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特許7581672導電体付きシート、合わせ板、及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】導電体付きシート、合わせ板、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/84 20060101AFI20241106BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20241106BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H05B3/84
B60S1/02 300
H05B3/20 347
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020114849
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012773
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】内田 晶子
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真
(72)【発明者】
【氏名】平田 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039318(WO,A1)
【文献】特表2007-517360(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204291(WO,A1)
【文献】特開2018-030459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/84
B60S 1/02
H05B 3/20
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体のサイドウィンドウに用いられる導電体付きシートであって、
基材と、
前記基材の一方の面上に配置された複数のパターン導電体と、
複数の前記パターン導電体に接続し、陽極と陰極から構成される一対のバスバーと、
を備え、
複数の前記パターン導電体が、
前記サイドウィンドウにおける前記移動体の前方から後方へ向かう方向の中心位置よりも前記前方の側の一部の領域に配置され、
複数の前記パターン導電体の前記一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが、いずれも同じであり、
複数の前記パターン導電体が同じ断面構成を有しており、
複数の前記パターン導電体の各パターン導電体が同じ間隔で並列配置されており、
複数の前記パターン導電体の各パターン導電体の前記移動体の前方から後方へ向かって並 列配置されている部分における前記移動体の後方の側に配置される部分の線幅が、前記移動体の前方の側に配置される部分の線幅よりも大きい、導電体付きシート。
【請求項3】
移動体のサイドウィンドウに用いられる導電体付きシートであって、
基材と、
前記基材の一方の面上に配置された複数のパターン導電体と、
複数の前記パターン導電体に接続し、陽極と陰極から構成される一対のバスバーと、
を備え、
複数の前記パターン導電体が、
前記サイドウィンドウにおける前記移動体の下方から上方へ向かう方向の中心位置よりも 前記下方の側の一部の領域に配置され、
複数の前記パターン導電体の前記一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが、いずれも同じであり、
複数の前記パターン導電体が同じ断面構成を有しており、
複数の前記パターン導電体の各パターン導電体が同じ間隔で並列配置されており、
複数の前記パターン導電体の各パターン導電体の前記移動体の下方から上方へ向かって並 列配置されている部分における前記移動体の上方の側に配置される部分の線幅が、前記移動体の下方の側に配置される部分の線幅よりも大きい、導電体付きシート。
【請求項4】
複数の前記パターン導電体が配置される前記領域が、
前記サイドウィンドウにおける前記移動体の前方から後方へ向かう方向の中心位置よりも 前記前方の側の領域を含む、請求項3に記載の導電体付きシート
【請求項11】
請求項に記載の合わせ板を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の窓ガラス等に設けられる導電体付きシート、この導電体付きシートを備える合わせ板、及び、これらを備える移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電体付きシートを有する合わせ板が広く用いられている。導電体付きシートは、パターン導電体を有している。導電体付きシートを有する合わせ板は、例えば、車両等の移動体の窓ガラスに用いられるデフロスター(霜取り装置)等に利用されている。
このようなデフロスターでは、一対の電極(バスバーと呼ばれる)を介してパターン導電体に電流を流すことでパターン導電体に抵抗加熱を発生させ、この発生した抵抗加熱を利用して合わせ板を加熱する(例えば、特許文献1、2)。パターン導電体に流す電流は、移動体のバッテリーから供給される。
