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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
D21F3/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023014946
(22)【出願日】2023-02-03
(65)【公開番号】P2023114451
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】22155154.2
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴェサ‐マッティ リーヒオヤ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001948(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015217941(DE,A1)
【文献】特表2022-501528(JP,A)
【文献】特開2021-183751(JP,A)
【文献】特表2006-512499(JP,A)
【文献】特表2007-530800(JP,A)
【文献】特開2004-084125(JP,A)
【文献】特開2004-052204(JP,A)
【文献】特開平11-021781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトを製造する方法であり、ベルトは、本体と補強構造とを含み、ベルトは、内面と外面とを有する、ベルトを製造する方法であって、
キャストシリンダへの噴霧を行うことにより、固体潤滑剤を含むコーティングを、前記キャストシリンダに施すステップと、
前記固体潤滑剤を含む前記コーティングを乾燥させることにより、固体潤滑剤粒子を前記キャストシリンダの上に得るステップと、
前記本体を前記固体潤滑剤粒子の上に形成するために、本体材料を前記キャストシリンダの上にキャストするステップと、
前記補強構造をベルトに設けるステップとを備え、
これにより、前記固体潤滑剤粒子がベルトの前記内面の少なくとも一部を形成するベルトを得て、
前記コーティングを施すステップの前に、離型剤が前記キャストシリンダに付与され、
前記コーティングを施すステップの間に、前記キャストシリンダは回転し、前記キャストシリンダの回転速度が制御され
噴霧を行うことと前記回転速度の制御とにより、前記固体潤滑剤粒子の少なくとも90%が、前記ベルトの前記内面から深さ方向に判定して、50μm以下の深さまで配置されるように構成される、ベルトを製造する方法。
【請求項2】
前記固体潤滑剤粒子は、その外面の少なくとも一部を覆うバインダを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記固体潤滑剤粒子は、以下のもの、即ち、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、
二硫化モリブデン(MoS)と、
黒鉛と
のうち少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記固体潤滑剤粒子の硬度は、前記本体材料の硬度よりも大きい、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体潤滑剤粒子は、各固体潤滑剤粒子の最大直径として測定して、2μmないし30μmの平均直径を有する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくともいくつかの隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおいている、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体潤滑剤粒子は、前記ベルトの前記内面の面積の少なくとも10%を形成する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記固体潤滑剤粒子は、前記本体材料とともに前記ベルトの前記内面を形成し、前記内面は、前記固体潤滑剤粒子と前記本体材料とを有する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベルトは、スリーブロールベルトである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ベルトは、シュープレスベルトである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトを製造する構成であり、ベルトは補強構造と本体とを含み、ベルトは内面と外面とを有する、ベルトを製造する構成であって、
回転可能なキャストシリンダと、
前記キャストシリンダの軸に平行な方向に沿って可動に配置され、前記キャストシリンダへの噴霧を行うことにより、前記キャストシリンダに固体潤滑剤コーティングを施す可動なアプリケータと、
前記外面に前記固体潤滑剤コーティングを有する前記キャストシリンダに、本体材料をキャストするキャストユニットと、
ベルトの前記補強構造を形成するユニットとを備え、
前記固体潤滑剤コーティングを施す前に、離型剤が前記キャストシリンダに付与され、
前記アプリケータが作動する間に、前記キャストシリンダを回転させ、前記キャストシリンダの回転速度を制御する制御ユニットを備え
噴霧を行うことと前記回転速度の制御とにより、前記固体潤滑剤コーティングでの固体潤滑剤粒子の少なくとも90%が、前記ベルトの前記内面から深さ方向に判定して、50μm以下の深さまで配置されるように構成される、ベルトを製造する構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトを製造する方法に関する。本発明は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトを製造する構成に関する。さらに本発明は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機は、ボード、パルプ、及びティッシュのマシンと同様に、通常、形成区間、プレス区間、及び乾燥区間を含む。紙、パルプ、及びボード製造では、生産効率を向上させるために、湿潤な繊維ウェブからの脱水量を、いかに増加させるかが課題である。
【0003】
現在では、これらのマシンには通常、繊維ウェブから水分を除去するためのフェルトとワイヤとが付いている。例えば、形成区間では、少なくとも1本の形成ワイヤを介して、プレス区間では、例えばフェルトを使用して、水分を除去することができる。
【0004】
スリーブロールは、例えば形成区間の中で、湿潤な繊維ウェブからの脱水を向上させるために使用することができる。シュープレスは、例えばプレス区間の中で、その中での脱水を向上させるために使用することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトに関する。本発明の1つの目的は、改良されたベルトを提供することである。
【0006】
本発明の態様は、独立の請求項に記載されたものにより、特徴づけられる。本発明の様々な実施形態は、従属の請求項に開示される。
【0007】
紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンは、スリーブロールを備えてよい。典型的には、スリーブロールは、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのワイヤ区間に配置されている。ワイヤ区間での水分除去は、スリーブロールにより、向上させることができる。
【0008】
これに代えて、又はこれに加えて、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンは、1つ、又は1つ以上のシュープレスを備えてよい。典型的には、シュープレスは、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのプレス区間に配置されている。プレス区間での水分除去は、シュープレスにより、向上させることができる。
【0009】
