(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20241105BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M7/12 M
(21)【出願番号】P 2024509300
(86)(22)【出願日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2023037704
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 涼
(72)【発明者】
【氏名】田中 智大
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091179(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026430(WO,A1)
【文献】特許第4369425(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/159117(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141680(WO,A1)
【文献】特開2012-065437(JP,A)
【文献】特開2017-011992(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第3の直流ラインと、
前記第1および第2の直流ライン間に接続される第1のコンデンサと、
前記第2および第3の直流ライン間に接続される第2のコンデンサと、
前記第1~第3の直流ラインから供給される第1~第3の直流電圧と少なくとも5つの電圧値を有する第1の交流電圧とを相互に変換可能に構成される電力変換器と、
前記電力変換器により発生する高調波を除去するフィルタとを備え、
前記電力変換器は、
前記第1および第2の直流ライン間に直列接続される第1および第2のスイッチング素子と、
前記第2および第3の直流ライン間に直列接続される第3および第4のスイッチング素子と、
前記第1の交流電圧を受ける交流端子と、
前記第1および第2のスイッチング素子の第1の接続点および前記第3および第4のスイッチング素子の第2の接続点と、前記交流端子との間に接続される第1のマルチレベル回路とを含み、
前記フィルタは、
第1端子が前記交流端子に接続される第1のリアクトルと、
前記第1のリアクトルの第2端子と前記第2の直流ラインとの間に接続される第3のコンデンサとを含み、
前記第1のマルチレベル回路は、
前記第1の接続点と前記第1のリアクトルの前記第1端子との間に直列に接続されるN個の第1の単位変換器と、
前記第1のリアクトルの前記第2端子と前記第2の接続点との間に直列に接続されるN個の第2の単位変換器とを含み、Nは2以上の整数であり、
前記第1のマルチレベル回路は、前記第1の接続点が受ける前記第1の直流電圧および前記第2の接続点が受ける前記第3の直流電圧と、前記交流端子が受ける2N+1個の電圧値を有する前記第1の交流電圧とを相互に変換する、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の単位変換器および前記第2の単位変換器の各々は、
ハーフブリッジ回路と、
前記ハーフブリッジ回路に並列に接続されるエネルギー蓄積要素とを含む、請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換器をPWM(Pulse Width Modulation)方式に従って制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
正弦波状の電圧指令値を生成する電圧指令生成回路と、
前記電圧指令値の最大振幅に対して均等に直流オフセットを重畳させた2N個の搬送波を生成する搬送波発生器と、
前記電圧指令値と前記2N個の搬送波とを比較して前記N個の第1の単位変換器および前記N個の第2の単位変換器を制御するための制御信号を生成する第1の比較器と、
前記電圧指令値が正極性である第1の期間に前記第1のスイッチング素子をオンさせ、前記電圧指令値が負極性である第2の期間に前記第4のスイッチング素子をオンさせるための制御信号を生成する第2の比較器とを含む、請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
第1~第3の直流ラインと、
前記第1および第2の直流ライン間に接続される第1のコンデンサと、
前記第2および第3の直流ライン間に接続される第2のコンデンサと、
前記第1~第3の直流ラインから供給される第1~第3の直流電圧と少なくとも5つの電圧値を有する第1の交流電圧とを相互に変換可能に構成される電力変換器と、
前記電力変換器により発生する高調波を除去するフィルタとを備え、
前記電力変換器は、
前記第1および第2の直流ライン間に直列接続される第1および第2のスイッチング素子と、
前記第2および第3の直流ライン間に直列接続される第3および第4のスイッチング素子と、
前記第1の交流電圧を受ける交流端子と、
前記第1および第2のスイッチング素子の第1の接続点および前記第3および第4のスイッチング素子の第2の接続点と、前記交流端子との間に接続される第1のマルチレベル回路とを含み、
前記フィルタは、
第1端子が前記交流端子に接続される第1のリアクトルと、
前記第1のリアクトルの第2端子と前記第2の直流ラインとの間に接続される第3のコンデンサとを含み、
前記第1のマルチレベル回路は、
前記第1の接続点と前記交流端子との間に直列に接続されるN個の第5のスイッチング素子と、
前記交流端子と前記第2の接続点との間に直列に接続されるN個の第6のスイッチング素子と、
N-1個のフライングキャパシタとを含み、
前記N-1個のフライングキャパシタのうちの第Mのフライングキャパシタは、前記交流端子から見て前記第1の接続点側に向けて第M番目の前記第5のスイッチング素子と第M+1番目の前記第5のスイッチング素子との接続点と、前記交流端子から見て前記第2の接続点側に向けて第M番目の前記第6のスイッチング素子と第M+1番目の前記第6のスイッチング素子との接続点との間に接続され、Mは1以上N-1以下の整数であり、
前記第1のマルチレベル回路は、前記第1の接続点が受ける前記第1の直流電圧および前記第2の接続点が受ける前記第3の直流電圧と、前記交流端子が受ける2N-1個の電圧値を有する前記第1の交流電圧とを相互に変換し、
前記第Mのフライングキャパシタは、前記第1の直流電圧のM/N-1倍の電圧を保持する、電力変換装置。
【請求項5】
前記N個の第5のスイッチング素子および前記N個の第6のスイッチング素子はそれぞれ、N個の第5の絶縁ゲートバイポーラトランジスタおよびN個の第6の絶縁ゲートバイポーラトランジスタであり、
前記第1のマルチレベル回路は、
前記N個の第5の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにそれぞれ逆並列に接続されるN個の第5のダイオードと、
前記N個の第6の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにそれぞれ逆並列に接続されるN個の第6のダイオードをさらに含む、請求項
4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1のリアクトルは、空芯リアクトルである、請求項1
から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1から第4のスイッチング素子はそれぞれ第1から第4の絶縁ゲートバイポーラトランジスタであり、
前記第1から第4の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにそれぞれ逆並列に接続される第1から第4のダイオードをさらに備える、請求項1
から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
電力貯蔵装置と前記第1~第3の直流ラインとの間で双方向の電圧変換を行う直流電圧変換器をさらに備え、
前記直流電圧変換器は、前記電力貯蔵装置から供給される第4の直流電圧と前記第1~第3の直流電圧とを相互に変換する第2のマルチレベル回路を含む、請求項1
から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2のマルチレベル回路は、
前記第1の直流ラインと前記第2の直流ラインとの間に直列に接続される第7および第8のスイッチング素子と、
前記第2の直流ラインと前記第3の直流ラインとの間に直列に接続される第9および第10のスイッチング素子と、
前記第7および第8のスイッチング素子の接続点と前記電力貯蔵装置の正極との間に接続される第2のリアクトルと、
前記第9および第10のスイッチング素子の接続点と前記電力貯蔵装置の負極との間に接続される第3のリアクトルとを含む、請求項
8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電力変換器は、前記第1~第3の直流ラインと負荷との間に接続され、前記第1~第3の直流ラインから供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するインバータである、請求項1または
4に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電力変換器は、交流電源と前記第1~第3の直流ラインとの間に接続され、前記交流電源の健全時に、前記交流電源からの交流電力を直流電力に変換して前記第1~第3の直流ラインに供給するコンバータである、請求項1または