移動体の窓ガラスに適用された合わせ板は、パターン導電体の発熱により、窓ガラスの曇りを取り除いたり、窓ガラスに付着した雪や氷を溶かしたり、または、窓ガラスに付着した水滴を蒸発させたりすることで、乗員の視界を確保することができる。
このようなパターン導電体を有する合わせ板は、移動体のフロントウィンドウの窓ガラスだけでなく、サイドウィンドウの窓ガラス等にも適用されることがある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-173402号公報
【文献】特開平8-72674号公報
【文献】特許第6403810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、移動体のサイドウィンドウの窓ガラス全域に、上記のようなパターン導電体を配置する場合、配置面積が広くなることからデフロスター(霜取り装置)のコストも高いものになってしまう。また、サイドウィンドウの窓ガラス全面を加熱するため、移動体のバッテリー等の電源の負荷も大きくなってしまう。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、移動体のサイドウィンドウの窓ガラスに用いられるデフロスターのコストダウンが可能であり、移動体の電源の負荷も軽減できる、導電体付きシート等を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電体付きシートは、移動体のサイドウィンドウに用いられる導電体付きシートであって、基材と、前記基材の一方の面上に配置された複数のパターン導電体と、複数の前記パターン導電体に接続し、陽極と陰極から構成される一対のバスバーと、を備え、複数の前記パターン導電体が、前記サイドウィンドウにおける前記移動体の前方から後方へ向かう方向の中心位置よりも前記前方の側の一部の領域に配置される。
【0007】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体が配置される前記領域が、前記サイドウィンドウにおける前記移動体の下方から上方へ向かう方向の中心位置よりも前記下方の側の領域を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の導電体付きシートにおいて、前記移動体が前記サイドウィンドウを保持するドアを有し、前記ドアは、ドア本体部とドアフレーム部を有し、複数の前記パターン導電体が配置される前記領域の面積が、前記サイドウィンドウにおいて、前記ドア本体部と前記ドアフレーム部で囲まれた領域の面積の5%以上30%未満であってもよい。
【0009】
本発明の導電体付きシートにおいて、前記移動体が、ドアミラーを有し、複数の前記パターン導電体が配置される前記領域が、前記移動体の乗員が前記サイドウィンドウを透視して前記ドアミラーのミラー面を視認する領域を含んでいてもよい。
【0010】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体の前記一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが、いずれも同じであってもよい。
【0011】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体のうち、前記一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが最も短い前記パターン導電体の長さをLminとし、前記一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが最も長い前記パターン導電体の長さをLmaxとした場合に、0≦(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)≦0.1であってもよい。
【0012】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体が、一の方向に延びた後、前記一の方向とは異なる方向であって、かつ、前記一の方向とは反対の方向とも異なる方向に向かって延び、その後、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分を有していてもよい。
【0013】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体が、一の前記パターン導電体と、前記一の前記パターン導電体の外側に位置する前記パターン導電体と、前記一の前記パターン導電体の内側に位置する前記パターン導電体と、を備え、前記一の前記パターン導電体における前記一の方向に延びた後、前記一の方向とは異なる方向であって、かつ、前記一の方向とは反対の方向とも異なる方向に向かって延び、その後、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分が、前記一の前記パターン導電体の外側に位置する前記パターン導電体における前記一の方向に延びた後、前記一の方向とは異なる方向であって、かつ、前記一の方向とは反対の方向とも異なる方向に向かって延び、その後、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分と、前記一の前記パターン導電体の内側に位置する前記パターン導電体における前記一の方向に延びた後、前記一の方向とは異なる方向であって、かつ、前記一の方向とは反対の方向とも異なる方向に向かって延び、その後、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分と、で挟まれていてもよい。
