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特許7581632不燃シート、複合シート、吸収性物品、及び不燃性化粧板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】不燃シート、複合シート、吸収性物品、及び不燃性化粧板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20241106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241106BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20241106BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B7/027
B32B27/00 E
B32B27/12
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/30 101
B32B27/32 Z
B32B27/40
C08L23/06
C08K3/013
C08K3/26
B29C55/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020035030
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2020147748
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019043164
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-099666(JP,A)
【文献】特開2015-093414(JP,A)
【文献】特開平11-269288(JP,A)
【文献】特開2002-003662(JP,A)
【文献】特開2014-030926(JP,A)
【文献】特開2017-128063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
9/00-9/42
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14、C08K 3/00-13/08
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物で形成され、少なくとも1軸延伸されているとともに全光線透過率が50%以上であり、且つ透湿度が3600g/(m・24h)以上8400g/(m・24h)以下の範囲内であるとともに坪量が200g/m以上350g/m以下の範囲内である不燃シートであって、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6g/10min以上25g/10min以下の範囲内であり、且つ荷重が98.07Nのメルトフローレートと荷重が9.81Nのメルトフローレートとの比であるメルトフローレシオが85以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1g/10min以上5g/10min以下の範囲内であり且つ密度が0.920g/cm以上0.935g/cm以下の範囲内である線状低密度ポリエチレンを80質量%以上99質量%以下の範囲内で含むとともに、メルトフローレートが6g/10min以上15g/10min以下の範囲内であり且つ密度が0.910g/cm以上0.930g/cm以下の範囲内である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%以上20質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする不燃シート。
【請求項2】
前記無機充填剤を前記ポリオレフィン系樹脂に対して80質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の不燃シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した不燃シートと、前記不燃シートの一方の面に貼り合わせた繊維シートと、を備えることを特徴とする複合シート。
【請求項4】
液透過性を有する表面シートと、液不透過性を有する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された液保持性を有する吸収体と、を備え、
前記裏面シートは、請求項1又は請求項2に記載した不燃シート又は請求項3に記載した複合シートであることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載した不燃シートと、前記不燃シートの少なくとも一方の面に積層されたアンカー層と、前記アンカー層に積層された化粧層と、を備える不燃性化粧板であって、
前記化粧層は、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層を備え、
前記アンカー層及び前記化粧層の有機分質量は、150g/m以下であることを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物で形成され、少なくとも1軸延伸されているとともに全光線透過率が50%以上であり、且つ透湿度が3600g/(m ・24h)以上8400g/(m ・24h)以下の範囲内であるとともに坪量が50g/m 以上350g/m 以下の範囲内である不燃シートであって、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6g/10min以上25g/10min以下の範囲内であり、且つ荷重が98.07Nのメルトフローレートと荷重が9.81Nのメルトフローレートとの比であるメルトフローレシオが85以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1g/10min以上5g/10min以下の範囲内であり且つ密度が0.920g/cm 以上0.935g/cm 以下の範囲内である線状低密度ポリエチレンを80質量%以上99質量%以下の範囲内で含むとともに、メルトフローレートが6g/10min以上15g/10min以下の範囲内であり且つ密度が0.910g/cm 以上0.930g/cm 以下の範囲内である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%以上20質量%以下の範囲内で含む不燃シートと、前記不燃シートの少なくとも一方の面に積層されたアンカー層と、前記アンカー層に積層された化粧層と、を備える不燃性化粧板であって、
前記化粧層は、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層を備え、
前記アンカー層及び前記化粧層の有機分質量は、150g/m以下であることを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項7】
前記アンカー層は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の不燃性化粧板。
【請求項8】
前記アンカー層は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂からなり、前記塩酢ビの含有量と前記ウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は、80/20~1/99の範囲内であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の不燃性化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドア等の建具に用いる不燃シート、不燃シートを備える複合シート、不燃シートを備える吸収性物品、及び不燃シートを備える不燃性化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
