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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61M5/142
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019230677
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021097835
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹▲崎▼ 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
(72)【発明者】
【氏名】登川 哲哉
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152294(WO,A1)
【文献】特開平09-154943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポンプと、
前記第1のポンプとは異なる第2のポンプとを備える、ポンプシステムであって、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとは、各々が液体が充填されている容器から前記液体を送出させ、各々が発光部を有し、
前記ポンプシステムを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1のポンプによる前記液体の送出と前記第2のポンプによる前記液体の送出とを同時に並行して行ない、その間、前記第1のポンプにより送出される前記液体の流量に応じて前記第1のポンプの前記発光部の点灯と消灯とを切り換える速度を制御し、前記第2のポンプにより送出される前記液体の流量に応じて前記第2のポンプの前記発光部の点灯と消灯とを切り換える速度を制御する、ポンプシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のポンプにより送出される前記液体の流量と、前記第2のポンプにより送出される前記液体の流量との比率に応じて、前記第1のポンプの前記発光部と前記第2のポンプの前記発光部とを制御する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記容器は、シリンジであり、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとは、シリンジポンプである、請求項1または2に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/152294号(特許文献1)には、順次の駆動によって薬剤の連続投与を実施するための2台の医療用ポンプを備える、医療用ポンプシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/152294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2台のポンプを連続して動作させる際に、1台目のポンプによる送液が終了する少し前から2台目のポンプによる送液を開始することで、2台のポンプを切り替えるときの流量の変動を抑制できる。
【0005】
本開示では、2台のポンプを同時に駆動させる連携動作期間に、各々のポンプにより送液される液体の流量を容易に把握できる、ポンプシステムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、第1のポンプと、第1のポンプとは異なる第2のポンプとを備える、ポンプシステムが提供される。第1のポンプと第2のポンプとは、各々が液体が充填されている容器から液体を送出させる。第1のポンプと第2のポンプとは、各々が発光部を有している。ポンプシステムは、ポンプシステムを制御する制御部をさらに備えている。制御部は、第1のポンプによる液体の送出と第2のポンプによる液体の送出とを同時に並行して行ない、その間、第1のポンプにより送出される液体の流量に応じて第1のポンプの発光部を制御し、第2のポンプにより送出される液体の流量に応じて第2のポンプの発光部を制御する。
【0007】
上記のポンプシステムにおいて、制御部は、第1のポンプにより送出される液体の流量と、第2のポンプにより送出される液体の流量との比率に応じて、第1のポンプの発光部と第2のポンプの発光部とを制御してもよい。
【0008】
上記のポンプシステムは、発光部の点灯と消灯とを切り換える速度を制御してもよい。
上記のポンプシステムにおいて、容器は、シリンジであり、第1のポンプと第2のポンプとは、シリンジポンプであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に従ったポンプシステムによると、2台のポンプを同時に駆動させる連携動作期間に、各々のポンプにより送液される液体の流量を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に基づくポンプシステムの概略構成を示す正面図である。
