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特許7581575肌の色ムラ表示方法、表示物、肌の色ムラ表示装置、及び肌の色ムラ表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】肌の色ムラ表示方法、表示物、肌の色ムラ表示装置、及び肌の色ムラ表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/00 101A
A61B5/107 800
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020211427
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098085
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平山 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】大葉 椋介
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203514(WO,A1)
【文献】特開2011-118671(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肌画像の評価領域を均等に分割した単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出工程と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記ムラ指数に基づく評価結果を、所定の表示領域内に表示する表示工程を備え、
前記表示工程では、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に設けられ、前記表示領域を均等に分割した区画に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成し、
前記単位ブロックは、前記評価領域の面積の1/784~1/64であり、
前記ムラ指数算出工程は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する工程と、前記第1のムラ指数の算出を行った肌領域と同一の肌領域について、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する工程と、前記第1のムラ指数と前記第2のムラ指数の差分を算出する工程を含み、
前記評価表示は、前記差分の値に応じて、所定の色相の色の輝度が段階的に変化するように前記区画を着色したものであり、
前記差分の値が小さいほど輝度が低く黒に近い色となるように、前記差分の値が大きいほど輝度が高く白に近い値となるように、前記差分と前記の所定の色相の色を予め対応させておき、
前記表示工程において、前記差分の値に応じて、前記区画を対応する前記の所定の色相の色に着色する、肌の色ムラ表示方法。
【請求項2】
前記評価領域は、矩形又は正方形である、請求項1に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項3】
前記評価領域は、正方形であり、かつ、3×3cm以上である、請求項1又は2に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項4】
前記単位ブロックは、1×1mm~3×3mmである、請求項1~3の何れか一項に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項5】
前記評価表示は、基準値を超えた前記差分に係る区画を際立たせるように表示するものである、前記請求項1~4の何れか一項に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項6】
前記第1の時点は化粧料、スキンケア製品及び/又は医薬品の使用前であり、前記第2の時点は前記の化粧料、スキンケア製品及び/又は医薬品の使用後である、請求項1~5の何れか一項に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項7】
前記肌画像は、頬領域の肌画像である、前記請求項1~6の何れか一項に記載の肌の色ムラ表示方法。
【請求項8】
被験者の肌画像に基づく色ムラの評価結果を表示する表示物であって、
所定の表示領域を均等に分割した区画を着色することで、前記評価結果を表示する評価チャートを含み、
該評価チャートは、前記区画を前記肌画像の評価領域を均等に分割した単位ブロックに対応させて、前記単位ブロックの評価結果を対応する前記区画に示したものであり、
前記単位ブロックは、前記評価領域の面積の1/784~1/64であり、
前記評価結果は、第1の時点における肌画像を用いて算出された第1のムラ指数と、前記第1のムラ指数の算出を行った肌領域と同一の肌領域について、前記第1の時点よりも後の第2の時点における肌画像を用いて算出された第2のムラ指数の差分を、前記区画の着色により示すものであり、
前記差分の値が小さいほど輝度が低く黒に近い色となるように、前記差分の値が大きいほど輝度が高く白に近い値となるように、前記差分と所定の色相の色を予め対応させておき、
前記区画は、前記差分の値に対応する前記の所定の色相の色に着色される、表示物。
【請求項9】
さらに、前記着色に用いた色と前記差分の値の対応関係を示す色パネルを含む、請求項に記載の表示物。
【請求項10】
被験者の肌画像から評価領域を特定し、前記評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって得られた前記単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記ムラ指数算出手段で算出された前記ムラ指数に基づく評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段を備え、