従って、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンは、少なくとも1つのスリーブロール及び/又は少なくとも1つのシュープレスを備えてよい。ベルトは、スリーブロールベルト又はシュープレスベルトであってよい。ベルトは、不透過性ベルトであってよい。
【0010】
ベルトは、内面と外面とを有してよい。ベルトは、本体を含んでよい。さらに本体は、補強構造を含んでよく、これは、例えば、本体に埋め込まれてよい。ベルトは、閉ループを形成してよい。
【0011】
ベルトの内面は、固体潤滑剤を有するコーティングを含んでよい。固体潤滑剤は、ベルトと、シュープレス又はスリーブロールの外面との間の摩擦を下げる摩擦調整剤であってよい。
【0012】
従って、ベルトは、
・補強構造と、
・本体材料を含む本体とを備え、
・ベルトは、内面と外面とを備え、
・ベルトの内面は、固体潤滑剤粒子を有し、
・ベルトの内面の粗さの値は、規格ISO4287:1997に従って判定すると、0.20μmないし6μmの範囲にあり、
・好ましくは、ベルトの外面は、固体潤滑剤粒子を有さなくてよい。
【0013】
ベルトを製造する方法は、
・固体潤滑剤を含むコーティングを、キャストシリンダに施すステップと、
・固体潤滑剤を含むコーティングを乾燥させることにより、固体潤滑剤粒子をキャストシリンダの上に得るステップと、
・本体を固体潤滑剤粒子の上に形成するために、本体材料をキャストシリンダの上にキャスト(成膜、流延)するステップと、
・補強構造をベルトに設けるステップとを備え、
これにより、固体潤滑剤粒子がベルトの内面の少なくとも一部を形成するベルトを得てよい
【0014】
固体潤滑剤粒子は、本体材料とともにベルトの内面を形成してよく、内面は、固体潤滑剤粒子と本体材料とを有する。摩擦を減少させるために、固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の面積の少なくとも10%を覆ってよい。
【0015】
ベルトの内面の粗さの値は、交差方向に判定すると、規格ISO4287:1997に従って、0.20μmないし6μmの範囲にあり、好ましくは0.40μmないし3μmの範囲にあってよい。この粗さの値は、ベルトの他の特性に過度に影響することなく、ベルトの内面の摩擦が減少するために使用されることができる。
【0016】
ベルトの内面の粗さの値は、機械方向に判定すると、規格ISO4287:1997に従って、0.20μmないし6μmの範囲にあり、好ましくは0.40μmないし3μmの範囲にあってよい。この粗さの値は、ベルトの他の特性に過度に影響することなく、ベルトの内面の摩擦が減少するために使用されることができる。また、好ましくは、ベルトの内面の粗さの値は、ベルトの交差方向と機械方向とで類似している。
【0017】
固体潤滑剤粒子は、以下のもの、即ち、
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、
・二硫化モリブデン(MoS)と、
・黒鉛と
のうち少なくとも1つを含んでよい。
【0018】
これらは、摩擦を減少させるために、特に効率的で費用対効果の高い材料であることができる。
【0019】
固体潤滑剤粒子の硬度は、本体材料の硬度よりも大きくてよい。固体潤滑剤粒子の硬度は、本体材料の硬度よりも、例えば、少なくとも10%、さらに好ましくは、少なくとも20%、大きくてよい。これにより、ベルトの内面の摩擦を減少させることができる。
【0020】
固体潤滑剤粒子の全て又は少なくとも90%は、ベルトの内面から深さ方向に判定して、50μm以下の深さまで配置されてよい。固体潤滑剤粒子の全て又は実質的に全てがベルトの内面にある場合に、摩擦をコスト効率的に減少させることができる。
【0021】
固体潤滑剤粒子は、各固体潤滑剤粒子の最大直径として測定して、2μmないし30μmの平均直径を有してよい。この種類の固体潤滑剤粒子は、ベルトの他の特性に過度に影響することなく、ベルトの内面の摩擦が減少するために使用されることができる。さらに、全て、又は実質的に全ての固体潤滑剤粒子は、各固体潤滑剤粒子の最大直径として測定して、2μmないし30μmの平均直径を有してよい。
【0022】
少なくともいくつかの隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおいてよい。例えば、固体潤滑剤粒子の少なくとも30%は、隣接する2つの固体潤滑剤粒子間の距離が、この固体潤滑剤粒子の最大直径よりも大きくなるように、互いにスペースをおいてよい。隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおいて配置した場合に、油潤滑剤のためのスペースを形成することができる。これにより、油潤滑剤膜が破損した場合に、摩擦をさらに減少させることができる。
【0023】
バインダが、固体潤滑剤粒子の外面の少なくとも一部を覆ってよい。バインダは、例えば、固体潤滑剤粒子を本体材料と接合するために、固体潤滑剤粒子の外面の少なくとも20%を覆ってよい。固体潤滑剤粒子が、本体材料、例えば、ポリウレタンマトリックスと結合を形成するバインダを有すると、ベルトの内面の摩擦レベルが、従来よりもさらに制御可能になる可能性がある。
【0024】
従って、実施形態では、固体潤滑剤粒子の少なくともいくつかの外面は、バインダを含む。
【0025】
バインダは、有機バインダであってよい。バインダは、例えば接着剤であってよく、少なくともいくつかの固体潤滑剤粒子を、本体材料と接合するために、使用されてよい。
【0026】
ベルトを製造する構成は、
・回転可能なキャストシリンダと、
・キャストシリンダの軸に平行な方向に沿って可動に配置され、キャストシリンダに固体潤滑剤コーティングを施す可動なアプリケータと、
・外面に固体潤滑剤コーティングを有するキャストシリンダに、本体材料をキャストするキャストユニットと、
・ベルトの補強構造を形成するユニットとを備えてよい。
【0027】
例えば、可動アプリケータとともに回転可能キャストシリンダを備えている構成により、得られたベルトの特性を向上させることができる。
【0028】
固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の粗さを増加させるために使用することができる。これは、ベルトの内面の摩擦特性に効果を発揮することができる。隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおくことができ、油潤滑剤のためのスペースを形成する。これにより、油潤滑剤膜が破損した場合に、摩擦をさらに減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下では、本発明は、下記の図面に図示される。
【0030】
図1a】シュープレスの例を示す。
図1b】スリーブロールの例を示す。
図2a】ベルトの例を示す。
図2b】ベルトの例を示す。
図3】ベルトを製造する構成の例を示す。
図4】ベルトのいくつかの例示的な構造を示す。
図5】ベルトのいくつかの例示的な構造を示す。
図6】ベルトのいくつかの例示的な構造を示す。
図7】ベルトのいくつかの例示的な構造を示す。
図8a】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
図8b】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
図9a】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
図9b】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
図10a】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
図10b】実験的なテストで得られた顕微鏡画像を示す。
【0031】
図は、縮尺通りでない場合がある例示である。同様の部分を同じ参照番号で図中に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[用語]
本出願では、「進行方向(機械方向)」MD及び「交差方向」CDという用語が使用されている。進行方向MDは、使用中のベルトの回転方向を指す。交差方向CDは、縦方向を指し、典型的にはベルト5の移動方向MDに対して交差して延びる。使用時には、交差方向はベルトの回転軸に平行である。
【0033】