図2】ポンプシステムに含まれるシリンジポンプと、シリンジポンプに装着されるシリンジとの各々の外観を示す斜視図である。
図3図2のシリンジポンプを矢印III方向から見た図である。
図4図2のシリンジポンプを矢印IV方向から見た図である。
図5図2のシリンジポンプを矢印V方向から見た図である。
図6】ポンプシステムの電気的構成を示すブロック図である。
図7】2台のシリンジポンプの連携動作を説明するための図である。
図8】シリンジポンプに含まれる発光部の模式図である。
図9】発光部の長周期点滅表示を模式的に示す図である。
図10】発光部の中周期点滅表示を模式的に示す図である。
図11】発光部の短周期点滅表示を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、実施形態に基づくポンプシステム200の概略構成を示す正面図である。図1に示されるように、ポンプシステム200は、複数のシリンジポンプ100を備えている。図1に示されるポンプシステム200は、6台のシリンジポンプ100を備えている。ポンプシステム200に含まれるシリンジポンプ100の個数は、6台に限られない。ポンプシステム200は、2台以上5台以下のシリンジポンプ100を備えていてもよく、7台以上のシリンジポンプ100を備えていてもよい。
【0013】
複数のシリンジポンプ100は、第1のシリンジポンプ100Aと、第2のシリンジポンプ100Bと、第3のシリンジポンプ100Cと、第4のシリンジポンプ100Dと、第5のシリンジポンプ100Eと、第6のシリンジポンプ100Fとを含んでいる。以下、第1~第6のシリンジポンプ100A~100Fを、単にシリンジポンプ100A~100Fと称する。図1に示される6台のシリンジポンプ100のうち、上から下に順に、シリンジポンプ100A、シリンジポンプ100B、シリンジポンプ100C、シリンジポンプ100D、シリンジポンプ100E、シリンジポンプ100Fが配置されている。シリンジポンプ100A~100Fは、図1に示される配置に限られず、任意の位置に配置されてもよい。
【0014】
ポンプシステム200は、複数のシリンジポンプ100を搭載するための搭載台210を備えている。搭載台210は、複数個の、典型的にはシリンジポンプ100の個数と同数の搭載部211を有している。搭載部211は、たとえば、略水平に延びる平板形状を有している。複数のシリンジポンプ100の各々は、搭載部211上に載せ置かれて搭載部211に取り付けられることにより、搭載台210に搭載される。複数の搭載台210の全てにシリンジポンプ100が搭載されていなくてもよい。
【0015】
ポンプシステム200は、通信制御部250を備えている。通信制御部250は、複数のシリンジポンプ100間の通信を仲介する。通信制御部250は、シリンジポンプ100と外部との通信を仲介する。通信制御部250は、搭載台210に搭載されている。図1に示される通信制御部250は、搭載台210の下部に搭載されており、6台のシリンジポンプ100よりも下方に配置されている。通信制御部250は、図1に示される配置に限られず、任意の位置に配置されてもよい。
【0016】
搭載台210は、搭載台210の移動を容易にするための構成、たとえば持ち手または車輪などを有していてもよい。搭載台210は、たとえば搭載台210の上部に、ディスプレイを有していてもよい。
【0017】
シリンジポンプ100A,100Bは、第1のポンプ群PG1を構成している。第1のポンプ群PG1は、複数のシリンジポンプ100のうちの1以上のポンプ、具体的にはシリンジポンプ100A,100Bを含んでいる。
【0018】
シリンジポンプ100E,100Fは、第2のポンプ群PG2を構成している。第2のポンプ群PG2は、複数のシリンジポンプ100のうちの1以上の、第1のポンプ群PG1に含まれないポンプ、具体的にはシリンジポンプ100E,100Fを含んでいる。
【0019】
図1には、2つのシリンジポンプ100が第1のポンプ群PG1を構成し、2つのシリンジポンプ100が第2のポンプ群PG2を構成する例が示されている。第1のポンプ群PG1は、3以上のシリンジポンプ100を含んでもよく、1つのシリンジポンプ100を含んでもよい。第2のポンプ群PG2は、3以上のシリンジポンプ100を含んでもよく、1つのシリンジポンプ100を含んでもよい。
【0020】
図2は、ポンプシステム200に含まれるシリンジポンプ100と、シリンジポンプ100に装着されるシリンジ10との各々の外観を示す斜視図である。図3は、図2のシリンジポンプ100を矢印III方向から見た図である。図4は、図2のシリンジポンプ100を矢印IV方向から見た図である。図5は、図2のシリンジポンプ100を矢印V方向から見た図である。
【0021】
図2に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジ10に適用されるシリンジポンプである。シリンジ10は、バレル20およびプランジャロッド30を含む。
【0022】