前記単位ブロックは、前記評価領域の面積の1/784~1/64であり、
前記ムラ指数算出手段は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する手段と、前記第1のムラ指数の算出を行った肌領域と同一の肌領域について、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する手段と、前記第1のムラ指数と前記第2のムラ指数の差分を算出する手段とを含み、
前記表示手段は、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に設けられ、前記表示領域を均等に分割した区画に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成し、
前記評価表示は、前記差分の値に応じて、所定の色相の色の輝度が段階的に変化するように前記区画を着色したものであり、
前記差分の値が小さいほど輝度が低く黒に近い色となるように、前記差分の値が大きいほど輝度が高く白に近い値となるように、前記差分と前記の所定の色相の色を予め対応させておき、
前記表示手段は、前記差分の値に応じて、前記区画を対応する前記の所定の色相の色に着色する、肌の色ムラ表示装置。
【請求項11】
コンピュータを、
被験者の肌画像から評価領域を特定し、前記評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって得られた前記単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記ムラ指数算出手段で算出された前記ムラ指数に基づく評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段と、として機能させるための、肌の色ムラ表示プログラムであって、
前記単位ブロックは、前記評価領域の面積の1/784~1/64であり、
前記ムラ指数算出手段は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する手段と、前記第1のムラ指数の算出を行った肌領域と同一の肌領域について、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する手段と、前記第1のムラ指数と前記第2のムラ指数の差分を算出する手段とを含み、
前記表示手段は、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に設けられ、前記表示領域を均等に分割した区画に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成し、
前記評価表示は、前記差分の値に応じて、所定の色相の色の輝度が段階的に変化するように前記区画を着色したものであり、
前記差分の値が小さいほど輝度が低く黒に近い色となるように、前記差分の値が大きいほど輝度が高く白に近い値となるように、前記差分と前記の所定の色相の色を予め対応させておき、
前記表示手段は、前記差分の値に応じて、前記区画を対応する前記の所定の色相の色に着色する、肌の色ムラ表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の色ムラ表示方法、肌の色ムラ評価方法、表示物、肌の色ムラ表示装置、及び肌の色ムラ表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肌を含む画像に対して画像解析を行うことで、肌状態の評価、顔の見た目の年齢の評価等がなされている。特許文献1には、肌画像からシワ等の2以上の特徴指標を算出し、2以上の特徴量に基づいて肌の官能評価を決定する方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、被検対象の肌画像をデジタル画像として撮像し、この画像の単位領域と隣接する領域との色情報から色差を算出し、更にその色差の頻度分布を求める肌状態の評価方法が記載されている。
【0004】
また、肌の色ムラを評価する方法として、特許文献3には、皮膚の画像から3次元空間の直交座標系で表される色成分値を取得し、任意の画素とそれに隣接する8つの画素に対する移動ベクトルを複数計算し、当該移動ベクトルの平均値を算出することで、肌の色ムラを評価する方法が記載されている。
【0005】
特許文献4には、肌のくすみを評価する手段として、肌の色ムラを算出する方法が開示されている。具体的には、肌画像から肌の色情報を取得し、肌の色情報から色ムラ指数を取得し、色ムラ指数に基づいて肌画像に対応する肌のくすみを評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6345176号公報
【文献】特許4088081号公報
【文献】特開2018-60532号公報
【文献】特許6214914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記先行技術のあるところ、本発明は、肌の色ムラを表現及び評価するための新たな技術を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、
被験者の肌画像の評価領域を均等に分割した単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出工程と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記各ムラ指数に基づく評価結果を、所定の表示領域内に表示する表示工程を備え、
前記表示工程では、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成する、肌の色ムラ表示方法である。
【0009】
