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特許7581581アスファルトフィニッシャ及び機械学習装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ及び機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022510056
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011220
(87)【国際公開番号】W WO2021193381
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020059058
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】萩原 和明
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198968(JP,A)
【文献】特開2009-019353(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189633(WO,A1)
【文献】特許第6634183(JP,B1)
【文献】特開2014-105434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、
前記コンベアにより搬送された舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、を備えるアスファルトフィニッシャであって、
前記ホッパ内の状態を監視する空間認識装置と、
前記空間認識装置の出力に基づいて前記ホッパを動かすコントローラと、を更に備え、
前記コントローラは、前記空間認識装置の出力に基づいて認識される前記ホッパ内の舗装材の現在の状態と前記ホッパ内の舗装材の山の斜面に関して予め設定されている傾斜角に基づいて前記ホッパを任意の程度だけ閉じたときの前記ホッパ内の舗装材の状態を推定し、推定結果に基づいてどの程度だけ前記ホッパを閉じればよいかを決定する、
アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ホッパ内の舗装材の量が所定量より少ないと判定した場合に、前記推定結果に基づいて決定された程度だけ、前記ホッパを閉じるように構成されている、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ホッパを動かすときに、その旨を周囲に知らせるように構成されている、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ホッパ内の舗装材が、所定量より多い状態から該所定量より少ない状態に遷移したと判定した場合に、前記推定結果に基づいて決定された程度だけ、前記ホッパを閉じるように構成されている、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ホッパを動かす前に、前記ホッパ内における進入物の存否を判定するように構成されている、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項6】
アスファルトフィニッシャのホッパ内の舗装材の情報と、前記ホッパの好ましい開閉状態との組み合わせを含むデータセットに従って前記ホッパの制御条件を学習することを特徴とする機械学習装置。
【請求項7】
請求項6に記載の前記機械学習装置により作成された学習済みモデルが入力され、前記学習済みモデルに基づいて、現在の前記ホッパ内の舗装材の情報の入力に対応して前記ホッパの開閉状態を出力する、
アスファルトフィニッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アスファルトフィニッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
ホッパ内に蓄積された舗装材をトラクタの後側へ搬送するコンベアと、コンベアにより搬送された舗装材をトラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、スクリュにより敷き拡げられた舗装材をスクリュの後側で敷き均すスクリードとを備えたアスファルトフィニッシャが知られている(特許文献1参照。)。このアスファルトフィニッシャでは、コンベアは、ホッパの底面中央部にその一部が露出するように配置されている。そのため、コンベアは、ホッパの中央部にある舗装材をトラクタの後側へ搬送できる。アスファルトフィニッシャの操作者は、ホッパ内の舗装材の量が減ってきた場合には、手動でホッパを閉じることによって、ホッパの底面端部にある舗装材を底面中央部に集め、底面端部にあった舗装材がコンベアによってトラクタの後側に搬送されるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-160636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アスファルトフィニッシャの操作者がホッパの手動操作を怠ると、ホッパの底面端部にある舗装材は、コンベアによってトラクタの後側に搬送されることなく、ホッパの底面端部に残ってしまう。コンベアは、ホッパ内に舗装材が残っているにもかかわらず、舗装材をトラクタの後側に搬送できない。この場合、スクリードに供給される舗装材の不足により、新設される道路に凹部が形成されてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、ホッパ内の舗装材の量が減ってきたときにホッパをより確実に動かすことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャは、トラクタと、前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、前記コンベアにより搬送された舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、を備えるアスファルトフィニッシャであって、前記ホッパ内の状態を監視する空間認識装置と、前記空間認識装置の出力に基づいて前記ホッパを動かすコントローラと、を更に備え、前記コントローラは、前記空間認識装置の出力に基づいて認識される前記ホッパ内の舗装材の現在の状態と前記ホッパ内の舗装材の山の斜面に関して予め設定されている傾斜角に基づいて前記ホッパを任意の程度だけ閉じたときの前記ホッパ内の舗装材の状態を推定し、推定結果に基づいてどの程度だけ前記ホッパを閉じればよいかを決定する。
【発明の効果】
【0007】
上述のアスファルトフィニッシャは、ホッパ内の舗装材の量が減ってきたときにホッパをより確実に動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】アスファルトフィニッシャの左側面図である。
図1B】アスファルトフィニッシャの上面図である。
図2】コントローラの機能ブロック図である。
図3A】アスファルトフィニッシャ及びダンプトラックの左側面図である。
図3B】アスファルトフィニッシャ及びダンプトラックの左側面図である。
図3C】アスファルトフィニッシャ及びダンプトラックの左側面図である。
図4A】アスファルトフィニッシャの正面図である。
