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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】印刷プログラムおよび印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20241106BHJP
   B41J 3/28 20060101ALI20241106BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 350
G06F3/12 378
G06F3/12 308
B41J3/28
B41J3/36 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020088348
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021182339
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 俊文
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-286138(JP,A)
【文献】特開2019-107861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 3/28
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷画像の印刷予定サイズが、媒体に対して手動で移動させられることで前記媒体に印刷を行う印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断する判断機能と、
前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更する変更機能と、
1回の前記パスで前記印刷画像を印刷するように前記印刷装置に指示する1パス印刷指示を行う指示機能と、
通常印刷要求と、1パス印刷要求と、を選択的にユーザーから受け付ける受付機能と、をコンピューターに実現させ、
前記変更機能は、前記通常印刷要求が受け付けられたときは、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更せず、前記1パス印刷要求が受け付けられたときは、前記印刷予定サイズが前記1パス可能サイズではないと判断されると、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更することを特徴とする印刷プログラム。
【請求項2】
前記指示機能は、前記通常印刷要求が受け付けられたときは、前記1パス印刷指示を行うことなく、前記印刷画像を印刷するように前記印刷装置に指示し、前記1パス印刷要求が受け付けられたときは、前記1パス印刷指示を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷プログラム。
【請求項3】
前記指示機能は、前記印刷装置が1回の前記パスで印刷可能な最大サイズで前記印刷画像を印刷するように、前記1パス印刷指示を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷プログラム。
【請求項4】
前記印刷予定サイズをユーザーに指定させる指定機能、を前記コンピューターに実現させ、
前記判断機能は、ユーザーにより指定された前記印刷予定サイズが前記1パス可能サイズであるか否かを判断することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷プログラム。
【請求項5】
前記印刷装置が前記印刷画像を印刷するための画像データを取得する取得機能、を前記コンピューターに実現させ、
前記指示機能は、前記印刷装置が1回の前記パスで前記印刷画像を印刷可能となるように前記画像データを縮小した縮小画像データを生成し、生成した前記縮小画像データを送信することで、前記1パス印刷指示を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷プログラム。
【請求項6】
前記印刷装置が前記印刷画像を印刷するための画像データを取得する取得機能、を前記コンピューターに実現させ、
前記指示機能は、前記印刷装置が1回の前記パスで前記印刷画像を印刷可能となるように前記画像データを回転した回転画像データを生成し、生成した前記回転画像データを送信することで、前記1パス印刷指示を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷プログラム。
【請求項7】
印刷画像を媒体に印刷するように前記媒体に対して手動で移動させられることで前記媒体に印刷を行う印刷装置を制御する制御機能と、
ユーザーから、前記印刷画像の印刷予定サイズを前記印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示を受け付ける制限受付機能と、
前記制限受付機能が前記指示を受け付けていない場合に、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更せず、前記制限受付機能が前記指示を受け付けた場合に、前記印刷予定サイズが前記1パス可能サイズでないと、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更する制限機能と、
をコンピューターに実現させることを特徴とする印刷プログラム。
【請求項8】
媒体に対して手動で移動させられることで前記媒体に印刷を行う印刷装置、を備えた印刷システムによる印刷物の製造方法であって、
前記印刷システムの判断部が、印刷画像の印刷予定サイズは前記印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断するステップと、
前記印刷システムの変更部が、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更するステップと、
前記印刷システムの受付部が、通常印刷要求と、1パス印刷要求と、を選択的にユーザーから受け付けるステップと、
前記印刷装置が、1回の前記パスで前記印刷画像を印刷するステップと、を備え、
前記変更部は、前記通常印刷要求を受け付けたときは、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更せず、前記1パス印刷要求を受け付けたときは、前記印刷予定サイズが前記1パス可能サイズではないと判断すると、前記印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項9】
媒体に対して印刷装置を手動で移動させることで印刷画像が印刷された印刷物を製造する製造方法であって、
前記印刷装置を備えた印刷システムの受付部が、前記印刷画像の印刷予定サイズを前記印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示をユーザーから受け付けるステップと、
前記指示を受け付けた第1の場合に、前記印刷予定サイズが前記1パス可能サイズでないと、前記印刷画像の印刷予定サイズを前記1パス可能サイズに変更した前記印刷画像を前記印刷装置が印刷して印刷物を生産するステップと、