本発明の肌の色ムラ表示方法は、単位ブロックごとのムラ指数に対応した評価結果を表示することで、ミクロな色ムラを表現することができる。同時に、評価領域内の複数の単位ブロックについての評価結果を、その位置情報とともに表示することで、評価領域全体を俯瞰したマクロな色ムラも同時に表現することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記ムラ指数算出工程は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する工程と、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する工程とを含み、
前記表示工程では、前記第1のムラ指数に基づく評価結果を示す第1の評価チャートと、前記第2のムラ指数に基づく評価結果を示す第2の評価チャートとを並べて表示する。
このように複数の時点に係る評価チャートを並べて表示することで、経時の肌の色ムラの変化を容易に表現することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記評価表示が、前記ムラ指数の大小を示す表示である。
ムラ指数の大小を示すことで、肌の色ムラを適切に表現することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記ムラ指数算出工程は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する工程と、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する工程とを含み、
前記評価表示は、前記第1のムラ指数と前記第2のムラ指数の差分を示す表示である。
ムラ指数の差分を示すことで、経時の肌の色むらの変化を容易に表現することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記評価表示は、前記表示領域を分割した区画の着色であり、前記単位ブロックごとの評価結果を色の違いにより表示するものである。
このような形態とすることで、色ムラの視認性を向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記色の違いは、輝度の違いにより表現され、前記区画を、前記評価結果が良好であるほど前記輝度が高い色に着色する。
このような形態とすることで、肌の色ムラを直感的に認識することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記表示工程では、前記評価チャートと並べて、前記評価領域に係る前記肌画像を表示する。
肌画像を並べて表示することで、肌画像から感覚的に認識される肌の色ムラと、ムラ指数に基づく客観的な肌の色ムラを比較することができる。
【0016】
本発明は、
被験者の肌画像の評価領域を分割した単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出工程と、
前記単位ブロックごとのムラ指数に基づいて、前記評価領域の色ムラを評価する評価工程を備える、肌の色ムラ評価方法にも関する。
本発明の肌の色ムラ評価方法を用いることで、ミクロな色ムラを評価することができ、さらに、ミクロな色ムラの集合として、肌の評価領域全体の色ムラを評価することもできる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、
前記ムラ指数算出工程は、第1の時点における第1のムラ指数を算出する工程と、前記第1の時点より後の第2の時点における第2のムラ指数を算出する工程とを含み、
前記評価工程は、前記第1のムラ指数と前記第2のムラ指数の比較に基づいて、前記評価領域の色ムラの変化を評価することを含む。
異なる時点のムラ指数を比較することで、肌の色ムラの変化を適切に評価することができる。
【0018】
また、本発明は、
被験者の肌画像に基づく色ムラの評価結果を表示する表示物であって、
所定の表示領域を均等に分割した区画を着色することで、前記評価結果を表示する評価チャートを含み、
該評価チャートは、前記区画を、前記肌画像の評価領域を分割した単位ブロックに対応させて、前記単位ブロックの評価結果を対応する前記区画に示すものである、表示物にも関する。
本発明の表示物によれば、単位ブロックごとのムラ指数に基づくミクロな色ムラと、評価領域全体のマクロな色ムラを、同時に表示することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記着色に用いた色と前記評価結果の対応関係を示す色パネルを含む。
上記色パネルを含むことで、評価結果の意味するところを容易に視認することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記評価領域に係る前記肌画像を含み、該肌画像と前記評価チャートは並べて表示される。
肌画像と評価チャートを並べて表示することで、肌画像から感覚的に認識される肌の色ムラと、ムラ指数に基づく客観的な肌の色ムラを比較することができる。
【0021】
また、本発明は、
被験者の肌画像から評価領域を特定し、前記評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって得られた前記単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記ムラ指数算出手段で算出された前記ムラ指数に基づく評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段を備え、
前記表示手段は、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成する、肌の色ムラ表示装置である。
【0022】
また、本発明は、
コンピュータを、
被験者の肌画像から評価領域を特定し、前記評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって得られた前記単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段と、
前記評価領域内の任意の複数の前記単位ブロックについて、前記ムラ指数算出工程で算出された前記ムラ指数に基づく評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段と、として機能させるための、肌の色ムラ表示プログラムであって、
