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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/37
A61K8/89
A61K8/06
A61Q1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020148063
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042607
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 亘
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177364(JP,A)
【文献】特開2007-099654(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212223(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/060088(WO,A1)
【文献】特開2017-001986(JP,A)
【文献】特開昭63-150221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル油、固形脂、及び、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含み、最外相が水相であり、
前記エステル油及び前記固形脂が第1油相を形成し、前記シリコーン油に分散した前記シリコーン樹脂が第2油相を形成し、
前記第1油相と前記第2油相とが異なる油相であり、
前記第1油相全量に対する前記エステル油及び前記固形脂の合計含有量の比率が40質量%以上であり、
前記第2油相が水相を内包する、乳化組成物。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂が、アクリレーツを含まないシリコーン樹脂である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂が、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、アミノプロピルジメチコン、及びトリメチルシロキシケイ酸から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂がアミノプロピルジメチコンである、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記乳化組成物の全体に対する前記シリコーン樹脂の含有量が0.005質量%以上2.0質量%以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記乳化組成物全体に対する前記固形脂の含有量が3.0質量%以上であり、
前記乳化組成物全体に対する前記シリコーン油に分散した前記シリコーン樹脂の含有量が、前記シリコーン樹脂として0.005質量%以上である、請求項1~5の何れか一項に記載の乳化組成物。
【請求項7】
化粧料である、請求項1~6の何れか一項に記載の乳化組成物。
【請求項8】
エステル油及び固形脂を含む油相を含み、第1乳化組成物中の油相全量に対する前記エステル油及び前記固形脂の合計含有量の比率が40質量%以上となるよう、水中油型である前記第1乳化組成物を調製する、第1乳化組成物調製工程と、
シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含む油相を含み、水中油型である第2乳化組成物を調製する、第2乳化組成物調製工程と、前記第2乳化組成物調製工程が、前記第2乳化組成物の油相に、さらに水相を内包させ油中水型乳化組成物を調製する工程を含み、
調整した前記第1乳化組成物と、前記第2乳化組成物を混合する混合工程と、を備える、水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル油や固形脂を油相に含む乳化化粧料は、肌に塗布すると、適度な厚みのある脂質の膜を肌上に形成する。これにより使用者は、肌上に形成された膜の膜厚感と、膜厚感に起因する保護感を感じる。したがって、エステル油や固体脂のような油脂は、エモリエント剤として広く化粧料に使用されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】化粧品事典、日本化粧品技術者会編、丸善株式会社発行、平成16年9月25日(第2刷)、349頁、356~357頁、819~820頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、エステル油や固形脂を油相に含む乳化化粧料は、肌への塗布後のなめらかさを得られないという問題があった。
そこで、本発明は、エステル油や固形脂を含み、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立した乳化化粧料を提供することを、課題とする。
【0005】
ところで、シリコーン樹脂を含む乳化化粧料は、肌に塗布した際にべとつきの少ない、なめらかな触感を使用者に与える。
【0006】
そこで、本発明者は、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を含む乳化組成物を調製し、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を調製することを試みた。
しかし、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を含む乳化組成物は、不均一な不溶物を形成し、乳化組成物中にこれらを安定に配合することができないという問題が生じた。
【0007】
そこで、本発明は、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を安定に配合する乳化組成物の製造方法を提供することを、さらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、エステル油、固形脂、及び、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含み、最外相が水相である、乳化組成物である。
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、上記シリコーン樹脂は、アクリレーツを含まない。
