(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光学部材、導光システム
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20241106BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241106BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20241106BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241106BHJP
【FI】
F21S2/00 432
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021548886
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035516
(87)【国際公開番号】W WO2021060194
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019175835
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-168791(JP,U)
【文献】特開2012-218381(JP,A)
【文献】特開2014-047572(JP,A)
【文献】特開2010-072486(JP,A)
【文献】特開平10-186361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
E06B 9/24
F21S 11/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の液体層と、
前記液体層に導光可能に配置された光源と、を有し、
前記液体層は、導光可能な形態を有することが可能であ
り、
前記液体層は、前記液体層内にマイクロバブルを有さない第1状態と、前記液体層内にマイクロバブルを有し、前記第1状態よりも可視光透過率が低い第2状態と、に可変でき、
前記液体層が前記第2状態で前記光源が点灯すると、前記液体層は前記光源からの光を導光し、
前記光源が点灯して前記液体層が前記第2状態である場合、前記液体層を導光した光が面発光する面光源となる光学部材。
【請求項2】
前記
マイクロバブルは、前記液体層内に所定の分布状態を有する請求項
1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記
マイクロバブルは、大きさの異なる
マイクロバブルを含む請求項
1又は
2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記光源は、前記液体層の所定側に配置された1つの光源であり、
前記
マイクロバブルは、前記光源に近い側では密度が低く、前記光源から遠くなるに従って密度が高くなるように分布する請求項
1乃至
3の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項5】
前記光源は、前記液体層を介して互いに対向する2つの光源であり、
前記
マイクロバブルは、前記液体層に均一に分布する請求項
1乃至
3の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記光源が消灯して前記液体層が前記第1状態である場合、可視光を透過する透明部材となる請求項
1乃至
5の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項7】
前記光源が消灯して前記液体層が前記第2状態である場合、防眩又は遮光機能を有する部材となる請求項
1乃至
5の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項8】
前記液体層が接する少なくとも1つの基材を有する請求項
1乃至
7の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項9】
複数の基材を有し、
複数の前記基材の間に前記液体層が配置される請求項
1乃至
7の何れか一項に記載の光学部材。
【請求項10】
請求項
1乃至
9の何れか一項に記載の光学部材と、
前記液体層を、前記第1状態と前記第2状態に可変する液体層変更部と、
前記液体層変更部及び前記光源を制御して、前記光源が消灯して前記液体層が前記第1状態、前記光源が消灯して前記液体層が前記第2状態、又は、前記光源が点灯して前記液体層が前記第2状態、にする制御部と、を有
し、
前記制御部は、前記液体層を導光した光が面発光するように、前記液体層内のマイクロバブルの密度を制御する導光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、導光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラケットやフットライトのように壁面に固定して使用する照明器具が知られている。又、その一方、有機EL(Organic Electro-Luminescence)発光素子を光源とする有機ELパネルを使用した照明器具が知られている。有機ELパネルは、薄くて軽いため、様々な形状の照明器具に対して好適に採用可能である。又、有機ELパネルを採用した照明器具は、有機ELパネルが面光源であり拡散光を発するため、柔らかい光による温かみのある雰囲気を醸し出すことができる。