前記表示手段は、前記評価領域における前記単位ブロックの位置に対応した前記表示領域内の位置に、前記評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成する、肌の色ムラ表示プログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、肌の色ムラを評価したり、表現したりするための新たな技術を提供することができる。特に、本発明は、ミクロな色ムラを評価、表示可能であるのと同時に、評価領域全体のマクロな色ムラを評価、表示可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の肌の色ムラ表示方法における、色ムラの評価結果を表示領域に表示する方法を示す説明図である。
図2】実施例における、被験者の肌の色ムラの表示結果(表示物)を示す図である。
図3】本発明の肌の色ムラ表示装置の一実施形態を示すハードウェアブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<1>色ムラ表示方法
以下、本発明の肌の色ムラ表示方法(以下、「色ムラ表示方法」ともいう)の実施形態について詳述する。
本実施形態の色ムラ表示方法は、被験者の肌画像を取得する画像取得工程、肌画像から評価領域を特定し、当該評価領域を均等な大きさの単位ブロックに分割する画像処理工程、単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出工程、及び、前記評価領域内の任意の複数の単位ブロックについて、前記各ムラ指数に基づく評価結果を、所定の表示領域内に表示する表示工程を含む。
【0026】
以下、本発明の色ムラ表示方法の実施形態を例に挙げ、本発明を詳細に説明する。
【0027】
(1)画像取得工程
画像取得工程では、被験者の肌画像を取得する。肌画像としては、好ましくは頬領域の肌画像を用いる。ここで、肌画像は、一般的なビデオカメラ又はデジタルカメラで撮像した画像を用いてよいが、後のステップにおける画像解析に耐え得る程度の解像度を有していることが好ましい。また、ここでは、カラー画像を取得することが好ましい。
【0028】
なお、本発明の色ムラ表示方法は、肌画像を撮像する工程を含む必要はなく、予め取得した肌画像を用いて以下の工程を行ってもよい。
【0029】
(2)画像処理工程
取得した肌画像について、色ムラを評価するための評価領域を特定する。好ましくは、肌画像に枠線等を設けることで、評価領域を区分する。評価領域は、被験者の実際の肌の領域のサイズとして好ましくは、1×1cm以上、より好ましくは3×3cm以上、さらに好ましくは5×5cm以上であり、その形状は矩形又は正方形であることが好ましい。
【0030】
続いて、特定した評価領域を均等に分割し、その一つ一つを単位ブロックと定義する。単位ブロックの面積は、評価領域の面積の1/900~1/4が好ましく、1/784~1/64がより好ましく、1/625~1/100がより好ましく、1/625~1/400がさらに好ましい。
単位ブロックの大きさは、被験者の実際の肌の領域のサイズとして、好ましくは0.1×0.1mm~25×25mm、より好ましくは0.3×0.3mm~10×10mm、より好ましくは0.5×0.5mm~5×5mm、より好ましくは1×1mm~3×3mm、さらに好ましくは1.5×1.5mm~2.5×2.5mmである。
また、単位ブロックの大きさは、好ましくは100~8万画素であり、より好ましくは100~1万画素であり、より好ましくは350~5000画素であり、より好ましくは400~3000画素であり、より好ましくは450~1000画素であり、さらに好ましくは480~750画素である。
単位ブロックを上記の面積又は大きさとすることで、肌のミクロな色ムラの算出に十分な大きさの単位ブロック得ることができる。さらには、後述する表示工程において、単位ブロックごとに算出されたミクロな色ムラを評価表示として表示するため、上記範囲内の単位ブロックであれば、評価領域に対する評価表示が微細となりすぎず、当該評価表示の視認性も確保することができる。
【0031】
また、前記単位ブロックを構成する色の色成分値を抽出する。具体的には、評価領域に含まれる画素の色成分値を抽出する。色成分値としては、RGB表色系、のR値、G値、B値や、CIEL表色系のL値、a値、b値、マンセル表色系の明度、色相、彩度等が挙げられ、中でもL値を抽出することが好ましい。
【0032】
ここで、デジタルカメラ等から取得されたRGB画像をL画像に変換する場合は、既存の変換式を用いることができる。すなわち、325色の標準肌色色票(財団法人日本色彩研究所製の肌色を全て網羅した色票(L45.6~85.9、a0.5~26.1、b1.8~40.7))を用い、重回帰分析によりRGBの輝度をL値に変換するための変換式(下式)を求め、これを画像解析アプリケーションソフトに組み込み、RGB画像をL画像に変換した。数1式において、実測値との相関とは、L画像による解析結果とRGB解析による解析結果との相関を指す。
【0033】
(数1)
=0.049R+0.186G+0.089B+26.17
(実測値との相関 r=0.9988,P<0.001)
=0.414R-0.483G+0.101B+0.486
(実測値との相関 r=0.9032,P<0.001)
=-0.027R+0.918G-0.856B+0.711
(実測値との相関 r=0.8965,P<0.001)
【0034】
(3)ムラ指数算出工程
さらに、抽出した色成分値を用いて単位ブロックごとにムラ指数を算出する。
本発明において、「ムラ指数」とは、肌色のムラ、ばらつきの程度を示す指標であればよく、例えば、抽出した色成分の散布度を用いることができる。散布度としては、分散、標準偏差、平均偏差、変動係数等が挙げられ、中でも標準偏差又は変動係数を用いることが好ましく、変動係数を用いることが特に好ましい。ムラ指数として変動係数又は標準偏差を用いることで、単位ブロックごとのミクロな色ムラをより正確に算出することができる。
