(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体製造用コーティング液
(51)【国際特許分類】
C09D 201/08 20060101AFI20241106BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241106BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241106BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241106BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C09D201/08
B32B27/18 Z
C09D7/61
C09D7/65
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020073993
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】前田 正貴
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲也
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-018806(JP,A)
【文献】特開2005-126528(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026672(WO,A1)
【文献】特開2018-053097(JP,A)
【文献】特開2014-094972(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061705(WO,A1)
【文献】特開2016-199722(JP,A)
【文献】国際公開第2008/068948(WO,A1)
【文献】特開2019-019206(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 27/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基含有重合体(A)、
多価金属の酸化物を含んだ多価金属含有粒子(B)、
燐酸基を有する高分子量分散剤(C)、及び有機溶媒(D)を含有し、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にあるガスバリア性積層体製造用コーティング液。
【請求項2】
前記多価金属含有粒子(B)の多価金属は二価の金属である請求項1に記載のコーティング液。
【請求項3】
前記多価金属含有粒子(B)は酸化亜鉛を含んだ請求項1又は2に記載のコーティング液。
【請求項4】
前記高分子量分散剤(C)はポリエーテル燐酸エステルを含んだ請求項1乃至3の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項5】
前記多価金属含有粒子(B)の量を100質量部とした場合、前記高分子量分散剤(C)の量は1乃至30質量部の範囲内にある請求項1乃至4の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項6】
前記カルボキシ基含有重合体(A)は数平均分子量が5,000乃至50,000の範囲内にある請求項1乃至5の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項7】
含水率が質量分率で50,000ppm以下である請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項8】
前記カルボキシ基含有重合体(A)が含んでいるカルボキシ基のモル数(At)に対する、前記多価金属含有粒子(B)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(Bt)の比が0.6以上である請求項1乃至7の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項9】
製造直後における第1平均粒径D1と、製造から25℃の温度条件下で8時間経過した時点での第2平均粒径D2とを測定した場合に、前記第2平均粒径D2と前記第1平均粒径D1との比D2/D1が0.8乃至1.3の範囲内にある請求項1乃至8の何れか1項に記載のコーティング液。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のコーティング液の硬化膜をコート層として含んだガスバリア性積層体。
【請求項11】
厚さが0.01乃至100μmの範囲内にあり、30℃及び相対湿度70%の条件下で測定した酸素透過度が1,000cm
3/(m
2・day・MPa)以下である請求項10に記載のガスバリア性積層体。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のガスバリア性積層体を含んだ包装材料。
【請求項13】
請求項12に記載の包装材料を含んだ包装体。
【請求項14】
請求項13に記載の包装体と、
前記包装体に収容された内容物と
を含んだ包装物品。
【請求項15】
高分子溶液(I)と多価金属分散液(II)とを混合して、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にある混合液を得ることを含み、
前記高分子溶液(I)は、カルボキシ基含有重合体(A)と、有機溶媒(D)とを含有し、
前記多価金属分散液(II)は、
多価金属の酸化物を含んだ多価金属含有粒子(B)と、
燐酸基を有する高分子量分散剤(C)と、有機溶媒(D)とを含有したガスバリア性積層体製造用コーティング液の製造方法。
【請求項16】
前記高分子溶液(I)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にあり、前記多価金属分散液(II)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にある請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法により前記コーティング液を製造することと、前記コーティング液からコート層を形成することとを含んだガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のコーティング液からコート層を形成することを含んだガスバリア性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品、農薬、及び工業製品等の物品は、長期間保存すると、酸素によって品質が劣化することがある。そのため、これらの物品の包装材料として、酸素ガスバリア性のあるフィルムやシートを使用している。
【0003】
そのような包装材料としては、従来、ガスバリア層としてアルミニウム箔を備えるものが多用されてきた。しかしながら、アルミニウム箔を含む包装材料を用いると、内容物が視認できず、その上、金属探知機が使用できない。そのため、特に食品分野や医薬品分野では、優れたガスバリア性を有し且つ透明な包装材料の開発が求められてきた。
【0004】
このような要求のもと、基材の上に、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含むコーティング液を塗工することによってPVDCからなる層を設けたガスバリア性積層体が使用されてきた。PVDCからなる層は、透明でガスバリア性がある。
【0005】
しかしながら、PVDCは焼却時にダイオキシンの発生が懸念される。そのため、PVDCから非塩素系材料への移行が求められた。このような要求のもと、例えば、PVDCに代わりポリビニルアルコール(PVA)系重合体を用いることが提案された。
【0006】
PVA系重合体からなる層は、水酸基の水素結合によって高密度化し、低湿度雰囲気下では高いガスバリア性を発揮する。しかし、PVA系重合体からなる層は、高湿度雰囲気下では吸湿によって水素結合が緩み、ガスバリア性が大きく低下するという問題がある。そのため、PVA系重合体からなる層をガスバリア層として用いたガスバリア性積層体は、水分を多く含む食品等の包装材料には用いることができない場合が多く、用途が乾燥物の包装材料などに限られていた。
【0007】
ガスバリア性を更に向上させることを目的として、PVA系重合体に無機層状化合物を添加することが提案された(特許文献1参照)。しかしながら、無機層状化合物を添加しても、PVA系重合体自体の耐水性が向上した訳ではないため、依然として高湿度雰囲気下でガスバリア性が低下する問題が残る。
【0008】
高湿度雰囲気下でのガスバリア性を改善するため、PVA系重合体と、これと架橋構造を形成し得る重合体とを含有するコーティング液を基材に塗布し、熱処理することにより、ガスバリア性積層体を製造することが提案されている(特許文献2乃至6参照)。
【0009】
しかしながら、これら技術で充分なガスバリア性を得るためには、コーティング液の塗工後の熱処理を、高温、例えば150℃以上で行って、架橋構造を形成させる必要がある。そのような熱処理は、基材の材質によっては、例えば、基材の材質がポリプロピレン(OPP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィンである場合、基材の激しい劣化を引き起こす。そのため、より穏和な条件で製造し得るガスバリア性積層体が求められる。
【0010】
ガスバリア層を形成する方法として、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸系重合体を含む層を形成し、該ポリカルボン酸系重合体を多価金属イオンでイオン架橋する方法も提案されている(特許文献7及び8参照)。
【0011】
この方法では、特許文献2乃至6に記載の方法で行う高温の熱処理は不要である。そのため、基材にポリオレフィンを用いることができる。また、得られたガスバリア層は、高湿度雰囲気下でもガスバリア性に優れている。それ故、このガスバリア層を含んだガスバリア性積層体は、ボイルやレトルト等の加熱殺菌処理を行う用途にも使用することができる。
【0012】