【0003】
又、省エネを目的として、所定の間隔をおいて対向された二枚の透光性のパネルの隙間に貯留された水によって貯水層を形成し、貯水層にマイクロバブル発生手段によって発生させたマイクロバブルを供給して混入させ、マイクロバブルをパネルの表面に沿って移動させることにより光透過率を変化させて日射からの熱の吸収量を調整し、空調装置の冷房効率を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機ELパネル等の照明器具は、天井や壁等に取り付けることは可能であるが、可視光を透過できないため、窓に取り付けた場合は外の景観を見る等の行為ができない。
【0006】
一方で、特許文献1に開示された技術では、外の景観は見ることが可能であるものの、光源としての機能はない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能な光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本光学部材は、面状の液体層と、前記液体層に導光可能に配置された光源と、を有し、前記液体層は、導光可能な形態を有することが可能であり、前記液体層は、前記液体層内にマイクロバブルを有さない第1状態と、前記液体層内にマイクロバブルを有し、前記第1状態よりも可視光透過率が低い第2状態と、に可変でき、前記液体層が前記第2状態で前記光源が点灯すると、前記液体層は前記光源からの光を導光し、前記光源が点灯して前記液体層が前記第2状態である場合、前記液体層を導光した光が面発光する面光源となる。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能な光学部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る導光システムに含まれる制御部のハードウェアブロック図の例である。
【
図3】第1実施形態に係る導光システムに含まれ制御部の機能ブロック図の例である。
【
図4】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)である。
【
図5】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)である。
【
図6】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)である。
【
図7】シミュレーション結果を示す図(その1)である。
【
図8】シミュレーション結果を示す図(その2)である。
【
図9A】シミュレーション結果を示す図(その3)である。
【
図9B】シミュレーション結果を示す図(その4)である。
【
図10A】シミュレーション結果を示す図(その5)である。
【
図10B】シミュレーション結果を示す図(その6)である。
【
図11】第2実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
【
図12】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)である。
【
図13】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)である。
【
図14】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光学部材は、面状の液体層と、前記液体層に導光可能に配置された光源とを有し、前記液体層は、導光可能な形態を有することが可能である。
【0012】
ここで、導光可能な前記液体層の形態とは、前記液体層の屈折率が液体層の両方の主面に接する層のいずれの屈折率よりも高い状態であることを意味する。例えば、前記液体層が水(屈折率1.33)である場合は、前記液体層の両方の主面に接する層のいずれもが空気層(屈折率1.00)である。このような形態をとることで、前記液体層の側面から入射した光が液体層の面方向に導波していく。
【0013】
上記形態において、前記液体層が液体層の両方の主面に支持体となる基材層を有しない場合に、前記液体層の主面の表面の形状は、光を導波できる形状であれば、特に限定されないが、公知の樹脂導光板等の個体導光板の表面に設けられる形状を模した形状であることが好ましい。一方で、上記形態において、前記液体層の主面の少なくとも一方に支持体となる基材層を有する場合、該基材層の屈折率は、該基材層の前記液体層と反対側の面に接する層との界面で光を一部又は全て反射させることができれば特に限定されないが、前記液体層の屈折率と同じ又は前記液体層の屈折率より低いことが好ましい。
【0014】
