(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】濃縮機構を有する加圧脱水装置および加圧脱水方法
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20241106BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
B01D25/12 Z ZAB
C02F11/121
(21)【出願番号】P 2021205107
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】西原 康昭
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-337308(JP,A)
【文献】特公平06-096158(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 25/00-38
C02F 11/12-16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のろ板を並列して形成した複数のろ過室の一方から原液を供給し、ろ過室に設けたろ材にて固液分離を行う加圧脱水装置において、
ろ過室を形成するろ板列の前段
および後段をそれぞれ
ろ材(22)に対して平行に原液を通水させつつろ材(22)にて液分を透過して固液分離し、濃縮液が
濃縮ろ過室(21・・・)内を互い違いに流動しながら濃縮液流路(26)を形成する濃縮機構(9)と、
濃縮機構(9)の吐出側に一体的に連設し
、濃縮汚泥
を脱水ろ板(12)間の脱水ろ過室(23)に設けたろ材(22)にて液分を透過して固液分離する脱水機構(10)と、
で構成し、
濃縮機構(9)
は、
濃縮ろ板(11)に中空状に形成した濃縮ろ過室(9)と、
ろ過床(24)に張設したろ材(22)と、
始端濃縮ろ板(11a)を貫通する連通路(28a)と、
隣接する濃縮ろ過室(21)を連通する連通路(28)と、
終端濃縮ろ板(11b)から脱水機構(10)に連通する連通路(28b)と、
を備え、
脱水機構(10)は、
開閉自在な脱水ろ板(12)間に形成される脱水ろ過室(23)と、
ろ過床(24)に張設したろ材(22)と、
始端側が濃縮機構(9)と連通し、終端側が濃縮汚泥の一部を原液貯留槽(13)に返送する返送管(16)と連通するとともに、脱水ろ板(12)列を貫通して濃縮機構(9)で生成された濃縮汚泥を各脱水ろ過室(23)に供給する濃縮汚泥流路(27)と、
を備える
ことを特徴とする濃縮機構を有する加圧脱水装置。
【請求項2】
前記濃縮ろ過室(21)は、隣接する一対の前記濃縮ろ板(11)間に形成される中空部である
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮機構を有する加圧脱水装置。
【請求項3】
前記濃縮ろ過室(21)は、前記濃縮ろ板(11)内に形成される中空部である
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮機構を有する加圧脱水装置。
【請求項4】
前記濃縮ろ過室(21)は、複数並列しそれぞれ交互に連続形成される前記連通路(28)に連通する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の濃縮機構を有する加圧脱水装置。
【請求項5】
前記濃縮ろ過室(21)と連通する洗浄液供給管(15)を設ける
ことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の濃縮機構を有する加圧脱水装置。
【請求項6】
多数のろ板を並列して形成した複数のろ過室の一方から原液を供給し、ろ過室に設けたろ材にて固液分離を行う加圧脱水装置において、
ろ過室を形成するろ板列の前段で、
原液を互い違いに供給・排出する連通路を設けた中空状の濃縮ろ過室(21)
に張設したろ材(22)に対して平行に原液を通水させつつろ材(22)にて液分を透過して固液分離し、
ろ過室を形成するろ板列の後段で、
濃縮ろ過室(21)に連
通するとともに開閉自在な脱水ろ板(12)列を貫通して形成される濃縮汚泥流路(27)に流入した濃縮汚泥を脱水ろ板(12)間に形成される脱水ろ過室(23)
に供給し、脱水ろ過室(23)
を構成するろ板のろ過床(24)に設けたろ材
(22)にて液分を透過して固液分離し、脱水ケーキを生成するとともに、
濃縮ろ過室(21)から脱水ろ過室(23)に供給される濃縮汚泥の一部を
濃縮汚泥流路(27)から原液貯留槽(13)に返送する