透湿性を有する不燃シートとしては、例えば、特許文献1に開示されている構成のものがある。特許文献1に開示されている構成は、フィラーを含む樹脂組成物を、Tダイ法やインフレーション法等の各種成形法によって溶融成膜し、少なくとも1軸延伸することで製造した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-261868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、例えば、建具に用いる用途として強度が低いため、反りが発生しやすいという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な、不燃シート、不燃シートを備える複合シート、不燃シートを備える吸収性物品、不燃シートを備える不燃性化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含み、少なくとも1軸延伸されているとともに全光線透過率が50%以上であり、且つ透湿度が3600[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内であるとともに坪量が50[g/m]以上350[g/m]以下の範囲内である不燃シートである。また、ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6[g/10min]以上25[g/10min]以下の範囲内であり、且つ荷重が98.07Nのメルトフローレートと荷重が9.81Nのメルトフローレートとの比であるメルトフローレシオが85以下である。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.920[g/cm]以上0.935[g/cm]以下の範囲内である線状低密度ポリエチレンを80質量%以上99質量%以下の範囲内で含むとともに、メルトフローレートが6[g/10min]以上15[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.910[g/cm]以上0.930[g/cm]以下の範囲内である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%以上20質量%以下の範囲内で含む。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、不燃シートと、不燃シートの一方の面に貼り合わせた繊維シートを備えることを複合シートである。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、液透過性を有する表面シートと、液不透過性を有する裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された液保持性を有する吸収体と、を備える吸収性物品である。また、裏面シートは、不燃シート又は複合シートである吸収性物品である。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、不燃シートと、不燃シートの少なくとも一方の面に積層されたアンカー層と、アンカー層に積層された化粧層と、を備える不燃性化粧板である。また、化粧層は、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層を備え、アンカー層及び化粧層の有機分質量は、150[g/m]以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な、不燃シート、不燃シートを備える複合シート、不燃シートを備える吸収性物品、不燃シートを備える不燃性化粧板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態における不燃性化粧板の構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態における複合シートの構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態における吸収性物品の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第1実施形態)
以下、不燃性化粧板と、不燃性化粧板が備える不燃シートと、複合シートと、吸収性物品について説明する。
【0011】
(不燃性化粧板)
図1を参照して、不燃性化粧板10の構成について説明する。
不燃性化粧板10は、図1に示すように、不燃シート1と、第一アンカー層2と、第二アンカー層4と、プライマー層6と、化粧層8を備える。
【0012】
(不燃シート)
不燃シート1(原反層とも呼称する場合がある)は、ポリオレフィン系樹脂組成物を含む。ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内である無機充填剤を含有する。
第1実施形態では、一例として、ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂に対して50質量%を超える無機充填剤を含有する場合について説明する。
これに加え、不燃シート1は、少なくとも1軸延伸されているとともに全光線透過率が50%以上であり、且つ透湿度が3600[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内である。さらに、不燃シート1は、坪量が50[g/m]以上350[g/m]以下の範囲内である。
第1実施形態では、一例として、不燃シート1の延伸倍率が、3.0倍以上6.0倍以下の範囲内である場合について説明する。
【0013】
不燃シート1の厚さは、50[μm]以上250[μm]以下の範囲内であることが好ましく、70[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。不燃シート1の厚さが50[μm]未満であると、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、不燃シート1の厚さが250[μm]を超えると、シートの折り曲げ部に割れが発生することがある。
したがって、不燃シート1の厚さが上述した数値範囲内であれば、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することが可能となる。
【0014】
なお、不燃シート1には、第一アンカー層2や第二アンカー層4を形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。不燃シート1にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、第一アンカー層2や第二アンカー層4と不燃シート1との接着性(密着性)を、向上させることが可能となる。
また、第一アンカー層2や第二アンカー層4を形成する前に不燃シート1をブラッシングすることで、粉吹きした無機充填剤(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩)を事前に落とすようにしてもよい。
【0015】
(ポリオレフィン系樹脂組成物)
ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6[g/10min]以上25[g/10min]以下の範囲内である。これに加え、荷重が98.07Nのメルトフローレートと荷重が9.81Nのメルトフローレートとの比であるメルトフローレシオが85以下である。
ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.920[g/cm]以上0.935[g/cm]以下の範囲内である線状低密度ポリエチレンを80質量%以上99質量%以下の範囲内で含むとともに、メルトフローレートが6[g/10min]以上15[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.910[g/cm]以上0.930[g/cm]以下の範囲内である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%以上20質量%以下の範囲内で含む。
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂組成物の中における分散性を向上させるために、ステアリン酸を配合してもよい。この場合、ステアリン酸は、無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下の範囲内、特に、0.8質量部以上2質量部以下の範囲内で配合されることが好ましい。
【0016】
(メルトフローレート)
メルトフローレートは、好ましくは7[g/10min]以上20[g/10min]以下の範囲内、さらに好ましくは8[g/10min]以上18[g/10min]以下の範囲内である。メルトフローレートが6[g/10min]未満の場合、流動性が悪く低温での成形が不可能であるため、高温で成形する必要が生じ、目やに、焼けブツ、樹脂のゲル化物等の発生が多くなる。一方、メルトフローレートが25[g/10min]を超える場合、溶融張力が低くなり、ドローレゾナンスが発生して高速での薄膜成形性が悪くなる。また、ダイス出口でのネックインが大きくなり、所望のシート幅が得られず生産性が悪くなってしまう。メルトフローレートは、ASTM D-1238-57T(E)に規定される方法に従い、温度が190℃であるとともに、荷重が21.18Nの条件下で測定される。
【0017】
(メルトフローレシオ)
