(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
H05K13/04 M
(21)【出願番号】P 2024500776
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006206
(87)【国際公開番号】W WO2023157134
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-267916(JP,A)
【文献】特開2010-272549(JP,A)
【文献】特開2018-32681(JP,A)
【文献】特開2017-195264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
較正用の基準マークが付設された基台と、
基板認識マークを有する基板に部品を搭載するヘッドを備えたヘッドユニットと、
前記基台上に設定された移動軸に沿って、前記ヘッドユニットを水平方向に移動させるヘッド移動機構と、
前記ヘッドユニットに搭載され、前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像可能なカメラと、
前記カメラの撮像動作を制御すると共に、所定の軸座標系に基づいて前記ヘッドユニットの移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カメラに前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの指定座標である補正後マーク座標を求めると共に、前記基板認識マークの認識により得られた実マーク座標と前記補正後マーク座標との差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第1処理と、
前記カメラに、前記基準マークを撮像させる一方で、前記基板認識マークの撮像の全部または一部を省略させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの新たな補正後マーク座標を求め、既に取得されている前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を参照して、前記新たな補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置を演算により取得し、両者の差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第2処理と、を実行する部品実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、
先に実行される第1撮像動作において前記第1処理を実行し、前記第1撮像動作の後の第2撮像動作の際に前記第2処理を実行するものであって、
前記第2処理において、前記第1撮像動作で取得された前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を利用する、部品実装装置。
【請求項3】
請求項1に記載の部品実装装置において、
前記ヘッドユニットとして、第1カメラが搭載され第1移動軸に沿って移動する第1ヘッドユニットと、第2カメラが搭載され第2移動軸に沿って移動する第2ヘッドユニットと、を含み、
前記制御部は、
前記第1ヘッドユニットの第1軸座標系についての補正処理のため、前記第1カメラの撮像動作で得られた画像に基づき前記第1処理を実行し、前記第2ヘッドユニットの第2軸座標系についての補正処理のため、前記第2カメラの撮像動作で得られた画像に基づき前記第2処理を実行するものであって、
当該第2処理において、前記第2カメラに前記基板認識マークの撮像動作を行わせることなく、前記第1カメラの撮像動作で取得された補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を前記第2軸座標系に変換して前記移動補正量を求める、部品実装装置。
【請求項4】
請求項1に記載の部品実装装置において、
前記ヘッドユニットとして、第1カメラが搭載され第1移動軸に沿って移動する第1ヘッドユニットと、第2カメラが搭載され第2移動軸に沿って移動する第2ヘッドユニットと、を含み、
前記基板は、前記第1カメラに撮像される第1基板認識マークと、前記第2カメラに撮像される第2基板認識マークとを含み、
前記制御部は、
前記第1ヘッドユニットの第1軸座標系について補正処理のため、前記第1カメラに前記基準マークおよび前記第1基板認識マークを撮像させ、前記第2ヘッドユニットの第2軸座標系について補正処理のため、前記第2カメラに前記基準マークおよび前記第2基板認識マークを撮像させ、得られた画像に基づきそれぞれ前記第1処理を実行し、
前記第2ヘッドユニットに対する前記第2処理において、前記第1軸座標系の前記第1処理で用いられた前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を、前記第2軸座標系に変換することで、当該第2軸座標系についての前記移動補正量を求め、
前記第1ヘッドユニットに対する前記第2処理において、前記第2軸座標系の前記第1処理で用いられた前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を、前記第1軸座標系に変換することで、当該第1軸座標系についての前記移動補正量を求める、部品実装装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、1枚の基板への部品実装の間に、少なくとも前記第1処理における前記基準マークの撮像、および前記第2処理における前記基準マークの撮像を実行させる、部品実装装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装装置において、
前記ヘッドの先端に装着される吸着ノズルの交換位置を特定するノズル交換マークと、前記吸着ノズルによる部品供給装置から部品吸着位置を特定するフィーダーマーカーとをさらに備え、
前記制御部は、前記カメラに前記ノズル交換マークまたは前記フィーダーマーカーの少なくとも一方を撮像させ、
前記基準マークと、前記ノズル交換マークまたは前記フィーダーマーカーとの認識結果から、前記交換位置および前記部品吸着位置を含む軸座標系について、前記第1処理および第2処理を実行する、部品実装装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、前記第1処理および前記第2処理を実行する第1モードと、前記第1処理に相当する処理だけを実行する第2モードとを切り換え可能である、部品実装装置。
【請求項8】
請求項7に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記第1処理の実行頻度を調整することが可能とされている、部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を基板に実装する部品搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装する部品実装装置は、部品を搭載するヘッドを有するヘッドユニットと、当該ヘッドユニットをX軸およびY軸の移動軸に沿って移動させるヘッド移動機構とを備える。ヘッド移動機構は、装置の実装ステージに搬入された基板に対し、部品供給部から部品を取り出し、所定の部品実装位置に当該部品を実装するよう、ヘッドユニットを移動させる。部品の実装位置は、ヘッドユニットに搭載されたカメラで基板に付されたフィデューシャルマーク(以下、FIDマークという)を撮像させ、基板とヘッドとの相対的な位置関係を認識させることで較正される軸座標系にて特定される。