【0014】
本発明の導電体付きシートにおいて、複数の前記パターン導電体の線幅が、複数の前記パターン導電体が配置される前記領域の一の端部の側から該端部とは反対側の端部の側に向かって大きくなっていってもよい。
【0015】
本発明の導電体付きシートにおいて、前記移動体の後方の側に配置される前記パターン導電体の線幅が、前記移動体の前方の側に配置される前記パターン導電体の線幅よりも大きくてもよい。
【0016】
本発明の導電体付きシートにおいて、前記移動体の上方の側に配置される前記パターン導電体の線幅が、前記移動体の下方の側に配置される前記パターン導電体の線幅よりも大きくてもよい。
【0017】
本発明の合わせ板は、前記導電体付きシートと、第1透明基板と、第2透明基板と、接合層と、を備え、前記第1透明基板は、前記導電体付きシートに対して前記基材の前記パターン導電体が配置された前記一方の面とは反対側に位置しており、前記第2透明基板は、前記導電体付きシートに対して前記基材の前記パターン導電体が配置された前記一方の面の側に位置しており、前記接合層は、前記導電体付きシートと前記第2透明基板との間に位置する。
【0018】
本発明の移動体は、前記導電体付きシートを備える。
【0019】
本発明の移動体は、前記合わせ板を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体のサイドウィンドウの窓ガラスに用いられるデフロスターのコストダウンが可能であり、移動体の電源の負荷も軽減も可能な導電体付きシート等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る導電体付きシートを備えた移動体の例の概略を示す図
図2図1に示す移動体が備えるドアの一例について説明する図
図3】本発明に係る導電体付きシートの第1の実施形態の一例を示す平面図
図4図3に示す導電体付きシートのA-A線における断面構成の一例を示す断面図
図5図1に示す移動体が備えるドアの他の例について説明する図
図6】本発明に係るパターン導電体の配置形態の一例について説明する図
図7】本発明に係るパターン導電体の配置形態の他の例について説明する図
図8】本発明に係るパターン導電体の配置形態の他の例について説明する図
図9】本発明に係るパターン導電体の配置形態の他の例について説明する図
図10】本発明に係る合わせ板の断面構成の一例を示す断面図
図11図4に示す導電体付きシートの製造方法の一例を示す図
図12図10に示す合わせ板の製造方法の一例を示す図
図13】本発明に係る導電体付きシートの第2の実施形態の一例を示す平面図
図14図13に示すパターン導電体の配置形態の一例について説明する図
図15図13に示す導電体付きシートのB-B線における断面構成の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0023】
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「導電体付きシート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「導電体付きシート」は、「導電体付き板(基板)」や「導電体付きフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0024】
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
【0025】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「矩形」、「台形」、「楕円形」、「平板」、「平面」、「平行」、「直交」、「同じ」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0026】
<第1の実施形態>
(移動体)
図1は、本発明に係る導電体付きシートを備えた移動体の例の概略を示す図である。
図1に示す移動体1は一例としてセダン型の乗用車を示すものである。移動体1は、窓ガラスとしてドア2に備えられるサイドウィンドウ3を有している。また、移動体1はドアミラー4を有している。また、移動体1はバッテリー等の電源5を有している。
移動体1においては、電源5からの電流供給によって、サイドウィンドウ3に設けられた導電体付きシートのパターン導電体に電流を流すことができる。そして、パターン導電体に電流を流すことでパターン導電体に抵抗加熱を発生させ、この発生した抵抗加熱を利用して、サイドウィンドウ3を加熱することができる。
【0027】