前記液体層の導光可能な別の形態としては、前記液体層の中に一定量以上の気泡が含有されている状態であることを意味する。前記気泡は好ましくは微小気泡(マイクロバブルと称することがある)である。例えば、前記液体層が水である場合は、前記液体層は、空気、二酸化炭素等の微小気泡を形成できる気体を用いた微小気泡を含む。そして、前記液体層の側面から入射した光は、微小気泡による散乱を繰り返し、液体層の面方向に導波していく。
【0015】
本発明では、前記光源をオンとした場合、前記液体層の導光可能な形態のいずれかにより、前記光源から前記液体層の側面から入射した光は、前記液体層を面方向に渡って導波し、前記液体層の一方又は両方の面から出射する。
【0016】
本発明では、前記光源をオフとし且つ前記液体層が微小気泡等の気泡を含まない場合、前記液体層の表面が平滑である、又は、前記液体層の主面の少なくとも一方に基材層を有することにより、光源以外からの光(以下、外光と称する)を前記液体層の一方の主面から他方の主面へ透過させることができる。又、前記光源をオフとし且つ前記液体層が微小気泡等の気泡を含む場合、外光が前記液体層で気泡により散乱し、プライバシー機能を発揮することができる。
【0017】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本実施形態の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張して描いている場合がある。
【0018】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
図1に示すように、導光システム1は、光学部材10と、貯水部30と、ポンプ40と、電磁弁50と、気体発生ポンプ60と、気体供給路61と、気体還流路62と、電磁弁70と、ノズル80と、制御部90とを有している。
【0019】
光学部材10は、基材11及び12と、支持体13~16と、液体層17と、光源20とを有している。導光システム1において、光学部材10は、光源又は透明部材となる部分であり、例えば、ビルや家屋等の建築物の窓部に装着可能である。
【0020】
光学部材10は、所定の間隔を空けて略平行に配置された2枚の板状の基材11及び12を有している。基材11及び12は透明であり、可視光を透過させることができる。基材11及び12の可視光透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。基材11及び12としては、例えば、ソーダライムガラス等の無機ガラスや、アクリル系樹脂等の有機ガラスを使用可能である。
【0021】
基材11及び12の形状は、特に限定されないが、例えば、矩形である。基材11及び12の形状が矩形である場合、
図1のA-A線に平行な方向から視たときの基材11及び12の大きさは、特に限定されないが、例えば、縦2030mm×横1690mm程度である。基材11及び12の厚さは、特に限定されないが、例えば、2mm~20mm程度である。基材11及び12の間隔(液体層17の厚さ)は、特に限定されないが、例えば、5mm~30mm程度である。
【0022】
基材11及び12は、支持体13及び14により上下方向から支持され、支持体15及び16により左右方向から支持され、内部の密閉された空隙に面状の液体層17を形成している。基材12は、液体層17を介して基材11と対向しており、液体層17は、基材11及び12の互いに対向する面に接して形成されている。液体層17は、例えば、水であるが、水に代えて有機溶剤等を用いてもよい。ここで、面状とは、液体層が基材の所定面に接している状態を指す。
【0023】
なお、光学部材10において、基材11と基材12の間に液体層17が配置される密閉された空隙を形成可能であれば、基材11及び12を支持する構造は、
図1に示す態様には特に限定されない。
【0024】
液体層17の所定側(
図1の例では、支持体16の外側)に、1つの光源20が、液体層17に導光可能に配置されている。光源20は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)が支持体16の長手方向に沿って一次元又は二次元に配列されたLEDアレイであるが、LEDに代えて、有機ELやレーザ等の任意の光源を選択可能である。支持体16は、光源20の光を透過する必要があるため、基材11及び12と同等の可視光透過率であることが好ましい。
【0025】
なお、光源20の配置は
図1に示す態様には特に限定されず、例えば、支持体15の外側に配置してもよい。或いは、支持体15の外側と支持体16の外側に、液体層17を介して互いに対向する2つの光源20を配置してもよい。
【0026】
貯水部30は、ポンプ40及び電磁弁50を経由して、給水路31により支持体14を貫通して光学部材10の液体層17と接続されている。又、貯水部30は、排水路32により支持体14を貫通して光学部材10の液体層17と接続されている。なお、給水路31及び排水路32を光学部材10の液体層17と接続する位置は、特に限定されない。
【0027】
気体発生ポンプ60は、空気やオゾン等の気体を発生する装置であり、電磁弁70、気体供給路61、及びノズル80を介して、支持体14を貫通して光学部材10の液体層17と接続されている。又、気体発生ポンプ60は、気体還流路62により、支持体14を貫通して光学部材10の液体層17と接続されている。
