(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】分離部材付き記録媒体、加飾シート、加飾品、及び加飾品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20241106BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20241106BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241106BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20241106BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20241106BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20241106BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B33/00
B32B7/023
B32B7/027
B44C1/17 A
B41M5/50 420
B41M5/52 400
B41M5/50 120
(21)【出願番号】P 2020018388
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-12-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】小林 良正
(72)【発明者】
【氏名】松井 寛人
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216624(JP,A)
【文献】特開2002-264169(JP,A)
【文献】特開2005-036168(JP,A)
【文献】特開2003-138036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B44C 1/16-1/175
B41M 5/50、5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成に用いられる記録媒体
と、分離部材とを備えた分離部材付き記録媒体であって、
前記記録媒体は、
支持体と、前記支持体上に積層された画像が形成される前の画像層とを有し、
前記支持体の面のうち前記画像層側の面を上面、その反対側の面を下面としたときに、
前記支持体の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上であり、
前記支持体の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下であ
り、
前記画像層の面のうち前記支持体側の面を下面、その反対側の面を上面としたときに、
前記画像層の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm未満であり、
前記分離部材は、前記記録媒体の前記支持体側に設けられており、
前記分離部材は、熱エネルギーを印加することで、前記支持体から分離できる、分離部材付き記録媒体。
【請求項2】
前記記録媒体全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上である、請求項1に記載の
分離部材付き記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分離部材付き記録媒体の前記画像層に画像が形成され、前記分離部材が分離された、加飾シート。
【請求項4】
前記画像が熱転写画像である、請求項3に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記画像が、インクジェット印刷方式、又はトナー印刷方式で形成された画像である、請求項4に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記画像層上に接着層が設けられた、請求項3乃至5の何れか1項に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記接着層上に、前記接着層から剥離できるマスキング部材が設けられた、請求項6に記載の加飾シート。
【請求項8】
前記画像層と前記接着層の間に、前記画像層に形成された画像の成分の移行を抑制する
ための耐久層が設けられた請求項6又は7に記載の加飾シート。
【請求項9】
前記画像層上に、前記画像層に形成された画像の成分の移行を抑制するための耐久層が設けられた請求項3乃至5の何れか1項に記載の加飾シート。
【請求項10】
請求項3乃至9の何れか1項に記載の加飾シートの前記画像層側で、加飾対象物と前記加飾シートとを一体化させた、加飾品。
【請求項11】
加飾品の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の分離部材付き記録媒体の前記画像層上に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程後に、前記分離部材を分離する分離工程と、
前記分離工程後に、前記画像層側で、前記記録媒体と加飾対象物とを一体化させる一体化工程と、を含む加飾品の製造方法。
【請求項12】
前記画像形成工程後の前記分離部材付き記録媒体の前記画像層側、前記分離工程後の前記記録媒体の前記画像層側、及び前記加飾対象物の何れかに接着層を貼合する貼合工程を含み、この接着層を用いて、前記一体化工程を行う、請求項11に記載の加飾品の製造方法。
【請求項13】
加飾品の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の分離部材付き記録媒体の前記画像層上に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程後に、前記画像層側で、前記分離部材付き記録媒体と加飾対象物とを一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程後に、前記分離部材を分離する分離工程と、を含む加飾品の製造方法。
【請求項14】
前記画像形成工程後の前記分離部材付き記録媒体の前記画像層側、又は前記加飾対象物に接着層を貼合する貼合工程を含み、この接着層を用いて、前記一体化工程を行う、請求項13に記載の加飾品の製造方法。
【請求項15】
加飾品の製造方法であって、
請求項3乃至9の何れか1項に記載の加飾シートの画像層側で、加飾シートと加飾対象物とを一体化させる一体化工程を含む、加飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分離部材付き記録媒体、加飾シート、加飾品、及び加飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成に用いられる記録媒体としては、例えば、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式、インクジェット印刷方式、トナー印刷方式等の各種の画像形成方法に用いられる記録媒体が知られている。このような記録媒体は、画像形成方法に応じた画像層を有しており、各種の画像形成方法により画像層に画像を形成することで記録媒体の画像層上に画像が形成された印画物を製造できる。
【0003】
近時、上記のような記録媒体を用いて製造された印画物を加飾シートとし、この加飾シートを加飾対象物である物品の装飾に用いる試みもなされている。例えば、この加飾シートを用いて、インモールド成形や、インサート成形等により加飾品を製造することなどが行われている。特許文献1には、樹脂シート上に画像層が設けられ、当該画像層をインクジェットインキ組成物のインク硬化画像とした加飾シートや、加飾品の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高品質な画像と、斬新な触感とを有する加飾シート等を製造できる記録媒体、及び分離部材付き記録媒体を提供すること。高品質な画像と、斬新な触感とを有する加飾品を製造できる加飾シート、及び分離部材付き加飾シートを提供すること。高品質な画像と、斬新な触感とを有する加飾品、及びこの加飾品の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体は、画像形成に用いられる記録媒体と、分離部材とを備えた分離部材付き記録媒体であって、前記記録媒体は、支持体と、前記支持体上に積層された画像が形成される前の画像層とを有し、前記支持体の面のうち前記画像層側の面を上面、その反対側の面を下面としたときに、前記支持体の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上であり、前記支持体の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下であり、前記画像層の面のうち前記支持体側の面を下面、その反対側の面を上面としたときに、前記画像層の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm未満であり、前記分離部材は、前記記録媒体の前記支持体側に設けられており、前記分離部材は、熱エネルギーを印加することで、前記支持体から分離できる。
一実施形態の記録媒体は、画像形成に用いられる記録媒体であって、支持体と、前記支持体上に積層された画像が形成される前の画像層とを有し、前記支持体の面のうち前記画像層側の面を上面、その反対側の面を下面としたときに、前記支持体の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上であり、前記支持体の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下である。
