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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20241106BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/36
C08L83/07
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021554293
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038514
(87)【国際公開番号】W WO2021085103
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019197901
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】曽我 哲徳
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023683(JP,A)
【文献】特開2008-284408(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163333(WO,A1)
【文献】特開2006-028311(JP,A)
【文献】特開昭62-020577(JP,A)
【文献】国際公開第85/001055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/02
C08K 3/36
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルケニル基を2以上有するビニル系重合体(A-1)もしくはアルケニル基を2以上有するポリオルガノシロキサン(A-2)、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を2以上有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)炭素数3~15のアルキル基を有するアルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステル、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される1種以上の化合物、
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記()成分の両末端基が水酸基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記()成分が、炭素数5~10のアルキル基を有するアルキルシランにて表面処理されたシリカ粉である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分のシリカ粉が、フュームドシリカ粉である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、オクチルシランにより表面処理されたシリカ粉である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記()成分が、ホウ酸エステルである、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)成分対前記(D)成分の質量比が、9:1~1:9である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物と、架橋剤と、硬化触媒とを含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化性樹脂組成物を含む、接着剤。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化性樹脂組成物を含む、シール剤。
【請求項12】
(A)アルケニル基を2以上有するビニル系重合体(A-1)もしくはアルケニル基を2以上有するポリオルガノシロキサン(A-2)、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を2以上有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)炭素数3~15のアルキル基を有するアルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステル、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される1種以上の酸、及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物、
を混合する、樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
(A)アルケニル基を2以上有するビニル系重合体(A-1)もしくはアルケニル基を2以上有するポリオルガノシロキサン(A-2)、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を2以上有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)炭素数3~15のアルキル基を有するアルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステル、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される1種以上の酸、及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物、
を混合して樹脂組成物を製造する工程、
前記樹脂組成物に、架橋剤及び硬化触媒を混合する工程、及び
(A)成分をベースポリマーとする場合、硬化温度を30~300℃とする条件下、(B)成分をベースポリマーとする場合、水蒸気の存在下、硬化温度を10~50℃とする条件下、前記樹脂組成物を硬化して硬化物を製造する工程、
を含む、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布性、作業性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤やシール剤、コーティング剤などは塗布する際の作業性を良くするために、粘度やチクソ性の調整が一般的に行われている。なかでも、チクソ性を上げて、垂直面への塗布を可能にし、必要以上の範囲に樹脂が流れ込んで不具合が起きることを防止するために流れ性を調整することは接着剤やシール剤を使用する上で必要不可欠な技術である。このチクソ性を上げる一般的な手法としては、充填剤を接着剤やシール剤に添加する方法や、ベースとなるバインダー樹脂と相溶性の悪い化合物を接着剤やシール剤に添加してベースとなる樹脂と化学的に反発を引き起こし、チクソ性を発現させる方法などの各種手法がとられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-010131号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、従来の充填剤を入れる方法では、充填剤含有量の増加に伴い粘度が上昇することから、充填剤の含有量が一定量を超えるとディスペンサーでの吐出が困難になる問題や、スクリーン印刷において目詰まりの原因となるなど作業性を著しく低下させてしまう問題があった。また、ベースとなるバインダー樹脂と相溶性の悪い化合物を添加し、チクソ性を向上させる方法では、塗布後の樹脂が時間の経過と共にブリードアウトを起こしてしまい硬化不良を招くなどの問題があった。
