待ち許容利用者以外の待ち利用者に対して、なるべくエレベータ利用の満足度が低下しないようにすることができる。
【0055】
また上述した実施形態において、応答優先度算出部324は、第1判定部323において、待ち許容利用者と待ち許容利用者以外の待ち利用者との双方が乗場FLにいると判定された階の応答優先度を、待ち許容利用者のみが乗場FLにいると判定された階の応答優先度よりも高くなるように算出してもよい。これにより、携帯端末の使用等をしていない、許容利用者以外の待ち利用者に対して、なるべくエレベータ利用の満足度が低下しないようにすることができる。
【0056】
また上述した実施形態において、応答優先度算出部324は、階床に応じて、または時間帯に応じて、それぞれ予め設定された指標に基づいて応答優先度を算出してもよい。例えば、応答優先度算出部324は、建物のエントランス階である1階に関しては利用者数が多いため、他の階床に比べて待ち許容利用者がいる場合の応答優先度の下げ幅を小さくしてもよい。また、応答優先度算出部324は、朝の出勤時間帯および昼休みの時間帯にはエレベータが混雑するため、これらの時間帯には応答優先度の調整は行わないようにしてもよい。これにより、エレベータ利用の満足度が低下する利用者が多くなることを回避することができる。
【0057】
また上述した実施形態において、第1判定部323は、イヤホンを装着している待ち利用者を待ち許容利用者として認識してもよい。また第2判定部328は、待ち許容利用者のうち、イヤホンをしている人を携帯端末に集中している人として認識し、ステップS2で下げた応答優先度をそのまま維持してもよい。
【0058】
また上述した実施形態において、第1判定部323は、予め登録された、所定値より長い待ち時間を許容する意思がある利用者の顔認証情報等の特徴情報を予め登録し、撮像情報取得部322が取得した撮像情報を解析して登録した利用者を検知すると、検知した利用者を待ち許容利用者として認識してもよい。これにより、さらに精度良く利用者の意思を考慮して、エレベータの群管理を行うことができる。
【0059】
また上述した実施形態において、第1判定部323は、所定値より長い待ち時間を許容する意思があることを示す行動をとった待ち利用者を、待ち許容利用者として認識してもよい。例えば、情報出力制御部327が、所定値より長い待ち時間を許容するか否かを問い合わせるメッセージ情報を生成して、各階の乗場FLに設置した無線通信器を介して近距離無線通信等により乗場FLに入場した待ち利用者の携帯端末に送信し、このメッセージ情報に応答して利用者が携帯端末で行った、長い待ち時間を許容する意思を示す操作の情報を群管理装置30が取得することで、第1判定部323がこの利用者を待ち許容利用者として認識するようにしてもよい。これにより、さらに精度良く利用者の意思を考慮して、エレベータの群管理を行うことができる。
【0060】
また上述した実施形態において、割当制御部325が、乗場呼びに対するエレベータの割り当ての変更を検討する際に、変更した場合のいずれかの階床の待ち利用者の待ち時間が所定値(例えば3分)を超える場合には、割り当ての変更を実行しないようにしてもよい。これにより、利用者の待ち時間が過度に長くなることを回避することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…エレベータシステム、10A…A号機エレベータ、10B…B号機エレベータ、10C…C号機エレベータ、11A,11B,11C…巻き上げ機、12A,12B,12C…ロープ、13A,13B,13C…乗りかご、14A,14B,14C…テールコード、15A…A号機制御装置、15B…B号機制御装置、15C…C号機制御装置、21,21-1~21-15…乗場呼び登録装置、22,22-1~22-15…カメラ装置、23,23-1~23-15…スピーカ装置、30…エレベータ群管理装置、31…記憶部、32…CPU、311…乗場呼び登録部、312…応答優先度記憶部、321…動作情報取得部、322…撮像情報取得部、323…第1判定部、324…応答優先度算出部、325…割当制御部、326…動作指示部、327…情報出力制御部、328…第2判定部
【要約】
【課題】エレベータ利用者の満足度を向上させるようにエレベータの群管理を行うエレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法を提供する。
【解決手段】実施形態によればエレベータ群管理装置は、複数台のエレベータに通信可能に接続され、応答優先度算出部と第1判定部と割当制御部とを備える。応答優先度算出部は、建物内の階床ごとに、登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる際の応答優先度を算出する。第1判定部は、建物内の階床ごとに、所定値より長い待ち時間を許容する待ち利用者である待ち許容利用者がエレベータ乗場にいるか否かを判定する。割当制御部は、応答優先度に基づいて登録された乗場呼びに応答するエレベータを割り当てる。また応答優先度算出部は、第1判定部において、待ち許容利用者が乗場にいると判定された階の応答優先度を、待ち許容利用者が乗場にいないと判定された階の応答優先度よりも低く算出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6