ことを特徴とする濃縮機構を有する加圧脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、し尿、集落排水、工場等の排水処理施設から発生する汚泥を濃縮する濃縮機構と、該濃縮機構で濃縮された汚泥を脱水する脱水機構と、を一体的に構成した濃縮機構を有する加圧脱水装置および加圧脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数並列したろ板間に形成するろ過室内に重力濃縮槽や機械濃縮機を用いて濃縮した汚泥を圧入し、その圧入圧力によって圧入ろ過を行う加圧脱水装置や、圧入圧力によって圧入ろ過を行った後、ダイアフラム室に圧搾流体を供給して圧搾脱水を行う加圧脱水装置が知られている。このような加圧脱水装置を用いて脱水を行う際には、並列するろ板を閉板し、ろ板列に形成される原液供給路に向かって濃縮汚泥を供給した後、隣接するろ板間のろ過室で脱水していた。このように、従来、使用されている加圧脱水装置は、濃縮後の汚泥を脱水するものであり、一般的に脱水機構のみ備えている。
【0003】
これに対し、特許文献1には、原液を所定濃度まで濃縮する濃縮部と、該濃縮部で濃縮された原液を濾過する濾過部と、を形成した濾板を複数配置した濾過濃縮装置が開示されており、並列する各濾板に濃縮部及び濾過部を形成した濃縮機構一体型の加圧脱水装置は公知である。
【0004】
また、特許文献2に内周壁の対称位置に一対の流路形成リブを備えた濾枠と、濾板を交互に複数配置し、原液を上下互い違いに流動させながら濃縮する連続濾過濃縮装置が開示されており、原液を上下互い違いに圧入供給させる濃縮機構は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平06-096158号公報
【文献】実公昭48-005328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の加圧脱水装置は、脱水機構のみを有しており、汚泥を脱水する際には脱水前
に加圧脱水装置とは別個に設けられた重力濃縮槽を用いて濃縮を行っているケースが多い。しかし、重力濃縮を行う場合、汚泥粒子の微粒化による沈降性の低下や有機物の増加等によって濃縮性が悪化し、重力濃縮槽のみの運用では、脱水性能を高めることができない、あるいは、脱水性能の変動が大きくなるという問題点があった。そのうえ、粒子を沈降させるための滞留時間を確保するために槽の容積を大きくする必要があり、装置の大型化に伴い、広い設置スペースを確保しなければならなかった。重力濃縮後の汚泥濃度を高めるために、重力濃縮後にろ布濃縮等による機械濃縮を行う方法もあるが、機械の設置にあたって、初期費用及びランニングコストの発生、設置面積の増大といった問題を有していた。
【0007】
特許文献1には、濃縮部と濾過部を有する濾板を複数配置し、濃縮機構と脱水機構を一体化した濾過濃縮装置が開示されているが、既存の濾板と異なり濾板上部に濃縮部を形成する必要があり、濾板構造が複雑であるため製作に手間を要する。また、原液は、濾板の濃縮部で濃縮された後、原液回収ラインを通って原液回収タンクに回収され、濃縮原液供給ポンプにて濃縮原液供給ラインより濾過部へ供給され濾過される。このように、濃縮部と脱水部を並列配置してあるため、濃縮部で生成した濃縮汚泥量が少ない場合、脱水部に連続供給できなかった。これにより、濃縮部と脱水部の汚泥の供給の連続性を保つことができず、脱水効率が悪かった。加えて、濃縮汚泥を貯留するタンク、配管、ポンプ等を別途設ける必要があり、設備費用や設置スペースが増加するといった課題もあった。
【0008】
特許文献2に開示された連続濾過濃縮装置は、一般的な加圧脱水装置の構造を有した濃縮機構にて原液の濃縮を行うものであるが、1つの加圧脱水装置にて濃縮と脱水の両方を行うことができるものではない。したがって、濃縮後の汚泥を脱水するためには、別途、加圧脱水装置を設ける必要があり、設備全体が大きくなる問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、脱水機構と一体的に設けた濃縮機構で原液を濃縮した後、濃縮汚泥を脱水機構にて脱水することで、濃縮機構による汚泥濃縮と脱水機構による加圧脱水との連続性を高め、高い脱水効率を実現するとともに、設備全体をコンパクト化できる濃縮機構を有する加圧脱水装置および加圧脱水方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