図4B】アスファルトフィニッシャの正面図である。
図4C】アスファルトフィニッシャの正面図である。
図4D】アスファルトフィニッシャの正面図である。
図4E】アスファルトフィニッシャの正面図である。
図5】空間認識部による判定処理の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1A及び図1Bは、本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の概略図である。具体的には、図1Aはアスファルトフィニッシャ100の左側面図であり、図1Bは上面図である。
【0010】
アスファルトフィニッシャ100は、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成されている。図1A及び図1Bに示す例では、アスファルトフィニッシャ100は、車長方向がX軸方向に対応し、且つ、車幅方向がY軸方向に対応するように配置されている。そして、Z軸は、X軸及びY軸のそれぞれと直交するように配置されている。具体的には、車長方向の前側が+X側に対応し、車長方向の後側が-X側に対応し、車幅方向の左側が+Y側に対応し、車幅方向の右側が-Y側に対応し、鉛直方向の上側が+Z側に対応し、鉛直方向の下側が-Z側に対応している。
【0011】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100を走行させるための機構である。図1A及び図1Bに示す例では、トラクタ1は、後輪走行用モータを用いて後輪5を回転させ、且つ、前輪走行用モータを用いて前輪6を回転させることによってアスファルトフィニッシャ100を移動させる。後輪走行用モータ及び前輪走行用モータは、油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する油圧モータである。トラクタ1は、車輪の代わりにクローラを備えていてもよい。
【0012】
コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100を制御する制御装置である。図1A及び図1Bに示す例では、コントローラ50は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置を含むコンピュータであり、トラクタ1に搭載されている。コントローラ50の各種機能は、例えば、不揮発性記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現される。コントローラ50が実現する各種機能は、例えば、油圧アクチュエータを駆動するための作動油を吐出する油圧ポンプの吐出量を制御する機能、及び、油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間の作動油の流れを制御する機能を含む。なお、油圧アクチュエータは、油圧シリンダ及び油圧モータを含む。
【0013】
ホッパ2は、舗装材を受け入れるための機構である。舗装材は、例えば、アスファルト混合物である。図1A及び図1Bに示す例では、ホッパ2は、トラクタ1の前側(+X側)に設置され、ホッパシリンダ24によってY軸方向(車幅方向)に開閉されるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2を全開状態にしてダンプトラックの荷台から舗装材を受け入れる。また、アスファルトフィニッシャ100は、ダンプトラックの荷台から舗装材を受け入れているときも、プッシュローラ2bを介してダンプトラックを前方に押しながら走行を継続する。図1A及び図1Bはホッパ2が全開状態であることを示す。アスファルトフィニッシャ100の操作者は、ホッパ2内の舗装材が減少すると、ホッパ2を手動で閉じ、ホッパ2の内壁付近にあった舗装材をホッパ2の中央部に集めるようにする。ホッパ2の底面中央部にあるコンベアCVがトラクタ1の後側に舗装材を搬送できるようにするためである。トラクタ1の後側に搬送された舗装材は、スクリュSCによってトラクタ1の後側且つスクリード3の前側で車幅方向に敷き拡げられる。
【0014】
トラクタ1には、トラクタ1の前方の様子を監視するための空間認識装置CMが取り付けられている。空間認識装置CMは、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、又はLIDAR等である。図1A及び図1Bに示す例では、空間認識装置CMは、トラクタ1の前方の様子を撮像する単眼カメラである。この場合、コントローラ50は、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づいてホッパ2内の舗装材の量が所定量より多いか少ないかを判定できる。
【0015】
コンベアCVは、油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する油圧モータによって駆動される。図1A及び図1Bに示す例では、コンベアCVは、搬送通路CPを介して、ホッパ2内の舗装材をトラクタ1の後側へ搬送するように構成されている。搬送通路CPは、トラクタ1の内部に形成された略直方体状の空間であり、トラクタ1の前面1FWにおいてホッパ2内に開口する略長方形の入口OPを有する。
【0016】
スクリュSCは、油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する油圧モータによって駆動される。具体的には、スクリュSCは、中央スクリュSCM、左スクリュSCL、及び右スクリュSCRを含む。中央スクリュSCMは、トラクタ1の幅内に設置されている。左スクリュSCLは、中央スクリュSCMの左端に連結され、トラクタ1の幅から左側に突出するように設置されている。右スクリュSCRは、中央スクリュSCMの右端に連結され、トラクタ1の幅から右側に突出するように設置されている。
【0017】
スクリード3は、舗装材を敷き均すための機構である。図1A及び図1Bに示す例では、スクリード3は、主に、メインスクリード30及び伸縮スクリード31を含む。伸縮スクリード31は、左伸縮スクリード31L及び右伸縮スクリード31Rを含む。メインスクリード30、左伸縮スクリード31L、及び右伸縮スクリード31Rは、前後にずらして配置されている。具体的には、メインスクリード30の後側に左伸縮スクリード31Lが配置され、左伸縮スクリード31Lの後側に右伸縮スクリード31Rが配置されている。スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3Aを介してトラクタ1に連結されている。スクリード3は、スクリードリフトシリンダ25の伸縮によってレベリングアーム3Aと共に上下に動かされる。
【0018】
伸縮スクリード31は、伸縮シリンダ60によって車幅方向に伸縮されるように構成されている。伸縮シリンダ60は、メインスクリード30の筐体の後面に固定されている支持部によって支持され、伸縮スクリード31を車幅方向に伸縮させることができるように構成されている。具体的には、伸縮シリンダ60は、左伸縮シリンダ60L及び右伸縮シリンダ60Rを含む。左伸縮シリンダ60Lは、メインスクリード30に対して左伸縮スクリード31Lを車幅方向の左側に伸縮させる。右伸縮シリンダ60Rは、メインスクリード30に対して右伸縮スクリード31Rを車幅方向の右側に伸縮させる。
【0019】