しかしながら、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物とをコーティング液中に共存させると、コーティング液中でポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物とが反応して沈殿が生じ易い。液中に沈殿が生じると、均一な膜が形成できなくなる。そのため、この方法では、ガスバリア層を形成する際に、ポリカルボン酸系重合体を含む層と多価金属化合物を含む層とを別々に形成するか、又は、ポリカルボン酸系重合体を含む層に多価金属塩の水溶液を接触させる。それ故、この方法には、より多くの工程が必要であるという問題がある。
【0013】
ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物粒子と界面活性剤と有機溶媒とを含んだコーティング液において、含水率を1000ppm以下とすることが提案されている(特許文献9参照)。このコーティング液では、含水率が1000ppm以下であるため、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平6-093133号公報
【文献】特開2000-289154号公報
【文献】特開2000-336195号公報
【文献】特開2001-323204号公報
【文献】特開2002-020677号公報
【文献】特開2002-241671号公報
【文献】国際公開第2003/091317号
【文献】国際公開第2005/053954号
【文献】特開2005-126528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献9に記載のコーティング液は、液中への水分の混入を防止するための管理を行う限り、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応に起因した沈殿は生じない。しかしながら、本発明者らは、このコーティング液は、別の理由で凝集物の沈降を生じ、その結果、高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を製造できない可能性があることを見出している。
【0016】
そこで、本発明は、コーティング液における凝集物の沈降に起因したガスバリア性の低下を生じ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1側面によると、カルボキシ基含有重合体(A)、多価金属の酸化物を含んだ多価金属含有粒子(B)、燐酸基を有する高分子量分散剤(C)、及び有機溶媒(D)を含有し、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にあるガスバリア性積層体製造用コーティング液が提供される。
【0018】
本発明の第2側面によると、前記多価金属含有粒子(B)の多価金属は二価の金属である第1側面に係るコーティング液が提供される。
【0019】
本発明の第3側面によると、前記多価金属含有粒子(B)は酸化亜鉛を含んだ第1又は第2側面に係るコーティング液が提供される。
【0020】
本発明の第4側面によると、前記高分子量分散剤(C)はポリエーテル燐酸エステルを含んだ第1乃至第3側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0021】
本発明の第5側面によると、前記多価金属含有粒子(B)の量を100質量部とした場合、前記高分子量分散剤(C)の量は1乃至30質量部の範囲内にある第1乃至第4側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0022】
本発明の第6側面によると、前記カルボキシ基含有重合体(A)は数平均分子量が5,000乃至50,000の範囲内にある第1乃至第5側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0023】
本発明の第7側面によると、含水率が質量分率で50,000ppm以下である第1乃至第6側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0024】
本発明の第8側面によると、前記カルボキシ基含有重合体(A)が含んでいるカルボキシ基のモル数(At)に対する、前記多価金属含有粒子(B)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(Bt)の比が0.6以上である第1乃至第7側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0025】
本発明の第9側面によると、製造直後における第1平均粒径D1と、製造から25℃の温度条件下で8時間経過した時点での第2平均粒径D2とを測定した場合に、前記第2平均粒径D2と前記第1平均粒径D1との比D2/D1が0.8乃至1.3の範囲内にある第1乃至第8側面の何れかに係るコーティング液が提供される。
【0026】
本発明の第10側面によると、第1乃至第9側面の何れかに係るコーティング液の硬化膜をコート層として含んだガスバリア性積層体が提供される。
【0027】
本発明の第11側面によると、厚さが0.01乃至100μmの範囲内にあり、30℃及び相対湿度70%の条件下で測定した酸素透過度が1,000cm3/(m2・day・MPa)以下である第10側面に係るガスバリア性積層体が提供される。
【0028】
本発明の第12側面によると、第10又は第11側面に係るガスバリア性積層体を含んだ包装材料が提供される。
【0029】
本発明の第13側面によると、第12側面に係る包装材料を含んだ包装体が提供される。
【0030】
本発明の第14側面によると、第13側面に係る包装体と、前記包装体に収容された内容物とを含んだ包装物品が提供される。
【0031】
本発明の第15側面によると、高分子溶液(I)と多価金属分散液(II)とを混合して、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にある混合液を得ることを含み、前記高分子溶液(I)は、カルボキシ基含有重合体(A)と、有機溶媒(D)とを含有し、前記多価金属分散液(II)は、多価金属の酸化物を含んだ多価金属含有粒子(B)と、燐酸基を有する高分子量分散剤(C)と、有機溶媒(D)とを含有したガスバリア性積層体製造用コーティング液の製造方法が提供される。
【0032】
本発明の第16側面によると、前記高分子溶液(I)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にあり、前記多価金属分散液(II)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にある第15側面に係る製造方法が提供される。
【0033】
本発明の第17側面によると、第15又は第16側面に係る方法により前記コーティング液を製造することと、前記コーティング液からコート層を形成することとを含んだガスバリア性積層体の製造方法が提供される。
【0034】
本発明の第18側面によると、第1乃至第9側面の何れかに係るコーティング液からコート層を形成することを含んだガスバリア性積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、コーティング液における凝集物の沈降に起因したガスバリア性の低下を生じ難くすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。
【0037】
<ガスバリア性積層体製造用コーティング液>
本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体製造用コーティング液(以下、単にコーティング液ともいう)は、カルボキシ基含有重合体(A)、多価金属含有粒子(B)、酸性基を有する高分子量分散剤(C)、及び有機溶媒(D)を含有し、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にあることを特徴とする。
【0038】
〔カルボキシ基含有重合体(A)〕
上記コーティング液で使用するカルボキシ基含有重合体は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体であり、「ポリカルボン酸系重合体」と呼ばれることがある。カルボキシ基含有重合体としては、カルボキシ基含有不飽和単量体の単独重合体、2種以上のカルボキシ基含有不飽和単量体の共重合体、カルボキシ基含有不飽和単量体と他の重合性単量体との共重合体、及び分子内にカルボキシ基を含有する多糖類(「カルボキシ基含有多糖類」又は「酸性多糖類」ともいう)が代表的なものである。
【0039】
カルボキシ基には、遊離のカルボキシ基のみならず、酸無水物基(具体的には、ジカルボン酸無水物基)も含まれる。酸無水物基は、部分的に開環してカルボキシ基となっていてもよい。カルボキシ基の一部は、アルカリで中和されていてもよい。この場合、中和度は、20%以下であることが好ましい。
【0040】
ここで、「中和度」は、以下の方法によって得られる値である。即ち、カルボキシ基含有重合体(A)に対してアルカリ(E)を添加することでカルボキシ基を部分中和できる。この時、カルボキシ基含有重合体(A)が含んでいるカルボキシ基のモル数(At)に対するアルカリ(E)のモル数(Et)の比が中和度である。
【0041】
また、ポリオレフィンなどのカルボキシ基を含有していない重合体にカルボキシ基含有不飽和単量体をグラフト重合してなるグラフト重合体も、カルボキシ基含有重合体として使用することができる。アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基)のような加水分解性のエステル基を有する重合体を加水分解して、カルボキシ基に変換した重合体を使用することもできる。
【0042】
カルボキシ基含有不飽和単量体としては、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸が好ましい。従って、カルボキシ基含有重合体には、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種以上のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、及びα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他の重合性単量体との共重合体が含まれる。他の重合性単量体としては、エチレン性不飽和単量体が代表的なものである。