図2は、図1に示す移動体1が備えるドアの一例について説明する図である。
なお、セダン型の乗用車等が備えるドアは、通常、湾曲した形態を有するが、理解の容易化のために、図2においてはドア2を平板状の形態として示している。また、煩雑となることを避けるため、図1に示す移動体1が備えるドアミラー4の図示は省略している。
【0028】
図2に示すように、ドア2はドア本体部2aとドアフレーム部2bを有している。
ドア2はサイドウィンドウ3を開閉可能に保持しており、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、サイドウィンドウ3を構成する窓ガラス3a(図2において外形を破線で示す)は、その下方の側の一部がドア本体部2aの中に収納されている。また、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、窓ガラス3aの前方の側の一部、後方の側の一部、および、上方の側の一部は、ドアフレーム部2bの中に収納されている。
一方、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、ドア本体部2aとドアフレーム部2bで囲まれた窓ガラス3aの領域(透視領域3bと呼ぶ)は、移動体1の乗員の視界を妨げない程度に、移動体1の内側から外側を透視し得る程度の透明性を有している。
【0029】
そして、透視領域3bの特定の領域7に、導電体付きシートのパターン導電体が配置されている。このパターン導電体が配置されている領域7は、移動体1の乗員(特に運転者)において、窓ガラス3aの透視領域3bを透視して、移動体1に備えられたドアミラー4のミラー面を視認できる領域を含むものである。
このパターン導電体が配置されている領域7は、サイドウィンドウ3における移動体1の前方から後方へ向かう方向の中心位置よりも前方の側の一部の領域とすることができる。また、このパターン導電体が配置されている領域7は、サイドウィンドウ3における移動体1の下方から上方へ向かう方向の中心位置よりも前記下方の側の領域を含む領域とすることができる。
【0030】
このパターン導電体が配置されている領域7は、例えば、窓ガラス3aの透視領域3bが有する角部のうち、ドア本体部2aとドアフレーム部2bから構成される角部であって、移動体1の前方の側に位置する角部6から、移動体1の後方の側および移動体1の上方の側に広がる領域とすることができる。
【0031】
このパターン導電体が配置されている領域7は、上記のように、移動体1の乗員(特に運転者)において、ドアミラー4のミラー面を視認できる領域を含んでいればよいことから、領域7の面積は透視領域3bの面積よりも小さい面積であってよい。
そして、領域7の面積を透視領域3bの面積よりも小さい面積とすることで、透視領域3bの全域にパターン導電体を配置する場合に比べて、サイドウィンドウ3に用いられるデフロスターのコストダウンが可能になる。また、電源5の負荷の軽減も可能になる。
【0032】
このような領域7の面積としては、透視領域3bの面積の5%以上30%未満とすることが好ましい。領域7の面積が上記の範囲であれば、移動体1の乗員(特に運転者)においてドアミラー4のミラー面の視認性を確保しつつ、サイドウィンドウ3に用いられるデフロスターのコストダウンが可能になるからである。また、電源5の負荷の軽減も可能になる。
【0033】
(導電体付きシート)
図3は、本発明に係る導電体付きシートの第1の実施形態の一例を示す平面図である。また、図4は、図3に示す導電体付きシート10のA-A線における断面構成の一例を示す断面図である。
ここで、図3は、導電体付きシート10をそのシート面の法線方向から見た平面図に相当し、図2で示した領域7に対する、パターン導電体11、一対のバスバー12の配置例を主に示すものである。
【0034】
図3図4に示すように、導電体付きシート10は、基材51と、基材51の一方の面上に配置された複数の線状のパターン導電体11と、複数のパターン導電体11に接続し、陽極12aと陰極12bから構成される一対のバスバー12と、を備えている。
また、図3図4に示す例において、パターン導電体11は、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)から構成されており、各パターン導電体(11a、11b、11c)は、領域7において、屈曲しつつ、一定の間隔(D)で並列配置されている。
そして、各パターン導電体(11a、11b、11c)は、それぞれ、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bに接続されている。それゆえ、一対のバスバー12からの電流供給により、各パターン導電体(11a、11b、11c)に抵抗加熱が発生し、この発生した抵抗加熱により領域7が加熱される。
【0035】
ここで、各パターン導電体(11a、11b、11c)が同じ断面構成を有しており、各パターン導電体(11a、11b、11c)の長さ(より詳しくは、一対のバスバー12の陽極12aから陰極12bに至る長さ)が同じであって、各パターン導電体(11a、11b、11c)の線幅が同じであれば、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗も同じになる。