【0007】
上記記録媒体は、前記記録媒体全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上でもよい。
【0008】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体は、上記記録媒体の支持体側に、前記支持体から分離できる分離部材が設けられている。
【0009】
上記分離部材付き記録媒体の前記分離部材は、熱エネルギーを印加することで、前記支持体から分離できるものでもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾シートは、上記分離部材付き記録媒体の前記画像層に画像が形成され、前記分離部材が分離されている。
一実施形態の加飾シートは、上記記録媒体の画像層に画像が形成されている。
【0011】
上記加飾シートは、前記画像が熱転写画像でもよい。また、前記画像が、インクジェット印刷方式、又はトナー印刷方式で形成された画像でもよい。
【0012】
上記加飾シートは、前記画像層上に接着層を設けてもよい。また、前記接着層上に、前記接着層から剥離できるマスキング部材が設けられてもよい。また、前記画像層と前記接着層の間に、前記画像層に形成された画像の成分の移行を抑制するための耐久層を設けてもよい。
【0013】
上記加飾シートは、前記画像層上に、前記画像層に形成された画像の成分の移行を抑制するための耐久層を設けてもよい。
【0014】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る分離部材付き加飾シートは、上記加飾シートの支持体側に、前記支持体から分離できる分離部材が設けられている。
【0015】
上記分離部材付き加飾シートは、熱エネルギーの印加によって、前記分離部材を分離可能としてもよい。
【0016】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品は、上記加飾シートの前記画像層側で、加飾対象物と前記加飾シートとが一体化している。
【0017】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記記録媒体の前記画像層上に画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程後に、前記画像層側で、加飾対象物と前記記録媒体とを一体化させる一体化工程とを含む。
【0018】
上記加飾品の製造方法は、前記画像形成工程後の前記記録媒体の前記画像層側に接着層を貼合する、又は前記加飾対象物に接着層を貼合する貼合工程を含み、この接着層を用いて、前記一体化工程を行ってもよい。
【0019】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記分離部材付き記録媒体の前記画像層上に画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程後に、前記分離部材を分離する分離工程と、前記分離工程後に、前記画像層側で、前記記録媒体と加飾対象物とを一体化させる一体化工程とを含む。
【0020】
上記加飾品の製造方法は、前記画像形成工程後の前記分離部材付き記録媒体の前記画像層側、前記分離工程後の前記記録媒体の前記画像層側、及び前記加飾対象物の何れかに接着層を貼合する貼合工程を含み、この接着層を用いて、前記一体化工程を行ってもよい。
【0021】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記分離部材付き記録媒体の前記画像層上に画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程後に、前記画像層側で、前記分離部材付き記録媒体と加飾対象物とを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程後に、前記分離部材を分離する分離工程とを含む。
【0022】
上記加飾品の製造方法は、前記画像形成工程後の前記分離部材付き記録媒体の前記画像層側、又は前記加飾対象物に接着層を貼合する貼合工程を含み、この接着層を用いて、前記一体化工程を行ってもよい。
【0023】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記加飾シートの画像層側で、加飾シートと加飾対象物とを一体化させる一体化工程を含む。
【0024】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記分離部材付加飾シートの画像層側で、加飾シートと加飾対象物とを一体化させる一体化工程と、前記一体化工程後に、分離部材を分離する分離工程とを含む。
【0025】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記分離部材付加飾シートの分離部材を分離する分離工程と、前記分離工程後、画像層側で、前記分離部材が分離された加飾シートと加飾対象物とを一体化させる一体化工程とを含む。
【発明の効果】
【0026】
本開示の実施の形態に係る記録媒体、及び分離部材付き記録媒体によれば、高品質な画像と、斬新な触感とを有する加飾シート等を製造できる。また、本開示の実施の形態に係る加飾シート、分離部材付き加飾シート、及び加飾品の製造方法によれば、高品質な画像と、斬新な触感とを有する加飾品を製造できる。また、本開示の実施の形態に係る加飾品は、高品質な画像と、斬新な触感とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示の実施の形態に係る記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図3】(A)、(B)は本開示の実施の形態に係る記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図6】(A)、(B)は本開示の実施の形態に係る加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図7】(A)、(B)は本開示の実施の形態に係る分離部材付き加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図8】(A)は本開示の実施の形態に係る加飾シートの一例を示す概略断面図であり、(B)は本開示の実施の形態に係る分離部材付き加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図9】(A)は本開示の実施の形態に係る加飾シートの一例を示す概略断面図であり、(B)は本開示の実施の形態に係る分離部材付き加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係る加飾品の一例を示す概略断面図である。
【
図11】本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図13】本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図14】本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図15】本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図16】(A)~(E)は、転写シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる態様で実施でき、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上又は下等という語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよ
い。左右方向についても同様である。
【0029】
<<記録媒体>>
本開示の実施の形態に係る記録媒体(以下、本開示の記録媒体と言う)について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1~
図3に示すように、本開示の記録媒体100は、支持体1と、支持体1上に設けられた画像が形成される前の画像層10とを有する。
【0031】
本開示の記録媒体100は、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上に規定されている。
【0032】
本開示の記録媒体100は透け感を有する。本開示の記録媒体100は、画像層10に画像を形成した後に、画像層10に形成された画像を支持体1側から視認できる。つまり、本開示の記録媒体100は、支持体1側から、画像層10に形成された画像を視認できる印画物や、支持体1側から、画像層10に形成された画像を視認できる加飾シート等を製造できる。
【0033】
本願明細書でいう記録媒体全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率は、当該記録媒体100を構成する支持体1と画像層10の積層体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率を意味する。波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率は、分光光度計(UV-3100PC (株)島津製作所)に、積分球付属装置(ISR-3100 (株)島津製作所)を取り付けた装置により測定したものである。具体的には、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率は、この装置の試料光束側に測定対象である記録媒体を設置し、対照光束側にブランクとして厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを設置し、波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率を測定したものである。
