(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】排水弁付き継手
(51)【国際特許分類】
E03B 7/10 20060101AFI20241106BHJP
E03B 7/07 20060101ALI20241106BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20241106BHJP
F16K 15/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E03B7/10 B
E03B7/07 A
F16L55/00 N
F16K15/04 A
(21)【出願番号】P 2021056193
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000150095
【氏名又は名称】株式会社竹村製作所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貞治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-205000(JP,A)
【文献】特開2006-207304(JP,A)
【文献】特開2000-154511(JP,A)
【文献】特開2007-327249(JP,A)
【文献】特表2013-506094(JP,A)
【文献】特開2020-066900(JP,A)
【文献】実開昭49-099049(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0174940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/10
E03B 7/07
F16L 55/00
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水側の第1の管と立ち上がり側の第2の管とを接続する内部に流路が形成された継手と、第1端部が前記継手の側面に着脱可能に接続され、前記第1端部に形成された開口が前記継手の前記流路内に連通する排水弁部と、を含む排水弁付き継手であって、前記排水弁部は、内部空間を有し、前記第1端部の他方の第2端部に形成された外部と連通する穴部を有する弁室と、前記第1の管側からの圧力の有無によって、前記内部空間内を摺動し、前記圧力が有るときに前記穴部をシールし、前記圧力がないときに前記穴部から離れ、前記第2の管内の水を前記穴部から外部へ排水する弁と、を備え
、前記弁は球形状であることを特徴とする排水弁付き継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水弁のメンテナンスが容易に行える排水弁付き継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地における水道システムには、凍結防止用の水抜栓などが水道管に接続されている(特許文献1)。水は、この水抜栓に流入口から入り、通水路を通って、流出口から流れ出る。従来の水抜栓は、流入口から通水路を通って流出口に至る流路の中に置かれる。通水状態の水抜栓は、ハンドルを回してスピンドルを下げ止水コマによって通水路の通水孔を閉塞して水抜き状態にする。水抜栓を水抜き状態にすると一次側の水は、流れなくなり、二次側の水は、水抜栓本体内に設けた水抜き機構を通して外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寒冷地の果樹園等の潅水用水道システムにおいて、立ち上がり管末端に設置されているスプリンクラーの凍結防止用に水抜栓が接続されている。水抜栓の本数は果樹園の大きさ、面積にもよるが数十から数百本になる。
【0005】
図7は、従来の施工実施例を示す。給水側の第1の管とソケット継手を介してねじ接続された立ち上がり側の第2の管とソケット継手を介してねじ接続されたスプリンクラーが接続され、給水側には水抜栓が接続される。
【0006】
給水側から圧送された水がスプリンクラーから吐水され、所定範囲内に散水される。ここで水抜栓を水抜き操作することにより、立ち上がり側の管内(第1の管、第2の管)の水が抜かれ、スプリンクラー内の水が無くなることによって冬期に気温が零下になってもスプリンクラーの凍結破損を防止できる。
【0007】
冬期になるとスプリンクラーの凍結破損防止のため、これらの水抜栓を1本ずつ手動で水抜き操作する。そして、冬期が終え、潅水するためにこれらの水抜栓を1本ずつ手動で通水操作し、給水する作業を行うため大変な労力を要する。
【0008】