メルトフローレシオは、ポリオレフィン系樹脂組成物の剪断速度依存性の指標となるものであり、メルトフローレシオの値が1に近づくほど、ポリオレフィン系樹脂組成物の剪断応力が変化しても、剪断速度の変化が小さいことを意味する。メルトフローレシオが85を超えるポリオレフィン系樹脂組成物を用いると、押出機内、単管内、Tダイス内等での剪断速度の変化に対して、流動性の変化が大きくなる。その結果、樹脂の滞留による焼けブツの発生が多くなり、幅方向の厚みムラが多く発生し、外観上見栄えの悪いシートとなってしまう。なお、メルトフローレシオの好ましい範囲は、10以上75以下の範囲内、特に、15以上70以下の範囲内である。
【0018】
メルトフローレシオを算出するために用いられる、温度が190℃の環境下において、荷重が98.07N及び9.81Nのメルトフローレートの測定方法は、ASTM D-1238-57T(E)に規定される方法に準じる。メルトフローレシオを算出するために用いられる2つのメルトフローレートの荷重値を、それぞれ、98.07N及び9.81Nとした理由は、一般的な押出機~Tダイス内の剪断速度は、およそ、このメルトフローレートの荷重の範囲内に入ることによるものである。温度が190℃の環境下において、荷重が98.07N及び9.81Nのメルトフローレートそれ自体の値は、荷重98.07Nの場合、60[g/10min]以上120[g/10min]以下の範囲内、特に70[g/10min]以上110[g/10min]以下の範囲内であることが好ましく、荷重9.81Nの場合、0.5[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内、特に、1[g/10min]以上4.5[g/10min]以下の範囲内であることが好ましい。それぞれの荷重におけるメルトフローレートの値がこの範囲内であれば、この剪断速度の範囲内における樹脂の流動性の変化が小さく、成形性が良好となる。
【0019】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を含んでいれば好ましく、ポリプロピレンを含んでいればより好ましい。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を使用することで、無機充填剤の分散性が向上する。また、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機充填剤の分散性がさらに向上する。
【0020】
また、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との合計含有量は、不燃性化粧板10の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との合計含有量が、不燃性化粧板10の質量に対して90質量%未満であると、十分な不燃性又は十分な難燃性が得られないことがある。また、印刷適性やラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
したがって、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との合計含有量が上述した数値範囲内であれば、十分な不燃性又は十分な難燃性を得つつ、印刷適性やラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することが可能となる。
【0021】
なお、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との合計含有量が、不燃性化粧板10の質量に対して、100質量%である場合には、ポリオレフィン系樹脂の含有量を10質量%以上85質量%以下の範囲内とし、無機充填剤の含有量を15質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とし、無機充填剤の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂の含有量を20質量%以上40質量%以下の範囲内とし、無機充填剤の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との合計含有量が上述した数値範囲内であれば、十分な不燃性又は十分な難燃性を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することが可能となる。
第1実施形態では、一例として、ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む場合について説明する。
【0022】
(線状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンとの配合比率)
線状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンとの配合比率は、上述したように、線状低密度ポリエチレンの配合量を80質量%以上99質量%以下の範囲内とし、分岐状低密度ポリエチレンの配合量を1質量%以上20質量%以下の範囲内としたが、好ましくは、線状低密度ポリエチレンの配合量を85質量%以上99質量%以下の範囲内とし、分岐状低密度ポリエチレンの配合量を1質量%以上15質量%以下の範囲内としてもよい。さらに好ましくは、線状低密度ポリエチレンの配合量を85質量%以上95質量%以下の範囲内とし、分岐状低密度ポリエチレンの配合量を5質量%以上15質量%以下の範囲内としてもよい。各樹脂の配合量が上述した範囲内であることで、シートの成形性が良好であるとともに、幅方向及び流れ方向の厚みムラが少なく、外観上見栄えの良好な不燃シート1を得ることが可能となる。また、透湿性と強度、柔軟性のバランスが優れた不燃シート1を得ることが可能となる。
【0023】
(無機充填剤)
無機充填剤は、例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末である。炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末は、粉末全体の質量に対して、炭酸カルシウム等を50質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものが好ましい。つまり、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末の純度は、炭酸カルシウム等の含有量が、50質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭酸カルシウム等の含有量が50質量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末であれば、不燃シート1に、十分な不燃性又は十分な難燃性を付与することが可能であるとともに、十分な機械強度を付与することが可能である。
【0024】
なお、無機充填剤としては、上記炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩のうち、少なくとも一方を含有した粉末以外に、例えば、シリカ(特に、中空シリカ)、アルミナ、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン等のジルコニウム化合物を用いることが可能である。また、無機充填剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデン、あるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体等、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体、並びにそれらの塩等の少なくとも一種を用いることが可能である。また、無機充填剤は、例えば、石灰石の粉体、卵殻の焼結粉体、牡蠣や帆立等の焼結粉体等であってもよい。
【0025】
上述した無機質材料のうち、特に、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は、製造手法による粒径のコントロールや、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を制御することが容易であり、また、材料コストとしても安価であるため、不燃性化粧板10を低廉化する観点からも好適である。
また、無機充填剤は、比表面積が16000[cm/g]以上24000[cm/g]以下の範囲内である炭酸カルシウムを含んでいてもよい。無機充填剤である炭酸カルシウムの比表面積が上記数値範囲内であれば、透湿性が高く耐水性も高い不燃シート1を形成することが可能となる。
【0026】