【0028】
ノズル80は、例えば、細長い筒状の部材であり、支持体14を介して液体層17の端部と対向するように、液体層17の端部に沿って配置されている。ノズル80の液体層17側には、例えば、支持体14を貫通して液体層17に気泡B(
図5参照)を導入する多数の微細孔が所定ピッチで形成されている。
【0029】
気泡Bは、例えば、マイクロバブルである。ここで、マイクロバブルとは、直径が1μm~100μm程度である気泡を指す。ノズル80として、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、加圧溶解方式等の任意の方式のマイクロバブル発生器を用いることができる。
【0030】
又、マイクロバブル発生器であるノズル80を用いる代わりに、マイクロバブル入りの水を液体層17に供給する方法を用いてもよい。例えば、光学部材10の外部に貯水部30と同様な貯水槽を配置し、この貯水槽に上記のような種々の方式で発生させたマイクロバブルを入れた水を溜めて、この貯水槽から必要なときにポンプ等によりマイクロバブルを入れた水を液体層17に供給すればよい。
【0031】
なお、マイクロバブルの寿命は数分から十数分のため、貯水槽に必要な時にマイクロバブルを導入するか、貯水槽を常時マイクロバブルが導入された状態にしておく必要がある。
【0032】
制御部90は、光源20、ポンプ40、電磁弁50、気体発生ポンプ60、及び電磁弁70を制御する。
図2及び
図3を参照しながら、制御部90について詳説する。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る導光システムに含まれる制御部のハードウェアブロック図の例である。
図2に示すように、制御部90は、主要な構成要素として、CPU91と、ROM92と、RAM93と、I/F94と、バスライン95とを有している。CPU91、ROM92、RAM93、及びI/F94は、バスライン95を介して相互に接続されている。制御部90は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0034】
CPU91は、制御部90の各機能を制御する。記憶手段であるROM92は、CPU91が制御部90の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM93は、CPU91のワークエリア等として使用される。又、RAM93は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F94は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、外部ネットワーク等と接続される。
【0035】
制御部90は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System On a Chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、制御部90は、回路モジュール等であってもよい。
【0036】
図3は、第1実施形態に係る導光システムに含まれ制御部の機能ブロック図の例である。
図3に示すように、制御部90は、主要な機能ブロックとして、光源制御部901と、ポンプ制御部902と、電磁弁制御部903とを備えている。制御部90は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。
【0037】
光源制御部901は、光源20の点灯/消灯を切り替える機能を有する。ポンプ制御部902は、例えばポンプ40のモータの回転数を変化させて、液体層17の給水量及び排水量を制御する機能を有する。又、ポンプ制御部902は、気体発生ポンプ60を制御して、気泡Bを発生させる機能を有する。又、電磁弁制御部903は、電磁弁50を制御して、液体層17への給水をオン/オフする機能を有する。又、電磁弁制御部903は、電磁弁70を制御して、液体層17への気泡の供給をオン/オフする機能を有する。制御部90は、必要に応じ、その他の機能を有してもよい。
【0038】
なお、貯水部30から液体層17の給水を行うことは一例であり、例えば、水道等の水源から液体層17の給水を行ってもよい。
【0039】
図4は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)であり、
図1のA-A線に沿う縦断面を示している。
図4は、光源20を消灯した状態である。
【0040】
図4において、例えば、基材11がソーダ石灰ガラスである場合、屈折率n1=1.51である。又、液体層17が水である場合、屈折率n2=1.33である。この場合、光学部材10の外部から入射した光が、光学部材10を透過する。そのため、光学部材10をガラス等と同様の可視光を透過する透明部材として機能させることができる。なお、光学部材10は、可視光以外の光を透過してもよい。又、基材11と基材12に同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0041】
