(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】バタフライ弁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 1/46 20060101AFI20241106BHJP
F16K 1/226 20060101ALI20241106BHJP
F16K 25/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F16K1/46 Z
F16K1/226 C
F16K25/00
F16K1/226 G
(21)【出願番号】P 2020037736
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 英三
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-044694(JP,A)
【文献】特開2011-220382(JP,A)
【文献】特開2017-078514(JP,A)
【文献】特開2018-119576(JP,A)
【文献】特開2017-223323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0331230(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109312866(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
7/00- 7/20
13/00-13/10
25/00-29/02
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下水の移動を
円板状の弁体の開閉によって制御するバタフライ弁であって、
前記弁体を格納する弁箱と、
前記弁箱に設けられ前記弁体が開閉する開口と、
前記弁箱に設けられ前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁体が接触する弁箱弁座と、
前記弁体に設けられ外力を受けると変形する弾性部材であるとともに、前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁箱弁座に接触する弁体弁座と、
前記弁体弁座を挟持する第1の挟持部材及び第2の挟持部材と、
前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接続する接続手段と、
前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材との隙間からなり、前記弁体弁座と前記弁箱弁座との距離を調整する調整手段と、を有し、
前記弁箱弁座は、
第1の方法で形成された第1の弁箱弁座又は、第2の方法で形成された第2の弁箱弁座であって、
前記弁体の
径方向外側の端部から前記第1の弁箱弁座までの距離は、
前記弁体の
径方向外側の端部から前記第2の弁箱弁座までの距離よりも短くなっており、
前記第1の弁箱弁座の場合、前記接続手段により前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを離間させ、
前記第2の弁箱弁座の場合、前記接続手段により前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接触させることを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
前記弁体の止水面に直交する方向における前記隙間の長さは、前記弁体の厚みの2~6%に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記弁体の
径方向外側の端部は、前記弁体が前記開口を全閉したときに前記第1の挟持部材が前記弁箱弁座に近接する第1の挟持部材の近接点及び前記弁体が前記開口を全閉したときに前記第2の挟持部材が前記弁箱弁座に近接する前記第2の挟持部材の近接点を結ぶことによって形成され、前記弁体の止水面に直交する方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1又は2記載のバタフライ弁。
【請求項4】
前記第1の弁箱弁座は、前記弁箱の弁座受部のねじ部に螺合することによって形成されるねじ式弁箱弁座であり、
前記第2の弁箱弁座は、前記弁箱の内部に盛られた金属に切削加工が施されることによって形成される切削加工式弁箱弁座であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバタフライ弁。
【請求項5】
弁体を格納する弁箱と、
前記弁箱に設けられ前記弁体が開閉する開口と、
前記弁箱に設けられ前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁体が接触する弁箱弁座と、