バレル20は、略円筒状の外形を有している。バレル20の先端に注液口22が設けられている。バレル20の後端に第1フランジ21が設けられている。バレル20の表面に、応答部40が設けられている。バレル20は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル20の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。バレル20の内側に、薬液が充填される。
【0023】
応答部40は、バレル20の外周面に貼り付けられているRFID(Radio Frequency Identification)タグにより構成されている。RFIDタグは、回路チップと、回路チップに結線されたシート状のループアンテナとを有しており、回路チップに記録されているデータをループアンテナの電磁誘導により無線送信する。
【0024】
回路チップに記録されているデータとしては、バレル20およびプランジャロッド30の各々に関する情報、バレル20に充填される薬液に関する情報、および、薬液の投与条件に関する情報などが含まれている。
【0025】
プランジャロッド30は、バレル20の内側に嵌入され、後端に第2フランジ31を有する。プランジャロッド30の先端側には、バレル20の内周面と摺接するガスケット部32が設けられている。ガスケット部32は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマなどの弾性体で構成されている。プランジャロッド30におけるガスケット部32以外の部分は、ポリプロピレンなどの樹脂にて構成されている。
【0026】
図2図5に示すように、シリンジポンプ100は、バレル受け部110と、溝部111と、駆動部120とを備える。
【0027】
バレル受け部110には、バレル20が載置される。バレル受け部110は、バレル20の外周面の下側部分と接する凹面部を有している。溝部111は、バレル受け部110の後端に設けられている。溝部111には、第1フランジ21が挿入される。バレル受け部110および溝部111は、一体成形によって形成されている。
【0028】
バレル受け部110の内側に、読取書込部160が設けられている。読取書込部160は、バレル受け部110に載置されたバレル20の応答部40に対して電磁波を発信可能であるとともに、発信された電磁波に応答して応答部40から送信されるデータを受信可能である。
【0029】
読取書込部160は、シート状のループアンテナを有している。読取書込部160は、読取書込部160の厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信する。よって、応答部40と読取書込部160とが対向するように、バレル受け部110にバレル20が載置される。読取書込部160の厚み方向の他方側は、電磁波を遮蔽可能な遮蔽部材で覆われている。読取書込部160は、応答部40から送信されるデータを電磁誘導により無線受信する。
【0030】
読取書込部160は、バレル20の応答部とデータ通信を行なう。読取書込部160は、応答部40に記憶された、シリンジ10に関する情報を読み取る。シリンジ10に関する情報は、バレル20およびプランジャロッド30の形状に関する情報を含み、バレル20内に充填されている薬剤に関する情報を含む。読取書込部160は、応答部40への情報の書き込みを行なう。読取書込部160は、応答部40に、新たに情報を追記する。読取書込部160は、応答部40に既に記憶されている情報を、最新の情報に上書き更新する。
【0031】
駆動部120は、押圧面121と、可動爪部122とを有している。押圧面121は、第2フランジ31を押圧する。可動爪部122は、第2フランジ31を押圧面121と挟持して保持する。可動爪部122は、ばねなどの付勢機構により押圧面121に接近する方向に付勢されている。駆動部120は、プランジャロッド30を駆動する。駆動部120は、プランジャロッド30を移動可能に保持する。駆動部120によって駆動されたプランジャロッド30が、バレル20内においてバレル20の軸方向にバレル20に向かって移動する。これにより、バレル20内の薬液がバレル20から送出されて、注液口22からチューブ内に注入される。
【0032】
駆動部120は、クラッチレバー123をさらに有している。クラッチレバー123は、プランジャロッド30を着脱する際に、プランジャロッド30の延在方向における、駆動部120自体の位置および可動爪部122の位置を、手動で調整するための構成である。具体的には、クラッチレバー123を一方向に回動させることにより、駆動部120は手動で移動することが規制されるロック状態になるとともに、可動爪部122は押圧面121側に付勢された状態で維持される。クラッチレバー123を他方向に回動させることにより、駆動部120はアンロック状態になるとともに、可動爪部122は付勢力に抗して押圧面121から離れるように移動する。
【0033】
駆動部120の構成は上記に限られない。駆動部120は、第2フランジ31を押圧する押圧面121、および、第2フランジ31を押圧面121との間に収容する固定爪部を有していてもよい。
【0034】