【0034】
本開示の記録媒体100は、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上であればよい。したがって、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率は5%未満でもよい。
【0035】
本開示の好ましい形態の記録媒体100は、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率が全て5%以上である。本開示の好ましい形態の記録媒体100は、画像層10に画像を形成したときの色の再現性を良好なものとできる。
【0036】
以下、本開示の記録媒体100の各構成について一例を挙げて説明する。
【0037】
(支持体)
図1~
図3に示すように、本開示の記録媒体100は、支持体1を有する。支持体1は、画像層10を保持する。本願明細書でいう支持体1とは、記録媒体100を構成する構成部材のうち、画像が形成される前の画像層10以外の全ての構成を含む。支持体1は、
図1に示すように単層構造でもよく、
図2、
図3に示すように積層構造でもよい。
図2に示す形態の支持体1は、層1A、プライマー層3が積層された積層構造である。
図3(A)に示す形態の支持体1は、層1A、層1B、プライマー層3がこの順番で積層された積層構造であり、
図3(B)に示す形態の支持体1は、層1A、プライマー層3、層1B、プライマー層3がこの順番で積層された積層構造である。支持体1は、図示する形態以外の層を含んでもよい。
【0038】
本開示の記録媒体100は、支持体1の面のうち画像層10側の面を上面、その反対側の面を下面としたときに、支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上に規定されている。
【0039】
支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)を0.4μm以上と規定した本開示の記録媒体100は、その表面に斬新な触感を有する。本開示の記録媒体100によれば、画像層10に画像を形成することで、斬新な触感を有する印画物や、斬新な触感を有する加飾シート等を製造できる。支持体1の下面は、本開示の記録媒体100の最表面を構成する。
【0040】
本開示の記録媒体100は、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下に規定されている。本開示の記録媒体100によれば、支持体1の上面側に設けられる画像層10の表面の平滑性を高くできる。このような本開示の記録媒体100によれば、画像層10に形成される画像に荒れが生ずることを抑制でき、画像層10に高品質な画像を形成できる。画像層10の表面とは、画像層10の面のうち、支持体1と接しない側の面を意味する。
【0041】
支持体1の上面、及び下面の算術平均高さ(Sa)は、形状解析レーザー顕微鏡(VK-X150 KEYENCE社)で測定したものである。
【0042】
支持体1が、1つの部材からなる単層構造である場合には、当該1つの部材が、支持体1の上面、及び下面を形作る部材となる。他方、支持体1が、複数の部材から構成される積層構造である場合には、当該部材のうち、画像層10と接する構成部材が支持体1の上面を形作る構成部材となり、画像層10から最も遠くに位置する部材が、支持体1の下面を形作る部材となる。以下、支持体1の上面を形作る構成部材を上面用部材と称し、支持体1の下面を形作る部材を下面用部材と称する場合がある。支持体1が複数の部材から構成される積層構造である場合、上面用部材と下面用部材は異なり、支持体1が1つの部材から構成される単層構造である場合、当該1つの構成部材が上面用部材と下面用部材の双方を兼ねる。
【0043】
したがって、支持体1が、1つの部材から構成される単層構造である場合、当該部材の面のうち画像層10と接する面が支持体の上面となり、画像層10と接しない面が支持体の下面となる。他方、支持体1が、複数の部材が積層された積層構造である場合、上面用部材の面のうち画像層10と接する面が支持体の上面となり、下面用部材の面のうち画像層10とは反対側の面が支持体1の下面となる。
【0044】
支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)を0.4μm以上とする方法としては、以下の(i)、(ii)の方法を例示できる。
【0045】
(i)の方法は、下面用部材として、その内部に粒子が充填され、表面に凹凸構造が賦形された部材を用いる方法である。具体的には、その表面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上となる凹凸構造が賦形された部材を用いる方法である。内部に粒子が充填された部材は、当該粒子によって部材の表面が部分的に隆起しているか、又は、当該部材表面から粒子の一部が突出している。
【0046】
粒子を含有する下面用部材としては、粒子を含有するフィルム基材等を例示できる。フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、及び、ポリメチルペンテン等を例示できる。これらフィルム基材は、延伸されたものであってもよく、未延伸であってもよい。粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、多孔質粒子、中
空粒子、タルク、ジカルボン酸エステルアミド、ポリエチレン等の、無機粒子や、有機粒子を例示できる。粒子の形状や、粒子径に限定はなく、下面用部材の下面の算術平均高さ(Sa)を0.4μm以上とできればよい。
【0047】
粒子が練りこまれたフィルム基材にかえて、粒子、及びバインダーを適当な溶媒に分散、或いは溶解した塗工液を塗布・乾燥して得られる部材を下面用部材としてもよい。
【0048】
(ii)の方法は、下面用部材を表面処理し、当該部材の表面に、算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上の凹凸構造を賦形する方法である。表面処理方法としては、エンボス加工や、ブラスト加工等を例示できる。
【0049】
支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)を0.6μm以下とする方法としては、以下の(iii)、(iv)の方法を例示できる。
【0050】
(iii)の方法は、支持体1を、上記1つの部材から構成される単層構造とし、当該1つの部材として、下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上で、上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下の部材を用いる方法である。(iii)の方法に用いられる一例としての部材は、上面、及び下面の双方の面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上0.6μm以下である。
【0051】
(iii)の方法に用いられる一例としての部材は、下面の算術平均高さ(Sa)が0.6μmより大きく、上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下である。このような部材は、上面、及び下面の算術平均高さ(Sa)が0.6μmより大きい部材を準備し、上面を平滑処理したもの等を例示できる。平滑処理としては、サンドペーパー等を用いた研磨処理、及びカレンダー処理等を例示できる。
【0052】
(iv)の方法は、支持体1を、下面用部材と、上面用部材を含む積層構造とし、下面用部材として上記(i)、(ii)の方法で説明した下面用部材等を用い、上面用部材として、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)を0.6μm以下とできる部材を用いる方法である。
【0053】
(iv)の方法に用いられる上面用部材としては、フィルム基材、及び塗工液を塗布・乾燥して形成したもの等を例示できる。塗工液を塗布・乾燥して形成された上面用部材を用いる場合、下面用部材の上面の算術平均高さ(Sa)を考慮し、塗工液の塗布量等を調整して、上面用部材の上面の算術平均高さ(Sa)を0.6μm以下とできる。
【0054】
(iv)の方法に用いられる一例としての上面用部材は、上面、及び下面の双方の面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上0.6μm以下の下面用部材上に、塗工液を塗布・乾燥して形成されたものである。この形態では、下面用部材の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下であり、この下面用部材の上面側に、塗工液を塗布して形成された上面用部材の上面の算術平均高さ(Sa)を0.6μm以下とできる。塗工液を塗布・乾燥して形成される上面用部材としては、プライマー層等を例示できる。
【0055】
一例としての支持体1は、2つ以上のフィルム基材を含む。例えば、
図3に示す形態において層1Aを、フィルム基材から構成される下面用部材とし、層1Bをフィルム基材としてもよい。フィルム基材としては、上記で説明したフィルム基材を適宜選択して用いればよい。
【0056】
好ましい形態の支持体1は、上面の算術平均高さ(Sa)が0.5μm以下である。好ましい形態の支持体1を有する本開示の記録媒体100は、画像層10に、より高品質な画像
を形成できる。
【0057】