【0043】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸及び無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物;並びに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸がより好ましい。
【0044】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他の重合性単量体、特にエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどのα-オレフィン;酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類;アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルなどのアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどの塩素含有ビニル単量体;フッ化ビニル及びフッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニル単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;スチレン及びα-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;並びに、イタコン酸アルキルエステル類を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、カルボキシ基含有重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体である場合は、この共重合体をケン化して飽和カルボン酸ビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換してなる共重合体も使用することができる。
【0045】
カルボキシ基含有多糖類としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、及びペクチンなどの分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類を挙げることができる。これらの酸性多糖類は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、酸性多糖類を、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体と組み合わせて使用することもできる。
【0046】
カルボキシ基含有重合体が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、得られるフィルムのガスバリア性、耐熱水性、及び耐水蒸気性の観点から、その共重合体において、それら単量体の合計モル数に占めるα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体のモル数の割合は、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0047】
カルボキシ基含有重合体は、ガスバリア性、耐湿性、耐水性、耐熱水性、及び耐水蒸気性に優れ、高湿条件下でのガスバリア性にも優れたフィルムが得られやすい点で、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみの重合によって得られる単独重合体又は共重合体であることが好ましい。カルボキシ基含有重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる(共)重合体の場合、その好ましい具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合によって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物である。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体及び共重合体がより好ましい。
【0048】
カルボキシ基含有重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びこれらの2種以上の混合物が特に好ましい。酸性多糖類としては、アルギン酸が好ましい。これらの中でも、入手が比較的容易で、諸物性に優れたフィルムが得られやすい点で、ポリアクリル酸が特に好ましい。
【0049】
カルボキシ基含有重合体の数平均分子量は、例えば、200,000以下とする。この数平均分子量は、100,000以下であることが好ましく、90,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることがより好ましく、70,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。
【0050】
カルボキシ基含有重合体は、数平均分子量が大きすぎると、凝集剤として作用する。その結果、コーティング液全体がゲル化するか、又は、コーティング液中に沈殿物が生成する可能性がある。ゲル化又は沈殿物を生じたコーティング液は、塗膜の形成に使用できないか、又は、塗膜の形成に使用できたとしても、膜厚及び組成が均一な塗膜を形成することを極めて困難とする。そして、膜厚及び組成が不均一な塗膜から得られるコート層も、膜厚及び組成が不均一となり、ガスバリア性や機械的物性などの面内均一性が不十分となる。
【0051】
カルボキシ基含有重合体の数平均分子量は、2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、4,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。
【0052】
カルボキシ基含有重合体の数平均分子量が小さすぎると、コーティング液の粘度が低くなる。その結果、塗工後の乾燥工程において、コーティング液内で対流(マランゴニ対流)が発生し、膜厚及び組成が均一な塗膜を形成することは極めて困難となる。そのため、得られるコート層の面内均一性が不十分となり、安定したガスバリア性や機械的物性を得ることが困難となる。また、カルボキシ基含有重合体の数平均分子量が小さすぎると、コーティング液により形成した塗膜の破壊応力が低くなり、加工時に塗膜にクラックが発生する危険性が高くなる。クラックが発生した塗膜は所望のガスバリア性や機械的物性を発現することが極めて困難となる。
【0053】
ここで、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による測定によって得られる値である。GPC測定では、一般に、標準ポリスチレン換算で重合体の数平均分子量を測定する。
【0054】
〔多価金属含有粒子(B)〕
上記コーティング液で使用する多価金属含有粒子は、金属イオンの価数が2以上の多価金属を1種以上含んだ粒子である。多価金属含有粒子は、金属イオンの価数が2以上の多価金属からなる粒子であってもよく、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物からなる粒子であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0055】
多価金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、及びカルシウムなどの短周期型周期表2A族の金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛などの遷移金属;並びにアルミニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0056】
多価金属は、2価の金属であることが好ましい。また、多価金属は、化合物を形成していることが好ましい。
【0057】
多価金属の化合物の具体例としては、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、及び無機酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。無機酸塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩を挙げることができるが、これらに限定されない。多価金属のアルキルアルコキシドも多価金属化合物として使用することができる。これらの多価金属化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
多価金属化合物の中でも、コーティング液の分散安定性とコーティング液から形成される積層体のガスバリア性の観点から、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの化合物が好ましく、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、コバルト、及びニッケルなどの2価金属の化合物がより好ましい。
【0059】
好ましい2価金属化合物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化ニッケル、及び酸化コバルトなどの酸化物;炭酸カルシウムなどの炭酸塩;乳酸カルシウム、乳酸亜鉛、及びアクリル酸カルシウムなどの有機酸塩;並びにマグネシウムメトキシドなどのアルコキシドを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
多価金属又は多価金属化合物は、粒子として用いられ、コーティング液中でも粒子形状が維持される。多価金属含有粒子の平均粒子径は、コーティング液の分散安定性及びコーティング液から形成される積層体のガスバリア性の観点から、コーティング液中の平均粒子径として、10nm乃至10μm(又は10,000nm)の範囲内にあることが好ましく、12nm乃至1μm(又は1,000nm)の範囲内にあることがより好ましく、15nm乃至500nmの範囲内にあることが更に好ましく、15nm乃至50nmの範囲内にあることが特に好ましい。