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、粘度の上昇を抑え、チクソ性を効果的に付与することで、塗布性、作業性に優れた樹脂組成物を得る手法を見出し、本発明に至った。なお、チクソ性とは、揺変性やチクソトロピック特性とも呼ばれ、チクソ性がよいほど、塗料を塗布する際のような高剪断速度状態では低粘度となるが、塗布後のような低剪断速度状態では高粘度となり、塗布後の塗料が下方に流れてくる(たれてくる)ことなく、適切な塗布を完了できることとなる。
【0006】
本願発明は次の〔1〕~〔13〕のいずれかであり得る。〔1〕~〔13〕に記載された具体的な各要素を適宜組み合わせたものも本願発明の範囲内である。
〔1〕
(A)アルケニル基を2以上有する重合体、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)アルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ素、リン、硫黄、並びに窒素からなる群から選択される1種以上の元素を含む化合物、
を含む樹脂組成物。
〔2〕
前記(D)成分が、酸または酸エステル化合物である、前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記(D)成分が、ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステル、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記(C)成分のシリカ粉が、フュームドシリカ粉である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記(C)成分が、オクチルシランにより表面処理されたシリカ粉である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記(A)成分が、アルケニル基を2以上有するビニル系重合体(A-1)もしくはアルケニル基を2以上有するポリオルガノシロキサン(A-2)である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記(C)成分対前記(D)成分の質量比が、9:1~1:9である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物と、架橋剤と、硬化触媒とを含む、硬化性樹脂組成物。
〔9〕
前記〔8〕に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
〔10〕
前記〔8〕に記載の硬化性樹脂組成物を含む、接着剤。
〔11〕
前記〔8〕に記載の硬化性樹脂組成物を含む、シール剤。
〔12〕
(A)アルケニル基を2以上有する重合体、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)アルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ素、リン、硫黄、並びに窒素からなる群から選択される1種以上の元素を含む酸、及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物、
を混合する、樹脂組成物の製造方法。
〔13〕
(A)アルケニル基を2以上有する重合体、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)アルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ素、リン、硫黄、並びに窒素からなる群から選択される1種以上の元素を含む酸、及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物、
を混合して樹脂組成物を製造する工程、
前記樹脂組成物に、架橋剤及び硬化触媒を混合する工程、及び
(A)成分をベースポリマーとする場合、硬化温度を30~300℃とする条件下、(B)成分をベースポリマーとする場合、水蒸気の存在下、硬化温度を10~50℃とする条件下、前記樹脂組成物を硬化して硬化物を製造する工程、
を含む、硬化物の製造方法。
【0007】
本発明の樹脂組成物は、粘度を上げずにチクソ性を調整でき、経時でのブリードアウトがなく、塗布後の形状保持性に優れているため、塗布性、作業性の向上に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細を次に説明する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、適宜「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0009】
<樹脂組成物>
本発明の態様の一つは、(A)アルケニル基を2以上有する重合体、及び(B)ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される1種以上のベースポリマー、
(C)アルキルシランにて表面処理されたシリカ粉、及び
(D)ホウ素、リン、硫黄、並びに窒素からなる群から選択される1種以上の元素を含む酸、及びその誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物、
を含む樹脂組成物である。
【0010】
[(A)成分]
本発明で使用される前記(A)成分はベースポリマーであり、樹脂組成物の特性を発揮する主要な成分であり、バインダーとしての特性を有する場合はベースバインダーとも呼ばれる。(A)成分はアルケニル基を2以上有する重合体であり、主鎖を構成する重合体分子の末端または分子鎖にアルケニル基が2以上付属・結合したものであり得る。
(A)成分を構成する重合体の主鎖は特に限定されず、各種の主鎖を使用することができる。汎用性の観点から、重合体の主鎖がビニル系共重合体またはポリオルガノシロキサンである場合が好ましく、かかる場合、前記(A)成分は、それぞれ、アルケニル基を2以上有するビニル系共重合体(A-1)、及びアルケニル基を2以上有するポリオルガノシロキサン(A-2)となり得る。前記主鎖を構成する重合体の数平均分子量は、例えば500~1,000,000の範囲、好ましくは1000~100,000が適当である。なお、特に断らない限り、本明細書において数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出される。(A-1)成分の25℃における粘度は、例えば0.03Pa・s~1500Pa・sが好ましく、より好ましくは0.05Pa・s~1000Pa・sであり、特に好ましくは0.3Pa・s~800Pa・sである。特に断らない限り、本明細書における粘度の試験方法はJIS Z 8803に準拠する。(A)成分のアルケニル基含有量は、例えば0.01mmol/g~5mmol/gであり得、好ましくは、0.05mmol/g~1mmol/gの範囲が適当である。