多数のろ板を並列して形成した複数のろ過室の一方から原液を供給し、ろ過室に設けたろ材にて固液分離を行う加圧脱水装置において、ろ過室を形成するろ板列の前段および後段をそれぞれろ材に対して平行に原液を通水させつつろ材にて液分を透過して固液分離し、濃縮液が濃縮ろ過室内を互い違いに流動しながら濃縮液流路を形成する濃縮機構と、濃縮機構の吐出側に一体的に連設し、濃縮汚泥を脱水ろ板間の脱水ろ過室に設けたろ材にて液分を透過して固液分離する脱水機構と、で構成し、濃縮機構は、濃縮ろ板に中空状に形成した濃縮ろ過室と、ろ過床に張設したろ材と、始端濃縮ろ板を貫通する連通路と、隣接する濃縮ろ過室を連通する連通路と、終端濃縮ろ板から脱水機構に連通する連通路と、を備え、脱水機構は、開閉自在な脱水ろ板間に形成される脱水ろ過室と、ろ過床に張設したろ材と、始端側が濃縮機構と連通し、終端側が濃縮汚泥の一部を原液貯留槽に返送する返送管と連通するとともに、脱水ろ板列を貫通して濃縮機構で生成された濃縮汚泥を各脱水ろ過室に供給する濃縮汚泥流路と、を備えることでろ材表面にSS(懸濁物質)が固着しないため、ろ材の目詰まりを防止することもできる。
【0011】
前記濃縮ろ過室は、隣接する一対の前記濃縮ろ板間に形成される中空部または、前記濃縮ろ板内に形成される中空部であることで、使用する濃縮ろ板は既存のろ板の開口形状等を変更するのみでよいため、ろ板の製作や設置に手間を要しない。
【0012】
前記濃縮ろ過室は、複数並列しそれぞれ交互に連続形成される前記連通路に連通することで、供給された原液を短時間で効率よく濃縮できるうえ、後段の脱水機構へ連続的に供給できる。
【0013】
前記濃縮ろ過室と連通する洗浄液供給管を設けることで、複数の濃縮ろ過室及び複数の脱水ろ過室内に洗浄液を供給可能となり、洗浄液にて各ろ過室内のろ材に付着したSSを除去し、ろ材の目詰まりを解消できる。
【0014】
多数のろ板を並列して形成した複数のろ過室の一方から原液を供給し、ろ過室に設けたろ材にて固液分離を行う加圧脱水装置において、ろ過室を形成するろ板列の前段で、原液を互い違いに供給・排出する連通路を設けた中空状の濃縮ろ過室に張設したろ材に対して平行に原液を通水させつつろ材にて液分を透過して固液分離し、ろ過室を形成するろ板列の後段で、濃縮ろ過室に連通するとともに開閉自在な脱水ろ板列を貫通して形成される濃縮汚泥流路に流入した濃縮汚泥を脱水ろ板間に形成される脱水ろ過室に供給し、脱水ろ過室を構成するろ板のろ過床に設けたろ材にて液分を透過して固液分離し、脱水ケーキを生成するとともに、
濃縮ろ過室から脱水ろ過室に供給される濃縮汚泥の一部を濃縮汚泥流路から原液貯留槽に返送することで、濃縮機構にて生成された濃縮汚泥を脱水機構に連続供給できるため、短時間で低含水率の脱水ケーキを生成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る濃縮機構を有する加圧脱水装置および加圧脱水方法は、複数のろ板列の前段に濃縮機構を設けるとともに、濃縮機構と一体的に脱水機構を連設させたことで、汚泥濃縮と加圧脱水の連続性を高めることができる。濃縮機構及び脱水機構が連通路にて連設していることで、濃縮機構と脱水機構の間に一時的に濃縮汚泥を貯留するための濃縮槽を設ける必要がない。これに伴い、濃縮汚泥を濃縮槽に貯留せず、すぐに脱水機構へ供給できるため、汚泥の連続処理が可能となり、雑時間の省略による脱水性能の向上が望める。濃縮槽を不要としたことで、周辺に設ける配管、ポンプ等も不要になるため、設備の設置にかかるイニシャルコスト、ランニングコスト及び設置スペースを削減できる。また、濃縮機構及び脱水機の基本構造は、既存の加圧脱水装置と同様であるため、既存の加圧脱水装置の運転方法にて操作できる。従来のように加圧脱水装置の前段に別途、濃縮機を設けて操作する必要もないため、運転者の操作の手間を省くこともできる。そのうえ、濃縮機構及び脱水機構は、一体的でありながら、それぞれ独立した構成となっているため、供給される汚泥性状に応じて各ろ板に適切なろ材を選定することで、脱水性能を向上させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る加圧脱水装置の概略構成図である。
【
図2】同じく、加圧脱水装置の濃縮機構の概略側断面図である。
【
図3】同じく、濃縮機構を構成する濃縮ろ板の概略平面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る濃縮機構の概略側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る加圧脱水装置の脱水機構の概略側断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る濃縮機構の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る加圧脱水装置の概略構成図である。
加圧脱水装置1は、フロントフレーム2とリアフレーム3に一対のガイドレール4,4を橋架し、多数のろ板を並列している。ろ板列の後端部にムーバブルヘッド5を配設してリアフレーム3に支架した締付シリンダー7に連結し、各ろ板をガイドレール4,4に沿って開閉できるようにしてある。フロントフレーム2には閉板したろ板間に形成されるろ過室内に原液を供給する原液供給管8及び固液分離後のろ液や洗浄後の洗浄排水を排出する排出管19を配設している。