また、本発明の好ましい形態では、上記シリコーン樹脂が、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、アミノプロピルジメチコン、及びトリメチルシロキシケイ酸から選ばれる少なくとも1種以上である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、上記エステル油及び固形脂が第1油相を形成し、上記シリコーン油に分散したシリコーン樹脂が、上記第1油相とは異なる第2油相を形成する。
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、上記第1油相及び/又は上記第2油相が水相を内包する。
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。また、上記第1油相及び/又は上記第2油相の水相に有効成分を含有させることで、肌のより深層部まで当該有効成分を浸透させることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、上記乳化組成物全体に対する上記固形脂の含有量が3.0質量%以上であり、上記乳化組成物に対する上記シリコーン油に分散したシリコーン樹脂の含有量が、シリコーン樹脂として0.005質量%以上である。
【0013】
上記課題を解決する本発明では、上記乳化組成物が、化粧料である。
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立した化粧料を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決する本発明は、エステル油及び固形脂を含む油相を含み、水中油型である第1乳化組成物を調製する、第1乳化組成物調製工程と、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含む油相を含み、水中油型である第2乳化組成物を調製する、第2乳化組成物調製工程と、調製した上記第1乳化組成物と、上記第2乳化組成物を混合する混合工程と、を備える、水中油型乳化組成物の製造方法である。
本発明によれば、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を、乳化組成物中に安定に配合する水中油型乳化組成物を製造することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、上記第1乳化組成物調製工程及び/又は上記第2乳化組成物調製工程が、上記第1乳化組成物及び/又は上記第2乳化組成物の油相に、さらに水相を内包させ、油中水型乳化組成物を調製する工程を含む。
本発明によれば、エステル油、固形脂、及びシリコーン樹脂を安定に含む、水中油中水型(W/O/W型)乳化組成物を調製することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。
また本発明は、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を安定に配合する乳化組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の乳化組成物は、エステル油、固形脂、及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含み、最外相が水相である。すなわち、本発明の乳化組成物は、水相に油相が分散している、水中油型乳化組成物(O/W型乳化組成物)である。
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感と膜厚感及び肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。
【0018】
エステル油の種類は、化粧品原料として用いられるものである限り、特に限定されない。例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、植物油、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等を使用することができる。
エステル油は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
固形脂の種類は、化粧品原料として用いられるものである限り、特に限定されず、例えば、固体油脂、ロウ類、炭化水素油を使用することができる。また、本発明において、固形脂には、常温(25℃)で固体状の油脂及び、常温で半固体状の油脂を含む。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ダイマージリノール酸誘導体、オリゴエステル等を使用することができる。
【0020】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等を使用することができる。
炭化水素油としては、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等を使用することができる。
固形脂は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の乳化組成物において、エステル油と固形脂は、別々に水相中に分散させる形態とすることもできるし、固形脂をエステル油に溶解させ、これを水相中に分散させる形態とすることもできる。
製造適性の観点から、固形脂をエステル油に溶解させ、これを水相中に分散させる形態とすることが好ましい。
本発明によれば、肌への塗布中に優れた保護感及び膜厚感を感じる乳化組成物を調製することができる。
【0022】
本発明の乳化組成物に含まれるシリコーン油の種類は、化粧品原料として用いられるものである限り、特に限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状ポリシロキサンや、オクタメチルシクロテトラシロキサン(シクロテトラシロキサン)、デカメチルシクロペンタシロキサン(シクロペンタシロキサン)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(シクロヘキサシロキサン)、メチルシクロポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサンなどを使用することができる。
シリコーン油は、1種類を使用しても、2種類以上を併用してもよい。