それゆえ、このような場合には、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗加熱も同じになり、領域7において、各パターン導電体(11a、11b、11c)が同じ間隔で並列配置されていれば、領域7を均一に加熱できることになる。
【0036】
なお、図3に示す例においては、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bの間に位置する領域においても、パターン導電体11bとパターン導電体11cが同じ間隔で並列配置されている。それゆえ、この陽極12aと陰極12bの間に位置する領域においても均一に加熱されることになるため、この領域も上記の領域7となるようにしてもよい。
【0037】
ただし、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、パターン導電体11に比べて面積が大きいため、パターン導電体11に比べて視認され易い。それゆえ、陽極12aと陰極12bがサイドウィンドウ3の透視領域3bに配置される場合、意匠性の低下を招いてしまう不具合がある。
【0038】
このような不具合を回避するために、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3の透視領域3bの領域内に配置されないようにすることが好ましい。
例えば、図2に示す例のように、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、ドア本体部2aに重なる位置に配置されることが好ましい。
【0039】
また、図5に示す例のように、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、ドアフレーム部2bに重なる位置に配置されるようにしてもよい。なお、図5に示す例のように、陽極12aと陰極12bを配置する場合は、例えば、図3に示すパターン導電体11と一対のバスバー12の配置を時計回りに90°回転させた配置とすればよい。
【0040】
(パターン導電体の配置形態)
次に、図6図9を参照しながら、本発明に係る導電体付きシートに備えられるパターン導電体の配置形態について詳しく説明する。
図6は、図3に示したパターン導電体11の配置形態について説明する図である。すなわち、図6は、図3からパターン導電体11のみを抽出した図に相当する。
上述したように、パターン導電体11は、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)から構成されており、各パターン導電体(11a、11b、11c)は、屈曲しつつ、一定の間隔で並列配置されている。
【0041】
そして、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)は、それぞれ、一の方向(図中のY方向)に延びた後、一の方向とは異なる方向であって、かつ、一の方向とは反対の方向とも異なる方向(図中のX方向)に向かって延び、その後、一の方向とは反対の方向に延びる部分を有する。
【0042】
また、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)は、一のパターン導電体(パターン導電体11b)と、一のパターン導電体(パターン導電体11b)の外側に位置するパターン導電体(パターン導電体11a)と、一のパターン導電体(パターン導電体11b)の内側に位置するパターン導電体(パターン導電体11c)と、を備えている。
【0043】
そして、パターン導電体11bにおける一の方向(図中のY方向)に延びた後、一の方向とは異なる方向であって、かつ、一の方向とは反対の方向とも異なる方向(図中のX方向)に向かって延び、その後、一の方向とは反対の方向に延びる部分が、パターン導電体11aにおける一の方向(図中のY方向)に延びた後、一の方向とは異なる方向であって、かつ、一の方向とは反対の方向とも異なる方向(図中のX方向)に向かって延び、その後、一の方向とは反対の方向に延びる部分と、パターン導電体11cにおける一の方向(図中のY方向)に延びた後、一の方向とは異なる方向であって、かつ、一の方向とは反対の方向とも異なる方向(図中のX方向)に向かって延び、その後、一の方向とは反対の方向に延びる部分と、で挟まれている。
【0044】
より具体的には、図6に示す3本のパターン導電体(11a、11b、11c)の内、最も外側に配置されるパターン導電体11aは、始点PA1から第1の屈曲点PA2へ図中のY方向に向かって長さL1で延び、次に、第1の屈曲点PA2から第2の屈曲点PA3へ図中のX方向に向かって長さW1で延び、続いて、第2の屈曲点PA3から終点PA4へ図中のY方向とは反対の方向に向かって長さL1で延びる形態を有している。
そして、パターン導電体11aの長さ(始点PA1から終点PA4に至るまでの長さ)はL1の2倍にW1を加えた大きさになる。
【0045】