前記指示を受け付けていない第2の場合に、前記印刷画像の印刷予定サイズが前記1パス可能サイズでないと、前記1パス可能サイズでない前記印刷画像のサイズで前記印刷装置が印刷して印刷物を生産するステップと、
を備えたことを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷プログラムおよび印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1が開示するように、媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行うハンディーモバイルプリンターが知られている。ハンディーモバイルプリンターは、印刷される印刷画像が1回のパスで印刷可能なサイズよりも大きいときには、複数回のパスに分けて印刷画像を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンディーモバイルプリンターにより複数回のパスに分けて印刷画像が印刷されると、複数回のパスで印刷された複数の部分画像同士が重複したり、複数の部分画像の相互間に隙間が生じたりすることで、印刷画像にスジが生じてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷プログラムは、印刷画像の印刷予定サイズが、媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断する判断機能と、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、1回のパスで印刷画像を印刷するように印刷装置に指示する1パス印刷指示を行う指示機能と、をコンピューターに実現させる。
【0006】
本発明の印刷プログラムは、印刷画像を媒体に印刷するように媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置を制御する制御機能と、ユーザーから、印刷画像の印刷予定サイズを印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示を受け付ける制限受付機能と、制限受付機能が指示を受け付けた場合に、印刷予定サイズが1パス可能サイズであるように印刷予定サイズを制限する制限機能と、をコンピューターに実現させる。
【0007】
本発明の印刷物の製造方法は、媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置、を備えた印刷システムによる印刷物の製造方法であって、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズは印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断するステップと、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷装置が、1回のパスで印刷画像を印刷するステップと、を備えた。
【0008】
本発明の印刷物の製造方法は、媒体に対して印刷装置を手動で移動させることで印刷画像が印刷された印刷物を製造する製造方法であって、印刷装置を備えた印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示をユーザーから受け付けるステップと、指示を受け付けた第1の場合に、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを1パス可能サイズに制限したうえで印刷装置に印刷を行わせ印刷物を生産するステップと、指示を受け付けていない第2の場合に、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを1パス可能サイズよりも大きいサイズで印刷装置に印刷を行わせ印刷物を生産するステップと、を備えた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷システムを示すブロック図である。
図2】印刷装置により媒体に印刷画像が印刷された印刷物を示す図である。
図3】印刷装置の斜視図である。
図4】印刷装置を-Z方向から見た図である。
図5】印刷装置が印刷画像を3回のパスに分けて印刷する場合に、1回目のパスが行われた状態を示す図である。
図6】印刷装置が印刷画像を3回のパスに分けて印刷する場合に、2回目のパスが行われた状態を示す図である。
図7】印刷装置が印刷画像を3回のパスに分けて印刷する場合に、3回目のパスが行われた状態を示す図である。
図8】印刷装置が縮小された印刷画像を1回のパスで印刷した状態を示す図である。
図9】情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】印刷装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11】印刷設定画面において、1パス印刷チェックボックスがチェックされていない状態を示す図である。
図12】印刷物の製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図13図12に続くフローチャートである。
図14図13に続くフローチャートである。
図15図13に続くフローチャートである。
図16】印刷設定画面において、1パス印刷チェックボックスがチェックされた状態を示す図である。
図17】処理側プロセッサーの機能構成の第1実施形態を示す図である。
図18】処理側プロセッサーの機能構成の第2実施形態を示す図である。
図19】印刷物の製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
図20】印刷装置が回転された印刷画像を1回のパスで印刷した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しつつ、印刷装置および印刷物の製造方法の一実施形態ついて説明する。なお、以下では、各図に示したXYZ直交座標系による方向を用いて説明するが、これらの方向は説明の便宜上のものにすぎず、以下の実施形態を何ら限定するものではない。
【0011】
[印刷システム]
図1に示すように、印刷システムSyは、情報処理装置1と、印刷装置101とを備えている。情報処理装置1と印刷装置101とは、有線或いは無線で、通信可能に接続されている。
【0012】
情報処理装置1は、印刷ジョブを印刷装置101に送信する。なお、情報処理装置1としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどを用いることができる。
【0013】
図2に示すように、印刷装置101は、いわゆるハンディープリンターであり、媒体201に対して手動で移動させられることで、情報処理装置1から受信した印刷ジョブに基づき、印刷画像203を媒体201に印刷する。すなわち、印刷装置101は、媒体201に印刷画像203が印刷された印刷物205を生産する。印刷装置101は、媒体201に対して手動で移動させられる間に、媒体201に対してインクジェット方式でインクを吐出することで、媒体201に印刷画像203を印刷する。なお、媒体201としては、印刷用紙に限定されず、例えば、封筒、葉書、名刺、段ボール、ノート、CD(Compact Disc)、木板などを用いることができる。