レベリングアーム3Aは、スクリード3をトラクタ1に連結できるように構成されている。具体的には、レベリングアーム3Aは、一端(後端)がスクリード3に連結され、他端(前端)がトラクタ1に回動可能に連結されている。
【0020】
レベリングシリンダ23は、舗装材の敷き均し厚さを調節するためにレベリングアーム3Aの前端を上下動させる油圧シリンダである。図1A及び図1Bに示す例では、レベリングシリンダ23は、シリンダ部がトラクタ1に連結され、ロッド部がレベリングアーム3Aの前端に連結されている。なお、レベリングアーム3Aの前端は、上下にスライド可能にトラクタ1に取り付けられている。敷き均し厚さを増大させる場合、コントローラ50は、油圧ポンプが吐出する作動油をレベリングシリンダ23のロッド側油室内に流入させ、レベリングシリンダ23を収縮させてレベリングアーム3Aの前端を上昇させる。一方、敷き均し厚さを低減させる場合、コントローラ50は、レベリングシリンダ23のロッド側油室内の作動油を流出させ、レベリングシリンダ23を伸張させてレベリングアーム3Aの前端を下降させる。
【0021】
スクリードリフトシリンダ25は、スクリード3を持ち上げるための油圧シリンダである。図1A及び図1Bに示す例では、スクリードリフトシリンダ25は、シリンダ部がトラクタ1に連結され、ロッド部がレベリングアーム3Aの後端に連結されている。スクリード3を持ち上げる場合、コントローラ50は、油圧ポンプが吐出する作動油をスクリードリフトシリンダ25のロッド側油室内に流入させる。その結果、スクリードリフトシリンダ25は収縮し、レベリングアーム3Aの後端が持ち上がりスクリード3が持ち上がる。一方、持ち上げられたスクリード3を下ろす場合、コントローラ50は、スクリードリフトシリンダ25のロッド側油室内の作動油を流出可能とする。その結果、スクリード3の重量によってスクリードリフトシリンダ25は伸張し、レベリングアーム3Aの後端が下降してスクリード3が下降する。
【0022】
伸縮スクリード31の遠位端には、サイドプレート40が取り付けられている。サイドプレート40は、車長方向に延びる板状の部材であり、左サイドプレート40L及び右サイドプレート40Rを含む。具体的には、左伸縮スクリード31Lの遠位端(左端)には、左サイドプレート40Lが取り付けられ、右伸縮スクリード31Rの遠位端(右端)には、右サイドプレート40Rが取り付けられている。
【0023】
サイドプレート40は、伸縮モールドボード41の遠位端にも取り付けられている。伸縮モールドボード41は、スクリュSCによって敷き拡げられた舗装材のうち、伸縮スクリード31の手前に滞留する舗装材の量を調節するための部材であり、伸縮スクリード31と共に車幅方向に伸縮できるように構成されている。
【0024】
具体的には、伸縮モールドボード41は、車幅方向に延びる板状の部材であり、左伸縮モールドボード41L及び右伸縮モールドボード41Rを含む。そして、左伸縮モールドボード41Lの遠位端(左端)には、左サイドプレート40Lが取り付けられ、右伸縮モールドボード41Rの遠位端(右端)には、右サイドプレート40Rが取り付けられている。
【0025】
伸縮モールドボード41は、伸縮スクリード31及びサイドプレート40とは無関係に、Z軸方向における高さが調節できるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100は、伸縮モールドボード41を上下に移動させることで、伸縮モールドボード41の下端と路盤との間の隙間の大きさを調節し、その隙間を通過する舗装材の量を調節できる。そのため、アスファルトフィニッシャ100は、伸縮モールドボード41を上下に移動させることで、伸縮モールドボード41の後側(-X側)で且つ伸縮スクリード31の前側(+X側)に滞留する舗装材の量(高さ)を調節でき、ひいては、伸縮スクリード31の下側に取り込まれる舗装材の量を調節できる。
【0026】
スクリードステップ42は、作業者がスクリード3の後方で作業する際の足場を構成する部材である。具体的には、スクリードステップ42は、左スクリードステップ42L、中央スクリードステップ42C、及び右スクリードステップ42Rを含む。
【0027】
リテーニングプレート43は、スクリュSCによって舗装材が車幅方向に適切に敷き拡げられるようにするために、スクリュSCによって車幅方向に敷き拡げられる舗装材がスクリュSCの前方に散らばってしまうのを防止するための板状部材である。図1A及び図1Bに示す例では、リテーニングプレート43は、左リテーニングプレート43L及び右リテーニングプレート43Rを含む。
【0028】
次に、図2を参照し、コントローラ50が有する機能の1つである支援機能について説明する。図2は、コントローラ50の機能ブロック図である。支援機能は、アスファルトフィニッシャ100の操作者によるアスファルトフィニッシャ100の操作を支援するための機能である。支援機能は、主に、空間認識装置CM、スクリュ回転速度センサ45、コンベア送り速度センサ46、走行速度センサ47、補助記憶装置48、コントローラ50、スクリュ制御装置51、コンベア制御装置52、ホッパ制御装置53、走行制御装置54、及び出力装置55の協働によって実現される。
【0029】
スクリュ回転速度センサ45は、スクリュSCの回転速度を検出するように構成されている。図2に示す例では、スクリュ回転速度センサ45は、スクリュSCを駆動する油圧モータの回転軸の角速度を検出するエンコーダである。スクリュ回転速度センサ45は、回転板に形成されたスリットを検知する近接スイッチ等で構成されていてもよい。
【0030】
コンベア送り速度センサ46は、コンベアCVの送り速度を検出するように構成されている。図2に示す例では、コンベア送り速度センサ46は、コンベアCVを駆動する油圧モータの回転軸の角速度を検出するエンコーダである。コンベア送り速度センサ46は、回転板に形成されたスリットを検知する近接スイッチ等で構成されていてもよい。
【0031】
走行速度センサ47は、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を検出するように構成されている。図2に示す例では、走行速度センサ47は、後輪5を駆動する後輪走行用モータの回転軸の角速度を検出するエンコーダである。走行速度センサ47は、回転板に形成されたスリットを検知する近接スイッチ等で構成されていてもよい。
【0032】
補助記憶装置48は、各種情報を記憶するように構成されている。図2に示す例では、補助記憶装置48は、トラクタ1に搭載された不揮発性記憶装置であり、各種情報を記憶している。
【0033】
スクリュ制御装置51は、スクリュSCの回転速度を制御するように構成されている。図2に示す例では、スクリュ制御装置51は、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、スクリュ制御装置51は、コントローラ50からの制御指令に応じ、スクリュSCを駆動する油圧モータと油圧ポンプとを接続する管路の断面積である流路面積を増減させる。より具体的には、スクリュ制御装置51は、流路面積を増大させることによって、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を増加させ、スクリュSCの回転速度を増加させる。或いは、スクリュ制御装置51は、流路面積を低減させることによって、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を低下させ、スクリュSCの回転速度を低下させる。