また、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)の内、パターン導電体11aとパターン導電体11cとの間に配置されるパターン導電体11bは、始点PB1から第1の屈曲点PB2へ図中のX方向に向かって長さD(図3に示す間隔Dと同じ)で延び、次に、第1の屈曲点PB2から第2の屈曲点PB3へ図中のY方向に向かって長さL1で延び、続いて、第2の屈曲点PB3から第3の屈曲点PB4へ図中のX方向に向かって長さ3×D(Dの3倍の大きさ)で延び、続いて、第3の屈曲点PB4から第4の屈曲点PB5へ図中のY方向とは反対の方向に向かって長さL1で延び、最後に、第4の屈曲点PB5から終点PB6へ図中のX方向に向かって長さDで延びる形態を有している。
そして、パターン導電体11bにおいて、X方向に延びる線分の長さの和(すなわち、始点PB1から第1の屈曲点PB2へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さD、第2の屈曲点PB3から第3の屈曲点PB4へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さ3×D、および、第4の屈曲点PB5から終点PB6へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さDの和である5×D)はW1の大きさになる。
すなわち、このパターン導電体11bの長さ(始点PB1から終点PB6に至るまでの長さ)もL1の2倍にW1を加えた大きさになる。
【0046】
また、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)の内、最も内側に配置されるパターン導電体11cは、始点PC1から第1の屈曲点PC2へ図中のX方向に向かって長さ2×Dで延び、次に、第1の屈曲点PC2から第2の屈曲点PC3へ図中のY方向に向かって長さL1で延び、続いて、第2の屈曲点PC3から第3の屈曲点PC4へ図中のX方向に向かって長さDで延び、続いて、第3の屈曲点PC4から第4の屈曲点PC5へ図中のY方向とは反対の方向に向かって長さL1で延び、最後に、第4の屈曲点PC5から終点PC6へ図中のX方向に向かって長さ2×Dで延びる形態を有している。
そして、パターン導電体11cにおいて、X方向に延びる線分の長さの和(すなわち、始点PC1から第1の屈曲点PC2へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さ2×D、第2の屈曲点PC3から第3の屈曲点PC4へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さD、および、第4の屈曲点PC5から終点PC6へ図中のX方向に向かって延びる線分の長さ2×Dの和である5×D)もW1の大きさになる。
すなわち、このパターン導電体11cの長さ(始点PC1から終点PC6に至るまでの長さ)もL1の2倍にW1を加えた大きさになる。
【0047】
すなわち、図6に示すような配置形態とすることで、3本のパターン導電体(11a、11b、11c)の長さを同じにすることができる。
そして、各パターン導電体(11a、11b、11c)が同じ断面構成を有しており、各パターン導電体(11a、11b、11c)の線幅が同じであれば、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗も同じになり、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗加熱も同じになる。
それゆえ、特定の領域(例えば、図2図3に示す領域7)において、各パターン導電体(11a、11b、11c)が同じ間隔で並列配置されていれば、該領域を均一に加熱できることになる。
【0048】
上記のような均一加熱は、パターン導電体が配置される領域のY方向の長さを変えても実現できる。
例えば、図7に示すパターン導電体21の配置形態は、図6に示したパターン導電体11の配置形態において、Y方向の長さL1をL2に大きくした形態に相当する。
この図7に示すパターン導電体21の配置形態においても、図6に示した例と同様に、3本のパターン導電体(21a、21b、21c)の長さを同じにすることができる。
より詳しくは、図7に示す3本のパターン導電体(21a、21b、21c)の内、最も外側に配置されるパターン導電体21aの長さは、L2の2倍にW1を加えた大きさになる。また、パターン導電体21bの長さも、L2の2倍にW1を加えた大きさになる。同様に、パターン導電体21cの長さも、L2の2倍にW1を加えた大きさになる。
すなわち、図7に示す配置形態においても、各パターン導電体の長さを同じにすることができる。
【0049】
また、上記のような均一加熱は、パターン導電体が配置される領域のX方向の長さを変える場合も実現できる。
例えば、図8に示す例においては、パターン導電体31が配置される領域のX方向の長さ(W3)は、図6に示したパターン導電体11が配置される領域のX方向の長さ(W1)よりも大きい。
このような場合も、W3の大きさをW1に対して特定の大きさとすることで、パターン導電体31が配置される領域の均一な加熱が実現できる。
【0050】
より具体的には、例えば、図8に示すように、W3の大きさを、W1の2倍にD(並列配置されるパターン導電体の間隔)を加えた大きさとすればよい。