本出願では、「実質的に平行」という用語は、ある方向が前述の実質的に平行な方向から、10度を超えて、最も好ましくは3度を超えて逸脱しないことを意味する。従って、例えば「進行方向に実質的に平行」とは、本出願では、ある方向が前述の進行方向から、10度を超えて、好ましくは3度を超えて逸脱しないことを意味する。
【0034】
ベルトの「厚み」という用語は、ベルトの深さ方向を指して使用される。
【0035】
「ベルト」という用語は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのスリーブロール及び/又はシュープレスに適したベルトを指す。従って、ベルトはシュープレスベルトであってよく、又はスリーブロールベルトであってよい。
【0036】
「固体潤滑剤」という用語は、固相の場合に、互いにスライドする2つの表面の間の摩擦を減少させることができる材料を意味する。
【0037】
「固体潤滑剤粒子」という用語は、粒子を形成する少量の固体潤滑剤を有する可能性のある、小さな局在化された物体を意味してよい。粒子は、例えば1ないし100μmの範囲で、最大直径d1を有してよい。
【0038】
[紙、ボード、パルプ、ティッシュのマシン]
通常、紙、ボード、パルプ、ティッシュのマシンでは、プロセスラインに連続して配置されたいくつかの装置によって形成されたアセンブリで、繊維ウェブが生産及び処理される。
【0039】
典型的な生産ラインは、ヘッドボックスとワイヤとを有する形成区間と、フェルトを有するプレス区間と、乾燥区間と、最後にリールアップとを含む。さらに、生産ラインは、典型的には、例えば、顧客ロールを形成するための少なくとも1つのワインダを含む。
【0040】
形成区間では、ヘッドボックスを使用して繊維ウェブを形成する。さらに、少なくとも1つの抄紙機ファブリック、つまり少なくとも1つの形成ワイヤを介して、一部の水が除去できる。水分除去率は、ベルトを含むスリーブロールを使用することで、向上させることができる。
【0041】
プレス区間で、形成区間の後に残った水の一部は、少なくとも1枚の抄紙機ファブリック、即ちフェルトを使用することで除去することができる。水分除去率は、ベルトを構成するシュープレス1を使用することで、向上させることができる。
【0042】
[シュープレス]
シュープレス1は、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンで使用してよい。図1aは、シュープレス1の中のベルト5の配置例の縮小図を示す。
【0043】
ベルト5を備えているシュープレス1は、繊維ウェブ8の脱水に使用することができる。シュープレス1は、通常、カウンターロール3とプレスシュー2とから構成され、それらの間にプレスゾーン4が形成される。これにより、延長プレスゾーン、即ちいわゆる長ニップが、プレスシュー2とカウンターロール3との間に形成される。シュープレス1の機能は、通常、繊維ウェブ8から水分を除去することである。
【0044】
シュープレスベルト5と、少なくとも1つの抄紙機ファブリック6,7、好ましくは、2つの抄紙機ファブリック6,7と、脱水されるべき繊維ウェブ8とは、プレスゾーン4を進行方向(MD)に通るように配列される。このようにして、前述の繊維ウェブ8は、フェルトなどの少なくとも1つの抄紙機ファブリック6,7によって支えられている。
【0045】
シュープレスベルト5は、外面11が繊維ウェブ8に面し、内面10がプレスシュー2に面するように、シュープレス1と接続して配置されているか、又は配置可能である。通常、湿潤な繊維ウェブ8の一方の表面は、回転するカウンターロール3によって圧縮される。また、繊維ウェブ8の他方の表面は、可撓性のある本体とループの形状とを有する、シュープレスベルト5で囲まれたプレスシュー2によって圧縮される。
【0046】
動作中、シュープレスベルト5は通常、少なくとも1つのカウンターロール3とプレスシュー2との間のプレスゾーン4を通っている。有利には、抄紙機ファブリック6、好ましくはプレスフェルトが、シュープレスベルト5に対して取り付けられている、又は取り付けられるように構成されている。プレスフェルト又は対応する抄紙機ファブリック6,7の上に、繊維ウェブ8がシュープレス1を介して搬送され、シュープレスベルト5の外面11が抄紙機ファブリック6、好ましくはプレスフェルトに、直接接触し、シュープレスベルト5の内面10がプレスシュー2のスライド面に対してスライドする。
【0047】
通常、シュープレスベルト5、少なくとも1つの抄紙機ファブリック6,7、及び脱水される繊維ウェブ8の全てが、プレスシュー2とカウンターロール3との間のニップの中を走り、圧縮されるように、プレスシュー2とカウンターロール3とは、プレスゾーン内で互いに押しつけられる。例えば、プレスフェルトは通常、プレスゾーン内で圧縮され、圧縮後に実質的に初期の厚みに復帰するように構成されている。
【0048】
[スリーブロール]
図1bにスリーブロールの例を示す。ベルト5を装着したスリーブロール100は、ワイヤ9の上で繊維ウェブ8の脱水に使用されてよい。
【0049】
スリーブロール100は、その中の水分除去を向上させるために形成区間に配置してよい。スリーブロール100は、例えば、底層ワイヤループの中に配置してよい。ベルト5は、スリーブロール100上に配置してよく、スリーブロール100は、例えば、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのワイヤ区間に配置してよい。一実施形態では、スリーブロールは、例えば、スリーブロールとツインワイヤ形成部の反対側のワイヤとの間で、スリーブロールニップ内の多重繊維ウェブの層を接合するために使用される。
【0050】
スリーブロール100は、支持軸102を含んでよい。ベルト5は、通常、スリーブロール100の外面の周りに配置される。これにより、ベルト5は、支持軸102の周りを囲むように、導かれてよい。
【0051】
ベルト5は、外面11が繊維ウェブ8に面し、内面10がスリーブロール100に面するように、スリーブロール100と接続して配置してよい。これにより、スリーブロール100をループ状のベルト5で囲むことができる。
【0052】
さらに、スリーブロール100は、距離をおいて互いに離れて支持軸102に位置する支持要素を構成してよい。ベルト5は、スリーブロールの外面を囲むことができ、支持要素で支持されることができる。
【0053】
スリーブロール100はさらに、カーブ要素110を含んでよい。動作中、ベルトは通常、カーブ要素の上の脱水ゾーンを走行する。カーブ要素110は、増加した力を生じさせてよく、力は、カーブ要素110上のベルトを引き伸ばす。カーブ要素110は可動である。即ち、カーブ要素110の表面上のベルトの曲率半径は、スリーブロールの中心に向かって、又はスリーブロールの外面から外側に向かってカーブ要素110を移動させることによって、制御可能である。従って、ベルト5の伸縮は、通常の速度から非常に高い速度まで変化可能である。
【0054】
ベルトの周長は、可動なカーブ要素110により、ベルトの稼働時間中に増加及び減少してよい。そのため、ベルトは、スリーブロールのカーブ要素110による伸張に対応できるように、弾性が高くてよい。また、ベルトは、容易に破損しないように、良好な強度特性を有してよい。
【0055】
前述のように、ベルト5は、固定支持軸102の周りを囲むように導かれてよい。さらに、ワイヤ9は、曲線状脱水ゾーンC1,C2を介して導かれてよく、曲線状脱水ゾーンは、ベルト5で支持されてよい。
【0056】
スリーブロール100は、典型的には少なくとも2つの部分曲線C1,C2を含む少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1,C2を含んでよい。そのため、第1部分曲線C1の曲率半径は、ベルトの進行方向MDでの第1部分曲線に続く第2部分曲線C2の曲率半径よりも大きくてよい。これにより、繊維ウェブからの水分除去を向上させることができる。
【0057】
曲線状脱水ゾーンC1,C2は、スリーブロール100のカーブ要素110によって形成してよい。カーブ要素110の曲率の程度は、例えばカーブ要素110上の少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1,C2上のワイヤ間を走行する繊維ウェブ8に増加する脱水圧力が加えられるように、ベルト5の進行方向に増加してよい。カーブ要素110上の曲線状脱水ゾーンC1,C2は、いくつかの曲線を含んでよく、これにより、好ましくは、曲線の半径がワイヤの走行方向に減少する。これにより、繊維ウェブからの水分除去を向上させることができる。