図5は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)である。
図5は、
図4において液体層17に気泡Bを導入し、液体層17を支持体14側から支持体13側に流動させた状態であり、光源20は消灯したままである。
【0042】
図5に示すように、液体層17に気泡Bが導入されると、液体層17が白濁状態となる。つまり、液体層17が、気泡Bを有さない
図4の状態(第1状態)から、気泡Bを有して可視光透過率や紫外光透過率が下がった状態(第2状態)に可変される。
図5において、気泡Bは光を散乱するため、液体層17は光源20からの光を導光可能な形態である。但し、ここでは光源20が点灯していないため、液体層17は導光体としては機能していない。
【0043】
気泡Bは、液体層17内に所定の分布状態を有する。気泡Bは、大きさの異なる気泡を含んでもよい。所定の分布状態とは、例えば、気泡Bが液体層17の領域毎に異なる密度に制御されている状態である。或いは、所定の分布状態とは、例えば、気泡Bが液体層17に均一に分布する状態である。ここで、均一とは、液体層17内において、単位体積当たりの気泡Bの密度のばらつきが10%以内であることを指す。
【0044】
液体層17に導入する気泡Bの密度は、ノズル80として、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、加圧溶解方式等を用いた場合、マイクロバブル入りの水を液体層17に供給する方法を用いた場合の何れの場合も、各種方式に応じて調整可能である。気泡Bが高密度となるほど、液体層17の白濁状態が強くなり、液体層17の可視光透過率や紫外光透過率が低下する。
【0045】
ポンプ制御部902により液体層17の白濁状態を適切に制御することで、可視光透過率や紫外光透過率が
図4の状態よりも低下するため、可視光や紫外光を遮断できる。
【0046】
例えば、液体層17に導入する気泡Bの密度を比較的高めに調整することで、光学部材10を外光を遮光するプライバシーガラスとして用いることができる。又、液体層17に導入する気泡Bの密度を比較的低めに調整することで、防眩機能を実現できる。又、光学部材10を建築物の窓部に装着する場合、室内に入射するエネルギーの大小に応じて光学部材10の白濁状態を調整することで、室内に入射するエネルギーを抑制し、室内側の空調装置による冷房効率を向上できる。なお、光学部材10は、建築物の床や天窓に用いることも可能である。
【0047】
図6は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)である。
図6は、
図4において液体層17に気泡Bを導入し、液体層17を支持体14側から支持体13側に流動させた状態であり、光源20が点灯している。すなわち、
図5において、光源20が点灯した状態である。
【0048】
図6において、光源20に近い側(支持体16側)では密度が低く、光源20から遠くなるに従って密度が高くなるように気泡Bを分布させることが好ましい。これにより、光学部材10の液体層17を導光した光が基材11及び12の所定面(液体層17と接する面の反対面)から面発光する面光源として機能させることができる。
【0049】
図6において、光源20から出射された光L
1は、支持体16を介して液体層17に入射し、導光体として機能する液体層17、基材11、及び基材12内で全反射を繰り返して進み、一部の光が基材11及び12側に反射され、基材11及び12から外部に出射される。基材11及び12からの出射光L
2の輝度が、基材11及び12の出射面の全面において均一化するように、光源20に近い側から遠い側に行くに従って気泡Bの密度を高くすることで、光学部材10を面光源として機能させることができる。
【0050】
すなわち、制御部90の光源制御部901が光源20を点灯し、ポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が光源20に近い側から遠い側に行くに従って気泡Bの密度を高くするようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10を面光源として機能させることができる。光源20に近い側から遠い側に行くに従って気泡Bの密度をどの程度高くすると好適であるかは、シミュレーション結果を参照して後述する。
【0051】
このように、ポンプ40及び電磁弁50は、制御部90に制御されて、液体層17を第1状態と第2状態とに可変する液体層変更部である。そして、制御部90の光源制御部901が光源20を消灯し、制御部90のポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17が第1状態になるように制御すれば、光学部材10を可視光を透過する透明部材として機能させることができる。
【0052】
又、制御部90の光源制御部901が光源20を消灯し、制御部90のポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17が第2状態になるように制御すれば、光学部材10を防眩又は遮光機能を有する部材として機能させることができる。