【0014】
[印刷装置]
図3および図4に基づいて、印刷装置101について説明する。図3に示すように、印刷装置101は、略直方体状に形成されている。印刷装置101の+Z方向の面には、プリントボタン103と、電源ボタン105とが設けられている。プリントボタン103は、ユーザーからの印刷開始の指示を受け付ける。ユーザーは、印刷装置101を媒体201上に置き、プリントボタン103を押した後、把持した印刷装置101を媒体201の表面に沿って+X方向或いは-X方向に移動させることで、印刷装置101に印刷画像203を印刷させることができる(図2参照)。なお、印刷装置101が+X方向或いは-X方向に移動させられる間に行われる印刷動作を、「パス」という。電源ボタン105は、ユーザーからの電源のONとOFFとの切替え指示を受け付ける。
【0015】
図4に示すように、印刷装置101の-Z方向の面には、印刷ヘッド107と、移動計測部109と、複数のローラー111とが設けられている。
【0016】
印刷ヘッド107は、複数のノズル113を備えたインクジェットヘッドであり、複数のノズル113からインクを吐出することで、媒体201に印刷画像203を印刷する。複数のノズル113は、Y方向に一列または複数列に並んでいる。
【0017】
移動計測部109は、ユーザーにより媒体201上を移動させられる印刷装置101の移動を光学的に計測する。なお、印刷装置101の移動を計測するとは、印刷装置101の移動方向および移動距離を計測することを意味する。移動計測部109としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの光源と、イメージセンサーとを備え、イメージセンサーが出力した媒体201の画像の変化から媒体201に対する移動を計測するものを用いることができる。
【0018】
複数のローラー111は、媒体201に摺接して回転することで、媒体201に対する印刷装置101の+X方向或いは-X方向への移動をガイドする。
【0019】
印刷装置101は、ユーザーにより媒体201に対して移動させられると、移動計測部109の計測結果に基づいて、印刷装置101Aと媒体201との相対位置を計算する。そして、移動計測部109の計測結果に基づいた相対位置に応じたタイミングで、複数のノズル113からインクを吐出する。これにより、印刷装置101は、ユーザーが印刷装置101を移動させる速度によらず、媒体201の適切な位置に画像を印刷することができる。
【0020】
印刷ヘッド107にn個のノズル113が設けられているとすると、n個のノズル113のうち、Y方向における中間部に設けられた、(n-a-b)個のノズル113を、第1ノズル115といい、+Y方向の端部に設けられたa個のノズル113と、-Y方向に端部に設けられたb個のノズル113とを、第2ノズル117という。また、(n-a-b)個の第1ノズル115から構成されるノズル列を、第1ノズル列119という。第1ノズル列119の長さを、第1ノズル列長Lという。図4ないし図8では、第1ノズル115を黒丸で表し、第2ノズル117を白丸で表す。なお、n、aおよびbの数値範囲は、特に限定されないが、例えば、(n-a-b)は、300以上1200以下の整数であり、aは、5以上30以下の整数であり、bは、5以上30以下の整数である。aおよびbは、互いに等しい数でもよく、相異なる数でもよい。図4ないし図8では、図示を簡易にすべく、n=7、a=1、b=1としている。なお、印刷ヘッド107は、第1ノズル115のみを備え、第2ノズル117を備えていない構成でもよい。すなわち、aおよびbは、いずれも0でもよい。この場合、第1ノズル列長Lは、印刷ヘッド107に設けられたn個のノズル113全部から構成されるノズル列の長さとなる。
【0021】
印刷装置101が+Y方向或いは-Y方向にぶれていない場合には、印刷ヘッド107は、第1ノズル115および第2ノズル117のうち、第1ノズル115のみから、インクを吐出する。そして、1回のパスで印刷できる印刷画像203のY方向の最大サイズは、第1ノズル列長Lと略等しいものとしている。すなわち、印刷装置101は、Y方向のサイズが第1ノズル列長Lよりも大きい印刷画像203を、1回のパスで印刷することはできない。しかし、ユーザーが手動で印刷装置101を移動するため、印刷装置101が+Y方向或いは-Y方向にぶれることがある。この場合、Y方向のサイズが第1ノズル列長Lと略等しい印刷画像203を第1ノズル115のみでは印刷できない。そのため、第2ノズル117は、印刷装置101が+X方向或いは-X方向に移動させられる間に+Y方向或いは-Y方向にぶれた場合に、そのぶれた分を補うために、用いられる。しかし、あるパスにおいて、印刷装置101が+X方向或いは-X方向に移動させられる間に+Y方向或いは-Y方向にぶれた場合に、まず第2ノズル117で補って印刷を行うが、第2ノズル117の範囲を超えて+Y方向或いは-Y方向にぶれた場合には、第2ノズル117を用いたとしてもそのパスでは印刷画像203の全てを印刷できなくなる。この場合、Y方向のサイズが第1ノズル列長Lと略等しい印刷画像203を印刷装置101は複数パスをかけて印刷することになる。本願で「1パスで印刷できる」と記載しているものは、印刷装置101が+Y方向或いは-Y方向にぶれていない場合に1パスで印刷できるという意味であって、必ず1パスで印刷する、ということではない。「1パスで印刷できる」とは、印刷装置101が+Y方向或いは-Y方向に大きくぶれた場合には、上述のように、複数パスで印刷することを許容する表現である。
【0022】
[パスの回数と印刷画像]
上述したように、1回のパスで印刷できる印刷画像203のY方向の最大サイズは、第1ノズル列長Lと略等しいことから、Y方向のサイズが第1ノズル列長Lよりも大きい印刷画像203を印刷するためには、図5ないし図7に示すように、印刷装置101が複数回のパスに分けて印刷画像203を印刷する必要がある。複数回のパスに分けて印刷画像203が印刷される場合、各回のパスで印刷される印刷画像203を、部分画像207という。なお、図5ないし図7は、複数回のパスにおいて、+X方向への印刷装置101の移動と、-X方向への印刷装置101の移動とが、交互に行われる構成を示しているが、いずれの回のパスでも+X方向への印刷装置101の移動が行われる構成でもよく、いずれの回のパスでも-X方向への印刷装置101の移動が行われる構成でもよい。
【0023】
印刷装置101により複数回のパスに分けて印刷画像203が印刷されるとき、
移動計測部109による印刷装置101の移動の計測結果に基づいて、(m+1)回目のパスで印刷される部分画像207が、m回目のパスで印刷された部分画像207に応じた位置に印刷される。しかしながら、移動計測部109による印刷装置101の移動の計測誤差に起因して、複数回のパスで印刷された複数の部分画像207同士が重複したり、複数の部分画像207の相互間に隙間が生じたりするおそれがある。これらの場合、印刷画像203に、印刷装置101の移動方向すなわちX方向に延在するスジ209が生じてしまう。図6および図7に示した例では、+Y方向から1番目の部分画像207と2番目の部分画像207との間に重複によるスジ209が生じており、+Y方向から2番目の部分画像207と3番目の部分画像207との間に隙間によるスジ209が生じでいる。
【0024】