4に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記電力変換器は、交流電源と前記第1~第3の直流ラインとの間に接続され、前記交流電源の健全時に、前記交流電源からの交流電力を直流電力に変換して前記第1~第3の直流ラインに供給するコンバータであり、
前記直流電圧変換器は、前記交流電源の健全時には、前記コンバータによって生成された直流電力を前記電力貯蔵装置に蓄え、前記交流電源の停電時には、前記電力貯蔵装置の直流電力を前記第1~第3の直流ラインに供給する、請求項
8に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2010/044164号(特許文献1)には、コンバータ、インバータ、直流電圧変換器、入力フィルタ、および出力フィルタを備えた無停電電源装置が開示されている。
【0003】
コンバータは、交流電源から入力フィルタを介して供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータは、コンバータからの直流電力を交流電力に変換する。インバータからの交流電力は出力フィルタを介して負荷に供給される。入力フィルタおよび出力フィルタは、リアクトルおよびコンデンサにより構成されたLCフィルタ回路である。
【0004】
コンバータおよびインバータは、直流正母線、直流負母線および直流中性点母線を介して接続される。直流電圧変換器は、直流正母線と直流負母線との間の直流電圧と蓄電池の電圧とを相互に変換する。コンバータ、インバータおよび直流電圧変換器は、3レベル回路によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の無停電電源装置によれば、コンバータおよびインバータを3レベル回路により構成したことにより、コンバータおよびインバータを2レベル回路により構成した場合に比較して、コンバータおよびインバータの動作により発生する高調波を小さくできる。したがって、入力フィルタおよび出力フィルタに含まれるリアクトルのインダクタンスを低減してリアクトルを小型化できる。また、3レベル回路のほうが2レベル回路よりも1つの半導体スイッチング素子に印加される電圧を小さくできるため、半導体スイッチング素子で発生するスイッチング損失を低減できる。これにより、コンバータおよびインバータの電力損失を低減できる。
【0007】
さらに、直流電圧変換器を3レベル回路により構成したことにより、直流電圧変換器に含まれるリアクトルのインダクタンスを低減してリアクトルを小型化することができる。
【0008】
しかしながら、無停電電源装置のさらなる高効率化のためには、コンバータおよびインバータにおける電力損失の低減、ならびに入力フィルタおよび出力フィルタにおけるリアクトルの鉄損の低減が要求される。
【0009】
なお、従来の無停電電源装置において、コンバータおよびインバータに、5レベル回路などの3レベル回路よりも出力できる電圧レベル数が多いマルチレベル回路を適用することにより、コンバータおよびインバータの電力損失をさらに低減できる。しかしながら、マルチレベル回路を、直流入力電圧を複数のコンデンサにより均等に分圧する回路構成とした場合には、複数のコンデンサの電圧のアンバランスを補償するために、直流電圧変換器の回路構成が複雑化する点が懸念される。
【0010】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、回路構成の複雑化を回避しつつ、高効率の電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施態様による電力変換装置は、第1~第3の直流ラインと、第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電力変換器と、フィルタとを備える。第1のコンデンサは、第1および第2の直流ライン間に接続される。第2のコンデンサは、第2および第3の直流ライン間に接続される。電力変換器は、第1~第3の直流ラインから供給される第1~第3の直流電圧と少なくとも5つの電圧値を有する第1の交流電圧とを相互に変換可能に構成される。フィルタは、電力変換器により発生する高調波を除去する。電力変換器は、第1および第2の直流ライン間に直列接続される第1および第2のスイッチング素子と、第2および第3の直流ライン間に直列接続される第3および第4のスイッチング素子と、第1の交流電圧を受ける交流端子と、第1のマルチレベル回路とを含む。第1のマルチレベル回路は、第1および第2のスイッチング素子の第1の接続点および第3および第4のスイッチング素子の第2の接続点と、交流端子との間に接続される。フィルタは、第1端子が交流端子に接続される第1のリアクトルと、第1のリアクトルの第2端子と第2の直流ラインとの間に接続される第3のコンデンサとを含む。第1のマルチレベル回路は、第1の接続点が受ける第1の直流電圧および第2の接続点が受ける第3の直流電圧と第1の交流電圧とを相互に変換する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、回路構成の複雑化を回避しつつ、高効率の電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態に従う電力変換装置が適用される無停電電源装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】コンバータおよびその周辺部の構成例を示す回路図である。
【
図3】インバータおよびその周辺部の構成例を示す回路図である。
【
図4】直流電圧変換器の構成例を示す回路図である。
【
図5】コンバータを制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
【
図6】直流電圧変換器を制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
【
図7】インバータを制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
【
図9】電圧指令値、搬送波、ゲート信号、およびインバータの出力ノードに生じる電圧の波形を示すタイムチャートである。
【
図10】IGBTのスイッチングパターンとインバータの出力ノードに生じる電圧との対応関係を説明するための図である。
【
図11】
図10に示した各モードにおける動作を示す回路図である。
【
図12】
図10に示した各モードにおける動作を示す回路図である。
【
図13】インバータおよびその周辺部の構成例を示す回路図である。
【
図14】インバータおよびその周辺部の構成例を示す回路図である。
【
図15】インバータの各モードにおける動作を示す回路図である。
【
図16】インバータの各モードにおける動作を示す回路図である。
【
図17】インバータおよびその周辺部の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態に従う電力変換装置が適用される無停電電源装置の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、無停電電源装置100は、スイッチ1、交流入力フィルタ2、コンバータ3、インバータ4、交流出力フィルタ5、直流電圧変換器(図中「DC/DC」と示す)6、制御装置10、直流ラインL1~L3、中性点ラインL4、コンデンサC1,C2、電圧検出器31,34,35,36、電流検出器32,37、および停電検出器33を備える。
【0017】
スイッチ1は、スイッチ1R,1S,1Tを含む。スイッチ1R,1S,1Tの第1端子は、三相4線式の商用交流電源41のR相端子TR、S相端子TS、およびT相端子TTにそれぞれ接続され、商用交流電源41から供給されるR相電圧VR、S相電圧VS、T相電圧VTをそれぞれ受ける。商用交流電源41の中性点端子TNは、中性点ラインL4の一方端に接続される。
【0018】
スイッチ1R,1S,1Tは、制御装置10によって制御され、商用交流電源41から三相交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源41の健全時)にはオンされ、商用交流電源41からの三相交流電力の供給が停止された場合(商用交流電源41の停電時)にはオフされる。スイッチ1R,1S,1Tは、商用交流電源41の停電時にオフされて、商用交流電源41と交流入力フィルタ2とを電気的に切り離す。
【0019】
交流入力フィルタ2は、コンデンサ11(コンデンサ11R,11S,11T)およびリアクトル12(リアクトル12R,12S,12T)により構成された三相のLCフィルタ回路である。コンデンサ11R,11S,11Tの正極はそれぞれスイッチ1R,1S,1Tの第2端子に接続され、それらの負極はともに中性点ラインL4に接続される。リアクトル12R,12S,12Tの第1端子はそれぞれスイッチ1R,1S,1Tの第2端子に接続され、リアクトル12R,12S,12Tの第2端子はそれぞれコンバータ3の3つの入力ノードに接続される。リアクトル12は「第1のリアクトル」の一実施例に対応する。
【0020】
交流入力フィルタ2は、低域通過フィルタであって、商用交流電源41から供給される商用周波数の交流電力をコンバータ3に通過させ、コンバータ3で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源41側に通過することを防止する。
【0021】
直流ラインL1~L3の第1端はコンバータ3の3つの出力ノードに接続され、それらの第2端はインバータ4の3つの入力ノードに接続されている。直流ラインL2は、中性点ラインL4に接続されている。また、直流ラインL1~L3は、直流電圧変換器6の3つの高電圧側ノードに接続されている。直流ラインL1~L3は、コンバータ3および直流電圧変換器6により、それぞれ正電圧、中性点電圧、および負電圧にされる。
【0022】