シリンジポンプ100は、バレル保持部112をさらに備えている。バレル保持部112は、バレル受け部110の上方において上下方向に回動するように回動軸113に接続されている。バレル保持部112は、回動して下りた状態において、バレル受け部110に載置されているバレル20を保持する。バレル保持部112は、必ずしも設けられていなくてもよい。読取書込部160が、バレル受け部110の内側ではなく、バレル保持部112の内周側に設けられていてもよい。
【0035】
図1に示される複数のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100A,100Bが連携動作して、薬液を連続注入する。シリンジポンプ100Aに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブと、シリンジポンプ100Bに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブとは、たとえば図示しない三方活栓またはY字管などを介して、接続されている。シリンジポンプ100Aによってシリンジ10から送出される薬液と、シリンジポンプ100Bによってシリンジ10から送出される薬剤とは、患者に投与される前に、合流する。
【0036】
図1に示される複数のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100E,100Fが連携動作して、薬液を連続注入する。シリンジポンプ100Eに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブと、シリンジポンプ100Fに取り付けられるシリンジ10の注液口22に接続されるチューブとは、たとえば図示しない三方活栓またはY字管などを介して、接続されている。シリンジポンプ100Eによってシリンジ10から送出される薬液と、シリンジポンプ100Fによってシリンジ10から送出される薬剤とは、患者に投与される前に、合流する。
【0037】
図6は、ポンプシステム200の電気的構成を示すブロック図である。図6に示されるように、各々のシリンジポンプ100(100A,100B)は、第1検知部130と、第2検知部140と、第3検知部170と、第4検知部190と、個別制御部150と、読取書込部160と、操作パネル180と、駆動部120とを備えている。個別制御部150は、第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170、第4検知部190、読取書込部160、操作パネル180および駆動部120の各々と、電気的に接続されている。
【0038】
図3に示されるように、第1検知部130は、バレル受け部110の上面の、バレル保持部112に対して下方の位置に設けられている。第1検知部130は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることを検知する。具体的には、第1検知部130は、バレル20によって押圧される押圧センサで構成されている。
【0039】
バレル受け部110にシリンジ10のバレル20を載置した状態で、第1検知部130は、押圧センサが完全に押圧されることにより、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に載置されたことを検知する。図6に示されるように、第1検知部130の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0040】
第1検知部130は、バレル20が不十分な状態でバレル受け部110に載置され、バレル20が押圧センサを全く押圧していない状態では、検知信号を出力しない。第1検知部130は、バレル20が押圧センサを不完全に押圧している状態では、設定条件を満たしていない不完全押圧であることを示す検知信号を出力する。第1検知部130が検知信号を出力しない場合、および、不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、バレル20がバレル受け部110に正常な状態で保持されていない可能性がある。
【0041】
第1検知部130は、押圧センサが完全に押圧されたときのみ検知信号を出力するように構成されていてもよい。この場合は、第1検知部130が検知信号を出力した場合は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることになる。
【0042】
第1検知部130は、バレル20がバレル受け部110に載置されたことを検知できる構成であればよく、押圧センサ以外のセンサで構成されていてもよい。たとえば、第1検知部130は、バレル保持部112の回動角度を検知可能なセンサ、具体的には回動軸113に取り付けられたエンコーダで構成されていてもよい。この場合、バレル保持部112の回動角度の検知信号の入力を受けた個別制御部150は、バレル20の外径に対応してバレル保持部112の回動角度に関して予め設定された閾値と、バレル保持部112の回動角度とを比較することにより、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されているか否かを判断する。
【0043】