また、無機充填剤は、結晶性を有する粉末材料や、いわゆる結晶粉末であってもよく、結晶性を有さない粉末材料、いわゆるアモルファスタイプの粉末材料であってもよい。この場合、無機充填剤が結晶性を有する粉末材料であれば、粉末自体が均質で等方性を備えるため、粉末自体の機械強度が向上し、不燃シートの耐傷性や耐久性が向上する傾向がある。また、無機充填剤がアモルファスタイプの粉末材料であれば、粉末自体の電気伝導性や熱伝導性、あるいは光透過率や光吸収率を適宜調整することが可能となるため、触感や艶等のバリエーションが豊富な意匠性を付与することが可能となる。
第1実施形態では、一例として、無機充填剤が、炭酸カルシウムである場合について説明する。
【0027】
無機充填剤は、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、平均粒子径(モード径)が1[μm]以上3[μm]以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50[μm]以下であることが好ましい。その理由を、以下に記載する。
無機充填剤の平均粒子径が1[μm]未満であると、無機充填剤同士の凝集力が高まり、ポリオレフィン系樹脂への分散性が低下することがある。また、無機充填剤の平均粒子径が3[μm]を超えると、不燃シート1の表面の平坦性が低下し、第一アンカー層2や第二アンカー層4の厚さが不均一となる可能性や、ムラや欠けが発生したりする可能性がある。また、無機充填剤の最大粒子径が50[μm]を超えると、不燃シート1の表面の平坦性が低下し、第一アンカー層2や第二アンカー層4の厚さが不均一となる可能性や、ムラや欠けが発生したりする可能性がある。
以上説明したように、無機充填剤の平均粒子径及び最大粒子径が、上述した数値範囲内であれば、ポリオレフィン系樹脂に対する無機充填剤の分散性を向上させるとともに、不燃シート1の表面に対し、平坦性を維持することが可能である。
【0028】
以下、無機充填剤の含有量を、ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内とした理由を説明する。
無機充填剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%未満である場合、相対的にポリオレフィン系樹脂の割合が多くなるため、不燃性又は難燃性が得にくい傾向がある。さらに、不燃シート1の表面を、ホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認可能な程度の傷が付く、即ち、十分な表面硬度が得られないことがある。
【0029】
一方、無機充填剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂に対して90質量%を超える場合、相対的にポリオレフィン系樹脂の割合が少なくなる。このため、第一アンカー層2や第二アンカー層4の形成時に、不燃シート1の表面にいわゆる「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、不燃シート1に含まれた無機充填剤が、不燃シート1の表面に浮き出る状態を示す。また、化粧層8の形成時に、不燃シート1から浮き出た無機充填剤によってインキが積層しにくくなり、印刷適性が低下することがある。また、第一アンカー層2、第二アンカー層4及び化粧層8のうち少なくとも一つを形成したシートを、ロール状又は枚葉で木質系基材及び無機材料系基材にラミネートする際に、ラミネートが困難となり、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、第一アンカー層2、第二アンカー層4及び化粧層8のうち少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分の割れや、無機充填剤の落下が発生する可能性がある。また、化粧層8を形成したシートの表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、化粧層8又は不燃シート1(第一アンカー層2)と化粧層8との間で剥離が生じ、インキ密着性が低下することがある。
【0030】
以上説明したように、無機充填剤の含有量を、不燃シート1の質量に対して上述した範囲内とすることで、不燃性又は難燃性を得つつ、粉吹きの発生を低減することが可能となる。これに加え、印刷適性及びラミネート適性を向上させることが可能となり、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減させることが可能となり、さらに、十分な表面硬度を得ることと、インキ密着性を向上させることが可能となる。
【0031】
(線状低密度ポリエチレン)
線状低密度ポリエチレンとしては、上述したように、メルトフローレートが1[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内であるものを用いるが、好ましくは、2[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内、さらに好ましくは、2.5[g/10min]以上4.5[g/10min]以下の範囲内のものが用いられる。このメルトフローレートの範囲は、従来不燃シートの原料に用いられてきたポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも高いものである。このような高いメルトフローレートの線状低密度ポリエチレンを用いることによって、流動性が向上して成形性が良好となる。また、透湿性の高い不燃シートを得ることが可能となる。メルトフローレートが1[g/10min]未満では流動性が低く、シート成形が困難となってしまう。一方、メルトフローレートが5[g/10min]を超えると延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発する。線状低密度ポリエチレンのメルトフローレートは、ポリオレフィン系樹脂組成物のメルトフローレートと同様に、ASTM D-1238-57T(E)に規定される方法に従い、温度が190℃であるとともに、荷重が21.18Nの条件下で測定される。
【0032】
また、線状低密度ポリエチレンの密度は、上述したように、0.920[g/cm]以上0.935[g/cm]以下の範囲内とするが、好ましくは0.920[g/cm]以上0.930[g/cm]以下の範囲内である。この範囲の密度を有する線状低密度ポリエチレンを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない不燃シートを得ることが可能となる。線状低密度ポリエチレンの密度が0.920[g/cm]未満では、透湿性が低くなり、耐熱性が低下する。一方、線状低密度ポリエチレンの密度が0.935[g/cm]を超えると、柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えが悪化する。線状低密度ポリエチレンの密度は、JIS K 7112のD法(密度勾配管による測定法)に基づき測定される。
【0033】
また、線状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて製造されたものであることが好ましい。これによって、成形性とシート物性、特に透湿性と強度と柔軟性のバランスが良好な不燃シートを得ることが可能となる。この場合、線状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
線状低密度ポリエチレンとしては、市販のものを用いることも可能である。市販の線状低密度ポリエチレンとしては、例えば、宇部興産(株)製の「UMERIT 2540FやUMERIT 2525F」や、日本ポリオレフィン(株)製の「ハーモレックスNC479A」や「ハーモレックスNC564A」等を用いることが可能である。
【0034】
(分岐状低密度ポリエチレン)
分岐状低密度ポリエチレンとしては、上述したように、メルトフローレートが6[g/10min]以上15[g/10min]以下の範囲内のものを用いるが、好ましくは、7[g/10min]以上12[g/10min]以下の範囲内のものが用いられる。このメルトフローレートの範囲は、従来から用いられてきたポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも高いものである。このような高いメルトフローレートの分岐状低密度ポリエチレンを用いることによって、流動性が向上し成形性が良好となる。また、透湿性の高い不燃シートを得ることが可能となる。メルトフローレートが6[g/10min]未満であると成形性が悪くなり、幅方向の厚みムラも多く、外観上見栄えの悪いシートとなり、さらには、透湿性も低いものとなってしまう。一方、メルトフローレートが15[g/10min]を超える場合では、延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発する。分岐状低密度ポリエチレンのメルトフローレートは、ポリオレフィン系樹脂組成物のメルトフローレートと同様に、ASTM D-1238-57T(E)に規定される方法に従い、温度が190℃であるとともに、荷重が21.18Nの条件下で測定される。