【0003】
ここで、XY移動軸は、装置の稼働により生じる熱によって伸縮する。FIDマークの認識だけでは、XY移動軸の熱伸縮に対応した軸座標系の補正はできない。このため、熱伸縮を無視できる基台に較正用の基準マークを3点以上設置しておき、これらを前記カメラで撮像させる。そして、基準マークの認識によりXY移動軸の熱変位を計測し、FIDマークが正しく認識されるよう前記軸座標系の補正が行われる(例えば特許文献1)。
【0004】
しかし、基準マークおよびFIDマークを撮像させるには、カメラを搭載しているヘッドユニットをXY移動軸に沿って移動させる必要がある。つまり、ヘッドユニットを、部品供給位置と部品実装位置との間で水平移動させるだけでなく、基準マーク並びにFIDマークの撮像のためにも水平移動させねばならない。このことは、部品実装のタクトタイムの短縮を阻害する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヘッドユニットの移動軸の熱伸縮に対応する軸座標系の補正を、タクトロスを可及的に抑制して実行できる部品実装装置を提供することにある。
【0007】
本発明の一局面に係る部品実装装置は、較正用の基準マークが付設された基台と、基板認識マークを有する基板に部品を搭載するヘッドを備えたヘッドユニットと、前記基台上に設定された移動軸に沿って、前記ヘッドユニットを水平方向に移動させるヘッド移動機構と、前記ヘッドユニットに搭載され、前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像可能なカメラと、前記カメラの撮像動作を制御すると共に、所定の軸座標系に基づいて前記ヘッドユニットの移動を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記カメラに前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの指定座標である補正後マーク座標を求めると共に、前記基板認識マークの認識により得られた実マーク座標と前記補正後マーク座標との差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第1処理と、前記カメラに、前記基準マークを撮像させる一方で、前記基板認識マークの撮像の全部または一部を省略させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの新たな補正後マーク座標を求め、既に取得されている前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を参照して、前記新たな補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置を演算により取得し、両者の差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第2処理と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る部品実装装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、前記部品実装装置が備えるヘッドユニットの正面図である。
【
図3】
図3は、前記部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の部品実装装置における移動軸の軸座標系の補正処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、補正モードの例を示す表形式の図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例を示す部品実装装置の平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る部品実装装置を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の部品実装装置における移動軸の軸座標系の補正処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る部品実装装置を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の部品実装装置における移動軸の軸座標系の補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下に説明する部品実装装置は、プリント基板に電子部品を実装する装置である。電子部品は、例えばチップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品、ボールバンプ部品、IC等のパッケージ型の部品である。
【0010】
<部品実装装置の全体構造>
図1は、部品実装装置1の概略構成を示す平面図、
図2は、部品実装装置1のヘッドユニット部分の概略構成を示す正面図である。部品実装装置1は、各種の電子部品を基板Pに実装してなる実装基板を生産する装置である。部品実装装置1は、基台10、基板搬送部2、部品供給部3(部品供給装置)、ヘッドユニット4、基板認識カメラ5(カメラ)およびマルチカメラ11を含む。
図1および
図2において、XYZの方向表示が付されている。以下の説明において、X方向を基板Pの移動方向である左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向という場合がある。
【0011】
基台10は、平面視で長方形状を有し、上面が平坦な基台であって、基板搬送部2および部品供給部3が組付けられている。基板搬送部2は、電子部品が実装される基板Pを搬送する。基板搬送部2は、基台10上において、基板Pを左右方向(X方向)へ搬送する一対のコンベア21、22を有している。コンベア21、22は、基板Pを右側から部品実装装置1の機内に搬入し、所定の作業位置、ここでは
図1に示す基板Pの位置まで左方へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、電子部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア21、22は基板Pを左側へ搬送し、部品実装装置1の機外へ搬出する。
【0012】
部品供給部3は、基板Pへ実装される電子部品6を供給する。部品供給部3は、基板搬送部2の前後方向(Y方向)に各々配置されている。各部品供給部3は、それぞれ左右方向に配列された複数のテープフィーダ31を備えている。各テープフィーダ31は、チップ部品などの電子部品を所定間隔で収容したテープが巻回されたリールを保持している。テープフィーダ31は、前記リールからテープを間欠的に繰り出し、フィーダ先端の部品供給位置にチップ部品を供給する。
【0013】