【0058】
スリーブロール100は、ベルト5の内面10とスリーブロール100の外面との間に油潤滑剤を含んでよい。従って、スリーブロールは、例えば、潤滑ポンプを含んでよく、これを使用して、前述のベルト5とスリーブロールの外面との間の隙間に、油潤滑剤をポンプ注入してよい。
【0059】
カーブ要素110は、2つ、又は2つ以上の位置の間で移動してよい。従って、カーブ要素110は、カーブ要素110上のベルト5の曲率半径を制御するために使用してよい。
【0060】
カーブ要素110の第1位置は、カーブ要素の上の第1表面を形成してよい。第1表面は、カーブ要素の近くの表面と同じ曲率半径を有してよい。
【0061】
カーブ要素110の第2位置では、カーブ要素の外面は、外側へ移動されてよい。従って、カーブ要素110の第2位置は、カーブ要素の上に第2表面を形成してよい。第2表面は、カーブ要素の近くの表面と比較した場合に、曲率半径が減少してよい。
【0062】
カーブ要素110の第2位置では、カーブ要素110のためにベルト5は伸張する必要があることが可能である。さらに、カーブ要素100が可動である場合に、逆にカーブ要素を第1位置に移動させるときに、ベルト5を元の形状に復帰させる必要があることが可能である。従って、ベルト5には、適切な強度特性だけでなく、良好な弾性を持たせる必要があることが可能である。
【0063】
前述のように、ベルト5はスリーブロール100の周りを走行するように配置してよい。ベルト5の内面10は、スリーブロール100の外面に対してスライドしてよい。処理される繊維ウェブ8は、ベルト5に導かれてよく、通常はワイヤ9などの1つ、又は1つ以上のファブリックで支持される。
【0064】
[ベルト]
ベルトは、内面10と外面11とを有してよい。ベルトは、補強構造31,32を備えてよい。ベルトは、閉ループを形成してよい。即ち、ベルト5は、エンドレスループのような形状であってよい。
【0065】
ベルト5は、長さ、周長、及び厚みを有してよい。厚みは、最小寸法である。周長と長さとは、ベルトをスリーブロール100又はシュープレス1に適合させるために選択してよい。ベルト5の周長は、稼働時にベルト5の内径が目的に適したものとなるように決定されている。
【0066】
ベルト5は、不透過性ベルトであってよい。ベルト5は、本体材料21からなる本体14を有する。本体材料は、ベルトの外面11、又はベルトの外面の少なくとも一部を形成してよい。本体材料21は、ベルトの内面10の一部を形成してよい。
【0067】
本出願では、「弾性」という用語は、力が取り除かれたときにベルトが元の形状に復帰する能力を指す。弾性率(%)は、ベルトがどれだけ弾性的に伸張できるかを示す値である。
【0068】
ベルトを伸張する力が取り除かれた後に元の長さに復帰するように、ベルトは、ベルトの進行方向に1.5%以上弾性的に伸張するように構成されてよい。一実施形態では、ベルトを伸張する力が取り除かれた後に元の長さに復帰するように、ベルトは、ベルトの進行方向に1.5%ないし5.0%、さらに好ましくは2.0%ないし4.0%の範囲で弾性的に伸張するように構成されてよい。従って、少なくともベルトの進行方向で、ベルトは、良好な伸縮性と弾性とを有してよい。そのため、ベルトは容易には損傷しないことが可能である。ベルト5はさらに、曲げ可能であってよい。つまり、ベルトは、少なくとも所定の曲率半径まで、破損せずに曲げることができる。
【0069】
ベルトの交差方向の長さは、マシンの幅に応じて決定される。例えば1.5mないし12.6mの範囲にあってよい。
【0070】
ベルト5の周長、即ち1回転の長さは、稼働時にベルト5の内径が使用に適したものになるように決定されている。スリーブロールベルトとシュープレスベルトとの周長は、異なってよい。ベルトの内径は、0.7mないし3mの範囲にあってよい。一実施形態では、ベルト5の内径は、0.7mないし2.5m、さらに好ましくは1.0mないし1.9m、最も好ましくは1.09mないし1.82mである。
【0071】
一実施形態では、ベルト5の周長は、少なくとも2.2mであり、さらに有利には、少なくとも3.0mであり、好ましくは、少なくとも3.4mである。さらに、この実施形態では、ベルトの周長は、適切なこととしては、6.3m以下であり、好ましくは、6.0m以下であり、さらに好ましくは、5.8m以下である。
【0072】
ベルトの厚み5aは、少なくとも1.5mmであり、さらに好ましくは、少なくとも2mmであり、最も好ましくは、3mm以上であってよい。これにより、例えば、ヤーンなどの補強構造をベルト内に配置することと並んで、適切な強度を得ることができる。さらに、ベルトの厚み5aは、7mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、最も好ましくは4mm以下であり、例えば2.5mmないし5mmの範囲にあってよい。前述の厚みは、ベルトの材料とともに、ベルトに良好な強度特性を与えることができる。
【0073】
[ベルトの本体]
ベルトは、本体14を備えている。本体14は、本体材料21で形成してよい。好ましくは、ベルト5は、圧縮された後に初期形状に復帰する能力を有する弾性的な本体を備えている。
【0074】
このように、ベルト5は、良好な弾性を有するために弾性的な本体を備えてよい。本出願では、「弾性」という用語は、ベルトを伸張したり押したりした後に元の形状に復帰する能力を指す。
【0075】
紙、ボード、パルプ、及びティッシュのマシンに適し、ワイヤ9、フェルト7又は繊維ウェブ8を傷つけず、適切な伸縮性と強度特性とを有する材料で、ベルト5は形成されてよい。
【0076】
本体は、ポリマーを含んでよく、又はこれからなってよい。本体14は、エラストマー材料を含んでよく、又はこれからなってよい。ベルト5は、その主原料としてエラストマー材料を含んでよい。
【0077】
本体14は、ポリウレタンを含んでよい。好ましくは、本体14は、主にポリウレタンを含む。有利には、ベルトは、ベルトの総重量から計算して、少なくとも50重量%、さらに有利には少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%のポリウレタンを含んでよい。ポリウレタンは、弾性、曲げ可能性などのベルトの特性を向上させることができ、シュープレス及びスリーブロールと組み合わせた使用に特に適している。従って、ポリウレタンは、良好な強度と弾性特性とを得るために使用されてよい。そのため、ベルトは、動作時間中に破損することなく、伸張したり屈曲したりすることができる可能性がある。さらに、ベルトは、ベルトの総重量から計算して、99.9重量%以下、さらに好ましくは97重量%以下、又は95重量%以下のポリウレタンを含んでよい。例えば、補強構造31,32と、固体潤滑剤粒子とは、他の材料を含んでよい。
【0078】
ベルトの本体には、特定の組成と硬度とを持ち、耐亀裂性、耐摩耗性、耐曲げ疲労性に優れた物理的性質を有するポリウレタンからなる層を設けてよい。
【0079】
ポリウレタンの製造方法は、当業者に既知である。ポリウレタンの製造プロセスは、従来技術の方法に基づいてよい。ポリウレタンは、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、鎖延長剤、好ましくはアミン基(アミノ基)(HN-)、OH基、又はこれらの混合物からなる鎖延長剤とを混合することによって製造してよい。
【0080】
[ベルトの補強構造]
ベルトは補強構造31,32を含んでよい。補強構造は、本体14を支持する支持構造であってよい。ベルトの弾性は、相当に高くする必要がある可能性があるため、補強構造は、過度にベルトの弾性を減少させないものとする。
【0081】
補強構造は、ヤーンを含んでよい。「ヤーン」という用語は、断面が比較的小さい長い構造を指す。ヤーンは、撚りの有無にかかわらず、繊維及び/又はフィラメントで構成してよい。ヤーンは、複数の撚糸であってよい。ヤーンは、合成ポリマーをベースとしてよい。「フィラメント」という用語は、大きな長さの繊維を指す。
【0082】
ベルトは、少なくとも2つの方向、即ち第1方向と第2方向とに配列された複数のヤーンを有してよい。第1方向(D1)は、ベルトの進行方向に平行、又は実質的に平行であってよい。第2方向(D2)は、ベルトの回転軸に平行、又は実質的に平行であってよい。
【0083】