すなわち、本実施形態の情報処理装置1は、複数回のパスに分けて印刷装置101に印刷画像203を印刷させる代わりに、印刷画像203のサイズを小さくすることで、1回のパスで印刷装置101に印刷画像203を印刷させると(図8参照)、印刷画像203にスジ209が生じることを抑制することができる。
【0025】
[情報処理装置のハードウェア構成]
図9に示すように、情報処理装置1は、処理側プロセッサー3と、処理側メモリー5と、処理側通信部7と、処理側操作部9と、処理側表示部11とを備えている。
【0026】
処理側プロセッサー3は、処理側メモリー5に記憶された各種のプログラムを実行する。処理側プロセッサー3は、例えば、1個或いは複数個のCPU(Central Processing Unit)である。処理側プロセッサー3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路でもよく、1以上のCPUとASICなどのハードウェア回路とが協働して処理を行う構成でもよい。
【0027】
処理側メモリー5は、各種プログラムおよび各種データを記憶する。処理側メモリー5は、例えば、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)とを備えている。また、処理側メモリー5は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などを備えていてもよい。
【0028】
処理側メモリー5に記憶されている各種プログラムには、印刷プログラム13が含まれる。印刷プログラム13は、印刷装置101に対応したアプリケーションプログラムである。処理側プロセッサー3は、印刷プログラム13を実行することにより、印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを印刷装置101に送信する。
【0029】
処理側通信部7は、印刷装置101との間で、各種データおよび各種コマンドを送受信する。処理側通信部7は、有線或いは無線で印刷装置101と通信する通信回路を備えている。
【0030】
処理側操作部9は、ユーザーからの操作を受け付ける。処理側操作部9としては、例えば、キーボード、マウスなどを用いることができる。
【0031】
処理側表示部11は、各種画面を表示する。処理側表示部11としては、例えば、液晶ディスプレー或いは有機ELディスプレー(EL: Electro-Luminescence)を用いることができる。なお、情報処理装置1は、処理側操作部9および処理側表示部11として機能するタッチパネルを備えた構成でもよい。
【0032】
[印刷装置のハードウェア構成]
図10に示すように、印刷装置101は、印刷側プロセッサー121と、印刷側メモリー123と、印刷側通信部125と、印刷ヘッド107と、移動計測部109とを備えている。
【0033】
印刷側プロセッサー121は、印刷側メモリー123に記憶された各種のプログラムを実行する。印刷側プロセッサー121は、例えば、1個或いは複数個のCPUである。印刷側プロセッサー121は、ASICなどのハードウェア回路でもよく、1以上のCPUとASICなどのハードウェア回路とが協働して処理を行う構成でもよい。
【0034】
印刷側メモリー123は、各種プログラムおよび各種データを記憶する。印刷側メモリー123は、例えば、ROMと、RAMとを備えている。また、印刷側メモリー123は、EEPROM、HDD、SSDなどを備えていてもよい。
【0035】
印刷側通信部125は、情報処理装置1との間で、各種データおよび各種コマンドを受信する。印刷側通信部125は、有線或いは無線で情報処理装置1と通信する通信回路を備えている。
【0036】
[印刷設定画面]
図11に基づいて、処理側表示部11に表示される印刷設定画面31について説明する。印刷設定画面31は、印刷プログラム13の起動後に表示される初期画面に対して所定の操作が行われることで、表示される。印刷設定画面31には、プレビュー表示領域33と、サイズ表示欄35と、1パス印刷チェックボックス37と、OKボタン39と、挿入ボタン41と、キャンセルボタン43とが表示される。
【0037】
プレビュー表示領域33には、印刷候補画像45の印刷プレビューが表示される。ユーザーは、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45に対して例えばドラッグ操作を行うことにより、プレビュー表示領域33内で印刷候補画像45を移動させることができる。これにより、プレビュー表示領域33に複数の印刷候補画像45が表示されている場合に、複数の印刷候補画像45の相互の位置関係を変更することができる。
【0038】
サイズ表示欄35には、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45の画像データに基づいて印刷される印刷画像203の印刷予定サイズが表示される。サイズ表示欄35には、印刷候補画像45の画像データから取得された印刷予定サイズが、デフォルトで表示される。サイズ表示欄35では、印刷予定サイズが「p×qmm」の形で表示される。pは、Y方向の印刷予定サイズであり、qは、X方向の印刷予定サイズである。
【0039】
ユーザーは、サイズ表示欄35に対して所望の数値を入力することにより、サイズ表示欄35にデフォルトで表示された印刷予定サイズに代えて、所望の印刷予定サイズを指定することができる。例えば、ユーザーは、印刷設定画面31と併せて処理側表示部11に表示されたソフトウェアキーボード(図示省略)を用いて、Y方向の印刷予定サイズについて、サイズ表示欄35に所望の数値を入力する。サイズ表示欄35に表示されたX方向の印刷予定サイズは、印刷予定サイズのXY比率が維持されるように、入力されたY方向の印刷予定サイズに応じて自動的に変更される。印刷予定サイズのXY比率とは、Y方向の印刷予定サイズとX方向の印刷予定サイズとの比率を意味する。例えば、サイズ表示欄35にデフォルトで表示された印刷予定サイズが「120×27mm」である場合に、Y方向の印刷予定サイズとして「40」が入力されると、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズが「40×9mm」に変更される。なお、サイズ表示欄35は、X方向の印刷予定サイズについても、Y方向の印刷予定サイズとは独立して、ユーザーが所望の数値を入力可能な構成でもよい。この場合は、印刷予定サイズのXY比率が変更され得る。また、ユーザーは、ソフトウェアキーボードを用いる代わりに、例えば、サイズ表示欄35に設けられたサイズ表示マークを操作することでプルダウンリストを表示させ、プルダウンリストに含まれる複数のサイズ選択肢のなかから、所望のサイズ選択肢を選択することで、所望の印刷予定サイズを指定してもよい。また、ユーザーは、サイズ表示欄35に設けられた上下ボタンを操作する等の他の手段で、サイズを増減させてもよい。なお、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45を拡大または縮小させるピンチ操作により、サイズを増減させてもよい。
【0040】