ヘッドユニット4は、部品供給部3から電子部品を取り出し、これを基板Pに実装する。ヘッドユニット4は、基台10上に設定されたXYの水平方向の移動軸に沿って移動可能に配置され、前記部品供給位置においてテープフィーダ31から電子部品を取り出し、前記作業位置において前記電子部品を基板Pの所定位置に実装する。基台10の上方には、X方向に延びる支持ビーム23が架設されている。ヘッドユニット4は、支持ビーム23に固定されたX軸固定レール24(移動軸)に対して移動可能に支持されている。
【0014】
支持ビーム23は、Y方向に延びるY軸固定レール25に支持され、このY軸固定レール25(移動軸)に沿ってY方向に移動可能である。X軸固定レール24に対して、X方向のヘッド移動機構として、X軸サーボモータ26およびボールねじ軸27が配置されている。Y軸固定レール25に対して、Y方向のヘッド移動機構として、Y軸サーボモータ28およびボールねじ軸29が配置されている。ヘッドユニット4は、X軸サーボモータ26によるボールねじ軸27の回転駆動によってX方向に移動し、Y軸サーボモータ28によるボールねじ軸29の回転駆動によってY方向に移動する。
【0015】
ヘッドユニット4には、基板Pに部品を搭載する複数の実装用ヘッド4Hが搭載されている。各ヘッド4Hは、Z方向に延びるシャフト41と、該シャフト41の下端に装着された吸着ノズル42とを含む。シャフト41は、ヘッドユニット4に対して昇降およびノズル中心軸(R軸)回りの回転が可能とされている。吸着ノズル42は、電子部品を吸着して保持し、これを基板Pの表面に搭載することが可能である。
【0016】
マルチカメラ11は、基台に組み込まれている。マルチカメラ11は、基台10の上方を撮像視野とするカメラである。マルチカメラ11の主たる役目は、吸着ノズル42による電子部品の吸着状態を画像認識するために、吸着ノズル42に吸着された電子部品を下面側から撮像することにある。
【0017】
基板認識カメラ5は、ヘッドユニット4の左側に搭載されている。基板認識カメラ5は、基台10の上面を上方から撮像するカメラであり、基台10の上面に存在する各種マークを撮像する。
図1では、前記マークとして、基板Pの表面に付設されているFIDマークFM(基板認識マーク)と、基台10の上面に設置されている較正用の基準マークM1~M3とを例示している。
【0018】
FIDマークFMは、搬入された基板Pの前記作業位置の原点座標に対する位置ズレ量を検知するためのマークである。基板認識カメラ5の撮像により得られた画像データ上でFIDマークFMの位置が特定され、原点座標に対する位置ズレ量が求められる。この位置ズレ量は、部品実装時に参照され、位置ズレが生じないように電子部品が基板Pに実装される。
【0019】
基準マークM1~M3は、熱伸縮の影響を実質的に無視できる基台10に付設され、XY移動軸の熱変位の発生度合いを計測するための較正用マークである。本実施形態では、基板搬送部2の前側に2個の基準マークM1、M2がX方向に離間して配置され、基板搬送部2の後側に1個の基準マークM3が配置されている例を示している。XY移動軸、すなわちX軸固定レール24、Y軸固定レール25およびこれらのボールねじ軸27、29等は、ヘッドユニット4の移動時に発生する摩擦熱など、部品実装装置1の稼働に伴って生じる熱により熱膨張する。XY移動軸が熱膨張すると、ヘッドユニット4の位置精度に誤差が生じ、部品の実装精度が低下する。熱変位が生じない基準マークM1~M3を、熱変位が生じるXY移動軸に沿って移動するヘッドユニット4に搭載されている基板認識カメラ5で撮像することにより、熱変位誤差を算出することができる。得られた熱変位誤差を解消するようにヘッドユニット4の移動を制御することで、部品の実装精度の低下が抑制される。
【0020】
<部品実装装置の電気的構成>
続いて、部品実装装置1の制御構成について説明する。
図3は、部品実装装置1の電気的構成を示すブロック図である。部品実装装置1は、基台10の内部もしくは機外に配置される制御装置7(制御部)を備える。制御装置7は、所定のプログラムが実行されることで、上述の部品実装装置1が備える各部の動作を制御する。なお、
図3のブロック図には、
図1、
図2では記載が省かれた、Z軸サーボモータ43およびR軸サーボモータ44が記載されている。
【0021】
Z軸サーボモータ43およびR軸サーボモータ44は、ヘッドユニット4内に組み込まれるモータである。Z軸サーボモータ43は、電子部品の吸着若しくは実装を行う際に、ヘッド4H(シャフト41)をZ軸に沿って昇降させる駆動源である。R軸サーボモータ44は、シャフト41をR軸回りに回転させる駆動源である。
【0022】
制御装置7は、撮像制御部71、画像処理部72、軸制御部73、主制御部74および記憶部75を機能的に備えている。撮像制御部71は、基板認識カメラ5およびマルチカメラ11の他、部品実装装置1に備えられている各種カメラの撮像動作を制御する。撮像制御部71は、例えば基板認識カメラ5に基準マークM1~M3およびFIDマークFM等のマークの撮像を行わせるタイミングを指定する制御信号を与える。撮像制御部71は、一枚の基板Pへの部品実装に相当の時間を要する場合、その実装途中に複数回の前記マークの撮像動作を基板認識カメラ5に実行させる。これは、1枚の基板への部品実装中にXY移動軸の熱変位状況に変化が生じ得ることに対応するためである。後記で詳述するが、本実施形態では複数回のマーク撮像ターンにおいて、基準マークM1~M3は撮像するがFIDマークFMの撮像は省くことで、タクトタイムの長時間化を抑止する。
【0023】
画像処理部72は、基板認識カメラ5およびマルチカメラ11により取得された画像データに対してエッジ検出処理、特徴量抽出を伴うパターン認識処理などの画像処理技術を適用して、当該画像から各種の情報を抽出する。具体的には、画像処理部72は、基板認識カメラ5が取得した画像データに基づき、FIDマークFMおよび基準マークM1~M3の位置を特定する処理を行う。また、画像処理部72は、マルチカメラ11が取得した画像データに基づき、吸着ノズル42に保持された電子部品の形状、位置などを特定する処理を行う。
【0024】
軸制御部73は、X軸サーボモータ26およびY軸サーボモータ28を制御することによって、ヘッドユニット4のXY方向の移動動作を制御する。また、軸制御部73は、ヘッドユニット4が備えるZ軸サーボモータ43およびR軸サーボモータ44を制御することによって、実装用ヘッド4Hの昇降および回転動作を制御する。
【0025】
主制御部74は、部品実装装置1に対する各種の動作を統括的に制御する。例えば、主制御部74は、撮像制御部71、画像処理部72および軸制御部73等に制御信号を与え、画像を撮像する動作、画像データに対して画像処理を行わせる動作、並びにヘッドユニット4やヘッド4Hを駆動させる動作を実行させる。記憶部75は、基板Pや電子部品に関する各種の情報、部品実装装置1に関する各種の設定値やパラメータ、制御データ、動作プログラム等を記憶する。
【0026】
主制御部74は、ヘッドユニット4の移動制御に関し、機能的に実装制御部741、補正処理部742および補正モード設定部743を備えている。実装制御部741は、予め指定されている部品実装位置に対応する位置を、実装対象の基板PにおいてFIDマークFMを基準とする軸座標系に基づいて特定し、ヘッドユニット4を移動させる。
【0027】