層内の隣接するヤーンは、互いに接触又は接合してよく、又は、互いにスペースをおいてよい。
【0084】
異なる層31,32のヤーンは、隣の層のヤーンに接触又は接合してよく、又は、互いにスペースをおいてよい。好ましくは、互いの頂部にある補強ヤーン層31,32は、互いに離れていてよい。従って、ヤーン層は、いかなる方式でも、互いに固定されたり、互いに接合されたりする必要はない。しかし、異なる層のヤーンが隣の層のヤーンと接触又は接合すると、補強構造の強度特性を向上させることができる。
【0085】
ヤーンは、弾性的な本体に埋め込まれてよい。従って、ヤーンは、本体の材料に完全に囲まれてよい。
【0086】
ヤーンは、高強度、高モジュラス、及び高弾性モジュラスを有する合成繊維を含んでよい。ヤーンは、ポリアミド(PA)、例えばナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、レーヨン、ビスコース、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアラミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶プラスチック(LCP)、ポリイミド、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含んでよく、又は少なくとも1つからなってよい。上記の材料を含むか又はこれからなるヤーンは、ベルトを硬くすることができるが、依然として、ベルトの曲げと伸張との必要なレベルを許容する。
【0087】
[ベルトの外面]
ベルトの本体14の外面11は、本体材料21で形成してよい。本体材料21は、ポリウレタンを含んでよく、又はこれからなってよい。
【0088】
図7を参照すると、ベルトの外面11は平滑な表面を有してよい。特に、好ましくは、スリーブロールベルトの外面は平滑又は実質的に平滑である。平滑な外面を有するベルト5は、0.4mmを超える深さを伴う溝やパターンを有さないことが可能である。特に、平滑な表面は、0.4mmを超える深さを伴う10mmを超える面積を有さないことが可能である。ベルトの外面11は、わずかなパターン、即ち、いわゆるバフ仕上げ(buffing)を含んでよい。ベルト5の外面11のバフ仕上げの深さは、例えば、0ないし50μm、又は3ないし30μmである。ベルトの外面の適切な粗さは、抄紙機ファブリックとともにその作用に有利な効果を発揮することができる。
【0089】
図2aを参照すると、ベルト5の脱水特性を向上させるために、ベルトの外面11は、いくつかの平行な溝50と、それらの間の突条53を含んでよい。特にシュープレスベルトの外面は、この溝50を含むことが望ましい。技術的効果は、向上された水分除去率を得ることである。溝の深さは、脱水溝の最深部から測定して、0.4mmを超えてよく、好ましくは、0.5mmないし1.5mmの範囲など、2.0mm以下であってよい。脱水溝50の幅は、0.5mm以上であってよく、2.0mm以下でよい。平行に隣接する2つの脱水溝50の中心線の間の距離は、少なくとも1.5mmであってよく、7.0mm以下であってよい。脱水溝50の総水量は、例えば100ないし800g/mの範囲にあってよい。脱水溝50の数は、少なくとも140/mであってよく、さらに有利には少なくとも200/mであってよく、有利には670/m以下であってよい。上記の脱水溝50の特徴により、この脱水溝50を介して一層効率的にウェブから水を除去することができる。ベルト5に上記の特徴が多く実施されているほど、通常、これらの利点はよく実現される。
【0090】
[固体潤滑剤]
ベルト5の内面10は、固体潤滑剤粒子29の形態の固体潤滑剤を含む。
【0091】
固体潤滑剤は、水性コーティングとして塗布されてよい。コーティングは、溶媒を含んでよい。溶媒は、ベルトの製造プロセスの中で蒸発されてよい。溶媒は、アルコール、例えばエチレングリコール(C(OH))を含んでよい。さらにコーティングは、バインダを含んでよい。バインダは、例えば脂肪族ジイソシアネート、及び/又は芳香族ジイソシアネートを含んでよい。
【0092】
固体潤滑剤は、キャストシリンダ18に水性コーティングとして塗布してよい。一実施形態では、まずベルトの本体を製造し、その後、固体潤滑剤をベルトの内面に噴霧する。
【0093】
水性コーティングは、1%ないし50%の範囲での乾燥固形分を有してよい。
【0094】
固体潤滑剤24を含むコーティングは、キャストシリンダ18上で乾燥されてよい。コーティングがキャストシリンダ18上で乾燥された場合に、乾燥した固体潤滑剤は、キャストシリンダの上に固体潤滑剤粒子29を形成することができる。乾燥固体潤滑剤の乾燥固形分は、80%ないし100%の範囲にあってよい。
【0095】
固体潤滑剤粒子は、実質的に球形の粒子であってよい。固体潤滑剤粒子は、例えば楕円形の粒子であってよい。前述の実質的に球形の形状は、ベルトと取り付け面との間の摩擦を減少させるのに有利なことが可能である。
【0096】
固体潤滑剤粒子は、摩擦を減少させることができる適切な直径を有してよい。固体潤滑剤粒子29の少なくとも90%は、各粒子の最大直径から判定して、2μm以上、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは6μm以上、最も好ましくは10μm以上の直径を有してよい。また、固体潤滑剤粒子29の少なくとも90%は、各粒子の最大直径から判定して、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、最も好ましくは20μm以下の直径を有してよい。
【0097】
摩擦を効率的に減少させるために、固体潤滑剤粒子29の平均直径は、形成された各粒子の最大直径から判定して、2μm以上であってよく、好ましくは4μm以上であってよく、さらに好ましくは6μm以上であってよく、最も好ましくは10μm以上であってよい。また、固体潤滑剤粒子29の平均直径は、形成された各粒子の最大直径から判定して、40μm以下であってよく、好ましくは30μm以下であってよく、さらに好ましくは25μm以下であってよく、最も好ましくは20μm以下であってよい。
【0098】
固体潤滑剤粒子の全て、又は少なくとも90%は、ベルトの内面からの深さ方向に判定して、50μm以下の深さまで配置してよい。従って、好ましくは、固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面からの深さ方向に判定して、0μmないし50μmの範囲の深さまで配置される。
【0099】
固体潤滑剤粒子29の硬度は、例えば、本体材料の硬度よりも少なくとも20%硬いなど、本体材料21の硬度よりも大きくてよい。これにより、ベルトと取り付け面との間の摩擦を減少させることができる。
【0100】
固体潤滑剤粒子29は、ベルトの内面に不均質又は均質な層を、ベルトの内面に形成することが可能である。少なくともいくつかの固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面にあり、従って、それらは、部分的にしか本体材料に囲まれなくてよい。ただし、製造方法により、いくつかの固体潤滑剤粒子は、本体材料に完全に囲まれてよい。
【0101】
固体潤滑剤粒子は、0.002mmないし0.2mm、好ましくは0.2mm以下、さらに好ましくは0.15mm以下、最も好ましくは0.12mm以下の範囲の厚みを有する、不均質又は均質な層を形成してよい。これにより、ベルトと取り付け面との間の摩擦を効率的に減少させることができる。
【0102】
固体潤滑剤粒子、又は少なくともいくつかの隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおくことができる。例えば、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の固体潤滑剤粒子は、隣接する2つの固体潤滑剤粒子の間の距離が10μmないし500μmになるように、互いにスペースをおいてよい。隣接する固体潤滑剤粒子は、互いにスペースをおいた場合に、油潤滑剤のためのスペースが形成できる。これにより、油潤滑剤膜が破損した場合に、摩擦をさらに減少させることができる。従って、ベルトの内面の粗さが増加することができる。さらに、いくつかの油潤滑剤は、隣接する固体潤滑剤粒子の間のスペース30に留まってよい。これにより、油潤滑剤膜が破損した場合の摩擦は、大幅に減少することができる。