【0011】
(A)成分を構成するアルケニル基としては、それぞれ独立して、一般式(I):R23C=C(R1)-で表される二重結合を少なくとも1つ有する1価の基であり、式(I)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~20の有機基であり得る。炭素数1~20の有機基としては特に限定されないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、具体的には以下のような基:-(CH2n-CH3、-CH(CH3)-(CH2n-CH3、-CH(CH2CH3)-(CH2n-CH3、-CH(CH2CH32、-C(CH32-(CH2n-CH3、-C(CH3)(CH2CH3)-(CH2n-CH3、-C65、-C64(CH3)、-C63(CH32、-(CH2n-C65、-(CH2n-C64(CH3)、-(CH2n-C63(CH32(nは0以上、1以上、3以上、又は5以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下、18以下、15以下、又は10以下)が例示される。これらの基では、R1としては水素又はメチル基が、R2及びR3としては水素がより好ましい。
(A)成分を構成するアルケニル基の数は2つ以上であるが、好ましくは重合体分子の両末端に1つずつアルケニル基が存在することが好ましい。
【0012】
(A-1)成分の主鎖を構成する共重合体の構成単位となるビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のモノマーを用いることができる。例示するならば、当該モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、及び(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、及びフッ素ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、及びマレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、及びフマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、及びシクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、及びプロピレン等のアルケン類;ブタジエン、及びイソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、及びアリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、最も好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、上記モノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、上記モノマーが質量比で例えば40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0013】
本発明のビニル系重合体((A-1)成分の主鎖を構成する重合体)の数平均分子量は500以上1,000,000未満の範囲であり、1000以上100,000未満がさらに好ましい。分子量500以上であれば、硬化物におけるヒドロシリル結合の存在量が適度なため、ビニル系重合体の本来の特性が発現されやすく、また、1,000,000未満であれば、ディスペンス塗布がしにくいなど取扱いが困難になることがない。
【0014】
ビニル系重合体は種々の重合法により得ることができ、その方法は特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性の観点からラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。
【0015】
本発明の(A-1)成分が有するアルケニル基は、後述する架橋剤とヒドロシリル反応するものが好ましく、一般式(II):H2C=C(R4)-で表されるものであることが好ましい。
上記(II)式において、R4は水素又は炭素数1~20の有機基である。炭素数1~20の有機基としては特に限定されないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、具体的には以下のような基が例示される。-(CH2n-CH3、-CH(CH3)-(CH2n-CH3、-CH(CH2CH3)-(CH2n-CH3、-CH(CH2CH32、-C(CH32-(CH2n-CH3、-C(CH3)(CH2CH3)-(CH2n-CH3、-C65、-C64(CH3)、-C63(CH32、-(CH2n-C65、-(CH2n-C64(CH3)、-(CH2n-C63(CH32(nは0以上、1以上、3以上、又は5以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下、18以下、15以下、又は10以下)これらの内では、R4としては水素又はメチル基がより好ましい。
【0016】
(A-1)成分は25℃における粘度が0.03Pa・s以上1500Pa・s未満が好ましく、より好ましくは0.05Pa・s以上1000Pa・s未満であり、特に好ましくは0.3Pa・s以上800Pa・s未満である。
前記(A-1)成分のアルケニル基含有量は0.01mmol/g以上、5mmol/g以下であり、より好ましくは、0.05mmol/g以上1mmol/g以下の範囲が好ましい。上記範囲内であることで、反応性と柔軟性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
特に好ましい(A-1)成分は、両末端にビニル基(H2C=CH-)を有する(メタ)アクリル共重合体であり、そのような(A-1)成分の市販品としては、株式会社カネカ製のXMAP SA100AやXMAP OR100Aなどが挙げられる。
【0018】
前記(A-2)成分のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの分子構造は実質的に直線状であるが、一部に分岐構造があってもよい。例えば分子鎖両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサン;分子鎖末端ビニル基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体;分子鎖片末端がビニル基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン;分子鎖片末端がビニル基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体が挙げられる。これらの中でも汎用性があり、硬化性に優れることから、分子鎖両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサンが好ましい。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。但し、(A-2)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサン((B)成分)ではあり得ない。