図3に示されるように、第2検知部140は、押圧面121と可動爪部122との間の位置に設けられている。第2検知部140は、押圧面121と可動爪部122との第2フランジ31の挟持間隔を検知する。具体的には、第2検知部140は、第2フランジ31によって押圧されたことを検知可能な押圧センサと、押圧面121と可動爪部122との第2フランジ31の挟持間隔を検知可能な測位機構とを含んでいる。
【0044】
測位機構は、たとえば、可変抵抗部、リミットスイッチまたは光電センサなどを用いることにより、押圧面121に対する可動爪部122のスライド量を検知可能な機構で構成されている。
【0045】
図6に示されるように、第2検知部140の検知信号は、個別制御部150に入力される。押圧面121と可動爪部122との挟持間隔に関する第1閾値および第2閾値が、第2フランジ31の厚さに対応して予め各々設定されている。設定された第1閾値および第2閾値の各々は、個別制御部150に記憶されている。個別制御部150は、挟持間隔が第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第2検知部140からの検知信号が設定条件を満たしていると判断する。
【0046】
挟持間隔が第1閾値未満である場合、および、挟持間隔が第2閾値より大きい場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、第2フランジ31が可動爪部122に正常な状態で保持されていない可能性がある。
【0047】
第3検知部170は、バレル20の後端の第1フランジ21が挿入される溝部111に設けられている。第3検知部170は、第1フランジ21によって押圧されたことを検知可能な押圧センサで構成されている。第3検知部170は、溝部111に第1フランジ21が挿入された際に、第1フランジ21によって押圧センサが完全に押圧されることにより、第1フランジ21が溝部111に装着されたことを検知する。第3検知部170の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0048】
第3検知部170は、バレル20が不十分な状態でシリンジポンプ100に取り付けられ、第1フランジ21が押圧センサを全く押圧していない状態では、検知信号を出力しない。第3検知部170は、第1フランジ21が押圧センサを不完全に押圧している状態では、設定条件を満たしていない不完全押圧であることを示す検知信号を出力する。第3検知部170が検知信号を出力しない場合、および、不完全押圧であることを示す検知信号を出力した場合、シリンジポンプ100に予め設定されたシリンジ10とは異なるシリンジが装着されている可能性、および、第1フランジ21が溝部111に正常な状態で収容されていない可能性がある。
【0049】
第3検知部170は、押圧センサが完全に押圧されたときのみ検知信号を出力するように構成されていてもよい。この場合は、第3検知部170が検知信号を出力した場合は、既定のサイズのバレル20がバレル受け部110に装着されていることになる。
【0050】
第4検知部190は、クラッチレバー123の状態を検知する。第4検知部190はたとえば、クラッチレバー123の回動軸に取り付けられた回転角センサ、たとえばエンコーダで構成されていてもよい。第4検知部190は、クラッチレバー123が一方向に回動されており、第2フランジ31が押圧面121と可動爪部122とによって挟持されるとともに駆動部120がロックされている状態か、または、クラッチレバー123が他方向に回動されており、可動爪部122が押圧面121から離れるとともに駆動部120のロックが解除されている状態か、を検知する。第4検知部190の検知信号は、個別制御部150に入力される。
【0051】
第4検知部190は、エンコーダに代表される回転角センサ以外のセンサで構成されていてもよい。たとえば第4検知部190は、クラッチレバー123が一方向に回動された位置とクラッチレバー123が他方向に回動された位置とに設けられた近接センサで構成され、近接センサがクラッチレバー123を検知することによりクラッチレバー123の状態を検知してもよい。
【0052】
第1検知部130、第2検知部140、第3検知部170および第4検知部190は、シリンジポンプ100へのシリンジ10の取り付け状態を検知する検知部を構成している。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100に取り付けられたことを検知する。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100から取り外されたことを検知する。検知部は、適切なシリンジ10がシリンジポンプ100に取り付けられているか否かを検知する。検知部は、シリンジ10がシリンジポンプ100に適切に取り付けられているか否かを検知する。
【0053】
操作パネル180は、図2,3に示されるように、シリンジポンプ100に装着されるシリンジ10と平行に位置するように設けられている。操作パネル180は、表示部181および操作入力部182を含む。表示部181は、たとえば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置を含む。表示部181には、個別制御部150から入力された情報が表示される。操作入力部182にて設定された操作信号は、個別制御部150に入力される。