【0053】
又、制御部90の光源制御部901が光源20を点灯し、制御部90のポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17が第2状態になるように制御すれば、光学部材10を液体層17を導光した光が面発光する面光源として機能させることができる。
【0054】
なお、前述のように、支持体15の外側と支持体16の外側に、液体層17を介して互いに対向する2つの光源20を配置してもよい。この場合には、制御部90の光源制御部901が光源20を点灯し、ポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17に気泡Bが均一に分布するようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10を面光源として機能させることができる。
【0055】
又、液体層17の流速と気泡Bの流速とを略等しくすることで、出射光L2の揺らぎを演出できるため、光学部材10を観賞用に使用できる。又、液体層17内に大小の気泡を混在させてもよい。この場合も、出射光L2の揺らぎを演出できるため、光学部材10を観賞用に使用できる。液体層17内に大小の気泡を混在させる場合には、ノズル80に代えて、直径の異なる気泡を発生可能な複数のノズルを用いればよい。
【0056】
[シミュレーション]
導光システム1では、基材11及び12の主面の面積の大きさによって、気泡Bの密度の好適な範囲が大きく変わる。従って、気泡Bの密度は、基材11及び12の主面の面積に合わせて面光源として良好になるように適宜調整することが好ましい。ここでは、一例として、基材11及び12がガラスであり、主面の面積が狭いパターンと広いパターンの2つの場合について、シミュレーションを行った。以下に結果を示す。
【0057】
[計算ソフトによる面内輝度分布の確認]
Lighttoolsを用いて
図1から得られる光学部材をモデルとして本発明の光学的な効果を確認した。
【0058】
計算モデルは、面積150mm×100mm、厚さ0.5mm及び屈折率1.49である2枚のガラスを用いたガラス間距離2mmの水槽において、水槽の長辺側の両端部より光を入光するモデル(ガラスの主面の面積が狭いパターン)と、面積2030mm×1690mm、厚さ0.5mm及び屈折率1.49である2枚のガラスを用いたガラス間距離2mmの水槽において、水槽の長辺側の両端部より光を入光するモデル(ガラスの主面の面積が広いパターン)を組んだ。
【0059】
水槽中には、屈折率1.33の水が封入されており、その水に種々の方法で直径1μm、屈折率1のマイクロバブルを導入した。このマイクロバブルの密度をパラメータとしてガラスの面内輝度分布を計算した。
【0060】
ガラスの主面の面積が狭いパターン(面積150mm×100mmのモデル)についてのシミュレーション結果を
図7に示す。
図7において、上段の数値はマイクロバブルの密度[個/mm
3]であり、下段はガラスの面内輝度分布の計算結果である。
【0061】
図7より、面積150mm×100mmのモデルでは、面内のマイクロバブル密度が9000~70000個/mm
3の範囲で良好な面内輝度分布が得られるのに対し、範囲外において輝度分布が悪くなっていることがわかる。又、最も面内輝度分布が良くなる密度は、32000個/mm
3であることが分かった。
【0062】
又、ガラスの主面の面積が広いパターン(面積2030mm×1690mmのモデル)についてのシミュレーション結果を
図8に示す。
図8において、上段の数値はマイクロバブルの密度[個/mm
3]であり、下段はガラスの面内輝度分布の計算結果である。
【0063】
図8より、面積2030mm×1690mmのモデルでは、面内のマイクロバブル密度が3000~5500個/mm
3の範囲で良好な面内輝度分布が得られるのに対し、範囲外において輝度分布が悪くなっていることがわかる。又、最も面内輝度分布が良くなる密度は、3500個/mm
3であることが分かった。
【0064】
又、上記の構成(ガラスの主面の面積が狭いパターンと広いパターン)で水槽の長辺側の一端部より光を入光するモデルにて水槽の短辺距離の4分の1を1ブロックとし、各ブロックのマイクロバブルの密度をパラメータとしてガラスの面内輝度分布を計算した。
【0065】
ガラスの主面の面積が狭いパターン(面積150mm×100mmのモデル)についてのシミュレーション結果を
図9A及び
図9Bに示す。
図9Aはマイクロバブルの密度を最適化する前のガラスの面内輝度分布の計算結果、
図9Bはマイクロバブルの密度を最適化した後のガラスの面内輝度分布の計算結果である。
【0066】
図9A及び
図9Bより、水槽の長辺側の一端部より光を入光する場合においても、マイクロバブルの密度を最適化することにより、ガラスの面内輝度分布を略均一化できることがわかった。具体的には、良好な泡密度の範囲は、シミュレーションより面積150mm×100mmのモデルで、光源側からの各ブロックをそれぞれ1stブロック、2ndブロック、3rdブロック、4thブロックとしたときに面内輝度分布が良くなる密度は、3000~6000、6000~86000、83000~160000、100000~270000個/mm