補正処理部742は、上述のXY移動軸の熱変位に応じて、ヘッドユニット4の移動量の補正値を求める処理を行う。補正処理部742は、ヘッドユニット4の移動補正量を求める処理として、第1処理と第2処理とを実行する。前記第1処理では、基準マークM1~M3およびFIDマークFMの双方を撮像させ、両マークの認識結果に基づき前記移動補正量を求める。前記第2処理では、基準マークM1~M3のみを撮像させ、FIDマークFMに相当する位置を演算により取得し、前記移動補正量を求める。
【0028】
補正モード設定部743は、ユーザの入力指示に応じて、ヘッドユニット4の移動補正量を求める補正処理のモードの設定、並びに当該補正処理の実行頻度を設定する。補正処理のモードは、前記第1処理および前記第2処理を実行する第1モードと、前記第1処理に相当する処理だけを実行する第2モードとを含む。大型の基板Pへの部品実装では、1枚の基板Pへの部品実装中に複数回の補正処理が必要となる場合がある。前記第1モードでは、複数回の補正処理ターンのうち、一部のターンでは基準マークM1~M3およびFIDマークFMの双方を撮像して補正処理を行い、他のターンでは基準マークM1~M3のみを撮像して補正処理を行う。例えば、初回ターンだけは基準マークM1~M3およびFIDマークFMの双方を撮像し、残りのターンでは基準マークM1~M3のみを撮像する。前記第2モードは、従来方式の補正処理であり、各ターンで基準マークM1~M3およびFIDマークFMの双方を撮像して補正処理を行う。補正モード設定部743は、前記第1モードと前記第2モードとを適宜切り換えて前記補正処理を実行させる。
【0029】
XY移動軸の熱変位状態は、時間変化する。例えば、部品実装装置1の運転開始初期は熱膨張度合いが大きく、基準マークM1~M3を用いた熱変位誤差の較正を頻繁に行う必要がある。一方、運転開始から時間がある程度経過すると、熱膨張は飽和して熱変位も小さくなるので、前記較正の頻度を低下させ得る。この点に鑑み、補正モード設定部743は、補正処理部742による補正処理の実行頻度を調整する。また、補正モード設定部743は、前記第1モードにおいて前記第1処理を実行させる頻度の調整も行う。
【0030】
<補正処理の詳細>
補正処理部742が実行する補正処理について詳述する。先ず、ヘッドユニット4が基台10上の基準マークM1、M2、M3の上空を順次通過するように移動され、撮像制御部71の制御下で基板認識カメラ5によりこれら基準マークM1~M3の画像が取得される。得られた画像データが画像処理部72に送られ、基準マークM1~M3の位置認識が行われる。XY移動軸の熱変位は、ヘッドユニット4の移動誤差を生む。この移動誤差に基づき、XY移動軸の熱変位を求めることができる。この熱変位Aは、次の式(1)で表現することができる。
【数1】
【0031】
上記式(1)において、α、β、θ、φは、XY移動軸の熱変位に関連するパラメータである。αはX軸方向の伸び率、βはY軸方向の伸び率、θはX軸方向の角度変化量、φはY軸方向の角度変化量である。これらパラメータに基づき、XY移動軸の軸座標系が較正される。
【0032】
続いて、ヘッドユニット4が基板Pの上空を通過するように移動され、基板認識カメラ5により基板Pに付されている複数のFIDマークFMの画像が取得される。得られた画像データが画像処理部72に送られ、FIDマークFMの位置認識が行われる。部品実装装置1の所定の作業位置に搬入された基板Pの、FIDマークFMの設計上の指定座標が、下記の式(21)に示す通りX
0、Y
0であるとする。また、初回のFIDマークFMの認識前に計測されたXY移動軸の熱変位A、つまり初回の補正処理ターンにおける熱変位Aが上記式(1)の通りであるとする。この場合、当該初回のターン実行時の、較正後の軸座標系におけるFIDマークFMの指定座標である補正後マーク座標は、下記の式(22)の通りとなる。初回のFIDマークFMの認識により得られたFIDマークFMの座標である実マーク座標が、式(23)に示す通りd
X、d
Yであったとする。補正処理部742は、較正後の補正後マーク座標X
0、Y
0と実マーク座標d
X、d
Yとの差異に基づき、ヘッドユニット4の移動補正量を求める。同様にして、次回の補正処理ターンでは、基準マークM1~M3の認識により得られたXY移動軸の熱変位A´を用いて、式(24)の通りFIDマークFMの補正後マーク座標が求められる。今回のターンで認識されたFIDマークFMの実マーク座標が式(25)に示す通りd
X´、d
Y´であったとする。補正処理部742は、今回のターンでの較正後の補正後マーク座標X
0、Y
0と実マーク座標d
X´、d
Y´との差異に基づき、ヘッドユニット4の移動補正量を求める。
【数2】
【0033】
上述の第1処理では、初回および次回の補正処理ターンのいずれでも、基板認識カメラ5に基準マークM1~M3およびFIDマークFMを撮像させる(第1撮像動作)。すなわち、式(23)および式(25)に示すFIDマークFMの実マーク座標を、実際に基板認識カメラ5によりFIDマークFMを撮像して取得する。これに対し、上述の第2処理では、次回の補正処理ターンにおいてFIDマークFMの撮像を省略して基準マークM1~M3の撮像のみを行い(第2撮像動作)、既に取得されている初回の補正後マーク座標;式(22)に対する初回の実マーク座標;式(23)の位置関係を参照して、式(25)に相当する実マーク座標を演算により取得する。
【0034】
基板Pの位置が不動であれば、FIDマークFMの実際の位置は初回と次回とで変動しない。このため、初回ターンでの較正後の補正後マーク座標X
0、Y
0と実マーク座標d
X、d
Yとの位置関係と、次回ターンでの較正後の補正後マーク座標X
0、Y
0と実マーク座標d
X´、d
Y´との位置関係とは等しくなる。従って、次回ターンの実マーク座標d
X´、d
Y´は、次の式(3)にて表すことができる。
【数3】
上記式(3)より、次回ターンの実マーク座標d
X´、d
Y´は、次の式(4)で算出することができる。
【数4】
【0035】
つまり、式(4)を用いた演算により実マーク座標dX´、dY´に相当する座標値を算出することができるので、次回ターンでのFIDマークFMの撮像が不要となる。上記第2処理では、補正処理部742は、式(4)を用いてヘッドユニット4の移動補正量を求める。第2処理においても、基準マークM1~M3の認識が行われ、較正された軸座標系におけるFIDマークFMの補正後マーク座標が求められる。そして、FIDマークFMの撮像を行うことなく、初回ターンで得られた補正後マーク座標X0、Y0と実マーク座標dX、dYとの位置関係を利用する式(4)を用いて、演算により実マーク座標dX´、dY´が求められる。これにより、FIDマークFMの撮像が省かれる分だけ、タクトタイムを短縮できる。しかる後、補正処理部742は、今回のターンで較正された補正後マーク座標X0、Y0と実マーク座標dX´、dY´との差異に基づき、ヘッドユニット4の移動補正量を求める。
【0036】
<XY移動軸の補正処理フロー>
図4は、第1実施形態の部品実装装置1におけるXY移動軸の軸座標系の補正処理を示すフローチャートである。ここでは、部品実装装置1に搬入された1枚の基板Pへの部品実装の間に、複数回の補正処理が実行されるケースを想定する。先ず、主制御部74の補正モード設定部743が、XY移動軸の熱変位に対応する、ヘッドユニット4の移動量の補正値を求める補正処理を行う間隔を設定する(ステップS1)。部品実装装置1の実装運転開始からの初期は、熱変位の時間変化が比較的大きいので、補正間隔は比較的短い時間(例えば1分程度)に設定される。