この場合、図8に示す3本のパターン導電体(31a、31b、31c)の内、最も外側に配置されるパターン導電体31aの長さは、L3の4倍にW3を加えた大きさになる。ここで、W3はW1の2倍にDを加えた大きさになる。
また、パターン導電体31bの長さも、L3の4倍にW3を加えた大きさになる。ここで、図6に示したパターン導電体11bと同様に、パターン導電体31bにおいてX方向に延びる線分の長さの和はW1の2倍にDを加えた大きさになる。
すなわち、このパターン導電体31bの長さはパターン導電体31aの長さと同じになる。
同様に、パターン導電体31cの長さも、L3の4倍にW3を加えた大きさになる。ここで、図6に示したパターン導電体11cと同様に、パターン導電体31bにおいてX方向に延びる線分の長さの和はW1の2倍にDを加えた大きさになる。
すなわち、このパターン導電体31cの長さもパターン導電体31aの長さと同じになる。
【0051】
なお、パターン導電体が配置される領域のX方向の長さを、さらに大きくしたい場合は、例えば、図8に示すパターン導電体31のX方向に、3本のパターン導電体(31a、31b、31c)のそれぞれに長さDで延びるパターン導電体を介して、図6に示したパターン導電体11を追加配置した形態とすればよい。
さらに大きくしたい場合も、同様に、3本のパターン導電体(31a、31b、31c)のそれぞれに長さDで延びるパターン導電体を介して、図6に示したパターン導電体11を追加配置した形態とすればよい。これを繰り返していけばよい。
【0052】
また、上記のような均一加熱は、並列配置されるパターン導電体の間隔の大きさを変える場合も実現できる。
例えば、図9に示す例においては、パターン導電体41の間隔は、図6に示したパターン導電体11の間隔Dの半分の大きさである。
このような場合も、パターン導電体41の本数を増やすことで、パターン導電体41が配置される領域の均一な加熱が実現できる。
【0053】
より具体的には、例えば、図9に示すように、パターン導電体41の本数を5本とすればよい。
すなわち、図9に示すパターン導電体41の配置形態は、図6に示したパターン導電体11の配置形態において、パターン導電体11aとパターン導電体11bとの間、および、パターン導電体11bとパターン導電体11cとの間に、各1本ずつパターン導電体を追加し、合計5本のパターン導電体の間隔をD/2とした形態に相当する。
このような配置形態とした場合も、5本の各パターン導電体の長さは、いずれも、L4の4倍にW4を加えた大きさとすることができる。ここで、W4はW1の2倍にD/2を加えた大きさになる。
【0054】
以上、図6図9を用いて説明したように、本発明に係る導電体付きシートに備えられるパターン導電体においては、パターン導電体が配置される領域の均一な加熱を保ちつつ、目的とする領域の大きさに合わせて配置形態を変えることが可能である。
それゆえ、図2に例示するような、サイドウィンドウ3の透視領域3bの面積よりも小さい面積とする領域7に対しても、領域7の大きさに合わせて、適切にパターン導電体を配置することが可能である。
そして、領域7の面積を透視領域3bの面積よりも小さい面積とすることで、透視領域3bの全域にパターン導電体を配置する場合に比べて、サイドウィンドウ3に用いられるデフロスターのコストダウンが可能になる。また、電源5の負荷の軽減も可能になる。
【0055】
なお、図6図9を用いた説明では、理解を容易とするために、複数のパターン導電体の長さ(より詳しくは、一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さ)が、いずれも同じである形態について説明した。しかしながら、現実の製造においては、厳密に、同じ長さを追求することには困難性が伴う。一方、上記のように、デフロスターとして特定の領域(領域7)を均一に加熱するという目的であれば、パターン導電体の長さも多少の違いが許容される。そして、一般的に製品加工等の分野においては、目標寸法に対して±10%程度の寸法差は許容される。
それゆえ、本発明においても、例えば、複数のパターン導電体のうち、一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが最も短いパターン導電体の長さをLminとし、一対のバスバーの陽極から陰極に至る長さが最も長いパターン導電体の長さをLmaxとした場合に、
0≦(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)≦0.1
である場合には、許容範囲とすることができる。
【0056】
(合わせ板)
図10は、本発明に係る合わせ板の断面構成の一例を示す断面図である。図10に示すように、合わせ板60は、導電体付きシート10と、第1透明基板61と、第2透明基板62と、接合層63と、を備えている。
ここで、第1透明基板61は、導電体付きシート10に対して、基材51のパターン導電体52が配置された面とは反対側に位置している。また、第2透明基板62は、導電体付きシート10に対して、基材51のパターン導電体52が配置された面の側に位置している。そして、接合層63は、導電体付きシート10と第2透明基板62との間に位置している。