1パス印刷チェックボックス37は、印刷画像203のY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい場合に、印刷画像203のサイズはそのままで印刷装置101に複数回のパスに分けて印刷画像203を印刷させるか(図5ないし図7参照)、印刷画像203のサイズを小さくすることで印刷装置101に1回のパスで印刷画像203を印刷させるか(図8参照)、の選択を受け付ける。すなわち、情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37がチェックされていない場合には、Y方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい印刷画像203を、印刷画像203のサイズはそのままで印刷装置101に複数回のパスに分けて印刷させる。一方、情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37がチェックされている場合には、Y方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい印刷画像203を、第1ノズル列長L以下のサイズに制限することで印刷装置101が1回のパスで印刷できるようにする。
【0041】
OKボタン39は、印刷設定画面31における選択・入力を確定するための操作を受け付ける。情報処理装置1は、OKボタン39が操作されると、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45の画像データに基づいて印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを印刷装置101に送信する。
【0042】
挿入ボタン41は、印刷候補画像45をユーザーに指定させるための操作を受け付ける。情報処理装置1は、挿入ボタン41が操作されると、画像選択画面を表示させ、画像選択画面において選択された印刷候補画像45をプレビュー表示領域33に追加して表示させる。なお、情報処理装置1は、印刷候補画像45を、1パスで印刷できる最大のサイズをデフォルトのサイズとして追加するようにしているが、これに限られるものではない。画像選択画面では、情報処理装置1の撮影機能を用いて撮影することで得られた画像を印刷候補画像45として選択してもよく、情報処理装置1が他の装置から受信した画像を印刷候補画像45として選択してもよい。また、文字列をユーザーに入力させ、入力された文字列の画像を印刷候補画像45として選択してもよい。
【0043】
キャンセルボタン43は、初期画面(図示省略)に戻るための操作を受け付ける。情報処理装置1は、キャンセルボタン43が操作されると、処理側表示部11に初期画面を表示させる。
【0044】
[印刷物の製造方法:第1実施形態]
図12ないし図15に基づいて、印刷システムSyが実行する印刷物205の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0045】
ステップS01において、情報処理装置1は、印刷設定画面31において挿入ボタン41が操作されたか否かを判断する。情報処理装置1は、挿入ボタン41が操作されたと判断すると、ステップS02に進む。一方、情報処理装置1は、挿入ボタン41が操作されていないと判断すると、挿入ボタン41が操作されたと判断するまで、ステップS01を繰り返す。
【0046】
ステップS02において、情報処理装置1は、画像選択画面を表示させ、画像選択画面において選択された印刷候補画像45をプレビュー表示領域33に表示させる。また、情報処理装置1は、選択された印刷候補画像45の画像データに基づいて印刷される印刷画像203の印刷予定サイズを、サイズ表示欄35に表示させる。情報処理装置1は、印刷画像203の印刷予定サイズを、印刷候補画像45の画像データから取得する。
【0047】
ステップS03において、情報処理装置1は、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45に対する移動操作が行われたか否かを判断する。情報処理装置1は、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45に対する移動操作が行われたと判断すると、ステップS04に進む。
【0048】
ステップS04において、情報処理装置1は、印刷候補画像45に対する移動操作に基づいて、プレビュー表示領域33内で印刷候補画像45を移動させる。その後、情報処理装置1は、ステップS03に戻る。
【0049】
一方、ステップS03において、情報処理装置1は、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45に対する移動操作が行われていないと判断すると、ステップS05に進む。
【0050】
ステップS05において、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に対する入力操作が行われたか否かを判断する。情報処理装置1は、サイズ表示欄35に対する入力操作が行われたと判断すると、ステップS06に進む。
【0051】
ステップS06において、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズを、サイズ表示欄35に入力された数値に基づいて更新する。これにより、印刷画像203の印刷予定サイズがユーザーにより指定される。なお、1パス印刷チェックボックス37がチェックされている場合には、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズは、第1ノズル列長Lを上限とする。1パス印刷チェックボックス37がチェックされていない場合には、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズは、第1ノズル列長Lを上回ることができる。また、複数の印刷候補画像45がプレビュー表示領域33に表示されている場合には、プレビュー表示領域33内で選択中の印刷候補画像45の表示サイズを指定されたサイズに合わせて変更する。その後、情報処理装置1は、ステップS03に戻る。
【0052】
一方、ステップS05において、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に対する入力操作が行われていないと判断すると、ステップS07に進む。
【0053】
ステップS07において、情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37に対する操作が行われたか否かを判断する。情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37に対する操作が行われたと判断すると、ステップS08に進む。
【0054】
ステップS08において、情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37に対する操作が行われるごとに、1パス印刷チェックボックス37がチェックされた状態と、1パス印刷チェックボックス37がチェックされていない状態とを切り替える。
【0055】
ステップS09において、情報処理装置1は、印刷画像203の印刷予定サイズが、印刷装置101が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断する。すなわち、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長L以下である場合には、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであると判断する。一方、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい場合には、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断する。