シリコーン油は、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、及びジフェニルシロキシフェニルトリメチコンから選ばれる少なくとも1種類のシリコーン油を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の乳化組成物に含まれるシリコーン樹脂の種類は、化粧品原料として用いられるものである限り、特に限定されないが、アクリレーツを含まないシリコーン樹脂を使用することが好ましい。
シリコーン樹脂は、例えば、高重合度ジメチコン、アミノプロピルジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等を使用することができる。
シリコーン樹脂は、1種類を使用しても、2種類以上を併用してもよい。
シリコーン樹脂は、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、アミノプロピルジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸の少なくとも何れかを含むことが好ましい。
【0024】
本発明においては、シリコーン樹脂は、シリコーン油に分散している。
【0025】
本発明において、乳化組成物全体に対する上記エステル油の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対するエステル油の含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を与える乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対する上記エステル油の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、例えば25質量%を目安とすることができる。
【0026】
本発明において、乳化組成物全体に対する上記固形脂の含有量は、3.0質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対する固形脂の含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を与える乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対する上記固形脂の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、10質量%を目安とすることができる。
【0027】
本発明において、乳化組成物全体に対する、上記シリコーン油に分散しているシリコーン樹脂の含有量は、シリコーン樹脂として0.003質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対する、上記シリコーン油に分散しているシリコーン樹脂の含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布後に、適度ななめらかさを与える乳化組成物を提供することができる。
また、本発明の乳化組成物全体に対する、上記シリコーン油に分散しているシリコーン樹脂の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、シリコーン樹脂として2.0質量%以下を目安とすることができる。
【0028】
本発明において、乳化組成物全体に対する、シリコーン油の含有量は、2質量%以上が好ましく、4質量%以上であることが好ましい。
また、乳化組成物全体に対する、シリコーン油の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、19質量%以下とすることができる。
【0029】
本発明において、乳化組成物全体に対する、シリコーン油とシリコーン樹脂の合計含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上であることが好ましい。
また、乳化組成物全体に対する、シリコーン油の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、20質量%以下とすることができる。
【0030】
本発明において、乳化組成物全体に対するエステル油及び固形脂の合計含有量は、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対するエステル油及び固形脂の合計含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を与える乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対するエステル油及び固形脂の合計含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、35質量%を目安とすることができる。
【0031】
本発明において、エステル油の含有量、固形脂の含有量、シリコーン油の含有量、及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂の、シリコーン樹脂としての含有量の合計は、乳化組成物全体に対して、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対するエステル油の含有量、固形脂の含有量、シリコーン油の含有量及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂の、シリコーン樹脂としての合計含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立した乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対するエステル油の含有量、固形脂の含油量、シリコーン油の含有量、及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂の、シリコーン樹脂としての含有量の合計は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、40質量%以下を目安とすることができる。
【0032】