【0037】
続いて補正モード設定部743は、補正処理をどの補正モードで実行するかを決定する補正モードの設定処理を行う(ステップS2)。本実施形態では、上述の第1処理と第2処理とを組み合わせて実行することでタクトタイムの向上を図るタクトアップモードと、第1処理に相当する処理だけを実行する標準モードとが、補正モードとして用意されているものとする。
【0038】
補正処理部742は、ステップS1で設定された補正間隔が経過したか否かを判定する(ステップS3)。なお、初回の補正処理ターンでは補正間隔=0とされ、直ちに補正処理が実行される。補正間隔が経過すると(ステップS3でYES)、補正処理部742は、現状で設定されている補正モードが、前記タクトアップモードであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0039】
補正モードが前記タクトアップモードである場合(ステップS4でYES)、補正処理部742は、今回の補正処理ターンでの基板認識カメラ5による撮像が、基準マークM1~M3およびFIDマークFMの両マークを撮像するものであるか否か、つまり上述の第1処理の実行ターンであるか否かを判定する(ステップS5)。両マークを撮像するターンである場合(ステップS5でYES)、補正処理部742は撮像制御部71および軸制御部73に指示を与え、基板認識カメラ5に基準マークM1、M2およびM3を順次撮像させ、さらに基板PのFIDマークFMを撮像させる(ステップS6)。通常、初回のターンは、第1処理の実行ターンに設定される。
【0040】
両マークを撮像するターンではない場合(ステップS5でNO)、基準マークM1~M3のみを撮像する、上述の第2処理の実行ターンとなる。補正処理部742は、基板認識カメラ5に基準マークM1、M2およびM3を順次撮像させる(ステップS7)。例えば、初回のターンで第1処理が実行された場合、続く2回目~n回目のターンでは第2処理を実行する、という設定とすることができる。あるいは、初回からn回おきのターンでは第1処理が実行され、残りのターンでは第2処理を実行する設定とすることもできる。
【0041】
これに対し、補正モードが前記タクトアップモードではない場合(ステップS4でNO)、標準モードがステップS2で設定されたことになる。この場合、補正処理部742は、全ての補正処理ターンにおいて、基板認識カメラ5に基準マークM1~M3およびFIDマークFMの両マークを撮像させる(ステップS8)。標準モードを実行すれば、タクトタイムは悪化するものの、部品実装装置1は搬入された基板Pの前記作業位置における固定状態が何らかの要因で変化した場合でも、ヘッドユニット4の補正移動量を正確に導出できる利点がある。
【0042】
続いて補正処理部742は、ステップS6、S7またはS8で得られたマーク認識結果に基づき、今回のターンにおける補正移動量を求める(ステップS9)。ステップS6およびS8の処理が実行された場合、補正処理部742は、基準マークM1~M3の認識により較正されたFIDマークFMの補正後マーク座標と、FIDマークFMの実際の認識で得られた実マーク座標との差異に基づいて、ヘッドユニット4の補正移動量を求める。これは、上述の第1処理に相当する。一方、ステップS7が実行された場合、補正処理部742は、前記補正後マーク座標と、上掲の式(4)を用いた演算により得られる実マーク座標に相当する座標値との差異に基づいて、ヘッドユニット4の補正移動量を求める。
【0043】
その後、主制御部74は、今回搬入された基板Pへの部品実装を終えたか、つまり1枚の基板Pの生産が終了したか否かを確認する(ステップS10)。生産が終了したなら(ステップS10でYES)、今回の補正処理を終える。一方、生産終了ではない場合(ステップS10でNO)、主制御部74は、補正モードの変更指示が存在するか否かを確認する(ステップS11)。補正モードの変更指示が存在する場合(ステップS11でYES)、ステップS2に戻り、補正モード設定部743が前記変更指示に係る補正モードを設定する。
【0044】
続いて、主制御部74は、補正処理ターンの間隔の変更指示が存在するか否かを確認する(ステップS12)。補正間隔の変更指示が存在する場合(ステップS12でYES)、ステップS1に戻り、補正モード設定部743が変更指示の通りに補正間隔を変更する。補正モードの変更指示並びに補正間隔の変更指示が存在しない場合(ステップS11、S12でNO)、ステップS3に戻って処理が繰り返される。
【0045】
図5は、補正モードの例を示す表形式の図である。
図5には、各モードにおける基準マークM1~M3およびFIDマークFMの撮像の態様が記述されている。標準モード(第2モード)では、基準マークM1~M3およびFIDマークFMが、複数の補正処理ターンにおいて毎回撮像される。タクトアップモード(第1モード)では、両マークを撮像するターンと基準マークM1~M3のみを撮像するターンとが組み合わされる。
【0046】
タクトアップモードでは、FIDマークFMを実際に撮像する頻度により、モードが細分化されている。実行頻度設定1は、5回の補正処理ターンのうち1回を、基準マークM1~M3およびFIDマークFMの撮像を行うターンとする設定である。つまり、5回の補正処理ターンのうち1回を上述の第1処理とし、残りを第2処理とする設定である。実行頻度設定2は、10回の補正処理ターンのうち1回を第1処理とし、残りを第2処理とする設定である。実行頻度設定3は、初回の補正処理ターンだけを第1処理とし、残りの全て第2処理とする設定である。すなわち、実行頻度設定1~3のいずれかを選択することにより、前記第1処理の実行頻度を調整することが可能である。実行頻度設定3のモードを選択すれば、最もタクトタイムを短縮できる。しかし、搬入後に固定状態が変動することが想定される基板Pの場合は、実行頻度設定1または2のモードを選択することが望ましい。
【0047】
<第1実施形態の変形例>
以上の例では、基板認識カメラ5に基準マークM1~M3およびFIDマークFMの撮像を行わせ、基板Pに対するヘッドユニット4の移動補正量を求める例を示した。これに加え、部品実装装置1が備える他の要素に対するヘッドユニット4の移動補正量も求めるようにしても良い。
【0048】
図6は、第1実施形態の変形例に係る部品実装装置100の平面図である。部品実装装置100は、基台10上に配置されたノズル交換器12を備える。ノズル交換器12は、各種の部品の吸着に適した吸着ノズル42をストックしている。生産する基板Pの種類を変更する際などにヘッドユニット4がノズル交換器12の上空に移動され、シャフト41に対する吸着ノズル42の交換が行われる。ノズル交換器12には吸着ノズル42の交換位置を特定するノズル交換マークN1が付設されている。このノズル交換マークN1を認識することで、ノズル交換器12に収容された各吸着ノズル42の座標値が較正される。
【0049】
また、部品実装装置100のテープフィーダ31には、吸着ノズル42による部品吸着位置を特定するフィーダーマーカーN2が付設されている。
図6では、前列左側の6つのテープフィーダ31だけにフィーダーマーカーN2が付されている様子が示されているが、実際は残りのテープフィーダ31にもフィーダーマーカーN2が付されている。フィーダーマーカーN2の認識により、各テープフィーダ31の部品吸着位置の座標値が較正される。