【0035】
例えば、ムラ指数として変動係数を算出する場合、単位ブロックに含まれる特定の画素ごと(例えば、25×25画素ごと)に抽出した色成分値を、規定の算出式に当てはめることで、単位ブロックごとに該色成分の変動係数を求めることができる。
【0036】
(4)表示工程
続いて、前述したムラ指数を求めた複数の単位ブロックについて、各ムラ指数に基づく評価結果を、所定の表示領域内に表示する。
評価結果は、評価表示を表示した評価チャートを生成して表示する。ここで、評価表示は、評価領域における単位ブロックの位置(相対的位置)に対応させて、表示領域内の所定の位置に表示される(図1参照)。
【0037】
具体的には、評価領域に対応する表示領域を表示し、この表示領域を単位ブロックの数の領域と同じ数、形の区画に分割し、分割した各々の区画に、評価領域における単位ブロックの位置に対応させて単位ブロックのムラ指数に基づく評価表示を表示する。この時、表示領域及び区画の大きさが、評価領域及び単位ブロックの大きさと相対的に同等の比率となるように、評価チャートの表示領域及び区画の大きさを定めることができる。
【0038】
評価表示の位置の対応づけは、以下の手順で行うことができる。すなわち、図1に示すように、単位ブロックAについて評価表示を行う場合、単位ブロックAについてムラ指数を算出し、表示領域の区画Aに、該ムラ指数に基づく評価表示を表示する。同様に、単位ブロックB及びCについても、それぞれ区画B及びCに評価表示を表示することができる。
【0039】
ここで、評価表示として、区画の着色、区画内への数値レベルの表示、区画内への評価記号(〇、△、×等)の表示が挙げられるが、中でも区画の着色が好ましい。
【0040】
着色の具体例としては、例えば、評価結果(例えば、ムラ指数の大小)に応じて色が段階的に変化するように、評価結果と色を予め対応させておき、評価結果に応じて対応する色で区画を着色する。これにより、評価結果を色の違いにより表示することが好ましい。
【0041】
また、色の段階的な変化の態様としては、任意の色について輝度を段階的に変化させたものが好ましい。すなわち、区画の色の違いが、輝度の違いによって表現される形態が好ましい。さらに、輝度が高い色ほど肌の色ムラについて良好な評価結果を示すように構成されることが好ましい。
ここで、色ムラについて良好な評価結果とは、ムラ指数が小さいことが挙げられる。
【0042】
ムラ指数の大小に基づいて色を決定する場合、ムラ指数の値が大きいほど輝度が低く黒に近い色となるように、また、ムラ指数の値が小さいほど輝度が高く白に近い値となるように、ムラ指数と色を予め対応させることが好ましい。
このようにムラ指数と対応した色を評価表示として表示することで、肌の色ムラを直感的に認識可能な評価チャートを生成することが可能となる。
【0043】
また、区画の色の違いは、予め所定の色相を設定し、該色相について輝度を段階的に変化させたものであってもよい。
例として、HSL色空間において所定の色相の値を0(赤)としたムラ指数と色の対応付けについて説明する。初めに色相の値を0(赤)に固定し、輝度(L)を0~255の範囲で段階的に変化させた赤色のグラデーションパネルを作成する。次に、当該赤色のグラデーションパネルと、ムラ指数の値を対応させる。この時、ムラ指数が小さいほど輝度が高く白に近い色に、ムラ指数が大きいほど輝度が低く黒に近い値になるように、赤色のグラデーションパネルとムラ指数を対応させる。なお、ムラ指数の最小値が輝度値255(白色)、ムラ指数の最大値が輝度値0(黒色)となるように、輝度を設定してもよい。評価結果として、当該赤色のグラデーションパネルからムラ指数に基づいて選択した色を、表示領域の区画内に表示することができる。
このような形態とすることで、ムラ指数が中間値である区画は所定の色相(上記例では、赤色)で表現されることとなり、実質的に黒・所定の色相・白の3色のグラデーションから選ばれる色で色ムラを表現することができる。また、所定の色相の輝度を変化させたグラデーションから選ばれた色で色ムラを表示することで、2色グラデーションを用いて色ムラを表示した場合よりも、色ムラの差異を明確に視認することができる。
【0044】
また、評価チャートと共に、ムラ指数と色の対応関係を示す色パネルを表示してもよい。図2右に記載の色パネルは、0~0.1の値で示される変動係数(ムラ指数)の値を、変動係数が大きいほど輝度が低く(黒に近く)、変動係数が小さいほど輝度が高く(白に近く)なるように、変動係数と色を対応させた態様を示す。
【0045】
このように、本発明の色ムラ表示方法では、肌画像における単位ブロックのムラ指数に基づいた評価結果を表示することで、ミクロな色ムラを容易に視認することができる。また、評価領域内における複数の単位ブロックのごとの評価結果を単位ブロックの位置に対応させて、表示領域内に表示することで、評価領域全体のマクロな色ムラも視認することができる。すなわち、ムラ指数に基づくミクロな色ムラと、ミクロな色ムラの集合であるマクロな色ムラを一つの表示として表示することが可能となる。
【0046】
なお、評価領域内の単位ブロックの評価結果は、必ずしもすべてを表示する必要はない。例えば、評価領域にホクロ、創傷等を含む単位ブロックが存在する場合、当該単位ブロックを除外して、評価表示を表示することができる。このように除外した単位ブロックについて、対応する区画に除外したブロックであることを示す図形等(例えば、-、×印)を付すこともできる。
【0047】
また、表示工程では、上述の評価チャートと、評価領域に係る肌画像を並べて表示する形態とすることが好ましい。図2には、肌画像(図2左)と評価チャート(図2右)を左右に並べて表示する態様を示す。
評価対象である肌画像を評価チャートと並べて表示することで、肌画像から感覚的に認識される肌の色ムラと、ムラ指数に基づく客観的な肌の色ムラを比較することができる。
【0048】
本発明の実施形態として、複数の肌画像を用いて、複数の評価チャートを生成する形態も好ましく挙げられる。以下に当該形態について詳述する。なお、上述の各工程についての説明は、当該形態にも妥当するので、適宜説明を省略する。