また、下面用部材を剥離層としてもよい。剥離層の成分としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂、及び熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂等を例示できる。
【0058】
図2、
図3に示すように、一例としての支持体1は、接着成分を含有するプライマー層3を含む。接着成分としては、ポリウレタン、α-オレフィン-無水マレイン酸樹脂等のポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、及びシアノアクリレート等を例示できる。また、接着成分を硬化剤により硬化させてもよい。硬化剤としては、イソシアネート化合物、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、及び酸無水物等を例示できる。
【0059】
一例としての支持体1は、当該支持体1を構成する1つ、又は複数の部材が、各種の着色剤を含有している。着色剤としては、各種の無機顔料、有機顔料、無機-有機ハイブリッド顔料、及び有機染料等を例示できる。無機顔料としては、シリカ、酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、雲母チタン、白雲母、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク、各種パール顔料、及び各種メタリック顔料等を例示できる。有機顔料としては、イエロー、マゼンタ、シアン等の有彩色顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、樹脂顔料、及び中空粒子等を例示できる。無機-有機ハイブリット顔料としては、無機顔料を有機顔料で被覆したもの等を例示できる。有機染料としては、イエロー染料、マゼンタ染料、及びシアン染料等を例示できる。これ以外の着色剤を用いてもよい。
【0060】
一例としての支持体1は、白色顔料を含有するフィルム基材を含む。一例としての支持体1は、白色顔料を含有するプライマー層を含む。一例としての支持体1は、下面用部材が着色剤を含有している。一例としての支持体1は、下面用部材が着色剤を含有しており、この着色剤によって下面用部材の表面に算術平均高さ(Sa)を0.4μm以上とできる凹凸構造が賦形されている。一例としての支持体1は、白色顔料を含有するフィルム基材を含む。一例としての支持体1は、白色顔料を含有するプライマー層を含む。
【0061】
一例としての支持体1は、蒸着フィルム等を含む。蒸着フィルムとして、フィルム基材の何れか一方、又は双方の面に蒸着層が設けられたもの等を例示できる。蒸着層としては、フィルム基材の何れか一方、又は双方の面に蒸着処理が施されたもの等を例示できる。また、下面用部材を、蒸着フィルムとしてもよい。
【0062】
一例としての支持体1は、ボイド層(図示しない)を含む。この形態の支持体1によれば、画像層に濃度の高い画像を形成できる。ボイド層としては、内部にボイド(ミクロボイドや、空孔と称される場合もある)を有するフィルム基材(樹脂基材であってもよい)等を例示できる。ボイド層は、ポリマー中に無機粒子を混練し、その混合物を延伸するときに無機粒子を核としてボイドを生じさせて製造したもの、主体とする樹脂に対して非相溶なポリマー(一種類でも複数でも良い)を混合し、その混合物を延伸するときにボイドを生じさせたもの等を例示できる。
【0063】
なお、本開示の記録媒体100は、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上に規定されている。支持体1を構成する部材としては、この規定を満たすことができる光線透過率を有するものを用いればよい。
【0064】
支持体1の厚みについて限定はないが、1μm以上300μm以下が好ましい。記録媒体100の厚みについても限定はなく、記録媒体100に画像を形成するときの画像形成方法等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、プリンタ内で画像形成を行う場合には、プリンタの搬送適性を考慮した厚みとすればよい。なお、本開示の記録媒体100に画像を形成したものを加飾シートとしてもよい。また、この加飾シートを加飾対象物300と一体化させて加飾品を製造してもよい。製造される加飾品の見栄え等を考慮すると、記録媒体100の厚みは100μm以下が好ましい。なお、記録媒体100の厚みを100μmとしたときに、プリンタの搬送適性等が不十分となる場合には、後述するように、分離部材付き記録媒体100Xとし、分離部材の厚み等を適宜決定すればよい。
【0065】
(画像層)
本開示の記録媒体100は、支持体1の上面に設けられた画像層10を有する。画像層10の種類や、画像層10が含有している成分について限定はなく、画像層10に形成される画像に応じて適宜設定すればよい。
【0066】
プリンタ等を用いて行われる代表的な画像形成方法としては、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式、インクジェット印刷方式、トナー印刷方式(レーザー印刷方式)等を例示できる。昇華型熱転写方式とは、昇華性染料を含有する色材層が設けられた熱転写シートを用い、当該熱転写シートに画像情報に応じた熱エネルギーを印加し、色材層が含有している昇華性染料を画像層10に移行させて画像を形成する画像形成方式である。溶融型熱転写方式とは、溶融インキを含む色材層が設けられた熱転写シートを用い、当該熱転写シートに画像情報に応じた熱エネルギーを印加する。そして、熱エネルギーの印加により溶融、或いは軟化した色材層を、画像層10に層ごと転写して画像を形成する画像形成方式である。インクジェット印刷方式とは、インクジェット用のインクをピエゾ駆動で発生させた圧力波によってノズルから噴出する、又は、加熱により管内のインクに気泡を発生させてインクを噴射する等により、このインクを画像層10に付着させて画像を形成する画像形成方式である。トナー印刷方式は、レーザー等の熱によりトナーを静電転写方式で画像層10に定着(融着)させる画像形成方式である。これ以外にも、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、スクリーン印刷方式等を例示できる。また、これ以外の画像形成方法を用いてもよい。
【0067】
したがって、画像層10の成分としては、上記で例示した画像形成方法で画像を形成できる成分を適宜選択すればよい。
【0068】
中でも、昇華性染料を受容可能な成分を含有する画像層10とし、この画像層10に昇華型熱転写方式を用いて画像形成を行うことで、画像層10に鮮明、且つ濃度の高い画像を形成できる。したがって、好ましい形態の画像層10は、昇華性染料を受容可能な成分を含有している。昇華性染料を受容可能な成分としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、エチレン、若しくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体、アイオノマー、セルロース樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びゼラチン等を例示できる。中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体や、ポリエステルを含有する画像層10は、昇華型熱転写方式で、画像層10により濃度の高い画像を形成でき好ましい。
【0069】
画像層10の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率について限定はなく、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率を5%以上とできる光線透過率を有していればよい。
【0070】
画像層10の表面の算術平均高さ(Sa)は、0.6μm未満が好ましく、0.5μm未満がより好ましく、0.3μm未満がさらに好ましい。
【0071】
画像層10の厚みについて限定はなく、画像形成方法等に応じて適宜設定できる。例えば、熱転写方式に用いられる画像層10の厚みは、0.6μm以上10μm以下が好ましい。また、インクジェット印刷方式に用いられる画像層10の厚みは、0.6μm以上50μm以下が好ましく、0.6μm以上40μm以下がより好ましく、3μm以上30μm以下がさらに好ましい。また、トナー印刷方式に用いられる画像層10の厚みは、0.6μm以上5μm以下が好ましく、0.6μm以上1μm以下がより好ましい。
【0072】
画像層10の形成方法についても限定はなく、各種のフィルム等を画像層10とする場合には、支持体1上に、これらフィルム等を貼り合わせて形成してもよい。また、画像層10の成分を適当な溶媒に分散、或いは溶解した塗工液を支持体1上に塗布・乾燥して形成してもよい。支持体1の上面に、画像層を形成するための塗工液を塗布・乾燥して画像層10を形成する場合には、形成される画像層の表面形状は、支持体1の上面の表面形状に追従した形態となる。本開示の記録媒体100は、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下と規定されていることから、支持体1上に形成された画像層10の平滑性を高くできる。
【0073】
本開示の記録媒体100の光沢度について限定はない。一例としての本開示の記録媒体100の光沢度は60以下である。記録媒体100の光沢度を60以下とすることで、記録媒体100にマット感を付与できる。一例としての本開示の記録媒体100の光沢度は60より高い。記録媒体100の光沢度を60より高くすることで、記録媒体100にグロス感を付与できる。
【0074】