【0056】
ステップS09において、情報処理装置1は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであると判断すると、ステップS03に戻る。すなわち、この場合、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズは、変更されない。
【0057】
一方、ステップS09において、情報処理装置1は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断すると、ステップS10に進む。
【0058】
ステップS10において、情報処理装置1は、図11に示した状態から、図16に示すように、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更する。すなわち、情報処理装置1は、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズを、第1ノズル列長Lに変更し、サイズ表示欄35に表示されたX方向の印刷予定サイズも、XY比率を維持するように変更する。なお、このとき、プレビュー表示領域33に表示された印刷候補画像45についても、サイズを変倍させてもよい。その後、情報処理装置1は、ステップS03に戻る。
【0059】
一方、ステップS07において、情報処理装置1は、1パス印刷チェックボックス37に対する操作が行われていないと判断すると、ステップS11に進む。
【0060】
ステップS11において、情報処理装置1は、キャンセルボタン43対する操作が行われたか否かを判断する。情報処理装置1は、キャンセルボタン43対する操作が行われたと判断すると、ステップS12に進む。
【0061】
ステップS12において、情報処理装置1は、処理側表示部11に初期画面を表示させる。すなわち、情報処理装置1は、処理側表示部11の表示を、印刷設定画面31から初期画面に切り替える。
【0062】
一方、ステップS11において、情報処理装置1は、キャンセルボタン43に対する操作が行われていないと判断すると、ステップS13に進む。
【0063】
ステップS13において、情報処理装置1は、OKボタン39に対する操作が行われたか否かを判断する。情報処理装置1は、OKボタン39に対する操作が行われたと判断すると、ステップS14に進む。
【0064】
一方、ステップS13において、情報処理装置1は、OKボタン39に対する操作が行われていないと判断すると、ステップS03に戻る。
【0065】
ステップS14において、情報処理装置1は、印刷候補画像45の画像データを含む印刷ジョブを生成する。このとき、情報処理装置1は、画像データを印刷予定サイズに合わせて変倍することで、印刷ジョブを生成する。
【0066】
ステップS15において、情報処理装置1は、生成した印刷ジョブを印刷装置101に送信する。
【0067】
ステップS16において、印刷装置101は、受信した印刷ジョブに含まれる画像データに基づいて、印刷予定サイズと同じサイズの印刷画像203を、媒体201に印刷する。例えば、第1ノズル列長Lが40mmであり、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズが40×27mmである場合、40×27mmの印刷画像203が、1回のパスで印刷できる。
例えば、第1ノズル列長Lが40mmであり、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズが120×27mmである場合、120×27mmの印刷画像203が、3回のパスで印刷できる。
【0068】
以上のように、印刷物205の製造方法の第1実施形態によれば、ユーザーが1パス印刷チェックボックス37をチェックすることで、印刷装置101が、印刷予定サイズから縮小された印刷画像203を1回のパスで印刷できるようになる。したがって、印刷画像203が複数回のパスに分けて印刷されたことにより印刷画像203にスジ209が生じることを、容易に抑制することができる。ゆえに、高品質な印刷物205を製造することができる。
【0069】
[処理側プロセッサーの機能構成:第1実施形態]
図17に基づいて、処理側プロセッサー3の機能構成の第1実施形態について説明する。処理側プロセッサー3は、取得機能15と、指定機能17と、受付機能19と、判断機能21と、変更機能22と、指示機能23とを備えている。これらの各機能は、処理側プロセッサー3が印刷プログラム13を実行することにより実現される。
【0070】
取得機能15は、印刷装置101が印刷画像203を印刷するための画像データを取得する。すなわち、取得機能15は、画像選択画面において選択された印刷候補画像45の画像データを取得する。
【0071】
指定機能17は、印刷画像203の印刷予定サイズをユーザーに指定させる。すなわち、指定機能17は、ユーザーに所望の印刷予定サイズをサイズ表示欄35に入力させることで、印刷予定サイズをユーザーに指定させる。
【0072】
受付機能19は、通常印刷要求と、1パス印刷要求と、を選択的にユーザーから受け付ける。すなわち、受付機能19は、印刷予定サイズが1パス可能サイズでない場合に通常印刷要求を受け付ける。受付機能19は、印刷予定サイズが1パス可能サイズである場合に1パス印刷要求を受け付ける。ここで、通常印刷要求とは、印刷画像203のY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい場合に、印刷画像203のサイズはそのままで印刷装置101に複数回のパスに分けて印刷画像203を印刷させるためのユーザーからの要求を意味する。1パス印刷要求とは、印刷画像203を印刷装置101に1回のパスで印刷画像203を印刷させるためのユーザーからの要求を意味する。
【0073】
判断機能21は、印刷画像203の印刷予定サイズが、印刷装置101が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断する。すなわち、判断機能21は、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長L以下である場合には、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであると判断する。一方、判断機能21は、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズが第1ノズル列長Lよりも大きい場合には、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断する。
【0074】
変更機能22は、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更する。すなわち、制限機能29は、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズが1パス可能サイズではない場合に、1パス印刷チェックボックス37がチェックされると、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更する。