【0061】
コーティング液中での多価金属含有粒子の平均粒子径が大きすぎると、得られるコート層の膜厚の均一性、表面の平坦性、カルボキシ基含有重合体とのイオン架橋反応性などが不十分となり易い。多価金属含有粒子の平均粒子径が小さすぎると、カルボキシ基含有重合体とのイオン架橋反応が早期に進行するおそれがある。また、粒径が10nm未満の超微粒子は、コーティング液中に均一分散させることが困難である。
【0062】
多価金属含有粒子の平均粒子径は、試料が乾燥した固体である場合には、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて計測と計数とを行うことにより測定することができる。コーティング液中の多価金属含有粒子の平均粒子径は、光散乱法により測定することができる〔参考文献:「微粒子工学体系」第I巻、第362~365頁、フジテクノシステム(2001)〕。
【0063】
コーティング液中における多価金属含有粒子は、一次粒子、二次粒子、又はこれらの混合物として存在するが、多くの場合、平均粒子径からみて二次粒子として存在するものと推定される。
【0064】
〔高分子量分散剤(C)〕
上記のコーティング液では、多価金属含有粒子の分散性を高めるため、分散剤を使用する。このコーティング液で使用する分散剤は、酸性基を有する高分子量分散剤である。
【0065】
分散剤は、界面活性剤である。界面活性剤とは、分子内に親水性基と親油性基の両方を持つ化合物である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、及び両性のイオン性界面活性剤並びに非イオン性界面活性剤がある。上記コーティング液では、高分子量分散剤として、アニオン性若しくは非イオン性界面活性剤又はそれらの組み合わせを使用する。
【0066】
アニオン系界面活性剤には、例えば、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、及び燐酸エステル型がある。カルボン酸型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、及びN-アシルグルタミン酸塩がある。スルホン酸型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びN-メチル-N-アシルタウリン酸塩が挙げられる。硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び油脂硫酸エステル塩が挙げられる。燐酸エステル型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩が挙げられる。
【0067】
非イオン性の界面活性剤としては、例えば、エステル型がある。エステル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びしょ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
【0068】
これらの界面活性剤の中でも、燐酸エステルなどの燐酸基を有する界面活性剤が好ましく、ポリエーテル燐酸エステルが特に好ましい。
【0069】
高分子量分散剤(界面活性剤)は、数平均分子量が2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが更に好ましい。分散剤の分子量が小さすぎると、コーティング液中に多価金属含有粒子を安定に分散させることが難しい。
【0070】
高分子量分散剤(界面活性剤)は、数平均分子量が300,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることが更に好ましい。分散剤の分子量が過剰に大きいと、分散時の粒子の十分な微細化ができず、塗膜の透明性が低下する。
【0071】
酸性基を有する分散剤は、多価金属と結合し易い。また、ここで使用する分散剤は、高分子量であるので、多価金属含有粒子の分散状態を安定に保つ能力が高い。従って、酸性基を有する高分子量分散剤を使用すると、多価金属含有粒子が均一に分布した状態を実現できるとともに、その状態を長時間に亘って維持することができる。
【0072】
〔有機溶媒(D)〕
上記のコーティング液では、溶媒又は分散媒として有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、一般に、カルボキシ基含有重合体を溶解する極性有機溶媒が用いられるが、極性有機溶媒とともに、極性基(ヘテロ原子又はヘテロ原子を有する原子団)をもたない有機溶媒を併用してもよい。
【0073】
好ましく使用できる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、及びn-ブタノールなどのアルコール類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチル燐酸トリアミド、並びにγ-ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を挙げることができる。
【0074】
上記の極性有機溶媒の他に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタンなどの炭化水素類;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類;ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸メチルなどのエステル類;並びにジエチルエーテルなどのエーテル類を適宜用いることができる。極性基を持たないベンゼンなどの炭化水素類は、一般に、極性有機溶媒と併用する。
【0075】
上記のコーティング液は、溶媒又は分散媒として、有機溶媒のみを含んでいてもよいが、水を更に含んでもよい。水を含有させることにより、カルボキシ基含有重合体の溶解性を向上させ、コーティング液の塗工性や作業性を改善することができる。このコーティング液の含水率は、質量分率で、100ppm以上であってもよく、1,000ppm以上であってもよく、1,500ppm以上であってもよく、2,000ppm以上であってもよい。
【0076】
このコーティング液は、数平均分子量が小さなカルボキシ基含有重合体を使用した場合、数平均分子量が大きなカルボキシ基含有重合体を使用したコーティング液では沈殿又はゲル化を生じるような含水率であっても、沈殿又はゲル化を生じ難い。このコーティング液の含水率は、質量分率で、好ましくは50,000ppm以下、より好ましくは30,000ppm以下、更に好ましくは10,000ppm以下、特に好ましくは5,000ppm以下である。
【0077】
〔組成〕
上記のコーティング液は、カルボキシ基含有重合体(A)、多価金属含有粒子(B)、高分子量分散剤(C)、及び有機溶媒(D)を含有し、多価金属含有粒子が分散している分散液である。
【0078】
カルボキシ基含有重合体(A)が含んでいるカルボキシ基のモル数(At)に対する、多価金属含有粒子(B)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(Bt)の比(以下、当量比ともいう)は、0.6以上であることが好ましい。この比は、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上である。この比の上限は、通常は10.0、好ましくは2.0である。この比を小さくしすぎると、コーティング液からコート層を形成した積層体のガスバリア性、耐熱水性、及び耐水蒸気性などの諸特性が低下する。
【0079】
上記の当量比は、例えば、以下のようにして求めることができる。カルボキシ基含有重合体がポリアクリル酸であり、多価金属化合物が酸化マグネシウムである場合を例に挙げて説明する。
【0080】
ポリアクリル酸は、単量体単位の分子量が72であり、単量体1分子当たり1個のカルボキシ基を有する。それ故、ポリアクリル酸100g中のカルボキシ基の量は、1.39モルである。ポリアクリル酸100gを含んだコーティング液における上記の当量比が1.0であるということは、このコーティング液には、1.39モルのカルボキシ基を中和する量の酸化マグネシウムが含まれていることを意味する。従って、ポリアクリル酸100gを含んだコーティング液における上記の当量比を0.6とするには、このコーティング液に、0.834モルのカルボキシ基を中和する量の酸化マグネシウムを添加すればよい。ここで、マグネシウムの価数は2価であり、酸化マグネシウムの分子量は40である。従って、ポリアクリル酸100gを含んだコーティング液における上記の当量比を0.6とするには、このコーティング液に、16.68g(0.417モル)の酸化マグネシウムを添加すればよい。
【0081】
有機溶媒は、カルボキシ基含有重合体が均一に溶解し且つ多価金属含有粒子が均一に分散するに足る量で用いられる。従って、有機溶媒としては、カルボキシ基含有重合体は溶解するが、多価金属化合物を実質的に溶解せず、それを粒子の形状で分散させることができるものが用いられる。
【0082】
高分子量分散剤は、多価金属含有粒子が安定して分散するに足る量で用いられる。コーティング液中の高分子量分散剤の量は、多価金属含有粒子の量を100質量部とした場合、好ましくは1乃至30質量部、より好ましくは5乃至25重量部、更に好ましくは10乃至20質量部の範囲内とする。
【0083】
高分子量分散剤の量が少なすぎると、コーティング液中で多価金属含有粒子をそれらの平均粒子径が十分に小さくなるように分散させることが困難になる。その結果、多価金属含有粒子が均一に分散したコーティング液を得ることが難しく、基材上に塗布するとき、膜厚が均一な塗膜を形成することが難しくなる。
【0084】
また、高分子量分散剤の量が少なすぎると、コーティング液中で多価金属含有粒子の凝集や沈降を生じ易い。それ故、コーティング液の塗工への使用を開始した直後と、塗工を繰り返してコーティング液の残量が少なくなった時点とで、塗膜に含まれる多価金属含有粒子の量に大きな相違を生じ得る。その結果、コーティング液の塗工への使用を開始した直後に製造したガスバリア性積層体と、コーティング液の残量が少なくなったときに製造したガスバリア性積層体との間で、ガスバリア性に大きな相違を生じる可能性がある。
【0085】
高分子量分散剤の量が多すぎると、コーティング液中での粒子の分散安定性の低下や、塗膜のガスバリア性の低下の要因となる。