本発明において、乳化組成物全体に対する上記エステル油の含有量を1としたときの、固形脂の含有量は、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対する上記エステル油の含有量を1としたときの、固形脂の含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を与える乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対する上記エステル油の含有量を1としたときの、固形脂の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、例えば1.0以下を目安とすることができる。
【0033】
本発明において、乳化組成物全体に対する、上記エステル油及び固形脂の合計含有量を1としたときの、上記シリコーン油に分散したシリコーン樹脂の含有量は、シリコーン樹脂として0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましい。
乳化組成物全体に対する、上記エステル油及び固形脂の合計含有量を1としたときの、上記シリコーン油に分散したシリコーン樹脂の含有量を、上記下限値以上とすることで、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立した乳化組成物を提供することができる。
また、本発明において、乳化組成物全体に対する、上記エステル油及び固形脂の合計含有量を1としたときの、上記シリコーン油に分散したシリコーン樹脂の含有量は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、シリコーン樹脂として0.2以下を目安とすることができる。
【0034】
本発明の乳化組成物において、水相の組成は特に限定されず、公知の物質を含有することができる。
【0035】
本発明の乳化組成物は、乳化剤を使用して乳化することが好ましい。乳化剤は、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の何れも、制限なく使用することができる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルザルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩等を使用することができる。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型活性剤、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のエステル型活性剤、さらに、ポリオキシエチレングリセリルモノイソステアレート等のエーテル・エステル型活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤、及びグリセリルモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル、等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を使用することができる。
【0037】
本発明の乳化組成物において形成される油相は、エステル油、固形脂及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂をすべて含む形態とすることができる。
本発明の好ましい形態では、エステル油及び固形脂が第1の油相(第1油相)を形成し、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂が、上記第1油相とは異なる第2の油相(第2油相)を形成する。
本形態の乳化組成物は、エステル油及び固形脂を含む第1油相(O1粒子)と、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含む第2油相(O2粒子)が、最外相である水相に分散している、水中油型乳化組成物(O/W型乳化組成物)である。
本発明によれば、シリコーン油及び固形脂と、シリコーン樹脂とを、安定に配合することができる。
【0038】
本形態において、乳化組成物全体に対する第1油相(O1粒子)の含有量、乳化組成物全体に対する第2油相(O2粒子)の含有量、乳化組成物全体に対する第1油相(O1粒子)と第2油相(O2粒子)の合計含有量、及び第1油相(O1粒子)と第2油相(O2粒子)の含有量の比率については、上記した事項を適用することができる。
本形態において、第1油相全量に対するエステル油及び固形脂の合計含有量の比率は20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
また、第1油相全量に対するエステル油及び固形脂の合計含有量の比率の上限値には、本発明の乳化組成物を形成することができれば、特に制限はない。
本形態において、第2油相全量に対するシリコーン油に分散したシリコーン樹脂の含有量の比率は、シリコーン樹脂として0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。また含有量の上限値は、乳化組成物の剤型等に応じて適宜設定することができるが、第2油相全量に対して15質量%以下を目安とすることができる。
【0039】
本発明の好ましい形態では、上記第1油相及び/又は上記第2油相が、水相を内包する。本形態の場合、第1油相及び/又は第2油相は、油中水型乳化組成物(W/O型乳化組成物)である。また、乳化組成物全体としては、水中油中水型乳化組成物(W/O/W型乳化組成物)である。
【0040】
具体的なひとつの形態としては、第1油相が水相を内包し、第2油相が水相を内包しない形態とすることができる。この場合、乳化組成物全体としてみると、水相を内包する第1油相(W/O1粒子)と、水相を内包しない第2油相(O2粒子)が、最外相である水相に分散している、W/O/W型乳化組成物である。
この場合、乳化組成物全体に対するW/O1粒子の含有量は、乳化組成物全体に対して5質量%とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましい。
また、乳化組成物全体に対するW/O1粒子の含有量の上限値は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、乳化組成物全体に対して30質量%以下を目安とすることができる。
W/O1粒子とO2粒子の含有量の質量比は、10:1~1:20とすることができる。
W/O1粒子とO2粒子の含有量を上記範囲内に設定することで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を感じる乳化組成物を提供することができる。