記録媒体100の光沢度は、光沢計(VG7000 日本電色工業(株))を用い、JIS-Z-8741に準拠した方法により入射角度45°で測定される記録媒体100の光沢度である。記録媒体100の光沢度の測定は、記録媒体100の画像層10側から行ってもよい。また、記録媒体100の光沢度の測定は、記録媒体100の支持体1側から行ってもよい。記録媒体100の光沢度が60以上であるとは、画像層10側、及び支持体1側の何れか一方側から測定したときの光沢度が60以上であることを意味する。
【0075】
記録媒体100の光沢度は、支持体1を構成する構成部材を適宜選択して調整できる。例えば、ボイド層を含む支持体1とすることで、ボイド層を含まない支持体1よりも、光沢度を低くできる。
【0076】
以上、本開示の記録媒体100について一例を挙げて説明を行ったが、本開示の記録媒体100は、記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上であり、支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上で、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下であるとの条件を満たせばよく、これ以外の条件についていかなる限定もされない。
【0077】
以上説明した本開示の記録媒体100によれば、画像層10に画像を形成することで、高品質な画像と、斬新な触感とを有し、さらに、支持体1側から画像層10に形成された画像を視認できる印画物を製造できる。本開示の記録媒体100の画像層10に画像が形成されたものを、加飾対象物を装飾するための加飾シートとしてもよい。この加飾シートと加飾対象物とを、加飾シートの画像層側で加飾シートと一体化させることで、高品質な画像と、斬新な触感とを有し、さらに、支持体1側から画像層10に形成された画像を視認できる加飾品を製造できる。また、本開示の記録媒体100を、そのまま加飾シートとして用いてもよい。
【0078】
<<分離部材付き記録媒体>>
次に、本開示の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体(以下、本開示の分離部材付き記録媒体)について説明する。
図4、
図5に示すように、本開示の分離部材付き記録媒体100Xは、記録媒体100の支持体1の下面側に分離部材60が設けられた構成である。分離部材60は、支持体1の下面を分離界面として記録媒体100から分離可能となっている。分離部材60は、熱エネルギーを印加して記録媒体100から分離できるものでもよい。分離部材60は、熱エネルギーを印加せずに、記録媒体100から分離できるものでもよい。本開示の分離部材付き記録媒体100Xを、基材上に、受容層を含む転写層が設けられた中間転写媒体のような構成としてもよい。この場合、中間転写媒体の基材部分を分離部材とし、中間転写媒体の転写層部分を本開示の記録媒体100とすればよい。
【0079】
本開示の分離部材付き記録媒体100Xをなす記録媒体100としては、上記で説明した本開示の記録媒体100をそのまま用いることができる。つまり、本開示の分離部材付き記録媒体100Xは、本開示の記録媒体100で説明した作用効果を奏する。
【0080】
本開示の好ましい分離部材付き記録媒体100Xは、当該分離部材付き記録媒体100Xを構成する記録媒体100の支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上0.6μm以下である。換言すれば、分離部材60と接する支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下である。本開示の好ましい分離部材付き記録媒体100Xによれば、分離部材60を支持体1の下面から容易に分離できる。具体的には、支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)を0.6μm以下とすることで、支持体1と分離部材との接触面積を小さくでき、支持体1から分離部材を容易に分離できる。
【0081】
本開示の記録媒体100の画像層10には画像が形成される。この画像形成をプリンタで行う場合には、記録媒体100の厚みを、プリンタ内での搬送適性を良好なものとできる厚みとすることが好ましい。一方で、本開示の記録媒体100の画像層10に画像を形成することで製造される印画物や、加飾シート等の厚みを薄くしたいとの要求もある。例えば、加飾シートを用いて製造される加飾品の見栄えを考慮し、加飾シートを得るための記録媒体100の厚みを100μm以下とすることが好ましい場合もある。
【0082】
本開示の分離部材付き記録媒体100Xによれば、分離部材60の厚みによって、記録媒体100全体の見かけ上の厚みを厚くできる。したがって、画像層10への画像形成をプリンタ内で行う場合には、分離部材60の厚みを適宜選択し、分離部材付き記録媒体100X全体の厚みをプリンタの搬送性が良好なものとできる厚みとすることで、画像形成時の搬送性等を良好なものとできる。これにより、画像層10に鮮明な画像を形成できる。また、画像形成後に、分離部材60を分離することで、記録媒体100の画像層10に画像が形成して得られる印画物や、加飾シートの厚みを薄くできる。例えば、加飾シートの厚みを100μm以下とできる。
【0083】
一例としての分離部材60は、
図5に示すように、分離部基材1C、分離補助層6を含み、分離補助層6は、記録媒体100の支持体1の下面と接している。
【0084】
(分離部基材)
分離部基材1Cについて限定はなく、上記で例示したフィルム基材や、紙基材等を適宜選択して用いることができる。紙基材としては、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙、上質紙、アート紙、コート紙、ノンコート紙、キャストコート紙、壁紙、セルロース繊維紙、合成樹脂内添紙、裏打用紙、及び、含浸紙(合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙)等を例示できる。分離部基材1Cは、単層構造であってもよく、上記フィルム基材や、紙基材等が積層された積層構造であってもよい
。また、分離部基材1Cは、分離補助層6と接するプライマー層を含んでもよい。なお、分離部材60は、最終的に記録媒体100から分離されることから、分離部材の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率について何らの考慮も要しない。例えば、分離部基材1Cとして、安価な紙基材等を用いることで、分離部材付き記録媒体100Xの製造コストを低くしつつ、上記種々の効果を実現できる。
【0085】
一例としての分離部基材1Cは、分離補助層6側から、プライマー層、ボイド層、フィルム基材、紙基材がこの順番で積層された積層構造である。分離部基材1Cを、フィルム基材や、紙基材等を含む積層構造とする場合には、これら基材同士を、プライマー層等を用いて貼り合わせてもよく、ポリエチレン等を使用したECサンドラミネーションにより貼り合せてもよい。分離部基材1Cは、単層構造でもよい。
【0086】
(分離補助層)
一例としての分離補助層6は、粘着層としての機能を果たす。粘着層が含有する成分としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂等を例示できる。また、これ以外の接着性を有する成分を用いることもできる。
【0087】
一例としての粘着層は、分離部基材1Cとの接着力よりも、支持体1の下面との接着力が低くなるように構成されている。この関係を満たす一例としての分離部基材1Cは、粘着層と接する側の面に接着処理がなされている。一例としての分離部材は、分離部基材1Cと粘着層の間に、接着層が設けられている。これ以外にも、支持体1の下面用部材が含有する成分や、下面用部材の下面の算術平均粗さ(Sa)を適宜設定して、上記関係を満たすこともできる。一例としての支持体1は、下面用部材が剥離層である。
【0088】
また、分離補助層6を溶融押出し樹脂層としてもよい。溶融押出し樹脂層とは、溶融した樹脂を、例えば、Tダイ等の押出機によりフィルム状に押出すことで得られた樹脂層を意味し、押出しコートラミネート法や、サンドラミネート法、タンデムラミネート法等と称される従来公知の押出し方法により形成できる。
【0089】
これ以外にも、分離補助層6を、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、剥離フィルム、剥離紙とし、分離部材60を分離可能としてもよい。
【0090】
また、分離部材60を積層構造とし、当該分離部材60を構成する何れかの構成部材間で分離部材60の一部分を分離可能に構成してもよい。つまり、段階的に分離部材を分離できるように構成してもよい。例えば、
図5に示す形態において、分離部基材1Cを複数の基材を含む積層構造とし、分離部基材1Cの一部分を分離可能な構成としてもよい。つまり、分離部基材1Cを構成する何れかの構成部材の間を分離界面としてもよい。この場合、分離部基材1Cを構成する構成部材間の接着力や、分離部材と支持体1との接着力を考慮して、分離部基材から記録媒体100を分離するよりも前に、分離部基材1Cを構成する何れかの構成部材の間で分離できるようにすればよい。このような形態は、分離部基材1Cを構成する構成部材間にさらに分離補助層6を設け、当該分離補助層6の粘着性等を適宜設定することで実現できる。
【0091】
<<加飾シート>>
次に、本開示の実施の形態に係る加飾シート(以下、本開示の加飾シートという)について説明する。
図6に示すように、本開示の加飾シート150は、支持体1と、支持体1上に設けられた画像50が形成された画像層10とを有する。
【0092】
本開示の加飾シート150は、加飾対象物300に装飾性を付与するためのものである
。換言すれば、本開示の加飾シート150と加飾対象物300とが一体化された加飾品の製造に用いられるものである。
【0093】