【0086】
コーティング液は、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にある。コーティング液の25℃におけるpHは、4.5乃至6の範囲内にあることが好ましい。pHが低すぎると、コーティング液の製造直後に凝集物の沈降を生じる可能性がある。pHが高すぎると、コーティング液の製造直後に凝集物の沈降を生じるか、又は、コーティング液の製造から一定時間経過後に凝集物の沈降を生じ、高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を製造することができなくなる。
【0087】
〔コーティング液の製造方法〕
コーティング液を製造するには、一方で、カルボキシ基含有重合体(A)を有機溶媒(D)に均一に溶解させた高分子溶液(I)を調製する。例えば、市販のポリアクリル酸を出発原料として用いる場合には、ポリアクリル酸を有機溶媒(D)に均一に溶解させて、ポリアクリル酸溶液を調製する。
【0088】
そして、他方で、多価金属含有粒子(B)、高分子量分散剤(C)、有機溶媒(D)を混合し、必要に応じて分散処理を施すことで多価金属分散液(II)を調製する。分散処理は、多価金属含有粒子(B)の平均粒子径が所定の値となるように行われる。分散処理前の混合液中の多価金属含有粒子(B)の平均粒子径が10μm以下である場合は、分散処理は行わなくてもよいが、その場合でも、分散処理を行うことが好ましい。分散処理を行うことで多価金属含有粒子(B)の凝集が解け、コーティング液が安定化すると共に、コーティング液を塗工して得られるガスバリア性積層体の透明性が高まる。更には、コーティング液を塗工し、塗膜を乾燥させたときに、カルボキシ基含有重合体と多価金属イオンとの架橋形成が進み易くなり、良好なガスバリア性を有するガスバリア性積層体が得られ易い。
【0089】
分散処理の方法としては、高速撹拌機、ホモジナイザー、ボールミル、又はビーズミルを用いる方法が挙げられる。特に、ボールミル又はビーズミルを用いて分散を行うと、高い効率で分散させることができ、それ故、分散状態が安定なコーティング液を比較的短時間で得ることができる。この場合、ボール又はビーズの径は小さいものがよく、0.1乃至1mmであることが好ましい。
【0090】
以上のようにして調製した高分子溶液(I)と多価金属分散液(II)とを混合することにより、コーティング液を作製することができる。
【0091】
高分子溶液(I)は、25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にあることが好ましく、4乃至6の範囲内にあることがより好ましい。多価金属分散液(II)は、25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にあることが好ましく、4乃至7の範囲内にあることがより好ましい。そして、高分子溶液(I)の25℃におけるpHと、多価金属分散液(II)の25℃におけるpHとの差の絶対値は、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0092】
上記のようにpHを設定した場合、高分子溶液(I)と多価金属分散液(II)とを混合した場合に、カルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とを均一に分布させ、ガスバリア性積層体のコート層における架橋密度のばらつきを小さくすることができる。それ故、架橋密度が小さい部分が存在することに起因したガスバリア性の低下を生じ難くすることができる。
【0093】
上記のコーティング液は、有機溶媒以外の成分の合計濃度が、好ましくは0.1乃至60質量%、より好ましくは0.5乃至25質量%、特に好ましくは1乃至10質量%の範囲内にあることが、所望の膜厚の塗膜及びコート層を高い作業性で得るうえで好ましい。
【0094】
上記のコーティング液には、必要に応じて、他の重合体、増粘剤、安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、柔軟剤、無機層状化合物(例えば、モンモリロナイト)、及び着色剤(染料、顔料)などの各種添加剤を含有させることができる。また、上記のコーティング液には、分散剤として、酸性基を有する高分子量分散剤(C)に加えて、ポリアミンなどの他の分散剤を更に含有させることもできる。
【0095】
このようにして得られるコーティング液では、カルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とは均一に分布しており、この状態は、上記の高分子量分散剤と所定の範囲内のpHとの組み合わせによって保たれる。即ち、このコーティング液は、製造直後において凝集物の沈降を生じず、この状態を、製造から一定時間経過後においても維持する。
【0096】
例えば、このコーティング液について、製造直後における第1平均粒径D1と、製造から25℃の温度条件下で8時間経過した時点での第2平均粒径D2とを測定した場合に、第2平均粒径D2と第1平均粒径D1との比D2/D1は、好ましくは、0.8乃至1.3の範囲内にある。なお、ここで、「平均粒径」は、動的光散乱法によって得られる値である。
【0097】
従って、このコーティング液を使用した場合、コーティング液における凝集物の沈降に起因したガスバリア性の低下を生じ難い。
【0098】
<ガスバリア性積層体>
本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体は、基材と、この基材の少なくとも一方の面上に設けられたガスバリア層とを備え、ガスバリア層が、上記のコーティング液の硬化膜をコート層として含むことを特徴とする。
【0099】
〔基材〕
上記のガスバリア性積層体における基材に特に制限はなく、様々な種類のものが使用できる。
【0100】
基材を構成する材質は、特に限定されず、様々な種類のものが使用でき、例えばプラスチック又は紙が挙げられる。
【0101】
基材は、単一の材料からなる単層であってもよく、複数の材料からなる多層であってもよい。多層の基材の例としては、プラスチックから構成されるフィルムが紙にラミネートされたものが挙げられる。
【0102】
基材を構成する材質としては、上記の中でも、様々な形状に成形でき、ガスバリア性を付与することで更に用途が広がることから、プラスチックが好ましい。
【0103】
プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12、メタキシリレンアジパミド、及びこれらの共重合体等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、及びスチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリカーボネート;ポリアリレート;再生セルロース;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルケトン;並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0104】
ガスバリア性積層体が食品用包装材料に用いられる場合、基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン-6又はナイロン-66からなるものが好ましい。
【0105】
基材を構成するプラスチックとして、1種を単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0106】
プラスチックには、添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、用途に応じて、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、及び滑剤等の公知の添加剤から適宜選択できる。添加剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
基材の形態は、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、カップ、トレー、チューブ、及びボトルが挙げられる。これらの中でも、フィルムが好ましい。
【0108】
基材がフィルムである場合、このフィルムは、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。
【0109】
フィルムの厚さに特に制限はないが、得られるガスバリア性積層体の機械的強度や加工適性の観点で、1乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至100μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0110】
基材の表面には、コーティング液を、基材によって弾かれることなく塗布できるようにするために、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、火炎処理、又は紫外線(UV)若しくは電子線によるラジカル活性化処理等が施されていてもよい。処理方法は、基材の種類によって適宜選択される。
【0111】
〔コート層〕
コート層は、上記のコーティング液の硬化膜である。即ち、コート層は、上記のコーティング液から形成されたもの、具体的には、上記のコーティング液を基材上に塗工し、塗膜を乾燥させてなるものである。このコート層は、上述したように、多価金属イオンでイオン架橋されたカルボキシ基含有重合体を含んでおり、高湿度雰囲気下でも優れたガスバリア性を発揮する。
【0112】
コート層は、基材の一方の面に設けられてもよく、双方の面に設けられてもよい。
コート層は、基材の表面に直接設けられてもよく、基材上に設けられた他の1以上の層(例えばアンカーコート層)の表面に設けられてもよい。
コート層の形成方法については後で詳細に説明する。
【0113】
コート層の厚さは、特に限定されないが、ガスバリア性積層体の形成時の成形性、ハンドリングの観点で、0.01乃至100μmの範囲内にあることが好ましく、0.1乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、0.1乃至0.5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0114】