前記弁体に設けられ外力を受けると変形する弾性部材であるとともに、前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁箱弁座に接触する弁体弁座と、
前記弁体弁座を挟持する第1の挟持部材及び第2の挟持部材と、
前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接続する接続手段と、
前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材との隙間からなり、前記弁体弁座と前記弁箱弁座との距離を調整する調整手段と、を有し、
前記弁箱弁座は、
第1の方法で形成された第1の弁箱弁座又は、第2の方法で形成された第2の弁箱弁座であって、
前記弁体の
径方向外側の端部から前記第1の弁箱弁座までの距離は、
前記弁体の
径方向外側の端部から前記第2の弁箱弁座までの距離よりも短くなっており、上下水の移動を前記弁体の開閉によって制御するバタフライ弁の製造方法において、
前記弁箱弁座が前記第1の弁箱弁座によって形成されたか否かを判別する判別ステップと、前記弁箱弁座が前記第1の弁箱弁座によって形成されたとき、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを離間した位置で接続し、前記弁箱弁座が前記第2の弁箱弁座によって形成されたとき、前記第1の挟持部材及び前記第2の挟持部材同士が接触する位置で接続する接続ステップと、を有することを特徴とするバタフライ弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバタフライ弁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の移動を弁体の開閉によって制御する流体制御装置として、例えば、上下水道管に設置されるバタフライ弁が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のバタフライ弁は上下水道管に接続される弁箱と、弁箱内部で回転して弁箱に接離する弁体と、を備え、弁箱は弁体が当接する弁箱弁座を有し、弁体は弁箱が当接する弁体弁座を有する。弁箱弁座は、例えば、弁箱の内部に金属を盛り、その金属に切削加工が施されることによって形成され、弁体弁座は、例えば、ゴム等の弾性部材であり、弁箱弁座及び弁体弁座が当接しているとき、上下水道管を流れる上下水は弁箱弁座及び弁体弁座が密接することによって止水される。
【0003】
また、弁箱弁座が切削加工以外の方法によって形成されているバタフライ弁も知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2のバタフライ弁は、特許文献1のバタフライ弁と同様に弁箱及び弁体を備え、弁体はゴム等の弾性部材によって形成される弁体弁座を有するが、弁箱は弁箱弁座だけでなく弁座受部も有する。弁箱弁座はねじ部を有し、弁座受部は弁体弁座のねじ部に対応するねじ部を有し、弁箱弁座は弁箱弁座のねじ部が弁座受部のねじ部に螺合することによって形成される。弁箱弁座及び弁体弁座が当接しているとき、上下水道管を流れる上下水は弁箱弁座及び弁体弁座が密接することによって止水される。
【0004】
すなわち、バタフライ弁が上下水道管を流れる上下水を止水する止水機能を確保するためには、弁体弁座及び弁箱弁座が密接する必要があり、これを前提に弁体のサイズは決定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭59-054260号公報
【文献】特開2018-119576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弁箱弁座の弁箱の内面からの突出量は弁箱弁座を弁箱に形成する弁箱弁座の形成方法に応じて変化する。例えば、弁箱の内部に盛られた金属に切削加工が施されることによって形成される弁箱弁座(以下、「切削加工式弁箱弁座」という。)の弁箱の内面からの突出量が、弁箱弁座のねじ部が弁箱の弁座受部のねじ部に螺合することによって形成される弁箱弁座(以下、「ねじ式弁箱弁座」という。)の弁箱の内面からの突出量よりも小さいとき、切削加工式弁箱弁座を有するバタフライ弁に使用される弁体は、ねじ式弁箱弁座を有するバタフライ弁に使用される弁体よりも大きくする必要がある。
【0007】