本開示の加飾シート150の画像層10と、本開示の記録媒体100の画像層10は、画像層に画像50が形成されているか否かの点で相違する。本開示の記録媒体100において画像層10という場合には、画像50が形成される前の画像層10を意味する。本開示の加飾シート150において画像層10という場合には、画像50が形成された画像層10を意味する。本開示の加飾シート150の支持体1は、本開示の記録媒体100で説明した支持体1の構成をそのまま用いることができる。また、本開示の記録媒体100は、画像が形成される前の画像層10が最表面に位置しているのに対し、本開示の加飾シート150は、画像50が形成された画像層10上に、各種の層が設けられてもよい。
【0094】
また、本開示の加飾シート150は、加飾シート150全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上に規定されている。したがって、本開示の加飾シート150では、支持体1側から、画像層10に形成された画像50を視認できる。加飾シート150全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率の測定も、上記本開示の記録媒体100で説明した測定方法と同じである。なお、この場合、画像が形成されていない領域を測定領域とする。
【0095】
画像層10に形成される画像について限定はなく、上記本開示の記録媒体100で説明した各種の画像形成方法で形成された画像を例示できる。好ましい形態の加飾シート150は、画像層10に形成された画像50が、昇華型熱転写記録方式や、溶融型熱転写記録方式で形成された熱転写画像である。より好ましくは、昇華型熱転写記録方式で形成された熱転写画像である。画像層10に形成された画像50を熱転写画像とすることで、より意匠性の高い加飾品を製造可能な加飾シート150とできる。
【0096】
本開示の加飾シート150を用いて製造される加飾品は、画像層10側で、本開示の加飾シート150と加飾対象物300とが一体化されたものである。換言すれば、本開示の加飾シート150と加飾対象物300とが貼り合わされたものである。したがって、加飾シート150の画像層10側、及び加飾対象物300の何れか一方の面には、加飾シート150と加飾対象物300との貼り合わせが可能となるような接着層が設けられている、或いは、接着処理が施されている。
【0097】
例えば、加飾対象物300が、本開示の加飾シート150と貼り合わされる側の面に接着層等を有する場合、本開示の加飾シート150は、加飾対象物300と貼り合わせを可能とする構成を有していなくてもよい。
【0098】
(接着層)
一例としての加飾シート150は、画像50が形成された画像層10上に接着層200が設けられている(
図6(B)参照)。接着層200を含む加飾シート150全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率を5%以上としてもよい。
【0099】
接着層200が設けられた加飾シート150とした場合には、加飾対象物300自体が接着性を有していない場合であっても、当該加飾シート150の接着層200側を、加飾対象物300と重ねるだけで、加飾シート150と加飾対象物300とが一体化された加飾品を製造できる。
【0100】
また、画像層10上に接着層200が設けられた構成とした場合には、画像層10側で、本開示の加飾シート150と加飾対象物300とを一体化できる。この形態によれば、
一体化して得られる加飾品400の構成を、加飾対象物300側から、接着層200、画像50が形成された画像層10、支持体1がこの順番で設けられた構成とでき、画像層10に形成された画像50を支持体1で保護できる。また、得られた加飾品400の最表面には、算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上に規定された支持体1の下面が位置することから、加飾品に斬新な触感を付与できる。また、画像層10に形成された画像を高品質なものとできる。また、加飾シート150全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率は5%以上であることから、支持体1側から、画像層10に形成された画像50を視認できる。また、加飾対象物として、加飾品400を加飾対象物300側から見たときに、加飾シート150の画像層10に形成された画像50を視認できる透明性を有するものを用いることで、支持体1側のみならず、加飾対象物300側からも画像層10に形成された画像50を視認できる。つまり、本開示の加飾シート150によれば、当該加飾シート150の画像層10側で、加飾シート150と加飾対象物とを一体化させることで、高品質な画像と、斬新な触感とを有し、支持体側から画像を視認できる加飾品400を製造できる。
【0101】
一例としての加飾シート150が有する接着層200は、接着性を有する成分を含有している。接着性を有する成分としては、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド、及び合成ゴム等を例示できる。また、接着層200は、接着性を有する成分として、複数の成分を含有してもよい。接着層200は、接着フィルムや、接着シートでもよい。接着層200の厚みは、1μm以上1000μm以下が好ましい。
【0102】
本願明細書でいう接着層200とは、その両面が接着性を有するものを意味する。接着層200は、接着性を有する層のみからなる単層構造でもよく、接着性を有する層を積層した積層構造でもよい。また、フィルム等の両面に接着性を有する層を設けた積層構造でもよい。接着層200は、水との接触や、熱によって接着性が発現するものでもよい。
【0103】
(マスキング部材)
図8(A)に示す形態の加飾シート150は、
図6(B)に示す形態の加飾シート150の接着層200上にマスキング部材210が設けられた構成をとる。換言すれば、加飾シート150の画像層10上に、マスキング部材付き接着層200Aが設けられた構成をとる。
図8に示す形態の加飾シート150によれば、当該加飾シート150を巻き取り保管等したときに、接着層200が、支持体1や、分離部材60と貼りつくことを抑制できる。また、マスキング部材210を剥離した後の加飾シート150を加飾対象物300と重ねるだけで加飾シート150と加飾対象物300とが一体化された加飾品を製造できる。なお、本開示の加飾シート150全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率は、マスキング部材を剥離した後に測定される値である。
【0104】
マスキング部材210としては、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、剥離フィルム、剥離紙等の分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができる。また、樹脂層であってもよい。マスキング部材210は離型性を有する成分を含む。離型性を有する成分としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、及びワックス等を例示できる。
【0105】
接着層200は、画像層10側に、接着層200をなすフィルムや、シート等を貼りつけて形成してもよい。また、接着層200は、
図16(A)に示すように、転写シートの基材260上に、当該基材260から剥離可能に接着層200が設けられた転写シート250を用い、画像層10上に転写で形成してもよい。転写シートの接着層は、熱エネルギーを印加することで転写できるものであってもよく、熱エネルギーを印加せずに転写できるものであってもよい。また、画像層10側に、接着層を構成する成分を適当な溶媒に分
散、或いは溶解した塗工液を塗布・乾燥して形成してもよい。なお、接着フィルムや、接着シートを用いた接着層200の形成や、転写による接着層200の形成は、塗工液を塗布・乾燥する方法と比較して、画像層10に形成された画像50の滲みを抑制できる点で好ましい。
【0106】
また、画像層10上に、上記マスキング部材210と接着層200が一体化されたマスキング部材付き接着層を貼り合わせてもよい。また、
図16(B)に示すように、転写シートの基材260上に、当該基材260から剥離可能にマスキング部材210と、接着層200を含む転写層240(マスキング部材付き接着層)が設けられた転写シート250を用い、画像層10上に、マスキング部材付き接着層を転写で形成してもよい。
【0107】
図16(A)、(B)に示す形態の転写シートにおいて、基材260と接着層200の間や、基材と転写層240の間に、基材260側に残る離型層等を設けてもよい。離型層を設けることで、接着層や、転写層240の転写性を良好なものとできる。
図16(A)、(B)に示す形態の転写シート250において、接着層200や、転写層240と面順次に、1つ、或いは複数の色材層を設けてもよい。接着層200や、転写層240と面順次に色材層が設けられた転写シート250は、記録媒体100の画像層10への画像の形成、及び、画像50が形成された画像層10への接着層200の転写を、1つの転写シートで行える。色材層は、記録媒体100の画像層10へ画像50を形成するときの画像形成方式に応じて適宜決定すればよい。例えば、画像層10への画像の形成を昇華型熱転写方式で行う場合には、イエロー染料、マゼンタ染料、シアン染料、蛍光染料等の染料を含有する染料層とすればよい。また、画像層10への画像の形成を溶融型熱転写方式で行う場合には、ブラック顔料や、メタリック顔料、パール顔料等の着色剤を含有する溶融インキ層とすればよい。また、染料層と、溶融インキ層を面順次に設けた転写シート250としてもよい。このことは、
図16(C)~(E)に示す、耐久層230や、耐久層230を含む転写層240を有する転写シートについても同様である。また、各図に示す形態を組み合わせてもよい。
【0108】
(耐久層)
本開示の好ましい形態の加飾シートは、