【0054】
読取書込部160からの電磁波の発信は、個別制御部150によって制御される。応答部40から送信されて読取書込部160が受信したデータは、個別制御部150に入力される。
【0055】
各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150と、通信制御部250とは、電気的に接続されている。通信制御部250は、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとの間の通信を仲介する。通信制御部250は、ポンプシステム200に各種の動作を実行させるためのプログラムである運転モードを記憶するメモリを有している。メモリは、不揮発性であり、必要なデータを記憶する領域として設けられている。
【0056】
通信制御部250は、メモリに記憶されている運転モードを、各シリンジポンプ100A,100Bに送信する。各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、受け取った運転モードを、運転モード設定の選択肢として表示部181に表示する。表示部181に表示された運転モードを作業者が選択することで、各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、通信制御部250から受信した運転モードに従って、各シリンジポンプ100A,100Bを動作させることが可能である。
【0057】
シリンジポンプ100Aの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aを単独で制御可能に構成されている。シリンジポンプ100Bの個別制御部150は、シリンジポンプ100Bを単独で制御可能に構成されている。個別制御部150は、不揮発性メモリを有しており、不揮発性メモリには、シリンジポンプ100を単独で制御するためのプログラムが記憶されている。
【0058】
各シリンジポンプ100A,100Bは、各ポンプを単独で制御可能な個別制御部150を有しているが、シリンジポンプ100A,100Bが実施形態のポンプシステム200に組み入れられた場合には、各ポンプの個別制御部150が別個独立に各ポンプを制御するのではなく、シリンジポンプ100A,100Bの両方が通信制御部250から受信した運転モードに従って制御され、連携動作をする。
【0059】
図6には、複数のシリンジポンプ100のうち、シリンジポンプ100A,100Bが代表的に図示されているが、他のシリンジポンプ100もシリンジポンプ100A,100Bと同様の構成を有し、同様に通信制御部250から運転モードを受信可能である。
【0060】
図7は、2台のシリンジポンプ100A,100Bの連携動作を説明するための図である。図7に示されるグラフは、2台のシリンジポンプ100A,100Bのうち1台目に使用されるシリンジポンプ100Aの流量と、シリンジポンプ100Aに続いて2台目に使用されるシリンジポンプ100Bの流量とを経時的に示している。グラフの横軸は時間を示し、グラフの縦軸はポンプの流量を示す。
【0061】
ポンプシステム200は、2台のシリンジポンプ100A,100Bを使用して、シリンジ10のバレル20内に充填された薬液を連続投与する。図7に示される時刻0から時刻Tsまでの期間は、シリンジポンプ100Aのみが駆動されており、シリンジポンプ100Bは停止している。時刻0から時刻Tsまでの、連携動作が開始する前の期間は、シリンジポンプ100Aの流量が基準流量V0であり、シリンジポンプ100Bの流量が0である。
【0062】
時刻Tsにおいて、シリンジポンプ100Bが起動する。シリンジポンプ100Aを駆動している間に、シリンジポンプ100Bの駆動が開始される。時刻Tsにおいて、シリンジポンプ100Aとシリンジポンプ100Bとの2台を同時に駆動させる連携動作が開始される。連携動作期間においては、シリンジポンプ100Aによるシリンジ10からの薬液の送出と、シリンジポンプ100Bによるシリンジ10からの薬液の送出とが、同時に並行して行なわれる。
【0063】
連携動作期間において、シリンジポンプ100Aの流量が漸減し、シリンジポンプ100Bの流量が漸増する。図7に示される例では、シリンジポンプ100Aの流量が段階的に減少し、シリンジポンプ100Bの流量が段階的に減少する。連携動作期間の初期の時刻T1においては、シリンジポンプ100Aの流量が、シリンジポンプ100Bの流量よりも大きい。連携動作期間の中ほどの時刻T2においては、シリンジポンプ100Aの流量とシリンジポンプ100Bの流量とはほぼ等しい。連携動作期間の終了間際の時刻T3においては、シリンジポンプ100Bの流量が、シリンジポンプ100Aの流量よりも大きい。
【0064】
時刻Tfにおいて、シリンジポンプ100Aが停止し、連携動作が終了する。時刻Tf以降の、連携動作が終了した後の期間は、シリンジポンプ100Aの流量が0であり、シリンジポンプ100Bの流量が基準流量V0である。