【0041】
上記W/O1粒子とO2粒子の含有量の質量比は、例えば作製時の配合率に基づいて決めることができる。
【0042】
また別の形態としては、第1油相が水相を内包せず、第2油相が水相を内包する形態とすることができる。この場合、乳化組成物全体としてみると、水相を内包しない第1油相(O1粒子)と、水相を内包する第2油相(W/O2粒子)が、最外相である水相に分散している、W/O/W型乳化組成物である。
この場合、乳化組成物全体に対するW/O2粒子の含有量は、乳化組成物全体に対して5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましい。
また、含有量の上限値は、剤型等に応じて適宜設定することができるが、乳化組成物全体に対して30質量%以下を目安とすることができる。
O1粒子とW/O2粒子の含有量の比は、10:1~1:20とすることができる。
O1粒子とW/O2粒子の含有量を上記範囲内に設定することで、肌への塗布中に保護感及び膜厚感を感じる乳化組成物を提供することができる。
【0043】
さらに別の形態では、第1油相及び第2油相が何れも水相を内包する形態とすることができる。この場合、乳化組成物全体としてみると、水相を内包する第1油相(W/O1粒子)と、水相を内包する第2油相(W/O2粒子)が、最外相である水相に分散している、W/O/W型乳化組成物である。
この場合、乳化組成物全体に対するW1/O1粒子及びW/O2粒子の含有量は、本発明に係る剤が志向する触感によって適宜設定することができるが、例えば乳化組成物全量に対してそれぞれ5質量%以上含有することができる。また、W/O1粒子とW/O2粒子の含有量の上限値は、乳化組成物全体に対して合計で50質量以下を目安とすることができる。
W/O1粒子とW/O2粒子の含有量の質量比は、本発明に係る剤が志向する触感によって適宜設定することができるが、例えば10:1~1:20とすることができる。
【0044】
本発明によれば、粒径の小さい水相を油相に保持することができるため、内包された水相に有効成分を配合することで、当該有効成分を、肌のより深層部まで浸透させることができる。
【0045】
本発明の乳化組成物は、外用剤とすることができる。外用剤としては、例えば化粧料(医薬部外品含む)、皮膚外用剤、外用医薬品が挙げられる。また、外用剤の剤型に合わせて、乳化組成物の流動性や粘弾性等の物性は、適宜調節することができる。
【0046】
本発明の乳化組成物は、化粧料とすることが好ましい。化粧料としては、例えば、化粧水や乳液等のスキンケア化粧品、ボディーローションやボディクリーム等のボディケア化粧品、日焼け止め等のUVケア化粧品等が挙げられる。
【0047】
本発明の乳化組成物を、化粧料とする場合、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に使用される成分を配合することができる。例えば、美白成分、しわ改善成分、抗炎症成分等が挙げられる。
【0048】
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリンメチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリンエチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリンメチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等が挙げられる。
これらの美白成分は、市販されているものを使用することも、合成したものを使用することもできる。また、美白成分の含有量は、化粧料全体に対して通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0049】
しわ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステル等が挙げられる。また、しわ改善成分の含有量は、化粧料全体に対して通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0050】
抗炎症成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩等が挙げられる。また、抗炎症成分の含有量は、化粧料全体に対して通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0051】
上記美白成分、しわ改善成分、抗炎症成分のほか、一般的に化粧料に用いられているも成分を、適宜配合することができる。例えば、動植物由来の抽出物、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等を含んでいてもよい。
【0052】
本発明はまた、乳化組成物の製造方法にも関する。本発明の乳化組成物の製造方法は、エステル油並びに固形脂を含み、水中油型である第1乳化組成物を調製する、第1乳化組成物調製工程と、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含み、水中油型である第2乳化組成物を調製する、第2乳化組成物調製工程と、調製した前記第1乳化組成物と、前記第2乳化組成物を混合する混合工程と、を備える。
本発明により製造した乳化組成物は、水相中に油相が分散した、水中油型乳化組成物(O/W型乳化組成物)である。
本発明によれば、エステル油、固形脂及びシリコーン樹脂を安定に配合する水中油型乳化組成物を調製することができる。
【0053】
使用できるエステル油、固形脂、シリコーン油及びシリコーン樹脂については、上述の通りである。
【0054】
シリコーン油に分散したシリコーン樹脂は、一般的に購入可能な原料である、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含むシリコーン原料を、さらに上記シリコーン油で希釈することで得られる。
また、シリコーン原料の希釈は、公知の方法を適宜使用することができる。例えば、所望の希釈倍率になるように、シリコーン原料及びシリコーン油を混合し、手動又は機械で撹拌することによって希釈することができる。
【0055】