【0050】
このような部品実装装置100において、基準マークM1~M3およびFIDマークFMに加えて、ノズル交換マークN1およびフィーダーマーカーN2も基板認識カメラ5に撮像させる。つまり、前記交換位置および前記部品吸着位置を含めたXY移動軸の軸座標系について補正処理を行うようにする。補正処理部742は、基準マークM1~M3と、ノズル交換マークN1およびフィーダーマーカーN2との認識結果から、上述の第1処理および第2処理を実行させ、前記交換位置および前記部品吸着位置に対するヘッドユニット4の移動補正量を求める。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態では、2つのXY移動軸と2つのヘッドユニットとを備えた、いわゆる2ビーム・2ヘッドユニット型の部品実装装置への、本発明の適用例を示す。ここでは、1つのヘッドユニットによるマーク認識結果を、他のヘッドユニットの補正処理に適用する例を挙げる。
【0052】
図7は、第2実施形態に係る部品実装装置1Aを模式的に示す平面図である。部品実装装置1Aは、ヘッドユニットとして、第1基板認識カメラ5A(第1カメラ)が搭載された第1ヘッドユニット4Aと、第2基板認識カメラ5B(第2カメラ)が搭載された第2ヘッドユニット4Bとを有する。第1ヘッドユニット4Aは、基台10上に設置されたXY移動軸である第1X移動軸61および第1Y移動軸62(第1移動軸)に沿って移動する。第2ヘッドユニット4Bは、第2X移動軸63および第2Y移動軸64(第2移動軸)に沿って移動する。第1X移動軸61と第2X移動軸63とは、Y方向に図略のコンベアを挟んで所定間隔を置いて平行に配置されている。第1Y移動軸62と第2Y移動軸64とは、共に左右一対で配置され、左右各々で互いに隣接している。
【0053】
第1ヘッドユニット4Aは、所定の第1軸座標系に基づいてXY方向の移動が制御される。第2ヘッドユニット4Bは、所定の第2軸座標系に基づいてXY方向の移動が制御される。第1ヘッドユニット4Aと第2ヘッドユニット4BのXY移動範囲は略一致しているので、第1軸座標系と第2軸座標系とは共通座標とすることができる。両ヘッドユニット4A、4Bが共通座標を持っていても、XY移動軸は別個であるので、各々のXY移動軸について熱変位に対応する補正処理を行う必要がある。
【0054】
従来方式では、補正処理ターン毎に、第1ヘッドユニット4Aの第1基板認識カメラ5Aで基台10上の基準マークM1~M3および基板P上のFIDマークFMを撮像し、第2ヘッドユニット4Bの第2基板認識カメラ5Bでも基準マークM1~M3およびFIDマークFMを撮像し、それぞれ補正処理を行う。しかし、2つのヘッドユニット4A、4Bで各々FIDマークFMを撮像するので相応の時間を消費し、両者の干渉を避けるため撮像待ちの時間も生じ得る。このことはタクトタイムを悪化させる。
【0055】
この問題の解決のため、補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Aの第1基板認識カメラ5AによるFIDマークFMの認識結果を利用して、第2ヘッドユニット4Bの補正処理を実行する。補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Aの第1軸座標系についての補正処理のため、第1基板認識カメラ5Aの撮像動作で得られた画像に基づき上述の第1処理に相当する処理を実行する。一方、補正処理部742は、第2ヘッドユニット4Bの第2軸座標系についての補正処理のため、第2基板認識カメラ5Bの撮像動作で得られた画像に基づき上述の第2処理に相当する処理を実行する。つまり、第2ヘッドユニット4Bについては、第2基板認識カメラ5BにFIDマークFMの撮像動作を行わせることなく、第1基板認識カメラ5Aの撮像動作で取得された補正後マーク座標に対する実マーク座標の位置関係を、第2軸座標系に変換して移動補正量を求める。
【0056】
図8は、第2実施形態の部品実装装置1AにおけるXY移動軸の補正処理を示すフローチャートである。補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Aの第1基板認識カメラ5Aに基準マークM1~M3を撮像させ、これらの位置認識を行う(ステップS21)。これにより、第1X移動軸61および第1Y移動軸62について、上記式(1)で示した熱変位が求められ、第1軸座標系が較正される。同様に、補正処理部742は、第2ヘッドユニット4Bの第2基板認識カメラ5Bに基準マークM1~M3を撮像させ、これらの位置認識を行う(ステップS22)。これにより、第2X移動軸63および第2Y移動軸64についての熱変位が求められ、第2軸座標系が較正される。すなわち、第1および第2軸座標系について、熱変位の較正後のFIDマークFMの指定座標である補正後マーク座標X
0、Y
0が、それぞれ取得される。
【0057】
続いて補正処理部742は、第1基板認識カメラ5Aに基板Pに付されている全てのFIDマークFMを撮像させ、これらの位置認識を行う(ステップS23)。
図7の例では、矩形の基板Pの対角線上に配置された2個のFIDマークFMが第1基板認識カメラ5Aにより撮像される。FIDマークFMの認識結果に基づき、当該FIDマークFMの実マーク座標d
X、d
Yが求められる。補正処理部742は、この実マーク座標d
X、d
Yと、先にステップS21で求められた較正後の補正後マーク座標X
0、Y
0との差異に基づき、第1ヘッドユニット4Aの移動補正量を求める(ステップS24)。
【0058】
補正処理部742は、第2基板認識カメラ5BにはFIDマークFMを撮像させない。1枚の基板Pの生産が完了するまで、基本的にFIDマークFMは不動である。このため、当該FIDマークFMの実マーク座標dX、dYと第1ヘッドユニット4Aについての補正後マーク座標X0、Y0との関係が既知であれば、第2ヘッドユニット4Bの補正後マーク座標X0、Y0との関係も軸座標変換で求めることができる。すなわち、第1ヘッドユニット4Aの実測で求めたFIDマークFMの位置;実マーク座標dX、dYを、第2ヘッドユニット4Bの第2軸座標系に変換して適用する。これにより、第2基板認識カメラ5BでFIDマークFMを実測することなく、第2ヘッドユニット4Bの補正後マーク座標X0、Y0と実マーク座標dX´、dY´との差異を求めることができる。従って、第2ヘッドユニット4Bの移動補正量を求めることができる(ステップS25)。
【0059】
[第3実施形態]
第3実施形態でも、2つのXY移動軸と2つのヘッドユニットとを備えた2ビーム・2ヘッドユニット型の部品実装装置への、本発明の適用例を示す。ここでは、各々のヘッドユニットで複数のFIDマークの一部ずつを認識させ、自身のFIDマーク認識結果を他のヘッドユニットの補正処理に適用する例を挙げる。すなわち、第2実施形態では、第2処理において他方のヘッドユニットにFIDマークの撮像の全部を省略させる例を示したが、第3実施形態では、FIDマークの撮像の一部を省略させる例を示す。
【0060】
図9は、第3実施形態に係る部品実装装置1Bを模式的に示す平面図である。部品実装装置1Bは、基台10の左半分の実装テーブルA1を実装エリアとする第1実装ユニット40Aと、右半分の実装テーブルA2を実装エリアとする第2実装ユニット40Bとを備える。第1実装ユニット40Aには、第1基板認識カメラ5C(第1カメラ)が搭載された第1ヘッドユニット4Cが、第2実装ユニット40Bには第2基板認識カメラ5D(第2カメラ)が搭載された第2ヘッドユニット4Dが、それぞれ装備されている。