【0034】
コンベア制御装置52は、コンベアCVの送り速度を制御するように構成されている。図2に示す例では、コンベア制御装置52は、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、コンベア制御装置52は、コントローラ50からの制御指令に応じ、コンベアCVを駆動する油圧モータと油圧ポンプとを接続する管路の断面積である流路面積を増減させる。より具体的には、コンベア制御装置52は、流路面積を増大させることによって、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を増加させ、コンベアCVの送り速度を増加させる。或いは、コンベア制御装置52は、流路面積を低減させることによって、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を低下させ、コンベアCVの送り速度を低下させる。
【0035】
ホッパ制御装置53は、ホッパシリンダ24の伸縮量を制御するように構成されている。図2に示す例では、ホッパ制御装置53は、ホッパシリンダ24に流入する或いはホッパシリンダ24から流出する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、ホッパ制御装置53は、コントローラ50からの制御指令に応じ、ホッパシリンダ24と油圧ポンプとを接続する管路、及び、ホッパシリンダ24と作動油タンクとを接続する管路のそれぞれの連通・遮断を切り換える。より具体的には、ホッパ制御装置53は、それらの管路を連通させることによって、ホッパシリンダ24のボトム側油室に作動油を流入させ、ホッパシリンダ24を伸張させてホッパ2を自動的に閉じるように構成されている。或いは、ホッパ制御装置53は、コントローラ50からの制御指令に応じ、それらの管路を連通させることによって、ホッパシリンダ24のボトム側油室から作動油を流出させ、ホッパシリンダ24を収縮させてホッパ2を開くように構成されている。
【0036】
走行制御装置54は、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を制御するように構成されている。図2に示す例では、走行制御装置54は、後輪走行用モータ及び前輪走行用モータのそれぞれに流入する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、走行制御装置54は、コントローラ50からの制御指令に応じ、後輪走行用モータ及び前輪走行用モータのそれぞれと油圧ポンプとを接続する管路の断面積である流路面積を増減させる。より具体的には、走行制御装置54は、流路面積を増大させることによって、後輪走行用モータ及び前輪走行用モータのそれぞれに流入する作動油の流量を増加させ、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を増加させる。或いは、コンベア制御装置52は、流路面積を低減させることによって、後輪走行用モータ及び前輪走行用モータのそれぞれに流入する作動油の流量を低下させ、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を低下させる。
【0037】
出力装置55は、情報を出力するように構成されている。情報は、視覚的情報及び聴覚的情報を含む。図2に示す例では、出力装置55は、アスファルトフィニッシャ100の周囲で作業している作業者に情報を伝えるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100の周囲で作業している作業者は、アスファルトフィニッシャ100の操作者、及び、ダンプトラックの運転者を含んでいてもよい。具体的には、出力装置55は、メインモニタ55A(図1A及び図1B参照。)、音出力装置55B(図1A及び図1B参照。)、及びインジケータ55C(図1A及び図1B参照。)である。但し、出力装置55は、メインモニタ55A、音出力装置55B、及びインジケータ55Cのうちの1つ又は2つであってもよい。
【0038】
メインモニタ55Aは、各種情報を表示するように構成されている。図2に示す例ではメインモニタ55Aは液晶ディスプレイであり、コントローラ50からの制御指令に応じて各種情報を表示できる。また、メインモニタ55Aは、アスファルトフィニッシャ100の操作者の操作入力を受けるタッチパネル等の入力装置を含んでいてもよい。
【0039】
音出力装置55Bは、アスファルトフィニッシャ100の周囲に向けて音を出力するように構成されている。図2に示す例では、音出力装置55Bは、アスファルトフィニッシャ100の周囲に向けて音声を出力するスピーカであり、コントローラ50からの制御指令に応じて警報音を出力できる。音出力装置55Bは音声メッセージを出力してもよい。
【0040】
インジケータ55Cは、アスファルトフィニッシャ100の前方を向く表示部を有する表示装置である。図2に示す例では、インジケータ55Cは、ダンプトラックの運転席に着座しているダンプトラックの運転者が視認できるようにトラクタ1に取り付けられている。具体的には、インジケータ55Cは、トラクタ1の上面よりも高い位置に設置されている。インジケータ55CはLEDパネルであり、コントローラ50からの制御指令に応じて各種情報を表示可能である。例えば、舗装材を積載したダンプトラックの運転者に後退指示を表示し、ダンプトラックの後退が可能であることをその運転者に知らせることができる。
【0041】
図2に示す例では、インジケータ55Cは、使用時には、トラクタ1の右側部から外側に張り出すように展開可能に構成されている。すなわち、インジケータ55Cは、非使用時には、アスファルトフィニッシャ100の車幅内に収まるように折り畳み可能に構成されている。
【0042】
コントローラ50は、空間認識装置CM、スクリュ回転速度センサ45、コンベア送り速度センサ46、走行速度センサ47、及び補助記憶装置48等から情報を取得し、各種演算を実行した上で、その演算結果に応じ、スクリュ制御装置51、コンベア制御装置52、ホッパ制御装置53、走行制御装置54、及び出力装置55等に制御指令を出力する。
【0043】
具体的には、コントローラ50は、空間認識装置CM、スクリュ回転速度センサ45、コンベア送り速度センサ46、走行速度センサ47、及び補助記憶装置48の少なくとも1つから取得した情報に基づき、所定の条件が満たされたか否かを判定し、所定の条件が満たされたと判定した場合に、スクリュ制御装置51、コンベア制御装置52、ホッパ制御装置53、走行制御装置54、及び出力装置55等の少なくとも1つに制御指令を出力する。
【0044】
より具体的には、コントローラ50は、ソフトウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせで構成される機能ブロックとして、空間認識部50A及びホッパ制御部50Bを有する。
【0045】
空間認識部50Aは、空間認識装置CMの出力に基づいてトラクタ1の前方の様子を認識するように構成されている。図2に示す例では、空間認識部50Aは、ホッパ2内の舗装材の高さを認識するように構成されている。ホッパ2内の舗装材の高さは、例えば、ホッパ2内の中央部MP(図1B参照。)におけるホッパ2の底面と舗装材の表面との間の距離である。ホッパ2の中央部MPは、例えば、コンベアCVが露出している部分である。
【0046】