コンデンサC1は、直流ラインL1,L2間に接続され、直流ラインL1,L2間の直流電圧Epを平滑化および安定化させる。コンデンサC2は、直流ラインL2,L3間に接続され、直流ラインL2,L3間の直流電圧Enを平滑化および安定化させる。
【0023】
コンバータ3は、制御装置10によって制御され、商用交流電源41の健全時に、商用交流電源41から交流入力フィルタ2を介して供給される三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を直流ラインL1~L3を介してインバータ4および直流電圧変換器6に供給する。コンバータ3は「電力変換器」の一実施例に対応する。
【0024】
その際、制御装置10は、直流電圧Ep,Enの和の電圧E=Ep+Enが参照直流電圧Erefとなり、かつ直流電圧Ep,Enの差の電圧ΔE=Ep-Enが0になるように、コンバータ3を制御する。
【0025】
また、制御装置10は、商用交流電源41の停電時において、直流電圧ΔEがしきい値電圧ETHよりも小さい場合にはコンバータ3の運転を停止させ、直流電圧ΔEがしきい値電圧ETHよりも大きい場合には、コンバータ3を制御して直流電圧ΔEを低減させる。
【0026】
インバータ4は、制御装置10によって制御され、コンバータ3および直流電圧変換器6からの直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換する。インバータ4は「電力変換器」の一実施例に対応する。後述するように、コンバータ3、インバータ4、および直流電圧変換器6の各々は、マルチレベル回路を含む。インバータ4によって生成された三相交流電力は交流出力フィルタ5を介して負荷42に供給される。
【0027】
交流出力フィルタ5は、リアクトル18(リアクトル18U,18V,18W)およびコンデンサ19(コンデンサ19U,19V,19W)により構成された三相のLCフィルタ回路である。リアクトル18U,18V,18Wの第1端子はインバータ4の3つの出力ノードにそれぞれ接続され、それらの第2端子は三相4線式の負荷42のU相端子TU、V相端子TV、およびW相端子TWに接続される。リアクトル18は「第1のリアクトル」の一実施例に対応する。
【0028】
コンデンサ19U,19V,19Wの正極はリアクトル18U,18V,18Wの第2端子に接続され、それらの負極はともに中性点ラインL4に接続される。交流出力フィルタ5は、低域通過フィルタであって、インバータ4によって生成された商用周波数の三相交流電力を負荷42に通過させ、インバータ4で発生するスイッチング周波数の信号が負荷42に通過することを防止する。負荷42の中性点端子TNAは、中性点ラインL4に接続される。負荷42は、無停電電源装置100から供給される三相交流電力によって駆動される。
【0029】
直流電圧変換器6の2つの低電圧側ノード間にはバッテリB1(電力貯蔵装置)が接続されている。直流電圧変換器6は、制御装置10によって制御され、商用交流電源41の健全時に、コンバータ3によって生成された直流電力をバッテリB1に蓄える。その際、制御装置10は、バッテリB1の端子間電圧VBが参照バッテリ電圧VBrになるように直流電圧変換器6を制御する。
【0030】
また、直流電圧変換器6は、制御装置10によって制御され、商用交流電源41の停電時に、バッテリB1の直流電力を直流ラインL1~L3を介してインバータ4に供給する。その際、制御装置10は、直流電圧Ep,Enの和の電圧E=Ep+Enが参照直流電圧Erefとなり、かつ直流電圧Ep,Enの差の電圧ΔE=Ep-Enが0Vになるように、直流電圧変換器6を制御する。
【0031】
なお、バッテリB1の代わりにコンデンサ(たとえば電気二重層コンデンサ)が直流電圧変換器6に接続されていてもよい。また、本実施の形態1では、バッテリB1は無停電電源装置100の外部に設置されているが、バッテリB1が無停電電源装置100に内蔵されていてもよい。
【0032】
さらに、バッテリB1の代わりに直流電力供給源(たとえば燃料電池)が接続されていても構わない。この場合、商用交流電源41の健全時には、直流電圧変換器6の運転は停止される。
【0033】
電圧検出器31は、スイッチ1R,1S,1Tの第2端子の交流電圧VR,VS,VTの瞬時値を検出し、三相交流電圧VR,VS,VTを示す三相電圧信号を制御装置10および停電検出器33に出力する。電流検出器32は、コンバータ3の3つの入力ノードに流入する交流電流IR,IS,ITの瞬時値を検出し、三相交流電流IR,IS,ITを示す三相電流信号を制御装置10に出力する。
【0034】
停電検出器33は、電圧検出器31からの三相電圧信号に基づいて商用交流電源41の停電が発生したか否かを判別し、その判別結果を示す停電信号PCを出力する。商用交流電源41の健全時には、停電信号PCは非活性化レベルの「L」レベルとなる。商用交流電源41の停電時には、停電信号PCは活性化レベルの「H」レベルとなる。停電信号PCは、制御装置10に与えられる。
【0035】
電圧検出器34は、コンデンサC1の端子間電圧Epを検出し、検出した電圧Epを示す信号を制御装置10に出力する。電圧検出器35は、コンデンサC2の端子間電圧Enを検出し、検出した電圧Enを示す信号を制御装置10に出力する。電圧検出器36は、バッテリB1の端子間電圧VBを検出し、検出した電圧VBを示す信号を制御装置10に出力する。電流検出器37は、バッテリB1から出力される電流IBを検出し、検出した電流IBを示す信号を制御装置10に出力する。
【0036】
制御装置10は、スイッチ1、コンバータ3、インバータ4、および直流電圧変換器6の動作を制御する。後に詳細に説明するが、コンバータ3、インバータ4、および直流電圧変換器6は、半導体スイッチング素子により構成される。なお本実施の形態1では、半導体スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。半導体スイッチング素子には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの任意の半導体素子を用いることができる。また、本実施の形態1では、半導体スイッチング素子の制御方式としてPWM(Pulse Width Modulation)制御が適用される。
【0037】
制御装置10は、電圧検出器31からの三相電圧信号、電流検出器32からの三相電流信号、電圧検出器34が検出した電圧Epを示す信号、電圧検出器35が検出した電圧Enを示す信号、停電検出器33からの停電信号PC、電圧検出器36が検出した電圧VBを示す信号、電流検出器37が検出した電流IBを示す信号等を受けてPWM制御を実行する。制御装置10は、例えば、所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータによって実現される。
【0038】
図2は、
図1に示したコンバータ3およびその周辺部の構成例を示す回路図である。
図2では、図面および説明の簡単化のため、三相(R相、S相、T相)のうちの一相(例えばR相)に対応する回路部分のみが示されている。
【0039】
図2に示すように、コンバータ3は、IGBTQ1~Q4と、ダイオードD1~D4と、複数の単位変換器30_1~30_4とを含んで構成される。
【0040】
IGBTQ1~Q4は「第1~第4のスイッチング素子」の一実施例に対応する。IGBTQ1,Q2は、直流ラインL1と直流ラインL2との間に直列に接続される。IGBTQ3,Q4は、直流ラインL2と直流ラインL3との間に直列に接続される。
【0041】
ダイオードD1~D4は、それぞれIGBTQ1~Q4に逆並列に接続される。ダイオードD1~D4は、対応するIGBTのオフ時に還流電流(フリーホイール電流)を流すために設けられている。スイッチング素子がMOSFETである場合には、ダイオードD1~D4は、寄生のダイオード(ボディダイオード)で構成してもよい。
【0042】
複数の単位変換器30_1~30_4(以下、包括的に「単位変換器30」と称する場合がある。)は、IGBTQ1,Q2の接続点3bとIGBTQ3,Q4の接続点3cとの間に直列に接続される。
図2では、接続点3bとコンバータ3の入力ノード3a(交流端子)との間に単位変換器30_1,30_2が直列に接続され、入力ノード3aと接続点3cとの間に単位変換器30_3,30_4が直列に接続される。入力ノード3aはリアクトル12Rの第2端子に接続される。
【0043】
各単位変換器30は、ハーフブリッジ型の主回路を有する。例えば、単位変換器30_1について代表的に説明すると、主回路は、直列接続されたIGBTQ5,Q6、ダイオードD5,D6、およびエネルギー蓄電要素としてのコンデンサC3を含む。ダイオードD5,D6は、それぞれIGBTQ5,Q6に逆並列に接続される。コンデンサC3は、IGBTQ5,Q6の直列回路と並列に接続され、直流電圧を平滑化する。
【0044】
IGBTQ5,Q6の接続点は正側の入出力端子30pと接続され、IGBTQ6とコンデンサC3との接続点は負側の入出力端子30nと接続される。主回路は、IGBTQ5,Q6のオンオフを制御することにより、コンデンサC3の電圧または零電圧を入出力端子30p,30n間に出力するように構成されている。
【0045】
なお、
図2では、単位変換器30の主回路がハーフブリッジ回路により構成される例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、主回路がフルブリッジ回路により構成されてもよい。
【0046】
IGBTQ1,Q2および単位変換器30_1,30_2は「上アーム」を構成する。直流電圧Epは単位変換器30_1,30_2のコンデンサC3の電圧によって均等に分圧される。直流電圧Ep=E/2の場合、各単位変換器30のコンデンサC3の電圧をVCとすると、VC=E/4となる。
【0047】