【0049】
本実施形態の色ムラ表示方法は、複数の肌画像からそれぞれムラ指数を算出し、得られた評価結果に基づいて複数の評価チャートを生成する。複数の肌画像は、同一被験者の異なる肌領域から取得されたものであってもよく、同一被験者の同一の肌領域から取得されたものであってもよい。
【0050】
同一の肌領域から取得された肌画像を用いる場合、所定の肌領域からある時点(第1の時点)の肌画像を取得し、その後(すなわち、第2の時点)に同一の肌領域から再び肌画像を取得し、各肌画像から算出したムラ指数に基づいて生成した評価チャートを並べて表示することができる。
【0051】
上記実施形態の例として、化粧料使用前の肌の色ムラと、化粧料使用後の肌の色ムラを比較する形態を挙げることができる。例えば、図2は、化粧料の使用前の肌の色ムラを示す肌画像及び評価チャート(図2上)と、化粧料(美容液)の使用後1ヶ月の肌の色ムラを示す肌画像及び評価チャート(図2下)を表示する実施形態を示す。
【0052】
このように化粧料使用前後の評価チャートを並べて表示することで、化粧料の使用による肌の色ムラの変化を表現することができる。
【0053】
上述の化粧料としては、スキンケアに用いる化粧水、乳液、美容液等の基礎化粧料や、ファンデーション、下地等のメーキャップ化粧料の何れを用いても良いが、本発明は、基礎化粧料の使用前後の肌の色ムラを表示するために用いることが好ましい。すなわち、素肌の色ムラを表示するのに好適である。
【0054】
ここで、本発明の色ムラ表示方法は、第1の時点及び第2の時点の評価チャートを、1組のみ表示する形態に限られず、2組以上の第1の時点及び第2の時点の評価チャートを表示するものであってもよい。すなわち、被験者の同一領域の肌画像を2回以上経時的に取得し、時点ごとに作成した複数の評価チャートを並べて表示しても良い。
【0055】
また、化粧料の使用前、使用1週間後、使用2週間後といった複数の時点の肌からそれぞれムラ指数を算出し、各々のムラ指数に基づく評価チャートを並べて表示することで、化粧料の使用による肌の色ムラの変化を表現することができる。
【0056】
このように、同一の肌領域について経時的に評価チャートを生成し、これらを並べて表示することで、肌の色ムラの経時的変化を視覚的に捉えることが可能となる。当該表示方法は、スキンケア製品、医薬品等を継続的に使用した場合に、肌の色ムラに変化が生じているかを評価する場合等に利用することができる。
【0057】
また、本発明の色ムラ表示方法は、異なる肌領域に係る評価チャートを並べて表示する形態とすることもできる。例えば、所定の肌領域(第1の肌領域)から取得された画像に基づく評価チャートと、第1の肌領域と異なる肌領域(第2の肌領域)から取得された画像に基づく評価チャートを並べて表示することで、肌領域ごとの色ムラを対比させて表示することができる。
【0058】
例えば、右頬及び左頬のそれぞれについて評価チャートを作成し、これらを並べて比較することで、両頬の色ムラの違いを一目で認識することができる。
【0059】
さらに、本発明の色ムラ表示方法は、同一領域から異なる時点で撮像した肌画像を用いて、肌の色ムラを1つの評価チャートで表示する形態とすることもできる。すなわち、上述の(1)画像取得工程において、所定の肌領域からある時点(第1の時点)の肌画像を取得し、その後(すなわち、第2の時点)に同一の肌領域から再び肌画像を取得する。続いて、上記(2)画像処理工程を経て、(3)ムラ指数算出工程において、得られた画像に基づいて、それぞれ第1のムラ指数、及び第2のムラ指数を単位ブロックごとに算出し、さらに算出したムラ指数の差分を算出する。最後に、(4)表示工程において、当該差分を示す評価表示を表示することができる。
【0060】
上記実施形態において、評価表示が表示領域を分割した区画の着色である場合、ムラ指数の差分(評価結果)に応じて色が段階的に変化するように、差分と色を予め対応させておき、差分に応じて対応する色で着色する。これにより、評価結果を色の違いにより表示することが好ましい。
また、色の段階的な変化の態様としては、輝度を段階的に変化させたものが好ましい。さらに、輝度が高い色ほど肌の色ムラについて良好な評価結果を示すように構成されることが好ましい。
ここで、色ムラの差分について良好な評価結果とは、ムラ指数の差分が大きいことが挙げられる。
【0061】
ムラ指数の差分に基づいて色を決定する場合、差分の値が小さいほど輝度が低く黒に近い色となるように、また、差分の値が大きいほど輝度が高く白に近い値となるように、差分と色を予め対応させることが好ましい。このような対応関係とすることで、肌の色ムラを直感的に認識可能な評価チャートを生成することが可能となる。
【0062】
また、ムラ指数の差分は、所定の色相を設定し、該色相について輝度を段階的に変化させたものと対応させることが好ましい。このような形態とすることで、実質的に黒・所定の色相・白の3色のグラデーションで色ムラを表現することができる。
【0063】
区画を着色する色は、所定の値を超えた差分に係る区画を際立たせるように、予め設定されていてもよい。この時、区画の色の違いを表すために、異なる色相の色を組み合わせて表示してもよい。例えば、ムラ指数の差分について予め基準値を設定し、基準値を超える差分に係る注目区画を、彩度等の高い色(例えば、カラーコード#F91737の赤)で着色し、基準値に満たない差分に係る区画を、前記注目区画と異なる色(例えば、カラーコード#FDF6CBの薄い黄色)で着色することができる。
このように区画を着色することで、ムラ指数の差分が基準値を超え、色ムラが変化した区画を容易に視認可能な評価チャートを生成することができる。
【0064】
<2>表示物
前述した本発明の表示方法によって、肌の色ムラを表示するための表示物を製造することができる。本発明は、この表示物にも関する。
すなわち、本発明の表示物は、所定の表示領域を均等に分割した区画を着色することで、被験者の肌の色ムラについての評価結果を表示する評価チャートを含み、該評価チャートは、前記区画を前記肌画像の評価領域を分割した単位ブロックに対応させて、前記単位ブロックの評価結果を対応する区画に示したものである。