【0018】
原液供給管8は、一端を原液貯留槽13に接続し、原液供給ポンプ14を介して他端をフロントフレーム2に接続している。ムーバブルヘッド5には、返送管16を接続してあり、加圧脱水装置1より排出された汚泥の一部を循環汚泥として原液貯留槽13に返送する。
【0019】
洗浄液供給管15は、一端を洗浄液貯留槽17に接続し、他端を原液供給管8、排出管19及び返送管16に接続している。各管に介装させた弁を操作することによって、加圧脱水装置1内に洗浄液を供給できる。洗浄液貯留槽17内の洗浄液は、洗浄液供給管15に介装させた洗浄液供給ポンプ18にて供給される。加圧脱水装置1に供給された洗浄液は、各ろ過室内のろ材22を洗浄した後、返送管16を通って洗浄液貯留槽17に返送される。
なお、洗浄液供給管15の他端を返送管16に接続し、ムーバブルヘッド5側から洗浄液を供給する形態としてもよい。
【0020】
加圧脱水装置1は、ろ板列の前段に位置し原液を濃縮する濃縮機構9と、濃縮機構9で生成した濃縮汚泥の吐出し側に連設し濃縮汚泥を脱水する脱水機構10と、を一体化させた構成としてある。本実施例における濃縮機構9及び脱水機構10の形態は、以下で詳述する。
【0021】
図2、
図3は、本発明の実施形態に係る加圧脱水装置の濃縮機構の概略側断面図及び濃縮機構を構成する濃縮ろ板の概略平面図である。
図2に示すように、濃縮機構9は、並列する複数の濃縮ろ板11…で構成している。隣接する一対の濃縮ろ板11,11間の中空部には濃縮ろ過室21…を形成し、各濃縮ろ過室21のろ過床24にはろ材22を張設している。濃縮ろ過室21に供給される原液は、ろ材22にて固液分離される。
【0022】
原液は、フロントフレーム2に連設する始端濃縮ろ板11aを貫通する連通路28aから濃縮機構9始端に位置する濃縮ろ過室21aに供給される。濃縮ろ過室21a及び後段の各濃縮ろ過室21には、前段から供給するための連通路28と、後段に排出するための連通路28と、を設けてあり、供給された原液は、一方の連通路28から他方の連通路28に向かって濃縮ろ過室21…内を流動する。それぞれの連通路28は、各濃縮ろ過室21の対称位置に設けてあり、原液は各濃縮ろ過室21を互い違いに供給・排出されつつ濃縮されて濃縮液となる。
【0023】
濃縮液は、濃縮ろ過室21…内を互い違いに流動しながら濃縮液流路26を形成し、ろ材22にて濃縮ろ液を分離し濃縮濃度を高めた後、濃縮汚泥となる。濃縮機構9にて生成された濃縮汚泥は、濃縮機構9終端に位置する終端濃縮ろ板11bと後述する中間ろ板25との間に形成した濃縮ろ過室21bから中間ろ板25の連通路28bを介して後段に位置する脱水機構10に排出される。
【0024】
本実施形態では、始端濃縮ろ板11aを貫通する連通路28aを上方に設けている。原液供給管8から上方の連通路28aを介して濃縮ろ過室21aに供給された原液は、濃縮ろ過室21a内をろ材22に沿って平行に下向し、下方の連通路28から次段の濃縮ろ過室21に排出される。次段では濃縮ろ過室21内をろ材22に沿って平行に上向し、上方の連通路28から次段の濃縮ろ過室21に排出される。隣接する濃縮ろ過室21…にて反転流動を繰り返しつつ濃縮機構9にて生成された濃縮汚泥を中間ろ板25から脱水機構10へ供給(排出)する。
【0025】
なお、本実施形態では、始端濃縮ろ板11aを貫通する連通路28aを上方に設けているが、下方または左右に設け、対称位置に設けた連通路28に向かって流動させる構成であれば限定しない。また、各濃縮ろ板11に張設するろ材22として、ろ布を用いているが、ろ布の代わりにウェッジワイヤーやメタルメッシュ等の金属ろ材を用いてもよい。
【0026】
各濃縮ろ過室21を連通する連通路28は、
図3(a)に示す濃縮ろ板11上方に形成した長穴の開口及び
図3(b)に示す濃縮ろ板11下方に形成した長穴の開口である。各濃縮ろ過室21に形成される連通路28,28のうち、排出路となる連通路28は、濃縮ろ板11…を並列させた際に、供給路となる連通路28の対称位置に形成しているため、次段の濃縮ろ過室21への供給路となる。各連通路28は、各濃縮ろ過室21の対称位置に設ければよいため、隣接する濃縮ろ板11,11それぞれの左右対称位置や、斜め対称位置に設けてもよい。
なお、各連通路28に関し、
図3(c)に示すように円形状のものを複数形成する等、設計事項に応じて適宜決定する。
【0027】
濃縮ろ過室21…の各ろ材22にて分離される濃縮ろ液は、濃縮ろ板11のろ過床24に形成するろ液通路29を介してろ液排出路30へ流れる。ろ液排出路30より排出される濃縮ろ液は、排出管19より外部に排出される。