IGBTQ3,Q4および単位変換器30_3,30_4は「下アーム」を構成する。直流電圧Enは単位変換器30_3,30_4のコンデンサC3の電圧によって均等に分圧される。直流電圧En=E/2の場合、各単位変換器30のコンデンサC3の電圧VCはE/4となる。
【0048】
コンバータ3において、直列接続された複数の単位変換器30_1~30_4は「第1のマルチレベル回路」を構成する。第1のマルチレベル回路は、接続点3bが受ける正電圧および接続点3cが受ける負電圧と、入力ノード3aが受ける5つの電圧値を有する交流電圧とを相互に変換可能に構成されている。第1のマルチレベル回路については後ほど詳しく説明する。
【0049】
図3は、
図1に示したインバータ4およびその周辺部の構成例を示す回路図である。
図3では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(例えばU相)に対応する回路部分のみが示されている。
【0050】
図3に示すように、インバータ4の基本的構成は、
図2に示したコンバータ3と同じである。すなわち、インバータ4は、IGBTQ1~Q4と、ダイオードD1~D4と、複数の単位変換器30_1~30_4とを含んで構成される。
【0051】
複数の単位変換器30_1~30_4は、IGBTQ1,Q2の接続点4bとIGBTQ3,Q4の接続点4cとの間に直列に接続される。
図3では、接続点4bとインバータ4の出力ノード4a(交流端子)との間に単位変換器30_1,30_2が直列に接続され、出力ノード4aと接続点4cとの間に単位変換器30_3,30_4が直列に接続される。出力ノード4aはリアクトル18Uの第1端子に接続される。
【0052】
インバータ4において、直列接続された複数の単位変換器30_1~30_4は「第1のマルチレベル回路」を構成する。第1のマルチレベル回路は、接続点4bが受ける正電圧および接続点4cが受ける負電圧と、出力ノード4aが受ける5つの電圧値を有する交流電圧とを相互に変換可能に構成されている。
【0053】
図4は、
図1に示した直流電圧変換器6の構成例を示す回路図である。
図4に示すように、直流電圧変換器6は、半導体スイッチ21およびリアクトル22を含む。半導体スイッチ21は、3レベル回路として構成され、直流ラインL1,L3間に直列に接続されるIGBT素子Q1D~Q4Dと、IGBT素子Q1D~Q4Dにそれぞれ逆並列接続されるダイオードD1D~D4Dとを含む。半導体スイッチ21は「第2のマルチレベル回路」を構成する。IGBTQ1D,Q2Dは「第7および第8のスイッチング素子」の一実施例に対応し、IGBTQ3D,Q4Dは「第9および第10のスイッチング素子」の一実施例に対応する。
【0054】
リアクトル22は、リアクトル22P,22Nを含む。リアクトル22Pは、IGBT素子Q1D,Q2Dの接続点とバッテリB1の正極との間に接続される。リアクトル22Nは、IGBT素子Q3D,Q4Dの接続点とバッテリB1の負極との間に接続される。リアクトル22Pは「第2のリアクトル」の一実施例に対応し、リアクトル22Nは「第3のリアクトル」の一実施例に対応する。
【0055】
図5は、コンバータ3を制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、制御装置10は、電圧指令生成回路51、バランス制御回路52、加算器53A~53C、判定器54、およびPWM回路55を備える。電圧指令生成回路51は、参照電圧生成回路61、減算器62,66A~66C、直流電圧制御回路63、正弦波発生回路64、乗算器65A~65C、電流制御回路67、および加算器68A~68Cを含む。
【0056】
参照電圧生成回路61は、参照直流電圧Erefを生成する。減算器62は、参照直流電圧Erefと、直流電圧E(=Ep+En)との差の電圧ΔE=Eref-Eを算出する。直流電圧制御回路63は、電圧ΔEが0となるようにコンバータ3の入力側に流れる電流を制御するための電流指令値I*を算出する。直流電圧制御回路63は、例えば、ΔEを比例演算または比例積分演算することにより電流指令値I*を算出する。
【0057】
正弦波発生回路64は、商用交流電源41のR相電圧VRと同相の正弦波信号と、商用交流電源41のS相電圧VSと同相の正弦波信号と、商用交流電源41のT相電圧VTと同相の正弦波信号とを出力する。正弦波発生回路64は、商用交流電源41の停電時においても、三相正弦波信号を出力する。3つの正弦波信号は、乗算器65A~65Cにそれぞれ入力されて電流指令値I*に乗じられる。これにより商用交流電源41の三相交流電圧VR,VS,VTと同相の電流指令値IR*,IS*,IT*が生成される。
【0058】
減算器66Aは、電流指令値IR*と電流検出器32により検出されたR相電流IRとの差を算出する。減算器66Bは、電流指令値IS*と電流検出器32により検出されたS相電流ISとの差を算出する。減算器66Cは、電流指令値IT*と電流検出器32により検出されたT相電流ITとの差を算出する。
【0059】
電流制御回路67は、電流指令値IR*とR相電流IRとの差、電流指令値IS*とS相電流ISとの差、および電流指令値IT*とT相電流ITとの差がいずれも0となるようにリアクトル12に印加すべき電圧として、電圧指令値VRa*,VSa*,VTa*を生成する。電流制御回路67は、例えば電流指令値と電流検出器32により検出された電流値との差を比例制御または比例積分制御に従って増幅することにより電圧指令値を生成する。
【0060】
加算器68Aは、電圧指令値VRa*と電圧検出器31により検出されたR相電圧VRとを加算して電圧指令値VR0*を生成する。加算器68Bは、電圧指令値VSa*と電圧検出器31により検出されたS相電圧VSとを加算して電圧指令値VS0*を生成する。加算器68Cは、電圧指令値VTa*と電圧検出器31により検出されたT相電圧VTとを加算して電圧指令値VT0*を生成する。
【0061】
このように、電圧指令生成回路51は、電圧検出器31によって検出された三相交流電圧VR,VS,VT、電流検出器32によって検出された三相交流電流IR,IS,IT、および直流電圧E(=Ep+En)を受けて、R相、S相、およびT相にそれぞれ対応する電圧指令値VR0*,VS0*,VT0*を生成する。
【0062】
バランス制御回路52は、停電検出器33(
図1)からの停電信号PCと、直流電圧ΔE=Ep-Enとに基づいて、電圧指令値V1*を生成する。例えばバランス制御回路52は、ΔEを比例演算または比例積分演算することにより電圧指令値V1*を生成する。
【0063】
停電信号PCが非活性化レベルの「L」レベルであり、かつΔE=Ep-En>0である場合には、コンデンサC1の充電時間がコンデンサC2の充電時間よりも短くなるように、電圧指令値V1*が生成される。停電信号PCが非活性化レベルの「L」レベルであり、かつΔE=Ep-En<0である場合には、コンデンサC1の充電時間がコンデンサC2の充電時間よりも長くなるように、電圧指令値V1*が生成される。
【0064】
停電信号PCが活性化レベルの「H」レベルであり、かつΔE=Ep-En>0である場合には、コンデンサC1の放電時間がコンデンサC2の放電時間よりも長くなるように、電圧指令値V1*が生成される。停電信号PCが活性化レベルの「H」レベルであり、かつΔE=Ep-En<0である場合には、コンデンサC1の放電時間がコンデンサC2の放電時間よりも短くなるように、電圧指令値V1*が生成される。
【0065】
加算器53Aは、電圧指令値VR0*,V1*を加算して電圧指令値VR*を生成する。加算器53Bは、電圧指令値VS0*,V1*を加算して電圧指令値VS*を生成する。加算器53Cは、電圧指令値VT0*,V1*を加算して電圧指令値VT*を生成する。
【0066】
判定器54は、停電検出器33(
図1)からの停電信号PCと、直流電圧ΔEとに基づいて、信号DTを生成する。停電信号PCが非活性化レベルの「L」レベルである場合(商用交流電源41の健全時)には、信号DTは活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0067】
停電信号PCが活性化レベルの「H」レベルである場合(商用交流電源41の停電時)において、直流電圧ΔEがしきい値電圧ETHよりも小さい場合には、信号DTは非活性化レベルの「L」レベルにされる。停電信号PCが活性化レベルの「H」レベルである場合(商用交流電源41の停電時)において、直流電圧ΔEがしきい値電圧ETHよりも大きい場合には、信号DTは活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0068】
PWM回路55は、信号DTが活性化レベルの「H」レベルである場合に活性化され、電圧指令値VR*,VS*,VT*に基づいて、電圧検出器31によって検出される三相交流電圧VR,VS,VTが電圧指令値VR*,VS*,VT*にそれぞれ等しくするための信号を出力する。この信号は、コンバータ3(
図2)の各相アームに含まれるIGBTQ1~Q4および単位変換器30_1~30_4を駆動するためのゲート信号である。
【0069】
PWM回路55は、信号DTが非活性化レベルの「L」レベルである場合に非活性化され、コンバータ3の各相アームに含まれるIGBTQ1~Q4および単位変換器30_1~30_4をオフさせる。これにより、コンバータ3の運転は停止される。
【0070】
上記構成を有する制御装置10によってコンバータ3が制御されることにより、三相交流電流IR,IS,ITは商用交流電源41の三相交流電圧VR,VS,VTと同相になり、かつ正弦波の電流となるので、力率をほぼ1にすることができる。
【0071】
図6は、直流電圧変換器6を制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、制御装置10は、電圧指令生成回路71、バランス制御回路72、加算器73A、減算器73B、およびPWM回路75を備える。電圧指令生成回路71は、参照電圧生成回路81、減算器82,84、電圧制御回路83、および電流制御回路85を含む。