具体的には、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによってホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さを導き出す。なお、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによってホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の体積又は重量等を導き出してもよい。或いは、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしてのLIDARの出力に基づいてホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の導き出してもよい。
【0047】
そして、空間認識部50Aは、導き出した高さが所定の高さより大きいか否かを判定する。所定の高さは、例えば、補助記憶装置48に予め登録された値(高さ)である。所定の高さは、例えば、搬送通路CPの入口OPの高さである。なお、空間認識部50Aは、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の体積を導き出した場合には、導き出した体積が所定の体積より大きいか否かを判定する。
【0048】
空間認識部50Aは、アスファルトフィニッシャ100の前方におけるダンプトラックの存否を判定するように構成されていてもよい。具体的には、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによって、ダンプトラックがプッシュローラ2bを介してアスファルトフィニッシャ100に接触しているか否か、ダンプトラックが荷台をダンプアップさせているか否か、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100に接近しているか否か、或いは、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100から遠ざかっているか否か等を判定するように構成されていてもよい。なお、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100と接しているときには、ダンプトラックの後輪タイヤは、ホッパ2の前側に配置されているプッシュローラ2b(図1A及び図1B参照。)に当接している。このとき、ダンプトラックの運転者は、ダンプトラックのギアをニュートラル状態に変更する。これにより、ダンプトラックは、アスファルトフィニッシャ100の駆動力によって押され、アスファルトフィニッシャ100とともに前進する。
【0049】
図3A図3Cは、アスファルトフィニッシャ100及びダンプトラック200の左側面図である。ダンプトラック200は、アスファルトフィニッシャ100のホッパ2内に供給される舗装材を運搬する運搬車両の一例である。
【0050】
図3A図3Cは、ダンプトラック200の3つの状態を示している。具体的には、図3Aは、ダンプトラック200の荷台に積載されていた舗装材がアスファルトフィニッシャ100のホッパ2内に供給されているときのアスファルトフィニッシャ100及びダンプトラック200の状態を示している。図3Aでは、アスファルトフィニッシャ100と接触しているダンプトラック200の荷台200bはダンプアップされている。
【0051】
図3Bは、荷台200bに積載されていた舗装材の全てがホッパ2内に供給された後でダンプアップされていた荷台200bがダンプアップされていない状態に戻ったときのアスファルトフィニッシャ100及びダンプトラック200の状態を示している。図3Bでは、ダンプトラック200は依然としてプッシュローラ2bを介してアスファルトフィニッシャ100と接触している。
【0052】
図3Cは、ダンプトラック200が前進してアスファルトフィニッシャ100から離れたときのアスファルトフィニッシャ100及びダンプトラック200の状態を示している。
【0053】
空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによって、現時点におけるアスファルトフィニッシャ100及びダンプトラック200の状態が、図3Aに示すような状態であるか、図3Bに示すような状態であるか、或いは、図3Cに示すような状態であるか等を判定できる。
【0054】
また、空間認識部50Aは、ホッパ2内における進入物の存否を判定するように構成されていてもよい。具体的には、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによって、ホッパ2内に作業者が入り込んでいるか否か、或いは、ホッパ2内にレーキ若しくはスコップ等の道具が入っているか否か等を判定するように構成されていてもよい。
【0055】
また、空間認識部50Aは、ホッパ2内の舗装材が無くなったか否かを判定するように構成されていてもよい。具体的には、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによって、ホッパ2内の舗装材が無くなったか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0056】
ホッパ制御部50Bは、所定の条件が満たされた場合に、ホッパ2を閉じるように構成されている。図2に示す例では、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づいてホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さが所定の高さより大きいか否かを判定する。そして、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さが所定の高さより大きいと空間認識部50Aが判定した場合、ホッパ制御部50Bは、ホッパ制御装置53に向けて閉指令を送信する。閉指令を受信したホッパ制御装置53は、ホッパシリンダ24のボトム側油室に作動油を流入させることによってホッパシリンダ24を伸張させてホッパ2を閉じる。ホッパ制御部50Bは、例えば、ホッパ2が完全に閉じるまでホッパシリンダ24を伸張させてもよく、ホッパシリンダ24を所定の長さだけ伸張させてもよい。
【0057】
また、ホッパ制御部50Bは、ホッパ2を閉じるときには、すなわち、ホッパシリンダ24を伸張させるときには、出力装置55に向けて出力指令を送信してもよい。出力指令を受信した出力装置55は、例えば、メインモニタ55Aに「ホッパ閉じ中」等のテキストメッセージを表示させることにより、ホッパ2を閉じる動作が自動的に行われていることをアスファルトフィニッシャ100の操作者に知らせてもよい。或いは、出力装置55は、例えば、音出力装置55Bに「ホッパ閉じ中」等の音声メッセージを出力させることにより、ホッパ2を閉じる動作が自動的に行われていることをアスファルトフィニッシャ100の周囲で作業する作業者に知らせてもよい。或いは、出力装置55は、例えば、インジケータ55Cに「ホッパ閉じ中」等のテキストメッセージを出力させることにより、ホッパ2を閉じる動作が自動的に行われていることをダンプトラック200の運転者に知らせてもよい。
【0058】