【0028】
図4は、本発明の他の実施形態に係る濃縮機構の概略側断面図である。
供給された原液が各濃縮ろ過室21内を2室ごとに互い違いに供給・排出されつつ濃縮されるものであり、2室ごとに互い違いに流動する濃縮液流路26を形成するように複数の濃縮ろ板11…を並列している。始端側に隣接する2室の濃縮ろ過室21a,21aを形成する濃縮ろ板11a,11の上方に開口する連通路28a,28aより供給された原液は、2室の濃縮ろ過室21a,21a内をろ材22に沿って平行に下向した後、連通路28a,28aの対称に位置する複数の連通路28…より後段の2室の濃縮ろ過室21,21に向かって流動する。なお、濃縮ろ板11上方の連通路28a,28aは連通している。濃縮ろ板11下方の複数の連通路28…も連通している。後段の2室の濃縮ろ過室21,21に供給された濃縮液は、ろ材22に沿って平行に上向し、連通路28…を介してさらに後段の濃縮ろ過室21b,21bへ供給される。各連通路28は、濃縮液が下向する2室の濃縮ろ過室21,21と濃縮液が上向する2室の濃縮ろ過室21,21を構成する各濃縮ろ板11の開口を連通して形成している。
【0029】
2室ごとに群を形成する濃縮ろ過室21…は、各群の上方及び下方にそれぞれ連通路28…を有している。また、隣接する群と群の間にも連通路28を形成しているため、濃縮液を各群内に互い違いに流動させることができる。このように、各連通路28を交互に連続形成することで濃縮液を互い違いに流動させつつ濃縮することができる。濃縮機構9にて生成された濃縮汚泥は、終端に群を形成する濃縮ろ過室21b,21bから中間ろ板25の連通路28bを介して脱水機構10に供給される。
【0030】
なお、濃縮ろ過室21…を2室ごとではなく、3室以上ごとに群形成してもよい。使用する各濃縮ろ板11の連通路28の開口の形状、数量、位置等は
図2と同様に適宜選択する。
【0031】
図2、
図4で示した中間ろ板25は、終端濃縮ろ板11b及び後述する始端脱水ろ板12aの間に設けてあり、ろ板閉板時に終端濃縮ろ板11bとの間に濃縮ろ過室21を形成するとともに、始端脱水ろ板12aとの間に脱水ろ過室23を形成する。
【0032】
中間ろ板25には、板厚方向に開口する連通路28bを形成してあり、濃縮ろ過室21…及び脱水ろ過室23…を連通している。連通路28bは濃縮汚泥の供給路であり、濃縮ろ過室21…で生成した濃縮汚泥を脱水ろ過室23に供給する。連通路28bは、濃縮ろ過室21と脱水ろ過室23を連通できればよいため、1つ以上の開口とする。連通路28bは、後段の脱水機構10への供給方法がトップフィード方式の場合は、上方に設け、センターフィード方式の場合は中央に設け、ボトムフィード方式の場合は下方に配置する等、供給方式に合わせて適宜設計する。
【0033】
なお、本実施形態では、濃縮機構9及び脱水機構10の間に中間ろ板25を配置し、濃縮機構9から脱水機構10へ濃縮汚泥を供給する構成としたが、濃縮機構9終端に位置する終端濃縮ろ板11bの連通路28と脱水機構10始端に位置する始端脱水ろ板12aの濃縮汚泥供給路20を連結させる構成としてもよい。いずれの形態においても、濃縮機構9と脱水機構10の間に濃縮汚泥を一時的に貯留する濃縮槽が不要となり、濃縮汚泥を濃縮機構9から脱水機構10に連続供給できるため脱水効率が低下しない。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る加圧脱水装置の脱水機構の概略側断面図である。
脱水機構10は、並列する複数の脱水ろ板12…で構成している。複数の脱水ろ板12…のうち、始端側に位置する始端脱水ろ板12aは、中間ろ板25を介して濃縮機構9と連設し、終端側に位置する終端脱水ろ板12bは、ムーバブルヘッド5と連設している。各脱水ろ板12の上方に濃縮汚泥供給路20を開口してあり、ろ板閉板時に連通することで、脱水機構10上方に濃縮汚泥流路27が形成される。隣接する脱水ろ板12,12間には、脱水ろ過室23…を形成してあり、各脱水ろ過室23内には、一対のろ材22を張設している。
【0035】
濃縮機構9にて生成された濃縮汚泥は、中間ろ板25の連通路28bを介して濃縮汚泥流路27に向かって流入する。流入した濃縮汚泥は、各脱水ろ過室23…に供給され、各脱水ろ過室23内のろ材22に沿って平行に下向する。下向する濃縮汚泥は、ろ材22にて脱水ろ液を分離し、脱水ケーキを生成する。分離する脱水ろ液は、ろ材22を透過して脱水ろ過室23からろ過床24に形成するろ液通路29を介してろ液排出路30へ流れる。ろ液排出路30から排出される脱水ろ液は、排出管19を通って外部へ排出される。
なお、各脱水ろ板12の開口である濃縮汚泥供給路20の開口に関し、濃縮機構9と同様に長穴を1つ形成してもよいが、形状、数量等、特に制限されず設計条件に応じて選択する。