【0019】
本発明の(A-2)成分が有するアルケニル基は、後述する架橋剤とヒドロシリル反応するものが好ましく、上記(A)及び(A-1)で例示されたアルケニル基であってもよく、好ましくは主鎖であるポリオルガノシロキサンのSiに結合するビニル基(H2C=CH-)であることが好ましい。
【0020】
(A-2)成分は25℃における粘度が0.03Pa・s以上1500Pa・s未満が好ましく、より好ましくは0.05Pa・s以上1000Pa・s未満であり、特に好ましくは0.3Pa・s以上800Pa・s未満である。
本発明の(A-2)成分中のポリオルガノシロキサンの数平均分子量は500以上1,000,000未満の範囲であり、1000以上100,000未満がさらに好ましい。分子量500以上であれば、硬化物におけるヒドロシリル結合の存在量が適度なため、ビニル系重合体の本来の特性が発現されやすく、また、1,000,000未満であれば、ディスペンス塗布がしにくいなど取扱いが困難になることがない。
【0021】
前記(A-2)成分のアルケニル基含有量は0.01mmol/g以上、5mmol/g以下であり、より好ましくは、0.05mmol/g以上1mmol/g以下の範囲が好ましい。上記範囲内であることで、反応性と柔軟性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
(A)成分において、アルケニル基を主鎖の重合体に導入する方法は、公知の方法を適宜使用することができるが、アルケニル基をビニル系重合体に導入する方法を例に取ると、以下の方法が挙げられる。
(1)ラジカル重合、好ましくはリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、一分子中に重合性の低いアルケニル基と比較的重合性の高いアルケニル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
(2)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエンなどのような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
(3)反応性の高い炭素-ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫などの有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(4)反応性の高い炭素-ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(5)反応性の高い炭素-ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(6)反応性の高い炭素-ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(7)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基にアルケニル基含有ハロゲン化物、アルケニル基含有イソシアネート化合物、アルケニル基含有カルボン酸またはアルケニル基含有酸ハロゲン化物を反応させる方法、あるいは上記水酸基にジイソシアネートを反応させ、さらに水酸基とアルケニル基を含有する化合物を反応させる方法。
この中でも制御がより容易である点から(2)、(6)、(7)の方法が好ましい。
【0023】
[(B)成分]
本発明で使用される(B)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンである。但し、(B)成分は、前記(A)成分とは異なる成分である。なかでも下記の一般式(III)で示される両末端基が水酸基である、即ち水酸基で封鎖されたポリオルガノシロキサンが(B)成分として好ましい。
(式(III)中、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよい、置換又は非置換の1価の炭化水素基を表わし、好ましくは炭素数が12以下の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数が1~10、1~8又は2~6のアルキル基であり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル基;シクロヘキシルなどのシクロアルキル基;ビニル、アリルなどのアルケニル基;フェニル、トリルなどのアリール基であり得る。R5及びR6は、基の水素原子が部分的にハロゲン原子等で置換された置換炭化水素基であってもよい。
式(III)中、nは、例えば5以上、好ましくは10~100、より好ましくは15~50の整数である。)
【0024】
(B)成分の25℃における粘度は、好ましくは10mm2/s以上1000mm2/s未満であり、さらに好ましくは20mm2/s以上500mm2/s未満であり、最も好ましくは30mm2/s~100mm2/sである。10mm2/s以上1000mm2/s未満であれば、樹脂組成物としての経時での粘度変化を抑制させることができる。
(B)成分の数平均分子量は、例えば500~1,000,000の範囲、好ましくは1000~100,000が適当である。
【0025】
(B)成分の市販品としては、信越化学工業株式会社社製のX-21-5841、KF-9701や東レ・ダウコーニング株式会社製のBY16-873、モメンティブ社製のXC96-723などが挙げられる。
上記(A)成分及び/又は(B)成分のベースポリマーは、(A)成分又は(B)成分のいずれか、若しくは双方を含み得る。
【0026】
[(C)成分]
本発明で使用される(C)成分はアルキルシランで表面処理されたシリカ粉である。本発明の(C)成分は、後述する(D)成分と併用することで、際だったチクソ性を発現することができる。
前記アルキルシランとしては、一般式(IV):Si(R74で示されるアルキルシラン化合物が挙げられる。前記(A)成分および前記(B)成分に対する分散性に優れ、前記(D)成分との高いチクソ性を発現させる効果の観点から、当該一般式(IV)中、R7は、同一でも異なっていてもよい、炭素数3~15のアルキル基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数5~10のアルキル基、最も好ましくは炭素数8~10のアルキル基である。上記一般式(IV)のR7の具体例としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基が挙げられるが、オクチル基が好ましい。
【0027】
(C)成分のシリカ粉は、フュームドシリカ粉であることが好ましい。フュームドシリカ粉とは、火炎加水分解法によって得られた二酸化硅素からなり、真球状の粒子を形成し、複数の粒子が数珠状に凝集、融着し、嵩高い凝集体を形成したものである。