ホッパ制御部50Bは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づき、ダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100に接していると空間認識部50Aが判定した場合には、上述の所定の条件が満たされたと空間認識部50Aが判定した場合であっても、ホッパ2を閉じないように構成されていてもよい。ホッパウイングとダンプトラックとが接触してしまうのを防止するためである。この場合、ホッパ制御部50Bは、ホッパ制御装置53に向けて閉指令を送信しないように構成されていてもよく、ホッパ制御装置53に向けて停止指令を送信してもよい。停止指令を受信したホッパ制御装置53は、ホッパシリンダ24のボトム側油室への作動油の流入を停止させることによってホッパシリンダ24の伸張を停止させてホッパ2の動きを止める。
【0059】
また、ホッパ制御部50Bは、ダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100に接していないと空間認識部50Aが判定した場合であっても、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100との間の距離が所定距離以下であると空間認識部50Aが判定した場合には、ダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100に接していると空間認識部50Aが判定した場合と同様に、ホッパ2を閉じないように構成されていてもよい。
【0060】
また、ホッパ制御部50Bは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づき、ホッパ2内に進入物が存在すると空間認識部50Aが判定した場合には、上述の所定の条件が満たされたと空間認識部50Aが判定した場合であっても、ホッパ2を閉じないように構成されていてもよい。ホッパウイングと進入物とが接触してしまうのを防止するため、或いは、ホッパ2内の舗装材によって進入物(例えばスコップ)が埋まってしまうのを防止するためである。この場合、ホッパ制御部50Bは、ホッパ制御装置53に向けて閉指令を送信しないように構成されていてもよく、ホッパ制御装置53に向けて停止指令を送信するように構成されていてもよい。
【0061】
また、ホッパ制御部50Bは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づき、ホッパ2内の舗装材が無くなったと空間認識部50Aが判定した場合には、コンベアCVの送り速度、スクリュSCの回転速度、及びアスファルトフィニッシャ100の走行速度を減速させるように構成されていてもよい。更には、ホッパ制御部50Bは、コンベアCV、スクリュSC、後輪5、及び前輪6の動きを止めるように構成されていてもよい。ホッパ2内に舗装材が無い状態でアスファルトフィニッシャ100による施工が継続された場合、舗装材の不足により、新設される道路に凹部が形成されてしまうためである。
【0062】
この場合、ホッパ制御部50Bは、スクリュ制御装置51、コンベア制御装置52、及び走行制御装置54のそれぞれに減速指令又は停止指令を送信する。減速指令又は停止指令を受信したスクリュ制御装置51は、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を低下させることによって、スクリュSCの回転速度を低下させ、或いは、スクリュSCの回転を停止させる。コンベア制御装置52及び走行制御装置54についても同様である。
【0063】
図4A図4Eは、アスファルトフィニッシャ100の正面図である。図4A図4Eは、ホッパ2内の舗装材PMの5つの状態を概略的に示している。明瞭化のため、図4A図4Eでは、ホッパ2内の舗装材PMにはドットハッチングが付されている。また、図4Aでは、トラクタ1のベース部1BF、前輪6(左前輪6L及び右前輪6R)、及びホッパシリンダ24(左ホッパシリンダ24L及び右ホッパシリンダ24R)が図示されているが、図4B図4Eでは省略されている。また、図4A図4C、及び図4Dでは、トラクタ1の前面1FWに形成されている搬送通路CPの入口OPのうち、舗装材PMに埋まって実際には見えなくなっている部分が破線で表されている。
【0064】
具体的には、図4Aは、ダンプトラック200によって舗装材PMが供給された直後のホッパ2内の舗装材PMの状態を示している。具体的には、図4Aは、図3Bに示すように、ダンプトラック200の荷台200bに積載されていた舗装材がホッパ2内に供給された後のホッパ2内の舗装材PMの状態を示している。より具体的には、図4Aは、トラクタ1の前面1FWとホッパウイング2W(左ホッパウイング2WL及び右ホッパウイング2WR)とで囲まれたホッパ2内の空間に十分な量の舗装材PMが蓄積されている状態を示している。
【0065】
図4Bは、ホッパ2内の舗装材PMの量が減ってきたときの状態を示している。具体的には、図4Bは、ホッパ2の中央部MPにある舗装材PMがコンベアCVによってトラクタ1の後側に搬送され、ホッパ2の中央部MPにおける舗装材PMの高さが高さH1となったときの状態を示している。すなわち、図4Bは、ホッパ2の中央部MPにおける舗装材PMの高さH1が所定の高さHtよりも小さいことを示している。図4Bに示す例では、所定の高さHtは、トラクタ1の前面1FWに形成されている搬送通路CPの入口OPの高さに対応している。一方で、図4Bは、ホッパ2内の左端部及び右端部のそれぞれにおける舗装材PMの高さが高さH2であり、依然として所定の高さHtよりも大きいことを示している。
【0066】
図4Bに示す状態において、空間認識部50Aは、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づいてホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さH1が所定の高さHtより小さいと判定できる。
【0067】
空間認識部50Aがホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さH1が所定の高さHtより小さいと判定した場合、ホッパ制御部50Bは、ホッパ制御装置53に向けて閉指令を送信する。閉指令を受信したホッパ制御装置53は、ホッパシリンダ24のボトム側油室に作動油を流入させることによってホッパシリンダ24を伸張させてホッパ2を閉じる。
【0068】
図4C及び図4Dは、ホッパ2が閉じられたときのホッパ2内の舗装材PMの状態を示している。具体的には、図4Cは、左ホッパウイング2WL及び右ホッパウイング2WRのそれぞれが半分ほど閉じられたとき(ホッパ角度が角度α1となったとき)の状態を示し、図4Dは、左ホッパウイング2WL及び右ホッパウイング2WRのそれぞれが完全に閉じられたとき(ホッパ角度が角度α2となったとき)の状態を示している。なお、図4A及び図4Bは、左ホッパウイング2WL及び右ホッパウイング2WRのそれぞれが完全に開かれているとき(ホッパ角度がゼロのとき)の状態を示している。ホッパ角度は、例えば、ホッパ2の底面と所定の仮想平面との間に形成される角度である。所定の仮想平面は、例えば、アスファルトフィニッシャ100が位置する仮想平面であり、典型的には、仮想水平面である。
【0069】
図4Eは、ホッパ2内の左端部及び右端部のそれぞれに舗装材PMが残されたままの状態で、中央部MPにおいて舗装材PMが無くなってしまったときの様子を示している。具体的には、図4Eは、図4Bに示す状態の後、ホッパ2が完全に開かれた状態がそのまま維持されたときにもたらされるホッパ2内の舗装材PMの状態を示している。