図9(A)に示すように、画像50が形成された画像層10と接着層200の間に耐久層230が設けられている。本開示の好ましい形態の加飾シートは、画像が形成された画像層10上に耐久層230が設けられ、耐久層230上に接着層200が設けられている。本開示の好ましい形態の加飾シートは、画像層10に形成された画像50の滲みを抑制できる。
【0109】
一例としての加飾シート150は、画像層10上に耐久層230が設けられ、この耐久層230が表面に位置する(図示しない)。この構成の加飾シート150は、画像層10側で、接着層200が設けられた加飾対象物300と一体化させるときに、画像層10に形成された画像50の成分が、加飾対象物300が有する接着層200側に移行することを抑制できる。
【0110】
耐久層230の成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコール等を例示できる。耐久層230は、1種の成分を含有してもよく、2種以上の成分を含有してもよい。好ましい形態の耐久層230は、耐久層230が含有している主成分のガラス転移温度(Tg)が、接着層200が含有している主成分のガラス転移温度(Tg)よりも高くなるように構成されている。ここでいう主成分とは、耐久層や、接着層が含有している成分のうち、その含有量が最も多い成分を意味する。一例としての耐久層230は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、好ましくは、60℃以上の成分を、主成分として含有している。耐久層230の厚みは、0.01μm以上5μm以下が好ましい
。
【0111】
耐久層230の形成は、接着性を有する層等を用いて画像層10と耐久層230を貼り合わせる方法、画像層10上に耐久層230を転写で形成する方法、上記成分等を含む塗工液を、画像層10上に塗布・乾燥して形成する方法等を例示できる。例えば、
図16(C)、(E)に示すように、転写シートの基材260上に、当該基材260から剥離可能に耐久層230が設けられた転写シートを用い、耐久層230を転写で形成してもよい。また、
図16(D)に示すように、転写シートの基材260上に、接着層200、耐久層230を含む転写層240が設けられた転写シート250を用い、画像層10側に、転写層240を転写で形成してもよい。また、
図16(C)、(D)に示す形態の転写シートにおいて、基材260と耐久層230の間に、離型層や、剥離層を設けてもよい。離型層や、剥離層は、転写シートの分野で従来公知のものを適宜選択して用いればよい。
【0112】
<<分離部材付き加飾シート>>
次に、本開示の実施の形態に係る分離部材付き加飾シート(以下、本開示の分離部材付き加飾シート)について説明する。本開示の分離部材付き加飾シート150Xは、
図7、
図8(B)、
図9(B)に示すように、加飾シート150の支持体1の下面側に分離部材60が設けられた構成である。分離部材60は、加飾シート150の下面を分離界面として、加飾シート150から分離可能となっている。
【0113】
本開示の分離部材付き加飾シート150Xをなす加飾シート150としては、上記で説明した本開示の加飾シート150をそのまま用いることができる。分離部材60としては、上記本開示の分離部材付き記録媒体100Xで説明した分離部材60をそのまま用いることができる。したがって、本開示の分離部材付き加飾シート150Xをなす加飾シート150、及び本開示の分離部材付き加飾シート150Xをなす分離部材60についてのここでの詳細な説明は省略する。
【0114】
図7(A)、(B)、
図8(B)、
図9(B)は、本開示の分離部材付き加飾シート150Xの一例を示す概略断面図である。
【0115】
本開示の分離部材付き加飾シート150Xによれば、加飾シート150のハンドリング性等を良好なものとできる。また、各種の転写方式を用いて、分離部材60を分離しながら、或いは、分離した後に、加飾対象物300と加飾シート150とを一体化できる。また、本開示の加飾シート150で説明した作用効果を奏する。
【0116】
<<加飾品>>
次に、本開示の実施の形態に係る加飾品(以下、本開示の加飾品という)について説明する。本開示の加飾品400は、
図10に示すように、画像層10側で、加飾シート150と加飾対象物300とが一体化された構成をとる。
【0117】
本開示の加飾品400を構成する加飾シート150としては、上記で説明した本開示の加飾シート150を適宜選択して用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。本開示の加飾品400は、高品質な画像と、斬新な触感とを有し、支持体1側から画像層10に形成された画像50を視認できる。
【0118】
図10に示す形態の加飾品400は、加飾シートが接着層200を含み、加飾シート150の画像層10側で、加飾対象物300と一体化された構成をとる。本開示の加飾品400は、加飾対象物300と一体化される加飾シート150として、本開示の加飾シート150が用いられる。したがって、斬新な触感を有する本開示の加飾品400とできる。また、高品質な画像50を有する加飾品とできる。また、画像層10に形成された画像5
0を支持体1で保護できる。また、画像層10に形成された画像50を、支持体1側から視認できる。
【0119】
(加飾対象物)
本開示の加飾品400を構成する加飾対象物300は、その形状、大きさ、材質等について限定されるものではなく、いかなるものであってもよい。例えば、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、木材、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂板(フィルムであってもよい)、アルミ等の金属板、ガラス板、及び陶器等のセラミック板を例示できる。また、加飾対象物300は、複数の部材が積層されたものであってもよい。また、加飾対象物300は、所定の画像を有してもよく、その全体、或いは一部が、曲率や、凹凸構造等を有してもよい。また、加飾対象物300は、本開示の加飾品400を加飾対象物300側から見たときに、画像層10の画像50を視認できる透明性を有してもよい。
【0120】
<<加飾品の製造方法>>
次に、本開示の実施の形態に係る加飾品の製造方法(以下、本開示の加飾品の製造方法という)について説明する。
【0121】
<第1実施形態の加飾品の製造方法>
本開示の第1実施形態の加飾品の製造方法は、画像形成工程、及び一体化工程を含む。画像形成工程は、
図11(A)に示すように、記録媒体100の画像層10に画像50を形成する工程である。一体化工程は、
図11(B)に示すように、画像形成工程後に、画像層10側で、記録媒体100と加飾対象物300とを一体化させる工程である。
【0122】
本開示の第1実施形態の加飾品の製造方法に用いられる記録媒体100は、上記で説明した本開示の記録媒体100を適宜選択して用いればよい。また、加飾対象物300としては、本開示の加飾品400で説明した加飾対象物300を適宜選択して用いればよい。
【0123】
(画像形成工程)
画像形成工程について限定はなく、上記本開示の記録媒体100で説明した各種の画像形成方法を適宜選択して行えばよい。好ましい形態の加飾品の製造方法は、昇華型熱転写方式や、溶融型熱転写方式を用いて画像の形成が行われる。このことは、後述する第2実施形態、及び第3実施形態の加飾品の製造方法についても同様である。なお、
図12~
図15に示す形態における画像層10に画像が形成された記録媒体100や、分離部材付き記録媒体100Xは、上記本開示の加飾シート150や、分離部材付き加飾シート150Xに対応している。
【0124】
(一体化工程)
一体化工程は、画像形成工程後の記録媒体100と、加飾対象物300とを、記録媒体100の画像層10側で一体化させる工程である。
【0125】
(貼合工程)
また、本開示の第1実施形態の加飾品の製造方法は、一体化工程の前に、記録媒体100の画像層10側に、接着層を貼合する貼合工程を含んでもよい。接着層200の貼合を、記録媒体100の画像層10側に行う場合には、画像層形成工程後であって、一体化工程の前に貼合工程を行えばよい。
【0126】
また、記録媒体100側に接着層200を貼合することにかえて、加飾対象物300側に接着層200を貼合してもよい。また、予め、接着層が設けられた加飾対象物300を用もよい。各図に示す加飾品の製造方法では、接着層200の記載を省略している。
【0127】
接着層200としては、上記本開示の加飾シートで説明した接着層200を適宜選択して用いればよい。接着層200の貼合は、接着フィルムや、接着シート等を押圧して貼合してもよく、接着層が転写可能に設けられた転写シート等を用いて転写で貼合してもよい。また、接着層200を、塗工液を塗布・乾燥して形成してもよい。
【0128】
また、接着層200として、マスキング部材付き接着層200Aを用いてもよい。マスキング部材付き接着層を用いる場合には、マスキング部材を剥離した後に、一体化工程を行う。また、接着層として両面にマスキング部材が設けられたマスキング部材付き接着層を用いてもよい。この場合、一方面のマスキング部材を剥離して貼合工程を行い、その後、他方面のマスキング部材を剥離して、一体化工程を行えばよい。
【0129】
<第2実施形態の加飾品の製造方法>
本開示の第2実施形態の加飾品の製造方法は、
図12(A)に示すように、分離部材付き記録媒体100Xの画像層10に画像を形成する画像形成工程と、
図12(B)に示すように、画像形成工程後に、分離部材付き記録媒体100Xから分離部材60を分離する分離工程と、
図12(C)に示すように、分離工程後、画像層10側で、分離部材60が分離された記録媒体100と加飾対象物300とを一体化させる一体化工程を含む。
図12は、本開示の加飾品の製造方法の一例を示す工程図である。
【0130】