【0103】
ベルトの内面の固体潤滑剤粒子の量は、摩擦特性に効果を発揮することができる。固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の面積から少なくとも2%を覆ってよい。好ましくは、固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の総面積から少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%を覆う。さらに、固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の総面積から99%以下を覆ってよい。好ましくは、固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の総面積から85%以下、さらに好ましくは70%以下、最も好ましくは50%以下を覆う。この量の固体潤滑剤粒子により、ベルトの他の特性に過度に影響することなく、使用時にベルトと取り付け面との間の摩擦が大幅に減少することが可能である。
【0104】
好ましくは、ベルトの内面10のみがこの固体潤滑剤粒子29を含み、ベルトの外面だけでなくベルトの中心部(middle)も、固体潤滑剤粒子29からフリーである(有さない)。これにより、ベルトの製造コストを減少させることができる。また、固体潤滑剤粒子は、ベルトの中心部では多くの積極的な効果を発揮するわけではないことが可能である。
【0105】
固体潤滑剤を含むコーティングは、キャストシリンダの外面及び/又はベルトの内面で乾燥する、噴霧可能又は機械的に塗布可能なコーティングとして選択されてよい。
【0106】
固体潤滑剤粒子は、フッ素樹脂を含んでよく、又はフッ素樹脂からなってよい。好ましくは、固体潤滑剤粒子は、2成分の固体潤滑剤を含み、又はこれからなり、又は主としてこれからなる。
【0107】
固体潤滑剤粒子は、以下のものを含む群、又は以下のものからなる群から選択されてよい。
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
・二硫化モリブデン(MoS)、
・黒鉛(グラファイト)、
・インジウム、
・鉛、
・錫、
・二酸化チタン、
・炭酸カルシウム(PCC,GCC)、
・プラスチック、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び/又はポリエチレンテレフタレート。
【0108】
好ましくは、固体潤滑剤粒子は、以下のものを含む群、又は以下のものからなる群から選択される。
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
・二硫化モリブデン(MoS)、及び
・黒鉛。
【0109】
これらの材料は、例えば、少なくとも摂氏350度までの高温で、摩擦を減少させることができる。
【0110】
一実施形態では、固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。この実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の量は、固体潤滑剤粒子の総乾燥重量から判定して、好ましくは、5重量%ないし100重量%の範囲にあり、さらに好ましくは、10重量%ないし50重量%の範囲にあり、最も好ましくは、15重量%ないし40重量%の範囲にある。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用すると、ベルトとベルトの取り付け面との間の摩擦を効率的に減少させることができる。さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、高温にも対応可能であってよい。
【0111】
特に、ベルトが相当に平滑な内面を有する場合に、潤滑油膜の均一性が損なわれると、ベルトと取り付け面との間の摩擦が極端に大きくなることがある。固体潤滑剤粒子29により、ベルトと取り付け面との間の摩擦を減少させることができる。これにより、ベルトは、従来のように容易には破損しないことが可能である。
【0112】
一実施形態では、固体潤滑剤は、ベルトの色から視覚的に知覚可能な色を有する。これにより、特に、ベルトの内面の固体潤滑剤コーティングの均一性を検査することが可能になる。従って、コーティングのいずれの問題領域にも、気づくことができる。
【0113】
一実施例では、固体潤滑剤の色は、本体材料をキャストする前に潤滑剤の分布の均一性を検査するために、キャストシリンダの外面の色から視覚的に知覚可能である。これにより、本体材料を固体潤滑剤コーティングにキャストする前に、コーティングのいずれの問題領域にも、気づくことができる。
【0114】
コーティングは、さらにバインダを含んでよい。ベルトの製造プロセス中に、バインダは、固体潤滑剤粒子の外面に付着されてよい。従って、固体潤滑剤粒子の外面は、バインダを含んでよい。バインダは、固体潤滑剤粒子を本体材料と接合するために使用してよい。
【0115】
前述のように、バインダは、固体潤滑剤粒子の外面の少なくとも一部を覆ってよい。バインダは、例えば、固体潤滑剤粒子を本体材料と接合するために、固体潤滑剤粒子の外面の少なくとも20%、好ましくは、少なくとも30%、さらに好ましくは、少なくとも40%、最も好ましくは、少なくとも50%を覆ってよい。固体潤滑剤粒子にバインダがあると、ベルトの内面の摩擦レベルが、従来よりもさらに制御可能になる可能性がある。
【0116】
バインダは、例えば、以下を含んでよい。
・脂肪族ジイソシアネート(ADI)及び/又は
・芳香族ジイソシアネート、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)及び/又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)など。
【0117】
ADIなどのジイソシアネートは、本体材料、特にポリウレタンを含む本体材料と、固体潤滑剤粒子を接合するための耐久性のある接着剤を作るために、使用されてよい。
【0118】
バインダの総量は、バインダと固体潤滑剤粒子との組み合わせた乾燥重量から判定して、5重量%ないし30重量%の範囲、さらに好ましくは、7重量%ないし20重量%の範囲にあってよい。従って、バインダは、固体潤滑剤粒子を本体材料に効率的に付着させることができる。
【0119】
バインダにより、固体潤滑剤粒子を本体材料に接合することができる。従って、ベルトは、ポリウレタンマトリックスで接合された固体潤滑剤粒子29を含んでよい。固体潤滑剤24の追加は、ベルトの摩擦特性を相当に向上させることができ、バインダの追加は、摩擦特性の制御性を相当に向上させることができる。
【0120】
驚くべきことに、固体潤滑剤は、ベルトと取り付け面との間の摩擦を減少させながら、得られたコーティング層がベルトに適した特性を有するように、本体材料と効率的に接合できる層を形成することができることが分かった。固体潤滑剤は、時間の経過とともに、本体材料にしっかりと付着したままになれる。さらに、固体潤滑剤粒子は、固体潤滑剤粒子の間にいくらかの油潤滑剤が留まることができるように、隣接する粒子の間にスペース30を有してよい。それにより、特に、油膜がこれ以外のときに消失した場合に、ベルトと取り付け面との間の摩擦を減少させる。
【0121】
[ベルトの内面]
ベルト5は、内面10を含む。ベルト5の内面10は、固体潤滑剤24の粒子29からなる。固体潤滑剤の粒子29は、少なくとも主にベルトの内面に分布してよい。固体潤滑剤24は、使用中のベルトの内面と、ベルトの取り付け面との間の摩擦を減少させることができる。
【0122】
ベルトの内面の粗さの値は、規格ISO4287:1997に従って判定するならば、0.20μmないし6μmの範囲にあり、好ましくは、0.30μmないし5μmの範囲にあり、さらに好ましくは、0.4μmないし4μmの範囲にあり、最も好ましくは、0.40μmないし3μmの範囲にあってよい。
【0123】