【0072】
参照電圧生成回路81は、参照直流電圧Erefを生成する。減算器82は、参照直流電圧Erefと直流電圧E(=Ep+En)との差の電圧ΔEを算出する。電圧制御回路83は、電圧検出器36(
図1)によって検出されたバッテリB1の端子間電圧VBに基づいて、電圧ΔEに応じたレベルの電流指令値IB*を算出する。電圧制御回路83は、例えば、ΔEを比例演算または比例積分演算することにより電流指令値IB*を算出する。減算器84は、電圧制御回路83により生成された電流指令値IB*と電流検出器37(
図1)によって検出されたバッテリB1の電流値IBとの偏差ΔIB=IB*-IBを求める。電流制御回路85は、電流指令値IB*と電流値IBとの偏差ΔIBに基づいて電圧指令値V*を生成する。
【0073】
このように電圧指令生成回路71は、電圧検出器36によって検出されたバッテリ電圧VB、電流検出器37によって検出されたバッテリ電流IB、および直流電圧Eを受けて、コンデンサC1,C2の端子間電圧Ep,Enを所定の電圧に制御するための電圧指令値V*を生成する。
【0074】
バランス制御回路72は、直流電圧ΔE=Ep-Enを受けて、電圧指令値VB1*を生成する。例えばバランス制御回路72は、直流電圧ΔEを比例演算または比例積分演算することにより電圧指令値VB1*を生成する。例えばΔE>0の場合、バランス制御回路72は電圧指令値VB1*を負の値に設定する。一方、ΔE<0の場合、バランス制御回路72は電圧指令値VB1*を正の値に設定する。
【0075】
加算器73Aは、電圧指令値V*,VB1*を加算して電圧指令値VA*を生成する。減算器73Bは、電圧指令値V*から電圧指令値VB1*を減算して電圧指令値VB*を生成する。電圧指令値VA*,VB*は、半導体スイッチ21の上アームおよび下アームの電圧をそれぞれ制御するための指令値であり、電圧Ep,Enの差分ΔEを0にするための電圧Ep,Enの指令値である。バランス制御回路72、加算器73A、および減算器73Bは、直流電圧ΔEおよび電圧指令値V*に基づいて、直流電圧ΔE=Ep-Enが0となるように電圧Ep,Enをそれぞれ制御するための電圧指令値VA*,VB*を生成する指令値生成回路を構成する。
【0076】
PWM回路75は、停電信号PCが活性化レベルの「H」レベルである場合(商用交流電源41の停電時)には、活性化され、電圧指令値VA*,VB*に基づいて、半導体スイッチ21に含まれるIGBTQ1D~Q4Dを駆動するための信号を出力する。直流電圧変換器6は、PWM回路75からの信号によって制御され、バッテリB1の直流電力をインバータ4に供給する。
【0077】
PWM回路75は、停電信号PCが非活性化レベルの「L」レベルである場合(商用交流電源41の健全時)には、非活性化され、直流電圧変換器6のPWM制御を行なわない。なお、商用交流電源41の健全時には、直流電圧変換器6は、バッテリB1に直流電力を蓄える。
【0078】
図7は、インバータ4を制御するための構成例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、制御装置10は、電圧指令生成回路91と、PWM回路92とを含む。電圧指令生成回路91は、参照電圧生成回路93と、電圧制御回路94と、減算器95U,95V,95Wと、電流制御回路96と、加算器97U,97V,97Wとを含む。
【0079】
参照電圧生成回路93は、U相、V相およびW相の各々のための電圧指令値を生成する。電圧指令値を示す信号は正弦波信号である。正弦波の周波数は、交流電圧の周波数に対応する。
【0080】
電圧制御回路94は、参照電圧生成回路93からの電圧指令値(U相、V相およびW相)に基づいて、電流指令値Iu*,Iv*,Iw*を生成する。電流指令値Iu*,Iv*,Iw*は、それぞれU相、V相、W相に対応付けられる。
【0081】
減算器95Uは、電流指令値Iu*と電流検出器24Uにより検出されたU相電流Iuとの差を算出する。減算器95Vは、電流指令値Iv*と電流検出器24Vにより検出されたV相電流値Ivとの差を算出する。減算器95Wは、電流指令値Iw*と電流検出器24Wにより検出されたW相電流値Iwとの差を算出する。
【0082】
電流制御回路96は、電流指令値Iu*とU相電流Iuとの差、電流指令値Iv*とV相電流Ivとの差、および電流指令値Iw*とW相電流Iwとの差がいずれも0となるようにリアクトル18に印加すべき電圧として、電圧指令値Vua*,Vva*,Vwa*を生成する。電流制御回路96は、例えば電流指令値と電流検出器24により検出された電流値との差を比例制御または比例積分制御に従って増幅することにより電圧指令値を生成する。
【0083】
加算器97Uは、電圧指令値Vua*と電圧検出器25により検出されたU相電圧Vuとを加算して電圧指令値Vu*を生成する。加算器97Vは、電圧指令値Vva*と電圧検出器25により検出されたV相電圧Vvとを加算して電圧指令値Vv*を生成する。加算器97Wは、電圧指令値Vwa*と電圧検出器25により検出されたW相電圧Vwとを加算して電圧指令値Vw*を生成する。
【0084】
このように電圧指令生成回路91は、電圧検出器25によって検出された三相交流電圧Vu,Vv,Vw、および電流検出器24によって検出された三相交流電流Iu,Iv,Iwを受けて、U相、V相、およびW相にそれぞれ対応する電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を生成する。
【0085】
PWM回路92は、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に基づいて、電圧検出器25によって検出される三相交流電圧Vu,Vv,Vwが電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*にそれぞれ等しくするための信号を出力する。この信号は、インバータ4(
図3)の各相アームに含まれるIGBTQ1~Q4および単位変換器30_1~30_4を駆動するためのゲート信号である。
【0086】
PWM回路92の構成は、
図5に示したPWM回路55の構成と同じである。以下では、PWM回路92の構成について代表的に説明する。
図8は、
図7に示したPWM回路92の機能ブロック図である。
図8には、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(例えばU相)に対応する部分の機能ブロックのみが示されている。
【0087】
図8に示すように、PWM回路92は、搬送波発生器350と、比較器351~355と、否定(NOT)回路356~358と、バッファ360~371と、遅延回路372,373と、論理積(AND)回路374,374とを含む。
【0088】
搬送波発生器350は、例えば、予め設定された関数に従って4つの搬送波Cu1~Cu4を発生させる。なお、搬送波発生器350が発生させる搬送波の数は、第1のマルチレベル回路を構成する単位変換器30の数に等しい。
【0089】
搬送波Cu1~Cu4は、互いに同じ位相で同じ周波数の三角波である。搬送波Cu1,Cu2は正側で変化する信号であり、搬送波Cu3,Cu4は負側で変化する信号である。搬送波は鋸波であってもよい。搬送波Cu1~Cu4の周波数は、電圧指令値Vu*の周波数よりも高い。
【0090】
比較器351は、電圧指令生成回路91からの電圧指令値Vu*と搬送波発生器350からの搬送波Cu1との高低を比較し、比較結果を示すPWM信号を出力する。PWM信号の周波数は搬送波の周波数と同じ値になる。バッファ360は、PWM信号に基づいて、IGBTQ6をオンオフさせるためのゲート信号VG6を生成する。
【0091】
比較器352は、電圧指令生成回路91からの電圧指令値Vu*と搬送波発生器350からの搬送波Cu2との高低を比較し、比較結果を示すPWM信号を出力する。バッファ361は、PWM信号に基づいて、IGBTQ8をオンオフさせるためのゲート信号VG8を生成する。
【0092】
比較器353は、電圧指令生成回路91からの電圧指令値Vu*と搬送波発生器350からの搬送波Cu4との高低を比較し、比較結果を示すPWM信号を出力する。NOT回路356は、比較器353からのPWM信号を反転させてバッファ364に与える。バッファ364は、PWM信号に基づいて、IGBTQ10をオンオフさせるためのゲート信号VG10を生成する。
【0093】
比較器354は、電圧指令生成回路91からの電圧指令値Vu*と搬送波発生器350からの搬送波Cu3との高低を比較し、比較結果を示すPWM信号を出力する。NOT回路357は、比較器354からのPWM信号を反転させてバッファ365に与える。バッファ365は、PWM信号に基づいて、IGBTQ12をオンオフさせるためのゲート信号VG12を生成する。
【0094】
比較器355は、電圧指令生成回路91からの電圧指令値Vu*と値「0」を有する信号との高低を比較し、比較結果を示すPWM信号を生成する。遅延回路372は、PWM信号を予め定められた時間Tdだけ遅延させる。遅延回路372の遅延時間Tdは、IGBTQ1~Q4が全てオフ状態となるデッドタイムに相当する。AND回路374は、比較器355からのPWM信号と遅延回路372からのPWM信号とに基づいて、IGBTQ1をオンオフさせるためのゲート信号VG1を生成する。
【0095】
NOT回路358は、比較器355からのPWM信号を反転させてAND回路375および遅延回路373に与える。遅延回路373は、PWM信号を時間Tdだけ遅延させる。AND回路375は、NOT回路358からのPWM信号と遅延回路からのPWM信号とに基づいて、IGBTQ4をオンオフさせるためのゲート信号VG4を生成する。
【0096】