【0036】
また、各脱水ろ過室23を形成する少なくとも一方の脱水ろ板12表面に膨張収縮可能なダイアフラム(図示しない)を張設し、脱水ろ過室23内の脱水ケーキを圧搾する構成としてもよい。
【0037】
脱水ろ板12に張設するろ材22の種類に関し、ろ布、金属ろ材等、特に制限されないが、濃縮機構9及び脱水機構10が独立配置しているため、濃縮機構9に固定式のろ材22を配置し、脱水機構10に走行式のろ材22を配置する等、各機構に適したろ材22を選定することもできる。脱水性能を高めるために、濃縮機構9に脱水機構10よりも通気度が高いろ材22を張設することも可能である。
【0038】
本実施形態において、濃縮機構9で使用するろ板形状を、脱水機構10のろ板形状と同一にした場合、任意のろ板を軸芯周りに180度回転し連通路28の位置を変更するとともにろ板列の配置を変えるだけで濃縮機構9と脱水機構10の増室、減室が可能となる。これにより、汚泥性状の変動に応じて最適な加圧脱水装置1を構成することもできる。
なお、濃縮機構9及び脱水機構10にそれぞれ配置するろ板の枚数や材質、形状等は供給される原液性状に応じて適宜設定する。
【0039】
図6は、本発明の他の実施形態に係る濃縮機構の概略側断面図である。
内部を中空状に形成した濃縮ろ板31及び濃縮ろ板33を交互に並列して構成した濃縮機構9である。濃縮ろ板31及び濃縮ろ板33は、中空部を形成したろ枠上方にそれぞれ連通路28を開口しており、各連通路28は連通している。濃縮ろ板31は、表面にろ材22を張設するとともにろ枠下方にろ液排出路30を有する。濃縮ろ板33は、連通路28より供給される原液が流入する中空部を濃縮ろ過室21としている。濃縮ろ過室21に供給された原液は、隣接する濃縮ろ板31のろ材22にて濃縮汚泥と濃縮ろ液に固液分離される。
必要に応じて、各濃縮ろ板31の表面にろ材支持部材を設け、ろ材支持部材の上にろ材22を張設してもよい。
【0040】
原液は、フロントフレーム2に連設した始端濃縮ろ板31a及び隣接する濃縮ろ板33a上方の連通路28a,28aを通って濃縮ろ過室21aに供給される。濃縮ろ過室21aに供給された原液は、前段及び後段に隣接する濃縮ろ板31a,31の表面に張設したろ材22に沿って平行に下向した後、濃縮ろ板33a及び後段の濃縮ろ板31,33の下方の連通路28…を通って後段の濃縮ろ過室21bに向かって流動しながら濃縮される。後段の濃縮ろ過室21bに流入した濃縮液は、隣接する濃縮ろ板31,31bの表面に張設したろ材22に沿って平行に上向し、上方に形成された連通路28b,28bから後段に連設した脱水機構10に供給される。各濃縮ろ過室21を平行に流動する濃縮液は、ろ材22にて固液分離される。濃縮ろ液は、ろ材22を透過した後、濃縮ろ板31の中空部を通ってろ液排出路30より排出される。濃縮ろ板33の中空部が濃縮ろ過室21であるのに対し濃縮ろ板31の中空部は濃縮ろ液の排出部である。
【0041】
このように、連通路28を上方及び下方に交互に配置することで、濃縮液が互い違いに流動する濃縮液流路26を形成することができる。隣接する濃縮ろ過室21にて反転流動を繰り返しつつ生成された濃縮汚泥は、終端に位置する終端濃縮ろ板31bの連通路28bより後段の脱水機構10へ連続的に供給(排出)する。この形態に関しても
図2と同様に、終端濃縮ろ板31bの連通路と始端脱水ろ板12aの連通路を連通させる構成とする。連通路28の位置に関してもこれに限定されず、ろ枠の左右対称位置や斜め対象位置に形成させてもよい。
【0042】
図6の場合も、
図4と同様に、隣り合う2以上の濃縮ろ過室21で形成された群を複数形成し、外部に設けた複数の配管と接続して群ごとに互い違いに濃縮液を流動させる構成としてもよい。
【0043】
図7は、本発明の他の実施形態に係る濃縮機構の概略平面図である。
図7(a)は、
図6の濃縮ろ板33内の中空部に流路形成リブ32を配設し、濃縮ろ板33内に形成される濃縮液流路26の距離を長くしたものであり、
図7(b)は
図6と同様の濃縮ろ板31である。濃縮ろ板33に設けた流路形成リブ32は、例えば先端が90度に折れ曲がった2枚1組の流路形成リブ32,32を濃縮ろ板33の内周壁の対称位置に配置することで、連通路28の一端から連通路28の対称位置にある連通路28に向かってジグザグ状の濃縮液流路26を形成できる。また、図示しない渦巻状に折れ曲がった2枚1組の流路形成リブ32,32を濃縮ろ板33の内周壁に配置することで、連通路28の一端から連通路28に向かって渦巻状に流れる濃縮液流路26を形成することもできる。長い濃縮液流路26を形成することで、濃縮ろ過室21内での濃縮液の濃縮時間を十分に確保できるため、濃縮液の濃縮濃度を高めることができる。これに伴い、後段の脱水ろ過室23での脱水効率が向上する。