【0065】
本発明における表示物は、平面物であり、文字、図を表示することができるものであれば特に制限はないが、好ましくは紙、ディスプレイに表示されたものである。
【0066】
また、本発明の表示物は、予め設定しておいた、前記着色に用いた色と評価結果の対応関係を示す色パネルを含むことが好ましい。
この色パネルは、例えば、所定の色相の輝度のみを変化させたグラデーションの表示であり、輝度が高い色ほど肌の色ムラについて良好な評価結果を示すように構成されることが好ましい。
【0067】
本発明の表示物は、複数の評価チャートを並べて表示する形態であってもよい。
【0068】
また、本発明の表示物は、評価領域に係る肌画像を評価チャートと並べて表示する形態であってもよい。
【0069】
複数の評価チャートを並べて表示するときは、複数の評価チャートを上下に並べて表示することが好ましい。さらに、肌画像を共に表示する場合には、各評価チャートの左右何れかに、対応する肌画像を並べて表示することが好ましい。
このような配置で評価チャート及び肌画像を表示することで、肌画像と評価チャートについて同時に視認できると共に、複数の肌画像の評価結果を、容易に比較することができる。
【0070】
また、本発明の表示物は、上記構成を全て満たす表示物である必要はなく、例えば、評価チャートのみが表示される形態であってもよい。
【0071】
なお、本発明の表示物における評価チャートの好ましい形態は、<1>本発明の表示方法の記載を援用するものとする。
【0072】
<3>色ムラ評価方法
本発明の肌の色ムラ評価方法(以下、「色ムラ評価方法」ともいう)は、前述した色ムラ表示方法におけるムラ指数算出工程において算出されたムラ指数に基づいて評価領域の色ムラを評価する評価工程を備える。なお、画像取得工程及びムラ指数算出工程は、上記<1>に記載の説明を援用する。
【0073】
以下、本発明の色ムラ評価方法における評価工程について詳述する。
【0074】
評価工程では、上述の方法により得られたムラ指数に基づいて、肌画像の評価領域について、被験者の肌の色ムラの評価を行う。単一の肌画像を用いて評価を行う場合は、単位ブロックあたりのムラ指数に基づいて、肌の色ムラを評価することができる。
例えば、予め色ムラと判定するムラ指数の値を定めておき、既定のムラ指数となる単位ブロックについて色ムラが生じていると評価することができる。このように、単位ブロックごとに色ムラを判定することで、肌の色ムラを評価することができる。
【0075】
また、上記のように予め色ムラと判定するムラ指数を定めておき、既定のムラ指数より大きい単位ブロックの割合を算出することで、評価領域内の色ムラの度合いを、色ムラと判定された単位ブロックの数や、全体に占める割合(%)で評価することもできる。
【0076】
また、好ましい形態では、<1>色ムラ表示方法で生成される評価チャートに基づいて色ムラを評価しても良い。例えば、評価チャートにおいて、ムラ指数が大きい区画の個数、このような区画が集合している領域の数、当該領域内の単位ブロックの個数等により、肌の色ムラを評価しても良い。
【0077】
また、本発明の色ムラ評価方法は、複数の肌画像を用いることで、肌の色ムラを評価する形態であってもよい。複数の肌画像は、異なる肌領域から取得されたものであってもよく、同一の肌領域から取得されたものであってもよい。
【0078】
以下、複数の肌画像を用いて色ムラの評価を行う実施形態について詳述する。
【0079】
同一の肌領域から複数の肌画像を取得する場合は、例えば、ある時点(第1の時点)の肌画像からムラ指数(第1のムラ指数)を算出し、その後(第2の時点)、同一の肌領域を撮像した肌画像からムラ指数(第2のムラ指数)を算出し、各ムラ指数の変化に基づいて、評価領域内の肌の色ムラを評価することができる。
【0080】
具体的には、各単位ブロックについて、第1のムラ指数と比較し第2のムラ指数が小さくなる場合には、当該ムラ指数の属する単位ブロックは、色ムラが改善されたと判断することができる。すなわち、単位ブロックごとのミクロな色ムラについて評価することができる。
【0081】
また、第1のムラ指数と第2のムラ指数の比較により色ムラが改善されたと判断された単位ブロック数の割合を算出し、色ムラの改善率を算出することで、肌の経時的な色ムラの変化について、マクロな観点から評価することもできる。
【0082】
ここで、本発明の色ムラ評価方法は、1組の第1のムラ指数及び第2のムラ指数を比較する形態に限られず、2組以上の第1のムラ指数及び第2のムラ指数を比較する形態であってもよい。すなわち、被験者の肌画像を2回以上経時的に取得し、肌画像から取得される複数のムラ指数に基づいて、肌の経時的な色ムラの変化を評価してもよい。
【0083】
本発明の色ムラ評価方法の一実施形態においては、第1のムラ指数は化粧料の使用前の肌から取得した肌画像を用いて算出されたものであり、第2のムラ指数は化粧料の使用後の肌から取得した肌画像を用いて算出されたものである。
【0084】
上述の化粧料としては、上記<1>と同様、スキンケアに用いる化粧水、乳液、美容液等の基礎化粧料や、ファンデーション、下地等のメーキャップ化粧料の何れを用いても良いが、本発明は、基礎化粧料の使用前後の肌の色ムラを評価するために用いることが好ましい。すなわち、素肌の色ムラを評価するために用いることが好ましい。
【0085】
また、本発明の色ムラ評価方法は、異なる肌領域に係る色ムラを比較することで評価する形態とすることもできる。例えば、所定の肌領域(第1の肌領域)から取得された画像に基づいて算出された第1のムラ指数と、第1の肌領域と異なる肌領域(第2の肌領域)から取得された画像に基づいて算出された第2のムラ指数から、両領域の色ムラを比較することができる。
【0086】
具体的には、予め色ムラと判定するムラ指数を定めておき、異なる肌領域から取得した肌画像について、それぞれ既定のムラ指数となる単位ブロックの割合を算出する。前記既定のムラ指数となる単位ブロックの割合が小さい肌領域の方が、肌の色ムラが少ないと判断することができる。すなわち、異なる肌領域を比較評価する場合は、評価領域全体のマクロな観点からの色ムラの評価となる。