したがって、バタフライ弁は、予めサイズの異なる複数の弁体が準備され、弁箱弁座の形成方法に応じて弁体が選択されなければ製造されず、弁箱弁座の形成方法に関わらず単一の弁体を使用することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、弁箱弁座の形成方法に関わらず単一の弁体を使用することができるバタフライ弁及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、上下水の移動を円板状の弁体の開閉によって制御するバタフライ弁であって、前記弁体を格納する弁箱と、前記弁箱に設けられ前記弁体が開閉する開口と、前記弁箱に設けられ前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁体が接触する弁箱弁座と、前記弁体に設けられ外力を受けると変形する弾性部材であるとともに、前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁箱弁座に接触する弁体弁座と、前記弁体弁座を挟持する第1の挟持部材及び第2の挟持部材と、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接続する接続手段と、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材との隙間からなり、前記弁体弁座と前記弁箱弁座との距離を調整する調整手段と、を有し、前記弁箱弁座は、第1の方法で形成された第1の弁箱弁座又は、第2の方法で形成された第2の弁箱弁座であって、前記弁体の径方向外側の端部から前記第1の弁箱弁座までの距離は、前記弁体の径方向外側の端部から前記第2の弁箱弁座までの距離よりも短くなっており、前記第1の弁箱弁座の場合、前記接続手段により前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを離間させ、前記第2の弁箱弁座の場合、前記接続手段により前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接触させることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、弁体を格納する弁箱と、前記弁箱に設けられ前記弁体が開閉する開口と、前記弁箱に設けられ前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁体が接触する弁箱弁座と、前記弁体に設けられ外力を受けると変形する弾性部材であるとともに、前記弁体が前記開口を全閉したときに前記弁箱弁座に接触する弁体弁座と、前記弁体弁座を挟持する第1の挟持部材及び第2の挟持部材と、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを接続する接続手段と、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材との隙間からなり、前記弁体弁座と前記弁箱弁座との距離を調整する調整手段と、を有し、前記弁箱弁座は、第1の方法で形成された第1の弁箱弁座又は、第2の方法で形成された第2の弁箱弁座であって、前記弁体の径方向外側の端部から前記第1の弁箱弁座までの距離は、前記弁体の径方向外側の端部から前記第2の弁箱弁座までの距離よりも短くなっており、上下水の移動を前記弁体の開閉によって制御するバタフライ弁の製造方法において、前記弁箱弁座が前記第1の弁箱弁座によって形成されたか否かを判別する判別ステップと、前記弁箱弁座が前記第1の弁箱弁座によって形成されたとき、前記第1の挟持部材と前記第2の挟持部材とを離間した位置で接続し、前記弁箱弁座が前記第2の弁箱弁座によって形成されたとき、前記第1の挟持部材及び前記第2の挟持部材同士が接触する位置で接続する接続ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁箱弁座の形成方法に関わらず単一の弁体を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施の形態に係る流体制御装置としてのバタフライ弁の外観図である。
【
図2】
図1Bにおける弁体弁座の周辺を説明するために用いられる概略図である。
【
図3A】
図1Bにおける弁箱弁座が弁箱に螺合される方法によって形成された場合のねじ式弁箱弁座及びこれに当接する弁体弁座の周辺を説明するために用いられる図である。
【
図3B】
図1Bにおける弁箱弁座が弁箱の内部に盛られた金属に切削加工が施される方法によって形成された場合の切削加工式弁箱弁座及びこれに当接する弁体弁座の周辺を説明するために用いられる図である。
【
図4】
図1Aにおける弁体の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図1Aは、本発明の実施の形態に係る流体制御装置としてのバタフライ弁10の外観図である。
図1Bは、
図1AのI-I線に沿う断面図である。
【0015】
図1A及び
図1Bのバタフライ弁10は、操作部11、減速機12、弁棒13、弁体14、弁箱15、及び開口17を備えている。弁体14は、止水面14a及び弁体弁座14bを有し、弁箱15の内部に格納されている。弁体弁座14bは外力を受けると変形する弾性部材、例えば、ゴムによって形成されている。弁体弁座14bは、一定の断面形状となっており、リング状を呈する。
【0016】