【実施例】
【0044】
<S1 閉板工程>
並列する複数の濃縮ろ板11…及び脱水ろ板12…を締付シリンダー7によって閉板し、隣接する濃縮ろ板11,11間に濃縮ろ過室21…を形成し、隣接する脱水ろ板12,12間に脱水ろ過室23…を形成する。各濃縮ろ過室21及び各脱水ろ過室23にはろ材22を張設してあり、固液分離可能な空間が形成される。このとき、排出管19に介装した弁V2は開であり、その他の弁は、閉である。
【0045】
<S2 圧入工程>
原液供給管8に介装した弁V1及び返送管16に介装した弁V3を開いた後、原液供給ポンプ14を駆動する。原液供給ポンプ14の駆動により、原液供給管8を介して原液貯留槽13内の原液が加圧脱水装置1に圧入供給される。原液は、事前に定めた値を用いて一定圧で圧入供給する。
【0046】
加圧脱水装置1に供給された原液は、複数の濃縮ろ過室21…内を上下互い違いに流動しながら濃縮され、濃縮液流路26を形成する。ろ板列前段の濃縮機構9にて生成された濃縮汚泥は、連通路28bを介して後段に連設する複数の脱水ろ過室23…に向かって供給される。濃縮ろ過室21…を流れる濃縮液は、液分を多く含んでおり流動性を有しているため、原液を一定圧で圧入しつづけることで複数の濃縮ろ過室21…を流動できる。
【0047】
連通路28bより供給(排出)される濃縮汚泥は、脱水ろ板12…上部に形成した濃縮汚泥流路27に向かって流入した後、脱水ろ板12,12間の脱水ろ過室23…に供給されるが、一部の濃縮汚泥は、ムーバブルヘッド5側より循環汚泥として排出され、返送管16を介して原液貯留槽13に返送される。このように濃縮汚泥を循環させることで、濃縮ろ過室21…内に常時流れを生じさせることができる。
【0048】
1.濃縮
原液供給管8から圧入される原液は、始端濃縮ろ板11aの連通路28aに向かって流入した後、始端濃縮ろ板11aと始端濃縮ろ板11aに隣接する濃縮ろ板11の間に形成される濃縮ろ過室21a内を下向しながら濃縮される。下向した濃縮液は、始端濃縮ろ板11aの連通路28aの対称に位置する連通路28を介して次段の濃縮ろ過室21に流入した後、次段の濃縮ろ過室21を上向し、連通路28を介してさらに次段の濃縮ろ過室21にする。このように、濃縮ろ過室21…内を上下互い違いに流動しながら各濃縮ろ過室21内のろ材22にて濃縮されて濃縮汚泥を生成する。
【0049】
各濃縮ろ過室21を流動する濃縮液は、濃縮ろ過室21のろ過床24のろ材22に沿って平行に原液を流動させながら固液分離することでろ材22表面へのSSの付着を防ぎ、目詰まりを防止できるため、初期の通水性を保持できる。これにより、ろ材22洗浄の機会を減らすことができるため、洗浄液使用量や洗浄時に発生する電気代等の削減が可能となる。
【0050】
各濃縮ろ過室21内を流れる濃縮液は、濃縮ろ過室21内に十分行き渡り、ろ材22にて濃縮ろ液を分離し、分離した濃縮ろ液は、濃縮ろ板11のろ液通路29を介してろ液排出路30より排出される。その後、ろ液排出路30から排出管19を通って外部に排出される。
【0051】
2.脱水
濃縮機構9で生成された濃縮汚泥は、中間ろ板25の連通路28bを通って脱水ろ過室23…に連続的に圧入供給される。供給された濃縮汚泥は、濃縮汚泥流路27に向かって流入した後、各脱水ろ過室23に供給される。
【0052】
圧入された濃縮汚泥は、脱水ろ過室23内に十分に行き渡り、内部に張設したろ材22によって脱水ろ液を分離する。ろ材22間には固形分が蓄積し、脱水ケーキを生成する。分離した脱水ろ液は、ろ材22を透過した後、ろ液通路29を介してろ液排出路30から排出される。その後、排出管19より外部へ排出される。
【0053】
本実施形態では、濃縮機構9から排出される濃縮汚泥の連通路28bを脱水機構10と直列に連結しているため、濃縮機構9で生成された濃縮汚泥を途切れることなく、脱水機構10に連続供給できる。また、供給された濃縮汚泥は、濃縮汚泥流路27に向かって流入した後、濃縮汚泥流路27を流れる濃縮汚泥の静圧により各脱水ろ過室23に圧入される。これにより、短時間で脱水ケーキを生成できる。また、連通路28bを介して連結するため、濃縮汚泥を貯留する濃縮汚泥貯留槽の設置が不要となりそれに伴う配管やポンプ等も不要であるため設備全体がコンパクトになる。
なお、圧入工程は予め定められた一定時間継続する。
【0054】
<S3.開板工程>
一定時間、原液を圧入した後、原液供給ポンプ14を停止し、弁V1を閉じる。その後、締付シリンダー7を駆動し、脱水機構10の脱水ろ板12…を開板し、脱水ろ過室23…に形成された脱水ケーキを排出する。脱水ろ板12…を開板することにより、脱水ケーキは機外へ落下する。このとき、開板は脱水機構10のみ行うものとし、濃縮機構9の濃縮ろ板11…は開板せず、閉板状態にしておく。