バッファ362は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ5をオンオフさせるためのゲート信号VG5を生成する。バッファ363は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ7をオンオフさせるためのゲート信号VG5を生成する。バッファ366は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ9をオンオフさせるためのゲート信号VG9を生成する。バッファ367は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ11をオンオフさせるためのゲート信号VG11を生成する。バッファ368は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ2をオンオフさせるためのゲート信号VG2を生成する。バッファ369は、値「0」を有する信号に基づいて、IGBTQ3をオンオフさせるためのゲート信号VG3を生成する。
【0097】
ゲート信号VG1~VG12が活性化レベルのHレベルにされると、IGBTQ1~Q12はそれぞれオンする。ゲート信号VG1~VG12が非活性化レベルのLレベルにされると、IGBTQ1~Q12はそれぞれオフする。
【0098】
図9は、
図8に示した電圧指令値Vu*、搬送波Cu1~Cu4、ゲート信号VG1,VG2,VG6,VG8,VG10,VG12、およびインバータ4の出力ノード4aに生じる電圧の波形を示すタイムチャートである。
【0099】
図9に示すように、電圧指令値Vu*は、正弦波によって表される。電圧指令値Vu*の振幅の最大値を1とした場合に、搬送波Cu1~Cu4の各々のピーク-ピーク値は0.5となる。搬送波Cu1の最大値は1であり、その最小値は0.5である。搬送波Cu2の最大値は0.5であり、その最小値は0である。搬送波Cu3の最大値は0であり、その最小値は-0.5である。搬送波Cu4の最大値は-0.5であり、その最小値は-1.0である。搬送波Cu1~Cu4は同位相の信号であり、搬送波Cu1~Cu4の位相は電圧指令値Vu*の位相に同期している。
【0100】
電圧指令値Vu*が0よりも高い場合には、ゲート信号VG1はHレベルになり、Vu*が0よりも低い場合には、ゲート信号VG1はLレベルになる。Vu*が0よりも低い場合には、ゲート信号VG2はHレベルになり、Vu*が0よりも高い場合には、ゲート信号VG2はLレベルになる。
【0101】
搬送波Cu1のレベルが電圧指令値Vu*よりも高い場合には、ゲート信号VG6はLレベルになる。逆に、搬送波Cu1のレベルが電圧指令値Vu*よりも低い場合には、ゲート信号VG6はHレベルになる。
【0102】
搬送波Cu2のレベルが電圧指令値Vu*よりも高い場合には、ゲート信号VG8はLレベルになる。逆に、搬送波Cu2のレベルが電圧指令値Vu*よりも低い場合には、ゲート信号VG8はHレベルになる。
【0103】
搬送波Cu3のレベルが電圧指令値Vu*より低い場合には、ゲート信号VG10はLレベルになる。逆に、搬送波Cu3のレベルが電圧指令値Vu*よりも高い場合には、ゲート信号VG10はHレベルになる。
【0104】
搬送波Cu4のレベルが電圧指令値Vu*よりも低い場合には、ゲート信号VG12はLレベルになる。逆に、搬送波Cu4のレベルが電圧指令値Vu*よりも低い場合には、ゲート信号VG12はHレベルになる。図示は省略するが、ゲート信号VG3~VG5,VG7,VG9,VG11はLレベルに固定される。
【0105】
図10は、IGBTQ1~Q12のスイッチングパターンとインバータ4の出力ノード4aに生じる電圧との対応関係を説明するための図である。IGBTQ1~Q12のスイッチングパターンは6つのモードから構成されている。
【0106】
図10に示すように、電圧指令値Vu*が正極性である第1の期間では、IGBTQ1がオン状態に固定され、IGBTQ2~Q5,Q7,Q9~Q12がオフ状態に固定される。電圧指令値Vu*と搬送波Cu1,Cu2との比較結果に応じて、IGBTQ6,Q8がオンオフされる。Ep=En=E/2であり、各単位変換器30のコンデンサC3の電圧VC=E/4である場合、インバータ4の出力ノード4aには、E/2,E/4,0のいずれの電圧が生じる。
【0107】
詳細には、モード1は、搬送波Cu1,Cu2のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも低い場合のスイッチングパターンである。モード1では、IGBTQ6,Q8がオン状態とされ、インバータ4の出力ノード4aから電圧「E/2」が出力される。
【0108】
モード2は、搬送波Cu1のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも低く、搬送波Cu2のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも高い場合のスイッチングパターンである。モード2では、IGBTQ6がオフ状態とされ、IGBTQ8がオン状態とされ、出力ノード4aから電圧「E/4」が出力される。
【0109】
モード3は、搬送波Cu1,Cu2のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも高い場合のスイッチングパターンである。モード3では、IGBTQ6,Q8がオフ状態とされ、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。
【0110】
電圧指令値Vu*が負極性である第2の期間では、IGBTQ2がオン状態に固定され、IGBTQ1,Q3~Q5,Q7,Q9~Q12がオフ状態に固定される。電圧指令値Vu*と搬送波Cu3,Cu4との比較結果に応じて、IGBTQ10,Q12がオンオフされる。これによりインバータ4の出力ノード4aには、0,-E/4,-E/2のいずれの電圧が生じる。
【0111】
詳細には、モード4は、搬送波Cu3,Cu4のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも低い場合のスイッチングパターンである。モード4では、IGBTQ10,Q12がオフ状態とされ、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。
【0112】
モード5は、搬送波Cu3のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも高く、搬送波Cu4のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも低い場合のスイッチングパターンである。モード5では、IGBTQ10がオン状態とされ、IGBTQ12がオフ状態とされ、出力ノード4aから電圧「-E/4」が出力される。
【0113】
モード6は、搬送波Cu3,Cu4のレベルが電圧指令値Vu*のレベルよりも高い場合のスイッチングパターンである。モード6では、IGBTQ10,Q12がオン状態とされ、出力ノード4aから電圧「-E/2」が出力される。
【0114】
図11および
図12は、
図10に示した各モードにおける動作を示す回路図である。
図11(A)に、モード1を示す。モード1では、IGBTQ1,Q6,Q8がオンする。直流ラインL1から単位変換器30_1,30_2、リアクトル18U、コンデンサ19U、および中性点ラインL4を経由して直流ラインL2まで矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_1,30_2の出力電圧は零電圧となるため、出力ノード4aから正電圧(=Ep)が出力される。Ep=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「E/2」が出力される。
【0115】
図11(B)に、モード2を示す。モード2では、IGBTQ1,Q8がオンし、IGBTQ6がオフすることにより、矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_1の出力電圧はコンデンサC3の電圧VCとなり、単位変換器30_2の出力電圧は零電圧となる。したがって、出力ノード4aからEp-VCが出力される。Ep=E/2,VC=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「E/4」が出力される。
【0116】
図11(C)に、モード3を示す。モード3では、IGBTQ1,Q6,Q8がオフすることにより、矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_1,30_2の出力電圧はコンデンサC3の電圧VCとなるため、出力ノード4aからEp-VC×2が出力される。Ep=E/2,VC=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。このようにして第1の期間において、出力ノード4aには電圧「E/2」,「E/4」,「0」のいずれかが出力される。
【0117】
図12(A)に、モード4を示す。モード4では、IGBTQ4がオンし、IGBTQ10,Q12がオンする。直流ラインL2から中性点ラインL4、コンデンサ19U、リアクトル18U、単位変換器30_3,30_4、およびIGBTQ4を経由して直流ラインL3まで矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_3,30_4の出力電圧はコンデンサC3の電圧VCとなるため、出力ノード4aから負電圧(=-En)+VC×2が出力される。En=E/2,VC=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。
【0118】