〔他の層〕
上記のガスバリア性積層体は、必要に応じて、基材及びコート層以外の他の1以上の層を更に備えていてもよい。
【0115】
例えば、ガスバリア性積層体のガスバリア層は、コート層のみからなるものであってもよいが、コート層に加えて他の1以上の層を更に含んでいてもよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及びアルミニウム等の無機化合物からなる層が、基材の表面に、スパッタリング法又はイオンプレーディング法等により形成されていてもよい。
【0116】
ガスバリア性積層体は、基材とコート層との密着性を高めること、及び、コーティング液を基材に弾かれずに塗れるようにすることを目的として、基材とコート層との間に、アンカーコート層を更に備えていてもよい。
【0117】
アンカーコート層は、公知のアンカーコート剤を用いて常法により形成することができる。
【0118】
アンカーコート剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、及びフッ素樹脂等の樹脂を含むものが挙げられる。
【0119】
アンカーコート剤は、樹脂に加えて、密着性や耐熱水性を高める目的で、イソシアネート化合物を更に含んでもよい。イソシアネート化合物は、分子中に1以上のイソシアネート基を有するものであればよく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びトリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0120】
アンカーコート剤は、樹脂やイソシアネート化合物を溶解又は分散させるための液体媒体を更に含有してもよい。
アンカーコート層の厚みは特に限定されない。
【0121】
ガスバリア性積層体は、必要に応じて、基材上に設けられたコート層上に、又はコート層が設けられない基材の表面上に、接着剤を介してラミネートされた他の層を更に備えていてもよく、接着性樹脂を押し出しラミネートしてなる他の層を更に備えていてもよい。
【0122】
ラミネートされる他の層は、強度付与、シール性付与、シール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与、及び防湿性付与等の目的に合わせて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、基材について上述したプラスチックと同様の材質のものを挙げることができる。それ以外にも、紙やアルミ箔等を用いてもよい。
【0123】
ラミネートされる他の層の厚みは、1乃至1000μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至500μmの範囲内にあることがより好ましく、5乃至200μmの範囲内にあることが更に好ましく、5乃至150μmの範囲内にあることが特に好ましい。
ラミネートされる他の層は1種でも2種以上でもよい。
【0124】
ガスバリア性積層体は、必要に応じて、印刷層を更に備えていてもよい。印刷層は、基材上に設けられたコート層上に形成されてもよく、コート層が設けられていない基材の表面上に形成されてもよい。また、他の層がラミネートされる場合は、ラミネートされる他の層の上に形成されてもよい。
【0125】
〔ガスバリア性積層体の製造方法〕
ガスバリア性積層体は、基材上に、上記のコーティング液を塗工し、塗膜を乾燥させることによりコート層を形成する工程を含む製造方法により製造することができる。この製造方法は、必要に応じて、コート層を形成する工程の前及び/又は後に、他の層をラミネートする工程及び印刷層を形成する工程等を更に含むことができる。
【0126】
コーティング液の塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
【0127】
塗膜の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、及び、コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、又は赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。
【0128】
乾燥条件は、乾燥方法等により適宜選択することできる。例えば、オーブン中で乾燥させる方法においては、乾燥温度は、40乃至150℃の範囲内にあることが好ましく、45乃至150℃の範囲内にあることがより好ましく、50乃至140℃の範囲内にあることが特に好ましい。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、0.5秒乃至~10分の範囲内にあることが好ましく、1秒乃至5分の範囲内にあることがより好ましく、1秒乃至1分の範囲内にあることが特に好ましい。
【0129】
乾燥中又は乾燥後に、塗膜中に含まれるカルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とが反応して、イオン架橋構造が導入されると推定される。イオン架橋反応を十分に進行させるには、乾燥後のフィルムを、好ましくは20%以上、より好ましくは40乃至100%の範囲内の相対湿度の雰囲気中、好ましくは5乃至200℃、より好ましくは20乃至150℃の範囲内の温度条件下で、1秒乃至10日程度熟成させることが好ましい。
【0130】
このようにして得られるガスバリア性積層体は、イオン架橋しているため、耐湿性、耐水性、耐熱水性、及び耐水蒸気性に優れている。そして、このガスバリア性積層体は、低湿条件下はもとより、高湿条件下でのガスバリア性にも優れている。このガスバリア性積層体は、JIS K-7126 B法(等圧法)及びASTM D3985に記載された方法に準拠して、30℃及び相対湿度70%の条件下で測定した酸素透過度が、好ましくは1,000cm3/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは500cm3/(m2・day・MPa)以下、特に好ましくは100cm3/(m2・day・MPa)以下である。酸素透過度は、低いほど好ましい。酸素透過度の下限は、特に限定はないが、通常は0.1cm3/(m2・day・MPa)以上である。
【0131】
上記の通り、このコーティング液では、カルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とが均一に分布しており、この状態は、コーティング液の製造から一定時間経過後においても保たれる。それ故、このコーティング液を使用した場合、コーティング液の塗工への使用を開始した直後と、塗工を繰り返してコーティング液の残量が少なくなった時点とで、塗膜に含まれる多価金属含有粒子の量に大きな相違が生じるのを防止できる。従って、ガスバリア性が不十分なガスバリア性積層体が製造されるのを防止できる。このように、上記のコーティング液を使用すると、コーティング液における凝集物の沈降に起因したガスバリア性の低下を生じ難い。
【0132】
<包装材料、包装体及び包装物品>
本発明の実施形態に係る包装材料は、上記のガスバリア性積層体を含むものである。この包装材料は、例えば、物品を包装する包装体の製造に使用する。
【0133】
本発明の実施形態に係る包装体は、上記の包装材料を含むものである。
この包装体は、上記の包装材料からなるものであってもよく、上記の包装材料と他の部材とを含むものであってもよい。前者の場合、包装体は、例えば、上記の包装材料を袋状に成形したものである。後者の場合、包装体は、例えば、蓋体としての上記包装材料と、有底筒状の容器本体とを含んだ容器である。
【0134】
この包装体において、上記の包装材料は、成形品であってもよい。この成形品は、上記の通り、袋などの容器であってもよく、蓋体などの容器の一部であってもよい。包装体又はその一部の具体例としては、製袋品、スパウト付きパウチ、ラミネートチューブ、輸液バッグ、容器用蓋材、及び紙容器が挙げられる。
【0135】
この包装体には、適用される用途に特に制限はない。この包装体は、様々な物品の包装に使用することができる。
【0136】
本発明の実施形態に係る包装物品は、上記の包装体と、これに収容された内容物とを含むものである。
【0137】
上述した通り、上記のガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性を有する。そのため、このガスバリア性積層体を含んだ包装材料及び包装体は、それぞれ、酸素及び水蒸気等の影響により劣化し易い物品のための包装材料及び包装体として、特には食品用包装材料及び食品用包装体として好ましく用いられる。これら包装材料及び包装体は、それぞれ、農薬や医薬などの薬品、医療用具、機械部品、及び精密材料などの産業資材を包装するための包装材料及び包装体としても好ましく用いることができる。
【0138】
上記のガスバリア性積層体は、ボイル処理及びレトルト処理等の加熱殺菌処理を施したときに、ガスバリア性や層間密着性が劣化せず、逆に高まる傾向にある。そのため、これら包装材料及び包装体は、それぞれ、加熱殺菌用包装材料及び加熱殺菌用包装体であってもよい。
【0139】
加熱殺菌用包装材料及び加熱殺菌用包装体は、包装後に加熱殺菌処理が行われる物品の包装に用いられる。
包装後に加熱殺菌処理が行われる物品としては、例えば、カレー、シチュー、スープ、ソース、及び畜肉加工品等の食品が挙げられる。
【0140】
加熱殺菌処理としては、例えば、ボイル処理及びレトルト処理が挙げられる。
ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱殺菌する処理である。ボイル処理では、内容物にもよるが、通常は、食品等の内容物を上記の包装体に包装してなる包装物品を、大気圧下、60乃至100℃の温度で、10乃至120分間に亘って湿熱殺菌処理する。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行う。ボイル処理には、包装物品を一定温度の熱水槽の中に浸漬させ、一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中に包装物品をトンネル式に通して殺菌する連続式とがある。
【0141】