【0028】
(C)成分のアルキルシランで表面処理されたシリカ粉の一次粒子の平均粒径は、1nm以上300nm未満であることが好ましく、さらに好ましくは3nm以上100nm未満であり、最も好ましくは5nm以上50nm未満である。なお、本発明でいう一次粒子の平均粒径は、遠心沈降光透過法やレーザー回折法、透過型電子顕微鏡で計測した手法などの一般的な方法で測定・算出されるが、特に断りがない限り、本明細書で言う一次粒子の平均粒径は、JIS H 7804:2005に準拠し、透過型電子顕微鏡を用い、各一次粒子の二次元投影像の長径と短径を測定し、その平均から求めた数値である。
【0029】
(C)成分のアルキルシランで表面処理されたシリカ粉のBET比表面積は、300m2/g未満であることが好ましく、さらに好ましくは250m2/g未満である。なおBET比表面積の下限値としては、前記(A)成分および前記(B)成分との充填率の観点から、例えば100m2/g以上、好ましくは150m2/g以上であることが適当である。
【0030】
樹脂組成物中での(C)成分の経時での沈降を防止する観点から、(C)成分の表面処理されたシリカ粉の見掛比重は1g/l以上100g/l未満であることが好ましく、より好ましくは10g/l以上80g/l未満である。なお、本明細書で言う見掛比重は、DIN ISO 787-11に準拠し、十分にタップを行った後の見掛け密度の測定によって測定された値である。
【0031】
(C)成分は、(A)成分及び/又は(B)成分のベースポリマー100質量部に対して、0.01~100質量部含むことが好ましく、0.1~50質量部含むことがさらに好ましく、0.5~30質量部含むことが最も好ましい。0.01~100質量部であることで、ベースポリマーの特性を維持しながら粘度特性をコントロールすることができる。
【0032】
(C)成分の市販品としては、AEROSIL R805(エボニック社製)、CAB-O-SIL TS-530(CABOT社製)などが挙げられる。
【0033】
[(D)成分]
本発明で使用することができる(D)成分としては、ホウ素、リン、硫黄、並びに窒素からなる群から選択される1種以上の元素を含む化合物である。(D)成分は(C)成分による粘度の上昇を抑え、チクソ性付与効果を増大させる主要な成分である。(D)成分は、上記元素を含む酸、並びに、当該酸のエステル(酸エステル化合物)や当該酸の塩等の当該酸の誘導体であってもよい。(D)成分としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、硝酸、硝酸エステルなどが挙げられる。なかでも、硬化性、保存安定性の観点から、ホウ酸、ホウ酸エステル、リン酸、リン酸エステルが好ましく、チクソ性付与効果の観点から、ホウ酸エステル、リン酸エステルが好ましく、ホウ酸エステルが特に好ましい。
【0034】
ホウ酸エステルとしては、任意のものを用いることができるが、本発明においてより好ましくは、分子中にホウ酸エステルを1つ有する以下一般式(V)で表される化合物である。
B-(OR83 (V)
ここで式(V)中、R8は水素、または置換基を有しても良い炭素数が1~6のアルキル基、アリール基、カルボニル基、アセチル基から選ばれる官能基であり、3つのうち全てが同一であっても異なっていてもよい。当該化合物としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル等のホウ酸トリアルキルエステル化合物を挙げることができ、樹脂組成物の保存安定性の観点からホウ酸トリブチルが好適である。
【0035】
リン酸エステルとしては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
(D)成分は、(A)成分及び/又は(B)成分のベースポリマー100質量部に対して、0.05~20質量部含むことが好ましく、0.1~12質量部含むことがさらに好ましく、0.2~7質量部含むことが最も好ましい。0.05~20質量部であることで、樹脂組成物として特性に影響することなく、チクソ性を維持することができる。
【0037】
粘度の上昇を抑制しチクソ性のみを向上させるためには、樹脂組成物中の(C)成分対(D)成分の質量比が、例えば(C)成分:(D)成分=15:1~1:15であり、9:1~1:9であることが好ましく、8:2~2:8であることがより好ましく、7:3~3:7であることが最も好ましい。
【0038】
[任意成分]
本発明の樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、充填材、酸化防止剤、光安定剤、保存安定剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、分散剤、pH調整剤、溶媒、密着付与剤、可塑剤、顔料、難燃剤、及び界面活性剤等の、上記(A)~(D)成分とは異なる任意成分を含んでもよい。これらの添加により、塗布性、成膜性、保存安定性などに優れた樹脂組成物が得られる。
本発明に対し、硬化物の弾性率、樹脂強度、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材を添加してもよい。具体的には有機質粉体、無機質粉体、金属質粉体等が挙げられる。無機質粉体の充填材としては、ガラス、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。無機質粉体の配合量は、前記(A)成分及び/又は前記(B)成分のベースポリマー100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。100質量部以下であれば樹脂組成物として十分な流動性が得られ、良好な作業性が得られる。
【0039】
有機質粉体の充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートが挙げられる。有機質粉体の配合量は、(A)成分及び/又は前記(B)成分のベースポリマー100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。0.1質量部より大きければ効果が小さくなることもなく、100質量部以下であれ樹脂組成物として十分な流動性が得られ、良好な作業性が得られる。
【0040】
金属質粉体の充填材としては、例えば、金、白金、銀、銅、インジウム、パラジウム、ニッケル、アルミナ、錫、鉄、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。金属質粉体の配合量は、(A)成分及び/又は前記(B)成分のベースポリマー100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましく、より好ましくは1~50質量部である。
【0041】
酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4‘-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;フェノチアジン等のアミン系化合物;ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられる。中でもフェノール系化合物が好適である。