図12(B)に、モード5を示す。モード5では、IGBTQ4,Q10がオンし、IGBTQ12がオフすることにより、矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_3の出力電圧は零電圧となり、単位変換器30_4の出力電圧はコンデンサC3の電圧VCとなるため、出力ノード4aから-En+VCが出力される。En=E/2,VC=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「―E/4」が出力される。
【0119】
図12(C)に、モード6を示す。モード6では、IGBTQ4,Q10,Q12がオンすることにより、矢印の方向に電流が流れる。単位変換器30_1,30_2の出力電圧は零電圧となるため、出力ノード4aから負電圧(=-En)が出力される。En=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「―E/2」が出力される。このようにして第2の期間において、出力ノード4aには電圧「0」,「-E/4」,「―E/2」のいずれかが出力される。
【0120】
上述したように第1のマルチレベル回路は、IGBTQ1,Q2の接続点4bが受ける正電圧(=E/2)およびIGBTQ3,Q4の接続点4cが受ける負電圧(=-E/2)と、出力ノード4aが受ける5つの電圧値を有する交流電圧(E/2,E/4,0,-E/4,-E/2)とを相互に変換可能に構成されている。これによりインバータ4は、5レベルインバータを構成する。5レベルインバータの出力電圧の波形は、零を中心とした±E/4,±E/2,±EのPWMパルスとなる。3レベルインバータの出力電圧の波形は、零を中心とした±E/2,±EのPWMパルスであるのに対し、5レベルインバータの方がより正弦波に近い波形となる。
【0121】
これにより、交流出力フィルタ5においては、リアクトル18(リアクトル18U,18V,18W)に流れるリプル電流が低減するため、出力電圧波形を正弦波化するために必要なインダクタンスが小さくなり、リアクトル18を小型化できる。リアクトル18を小型化することによって、リアクトル18の鉄損を低減できる。
【0122】
さらにリアクトル18のインダクタンスが小さくなることに伴って、リアクトル18に空芯リアクトルを適用することが可能となる。空芯リアクトルは、鉄心を用いないため、鉄損を無くすことができる。あるいは、曲げ加工された複数の平角導体を組み合わせて接続することにより、リアクトル18を構成してもよい。いずれの構成においても、理想的にはリアクトル18の鉄損をなくすことが可能となる。
【0123】
また、5レベルインバータでは、各IGBTに印加される電圧が3レベルインバータの1/2となるため、各IGBTに発生するスイッチング損失を約半分に低減できる。
【0124】
本実施の形態では、コンバータ3およびインバータ4の各々に第1のマルチレベル回路を適用する。これによると、コンバータ3およびインバータ4におけるIGBTに発生するスイッチング損失を低減できるとともに、交流入力フィルタ2および交流出力フィルタ5にそれぞれ含まれるリアクトル12,18の鉄損を低減できる。この結果、無停電電源装置100の高効率化を実現することができる。
【0125】
なお、第1のマルチレベル回路において、直列接続される単位変換器30の数をさらに増やすことにより、コンバータ3およびインバータ4の各々の出力電圧のレベル数をさらに増やすことができる。
図13は、インバータ4およびその周辺部の構成例を示す回路図である。
図13に示すように、第1のマルチレベル回路は、2N個の単位変換器30_1~30_2Nを含んで構成される。Nは1以上の整数である。
【0126】
IGBTQ1,Q2および単位変換器30_1~30_Nは上アームを構成する。直流電圧Epは単位変換器30_1~30_NのコンデンサC3の電圧によって均等に分圧される。直流電圧Ep=E/2の場合、各単位変換器30のコンデンサC3の電圧はE/2Nとなる。電圧指令値Vu*が正極性となる第1の期間では、IGBTQ1がオン状態とされ、単位変換器30_1~30_Nの各々がコンデンサC3の電圧(=E/2N)または零電圧を出力する。これにより、出力ノード4aから「0」,「E/2N」,「E/N」,「3E/2N」,・・・・「E/2」の合計N+1個の電圧のいずれかが出力される。
【0127】
IGBTQ3,Q4および単位変換器30_3,30_4は下アームを構成する。直流電圧Enは単位変換器30_N+1~30_2NのコンデンサC3の電圧によって均等に分圧される。直流電圧En=E/2の場合、各単位変換器30のコンデンサC3の電圧はE/2Nとなる。電圧指令値Vu*が負極性となる第2の期間では、IGBTQ4がオン状態とされ、単位変換器30_N+1~30_2Nの各々がコンデンサC3の電圧(=E/2N)または零電圧を出力する。これにより、出力ノード4aから「0」,「-E/2N」,「-E/N」,「-3E/2N」,・・・・「-E/2」の合計N+1個の電圧のいずれかが出力される。
【0128】
このように第1のマルチレベル回路は、IGBTQ1,Q2の接続点4bが受ける正電圧(=E/2)およびIGBTQ3,Q4の接続点4cが受ける負電圧(=-E/2)と、出力ノード4aが受ける2N+1個の電圧値を有する交流電圧とを相互に変換可能に構成される。Nを2よりも大きくしてコンバータ3およびインバータ4の各々の出力電圧のレベル数を増やすことにより、無停電電源装置100の効率をさらに向上させることが可能となる。
【0129】
なお、第1のマルチレベル回路において直列接続される単位変換器30の数を増やしても、IGBTQ1~Q4およびダイオードD1~D4の構成は変わらない。すなわち、コンバータ3およびインバータ4の出力電圧のレベル数によらず、IGBTQ1~Q4およびダイオードD1~D4の構成が維持される。これによると、直流電圧変換器6においては、コンバータ3およびインバータ4の出力電圧のレベル数に応じて、
図4に示したマルチレベル回路の構成および
図6に示した制御装置10の構成を変更する必要が生じない。
【0130】
ここで、例えばコンバータ3およびインバータ4に、ダイオードクランプ方式のマルチレベル回路を適用した場合を考える。ダイオードクランプ方式とは、直流ラインL1および直流ラインL3間の直流電圧Eを直列に接続した複数のコンデンサにより均等に分圧し、任意の分圧点電位をダイオードによりクランクすることで、マルチレベルの出力電圧を得る回路方式である。この場合、複数のコンデンサの電圧がアンバランスになるため、電圧のアンバランスを補償するために、直流電圧変換器6の回路構成および制御装置10の構成を変更することが必要となる。
【0131】
これに対して、本実施の形態では、コンバータ3およびインバータ4の出力電圧のレベル数によらず、コンバータ3およびインバータ4の直流入力電圧が正電圧、中性点電圧および負電圧に保たれるため、
図4に示した直流電圧変換器6および
図6に示した制御装置10を適用することができる。よって、コンバータ3およびインバータ4の出力電圧のレベル数に応じて直流電圧変換器6が複雑化することを抑制できる。
【0132】
[第1のマルチレベル回路の構成例]
上述した実施の形態では、直列接続された複数の単位変換器30を有する第1のマルチレベル回路の構成例について説明したが、第1のマルチレベル回路の構成はこれに限定されない。例えば、第1のマルチレベル回路を、フライングキャパシタを用いた構成とすることができる。
【0133】
図14は、
図1に示したインバータ4およびその周辺部の構成例を示す回路図であり、
図3と対比される図である。
図14では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(例えばU相)に対応する回路部分のみが示されている。
【0134】
図14に示すように、第1のマルチレベル回路は、IGBTQ15~Q20と、ダイオードD15~D20と、フライングキャパシタFC1,FC2とを含んで構成される。
【0135】
IGBTQ15~Q20は、IGBTQ1,Q2の接続点4bとIGBTQ3,Q4の接続点4cとの間に直列に接続される。
図14では、接続点4bとインバータ4の出力ノード4a(交流端子)との間にIGBTQ15~Q17が直列に接続され、出力ノード4aと接続点4cとの間にIGBTQ18~Q20が直列に接続される。IGBTQ15~Q17は「第5のスイッチング素子」の一実施例に対応し、IGBTQ18~Q20は「第6のスイッチング素子」の一実施例に対応する。出力ノード4aはリアクトル18Uの第1端子に接続される。ダイオードD15~D20は、それぞれIGBTQ15~Q20に逆並列に接続される。
【0136】
フライングキャパシタFC1は、IGBTQ16,Q17の接続点4eとIGBTQ18,Q19の接続点4fとの間に接続される。フライングキャパシタFC2は、IGBTQ15,Q16の接続点4dとIGBTQ19,Q20の接続点4gとの間に接続される。
【0137】
図15および
図16は、
図14に示したインバータ4の各モードにおける動作を示す回路図である。インバータ4は、モード1~モード6の6つの状態を取り得る。電圧指令値Vu*が正極性である第1の期間、インバータ4はモード1~モード3の3つの状態を取り得る。電圧指令値Vu*が負極性である第2の期間、インバータ4はモード4~モード6の3つの状態を取り得る。
【0138】
図15(A)に、モード1を示す。モード1では、IGBTQ1,Q15~Q17がオンする。第1の期間(モード1~モード3)、IGBTQ2~Q4,Q18~Q20はオフ状態に固定される。直流ラインL1からIGBTQ1,Q15~Q17、リアクトル18U、コンデンサ19U、および中性点ラインL4を経由して直流ラインL2まで矢印の方向に電流が流れる。出力ノード4aから正電圧が出力される。直流電圧Ep=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「E/2」が出力される。