上記第1乳化組成物調製工程及び上記第2乳化組成物調製工程では、公知の方法で乳化組成物を調製することができる。例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高速乳化装置、ノコギリ歯状の撹拌羽根を備えるディスパーミキサー、回転羽を備えたインペラー式撹拌装置等を使用することができる。また、均一な孔径を有する多孔質膜を用いた膜乳化法を採用することもできる。
【0056】
上記混合工程では、調製した上記第1乳化組成物及び第2乳化組成物を混合する。混合工程は、公知の混合装置を使用して行うことができる。
【0057】
本発明の好ましい形態では、上記第1乳化組成物調製工程及び/又は上記第2乳化組成物調製工程が、上記第1乳化組成物又は上記第2乳化組成物の油相に、さらに水相を内包させ、水中油型乳化組成物(W/O型乳化組成物)を調製する工程を含む。
すなわち、本形態では、上記第1乳化組成物調製工程及び/又は上記第2乳化組成物調製工程が、油相中に水相が分散した油中水型一次乳化組成物(W/O型一次乳化組成物)を得る工程と、得られたW/O型一次乳化組成物を、さらに水相に分散させ、水中油中水型(W/O/W型)の第1乳化組成物及び/又は第2乳化組成物を得る工程と、を含む。上記W/O型一次乳化組成物とは、具体的には、上記W/O1粒子及び/又はW/O2粒子である。
【0058】
本形態において、上記第1乳化組成物調製工程が、上記水中油型乳化組成物を調製する工程を含む場合、水相を内包するW/O1粒子と、水相を内包しないO2粒子が、最外相である水相に分散しているW/O/W型乳化組成物を製造することができる。
また、上記第2乳化組成物調製工程が、上記水中油型乳化組成物を調製する工程を含む場合、水相を内包しないO1粒子と、水相を内包するW/O2粒子が、最外相である水相に分散している、W/O/W型乳化組成物を製造することができる。
さらに、上記第1乳化組成物調製工程及び上記第2乳化組成物調製工程の何れもが、上記水中油型乳化組成物を調製する工程を含む場合、水相を内包するW/O1粒子と、水相を内包するW/O2粒子が、最外相である水相に分散している、W/O/W型乳化組成物を調製することができる。
本発明によれば、エステル油、固形脂及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂を安定に配合する、W/O/W型乳化組成物を調製することができる。
【0059】
本発明において、W/O/W型乳化組成物を調製する方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
【実施例
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、実施例に限定されない。
【0061】
<試験例1>
下記表1に記載の組成で、W/O/W型乳化組成物を調製した。表1中、各数値は、各成分の含有割合(質量%)を表す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1においては、乳化組成物全体に対して、シリコーン樹脂(アミノプロピルジメチコン)を0.125質量%含む。
実施例2においては、乳化組成物全体に対して、シリコーン樹脂((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー)を0.075質量%含む。
実施例3においては、乳化組成物全体に対して、シリコーン樹脂(トリメチルシロキシケイ酸)を0.75質量%含む。
【0064】
比較例1及び実施例1~3のW/O/W型乳化組成物は、以下の工程で調製した。
(1)第1乳化組成物調製工程
あらかじめ固形脂を溶解させたエステル油を含む油相Aを水相Bに乳化させ、O/W型一次乳化組成物を調製し、第1乳化組成物を得た。
(2)第2乳化組成物調製工程
シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含む油相Cに水相Dを分散させ、W/O型一次乳化組成物を得た。これを水相Eに分散させ、W/O/W型の第2乳化組成物を得た。
(3)混合工程
上記(1)で調製した上記第1乳化組成物と、上記(2)で調製した第2乳化組成物を混合し、W/O/W型乳化組成物を得た。本形態では、水相を内包しないO1粒子(第1油相)と、水相を内包するW/O2粒子(第2油相)が、最外相である水相に分散している。
【0065】
得られた各乳化組成物の触感を、10名のパネラーが評価した。具体的には、上記得られた各乳化組成物を肌に1.6mg/cm塗布し、塗布後に感じる膜厚感、保護感、なめらかさについて、1,2,3,4の4段階で評価した。それぞれ数値が大きいほど、効果が高いことを示す。
10名のパネラーの評価の平均値を、下記表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
エステル油とシリコーン油を何れも油相Aに含む比較例2は、油相Aの状態で不溶物を形成したため、触感を評価することができなかった。
一方、第1乳化組成物調製工程と第2乳化組成物調製工程を備える本発明の製造方法で製造した実施例1~3及び比較例1は、不溶物を形成することなく、安定な乳化組成物を調製することができたため、触感について評価することができた。
【0068】
表2に示すように、シリコーン油を含み、シリコーン樹脂を含まない比較例1は、保護感は実施例1~3と同等であると評価されたものの、膜厚感及びなめらかさは劣ると評価され、肌への塗布中の保護感及び膜厚感と、肌への塗布後のなめらかさを両立することができなかった。
一方、シリコーン油に分散したシリコーン樹脂を含む実施例1~3は、何れも保護感、膜厚感及びなめらかさを感じる触感であると評価された。
【0069】
<試験例2>
上記実施例1と同様の組成で、O/W型乳化組成物を調製した。具体的には、上記(1)と同様に、油相Aを水相Bに乳化させ、O/W型の第1乳化組成物を得た。(2)においては、水相を内包しない油相Cを水相Eに乳化させ、O/W型の第2乳化組成物を得た。そして、(3)と同様に、第1乳化組成物と第2乳化組成物を混合し、O/W型乳化組成物を得た。
本形態では、水相を内包しない油滴(O1粒子及びO2粒子)が、最外相である水相に分散している。
得られたO/W型乳化組成物を、試験例1と同様の方法で評価したところ、実施例1と同様の保護感、膜厚感及びなめらかさであるとの評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、肌への塗布中に感じる保護感及び膜厚感と、肌への塗布後に感じるなめらかさを両立する乳化組成物を提供することができる。
また、シリコーン油、固形脂及びシリコーン油に分散したシリコーン樹脂が安定に配合された乳化組成物を調製することができる。