なお、ダイアフラムろ板を用いる場合は、開板工程S3前に圧搾工程を行う。また、圧搾工程後に洗浄液供給管15から洗浄液を供給してケーキ洗浄を行い、ケーキ中の不純物を排出した後、次工程に移行してもよい。
【0055】
<S4.ろ材洗浄工程>
脱水ケーキを排出した後、締付シリンダー7を駆動し、脱水ろ板12…を再度、閉板する。濃縮機構9は閉板状態であるため、脱水ろ板12…のみ閉板することで加圧脱水装置1全体が再び閉板状態となる。
【0056】
脱水ろ板12…を閉板した後、排出管19に介装した弁V2及び返送管16に介装した弁V3を閉にするとともに、洗浄液供給管15に介装した弁V4、弁V5及び返送管16に介装した弁V7を開にし、洗浄液供給ポンプ18を駆動する。洗浄液貯留槽17の洗浄液は、洗浄液供給管15を経て原液供給部及びろ液排出部より濃縮ろ過室21…及び脱水ろ過室23…へ供給される。時間経過と共に各ろ過室は洗浄液で充填されるため、各ろ過室内のろ材22を浸漬状態に保つことができ、ろ材22が乾燥することを防止する。これにより次の脱水運転開始までの運転停止期間中にろ材22に付着した母液が蒸発し炭酸カルシウムや硫酸カルシウム等の結晶物によってろ材22の目詰まりが生じない。
【0057】
なお、弁V4、V5は、同時に開にして供給しても交互に開閉して供給してもよい。また、ムーバブルヘッド5側から洗浄液を供給する洗浄液供給管15を追加し、弁V6を操作して加圧脱水装置1の両側から洗浄液を供給してもよい。各ろ過室内に洗浄液を供給できればよいため、洗浄液供給管15の構成は設計事項に応じて適宜選択する。
【0058】
洗浄液は、濃縮ろ過室21…を浸漬させた後、脱水ろ過室23…を浸漬させ、各ろ過室内のろ材表面に付着したSS(懸濁物質)を除去し、洗浄排水として脱水ろ過室23…の濃縮汚泥供給路20…を通って返送管16より排出される。洗浄排水は、返送管16を通って、洗浄液貯留槽17に返送される。本実施形態では、ろ材洗浄を循環洗浄としており、供給する洗浄液をろ過室内に循環させているため、後から供給された洗浄液にてSSが後段へと押し流され、効率よくSSを除去できる。循環洗浄は、タイマーを用いて予め定めた一定時間行っているが、ろ液濃度等を計測し、所望の値を検知した時点で終了してもよい。
なお、洗浄液貯留槽17に返送した洗浄排水は、公知の手段にて適宜固液分離を行い、SSを除去する。洗浄排水が高濁度で再使用不可の場合、洗浄排水を外部に排出しつつ、洗浄液貯留槽17に洗浄水を別途供給する。
【0059】
ろ材洗浄工程S4終了後、洗浄液供給ポンプ18を停止し、弁V4、弁V5を閉にするとともに、弁V2を開にし、各ろ過室内に残留した洗浄排水を排出する。洗浄は脱水運転終了後に毎回実施するのではなく、脱水運転開始前に洗浄周期の設定を行ない、運転回数が設定値になった場合に洗浄を実施している。排出されるろ液濃度を計測し計測値が基準値となった際に洗浄を実施する方法としてもよい。
【0060】
本実施では、濃縮機構9及び脱水機構10を浸漬洗浄しているが、濃縮機構9のみ浸漬洗浄とし、脱水機構10は公知の洗浄方法を用いて洗浄液を噴射してろ材22の洗浄を行ってもよい。
【0061】
各工程の切り替えに用いる指標に関しても予め定めた所定時間ではなく、圧力やろ液濃度等を測定しながら所望の値が得られた場合に切り替える等、条件に応じて適宜選択する。
【0062】
上述し、かつ図面に記載した本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で変形実施を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る濃縮機構を有する加圧脱水装置および加圧脱水方法は、濃縮機構及び脱水機構を連設し一体的に構成したものであるため、1つの装置で汚泥の濃縮及び脱水ができる。脱水機とは別個に濃縮機を設ける必要がないため、濃縮機の設置費用及び運転費用がかからないうえ、設備全体がコンパクトになる。また、濃縮槽を介さずに濃縮汚泥を濃縮機構から脱水機構に供給するものであり、濃縮汚泥を濃縮槽に長期滞留させずに脱水機に連続供給可能となるため、短時間で低含水率の脱水ケーキを生成できる。コンパクトな装置で高効率の脱水が可能であるため、無機質を多く含む生産プロセスや産業排水に用いるフィルタープレスとして好適であり、上水・工水スラッジや化学プラントなどの固形分の少ない原液の長時間ろ過にも使用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 加圧脱水装置
9 濃縮機構
10 脱水機構
11、11a、11b濃縮ろ板
12 脱水ろ板
13 原液貯留槽
15 洗浄液供給管
16 返送管
21 濃縮ろ過室
22 ろ材
23 脱水ろ過室
24 ろ過床
26 濃縮液流路
27 濃縮汚泥流路
28、28a、28b 連通路