【0139】
図15(B)に、モード2を示す。モード2では、IGBTQ1,Q15,Q16がオンし、IGBTQ17がオフする。直流ラインL1からIGBTQ1,Q15,Q16、フライングキャパシタFC1、ダイオードD18、リアクトル18U、コンデンサ19U、および中性点ラインL4を経由して直流ラインL2まで矢印の方向に電流が流れる。フライングキャパシタFC1の電圧がVF1であるとすると、出力ノード4aからEp-VF1が出力される。Ep=E/2,VF1=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「E/2」が出力される。
【0140】
図15(C)に、モード3を示す。モード3では、IGBTQ1,Q15がオンし、IGBTQ16,Q17がオフする。直流ラインL1からIGBTQ1,Q15、フライングキャパシタFC2、ダイオードD18,D19、リアクトル18U、コンデンサ19U、および中性点ラインL4を経由して直流ラインL2まで矢印の方向に電流が流れる。フライングキャパシタFC2の電圧がVF2であるとすると、出力ノード4aからEp-VF2が出力される。Ep=E/2,VF2=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。このようにして第1の期間、出力ノード4aから電圧「E/2」,「E/4」,「0」のいずれかが出力される。
【0141】
図16(A)に、モード4を示す。モード4では、IGBTQ4,Q18~Q20がオンする。第2の期間(モード4~モード6)、IGBTQ1~Q3,Q15~Q17はオフ状態に固定される。直流ラインL2から中性点ラインL4、コンデンサ19U、リアクトル18U、およびIGBTQ18~Q20,Q4を経由して直流ラインL3まで矢印の方向に電流が流れる。出力ノード4aから負電圧(=-En)が出力される。En=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「-E/2」が出力される。
【0142】
図16(B)に、モード5を示す。モード5では、IGBTQ19,Q20がオンし、IGBTQ18がオフする。直流ラインL2から中性点ラインL4、コンデンサ19U、リアクトル18U、ダイオードD17、フライングキャパシタFC1、IGBTQ19,Q20,Q4を経由して直流ラインL3まで矢印の方向に電流が流れる。出力ノード4aから-En+VF14が出力される。En=E/2,VF1=E/4の場合、出力ノード4aから電圧「-E/4」が出力される。
【0143】
図16(C)に、モード6を示す。モード6では、IGBTQ20がオンし、IGBTQ18,Q19がオフする。直流ラインL2から中性点ラインL4、コンデンサ19U、リアクトル18U、ダイオードD17,D16、フライングキャパシタFC2、IGBTQ20,Q4を経由して直流ラインL3まで矢印の方向に電流が流れる。出力ノード4aから-En+VF2が出力される。En=E/2,VF2=E/2の場合、出力ノード4aから電圧「0」が出力される。このようにして第2の期間、出力ノード4aから電圧「0」,「-E/4」,「-E/2」のいずれかが出力される。
【0144】
図14に示した第1のマルチレベル回路は、IGBTQ1,Q2の接続点4bが受ける正電圧(=E/2)およびIGBTQ3,Q4の接続点4cが受ける負電圧(=-E/2)と、出力ノード4aが受ける5つの電圧値を有する交流電圧(E/2,E/4,0,-E/4,-E/2)とを相互に変換可能に構成されている。したがって、コンバータ3およびインバータ4の各々に
図14に示した第1のマルチレベル回路を適用することにより、コンバータ3およびインバータ4におけるIGBTのスイッチング損失を低減できるとともに、交流入力フィルタ2および交流出力フィルタ5にそれぞれ含まれるリアクトル12,18の鉄損を低減できる。この結果、無停電電源装置100の高効率化を実現することができる。
【0145】
なお、第1のマルチレベル回路を構成するIGBTおよびフライングキャパシタの数をさらに増やすことにより、インバータ4の出力電圧のレベル数をさらに増やすことができる。
図17は、インバータ4およびその周辺部の構成例を示す回路図である。
図17に示す第1のマルチレベル回路は、2N個のIGBTQF1~QF2N、2N個のダイオードDF1~DF2N、およびN-1個のフライングキャパシタFC1~FCN-1を含んで構成される。Nは2以上の整数である。
【0146】
図17に示すように、IGBTQF1~QF2Nは、IGBTQ1,Q2の接続点4bとIGBTQ3,Q4の接続点4cとの間に直列に接続される。IGBTQFN,QFN+1の接続点はインバータ4の出力ノード4aに接続される。IGBTQ1,Q2およびIGBTQF1~QFNは上アームを構成する。IGBTQ3,Q4およびIGBTQFN+1~QF2Nは下アームを構成する。ダイオードDF1~DF2Nは、それぞれIGBTQF1~QF2Nに逆並列に接続される。
【0147】
フライングキャパシタFC1は、出力ノード4aから見て接続点4b側に向けて第1番目のIGBTQFNおよび第2番目のIGBTQFN-1の接続点と、出力ノード4aから見て接続点4c側に向けて第1番目のIGBTQFN+1および第2番目のIGBTQFN+2の接続点との間に接続される。
【0148】
フライングキャパシタFC2は、出力ノード4aから見て接続点4b側に向けて第2番目のIGBTQFN-1および第3番目のIGBTQFN-2の接続点と、出力ノード4aから見て接続点4c側に向けて第2番目のIGBTQFN+2および第3番目のIGBTQFN+3の接続点との間に接続される。
【0149】
フライングキャパシタFCN-1は、出力ノード4aから見て接続点4b側に向けて第N-1番目のIGBTQF2および第N番目のIGBTQF1の接続点と、出力ノード4aから見て接続点4c側に向けて第N-1番目のIGBTQF2N-1および第N番目のIGBTQF2Nの接続点との間に接続される。
【0150】
すなわち、Mを1≦M≦N-1の整数とした場合、第MのフライングキャパシタFCMは、出力ノード4aから見て接続点4b側に向けて第M番目のIGBTQFN-M+1および第M+1番目のIGBTQFN-Mの接続点と、出力ノード4aから見て接続点4c側に向けて第M番目のIGBTQFN+Mおよび第M+1番目のIGBTQFN+M+1の接続点との間に接続される。
【0151】
このような構成において、フライングキャパシタFC1~FCN-1は互いに異なる電圧を保持する。第MのフライングキャパシタFCMの電圧をVFMとすると、VFMはE/2のM/(N-1)倍となる(VFM=E×M/2(N-1))。
【0152】
図17に示した第1のマルチレベル回路は、IGBTQ1,Q2の接続点4bが受ける正電圧(=E/2)およびIGBTQ3,Q4の接続点4cが受ける負電圧(=-E/2)と、出力ノード4aが受ける2N-1個の電圧値を有する交流電圧とを相互に変換可能に構成されている。
【0153】
なお、
図17に示すように、第1のマルチレベル回路に含まれるIGBTおよびフライングキャパシタの数を増やしても、IGBTQ1~Q4およびダイオードD1~D4の構成は変わらない。したがって、コンバータ3およびインバータ4の出力電圧のレベル数によらず、コンバータ3およびインバータ4の直流入力電圧が正電圧、中性点電圧および負電圧に保たれるため、
図4に示した直流電圧変換器6を適用することができる。
【0154】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
1 スイッチ、2 交流入力スイッチ、3 コンバータ、4 インバータ、5 交流出力フィルタ、6 直流電圧変換器、10 制御装置、11,19 コンデンサ、12,18,22 リアクトル、21 半導体スイッチ、24,32,37 電流検出器、25,31,34~36 電圧検出器、30 単位変換器、33 停電検出器、41 商用交流電源、42 負荷、51,71,91 電圧指令生成回路、52,72 バランス制御回路、53A~53C,68A~68C,73A,97U,97V,97W 加算器、54 判定器、55,75,92 PWM回路、356~358 NOT回路、374,375 AND回路、61,81,93 参照電圧生成回路、62,66A~66C,73B,82,84,95U,95V,95W 減算器、63 直流電圧制御回路、64 正弦波発生回路、65A~65C 乗算器、67,85,96 電流制御回路、83,94 電圧制御回路、100 無停電電源装置、350 搬送波発生器、351~355 比較器、360~371 バッファ、372,373 遅延回路、B1 バッテリ、Cu1~Cu4 搬送波、D1~D20,DF1~DF2N,D1D~D4D ダイオード、FC1~FCN-1 フライングキャパシタ、L1~L3 直流ライン、L4 中性点ライン、Q1~Q20,Q1D~Q4D,QF1~QF2N IGBT。
【要約】
電力変換器(4)は、第1および第2の直流ライン(L1,L2)間に直列接続される第1および第2のスイッチング素子(Q1,Q2)と、第2および第3の直流ライン(L2,L3)間に直列接続される第3および第4のスイッチング素子(Q3,Q4)と、交流端子(4a)と、マルチレベル回路とを含む。マルチレベル回路は、第1および第2のスイッチング素子の第1の接続点(4b)および第3および第4のスイッチング素子の第2の接続点(4c)と、交流端子(4a)との間に接続される。フィルタは、第1端子が交流端子(4a)に接続されるリアクトル(18U)と、リアクトルの第2端子と第2の直流ライン(L2)との間に接続されるコンデンサ(19U)とを含む。マルチレベル回路は、第1の接続点(4b)が受ける第1の直流電圧および第2の接続点(4c)が受ける第3の直流電圧と少なくとも5つの電圧値を有する交流電圧とを相互に変換する。