3であることがわかった。
【0067】
ガラスの主面の面積が広いパターン(面積2030mm×1690mmのモデル)についてのシミュレーション結果を
図10A及び
図10Bに示す。
図10Aはマイクロバブルの密度を最適化する前のガラスの面内輝度分布の計算結果、
図10Bはマイクロバブルの密度を最適化した後のガラスの面内輝度分布の計算結果である。
【0068】
図10A及び
図10Bより、水槽の長辺側の一端部より光を入光する場合においても、マイクロバブルの密度を最適化することにより、ガラスの面内輝度分布を略均一化できることがわかった。具体的には、良好な泡密度の範囲は、シミュレーションより面積2030mm×1690mmのモデルでは、光源側からの各ブロックをそれぞれ1stブロック、2ndブロック、3rdブロック、4thブロックとしたときに最も面内輝度分布が良くなる密度は、2000~3000、3700~5200、5000~9400、7300~19300個/mm
3であることがわかった。
【0069】
上記の結果より、マイクロバブルの密度をある範囲内に制御すれば良好な面光源を得られることがわかる。
【0070】
このように、光学部材10は、面発光する面光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能である。つまり、光学部材10は、照明器具としても用いることができ、外の景観などの室外を見ることもできる。又、光学部材10は、観賞、防眩、遮光等の用途に使用可能である。
【0071】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、光学部材が1つの基材を有する例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0072】
図11は、第2実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
図11に示すように、導光システム1Aは、光学部材10が光学部材10Aに置換された点、排水路32、気体発生ポンプ60、気体供給路61、気体還流路62、ノズル80を有していない点が、導光システム1(
図1参照)と相違する。
【0073】
すなわち、導光システム1Aは、光学部材10Aと、ポンプ40と、電磁弁50と、制御部90とを有しており、光学部材10Aは、基材11と、液体層17Aと、光源20と、貯水部30と、液体供給部100とを有している。
【0074】
基材11は、枡状の貯水部30の中に、貯水部30の底面に対して略垂直になるように配置されている。基材11は、液体層17Aと接する面が上側を向くように、貯水部30の底面に対して傾斜して配置されてもよい。
【0075】
基材11の上縁側(貯水部30と反対側)には、基材11と略同一幅の細長い筒状の部材である液体供給部100が配置されている。液体供給部100において、貯水部30と対向する側には、液体層17Aを生成する多数の孔が所定ピッチで形成されている。液体供給部100は、例えば、塩化ビニル管等で形成できるが、これには限定されない。
【0076】
貯水部30は、ポンプ40及び電磁弁50を経由して、給水路31により液体供給部100と接続されている。なお、給水路31を光学部材10Aの液体供給部100と接続する位置は、特に限定されない。
【0077】
液体層17Aは、基材11の所定面に接する層であり、基材11の所定面とは接しない側の反対面が平滑である第1状態と、反対面が波状の凹凸を有する第2状態とに可変可能である。液体層17Aは、第2状態において、光源20が点灯している場合、光源20の出射光を導光する導光体となる。
【0078】
制御部90のポンプ制御部902及び電磁弁制御部903は、液体層17Aが第1状態又は第2状態になるように、ポンプ40及び電磁弁50を制御できる。
【0079】
図12は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)であり、
図11のB-B線に沿う縦断面を示している。
図12では、液体層17Aは第1状態であり、光源20は消灯している。
【0080】
図12において、例えば、基材11がソーダ石灰ガラスである場合、屈折率n1=1.51である。又、液体層17Aが水である場合、屈折率n2=1.33である。この場合、光学部材10Aの外部から入射した光が、光学部材10Aを透過する。そのため、光学部材10Aをガラス等と同様の可視光を透過する透明部材として機能させることができる。
【0081】
すなわち、ポンプ40及び電磁弁50は、制御部90に制御されて、液体層17Aを第1状態と第2状態とに可変する液体層変更部である。そして、制御部90の光源制御部901が光源20を消灯し、制御部90のポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17Aが第1状態になるように制御すれば、光学部材10Aを可視光を透過する透明部材として機能させることができる。なお、光学部材10Aは、可視光以外の光を透過してもよい。