【0070】
ホッパ制御部50Bは、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さが所定の高さHt以下になったときに、ホッパ2を自動的に閉じることにより、ホッパ2内の左端部及び右端部のそれぞれにおける舗装材PMを中央部MPに集めることができる。そのため、ホッパ制御部50Bは、図4Eに示すような、ホッパ2内の左端部及び右端部のそれぞれに舗装材PMが残されたままの状態で、中央部MPにおいて舗装材PMが無くなってしまうという状況が発生してしまうのを防止できる。その結果、ホッパ制御部50Bは、スクリード3に供給される舗装材PMの不足により、新設される道路に凹部が形成されてしまうのを防止できる。
【0071】
上述の通り、アスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、トラクタ1の前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパ2と、ホッパ2内の舗装材をトラクタ1の後側へ搬送するコンベアCVと、コンベアCVにより搬送された舗装材をトラクタ1の後側で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材をスクリュSCの後側で敷き均すスクリード3とを備えている。そして、アスファルトフィニッシャ100は、ホッパ2内の状態を監視する空間認識装置CMと、空間認識装置CMの出力に基づいてホッパ2を動かすコントローラ50とを更に備えている。
【0072】
この構成により、アスファルトフィニッシャ100は、ホッパ2内の舗装材PMの量が減ってきたときにホッパ2を確実に動かすことができる。そのため、アスファルトフィニッシャ100は、ホッパ2内の端部に舗装材PMが十分に残されたままであるにもかかわらず、スクリード3に供給される舗装材PMが不足してしまうといった状況が発生してしまうのを確実に防止できる。
【0073】
コントローラ50は、望ましくは、ホッパ2内の舗装材PMの量が所定量より少ないと判定した場合にホッパ2を閉じるように構成されている。例えば、コントローラ50は、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材PMの高さが所定の高さHtより小さいと判定した場合に、ホッパ2内の舗装材PMの量が所定量より少ないと判定し、ホッパ2を自動的に閉じるように構成されていてもよい。そして、ホッパ2を自動的に閉じる場合には、コントローラ50は、その旨を周囲に知らせるように構成されていてもよい。
【0074】
或いは、コントローラ50は、ホッパ2内の舗装材PMが所定量より多い状態からその所定量より少ない状態に遷移したと判定した場合にホッパ2を閉じるように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材PMの高さが所定の高さHtより大きい状態から所定の高さHtより小さい状態に遷移したと判定した場合に、ホッパ2内の舗装材PMが所定量より多い状態からその所定量より少ない状態に遷移したと判定し、ホッパ2を閉じるように構成されていてもよい。そして、ホッパ2を閉じる場合には、コントローラ50は、その旨を周囲に知らせるように構成されていてもよい。
【0075】
これらの構成により、アスファルトフィニッシャ100は、ホッパ2内の舗装材PMの量が所定量より少ない場合に、ホッパ2を確実に閉じることができる。また、アスファルトフィニッシャ100は、出力装置55を利用することによって、ホッパ2の閉じ動作が行われること、或いは、ホッパ2の閉じ操作が行われていることをアスファルトフィニッシャ100の周囲で作業している作業者に知らせることができる。
【0076】
コントローラ50は、ホッパ2を動かす前に、或いは、ホッパ2を動かしているときに、ホッパ2内における進入物の存否を判定するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に所定の画像処理を施すことによって、ホッパ2内に作業者が入り込んでいるか否か、或いは、ホッパ2内にレーキ若しくはスコップ等の道具が入っているか否か等を判定するように構成されていてもよい。そして、コントローラ50は、ホッパ2内に作業者、レーキ、又はスコップ等の進入物が存在すると判定している場合には、ホッパ2内の舗装材PMの量が所定量より少ないと判定した場合であっても、ホッパ2を閉じないようにしてもよい。ホッパウイング2Wと進入物とが接触してしまうのを防止するため、或いは、ホッパ2内の舗装材PMによって進入物が埋まってしまうのを防止するためである。
【0077】
また、上述の実施形態では、油圧モータが用いられているが、油圧モータではなく電気モータが用いられてもよい。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0079】
例えば、上述の実施形態では、コントローラ50は、所定の条件が満たされた場合に、ホッパ2を閉じるように構成されている。そして、コントローラ50は、典型的には、ホッパ2が完全に閉じたときに、ホッパシリンダ24の伸張を停止させるように構成されている。しかしながら、コントローラ50は、ホッパ2が完全に閉じたとき、或いは、ホッパ2が完全に閉じようとしているときに、所定時間にわたってホッパシリンダ24を伸縮させてもよい。すなわち、コントローラ50は、ホッパ2を振動させてもよい。ホッパウイング2Wの内壁又は底面にこびり付いた舗装材PMを振るい落とすためである。
【0080】
また、コントローラ50は、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材PMの高さが所望の高さとなるように、空間認識部50Aが導き出した舗装材PMの高さに基づいてホッパ角度をフィードバック制御するように構成されていてもよい。
【0081】
或いは、コントローラ50は、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像に基づき、ホッパ2を閉じる前のホッパ2内の舗装材PMの状態を認識してもよい。そして、コントローラ50は、その認識結果に基づき、ホッパ2を閉じたときのホッパ2内の舗装材PMの状態を推定してもよい。ホッパ2内の舗装材PMの状態は、例えば、舗装材PMの安息角β(図4B参照。)等に基づいて推定される。安息角βは、典型的には、舗装材PMの種類に応じて予め設定されている。この場合、コントローラ50は、推定結果に基づいて目標ホッパ角度を決定してもよい。すなわち、コントローラ50は、どの程度ホッパ2を閉じればよいのかを決定してもよい。
【0082】
また、コントローラ50は、制御条件を学習した学習済みモデルを用いて様々な判定を行ってもよい。例えば、コントローラ50の空間認識部50Aは、ホッパ2の制御条件を学習した学習済みモデルを用い、様々な判定を行ってもよい。様々な判定は、例えば、ホッパ2内の舗装材の量が所定量より多いか少ないかの判定、アスファルトフィニッシャ100の前方におけるダンプトラック200の存否の判定、ダンプトラック200がアスファルトフィニッシャ100から遠ざかっているか否かの判定、ホッパ2内における進入物の存否の判定、ホッパ2内の中央部MPにおける舗装材の高さが所定の高さより大きいか否かの判定、又は、ホッパ2内の舗装材が無くなったか否かの判定等である。