ベルトの内面の粗さの値は、交差方向に判定すると、規格ISO4287:1997に従って判定するならば、0.20μmないし6μmの範囲にあり、好ましくは、0.30μmないし5μmの範囲にあり、さらに好ましくは、0.4μmないし4μmの範囲にあり、最も好ましくは、0.40μmないし3μmの範囲にあってよい。さらに、ベルトの内面の粗さの値は、機械方向に判定すると、規格ISO4287:1997に従って判定するならば、0.20μmないし6μmの範囲にあり、好ましくは、0.30μmないし5μmの範囲にあり、さらに好ましくは、0.4μmないし4μmの範囲にあり、最も好ましくは、0.40μmないし3μmの範囲にあってよい。このように、固体潤滑剤粒子は、粗さを作り出すことができ、粗さは、特に油潤滑剤膜が消失した場合に、ベルトとその取り付け面との間の摩擦を減少させることができる。
【0124】
ベルトの内面の前述の粗さは、少なくとも主に固体潤滑剤粒子によって形成されてよい。この粗さは、ベルトの耐久性に相当な効果を与えることができる。例えば、潤滑油膜の均一性が損なわれた場合に、内面10に固体潤滑剤粒子を有するベルトは、内面が平滑なベルトほど容易には損傷しないことが可能である。言い換えれば、固体潤滑剤粒子がないと、潤滑油膜の均一性が損なわれた後、平滑な表面によりベルトに強い減速効果が生じる可能性があり、ベルトが永久的に変形する可能性がある。
【0125】
図4ないし6を参照すると、ベルトは、固体潤滑剤粒子29を含む内面10を備えてよい。
【0126】
固体潤滑剤24の粒子29は、バインダによって少なくとも部分的に囲まれてよい。さらに、図6を参照すると、固体潤滑剤24の粒子29は、本体材料21によって部分的に囲まれていてよい。さらに、例えば図5及び6から分かるように、ベルトの外面11は、固体潤滑剤粒子からフリーであってよい(有さなくてよい)。
【0127】
図5を参照すると、固体潤滑剤24の粒子29はベルトの内面に不均質に分布してよい。固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面が固体潤滑剤粒子と本体材料とを含むように、本体材料とともにベルトの内面を形成してよい。従って、本体材料21(ベルト材料21)は、固体潤滑剤粒子29の少なくとも一部を少なくとも部分的に取り囲んでよい。固体潤滑剤粒子29の一部は、本体材料21によって完全に取り囲まれてよい。しかし、固体潤滑剤粒子29は、ベルトの内面の少なくとも一部を形成し、ベルトの摩擦特性に効果を発揮することができるようにする。
【0128】
図4及び6を参照すると、一実施形態では、固体潤滑剤粒子は、少なくとも主にベルトの内面を形成してよい。本体材料21は、主に固体潤滑剤の粒子29の下に配置されてよい。
【0129】
従って、本体材料21は、ベルトの最も内側の表面を形成しないことが可能である。一方、ベルトの最も内側の表面の少なくとも一部を形成する固体潤滑剤粒子29があってよい。さらに、隣接する固体潤滑剤粒子29の間にスペース30があってよい。固体潤滑剤29の隣接する粒子の間のスペース30により、ベルトの内面の粗さを向上させることができる。さらに、スペース30により、いくらかの潤滑油が(使用中に)粒子の間にあってよく、使用中のベルトを損傷するリスクをさらに減少させることができる。従って、使用中、固体潤滑剤の隣接する粒子の間の少なくともいくつかのスペース30は、潤滑油を含んでよい。
【0130】
シュープレスとベルトとの間、又はスリーブロールとベルトとの間では、潤滑油が損なわれる可能性がある。その結果、ベルトは、高い剪断応力がかけられ、ベルトに亀裂が入り、ベルトが剥離し始める可能性がある。また、ベルトに局部的な伸張が生じ、急激にベルトを破壊する可能性がある。新規なベルトは、このようなベルト損傷のリスクを減少させることができる。さらに、固体潤滑剤は、ベルトの内面の製造中に発生する欠陥をカバーすることができる。本構成及び本方法により、ベルトの内面の粗さレベルは、増加することが可能である。
【0131】
固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面の構造を仕上げることに、重要な機能を有してよい。固体潤滑剤粒子は、ベルトの内面に、均質又は不均質な層を形成することができる。
【0132】
[ベルトを製造する構成]
図3を参照すると、ベルトを製造する構成19は、キャストシリンダ18を備えてよい。好ましくは、キャストシリンダ18は、それ自体の軸で回転できるように、回転可能である。
【0133】
キャストシリンダ18の外面は、平滑であってよく、又は実質的に平滑であってよい。技術的効果は、製造プロセスの容易さを向上させることであり、特に、ベルトの内面に欠陥を生じることなく、キャストシリンダからベルトを取り外すことである。キャストシリンダの外面が平滑であれば、ベルトは、キャストシリンダの表面から容易に取り外せる。さらにベルトは、平滑でない表面よりも早く、平滑なキャストシリンダから取り外し可能であってよい。これは、生産効率を向上させることができる。
【0134】
構成19は、さらにアプリケータ22を含んでよく、アプリケータ22は、本体材料を塗布する前に、離型剤23及び/又は固体潤滑剤24をキャストシリンダ18に塗布する(applying)。
【0135】
構成19は、さらに、本体材料21を塗布するためのキャストユニット20を含んでよい。一実施形態では、キャストユニット20は、キャストシリンダの軸に平行な方向に沿って、可動に配置してよい。
【0136】
固体潤滑剤24は、適切なコーティング方法によって塗布されてよい。固体潤滑剤は、例えば、粒子をキャストシリンダに噴霧することによって塗布されてよい。これは、特に制御性のよい効率的な方法である。
【0137】
噴霧によってコーティングを実施するのが、最も簡単である可能性がある。これにより、全体にわたって均一なコーティングを確保することが可能になる。アプリケータ22は、例えば、キャストシリンダ、例えばその中の離型剤に固体潤滑剤の噴霧28を行うための噴霧ユニット(spraying unit)27を含んでよい。噴霧ユニット27は、ノズルを含んでよい。ノズルは、形成されたコーティング層の特性に効果を発揮することができる。
【0138】
噴霧ユニット27の圧力は、例えば制御ユニット(CU)によって制御されてよい。制御ユニット(CU)は、さらにアプリケータ22とキャストシリンダ18との間の距離を制御するように構成されてよい。さらに、制御ユニットは、固体潤滑剤粒子がキャストシリンダ18に塗布される角度を制御するように構成されてよい。
【0139】
その構成は、アプリケータ22及び/又はキャストユニット20を支持するように構成された支持構造26をさらに含んでよい。これに代えて、又はこれに加えて、その構成は、例えばアプリケータ22及び/又はキャストユニット20を移動するように構成されたロボットを含んでよい。
【0140】
アプリケータ22は、キャストシリンダの軸に平行な方向に沿って可動に配置してよい。従って、アプリケータ22は、例えば、振動アクチュエータを含んでよい。この実施形態では、振動アクチュエータは、制御ユニットによって制御されてよい。さらに、振動アクチュエータは、例えばノズルを含んでよい。
【0141】
アプリケータ22は、固体潤滑剤の塗布中に、支持構造の長さに沿って、キャストシリンダの軸に平行な方向に動かしてよい。さらに、固体潤滑剤の塗布中に、キャストシリンダ18を回転させてよい。キャストシリンダの回転速度は、アプリケータの速度と同様に、得られたベルトの内面の特性に効果を発揮することができる。この実施例では、キャストシリンダを回転させながらアプリケータを移動させた場合に、螺旋状のコーティング層を設けることができる。
【0142】
従って、固体潤滑剤を塗布する間、キャストシリンダ18はそれ自体の軸上で回転可能であってよい。固体潤滑剤は、シリンダの軸の方向に沿って動くアプリケータ22によって塗布してよい。キャストシリンダの回転速度とアプリケータ22の速度とを制御することによって、ベルトの内面の特性に効果を発揮することができる。
【0143】
構成19はさらに、ユニット25を含んでよく、ユニット25は、ベルトの補強構造を形成する。補強構造は、例えば、本体材料をキャストした後、本体を硬化させる前に形成してよい。
【0144】
以下のもの、即ち、
・キャストシリンダ18の回転速度、
・アプリケータ22の速度、及び/又は、
・アプリケータとキャストシリンダとの間の距離(例えば、アプリケータのノズルの位置とキャストシリンダの外面との間の距離)
を制御することにより、形成されたコーティングの密度及び/又は位置、形成された粒子のサイズ、ひいてはベルトの内面の特性に効果を発揮することができる可能性がある。
【0145】
制御ユニット(CU)は、例えば、キャストシリンダ18の回転速度、アプリケータの速度、及び/又はアプリケータのノズルの位置を制御するように配置されてよい。