【0075】
指示機能23は、印刷画像203を印刷するように印刷装置101に指示する印刷指示を行う。すなわち、指示機能23は、印刷候補画像45の画像データを印刷するサイズに変倍した変倍画像データを生成し、生成した変倍画像データを印刷装置101に送信することで、印刷指示を行う。この印刷指示は、印刷予定サイズが1パス可能サイズである場合の1パス印刷指示と印刷予定サイズが1パス可能サイズでない場合の通常印刷指示とに分類できる。
【0076】
以上のように、本実施形態の情報処理装置1は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断したときに、印刷画像203の印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更することで、印刷画像203を印刷装置101に1回のパスで印刷させることができる(図8参照)。したがって、印刷画像203が複数回のパスに分けて印刷されたことにより印刷画像203にスジ209が生じることを、抑制することができる。
【0077】
[処理側プロセッサーの機能構成:第2実施形態]
図18に基づいて、処理側プロセッサー3の機能構成の第2実施形態について説明する。処理側プロセッサー3は、制御機能25と、制限受付機能27と、制限機能29とを備えている。これらの各機能は、処理側プロセッサー3が印刷プログラム13を実行することにより実現される。
【0078】
制御機能25は、印刷装置101を制御する。例えば、制御機能25は、印刷ジョブを印刷装置101に送信することで、印刷装置101を制御する。
【0079】
制限受付機能27は、印刷画像203の印刷予定サイズを1パス可能サイズに制限する指示を受け付ける。すなわち、制限受付機能27は、1パス印刷チェックボックス37がチェックされることで、印刷予定サイズを1パス可能サイズに制限する指示を受け付ける。
【0080】
制限機能29は、制限受付機能27が、印刷予定サイズを1パス可能サイズに制限する指示を受け付けた場合に、印刷予定サイズが1パス可能サイズであるように印刷予定サイズを制限する。すなわち、制限機能29は、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズが1パス可能サイズではない場合に、1パス印刷チェックボックス37がチェックされると、サイズ表示欄35に表示された印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更する。また、制限機能29は、1パス印刷チェックボックス37がチェックされている場合には、サイズ表示欄35に表示されたY方向の印刷予定サイズを、第1ノズル列長Lが上限となるように制限する。
【0081】
[印刷物の製造方法:第2実施形態]
図19に基づいて、印刷システムSyが実行する印刷物205の製造方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであるか否かの判断を、情報処理装置1が行うのではなく、印刷装置101が行う点で、第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の点については、説明を省略する。
【0082】
ステップS31において、印刷装置101は、画像データを取得する。印刷装置101は、例えば、画像データを含む印刷ジョブを情報処理装置1から受信することで、画像データを取得する。或いは、印刷装置101は、情報処理装置1以外の装置から画像データを取得してもよく、この場合、印刷システムSyは、情報処理装置1を備えていなくてもよい。さらに、印刷装置101は、予め印刷側メモリー123に記憶された画像データを用いてもよい。
【0083】
ステップS32において、印刷装置101は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであるか否かを判断する。印刷装置101は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズであると判断すると、ステップS33に進む。
【0084】
ステップS33において、印刷装置101は、取得した画像データに基づき、印刷予定サイズと同じサイズの印刷画像203を、1回のパスで媒体201に印刷する。
【0085】
一方、ステップS32において、印刷装置101は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断すると、ステップS34に進む。
【0086】
ステップS34において、印刷装置101は、取得した画像データを縮小した縮小画像データを生成する。
【0087】
ステップS35において、印刷装置101は、生成した縮小画像データに基づき、印刷予定サイズから縮小された印刷画像203を、1回のパスで媒体201に印刷する。
【0088】
以上のように、印刷物205の製造方法の第2実施形態によれば、印刷装置101が、印刷予定サイズは1パス可能サイズではないと判断したときに、印刷装置101が、印刷予定サイズから縮小された印刷画像203を1回のパスで印刷する。したがって、印刷画像203が複数回のパスに分けて印刷されたことにより印刷画像203にスジ209が生じることを、抑制することができる。ゆえに、高品質な印刷物205を製造することができる。
【0089】
[その他の変形例]
上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。また、実施形態や変形例を、それぞれ組み合わせた構成でもよい。
【0090】
処理側プロセッサー3の指示機能23は、縮小画像データを印刷装置101に送信することで1パス印刷指示を行う構成に限定されず、例えば、回転画像データを印刷装置101に送信することで1パス印刷指示を行う構成でもよい。すなわち、指示機能23は、印刷画像203の印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷装置101が1回のパスで印刷画像203を印刷可能となるように、印刷候補画像45の画像データを回転した回転画像データを生成し、生成した回転画像データを印刷装置101に送信することで、1パス印刷指示を行う。これにより、図20に示すように、印刷装置101が1回のパスで印刷可能となるように回転された印刷画像203が、1回のパスで印刷される。なお、図20では、90°回転した印刷画像203が印刷されているが、印刷画像203の回転角度は特に限定されるものではなく、例えば、1回のパスで印刷可能な最小回転角度で回転した印刷画像203が印刷される構成でもよい。
【0091】
1パスで印刷できるようにする方法は、1パス印刷チェックボックス37の操作に限られない。例えば、1パス印刷チェックボックス37に代えて、1パスボタンを設け、1パスで印刷できないサイズが設定されている状態でこの1パス印刷ボタンが操作されたことに応じて、1パスで印刷できる最大のサイズに自動で変更してもよい。また、自動で変更するのは、1パスで印刷できるサイズであれば、最大のサイズに限られず、それよりも小さいサイズであってもよい。
【0092】