【0035】
また、分岐状低密度ポリエチレンの密度は、上述したように、0.910[g/cm]以上0.930[g/cm]以下の範囲内とするが、好ましくは、0.910[g/cm]以上0.925[g/cm]以下の範囲内としてもよく、さらに好ましくは、0.915[g/cm]以上0.925[g/cm]以下の範囲内としてもよい。この範囲の密度を有する分岐状低密度ポリエチレンを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない不燃シートを得ることが可能となる。分岐状低密度ポリエチレンの密度が0.910[g/cm]未満であると透湿性が低くなり、耐熱性も低い不燃シートとなってしまう。一方、分岐状低密度ポリエチレンの密度が0.930[g/cm]を超える場合、柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えの悪い不燃シートとなる。
分岐状低密度ポリエチレンとしては、市販のものを用いることも可能である。市販の分岐状低密度ポリエチレンとしては、例えば、宇部興産(株)製の「J1019」や、日本ポリオレフィン(株)製の「JH606N」等を用いることが可能である。
【0036】
(第一アンカー層)
第一アンカー層2は、不燃シート1に積層されている。具体的に、第一アンカー層2は、図1において、不燃シート1の上側の面(表面)に積層されており、不燃シート1の表面全体を覆うように形成されている。これにより、第一アンカー層2は、不燃シート1に含まれる無機充填剤の粉落ちを防止する。印刷時や樹脂塗工時に不燃シート1に含まれる無機充填剤が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、印刷系内を汚染することがある。また、不燃シート1に含まれる無機充填剤が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
【0037】
また、第一アンカー層2は、不燃シート1と、後述する絵柄模様層8aを形成するインキとの密着性を向上させるための機能も備えている。第一アンカー層2を備えない構成では、絵柄模様層8aを形成するインキが、不燃シート1に密着せずに剥離してしまうことがある。
第一アンカー層2を形成する材料としては、例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有している材料を用いることが可能である。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物である。
【0038】
塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は、80/20以上1/99以下の範囲内であればよい。また、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比は、50/50以上5/95以下の範囲内であれば好ましく、20/80以上10/90以下の範囲内であればさらに好ましい。
また、第一アンカー層2は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等の任意の印刷方法を用いて形成されている。好適には、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等、任意のコーティング方法を用いることが可能である。
【0039】
(第二アンカー層)
第二アンカー層4は、不燃シート1に積層されている。具体的に、第二アンカー層4は、図1において、不燃シート1の下側の面(裏面)に積層されており、不燃シート1の裏面全体を覆うように形成されている。これにより、第二アンカー層4は、不燃シート1に含まれる無機充填剤の粉落ちを防止する。印刷時や樹脂塗工時に不燃シート1に含まれる無機充填剤が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、印刷系内を汚染することがある。また、不燃シート1に含まれる無機充填剤が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。
また、第二アンカー層4は、不燃シート1と、プライマー層6との密着性を向上させるための機能も備えている。第二アンカー層4を備えない場合には、プライマー層6を形成する塗液が、不燃シート1に密着せずに剥離してしまうことがある。
また、第二アンカー層4は、例えば、第一アンカー層2と同様(材料、方法)に形成する。
【0040】
(プライマー層)
プライマー層6は、第二アンカー層4に積層されており、第二アンカー層4を間に挟んで、不燃シート1の裏面と対向している。
プライマー層6の材料としては、例えば、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることが可能である。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプ等特にその形態を問わない。また、硬化方法についても、単独で硬化する1液タイプ、主剤と合わせて硬化剤を使用する2液タイプ、紫外線や電子線等の照射により硬化させるタイプ等から適宜選択して用いることが可能である。一般的な硬化方法としては、ウレタン系の主剤に対して、イソシアネート系の硬化剤を合わせることによって硬化させる2液タイプが用いられており、この方法は作業性、価格、樹脂自体の凝集力の観点から好適である。上述したバインダー以外には、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤等が添加されている。
【0041】
特に、プライマー層6は、不燃性化粧板10の最背面に位置するため、不燃性化粧板10を連続的なプラスチックフィルム(ウエブ状)として巻き取りを行うことを考慮すると、フィルム同士が密着して滑りにくくなることや、剥がれなくなる等のブロッキングが生じることを避けるとともに、接着剤との密着を高めるために、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加してもよい。また、プライマー層6の厚さは、例えば、0.1[μm]以上3.0[μm]以下の範囲内とすることが好ましい。
【0042】
(化粧層)
化粧層8は、第一アンカー層2に積層されており、第一アンカー層2を間に挟んで、不燃シート1の表面と対向している。
また、化粧層8は、絵柄模様層8aと、トップコート層8bを備える。
【0043】
(絵柄模様層)
絵柄模様層8aは、第一アンカー層2に積層されている。具体的には、絵柄模様層8aは、図1において、第一アンカー層2の上側の面に積層されている。
絵柄模様層8aの材料としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないこと等から、例えば、飽和ポリエステル、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、あるいは、これらの混合物等からなるフィルム系基材を用いることが可能である。これらの材料は、未延伸の状態であっても、1軸又は2軸方向に延伸した状態のいずれの状態であってもよく、厚さとしては、25[μm]以上125[μm]以下の範囲内が適当である。また、絵柄模様層8aの材料としては、例えば、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系基材を用いることも可能である。
【0044】
絵柄模様層8aの坪量としては、例えば、23[g/m]以上100[g/m]以下の範囲内とする。これらのフィルム系基材又は紙質系基材は、必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の適宜の易接着処理を施してもよいものである。
また、絵柄模様層8aには、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄等の絵柄を、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等、周知の印刷法でインキを用いて形成する。インキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることが可能であるが、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくは、ポリエステル、イソシアネートとポリオールを含むポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合したものを用いる。
【0045】
(トップコート層)
トップコート層8bは、絵柄模様層8aに積層されている。具体的には、トップコート層8bは、図1において、絵柄模様層8aの上側の面に積層されている。