【0146】
キャストシリンダ18の回転速度、アプリケータ22の速度、及び/又はアプリケータとキャストシリンダとの間の距離は、1つ、又は1つ以上の制御ユニット(CU)を使用して制御してよい。
【0147】
また、ベルトの内面のコーティングは、それがない場合にベルトの内面にあり得る欠陥、例えば表面に伸びているエアベルなどを覆うことによって、ベルトの内面を保護することができる。エアベルは、ベルトの内面が動作中に剥離することを生じさせる可能性がある。
【0148】
[ベルトを製造する方法]
紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのためのベルトを製造する方法は、以下のステップを含んでよい。
・固体潤滑剤24を含むコーティングをキャストシリンダ18に施すステップと、
・固体潤滑剤24を含むコーティングを乾燥させることで、固体潤滑剤粒子29をキャストシリンダ18の上に得るステップと、
・本体14を固体潤滑剤粒子29に形成するために、キャストシリンダ18上に本体材料21をキャスト(成膜、流延)するステップと、
・ベルトの補強構造31,32を設けるステップと、
・任意には、本体材料を硬化させるステップとを含み、
これにより、固体潤滑剤粒子がベルトの内面の少なくとも一部を形成する、ベルトを得る。
【0149】
さらにこの方法は、以下のステップを含んでよい。
・固体潤滑剤を含むコーティングを施す前に、離型剤をキャストシリンダ18に塗布するステップ。
【0150】
さらに、補強構造を設けるステップは、ベルトに補強構造を設けるために、ベルトの補強構造を形成するユニット25を使用するステップを含んでよい。
【0151】
塗布された固体潤滑剤は、本体材料21をキャストシリンダ18にキャストする前に乾燥されてよい。塗布された固体潤滑剤は、例えばオーブンなどの乾燥機を使用して乾燥されてよい。これに代えて、例えば、固体潤滑剤を、例えば室温でキャストシリンダの表面で乾燥させることで、塗布された固体潤滑剤は乾燥されてよい。
【0152】
好ましくは、固体潤滑剤を、本体材料をキャストする1時間から2時間前まで乾燥させることで、固体潤滑剤は乾燥される。従って、固体潤滑剤を含むコーティングを乾燥させるステップは、固体潤滑剤を例えば室温で1時間から2時間乾燥させてから、本体材料をキャストする。
【0153】
固体潤滑剤を含むコーティングを乾燥させるステップの後、固体潤滑剤は80%ないし100%の範囲の乾物含量を有してよい。従って、固体潤滑剤は、本体材料21を固体潤滑剤の上にキャストした場合に、80%ないし100%の範囲の乾物含量を有してよい。
【0154】
離型剤は、使用する場合に、キャストシリンダの上に実質的に均一な層を形成してよい。好ましくは、固体潤滑剤を塗布する前に、離型剤を乾燥させる。離型剤は、乾燥機を使用することで、乾燥させてよい。あるいは、離型剤は、例えば室温に離型剤を放置して、乾燥させてよい。
【0155】
キャストシリンダに固体潤滑剤層を形成した後、ベルトはそれ自体が既知の方法で形成されてよい。ベルトは、キャストシリンダに固体潤滑剤層を形成した後、例えば、以下の方法ステップで製造されてよい。
・いくつかの支持ヤーンを提供するステップと、
・ポリウレタンからなるエラストマー材料を型表面にキャストすることによって、ベルトのための本体を形成するステップと、
・任意には、材料を硬化させるステップと、
・任意には、フレームの外面にいくつかの溝を設けるステップ。
【0156】
固体潤滑剤とキャストシリンダとの間に離型剤を使用した場合に、形成されたベルトはキャストシリンダの表面から容易に取り外せる。離型剤は、当業者に既知である。
【0157】
離型剤を使用した場合に、ベルトの本体を形成した後、任意の種類の固体潤滑剤粒子をベルトの内面に添加することが、非常に困難な場合がある。この新規な解決策により、ベルトの本体の製造プロセスで、ベルトの内面に固体潤滑剤を添加することができる。従って、本体の製造プロセスの間に、機械的及び/又は化学的に固体潤滑剤がベルトの内面に接合されることを、離型剤が防止しないことが可能である。固体潤滑剤粒子は、例えば1つ以上のバインダを使用して、本体材料と接合されてよい。
【0158】
ベルトは、ボードマシン、抄紙機、パルプマシン、又はティッシュマシンのスリーブロール又はシュープレスに取り付けることが想定されてよい。図2bを参照すると、ベルトはさらに、例えば、ベルトを取り付けるためのベルトの複数の取り付け点60を含んでよい。
【0159】
固体潤滑剤粒子29により、ベルトの少なくともいくつかの特性を向上させることができる。固体潤滑剤は、内面の表面粗さに効果を発揮することができる。また、固体潤滑剤の粒子は、内面の硬度に効果を発揮することができる。さらに、固体潤滑剤は、ベルトとベルトを取り付けた取り付け面との間の摩擦に効果を発揮することができる。さらに、ベルトの内面には、隣接する粒子の間にスペースがあってよい。使用時には、上記のスペースは、摩擦をさらに減少させることが可能な油潤滑剤を含んでよい。
【0160】
固体潤滑剤粒子は、ベルトとベルトの取り付け面との間の摩擦に、相当に影響する可能性がある。新規な解決策により、潤滑油膜の均一性が損なわれた場合に、ベルトは、内面がもっと平滑なベルトほど容易には損傷しないことが可能である。
【0161】
[例1]
固体潤滑剤粒子を有する、新規なベルトが製造された。さらに、固体潤滑剤粒子を有さない、同様の基準ベルトが製造された。
【0162】
図8a,8b,9a,9b,10a及び10bに、実験的なテストの画像を示す。図8a及び8bは、ステレオ顕微鏡画像である。図9a及び9b、及び図10a及び10bは、電子顕微鏡画像である。各画像の縮尺の尺度が示されている。
【0163】
画像から分かるように、固体潤滑剤粒子は、表面構造に明確な影響を与えていた。図8a,9a及び10aは、固体潤滑剤粒子が大きいサンプルを示し、図8b,9b及び10bは、固体潤滑剤粒子が小さいサンプルを示す。いずれのサンプルも、ベルトの内面の摩擦を減少させることができた。
【0164】
実験的なテストの中では、内面の粗さレベルをテストした。
【0165】
固体潤滑剤粒子を含み、粗さレベルが0.2μmないし6μmの範囲にある、いくつかのサンプルを製造した。基準サンプルの粗さレベルは、0.04μmないし0.9μmの範囲にあった。
【0166】
ベルトの内面に固体潤滑剤粒子を有する全てサンプルでは、摩擦が減少していた。固体潤滑剤粒子を有するこの明細書による全てのサンプルの摩擦レベルは、基準サンプルの摩擦レベルより少なくとも50%低かった。0.4μmないし3μmの範囲の粗さレベルを有するAサンプルとBサンプルとで、最良の結果が得られた。Aサンプル(図8a,9a及び10a)の粗さの値は、1μmないし3μmの範囲にあった。Bサンプル(図8b,9b及び10b)の粗さの値は、0.4μmないし0.9μmの範囲にあった。
【0167】
本発明は、例示と例とを使用して説明してきた。本発明は、上記に提示した実施形態のみに限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で修正されてよい。
【符号の説明】
【0168】
1 シュープレス
2 プレスシュー
3 カウンターロール
4 プレスゾーン
5 ベルト
5a ベルトの本体の厚み
6 第1抄紙機ファブリック、例えばプレスフェルト
7 第2抄紙機ファブリック
8 繊維ウェブ
9 ワイヤ
10 内面
11 外面
14 ベルトの本体
18 キャストシリンダ
19 ベルトを製造する構成
20 キャストユニット
21 本体材料
22 アプリケータ
23 離型剤
24 固体潤滑剤
25 ベルトの補強構造を形成するためのユニット
26 支持構造
27 噴霧ユニット
28 噴霧された材料
29 固体潤滑剤粒子
d1 固体潤滑剤粒子29の最大径
30 隣接する固体潤滑剤粒子の間のスペース
31 補強構造の第1ヤーン層
32 補強構造の第2ヤーン層
50 ベルトの外面の溝
53 溝の間のランド(突条)
60 ベルトの取り付け点
100 スリーブロール
102 スリーブロールの支持軸
110 スリーブロールのカーブ要素
D1 ベルトの第1方向
D2 ベルトの第2方向
MD ベルトの進行方向(機械方向)
CD ベルトの交差方向
C1 スリーブロールの第1曲線
C2 スリーブロールの第2曲線
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b