レトルト処理は、一般には食品等を保存するために、カビ、酵母、及び細菌などの微生物を加圧加熱殺菌する処理である。レトルト処理では、通常は、食品を上記の包装体に包装してなる包装物品を、0.15乃至0.3MPaの圧力下、105乃至140℃の温度で、10乃至120分間に亘って加圧殺菌加熱処理する。レトルト装置には、加熱蒸気を利用する蒸気式及び加圧過熱水を利用する熱水式等があり、それらは内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。
【実施例】
【0142】
以下に、本発明の具体例を記載する。
(例1)
カルボキシ基含有重合体(A)を、2-プロパノールに加熱溶解させた。カルボキシ基含有重合体(A)としては、数平均分子量が50,000のポリアクリル酸(東亜合成(株)製AC-10LP)を使用した。以上のようにして、カルボキシ基含有重合体(A)を10質量%の濃度で含み、25℃におけるpHが4乃至5の範囲内にある高分子溶液(I)を調製した。以下、この高分子溶液(I)を「高分子溶液1」と呼ぶ。
【0143】
酸性基を有する高分子量分散剤(C)を、2-プロパノールに溶解させた。高分子量分散剤(C)としては、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)を使用した。次いで、これに、多価金属含有粒子(B)を加えて攪拌した。多価金属含有粒子(B)としては、一次粒子の平均径が35nmの酸化亜鉛(堺化学工業(株)製FINEX(登録商標)-30)を使用した。
【0144】
得られた液を、遊星ボールミル(フリッチュ社製P-7)で1時間分散処理した。この分散処理には、直径0.2mmのジルコニアビーズを使用した。その後、この液からビーズを篩分けし、無機酸によるpHの調節を行った。以上のようにして、多価金属含有粒子(B)を30質量%の濃度で含み、高分子量分散剤(C)を、100質量部の多価金属含有粒子(B)に対して10質量部の量で含み、25℃におけるpHが4である多価金属分散液(II)を得た。以下、この多価金属分散液(II)を「多価金属分散液1」と呼ぶ。
【0145】
次に、高分子溶液1と多価金属分散液1と2-プロパノールとを混合し、これを15分間に亘って撹拌して、コーティング液1を調製した。このコーティング液1では、ポリアクリル酸が含んでいるカルボキシ基のモル数に対する、亜鉛のモル数と価数との積の比、即ち、当量比を1.0とした。このコーティング液1は、25℃におけるpHが5.1であった。また、このコーティング液1は、含水率が質量分率で50,000ppm以下であった。
【0146】
このコーティング液1を、その製造から8時間経過するまで25℃の温度条件下で静置した。その後、このコーティング液1を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工(株)製ルミラー(登録商標)P60、厚さ12μm)の一方の面に、バーコーター((株)安田精機製作所製ROD No.8、wet膜厚20μm)を用いて塗布した。この塗膜を50℃のオーブンで1分間乾燥させて、コート層を形成した。以上のようにして積層体1を得た。
【0147】
次に、積層体1のコート層側の表面に、2液型ポリウレタン系接着剤(三井化学(株)製タケラックA-525/タケネートA-52)を介して、未延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製ZK93-FM、厚さ60μm)をドライラミネートし、40℃にて3日間のエージングを行ってラミネートフィルム1を得た。
【0148】
(例2)
酸性基を有する高分子量分散剤(C)として、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)の代わりに、ポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)を使用し、100質量部の多価金属含有粒子(B)に対する高分子量分散剤(C)の量を、10質量部から15質量部へ変更したこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液2を調製した。
【0149】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液2を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液2を調製した。このコーティング液2は、25℃におけるpHが4.9であった。
【0150】
次いで、このコーティング液2をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体2を得た。そして、この積層体2を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム2を得た。
【0151】
(例3)
酸性基を有する高分子量分散剤(C)として、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)の代わりに、ポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)を使用したこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液3を調製した。
【0152】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液3を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液3を調製した。このコーティング液3は、25℃におけるpHが4.5であった。
【0153】
次いで、このコーティング液3をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体3を得た。そして、この積層体3を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム3を得た。
【0154】
(例4)
酸性基を有する高分子量分散剤(C)として、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)の代わりに、ポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)を使用し、100質量部の多価金属含有粒子(B)に対する高分子量分散剤(C)の量を、10質量部から30質量部へ変更したこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液4を調製した。
【0155】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液4を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液4を調製した。このコーティング液4は、25℃におけるpHが5.2であった。
【0156】
次いで、このコーティング液4をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体4を得た。そして、この積層体4を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム4を得た。
【0157】
(例5:比較例)
高分子量分散剤(C)を省略し、無機酸によるpH調節を行わなかったこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液5を調製した。次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液5を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液5を調製した。このコーティング液5は、調製した直後に凝集物の沈降を生じた。従って、コーティング液5を用いた積層体及びラミネートフィルムの製造は行わなかった。
【0158】
(例6:比較例)
酸性基を有する高分子量分散剤(C)として、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)の代わりに、ポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)を使用し、100質量部の多価金属含有粒子(B)に対する高分子量分散剤(C)の量を、10質量部から15質量部へ変更し、無機酸によりpHを4へ調節する代わりに2.5に調節したこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液6を調製した。
【0159】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液6を使用したこと以外は、コーティング液1について上述したのと同様の方法によりコーティング液6を調製した。このコーティング液6は、25℃におけるpHが3.1であった。
【0160】
このコーティング液6は、調製した直後に凝集物の沈降を生じた。従って、コーティング液6を用いた積層体及びラミネートフィルムの製造は行わなかった。
【0161】
(例7:比較例)
酸性基を有する高分子量分散剤(C)として、ポリエーテル燐酸エステル(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-375、固形分100質量%)の代わりに、ポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)を使用し、100質量部の多価金属含有粒子(B)に対する高分子量分散剤(C)の量を、10質量部から15質量部へ変更し、無機酸によるpHの調節を行わなかったこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液7を調製した。
【0162】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液7を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液6を調製した。このコーティング液7は、25℃におけるpHが6.2であった。
【0163】
次いで、このコーティング液7をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体7を得た。そして、この積層体7を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム7を得た。