【0087】
<4>色ムラ表示装置
以下、本発明の肌の色ムラ表示装置(以下、「色ムラ表示装置」ともいう)について、図3を参照しながら説明を加える。なお、本発明の色ムラ表示装置は、上記<1>の項目で説明した色ムラ表示方法を実施するための装置である。したがって、上記<1>及び<1>の結果物である<2>に係る説明は、以下の装置に関しても妥当する。
【0088】
図3に示すように、本発明の色ムラ表示装置1は、被験者の肌画像を取得する画像取得手段11と、肌画像から評価領域を特定し、評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段12と、画像処理手段12によって得られた単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段13と、ムラ指数の算出に必要な各種の式を記憶する記憶部14と、評価領域内の任意の単位ブロックについて、ムラ指数算出手段13で算出されたムラ指数に基づいた評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段15と、を備える。
【0089】
画像取得手段11は、肌の表面を撮像するものであり、肌の表面画像を入力し、色の要素を数値化した信号に変換するものである。信号としては、肌状態を表すことができるものであれば特に限定されないが、例えばRGB信号、マンセル信号、L信号(JIS Z8729)、XYZ信号、明度、色相及び彩度を表す信号等が挙げられる。なお、画像取得手段11として、一般的なビデオカメラ又はデジタルカメラを用いることができる。
【0090】
画像処理手段12は、画像取得手段11から出力された肌画像から評価領域を特定し、評価領域を所定の単位ブロックに分割する。画像処理手段12は、取得したRGB画像をL形式の画像信号に変換する変換機能を備えていても良い。
【0091】
ムラ指数算出手段13は、画像処理手段12から入力された肌画像について、単位ブロックごとにムラ指数を算出する。ここで、ムラ指数算出手段13は、2以上のムラ指数の差分を算出する工程をさらに含んでも良い。
【0092】
記憶部14は、本発明の色ムラ表示装置が機能する上で必要なプログラム、及び、ムラ指数の算出に必要な各種式を記憶する。
【0093】
表示手段15は、ムラ指数算出手段13で算出されたムラ指数に基づいて評価表示を決定し、該評価表示を所定の表示領域内に表示する。この時、評価表示は、肌画像の評価領域における単位ブロックの位置に対応させて表示され、表示領域に複数の評価表示が表示された評価チャートを生成される。
ここで、ムラ指数に基づく評価表示は、ムラ指数の値そのものを用いて決定するだけでなく、ムラ指数の差分を用いて決定することもできる。
【0094】
また、表示手段15は、前記評価チャートを、液晶ディスプレイ等の任意の表示装置に表示するよう指示もおこなう。
【0095】
なお、本発明においては、上記の構成を必ずしも備える必要はなく、例えば、肌画像から評価領域を特定し、評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段12と、画像処理手段12によって得られた単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段13と、評価領域内の任意の単位ブロックについて、ムラ指数算出手段13で算出されたムラ指数に基づいた評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段15と、を備える、色ムラ表示装置の形態であってもよい。
【0096】
<5>色ムラ表示プログラム
本発明の肌の色ムラ表示プログラム(以下、「色ムラ表示プログラム」ともいう)は、コンピュータ、その他の装置、機械等を、被験者の肌画像を取得する画像取得手段11と、肌画像から評価領域を特定し、評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段12と、画像処理手段12によって得られた単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段13と、ムラ指数の算出に必要な各種の式を記憶する記憶部14と、評価領域内の任意の単位ブロックについて、ムラ指数算出手段13で算出されたムラ指数に基づいた評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段15と、して機能させる(図3参照)。
ここで、表示手段は、評価領域における単位ブロックの位置に対応した表示領域内の位置に、評価結果を示す評価表示を表示して評価チャートを生成することを特徴とする。
【0097】
なお、本発明においては、上記の構成全てを機能させるプログラムである必要はなく、例えば、コンピュータ、その他の装置、機械等を、被験者の肌画像から評価領域を特定し、評価領域を所定の単位ブロックに分割する画像処理手段12と、画像処理手段12によって得られた単位ブロックごとに色成分のムラ指数を算出するムラ指数算出手段13と、評価領域内の任意の単位ブロックについて、ムラ指数算出手段13で算出されたムラ指数に基づいた評価結果を所定の表示領域内に表示する表示手段15と、として機能させる、色ムラ表示プログラムの形態であってもよい。
【0098】
本発明の色ムラ表示プログラムは、上記<1>及び<4>の項目で説明した色ムラ表示方法、及び色ムラ表示装置に係るプログラムである。したがって、上記<1><2>、<4>に係る説明は、本発明の色ムラ表示プログラムに関しても妥当する。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、化粧、医薬の分野における肌状態の診断方法や、化粧効果の評価方法、これらの方法に用いる装置等に応用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 色ムラ表示装置
11 画像取得手段
12 画像処理手段
13 ムラ指数算出手段
14 記憶部
15 表示手段


図1
図2
図3