【0083】
具体的には、空間認識部50Aは、不揮発性記憶装置に格納された学習済みモデルを用い、空間認識装置CMとしての単眼カメラが撮像した画像である入力画像に基づいて様々な判定を行う。具体的には、空間認識部50Aは、不揮発性記憶装置から学習済みモデルをRAM等の主記憶装置にロードし、その学習済みモデルに基づく処理をCPUに実行させることにより、入力画像に基づいて様々な判定を行う。
【0084】
例えば、図5に示すように、学習済みモデルは、ニューラルネットワーク(Neural Network)401を中心に構成されていてもよい。この例では、ニューラルネットワーク401は、入力層及び出力層の間に一層以上の中間層(隠れ層)を有する、いわゆるディープニューラルネットワークである。図5の例では、中間層の数はN個(Nは2以上の自然数)である。ニューラルネットワーク401では、それぞれの中間層を構成する複数のニューロンごとに、下位層との間の接続強度を表す重みづけパラメータが規定されている。図5の例では、ニューロンの数はL個(Lは2以上の自然数)である。そして、各層のニューロンが、上位層の複数のニューロンからの入力値のそれぞれに上位層のニューロンごとに規定される重み付けパラメータを乗じた値の総和を、閾値関数を通じて、下位層のニューロンに出力する態様で、ニューラルネットワーク401が構成される。
【0085】
ニューラルネットワーク401を対象とし、機械学習、具体的には、深層学習(ディープラーニング:Deep Learning)が行われ、上述の重み付けパラメータの最適化が図られる。これにより、例えば、図5に示すように、ニューラルネットワーク401は、入力信号xとして、入力画像が入力され、出力信号yとして、予め規定される監視対象リスト(本例では、物体の種類ごとの物体が存在する確率(予測確率))と、それらの位置関係等に基づくシーン(状況)とを出力することができる。ニューラルネットワーク401は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)である。CNNは、既存の画像処理技術(畳み込み処理及びプーリング処理)を適用したニューラルネットワークである。具体的には、CNNは、入力画像に対する畳み込み処理及びプーリング処理の組み合わせを繰り返すことにより入力画像よりもサイズの小さい特徴量データ(特徴マップ)を取り出す。そして、取り出した特徴マップの各画素の画素値が複数の全結合層により構成されるニューラルネットワークに入力され、ニューラルネットワークの出力層は、例えば、ホッパ2内の舗装材の状態を表す値を出力することができる。
【0086】
このように、ニューラルネットワーク401は、入力信号xとして入力画像が入力され、入力画像における物体の位置及び大きさ(つまり、入力画像上の物体の占有領域)及びその物体の種類を出力信号y(例えば、ホッパ2内の舗装材の状態を表す値)として出力可能な構成であってもよい。つまり、ニューラルネットワーク401は、入力画像上の物体の検出(入力画像における物体の占有領域の有無の判定)と、その物体の分類とを行う構成であってもよい。また、この場合、出力信号yは、入力信号xとしての入力画像に対して物体の占有領域及びその分類に関する情報が重畳的に付加された画像データ形式で構成されていてもよい。これにより、空間認識部50Aは、入力画像の中の物体の占有領域の位置及び大きさ等に基づき、例えば、ホッパ2内の舗装材の状態を特定することができる。
【0087】
上述の実施形態では、空間認識装置CMとしての単眼カメラは、トラクタ1の前端の上端部に固定され、撮像範囲(画角)が予め規定(固定)されている。そして、空間認識部50Aは、学習済みモデルにより検出された物体(ホッパ2内の舗装材)の位置が監視領域内であり、且つ、監視対象リストの物体に分類されている場合、監視領域内で、監視対象の物体が検出されたと判定できる。なお、ニューラルネットワーク401は、入力画像の中の物体が存在する占有領域(ウィンドウ)を抽出する処理、及び、抽出された領域の物体の種類を特定する処理のそれぞれに相当するニューラルネットワークを有する構成であってよい。つまり、ニューラルネットワーク401は、物体の検出と、物体の分類とを段階的に行う構成であってよい。また、ニューラルネットワーク401は、入力画像の全領域が所定数の部分領域に区分されたグリッドセルごとに物体の分類と物体の占有領域(バウンディングボックス:Bounding box)を規定する処理と、グリッドセルごとの物体の分類に基づき、種類ごとの物体の占有領域を結合し、最終的な物体の占有領域を確定させる処理とのそれぞれに対応するニューラルネットワークを有する構成であってもよい。つまり、ニューラルネットワーク401は、物体の検出と、物体の分類とを並列的に行う構成であってもよい。
【0088】
また、コントローラ50は、ホッパ2の開閉状態に関連付けられる制御条件を学習するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、空間認識装置CMにより取得されたホッパ2内の舗装材の撮像画像等と不揮発性記憶装置に予め記憶されている判定データとしての「ホッパ2の好ましい開閉状態」を表す参照情報との組み合わせに基づいて作成されるデータセットに従って、ホッパ2内の舗装材の状態とホッパ2の開閉状態との関係性(ホッパ制御条件)を学習するように構成されていてもよい。この学習工程は、アスファルトフィニッシャ100と無線通信を介して接続された管理装置(機械学習装置)において実行されてもよい。この場合、管理装置(機械学習装置)において作成された学習済みモデルは、アスファルトフィニッシャ100へ送信される。ホッパ制御部50Bは、受信した学習済みモデルを用いて、現在のホッパ2内の舗装材の状態に対応したホッパ2の好ましい開閉状態を求め、その好ましい開閉状態になるようにホッパ2を制御してもよい。
【0089】
本願は、2020年3月27日に出願した日本国特許出願2020-059058号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0090】
1・・・トラクタ 1BF・・・ベース部 1FW・・・前面 2・・・ホッパ 2b・・・プッシュローラ 2W・・・ホッパウイング 3・・・スクリード 3A・・・レベリングアーム 5・・・後輪 6・・・前輪 23・・・レベリングシリンダ 24・・・ホッパシリンダ 25・・・スクリードリフトシリンダ 30・・・メインスクリード 31・・・伸縮スクリード 40・・・サイドプレート 41・・・伸縮モールドボード 42・・・スクリードステップ 43・・・リテーニングプレート 45・・・スクリュ回転速度センサ 46・・・コンベア送り速度センサ 47・・・走行速度センサ 48・・・補助記憶装置 50・・・コントローラ 50A・・・空間認識部 50B・・・ホッパ制御部 51・・・スクリュ制御装置 52・・・コンベア制御装置 53・・・ホッパ制御装置 54・・・走行制御装置 55・・・出力装置 55A・・・メインモニタ 55B・・・音出力装置 55C・・・インジケータ 60・・・伸縮シリンダ 100・・・アスファルトフィニッシャ 200・・・ダンプトラック 200b・・・荷台 CM・・・空間認識装置 CP・・・搬送通路 CV・・・コンベア MP・・・中央部 OP・・・入口 PM・・・舗装材 SC・・・スクリュ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5