【0164】
(例8:比較例)
無機酸によるpHの調節を行わなかったこと以外は、多価金属分散液1について上述したのと同様の方法により多価金属分散液8を調製した。
【0165】
次に、多価金属分散液1の代わりに多価金属分散液8を使用したこと以外は、コーティング液1ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液8を調製した。このコーティング液8は、25℃におけるpHが6.4であった。
【0166】
次いで、このコーティング液8をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体8を得た。そして、この積層体8を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム8を得た。
【0167】
(例9)
カルボキシ基含有重合体(A)として、数平均分子量が50,000のポリアクリル酸(東亜合成(株)製AC-10LP)を使用する代わりに、数平均分子量が250,000のポリアクリル酸(東亜合成(株)製AC-10LHP)を使用したこと以外は、高分子溶液1について上述したのと同様の方法により、25℃におけるpHが4乃至5の範囲内にある高分子溶液9を調製した。
【0168】
次に、高分子溶液1の代わりに高分子溶液9を使用したこと以外は、コーティング液2ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液9を調製した。このコーティング液9は、25℃におけるpHが5.5であった。
【0169】
次いで、このコーティング液9をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体9を得た。そして、この積層体9を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム9を得た。
【0170】
(例10)
カルボキシ基含有重合体(A)として、数平均分子量が50,000のポリアクリル酸(東亜合成(株)製AC-10LP)を使用する代わりに、数平均分子量が5,000のポリアクリル酸(富士フィルム和光純薬(株)製ポリアクリル酸5,000)を使用したこと以外は、高分子溶液1について上述したのと同様の方法により、25℃におけるpHが4乃至5の範囲内にある高分子溶液10を調製した。
【0171】
次に、高分子溶液1の代わりに高分子溶液10を使用したこと以外は、コーティング液2ついて上述したのと同様の方法によりコーティング液10を調製した。このコーティング液10は、25℃におけるpHが4.8であった。
【0172】
次いで、このコーティング液10をコーティング液1の代わりに使用したこと以外は、積層体1について上述したのと同様の方法により積層体10を得た。そして、この積層体10を積層体1の代わりに用いた以外は、ラミネートフィルム1について上述したのと同様の方法によりラミネートフィルム10を得た。
【0173】
〔評価1〕
(1)コーティング液のヘーズ
各コーティング液の調製直後におけるヘーズを、JIS K7136:2000に準拠した日本電色工業社製NDH2000を使用して測定した。なお、コーティング液6及び7は、調製直後の時点で沈殿を生じていたため、ヘーズの測定は行わなかった。結果を、以下の表1乃至3に示す。
【0174】
(2)コーティング液の安定性
各コーティング液を調製直後から目視で観察して、その安定性を以下の基準で評価した。これらの結果を、以下の表1乃至3に示す。
【0175】
AA:調製から1日経過した時点で沈殿を生じていなかった。
A: 調製から8時間経過した時点では沈殿を生じていなかったが、1日経過した時点で沈殿を生じていた。
B: 調製から2時間経過した時点では沈殿を生じていなかったが、4時間経過した時点で沈殿を生じていた。
C: 調製直後に沈殿を生じていた。
【0176】
(2)ラミネートフィルムの酸素透過度
各ラミネートフィルムの各々からフィルム片を切り出し、その酸素透過度を以下の手順で測定した。
【0177】
即ち、各積層体の酸素透過度は、Modern Control社製の酸素透過試験器OXTRAN(登録商標)2/20を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定した。測定方法は、JIS K-7126 B法(等圧法)、及びASTM D3985に準拠し、測定値は、単位cm3/(m2・day・MPa)で表記した。
【0178】
次に、各ラミネートフィルムの各々から20cm×15cmの大きさのフィルム片を2枚切り出し、それらを未延伸ポリプロピレンフィルム同士が向き合うように重ね合わせた状態で3辺をシールしてパウチを作製した。このパウチに水200mLを入れた後、残りの1辺をシールした。
【0179】
得られた水充填パウチに対して、レトルト処理機((株)日阪製作所製RCS-60)を用いて、120℃にて30分間のレトルト処理を行った。
【0180】
レトルト処理後、水を取り除き、各ラミネートフィルムの酸素透過度を、上記と同様の手順で測定した。
これら結果を表1乃至3に示す。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
表1乃至3に示す通り、コーティング液1乃至4、9及び10は、コーティング液5乃至8と比較して安定性に優れていた。なお、高分子量分散剤として酸性基を含んでいないものを使用した場合、コーティング液の安定性は、例5及び6と同等となる。
【0185】
また、コーティング液1乃至4、9及び10を用いて得られたラミネートフィルム1乃至4、9及び10は、コーティング液7及び8を用いて得られたラミネートフィルム7及び8と比較して、レトルト処理後において、酸素透過度が低く、ガスバリア性に優れていた。
【0186】
〔評価2〕
コーティング液2について、その調製直後における第1平均粒径D1の測定を行った。そして、これを25℃の温度条件下で8時間静置し、第2平均粒径D2の測定を行った。これら平均粒径の測定には、マイクロトラックベル社製のNanotrac UPA-EX150を使用した。その結果、第2平均粒径D2と第1平均粒径D1との比D2/D1は0.9であった。
【0187】
これと同様の測定を、コーティング液7についても行った。その結果、第2平均粒径D2と第1平均粒径D1との比D2/D1は4.8であった。
更に、上記と同様の測定を、コーティング液9についても行った。その結果、第2平均粒径D2と第1平均粒径D1との比D2/D1は1.2であった。
【0188】
このように、目視で安定性に優れていると評価したコーティング液は、目視で安定性が不十分であると評価したコーティング液と比較して、長時間放置しても凝集を生じ難かった。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
カルボキシ基含有重合体(A)、多価金属含有粒子(B)、酸性基を有する高分子量分散剤(C)、及び有機溶媒(D)を含有し、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にあるガスバリア性積層体製造用コーティング液。
[2]
前記多価金属含有粒子(B)の多価金属は二価の金属である項1に記載のコーティング液。
[3]
前記多価金属含有粒子(B)は酸化亜鉛を含んだ項1又は2に記載のコーティング液。
[4]
前記高分子量分散剤(C)はポリエーテル燐酸エステルを含んだ項1乃至3の何れか1項に記載のコーティング液。
[5]
前記多価金属含有粒子(B)の量を100質量部とした場合、前記高分子量分散剤(C)の量は1乃至30質量部の範囲内にある項1乃至4の何れか1項に記載のコーティング液。
[6]
前記カルボキシ基含有重合体(A)は数平均分子量が5,000乃至50,000の範囲内にある項1乃至5の何れか1項に記載のコーティング液。
[7]
含水率が質量分率で50,000ppm以下である項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング液。
[8]
前記カルボキシ基含有重合体(A)が含んでいるカルボキシ基のモル数(At)に対する、前記多価金属含有粒子(B)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(Bt)の比が0.6以上である項1乃至7の何れか1項に記載のコーティング液。
[9]
製造直後における第1平均粒径D1と、製造から25℃の温度条件下で8時間経過した時点での第2平均粒径D2とを測定した場合に、前記第2平均粒径D2と前記第1平均粒径D1との比D2/D1が0.8乃至1.3の範囲内にある項1乃至8の何れか1項に記載のコーティング液。
[10]
項1乃至9の何れか1項に記載のコーティング液の硬化膜をコート層として含んだガスバリア性積層体。
[11]
厚さが0.01乃至100μmの範囲内にあり、30℃及び相対湿度70%の条件下で測定した酸素透過度が1,000cm
3
/(m
2
・day・MPa)以下である項10に記載のガスバリア性積層体。
[12]
項10又は11に記載のガスバリア性積層体を含んだ包装材料。
[13]
項12に記載の包装材料を含んだ包装体。
[14]
項13に記載の包装体と、
前記包装体に収容された内容物と
を含んだ包装物品。
[15]
高分子溶液(I)と多価金属分散液(II)とを混合して、25℃におけるpHが4乃至6の範囲内にある混合液を得ることを含み、
前記高分子溶液(I)は、カルボキシ基含有重合体(A)と、有機溶媒(D)とを含有し、
前記多価金属分散液(II)は、多価金属含有粒子(B)と、酸性基を有する高分子量分散剤(C)と、有機溶媒(D)とを含有したガスバリア性積層体製造用コーティング液の製造方法。
[16]
前記高分子溶液(I)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にあり、前記多価金属分散液(II)は25℃におけるpHが3乃至7の範囲内にある項15に記載の製造方法。
[17]
項15又は16に記載の方法により前記コーティング液を製造することと、前記コーティング液からコート層を形成することとを含んだガスバリア性積層体の製造方法。
[18]
項1乃至9の何れか1項に記載のコーティング液からコート層を形成することを含んだガスバリア性積層体の製造方法。