【0065】
シリンジポンプ100Aからシリンジポンプ100Bへの駆動の切り替え時に、連携動作期間を設定することにより、時刻Ts以前、時刻Tsから時刻Tfまでの連携動作期間、および時刻Tf以降において、シリンジポンプ100A,100Bからの薬液の合計流量が基準流量V0に保たれる。シリンジポンプ100A,100Bの動作の切り替え時において薬液の流量の変動を小さく抑えることができ、一定量の薬液を連続注入できる。シリンジポンプ100A,100Bに充填されている薬液は、基本的には同一の薬液である。
【0066】
図8は、シリンジポンプ100に含まれる発光部181Lの模式図である。図8には、シリンジポンプ100の操作パネル180に含まれる表示部181が図示されている。表示部181は、その一部分に、発光部181Lを有している。発光部181Lは、光を発する。発光部181Lは、たとえばランプ、LED(Light Emitting Diode)などにより構成されている。発光部181Lは、必ずしも表示部181の一部でなくてもよい。たとえば、表示部181に隣り合って発光部181Lが配置されてもよい。
【0067】
図1を併せて参照して、第1のポンプ群PG1に含まれるシリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lが、同じ色の光を発する構成としてもよい。第2のポンプ群PG2に含まれるシリンジポンプ100E,100Fの発光部181Lが、同じ色の光を発する構成としてもよい。第1のポンプ群PG1に含まれるシリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lと、第2のポンプ群PG2に含まれるシリンジポンプ100E,100Fの発光部181Lとが、異なる色の光を発する構成としてもよい。
【0068】
各シリンジポンプ100の個別制御部150は、シリンジポンプ100によりシリンジ10から送出される薬液の流量に応じて、シリンジポンプ100の発光部181Lを制御する。図7に示される連携動作期間の間、シリンジポンプ100Aにより送出される薬液の流量に応じてシリンジポンプ100Aの個別制御部150が発光部181Lを制御し、シリンジポンプ100Bにより送出される薬液の流量に応じてシリンジポンプ100Bの個別制御部150が発光部181Lを制御する。典型的には、連携動作期間の間、シリンジポンプ100Aにより送出される薬液の流量と、シリンジポンプ100Bにより送出される薬液の流量との比率に応じて、シリンジポンプ100Aの個別制御部150が発光部181Lを制御し、シリンジポンプ100Bの個別制御部150が発光部181Lを制御する。
【0069】
発光部181Lは、個別制御部150からの制御信号を受けて、点灯しまたは消灯する。シリンジポンプ100A,100Bが同時に駆動される連携動作期間において、シリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lが、両方ともに点滅する。
【0070】
発光部181Lの点灯と消灯とを切り替える速度は、シリンジポンプ100によりシリンジ10から送出される薬液の流量に応じて制御される。シリンジポンプ100によりシリンジ10から送出される薬液の流量比率が大きいときに発光部181Lの点滅周期が長く、シリンジポンプ100によりシリンジ10から送出される薬液の流量比率が小さいときに発光部181Lの点滅周期が短いように、制御されてもよい。
【0071】
図9は、発光部181Lの長周期点滅表示を模式的に示す図である。図10は、発光部181Lの中周期点滅表示を模式的に示す図である。図11は、発光部181Lの短周期点滅表示を模式的に示す図である。
【0072】
たとえば、図7に示される時刻0から時刻Tsまでの期間、シリンジポンプ100Aの発光部181Lは連続点灯し、シリンジポンプ100Bの発光部181Lは消灯してもよい。時刻Tsにおいて、シリンジポンプ100Aの発光部181Lと、シリンジポンプ100Bの発光部181Lとが、点滅を開始してもよい。シリンジポンプ100Aの流量がシリンジポンプ100Bの流量よりも大きい時刻T1において、シリンジポンプ100Aの発光部181Lは図9に示される長周期点滅表示とされ、シリンジポンプ100Bの発光部181Lは図11に示される短周期点滅表示とされてもよい。
【0073】
シリンジポンプ100Aの流量とシリンジポンプ100Bの流量とがほぼ等しい時刻T2において、シリンジポンプ100Aの発光部181Lとシリンジポンプ100Bの発光部181Lとは、いずれも図10に示される中周期点滅表示とされてもよい。シリンジポンプ100Bの流量がシリンジポンプ100Aの流量よりも大きい時刻T3において、シリンジポンプ100Aの発光部181Lは図11に示される短周期点滅表示とされ、シリンジポンプ100Bの発光部181Lは図9に示される長周期点滅表示とされてもよい。時刻Tf以降、シリンジポンプ100Aの発光部181Lは消灯し、シリンジポンプ100Bの発光部181Lは連続点灯してもよい。
【0074】