また、処理側プロセッサー3の指示機能23は、縮小画像データ或いは回転画像データを印刷装置101に送信することで1パス印刷指示を行う構成に限定されず、縮小或いは回転をしていない画像データと、印刷画像203を印刷するサイズと、を含むコマンドとを印刷装置101に送信することで、1パス印刷指示を行う構成でもよい。この場合、印刷装置101は、受信したコマンドに基づいて、受信した画像データを1回のパスで印刷可能となるように縮小した縮小画像データを生成し、生成した縮小画像データに基づいて、縮小された印刷画像203を媒体201に印刷する。或いは、印刷装置101は、受信したコマンドに基づいて、受信した画像データを1回のパスで印刷可能となるように回転した回転画像データを生成し、生成した回転画像データに基づいて、回転された印刷画像203を媒体201に印刷してもよい。
【0093】
印刷ヘッド107は、インクジェットヘッドに限定されず、例えば、熱転写方式で印刷を行うサーマルヘッドでもよい。
【0094】
[付記]
以下、印刷プログラムおよび印刷物の製造方法について付記する。
印刷プログラムは、印刷画像の印刷予定サイズが、媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断する判断機能と、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更する変更機能と、1回のパスで印刷画像を印刷するように印刷装置に指示する1パス印刷指示を行う指示機能と、をコンピューターに実現させる。
【0095】
この構成によれば、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されるときでも、印刷装置は、1パス印刷指示に基づいて、印刷画像を1回のパスで印刷する。したがって、印刷画像が複数回のパスに分けて印刷されたことにより印刷画像にスジが生じることを、抑制することができる。
なお、処理側プロセッサー3は、「コンピューター」の一例である。
【0096】
この場合、通常印刷要求と、1パス印刷要求と、を選択的にユーザーから受け付ける受付機能、をコンピューターに実現させ、指示機能は、通常印刷要求が受け付けられたときは、1パス印刷指示を行うことなく、印刷画像を印刷するように印刷装置に指示し、1パス印刷要求が受け付けられたときは、1パス印刷指示を行うことが好ましい。
【0097】
この構成によれば、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷装置に印刷画像を複数回のパスで印刷させるか、印刷装置に印刷画像を1回のパスで印刷させるか、をユーザーに選択させることができる。
【0098】
この場合、指示機能は、印刷装置が1回のパスで印刷可能な最大サイズで印刷画像を印刷するように、1パス印刷指示を行うことが好ましい。
【0099】
この構成によれば、印刷装置が1回のパスで印刷可能な最大サイズで、印刷画像を印刷装置に印刷させることができる。
【0100】
この場合、印刷予定サイズをユーザーに指定させる指定機能、をコンピューターに実現させ、判断機能は、ユーザーにより指定された印刷予定サイズが1パス可能サイズであるか否かを判断することが好ましい。
【0101】
この構成によれば、印刷装置により1回のパスで印刷される印刷画像の印刷予定サイズを、ユーザーに指定させることができる。
【0102】
この場合、印刷装置が印刷画像を印刷するための画像データを取得する取得機能、をコンピューターに実現させ、指示機能は、印刷装置が1回のパスで印刷画像を印刷可能となるように画像データを縮小した縮小画像データを生成し、生成した縮小画像データを送信することが好ましい。
【0103】
この構成によれば、画像データを縮小した縮小画像データを印刷装置に送信することで、印刷装置に印刷画像を1回のパスで印刷させることができる。
【0104】
この場合、印刷装置が印刷画像を印刷するための画像データを取得する取得機能、をコンピューターに実現させ、指示機能は、印刷装置が1回のパスで印刷画像を印刷可能となるように画像データを回転した回転画像データを生成し、生成した回転画像データを送信することで、1パス印刷指示を行うことが好ましい。
【0105】
この構成によれば、画像データを回転した回転画像データを印刷装置に送信することで、印刷装置に印刷画像を1回のパスで印刷させることができる。
【0106】
印刷プログラムは、印刷画像を媒体に印刷するように媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置を制御する制御機能と、ユーザーから、印刷画像の印刷予定サイズを印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示を受け付ける制限受付機能と、制限受付機能が指示を受け付けた場合に、印刷予定サイズが1パス可能サイズであるように印刷予定サイズを制限する制限機能と、をコンピューターに実現させる。
【0107】
印刷物の製造方法は、媒体に対して手動で移動させられることで媒体に印刷を行う印刷装置、を備えた印刷システムによる印刷物の製造方法であって、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズは印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズであるか否かを判断するステップと、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されたときに、印刷システムが、印刷予定サイズを1パス可能サイズに変更するステップと、印刷装置が、1回のパスで印刷画像を印刷するステップと、を備えた。
【0108】
この構成によれば、印刷予定サイズが1パス可能サイズではないと判断されるときでも、印刷装置は、印刷画像を1回のパスで印刷する。したがって、印刷画像が複数回のパスに分けて印刷されたことにより印刷画像にスジが生じることを、抑制することができる。
【0109】
印刷物の製造方法は、媒体に対して印刷装置を手動で移動させることで印刷画像が印刷された印刷物を製造する製造方法であって、印刷装置を備えた印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを印刷装置が1回のパスで印刷可能なサイズである1パス可能サイズに制限する指示をユーザーから受け付けるステップと、指示を受け付けた第1の場合に、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを1パス可能サイズに制限したうえで印刷装置に印刷を行わせ印刷物を生産するステップと、指示を受け付けていない第2の場合に、印刷システムが、印刷画像の印刷予定サイズを1パス可能サイズよりも大きいサイズで印刷装置に印刷を行わせ印刷物を生産するステップと、を備えた。
【符号の説明】
【0110】
3…処理側プロセッサー、13…印刷プログラム、15…取得機能、17…指定機能、19…受付機能、21…判断機能、23…指示機能、101…印刷装置、201…媒体、203…印刷画像、205…印刷物、Sy…印刷システム。
図1
図2
図3
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図5
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