【0042】
光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル-メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル,1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリルオキシカルボニル)エチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、β-アラニン,N,-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキサ-3,20-ジアザジシクロ-〔5,1,11,2〕-ヘネイコサン-20-プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4-メトキシフェニル)-メチレン〕-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド,N,N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)等のヒンダートアミン系;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられる。特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
本発明の樹脂組成物に含まれる任意成分の量は、例えば、(A)成分及び/又は(B)成分のベースポリマー100質量部に対して、例えば0.05~100質量部、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.2~20質量部であることが適当である。
【0043】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の上記樹脂組成物は、さらに架橋剤、触媒、及びカップリング剤等の硬化性成分を適宜添加し、硬化性樹脂組成物として存在していてもよい。当該硬化性樹脂組成物を、任意の条件で硬化させることで、当該硬化性樹脂組成物の硬化物を得ることができる。本発明の本発明の硬化性樹脂組成物は、全ての成分を混合してなる一液型の硬化性樹脂組成物の他、いくつかの成分を別々に調製しかつ保管し、使用時に混合する二液型の硬化性樹脂組成物のキットとしても使用することができる。
【0044】
(A)成分をベースポリマーとして含む樹脂組成物を用いる場合、架橋剤として1分子中に1以上のヒドロシリル基を有する化合物を含むことができる。ヒドロシリル基とは、SiH結合を有する基を表す。架橋剤としては、(A)成分とヒドロシリル化反応により硬化できるものであれば特に制限はないが、ポリシロキサンなどが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、直鎖状、分岐状、環状または網状の分子からなる分子中にヒドロシリル基を含有するシリコーンなどが挙げられる。また樹脂強度と硬化性の観点から、ヒドロシリル基は1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
【0045】
架橋剤の25℃における粘度は、前記(A)成分との相溶性の観点から1mPa・s以上10Pa・s未満が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上5Pa・s未満であり、特に好ましくは7mPa・s以上1Pa・s未満である。また前記架橋剤のSiH価は樹脂組成物の硬化性の観点から、10以上1000g/mol未満が好ましく、より好ましくは50以上700g/mol未満、最も好ましくは100以上500g/mol未満である。ここで、SiH価とは、1分子中のSiH基の濃度(g/mol)を意味する。
【0046】
架橋剤のケイ素原子に結合した水素原子以外の置換基は、炭素数1~20のアルキル基、フェニル基が好ましいが、その他の基でもかまわない。
【0047】
架橋剤の市販品としては特に限定されないが、CR-300、CR-500(株式会社カネカ製)、HMS-013、HMS-151、HMS-301(アズマックス株式会社製)、SH1107フルイド(東レ・ダウコーニング株式会社製)などが挙げられる。
【0048】
架橋剤の添加量は架橋剤中のヒドロシリル基と、前記(A)成分に含まれるアルケニル基1個に対して、通常0.5当量以上1.5当量以下となる量が好ましい。さらに好ましくは0.8当量以上1.2当量以下となる量である。0.5当量より多い場合には、架橋密度が少なくなりすぎることがなく、1.5当量より少ない場合には、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、耐熱性に影響を与えたりすることがない。また、前記(A)成分と前記(C)成分の混合割合は、硬化性の観点から、(A)成分のアルケニル基1モルに対する(C)成分のヒドロシリル基のモル比が0.2以上5以下の範囲にあることが好ましく、さらに0.4以上2.5以下であることが好ましい。モル比が5未満であると十分な硬化性を有することができ、0.2以上であれば硬化後の硬化物にクラックやボイドが発生しない均一で強度のある硬化物が得られる。
【0049】
(A)成分を用いる場合においては、触媒として付加反応型の硬化触媒を用いることが好ましい。当該付加反応型の硬化触媒としては、ヒドロシリル化触媒を含んでいることが好ましい。ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応を触媒できるものであれば特に制限はなく、任意の触媒が使用でき、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。この中でも反応性が高いことから遷移金属触媒が好ましい。
【0050】
遷移金属触媒については、具体的に例示すると、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金-オレフィン錯体;Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m等の白金-ビニルシロキサン錯体;Pt(PPh34、Pt(PBu34等の白金-ホスフィン錯体;Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34等の白金-ホスファイト錯体;Pt(acac)2が挙げられる。なお、上記各式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナトを表し、n、mは整数を表す。また、Ashbyらの米国特許第3159601号明細書及び米国特許第3159662号明細書中に記載された白金-炭化水素複合体;並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。硬化性の観点から好ましい触媒としては、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;Pt(CH2=CH22Cl2などの白金-オレフィン錯体;白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体;Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)x、Pt[(MeViSiO)4yなどの白金-ビニルシロキサン錯体;Pt(PPh34、Pt(PBu34などの白金-ホスファイト錯体が挙げられる。これらの中でも活性が優れるという観点から、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、及び白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。