また、トップコート層8bは、絵柄模様層8aの保護、不燃性化粧板10に要求される耐汚染性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性等の表面物性を付与するために設けられるものである。
トップコート層8bを形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは、表面硬度が硬く、酸化した植物性や動物性の油が付着しても簡単に拭き取ることが可能であると共に、生産性においても優れる等の理由から、電離放射線硬化型樹脂である。
第1実施形態では、一例として、トップコート層8bを、電離放射線硬化型樹脂を用いて形成した場合について説明する。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は、紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源を用いることが可能である。紫外線の波長としては、190[nm]以上380[nm]以下の範囲内の波長域を使用することが可能である。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることが可能である。用いる電子線としては、100[keV]以上1000[keV]以下の範囲内、好ましくは100[keV]以上300[keV]以下の範囲内のものが使用される。電子線の照射量は、通常は2[Mrad]以上15[Mrad]以下の範囲内程度である。
【0047】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)を含む。これらの単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、あるいは、複数種混合して用いる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0048】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。アクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0049】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーを用いることが可能である。
【0050】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等を用いることが可能である。
【0051】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ-ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることが可能である。
【0052】
上述した電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内程度である。
【0053】
また、電離放射線硬化型樹脂でトップコート層8bを形成する方法としては、例えば、この電離放射線硬化型樹脂を塗布可能な粘度に調節し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することが可能である。塗布量としては、固形分として概ね3[g/m]以上15[g/m]以下の範囲内が適当である。
また、絵柄模様層8aとトップコート層8bとの間には、インキ用のプライマー層やトップコート層用のプライマー層を設け、層間の接着強度を向上させることが可能である。これらのプライマー層の形成は、第一アンカー層2に用いるポリオール成分とイソシアネート成分を含む2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、グラビア印刷法、ロールコート法等の周知の塗布方法で形成すればよいものである。インキ用のプライマー層やトップコート層用のプライマー層の、乾燥後の塗布量としては、0.1[g/m]以上5.0[g/m]以下の範囲内であり、好ましくは0.5[g/m]以上1.0[g/m]以下の範囲内である。
【0054】
なお、トップコート層8bには、不燃性化粧板10の耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤及び光安定化剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。さらに、表面の意匠性から艶の調整のため、あるいはさらに耐摩耗性を付与するために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加を添加してもよい。
また、上述したアンカー層(第一アンカー層2、第二アンカー層4)及び化粧層8の有機分質量は、150[g/m]以下であってもよい。アンカー層(第一アンカー層2、第二アンカー層4)及び化粧層8の有機分質量が上記数値範囲内であれば、不燃材料としての防火性能を有するため、内装制限を受ける用途に適合する不燃性化粧板10を提供することが可能となる。
【0055】
(不燃性化粧板10の製造方法)
以下、図1を参照して、第1実施形態の不燃シート1及び不燃性化粧板10の製造方法を説明する。
まず、不燃シート1の製造方法を説明する。
上述したポリオレフィン系樹脂組成物を原料とし、原料をTダイ法によってフィルム状に溶融成膜した後、少なくとも1軸延伸する。具体的には、ポリオレフィン系樹脂組成物を構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサを用いて予備混合した後、1軸又は2軸押出機で混練してペレット化する。次に、形成したペレットをTダイ型の成形機によって成膜することで、フィルムを形成する。そして、形成したフィルムを、1軸又は2軸延伸して、樹脂と無機充填剤との界面剥離を生じさせて多孔質化する。フィルムの延伸には、例えば、ロール法やテンター法を用いる。このようにして、不燃シート1を製造する。
【0056】
不燃シート1の成形温度は、従来の成形温度よりも低い温度である180℃以上220℃以下の範囲内とする。Tダイ法を用いた成形温度とポリオレフィン系樹脂組成物とを組み合わせることによって、成形中に、いわゆる目やに、焼けブツ、樹脂のゲル化物等の発生が抑制され、また、成形性が良好となる。なお、同じ成形温度の条件でポリオレフィン系樹脂組成物を原料としてインフレーション成形を行った場合、成形性は良好とはならない。また、成形温度は、180℃以上210℃以下の範囲内、特に、190℃以上210℃以下の範囲内であることが、成形に支障をきたす物質の発生が一層抑制され、また、成形性が一層良好になる点から好ましい。なお、成形温度は、Tダイにおける温度である。
【0057】
このようにして製造した不燃シート1は、ポリオレフィン系樹脂組成物を原料としていることから、全光線透過率が好ましくは50%以上という高い値となる。このような高い全光線透過率を示すにもかかわらず、不燃シート1は、透湿度が3600[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内という高い値となり、好ましくは、4000[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内、さらに好ましくは、5000[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内となる。このように、不燃シート1は、従来では同時に達成し得なかった高全光線透過率及び高透湿度を有するものである。なお、全光線透過率は、JIS K 7105に準じ、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズ・透過・反射率計HR-100を用いて測定される。また、透湿度は、JIS Z 0208に準じ、温度が30℃±0.5℃、湿度が90±2%RHの環境下で測定される。
【0058】
次に、不燃性化粧板10の製造方法を説明する。
まず、不燃シート1の表面に、第一アンカー層2を形成するためのインキを塗工して、第一アンカー層2を形成する。
次に、第一アンカー層2の不燃シート1と対向する面と反対側の面に、絵柄模様層8aを形成するためのインキを塗工して、絵柄模様層8aを形成する。
次に、絵柄模様層8aの第一アンカー層2と対向する面と反対側の面に、トップコート層8bを形成するためのインキを塗工して、トップコート層8bを形成する。
【0059】
次に、不燃シート1の裏面に、第二アンカー層4を形成するためのインキを塗工して、第二アンカー層4を形成する。
最後に、第二アンカー層4の不燃シート1と対向する面と反対側の面に、プライマー層6を形成するためのインキを塗工して、プライマー層6を形成することで、不燃性化粧板10を製造する。
なお、第二アンカー層4は、第一アンカー層2と同時に形成してもよい。