(分離工程)
分離工程は、分離部付き記録媒体100Xから分離部材60を分離する工程である。本工程を経ることで、第1実施形態の加飾品の製造方法で説明した記録媒体100と同じ構成となる。この分離は、上記で説明したように、熱エネルギーを印加して行ってもよく、熱エネルギーを印加せずに行ってもよい。
【0131】
画像形成工程、及び、一体化工程は、上記第1実施形態の加飾品の製造方法で説明した方法等を適宜選択して用いることができる。また、画像50が形成された画像層10上に、接着層200を形成してもよい。また、加飾対象物300側に接着層を形成してもよい。
【0132】
また、
図13(A)に示すように、分離部材60を段階的に分離ができる構成(60A、60B)としてもよい。
図13に示す形態では、
図13(B)に示すように、分離工程において、分離部材60の一部分(60B)を分離部材付き記録媒体100Xから分離する。次いで、
図13(C)に示すように、画像層10側で、分離部材60の一部分が分離された分離部材付き記録媒体100Xと加飾対象物300とを一体化させる一体化工程を行っている。その後、
図13(D)に示すように、記録媒体100側に残っている分離部材60の他の一部分(60A)を、加飾対象物300と一体化されている記録媒体100から分離してもよい。或いは、
図14(A)に示すように、分離部材60を段階的に分離ができる構成(60A、60B)とてもよい。
図14に示す形態では、
図14(B)に示すように、分離工程において、分離部材60の一部分(60B)を分離部材付き記録媒体100Xから分離する。次いで、
図14(C)に示すように、記録媒体100側に残っている分離部材60の他の一部分(60A)から記録媒体100を分離(剥離)しながら、分離部材の全てが分離された記録媒体100を加飾対象物300側に転写で一体化(密着)させる一体化工程を行っている。また、分離部材60の他の一部分(60A)を分離した後に、分離部材の全てが分離された記録媒体100を、加飾対象物300と一体化させてもよい。
【0133】
<第3実施形態の加飾品の製造方法>
本開示の第3実施形態の加飾品の製造方法は、
図15(A)に示すように、分離部材付
き記録媒体100Xの画像層10に画像を形成する画像形成工程と、
図15(B)に示すように、画像形成工程後に、分離部材付き記録媒体100Xの画像層10側で、分離部材付き記録媒体100Xと加飾対象物300とを一体化させる工程と、
図15(C)に示すように、一体化工程後、加飾対象物300と一体化された分離部材付き記録媒体100Xから分離部材60を分離する工程を含む。
【0134】
本開示の第3実施形態の加飾品の製造方法は、分離工程と、一体化工程の順番が入れ替わる点で、上記本開示の第2実施形態の加飾品の製造方法と相違している。
【0135】
(耐久層形成工程)
また、上記第1実施形態~第3実施形態の製造方法は、記録媒体100や、分離部材付き記録媒体の画像層10側に、耐久層230を形成する耐久層形成工程を含んでもよい。なお、画像層10側に接着層200を形成する場合には、接着層200を形成する前に、画像層10上に耐久層230を形成すればよい。また、加飾対象物300側に接着層200を形成する場合、一体化工程の前に、記録媒体100の画像層10上に耐久層を形成すればよい。耐久層形成工程を含む本開示の製造方法によれば、記録媒体100の画像層10に形成された画像の成分が、接着層200側に移行して、画像に滲みが生ずることを抑制できる。
【0136】
耐久層としては、上記本開示の加飾シート150で説明した耐久層230を適宜選択して用いることができる。
【0137】
上記本開示の各種の実施の形態に係る加飾品の製造方法によれば、高品質な画像と、斬新な触感とを有し、支持体1側から画像層10に形成された画像50を視認できる加飾品400を製造できる。
【0138】
上記で説明した本開示の加飾品400の製造方法にかえて、上記で説明した本開示の加飾シート150や、本開示の分離部材付き加飾シート150Xを用いて、加飾品400を製造してもよい。本開示の加飾シート150や、本開示の分離部材付き加飾シート150Xを用いた加飾品400の製造は、画像形成工程を省略した点において、上記本開示の加飾品の製造方法と相違する。
【0139】
上記では、本開示の記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上である場合を中心に説明したが、本開示の記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の光線透過率について限定はない。
【0140】
本開示の実施の形態に係る記録媒体100は、支持体1と、支持体1上に積層された画像が形成される前の画像層10とを有し、支持体1の面のうち画像層側の面を上面、その反対側の面を下面としたときに、支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上であり、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下である。
【0141】
本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100は、当該記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%未満である。本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100は、当該記録媒体100全体の波長領域350nm以上750nm以下の全ての波長の光線透過率が5%未満である。5%未満は0%を含む。
【0142】
本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100は、上記本開示の記録媒体100と、記録媒体100全体の光線透過率の規定が異なる点で相違し、それ以外は共通する。本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100の支持体1や、画像層10の波長領域350nm
以上750nm以下の光線透過率について限定はない。本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100の支持体1は、フィルム基材や、上記分離部基材で例示した紙基材等を含んでもよい。
【0143】
本開示の他の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体100Xは、本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100を含む。本開示の他の実施の形態に係る加飾シート150は、本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100の画像層10に画像が形成されたものである。本開示の他の実施の形態に係る分離部材付き加飾シート150Xは、本開示の他の実施の形態に係る加飾シート150を含む。
【0144】
本開示の他の実施の形態に係る加飾品400は、本開示の他の実施の形態に係る加飾シート150の画像層10側で、加飾対象物300と加飾シート150を一体化させたものである。
【0145】
本開示の他の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記で説明した本開示の各種の加飾品の製造方法で用いる記録媒体100を、本開示の他の実施の形態に係る記録媒体100としたものである。
【0146】
本開示の他の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、上記で説明した本開示の各種の加飾品の製造方法で用いる分離部材付き記録媒体100Xを、本開示の他の実施の形態に係る分離部材付き記録媒体100Xとしたものである。
【0147】
本開示の他の実施の形態に係る加飾品、及び本開示の他の実施の形態に係る加飾品の製造方法は、加飾対象物側から画像層10の画像50を視認できる加飾対象物300を用いる。一例としての加飾対象物300は、波長領域350nm以上750nm以下の何れかの波長の光線透過率が5%以上である。一例としての加飾対象物300は、波長領域350nm以上750nm以下の全ての波長の光線透過率が5%以上である。画像層10と加飾対象物300との間に位置する層についても同様である。
【0148】
また、上記で説明した本開示の加飾品400や、加飾品の製造方法は、画像が形成された画像層10側で、記録媒体100と、加飾対象物とが一体化されているが、支持体1側で、記録媒体100と加飾対象物とを一体化させたものであってもよい。この場合、上記で説明した各種の形態の記録媒体100、分離部材付き記録媒体100X、加飾シート150、分離部材付き加飾シート100において、支持体1の下面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上で、支持体1の上面の算術平均高さ(Sa)が0.6μm以下であるとの記載を、画像層10の表面の算術平均高さ(Sa)が0.4μm以上0.6μm以下と読み替えればよい。この形態によれば、高品質な画像50と、斬新な触感を有する印画物や、加飾品等を製造できる。
【符号の説明】
【0149】
1・・・支持体
1A・・・下面用部材
1B・・・支持体構成部材
1C・・・分離部基材
3・・・プライマー層
6・・・分離補助層
10・・・画像層
50・・・画像
60・・・分離部材
100・・・記録媒体
100X・・・分離部材付き記録媒体
150・・・加飾シート
150X・・・分離部材付き加飾シート
200・・・接着層
200A・・・マスキング部材付き接着層
210・・・マスキング部材
230・・・耐久層
240・・・転写層
250・・・転写シート
260・・・転写シートの基材
300・・・加飾対象物
400・・・加飾品