【0061】
第1ヘッドユニット4Cは、第1X移動軸65および第1Y移動軸66(第1移動軸)に沿って移動する。第2ヘッドユニット4Bは、第2X移動軸67および第2Y移動軸68(第2移動軸)に沿って移動する。第1X移動軸65は第1実装ユニット40Aに、第2X移動軸67は第2実装ユニット40Bに、それぞれ搭載されている。第1Y移動軸66は基台10の左端側に、第2Y移動軸68は基台10の右端側に、それぞれ配置されている。
【0062】
基台10の左半分の実装テーブルA1には、3つの基準マークM11、M12、M13が、右半分の実装テーブルA2にも3つの基準マークM21、M22、M23が、各々設置されている。基板Pは、左右の実装テーブルA1、A2に跨がる大型の基板であり、第1FIDマークFM1(第1基板認識マーク)および第2FIDマークFM2(第2基板認識マーク)を備えている。第1FIDマークFM1は、第1基板認識カメラ5Cに撮像されるマーク、第2FIDマークFM2は、第2基板認識カメラ5Dに撮像されるマークである。
【0063】
補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Cの第1軸座標系について補正処理のため、第1基板認識カメラ5Cに基準マークM11、M12、M13および第1FIDマークFM1を撮像させる。また、第2ヘッドユニット4Dの第2軸座標系について補正処理のため、第2基板認識カメラ5Dに基準マークM21、M22、M23および第2FIDマークFM2を撮像させる。補正処理部742は、これらの撮像動作で得られた画像に基づき、上述の第1処理に相当する処理を実行する。
【0064】
さらに補正処理部742は、上述の第2処理に相当する処理として、第1基板認識カメラ5Cによる第1FIDマークFM1の位置認識結果を第2軸座標系に変換し、第2基板認識カメラ5Dによる第2FIDマークFM2の位置認識結果を第1軸座標系に変換する。これにより、第1基板認識カメラ5Cにて第2FIDマークFM2を撮像することなく、また、第2基板認識カメラ5Dにて第2FIDマークFM2を撮像することなく、2つのヘッドユニット4C、4Dの移動補正量を求めることができる。
【0065】
図10は、第3実施形態の部品実装装置1BにおけるXY移動軸の補正処理を示すフローチャートである。補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Cの第1基板認識カメラ5Cに基準マークM11、M12、M13を撮像させ、これらの位置認識を行う(ステップS31)。これにより、第1X移動軸65および第1Y移動軸66からなる第1軸座標系についての熱変位が求められ、当該第1軸座標系が較正される。
【0066】
同様に、補正処理部742は、第2ヘッドユニット4Dの第2基板認識カメラ5Dに基準マークM21、M22、M23を撮像させ、これらの位置認識を行う(ステップS32)。これにより、第2X移動軸63および第2Y移動軸64からなる第2軸座標系についての熱変位が求められ、当該第2軸座標系が較正される。すなわち、第1軸座標系について、熱変位の較正後の第1FIDマークFM1の指定座標である補正後マーク座標X0、Y0が、第2軸座標系について、熱変位の較正後の第2FIDマークFM2の指定座標である補正後マーク座標X0、Y0がそれぞれ取得される。
【0067】
続いて補正処理部742は、第1基板認識カメラ5Cに第1FIDマークFM1を撮像させ、その位置認識を行う(ステップS33)。第1FIDマークFM1の認識結果に基づき、当該第1FIDマークFM1の実マーク座標dX1、dY1が求められる。さらに補正処理部742は、第2基板認識カメラ5Dに第2FIDマークFM2を撮像させ、その位置認識を行う(ステップS34)。第2FIDマークFM2の認識結果に基づき、当該第2FIDマークFM2の実マーク座標dX2、dY2が求められる。
【0068】
その後、補正処理部742は、第2ヘッドユニット4Dの実測で求めた第2FIDマークFM2の位置;実マーク座標dX2、dY2を、第1ヘッドユニット4Cの第1軸座標系に軸座標変換して適用する。この実マーク座標dX2、dY2およびステップS33で求めた実マーク座標dX1、dY1を用い、先にステップS31で求められた較正後の補正後マーク座標X0、Y0との差異に基づき、補正処理部742は第1ヘッドユニット4Cの移動補正量を求める(ステップS35)。
【0069】
また補正処理部742は、第1ヘッドユニット4Cの実測で求めた第1FIDマークFM1の位置;実マーク座標dX1、dY1を、第2ヘッドユニット4Dの第2軸座標系に軸座標変換して適用する。この実マーク座標dX1、dY1およびステップS34で求めた実マーク座標dX2、dY2を用い、先にステップS32で求められた較正後の補正後マーク座標X0、Y0との差異に基づき、補正処理部742は第2ヘッドユニット4Dの移動補正量を求める(ステップS36)。
【0070】
なお、ヘッドユニットのレイアウト、基板のサイズやFIDマークの配置位置に応じて、上述の第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて補正処理を行う部品実装装置1としても良い。すなわち、一つのヘッドユニットの基板認識カメラだけ全てのFIDマークを撮像し、当該FIDマークの認識結果を他のヘッドユニットの補正処理で利用する態様と、各々のヘッドユニットによる一部のFIDマークの認識結果を他のヘッドユニットの補正処理で利用する態様とを、基板サイズやFIDマーク位置に応じて使い分けるようにしても良い。
【0071】
[上記実施形態に含まれる発明]
以上説明した実施形態には、以下に示す発明が含まれている。
【0072】
本発明の一局面に係る部品実装装置は、較正用の基準マークが付設された基台と、基板認識マークを有する基板に部品を搭載するヘッドを備えたヘッドユニットと、前記基台上に設定された移動軸に沿って、前記ヘッドユニットを水平方向に移動させるヘッド移動機構と、前記ヘッドユニットに搭載され、前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像可能なカメラと、前記カメラの撮像動作を制御すると共に、所定の軸座標系に基づいて前記ヘッドユニットの移動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カメラに前記基準マークおよび前記基板認識マークを撮像させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの指定座標である補正後マーク座標を求めると共に、前記基板認識マークの認識により得られた実マーク座標と前記補正後マーク座標との差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第1処理と、前記カメラに、前記基準マークを撮像させる一方で、前記基板認識マークの撮像の全部または一部を省略させ、当該基準マークの認識で較正された前記軸座標系における前記基板認識マークの新たな補正後マーク座標を求め、既に取得されている前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を参照して、前記新たな補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置を演算により取得し、両者の差異に基づき前記ヘッドユニットの移動補正量を求める第2処理と、を実行する。