また、これらの水抜栓に電動駆動部を取り付け電動で水抜き操作、通水操作を行うこともできる。しかし、その設置・管理に要する費用が高くつくという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水抜栓の操作をしなくても給水側からの水の供給の有無によって立ち上がり管内の水を抜く作用をする排水弁部を着脱可能に接続した排水弁付き継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる排水弁付き継手の一形態によれば、給水側の第1の管と立ち上がり側の第2の管とを接続する内部に流路が形成された継手と、第1端部が前記継手の側面に着脱可能に接続され、前記第1端部に形成された開口が前記継手の前記流路内に連通する排水弁部と、を含む排水弁付き継手であって、前記排水弁部は、内部空間を有し、前記第1端部の他方の第2端部に形成された外部と連通する穴部を有する弁室と、前記第1の管側からの圧力の有無によって、前記空間内を摺動し、前記圧力が有るときに前記穴部をシールし、前記圧力がないときに前記穴部から離れ、前記第2の管内の水を前記穴部から外部へ排水する弁と、を備え、前記弁は球形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明にかかる排水弁付き継手によれば、給水時の圧力によって弁が摺動し排水弁部の穴部を弁が塞ぎ、給水を止めると圧力が無くなり、排水弁部の穴部を塞いでいた弁にかかっていた力が無くなり、弁が穴部から自動的に離れ、穴部が外部と貫通することにより立ち上がり管内の水が穴部から外部に排水され、立ち上がり管末端に設置されたスプリンクラーの凍結破損を防ぐことができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる排水弁付き継手によれば、排水弁部は継手に着脱可能に接続されていることにより、メンテナンスが容易に行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手の施工実施例である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手の断面図である。
【
図3】
図3[A]は、第1の実施形態の排水弁付き継手の排水弁部の穴部が弁によって塞がっていない状態を表す概略の拡大断面図であり、
図3[B]は、第1の実施形態の排水弁付き継手の排水弁部の穴部を弁が塞いだ状態を表す概略の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手の施工実施例である。
【
図5】
図5は、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手の断面図である。
【
図6】
図6は、既存の施工に本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手を後接続した施工実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10の施工実施例である。
給水側から配管され、地中に埋設された横管101からエルボ継手102を介して地上に立ち上げられた第1の管103とソケット継手104と本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10と立ち上がり側の第2の管105の上端にはソケット継手106を介してスプリンクラー100が接続される。
【0016】
図2は、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10の断面図である。内部に流路12が形成された継手11と、第1端部14が継手11の側面に着脱可能に接続され、第1端部14に形成された開口が継手11の流路12内に連通する排水弁部13と、を備える。この排水弁部13は、内部空間18を有し、第1端部14の他方にねじ接続された第2端部15に形成された外部と連通する穴部17を有する弁室16と、内部空間18内を摺動し、穴部17を塞ぐ弁19と、を備える。
【0017】
以下、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10の作用について、以下に説明する。
【0018】
図1に示す本発明の第1の実施形態の排水弁付き継手10の施工実施例によれば、給水側から圧送された水が供給されると、
図2に示す流路12内に水が供給され、排水弁部13内の弁19に穴部17に向かって動水圧がかかる。
【0019】
そして、弁19が、
図3[A]に示すように穴部17から離れている状態から、
図3[B]に示すように動水圧により作動し、水が供給され続けている間は常に穴部17を塞ぎシールする状態になる。
【0020】
また、給水側から圧送された水は流路12を通って立ち上がり側の第2の管105の末端に接続されたスプリンクラー100から吐水され、所定範囲内に散水される。
【0021】
次に、給水側からの水の供給が無くなると、
図2に示す流路12内への水の供給が無くなり、排水弁部13内の弁19に穴部17を塞ぎシールするための押力になっていた動水圧がかからなくなる。そして、弁19が、自重により穴部17から離れる。
【0022】
そして、塞がっていた穴部17が開くことによって、
図1の第1の実施形態の排水弁付き継手10より上部に供給されていた水が穴部17から外部へ排水される。
【0023】
本発明の第1の実施形態の排水弁付き継手10によれば、給水側からの水の供給を止めるだけで、第1の実施形態の排水弁付き継手10より上部に供給されていた水が穴部17から外部に排水され、立ち上がり管末端に設置されたスプリンクラー100内の水が無くなることによって冬期に気温が零下になってもスプリンクラー100の凍結破損を防止できる。
【0024】