また、プライマー層6は、絵柄模様層8a及びトップコート層8bを形成する前に形成してもよい。この場合、第二アンカー層4は、第一アンカー層2よりも先に形成してもよい。
【0060】
(複合シート)
図1を参照しつつ、図2を用いて、複合シート20の構成について説明する。
複合シート20は、図2に示すように、不燃シート1と、不燃シート1の一方の面(図2では下側の面)に貼り合わせた繊維シート12を備える。なお、図2では、繊維シート12の厚さに合わせ、不燃シート1の厚さを図1とは異なる厚さで表している。
繊維シート12は、例えば、不織布等を用いて形成されている。
複合シート20の坪量は、10[g/m]以上35[g/m]以下の範囲内であり、好ましくは、15[g/m]以上30[g/m]以下の範囲内である。複合シート20の坪量が上述した範囲内であれば、シート強度、耐水性、柔軟性及び透湿性のバランスが良好となる。
【0061】
(吸収性物品)
図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、吸収性物品30の構成について説明する。
吸収性物品30は、表面シート31と、裏面シート32と、吸収体33を備える。
表面シート31は、液透過性を有している。
裏面シート32は、複合シート20であり、液不透過性を有している。
吸収体33は、表面シート31と裏面シート32との間に配置されている。
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0062】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の不燃シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含み、少なくとも1軸延伸されているとともに全光線透過率が50%以上であり、且つ透湿度が3600[g/(m・24h)]以上8400[g/(m・24h)]以下の範囲内であるとともに坪量が50[g/m]以上350[g/m]以下の範囲内である。また、ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6[g/10min]以上25[g/10min]以下の範囲内であり、且つメルトフローレシオが85以下である。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1[g/10min]以上5[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.920[g/cm]以上0.935[g/cm]以下の範囲内である線状低密度ポリエチレンを80質量%以上99質量%以下の範囲内で含む。これに加え、ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート6[g/10min]以上15[g/10min]以下の範囲内であり且つ密度が0.910[g/cm]以上0.930[g/cm]以下の範囲内である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%以上20質量%以下の範囲内で含む。
【0063】
その結果、高い透湿度を維持することが可能であるとともに、高い強度と柔軟性を有することが可能であるため、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な不燃シート1を提供することが可能となる。これにより、不燃シート1に発生する反りを抑制することが可能となる。
【0064】
(2)ポリオレフィン系樹脂に対して50質量%を超える無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
その結果、不燃シート1の強度を向上させることが可能となる。
(3)延伸倍率が、3.0倍以上6.0倍以下の範囲内である。
その結果、延伸により生じた空隙を用いて透湿性能を向上させることが可能となり、不燃シート1の透湿度を向上させることが可能となる。
【0065】
(4)無機充填剤が、炭酸カルシウムである。
その結果、不燃シート1の不燃性を向上させることが可能となる。
(5)ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む。
その結果、入手・加工が容易な材料を用いて不燃シート1を形成することが可能となるため、不燃シート1の生産性を向上させることが可能となる。
(6)線状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて形成されている。
その結果、成形性とシート物性、特に、透湿性と強度と柔軟性のバランスが良好な不燃シート1を形成することが可能となる。
【0066】
(7)無機充填剤は、比表面積が16000[cm/g]以上24000[cm/g]以下の範囲内である炭酸カルシウムを含む。
その結果、透湿性が高く耐水性も高い不燃シート1を形成することが可能となる。
また、第1実施形態の複合シート20であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(8)不燃シート1と、不燃シート1の一方の面に貼り合わせた繊維シート12を備える。
その結果、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な複合シート20を提供することが可能となる。
また、第1実施形態の吸収性物品30であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0067】
(9)液透過性を有する表面シート31と、液不透過性を有する裏面シート32と、表面シート31と裏面シート32との間に配置された液保持性を有する吸収体33を備える。これに加え、裏面シート32が、複合シート20である。
その結果、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な吸収性物品30を提供することが可能となる。
また、第1実施形態の不燃性化粧板10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0068】
(10)不燃シート1と、不燃シート1の少なくとも一方の面に積層されたアンカー層(第一アンカー層2、第二アンカー層4)と、アンカー層(第一アンカー層2)に積層された化粧層8を備える。これに加え、化粧層8が、硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層8bを備え、アンカー層及び化粧層8の有機分質量が、150[g/m]以下である。
その結果、不燃シート1にアンカー層を介して化粧層8を積層しているために、不燃性化粧板10を、表面平滑性を有する意匠性に優れた構成とすることが可能となる。さらに、化粧層8が硬化型樹脂を用いて形成されたトップコート層8bを備えているために、耐汚染性や耐擦傷性に優れた性能を有する構成とすることが可能となる。これに加え、アンカー層及び化粧層8の有機分質量が、150[g/m]以下とすることにより、不燃材料としての防火性能を有するため、内装制限を受ける用途に適合する不燃性化粧板10を提供することが可能となる。
【0069】
以上により、透湿性を有するとともに、強度を向上させることが可能な不燃性化粧板10を提供することが可能となる。
【0070】
(変形例)
(1)第1実施形態では、不燃シート1の表面に第一アンカー層2を形成し、不燃シート1の裏面に第二アンカー層4を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、不燃シート1の表面のみに第一アンカー層2を形成してもよい。
(2)第1実施形態では、不燃性化粧板10の構成を、第一アンカー層2に化粧層8を積層する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、不燃性化粧板10の構成を、第一アンカー層2と化粧層8との間に、第一アンカー層2と化粧層8との接着性(密着性)を向上させるための接着剤層を形成した構成としてもよい。
同様に、不燃性化粧板10の構成を、第二アンカー層4にプライマー層6を積層する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、不燃性化粧板10の構成を、第二アンカー層4とプライマー層6との間に、第二アンカー層4とプライマー層6との接着性(密着性)を向上させるための接着剤層を形成した構成としてもよい。
接着剤層の材料としては、一例として、加熱時に粘着性を示す材料、例えば、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー系樹脂等を主成分とする材料を用いることが可能である。
(3)第1実施形態では、吸収性物品30の構成を、裏面シート32が複合シート20である構成としたが、これに限定するものではなく、裏面シート32が不燃シート1である構成としてもよい。
【実施例
【0071】