【0073】
この部品実装装置によれば、第1処理に係る補正処理においては、カメラに基準マークおよび基板認識マークを実際に撮像させ、これらマークの認識により補正後マーク座標および実マーク座標を取得し、ヘッドユニットの移動補正量が求められる。一方、第2処理では、既に取得されている前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を参照することで、基板認識マークの撮像の全部または一部が省略される。前記第2処理は、例えば、第1処理の後に同一ヘッドユニットについて行われる補正処理(第1実施形態)や、当該ヘッドユニットと共通座標を持つ他のヘッドユニットについての補正処理(第2、第3実施形態)である。従って、基板認識マークの撮像が省かれる分だけ、タクトタイムを短縮できる。
【0074】
上記の部品実装装置において、前記制御部は、先に実行される第1撮像動作において前記第1処理を実行し、前記第1撮像動作の後の第2撮像動作の際に前記第2処理を実行するものであって、前記第2処理において、前記第1撮像動作で取得された前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を利用する態様としても良い。
【0075】
この部品実装装置によれば、同一ヘッドユニットについて第1処理用の第1撮像動作および第2処理用の第2撮像動作が順次行われる場合に、前記第2撮像動作では基板認識マークの撮像を省くことができる。従って、一つのヘッドユニットを備える部品実装装置において、タクトタイムを短縮できる。
【0076】
上記の部品実装装置において、前記ヘッドユニットとして、第1カメラが搭載され第1移動軸に沿って移動する第1ヘッドユニットと、第2カメラが搭載され第2移動軸に沿って移動する第2ヘッドユニットと、を含み、前記制御部は、前記第1ヘッドユニットの第1軸座標系についての補正処理のため、前記第1カメラの撮像動作で得られた画像に基づき前記第1処理を実行し、前記第2ヘッドユニットの第2軸座標系についての補正処理のため、前記第2カメラの撮像動作で得られた画像に基づき前記第2処理を実行するものであって、当該第2処理において、前記第2カメラに前記基板認識マークの撮像動作を行わせることなく、前記第1カメラの撮像動作で取得された補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を前記第2軸座標系に変換して前記移動補正量を求める態様としても良い。
【0077】
この部品実装装置によれば、第1ヘッドユニットおよび第2ヘッドユニットについて各々補正処理の実行を要する場合に、前記第2ヘッドユニットの第2カメラによる撮像動作において、基板認識マークの撮像を省くことができる。従って、例えば2つのヘッドユニットが同じ実装エリアを持つ2ビーム・2ヘッドユニット型の部品実装装置において、タクトタイムを短縮できる。
【0078】
上記の部品実装装置において、前記ヘッドユニットとして、第1カメラが搭載され第1移動軸に沿って移動する第1ヘッドユニットと、第2カメラが搭載され第2移動軸に沿って移動する第2ヘッドユニットと、を含み、前記基板は、前記第1カメラに撮像される第1基板認識マークと、前記第2カメラに撮像される第2基板認識マークとを含み、前記制御部は、前記第1ヘッドユニットの第1軸座標系について補正処理のため、前記第1カメラに前記基準マークおよび前記第1基板認識マークを撮像させ、前記第2ヘッドユニットの第2軸座標系について補正処理のため、前記第2カメラに前記基準マークおよび前記第2基板認識マークを撮像させ、得られた画像に基づきそれぞれ前記第1処理を実行し、前記第2ヘッドユニットに対する前記第2処理において、前記第1軸座標系の前記第1処理で用いられた前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を、前記第2軸座標系に変換することで、当該第2軸座標系についての前記移動補正量を求め、前記第1ヘッドユニットに対する前記第2処理において、前記第2軸座標系の前記第1処理で用いられた前記補正後マーク座標に対する前記実マーク座標の位置関係を、前記第1軸座標系に変換することで、当該第1軸座標系についての前記移動補正量を求める態様としても良い。
【0079】
この部品実装装置によれば、第1ヘッドユニットおよび第2ヘッドユニットについて各々補正処理の実行を要する場合に、第1カメラおよび第2カメラによる撮像動作の各々において、基板認識マークの撮像の一部を省くことができる。従って、例えば2つのヘッドユニットが実装エリアの一部ずつを受け持つような2ビーム・2ヘッドユニット型の部品実装装置において、タクトタイムを短縮できる。
【0080】
上記の部品実装装置において、前記制御部は、1枚の基板への部品実装の間に、少なくとも前記第1処理における前記基準マークの撮像、および前記第2処理における前記基準マークの撮像を実行させることが望ましい。
【0081】
1枚の基板に対する部品実装中に移動軸の熱変位状態が変動することが想定され、複数回の移動軸の補正処理が必要となる場合が多々ある。上記の部品実装装置によれば、1枚の基板への部品実装時間が長くなる場合でも、部品実装精度が低下しない。
【0082】
上記の部品実装装置において、前記ヘッドの先端に装着される吸着ノズルの交換位置を特定するノズル交換マークと、前記吸着ノズルによる部品供給装置から部品吸着位置を特定するフィーダーマーカーとをさらに備え、前記制御部は、前記カメラに前記ノズル交換マークまたは前記フィーダーマーカーの少なくとも一方を撮像させ、前記基準マークと、前記ノズル交換マークまたは前記フィーダーマーカーとの認識結果から、前記交換位置および前記部品吸着位置を含む軸座標系について、前記第1処理および第2処理を実行する態様としても良い。
【0083】
この部品実装装置によれば、吸着ノズルの交換位置および部品供給装置に対するヘッドユニットの移動補正量も求める場合に、第2処理用の撮像動作において、ノズル交換マークおよびフィーダーマーカーの撮像を省略することができる。
【0084】
上記の部品実装装置において、前記制御部は、前記第1処理および前記第2処理を実行する第1モードと、前記第1処理に相当する処理だけを実行する第2モードとを切り換え可能としても良い。
【0085】
この部品実装装置によれば、第2モードを設定すれば、基準マークおよび基板認識マークの双方を撮像する第1処理が実行される。従って、基板の固定状態が変動することが想定される場合に、部品実装精度を低下させずに済む。
【0086】
上記の部品実装装置において、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記第1処理の実行頻度を調整することが可能とされていることが望ましい。
【0087】
この部品実装装置によれば、基準マークおよび基板認識マークの双方を撮像する第1処理の実行頻度を調整できるので、基板の固定状態の変動により柔軟に対応できる。
【0088】
以上説明した本発明に係る部品実装装置によれば、ヘッドユニットの移動軸の熱伸縮に対応する軸座標系の補正を、タクトロスを可及的に抑制して実行させることができる。