本発明の第1の実施形態の排水弁付き継手10によれば、内部空間18内を摺動する弁19は球形状である。内部空間18内をスムーズに摺動し、球形状により穴部17をシールする際、方向性がないので弁19のどこでもシールすることができる。さらに均一に水の圧力を受けることができる。
【0025】
本発明の第1の実施形態の排水弁付き継手10によれば、排水弁部13に不具合が生じたとき給水を止める等を行い、継手11から簡単に外すことが可能でメンテナンスが容易に行える。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手20について説明する。
〈第2の実施形態〉
図4は、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手の施工実施例である。給水側から地中に埋設された横管101からエルボ継手102を介して地上に立ち上げられた第1の管103とソケット継手104と本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手20と立ち上がり側の第2の管105の上端にはソケット継手106を介してスプリンクラー100が接続される。
【0027】
図5は、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手20の断面図である。継手11と、排水弁部21と、を備える。この排水弁部21は、上記で説明した第1の実施形態の排水弁付き継手の排水弁部13の構成を備えている。さらに弁19を穴部17とは反対側へ付勢するスプリングコイルからなる付勢ばね22を備える。
【0028】
なお、付勢ばね22はスプリングコイルに限定されず、他の弾性部材を利用できるのは勿論である。
【0029】
以下、図面を参照して、本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手20の作用について説明する。
【0030】
図4に示す本発明の第2の実施形態の排水弁付き継手20の施工実施例によれば、給水側から圧送された水が供給されると、
図5に示す流路12内に水が供給され、排水弁部21内の弁19に穴部17に向かって動水圧がかかる。
【0031】
そして、弁19は動水圧により作動し、常に穴部17を塞ぎシールする状態になる。このとき、付勢ばね22は弁19に押され縮んだ状態になる(
図5)。
【0032】
そして、給水側から圧送された水がスプリンクラー100から吐水され、所定範囲内に散水される。
【0033】
次に、給水側からの水の供給が無くなると
図5に示す穴部17を塞ぎシールするための押力になっていた動水圧が無くなり、弁19が自重および付勢ばね22の縮んでいた状態から元の状態に戻ろうとする付勢力により穴部17から離れ、
図4の排水弁付き継手20より上部に供給されていた水が穴部17から外部へ排水される。
【0034】
本発明の第2の実施形態の排水弁付き継手20によれば、付勢ばね22の付勢力によって給水側から圧送された水の圧力が無くなったとき弁19が穴部17との固着およびゴミなどの異物があっても確実に離脱することができる。
【0035】
図6は、既存の施工のソケット継手104と立ち上がり側の第2の管105の間に本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10を接続した施工実施例である。
図6に示すように本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10は新規の施工だけではなく、既存の施工にも後接続することができる。
【0036】
また、
図6は、本発明にかかる第1の実施形態の排水弁付き継手10の代わりに本発明にかかる第2の実施形態の排水弁付き継手20を接続することもできる。
【0037】
また、本発明の第1および第2の実施形態の排水弁付き継手10、20の接続箇所は
図1および
図4に限らない。例えば、横管101と立ち上がり側の第2の管105の間のどこにでも自由に選択することができる。
【0038】
また、本発明の第1および第2の実施形態の排水弁付き継手10、20の接続方法は雄雌ねじによる接続であるが、これに限らず種々の接続方法を自由に選択することができる。
【0039】
また、本発明の第1および第2の実施形態の排水弁付き継手10、20の内部空間18内を摺動する弁19は球形状をしているが、これに限らずシールできる種々の形状を自由に選択することができる。
【0040】
また、本発明の第1および第2の実施形態の排水弁付き継手10、20の内部空間18内を摺動する弁19は樹脂による成形品であり、弁19はPOM(ポリオキシメチレン)製であるが、これに限らず種々の材質を自由に選択することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用ができる。
【符号の説明】
【0042】
10 第1の実施形態の排水弁付き継手
11 継手
12 流路
13 排水弁部
14 第1端部
15 第2端部
16 弁室
17 穴部
18 内部空間
19 弁
20 第2の実施形態の排水弁付き継手
21 排水弁部
22 付勢ばね
100 スプリンクラー
101 横管
102 エルボ継手
103 第1の管
104 ソケット継手
105 第2の管
106 ソケット継手
107 水抜栓