発光部181Lは、1つのランプまたはLEDなどが点灯と消灯とを繰り返す構成に限られない。たとえば発光部181Lは、シーケンシャルウィンカーであってもよい。この場合個別制御部150は、シリンジポンプ100によるシリンジ10からの薬液の流量に応じて、シーケンシャルウィンカーのシーケンシャル速度を変更するように、発光部181Lを制御してもよい。
【0075】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、実施形態のポンプシステム200の特徴的な構成および作用効果について、以下に列挙する。
【0076】
図1,6に示されるように、実施形態のポンプシステム200は、シリンジポンプ100A,100Bを備えている。シリンジポンプ100A,100Bは、図8に示されるように、各々が発光部181Lを有している。図6に示されるように、各シリンジポンプ100A,100Bは、個別制御部150を有している。図7に示されるように、各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、連携動作期間において、シリンジポンプ100Aによるシリンジ10からの薬液の送出と、シリンジポンプ100Bによるシリンジ10から薬液の送出とを、同時に並行して行なう。連携動作期間の間、シリンジポンプ100Aにより送出される薬液の流量に応じてシリンジポンプ100Aの個別制御部150が発光部181Lを制御し、シリンジポンプ100Bにより送出される薬液の流量に応じてシリンジポンプ100Bの個別制御部150が発光部181Lを制御する。
【0077】
ポンプシステム200を使用するユーザーは、連携動作期間にシリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lを見ることで、シリンジポンプ100Aがどの程度の流量でシリンジ10から薬液を送出し、シリンジポンプ100Bがどの程度の流量でシリンジ10から薬液を送出しているかを、視覚的に容易に認識することができる。
【0078】
各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、シリンジポンプ100Aにより送出される薬液の流量と、シリンジポンプ100Bにより送出される薬液の流量との比率に応じて、シリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lを制御する。ユーザーは、連携動作期間にシリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lを見ることで、シリンジポンプ100A,100Bによりシリンジ10から送出される薬液の流量比率を、視覚的に容易に認識することができる。
【0079】
図9図11に示されるように、各シリンジポンプ100A,100Bの個別制御部150は、シリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lの点灯と消灯とを切り替える速度を制御する。ユーザーは、連携動作期間にシリンジポンプ100A,100Bの発光部181Lを見て点滅速度を把握することで、シリンジポンプ100Aがどの程度の流量でシリンジ10から薬液を送出し、シリンジポンプ100Bがどの程度の流量でシリンジ10から薬液を送出しているかを、視覚的に容易に認識することができる。
【0080】
シリンジポンプ100では、シリンジ10から送出される薬液の流量が小さいので、プランジャロッド30の動きから薬液の流量を認識することが難しい。したがって、薬液の流量を発光部181Lの発光を見ることで認識できるようにした実施形態のポンプシステム200は、シリンジ10から薬液を送出させるシリンジポンプ100を備えるシステムに、好適に適用され得る。
【0081】
実施形態では、ポンプシステム200を構成する各シリンジポンプ100の個別制御部150が、各シリンジポンプ100の動作を制御する例について説明した。この例に代えて、通信制御部250がポンプシステム200の動作を制御する構成とし、通信制御部250から各シリンジポンプ100の個別制御部150に各シリンジポンプ100を動作させる制御信号が出力される構成としてもよい。
【0082】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
10 シリンジ、20 バレル、21 第1フランジ、22 注液口、30 プランジャロッド、31 第2フランジ、32 ガスケット部、40 応答部、100,100A,100B,100C,100D,100E,100F シリンジポンプ、110 バレル受け部、111 溝部、112 バレル保持部、113 回動軸、120 駆動部、121 押圧面、122 可動爪部、123 クラッチレバー、130 第1検知部、140 第2検知部、150 個別制御部、160 読取書込部、170 第3検知部、180 操作パネル、181 表示部、181L 発光部、182 操作入力部、190 第4検知部、200 ポンプシステム、210 搭載台、211 搭載部、250 通信制御部、PG1 第1のポンプ群、PG2 第2のポンプ群。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11