弁箱15は内面15a、弁箱弁座15b、及びフランジ15c,15dを有し、フランジ15c,15dは上下水道管に接続され、上下水(流体)はフランジ15cからフランジ15dの方向に流れる。操作部11は減速機12を介して弁棒13に係合し、弁棒13はボルト及びナットによって弁体14に固定されている。したがって、操作部11が操作されると、弁体14は弁棒13を中心軸として弁箱15の内部を回転する。
【0017】
弁体14は、例えば、弁箱15の内部の上下水の流路である開口17を全閉する。このとき、弁体弁座14bは弁箱弁座15bに当接し、フランジ15cから弁箱15の内部に流入した上下水は弁体14によって止水され、弁箱15の外部に流出しない。弁箱15の開口17を全閉する弁体14は弁棒13を中心軸として、例えば、弁箱15の開口17を全閉する弁体14に直交する位置まで回転し、弁箱15の開口17を全開する。このとき、弁体弁座14bは弁箱弁座15bから離間し、フランジ15cから弁箱15の内部に流入した上下水はフランジ15dから弁箱15の外部に流出する。したがって、フランジ15cから弁箱15の内部に流入した上下水の移動は弁体14が開口17を開閉することによって制御されている。
【0018】
図2は、
図1Bにおける弁体弁座14bの周辺を説明するために用いられる概略図である。
【0019】
図2において、弁体14は止水面14a、弁体弁座14b、弁体弁座挟持部材14c,14d(第1の挟持部材、第2の挟持部材)、及び接続部材14e(接続手段)を備えている。弁体弁座挟持部材14cは貫通孔21を有し、弁体弁座挟持部材14dは弁体弁座挟持部材14cの貫通孔21に連通する連通孔22を有する。弁体弁座挟持部材14dは円板状を呈する。弁体弁座挟持部材14cは、弁体弁座挟持部材14dの外周縁に沿って配置されリング状を呈する。弁体弁座挟持部材14c,14dはいずれも複数の部材で形成されていてもよい。止水面14aは弁体弁座挟持部材14dの一部である。弁体弁座14bを介して止水面14aに対向する対向面14fは、弁体弁座挟持部材14c,14dのそれぞれが有する対向面構成部14g,14hによって構成されている。
【0020】
弁体弁座挟持部材14c,14dは弁体弁座14bを挟持し、接続部材14e、例えば、六角穴付きボルトが弁体弁座挟持部材14cの貫通孔21に挿通されるとともに、弁体弁座挟持部材14dの連通孔22に螺合されることにより接続される。弁体弁座挟持部材14cは、弁体弁座挟持部材14dに対して弁体14の厚さ方向に移動可能に配置されている。接続部材14e、貫通孔21及び連通孔22は、弁体14の周方向に複数個所に設けられている。このとき、対向面構成部14g,14hは面一であり、弁体弁座挟持部材14c,14dはその間に間隙16(調整手段)を有する。
【0021】
弁体14が弁箱15の開口17を全閉するとき、弁体弁座14bは弁箱弁座15bに当接しているが、弁体弁座挟持部材14c,14dは弁箱弁座15bに接触していない。すなわち、弁体弁座14bは、弁体弁座挟持部材14cのうち弁箱弁座15bに最も近いポイントP1と、弁体弁座挟持部材14dのうち弁箱弁座15bに最も近いポイントP2とを結ぶ直線Lから弁箱弁座15b側に突出している。弁体弁座14bの断面形状は特に限定されないが、本実施形態では、外側(弁箱15側)の板厚が、内側(弁棒13側)の板厚よりも小さくなっている。つまり、弁体弁座14bが挟持された場合、弁体弁座14bの外側が突出しやすくなっている。
【0022】
図3Aは、
図1Bにおける弁箱弁座15bが弁箱15に螺合される方法によって形成された場合のねじ式弁箱弁座15b
1及びこれに当接する弁体弁座14bの周辺を説明するために用いられる図である。
図3Bは、
図1Bにおける弁箱弁座15bが弁箱の内部に盛られた金属に切削加工が施される方法によって形成された場合の切削加工式弁箱弁座15b
2及びこれに当接する弁体弁座14bの周辺を説明するために用いられる図である。
【0023】
本実施の形態において、ねじ式弁箱弁座15b
1の内面15aからの突出量は、切削加工式弁箱弁座15b
2の内面15aからの突出量よりも大きくなっている。つまり、ねじ式弁箱弁座15b
1から直線Lまでの距離d
1(
図3A参照)は、切削加工式弁箱弁座15b
2から直線Lまでの距離d
2(
図3B参照)よりも短いことを前提とする。
【0024】
図3Aにおいて、弁体弁座挟持部材14c,14dは弁体弁座14bを挟持し、接続部材14e、例えば、六角穴付きボルトが弁体弁座挟持部材14cの貫通孔21に挿通されるとともに、弁体弁座挟持部材14dの連通孔22に螺合されることにより、接続されている。このとき、対向面構成部14g,14hは面一(第1の位置)であり、弁体弁座挟持部材14c,14dはその間に間隙16を有する。
【0025】
一方、
図3Bにおいて、弁体弁座挟持部材14c,14dは弁体弁座14bを挟持し、接続部材14e、例えば、六角穴付きボルトが弁体弁座挟持部材14cの貫通孔21に挿通されるとともに、弁体弁座挟持部材14dの連通孔22に螺合されることにより、接続されている。しかしながら、このとき、対向面構成部14g,14hは面一ではなく対向面構成部14gが対向面構成部14hよりも止水面14a側に位置し(第2の位置)、弁体弁座挟持部材14c,14dはその間に間隙16を有しない。