【0082】
図13は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)であり、
図11のB-B線に沿う縦断面を示している。
図13では、液体層17Aは第2状態であるが、光源20は消灯したままである。
【0083】
図13に示すように、液体層17Aが第2状態になると、波状の凹凸により液体層17Aが白濁状態となる。又、第2状態の波状の凹凸の密度は、ポンプ制御部902がポンプ40のモータの回転数を変化させて、液体層17Aの給水量を調整することで制御可能である。液体層17Aの給水量が多くなるほど、波状の凹凸が高密度となり、液体層17Aの白濁状態が強くなる。すなわち、液体層17Aの給水量が多くなるほど、波状の凹凸が高密度となり、液体層17Aの可視光透過率や紫外光透過率が低下する。
【0084】
ポンプ制御部902により液体層17Aの白濁状態を適切に制御することで、可視光透過率が
図12の状態よりも低下するため、可視光や紫外光を遮断できる。
【0085】
例えば、液体層17Aの波状の凹凸の密度を比較的高めに調整することで、光学部材10Aをプライバシーガラスとして用いることができる。又、液体層17Aの波状の凹凸の密度を比較的低めに調整することで、防眩機能を実現できる。又、光学部材10Aを建築物の窓部に装着する場合、室内に入射するエネルギーの大小に応じて光学部材10Aの白濁状態を調整することで、室内に入射するエネルギーを抑制し、室内側の空調装置による冷房効率を向上できる。
【0086】
図14は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)であり、
図11のB-B線に沿う縦断面を示している。
図14において、液体層17Aは第2状態であり、光源20が点灯している。すなわち、
図13において、光源20が点灯した状態である。
【0087】
図14において、光源20に近い側から遠い側に行くに従って波状の凹凸の密度を高くすることで、液体層17Aを導光体として機能させることが可能である。この場合、光学部材10Aの液体層17A及び基材11を導光した光が基材11の所定面(液体層17Aと接する面の反対面)から面発光する面光源として機能させることができる。
【0088】
図14において、光源20から出射された光L
1は、液体層17Aに入射し、導光体として機能する液体層17A及び基材11内で全反射を繰り返して進み、一部の光が基材11側に反射され、基材11から外部に出射される。基材11からの出射光L
2の輝度が、基材11の出射面の全面において均一化するように、光源20に近い側から遠い側に行くに従って波状の凹凸の密度を高くすることで、光学部材10Aを面光源として機能させることができる。
【0089】
すなわち、制御部90の光源制御部901が光源20を点灯し、ポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が光源20に近い側から遠い側に行くに従って波状の凹凸の密度を高くするようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10Aを面光源として機能させることができる。
【0090】
なお、前述のように、液体層17Aを介して互いに対向する2つの光源20を配置してもよい。この場合には、制御部90の光源制御部901が光源20を点灯し、ポンプ制御部902及び電磁弁制御部903が液体層17A全域で波状の凹凸の密度が略一定となるようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10Aを面光源として機能させることができる。
【0091】
又、液体層17A内に大小の波状の凹凸を混在させることで、出射光L2の揺らぎを演出できるため、光学部材10Aを観賞用に使用できる。
【0092】
このように、光学部材10Aは、面発光する面光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能である。つまり、光学部材10Aは、照明器具としても用いることができ、外の景観などの室外を見ることもできる。又、光学部材10Aは、観賞、防眩、遮光等の用途に使用可能である。
【0093】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0094】
本国際出願は2019年9月26日に出願した日本国特許出願2019-175835号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2019-175835号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0095】
1、1A 導光システム
10、10A 光学部材
11、12 基材
13、14、15、16 支持体
17、17A 液体層
20 光源
30 貯水部
31 給水路
32 排水路
40 ポンプ
50、70 電磁弁
60 気体発生ポンプ
61 気体供給路
62 気体還流路
80 ノズル
90 制御部
100 液体供給部