【0051】
さらに、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・xH2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0052】
触媒の量としては特に制限はないが、(A)成分を使用する場合、(A)成分のアルケニル基1molに対して1×10-8mol以上1×10-1mol未満の範囲で用いるのが好ましく、1×10-6mol以上1×10-2mol未満の範囲で用いるのがさらに好ましい。また、触媒としてヒドロシリル化触媒を用いる場合、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので1×10-1mol未満が好ましい。硬化性樹脂組成物中に存在する触媒の絶対量は、(A)成分100質量部に対し、例えば0.01~1質量部であり、好ましくは、0.020~0.5質量部、より好ましくは0.03~0.1質量部である。触媒の形態は、固体または液体のいずれであっても良いが、例えば、アルコール溶液の形態、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等の溶液の形態、より好ましくはイソプロパノール溶液の形態で使用することが適当である。
【0053】
(B)成分をベースポリマーとして含む樹脂組成物を使用し硬化性樹脂組成物を得る場合、多官能の加水分解性シリル基を有する化合物をさらに含むことが好ましい。さらに、当該化合物と(B)成分とを縮合反応させるために、有機錫錯体、アミン化合物、チタン又はジルコニウムの第四族元素からなる有機錯体を縮合反応触媒として使用することが適当である。加水分解基の種類により脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱ケトン型などの縮合反応触媒が存在する。
【0054】
上記多官能の加水分解性シリル基を有する化合物は、1分子中に2~3の加水分解性シリル基を有する化合物であれば限定はなく、好ましくはシラン系カップリング剤である。加水分解シリル基の種類としては、アセトキシシリル基、オクタノイルオキシシリル基、ベンゾイルオキシシリル基等のアシロキシシリル基、ジメチルケトオキシムシリル基、メチルエチルケトオキシムシリル基、ジエチルケトオキシムシリル基等のケトオキシムシリル基;メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシ基等のアルコキシシリル基、イソプロペニルオキシシリル基、1-エチル-2-メチルビニルオキシシリル基等のアルケニルオキシシリル基;ジメチルアミノシリル基、ジエチルアミノシリル基、ブチルアミノシリル基、シクロヘキシルアミノシリル基等のアミノシリル基;ジメチルアミノキシシリル基、ジエチルアミノキシシリル基等のアミノキシシリル基;及びN-メチルアセトアミドシリル基、N-エチルアセトアミドシリル基、N-メチルベンズアミドシリル基等のアミドシリル基等を挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。人体や環境への配慮からメトキシシリル基、エトキシシリル基、及びプロポキシシリル基が好ましい。
【0055】
上記縮合反応触媒の具体例を挙げると、有機錫錯体ではジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ブチル錫-2-エチルヘキソエート、カプリル酸第一錫、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、及びブチル酸錫などがある。また、チタン系触媒ではテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、及びチタントリエタノールアミネートなどがある。ジルコニウム系触媒では、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、及びジルコニウムトリブトキシステアレートなどがある。しかし、これらに特に限定されるものではない。また、架橋剤の構造中にアミンを有する化合物も触媒として使用できる。該アミン化合物の具体例を挙げると、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0056】
加水分解性シリル基を有する化合物と縮合反応触媒の添加量は、(B)成分100質量部に対して、加水分解性シリル基を有する化合物は0.1~25質量部、好ましくは1~20質量部、縮合反応触媒は0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0057】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、シール剤や接着剤等に使用するための硬化性樹脂組成物の材料の一部として使用される。本発明の硬化性樹脂組成物は、シール剤、接着剤及びコーティング剤等として利用され得る。本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、上記シール材が硬化して形成されたシール層やシール部、上記接着剤が硬化して形成された接着層又は接着部、又は上記コーティング剤が硬化して形成されたコーティング層又はコーティング部として利用され得る。
<塗布方法>
本発明の樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物を被着体への塗布する方法としては、公知のシール剤や接着剤等の塗布方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から25℃で液状であることが適当である。
【0058】
<硬化方法と硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱や水分などを利用する公知の方法により硬化させて硬化物を得ることができる。硬化物の製造方法として、具体的には、上記(A)~(D)成分並びに必要に応じて上記任意成分を混合して樹脂組成物を製造する工程、
前記樹脂組成物に、架橋剤及び硬化触媒を混合する工程、及び(A)成分をベースポリマーとする場合、硬化温度を30~300℃とする条件下、(B)成分をベースポリマーとする場合、水蒸気の存在下、硬化温度を10~50℃とする条件下、前記樹脂組成物を硬化して硬化物を製造する工程、を含む、硬化物の製造方法を例示することができる。
【0059】