【0026】
もし、
図3Bにおいて、対向面構成部14g,14hが面一であるとともに、弁体弁座挟持部材14c,14dがその間に間隙16を有していれば、距離d
2は距離d
1より長いため、弁体弁座14bは切削加工式弁箱弁座15b
2に密接することができず、弁体14が弁箱15の開口17を全閉しても弁体弁座14bは弁箱弁座15bの間から漏水して止水機能が確保されない虞がある。
【0027】
これに対応して、弁体弁座挟持部材14c,14dが接続されるとき、接続部材14eが締め付けられ、面一にある対向面構成部14g,14hのうち対向面構成部14gは間隙16が無くなるまで止水面14a側に移動する。これにより、弁体弁座14bは弁体弁座挟持部材14c,14dに押し潰されて変形し、弁体弁座14bの直線Lから弁箱弁座15bへの突出量が増大するので、弁体弁座14bは切削加工式弁箱弁座15b2に密接することができ、もって、弁体14が弁箱15の開口17を全閉したときの止水機能を確実に確保することができる。
【0028】
図3A及び
図3Bのバタフライ弁10によれば、弁体弁座挟持部材14c,14dの間に間隙16が存在するか否かによって対向面構成部14g,14hの位置関係が変化し、弁体弁座14bの弁箱弁座15bへの突出量が調整されるので、弁箱弁座15bが切削加工式弁箱弁座15b
2であるか、ねじ式弁箱弁座15b
1であるかに関わらず、単一の弁体14を使用することができる。なお、弁箱弁座15bの形成方法に関わらず単一の弁体14が使用されると、バタフライ弁10の生産コストの低減や生産リードタイムの短縮を実現することができる。
【0029】
図4は、
図1Aにおける弁体14の製造方法(流体制御装置の製造方法)の手順を示すフローチャートである。
図4において、まず、止水面14a及び対向面構成部14hを有する弁体弁座挟持部材14d、弁体弁座14b、並びに、対向面構成部14gを有する弁体弁座挟持部材14cが順次載置される(S41)。次いで、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b
1であるか否かを判別する(S42、判別ステップ)。
【0030】
S42の判別の結果、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1であるとき、接続部材14e、例えば、六角穴付きボルトが弁体弁座挟持部材14cが有する貫通孔21及び弁体弁座挟持部材14dが有する連通孔22に螺合され、弁体弁座挟持部材14c,14dは弁体弁座14bを挟持して接続される(S43、接続ステップ)。続いて、対向面構成部14g,14hが面一であるか否かが判別される(S44)。S44の判別の結果、対向面構成部14g,14hが面一であるとき、弁体14(バタフライ弁10)は完成し、対向面構成部14g,14hが面一でないとき、弁体14の製造方法はS43に戻る。
【0031】
S42の判別の結果、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1でないとき、弁箱弁座15bは切削加工式弁箱弁座15b2であり、接続部材14e、例えば、六角穴付きボルトが弁体弁座挟持部材14cが有する貫通孔21及び弁体弁座挟持部材14dが有する連通孔22に螺合され、弁体弁座挟持部材14c,14dは弁体弁座14bを挟持して接続される(S45)。次いで、接続部材14eは弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突するか否かが判別される(S46)。S46の判別の結果、弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突したとき、弁体14(バタフライ弁10)は完成し、弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突していないとき、弁体14の製造方法はS45に戻る。
【0032】
図4の弁体14の製造方法によれば、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b
1であるか否かが判別され(S42)、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b
1であるとき、弁体弁座挟持部材14c,14dが接続部材14eによって接続される(S43)。このとき、対向面構成部14g,14hは面一であり、間隙16が弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在している。したがって、弁体弁座14bは変形しないか、若しくは変形が小さいため、ねじ式弁箱弁座15b
1への突出量は弁体弁座挟持部材14c,14dが接続部材14eによって接続されたことによって変化しないか、若しくは変化が小さい。
【0033】