第1実施形態を参照しつつ、以下、実施例の不燃性化粧板と、比較例の不燃性化粧板について説明する。
(実施例1)
以下の条件(A-1)から(G-1)を満足する材料及び方法を用いて、実施例1の不燃性化粧板を作製した。
(A-1).ポリオレフィン系樹脂に対して15質量%である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
(B-1).1.1倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
(C-1).全光線透過率が50%である。
(D-1).透湿度が3600[g/(m・24h)]である。
(E-1).坪量が50[g/m]である。
(F-1).ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが6[g/10min]であり、且つメルトフローレシオが85である。
(G-1).ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが1[g/10min]であり且つ密度が0.920[g/cm]である線状低密度ポリエチレンを80質量%で含み、メルトフローレートが6[g/10min]であり且つ密度が0.910[g/cm]である分岐状低密度ポリエチレンを20質量%で含む。
【0072】
(実施例2)
以下の条件(A-2)から(G-2)を満足する材料及び方法を用いて、実施例2の不燃性化粧板を作製した。
(A-2).ポリオレフィン系樹脂に対して90質量%である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
(B-2).1.1倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
(C-2).全光線透過率が50%である。
(D-2).透湿度が8400[g/(m・24h)]である。
(E-2).坪量が350[g/m]である。
(F-2).ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが25[g/10min]であり、且つメルトフローレシオが85である。
(G-2).ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが5[g/10min]であり且つ密度が0.935[g/cm]である線状低密度ポリエチレンを99質量%で含み、メルトフローレートが15[g/10min]であり且つ密度が0.930[g/cm]である分岐状低密度ポリエチレンを1質量%で含む。
【0073】
(実施例3)
以下の条件(A-3)から(G-3)を満足する材料及び方法を用いて、実施例3の不燃性化粧板を作製した。
(A-3).ポリオレフィン系樹脂に対して50質量%である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
(B-3).4.0倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
(C-3).全光線透過率が80%である。
(D-3).透湿度が6000[g/(m・24h)]である。
(E-3).坪量が200[g/m]である。
(F-3).ポリオレフィン系樹脂組成物は、温度が190℃の環境下において、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが19[g/10min]であり、且つメルトフローレシオが70である。
(G-3).ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが3[g/10min]であり且つ密度が0.930[g/cm]である線状低密度ポリエチレンを85質量%で含み、メルトフローレート11[g/10min]であり且つ密度が0.920[g/cm]である分岐状低密度ポリエチレンを15質量%で含む。
【0074】
(実施例4)
上述した条件(B-1)から(G-1)と、以下の条件(H)を満足する材料及び方法を用いて、実施例4の不燃性化粧板を作製した。
(H).ポリオレフィン系樹脂に対して80質量%である無機充填剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
【0075】
(実施例5)
上述した条件(A-1)、(C-1)から(G-1)と、以下の条件(I)を満足する材料及び方法を用いて、実施例5の不燃性化粧板を作製した。
(I).3.0倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
【0076】
(比較例1)
上述した条件(C-1)から(G-1)と、以下の条件(J-1)から(L-1)を満足する材料及び方法を用いて、比較例1の不燃性化粧板を作製した。
(J-1).ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して100質量部である無機充填剤及び1質量部であるポリエステルを含むポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
(K-1).2.8倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
(L-1).ポリエステルが、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数が14である一塩基酸である。
【0077】
(比較例2)
上述した条件(C-1)から(G-1)と、以下の条件(J-2)から(L-2)を満足する材料及び方法を用いて、比較例2の不燃性化粧板を作製した。
(J-2).ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して300質量部である無機充填剤及び30質量部であるポリエステルを含むポリオレフィン系樹脂組成物を含む。
(K-2).2.8倍の延伸倍率で1軸延伸されている。
(L-2).ポリエステルが、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数が22である一塩基酸である。
【0078】
(比較例3)
上述した条件(C-1)から(G-1)、(J-1)及び(K-1)と、以下の条件(M)を満足する材料及び方法を用いて、比較例3の不燃性化粧板を作製した。
(M).ポリエステルが、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数が12である一価アルコールである。
【0079】
(性能評価、評価結果)
実施例1から5の不燃性化粧板と、比較例1から3の不燃性化粧板に対し、それぞれ、不燃性試験、曲げ強度試験、引張強度試験、破断強度試験を行った。その結果を、表1に示す。
【0080】
<不燃性試験>
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、下記の要件1~3を満たしているか否かを評価した。
1.総発熱量が、8MJ/m以下である。
2.最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えない。
3.防炎上有害な、裏面まで貫通する亀裂及び穴が生じない。
なお、不燃性基材としては、石膏ボードを用いた。
【0081】
<曲げ強度試験>
ISO178に準拠した曲げ強度試験において、損傷が生じたか否かを評価した。
<引張強度試験>
ISO527―2/1B/5に準拠した引張強度試験において、損傷が生じたか否かを評価した。
<破断強度試験>
ISO527―2/1Aに準拠した破断強度試験において、損傷が生じたか否かを評価した。
【0082】
(評価基準)
◎:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に何ら不具合を生じない。
〇:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に著しい不具合を生じない。
△:各項目に対し、条件によってはシート作製又はシート加工に不具合を生じるが、使用する上での問題は無い。
×:各項目に対し、不具合を生じる。
なお、「×」の評価があるシートは、シート全体として不合格とした。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、実施例1から5の不燃性化粧板は、いずれの評価試験においても、優れた性能を示した。これに対し、比較例1から3の不燃性化粧板は、いずれの評価試験においても、実施例1から5の不燃性化粧板と比較して性能が劣る結果となった。
【符号の説明】
【0085】
1…不燃シート、2…第一アンカー層、4…第二アンカー層、6…プライマー層、8…化粧層、8a…絵柄模様層、8b…トップコート層、10…不燃性化粧板、12…繊維シート、20…複合シート、30…吸収性物品、31…表面シート、32…裏面シート、33…吸収体
図1
図2
図3