本発明の(A)成分を用いた硬化性樹脂組成物を加熱硬化する場合、硬化温度としては特に限定されないが、30~300℃が好ましく、50~200℃がより好ましく、60~150℃がさらに好ましい。硬化時間は特に限定されないが、60~150℃の場合には20分以上5時間未満が好ましく、40分以上3時間以内がさらに好ましい。
本発明の前記(B)成分を用いた硬化性樹脂組成物を水蒸気によって湿気硬化する場合、硬化温度としては特に限定されないが、10℃~50℃が好ましく、15℃~30℃が好ましい。また相対湿度は40%RH以上であることが好ましく、硬化時間は1時間以上2週間未満が好ましい。
【0060】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、各成分を混合することにより製造される。各成分の混合順序は特に限定されず、(A)成分及び/又は(B)成分に(C)成分をミキサーにて分散させた後、(D)成分を添加しても良いし、(A)成分及び/又は(B)成分に(D)成分を添加し、ミキサーで撹拌後、(C)成分を添加し、分散させても良い。
本発明の樹脂組成物に、さらに架橋剤や触媒などの硬化性成分を加え、硬化性樹脂組成物とすることができる。具体的に、硬化性樹脂組成物は、以下の手順で製造される。
(A)成分を使用する場合:
(A)~(D)成分(但し(B)成分は任意)を添加した後、ミキサーにて撹拌し、架橋剤、触媒などの硬化性成分を添加し、撹拌する。
(B)成分を使用する場合:
(A)~(D)成分(但し(A)成分は任意)を添加した後、架橋剤、触媒などの硬化性成分を添加し、減圧撹拌する。
【実施例
【0061】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
[実施例1~7、比較例1~7]
所望の樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0063】
(A-1)成分:XMAP OR100A(カネカ製):アルケニル基として両末端にビニル基を1つずつ有するアクリル共重合体、粘度(25℃)700Pa・s
(A-2)成分:XF40-A1987(信越化学工業株式会社製):アルケニル基として両末端にビニル基を1つずつ有するポリオルガノシロキサン、粘度(25℃)13Pa・s、アルケニル基(ビニル基)含有量0.13mmol/g
(B)成分:KF-9701(信越化学工業株式会社製):両末端シラノールジメチルシリコーンオイル、粘度(25℃)60mm2/s
(C)成分:AEROSIL、R805(エボニック社製):オクチルシランにて表面処理されたフュームドシリカ粉、一次粒子の平均粒径12nm、BET比表面積150m2/g、見掛比重60g/l
(C’1)成分:AEROSIL R972(日本アエロジル株式会社製):ジメチルシリルにて表面処理されたフュームドシリカ粉、一次粒子の平均粒径16nm、BET比表面積110m2/g、見掛比重50g/l
(C’2)成分:AEROSIL 200(日本アエロジル株式会社製):未処理のフュームドシリカ粉、一次粒子の平均粒径12nm、BET比表面積200m2/g、見掛比重50g/l
(C’3)成分:AEROXIDE、T805(日本アエロジル株式会社製)オクチルシランにて表面処理されたチタン粉、一次粒子の平均粒径21nm、BET比表面積45m2/g、見掛比重200g/l
(D-1)成分:ホウ酸トリブチル(試薬)
(D-2)成分:リン酸(試薬)
(D-3)成分:硫酸(試薬)
(D-4)成分:硝酸(試薬)
(D’-1)成分:メタクリル酸(三菱レイヨン株式会社製)
(D’-2)成分:酢酸(試薬)
【0064】
下記表1、表2に示されるもの以外の各成分は以下である。いずれの添加量も(A)成分又は(B)成分のベースポリマー100質量部に対する添加量である。
(A)成分を使用した場合
・CR-500(架橋剤) ヒドロシリル基含有化合物(株式会社カネカ製) 16質量部(A成分に対して1.0当量)SiH価:253g/mol
・Pt-VTS-3.0IPA(遷移金属触媒) 白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のイソプロピルアルコール溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン株式会社製)0.03質量部
(B)成分を使用した場合
・3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(縮合反応触媒、Z-6020 東レ・ダウコーニング株式会社製) 9質量部
・ジブチル錫ビストリエトキシシリケート(縮合反応触媒、ネオスタンU-303 日東化成株式会社製) 0.2質量部
【0065】
前記(A)成分もしくは前記(B)成分を撹拌容器に秤量し、前記(C)成分を撹拌容器に秤量して、30分間撹拌した。前記(D)成分を秤量し、10分間撹拌した。その他、架橋剤や触媒を秤量投入し、各硬化性樹脂組成物を得た。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0066】
[粘度]
コーンプレート型粘度計により下記の測定条件に基づき硬化性樹脂組成物の粘度(Pa・s)を測定した。下記の基準に基づき評価し、結果を表1に示す。
せん断速度:1.0s-1
測定時間:3min
温度条件:25℃
樹脂量:0.5mL
当該粘度の測定により、試料のチクソ性のうち、試料塗布時の高剪断速度状態で低粘度であるか否かを評価することができる。
[タレ性評価]
タレ性とは、塗料等を被塗布面に塗布してから所定期間経過後に当該塗布した塗料が垂直方向にどれだけ移動するかを測定したものである。タレ性の測定により、試料のチクソ性のうち、試料塗布後の低剪断速度状態で高粘度であるか否かを評価することができる。具体的には、SUS304の試験片(厚さ1.0×短辺25×長辺100mm)の短辺から10mmの位置に標線を引き、標線の上にディスペンサーを用いてΦ=2.5mmの各樹脂のビートを塗布した。試験片を垂直に立て、経時(10分、30分、60分)で樹脂が標線から移動した距離を測定した。試験は25℃で行った。
<評価基準>
◎(優秀):60分経過後の移動距離が3mm未満
○(良):60分経過後の移動距離が5mm未満
△(可):30分経過後の移動距離が5mm未満
×(不可):10分経過後の移動距離が5mm以上
なお、タレ性の測定の際、塗布性と作業性に関しても塗布のしやすさ及びそれに伴う作業のしやすさを評価した。
【0067】
表1

【0068】
表2

【0069】
表1に示されるように、実施例1~7、特に実施例1~5、中でも実施例3及び5は粘度が十分に低く、塗布しやすい状態にあることが理解できる。また、実際のタレ性の測定の際も塗布がしやすく、良好に作業を行うことができた。さらにタレ性については、実施例1~7の粘度の値に関わらず、良好なタレ性を有していた。一方で、表2に記載の(C’)成分や(D’)成分を用いた樹脂組成物はタレ性において満足のいく結果ではなかった。また比較例7のように(D)成分を含有していない粘度が高いものでもタレ性が悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の樹脂組成物は、粘度にかかわらず、効果的にチクソ性を付与することができるため、作業性が良好で、各種塗布方法に展開できるため非常に有用なものである。