一方、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1であるか否かが判別され(S42)、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1でないとき、つまり、弁箱弁座15bが切削加工式弁箱弁座15b2であるとき、弁体弁座挟持部材14c,14dが接続部材14eによって接続される(S45)。このとき、接続部材14eは弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突するまで螺合されるので(S46)、弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在していた間隙16は無くなり、弁体弁座14bは圧迫される。これにより、弁体弁座14bは変形し、切削加工式弁箱弁座15b2への突出量が増大する。
【0034】
弁体弁座14bが切削加工式弁箱弁座15b2であるとき、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1であるときと同様に、間隙16が弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在し、対向面構成部14g,14hは面一となるように弁体弁座挟持部材14c,14dが接続されると、距離d2は距離d1より長いので、弁体弁座14bは切削加工式弁箱弁座15b2に密接しない虞がある。しかしながら、弁体弁座14bが切削加工式弁箱弁座15b2であるとき、弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在していた間隙16が無くなるように弁体弁座挟持部材14c,14dが接続され、弁体弁座14bは変形して切削加工式弁箱弁座15b2への突出量が増大するので、弁体14が開口17を全閉したとき、弁体弁座14bは切削加工式弁箱弁座15b2に確実に密接し、バタフライ弁10の止水機能が確保される。
【0035】
そうすると、弁箱弁座15bが切削加工式弁箱弁座15b2及びねじ式弁箱弁座15b1のいずれであっても弁体弁座14bの弁箱弁座15bへの突出量が調整されるので、弁箱弁座15bが切削加工式弁箱弁座15b2であるか、ねじ式弁箱弁座15b1であるかに関わらず、単一の弁体14を使用することができる。
【0036】
また、弁体弁座14bの弁箱弁座15bへの突出量は、弁体弁座挟持部材14c,14dの位置関係によって簡単に調整することができる。具体的に、弁箱弁座15bがねじ式弁箱弁座15b1であるとき、対向面構成部14g,14hは面一にすればよく、弁箱弁座15bが切削加工式弁箱弁座15b2であるとき、弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突するまで接続部材14eを締め付ければよい。つまり、当該調整操作を容易に行うことができる。
【0037】
本実施の形態において、弁体14の止水面14aに直交する方向(以下、「弁体14の厚み方向」という。)に関する間隙16の長さn(
図3A参照)は、例えば、弁体14の厚みT(
図3A参照)の2~6%であるのがよい。
【0038】
間隙16の長さnが弁体14の厚みTの2%未満の場合、間隙16が弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在しているときに接続部材14eが締め付けられても、弁体弁座14bの変形量は僅かであり、弁箱弁座15bへの弁体弁座14bの突出量は僅かに増大するに過ぎない。そうすると、ねじ式弁箱弁座15b1を有するバタフライ弁10に使用される弁体14が切削加工式弁箱弁座15b2を有するバタフライ弁10に使用されても切削加工式弁箱弁座15b2を有するバタフライ弁10の止水機能を確保することができない虞がある。
【0039】
一方、間隙16の長さnが弁体14の厚みTの6%を超える場合、間隙16が弁体弁座挟持部材14c,14dの間に存在しているときに弁体弁座挟持部材14c,14dが衝突するまで接続部材14eを締め付けると、締め付け力が大きく、弁体弁座14bが破損する虞がある。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。本実施の形態では、弁体弁座14bの弁箱弁座15bへの突出量は、対向面構成部14g,14hを面一にするか、弁体弁座挟持部材14c,14dを衝突させるかで調整したが、例えば、接続部材14eの締め込み量を予め設定しておき、当該締め込み量で弁体弁座挟持部材14cと、弁体弁座挟持部材14dとの距離(間隙16)を調整することで、弁体弁座14bの弁箱弁座15bへの突出量を調整してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 バタフライ弁
14 弁体
14b 弁体弁座
14c,14d 弁体弁座挟持部材
14g,14h 対向面構成部
14e 接続部材
15 弁箱
15b 弁箱弁座
15b1 ねじ式弁箱弁座
15b2 切削加工式弁箱弁座
16 間隙
17 開口