言い換えれば、合わせ板60は、第1透明基板61、導電体付きシート10、接合層63、および第2透明基板62が、順次積層された構成を有している。
【0057】
なお、合わせ板60には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせ板60の第1透明基板61及び第2透明基板62、接合層63、導電体付きシート10の基材51の、少なくとも一つに何らかの機能を付与するようにしてもよい。合わせ板60に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能、接合機能等を例示することができる。
【0058】
合わせ板60は導電体付きシート10を備えるため、上述した導電体付きシート10が奏する効果を、同様に奏することができる。例えば、図2に例示するように、パターン導電体52が配置されている領域7の面積を、サイドウィンドウ3の透視領域3bの面積よりも小さい面積とすることで、透視領域3bの全域にパターン導電体52を配置する場合に比べて、サイドウィンドウ3に用いられるデフロスターのコストダウンが可能になる。また、電源5の負荷の軽減も可能になる。
【0059】
(構成要素)
以下、導電体付きシート10および合わせ板60を構成する各構成要素について説明する。
【0060】
(基材)
基材51は、導電体付きシート10のパターン導電体11や一対のバスバー12を支持する基材として機能する。また、合わせ板60において、基材51は、導電体付きシート10と第1透明基板61とを接着させるように機能する。
基材51は、可視光線波長帯域の波長(380nm~780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性のフィルムである。
【0061】
合わせ板60において、基材51と基材51に接する接合層63との境界を認識され難くするため、基材51の屈折率は、接合層63の屈折率と同一であることが好ましい。このような基材51の材料としては、接合層63と同様の材料であるポリビニルブチラール(PVB)を例示することができる。
【0062】
基材51の厚みとしては、光透過性や、パターン導電体11や一対のバスバー12を支持する基材としての適切な支持性等を考慮すると、0.03mm以上0.20mm以下の厚みを有していることが好ましい。基材51を十分に薄くすることで、基材51を観察されにくくすることができる。
【0063】
なお、「透明」とは、当該基材を介して当該基材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
【0064】
(パターン導電体)
図3に示すパターン導電体11(図4に示すパターン導電体52と同じ)は、電流を流されることで抵抗加熱を発生する発熱体として機能する。
図3に示す例において、パターン導電体11は、接続される一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bとの間に複数本の屈曲した線状のパターンとして配置されている。しかしながら、図示された例に限らず、パターン導電体11はメッシュ状のパターンで配置されていてもよい。また、パターン導電体11は、波線等の曲線の形態であってもよい。
【0065】
パターン導電体11は、不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、パターン導電体11によって覆われていない基材51上の領域の割合、すなわち非被覆率は、70%以上90%以下程度と高くなっている。また、後述するように、パターン導電体11の線幅は、2μm以上20μm以下程度となっている。このため、パターン導電体11が配置されている領域7は、全体として透明に把握され、移動体1の乗員による視界を害さないようになっている。すなわち、パターン導電体11は移動体1の乗員に対して、十分に不可視化されている。
【0066】
図4に示す例において、パターン導電体52(図3に示すパターン導電体11と同じ)は、全体として矩形状の断面を有している。均一な加熱とするために、複数本のパターン導電体52は、その断面積が同じであって、同じ間隔で配置されていることが好ましい。
パターン導電体52の線幅(LW)は2μm以上20μm以下とし、高さ(LH)は1μm以上60μm以下とすることが好ましい。また、間隔Dは、1mm以上10mm以下とすることが好ましい。このような寸法であれば、パターン導電体52は発熱体として機能することができ、また、このような寸法のパターン導電体52によれば、十分に細線化されているので、パターン導電体52を効果的に不可視化することができる。
【0067】
また、図4に示すように、パターン導電体52は、導電層52a、導電層52aの表面のうち、基材51側の面を覆う第1暗色層52b、導電層52aの表面のうち、基材51側とは反対側の面及び両側面を覆う第2暗色層52cを含むようにしてもよい。とりわけ、パターン導電体52は、第1暗色層52bを少なくとも含んでいることが好ましい。優れた導電性を有する金属材料からなる導電層52aは、比較的高い反射率を呈する。そして、パターン導電体52をなす導電層52aによって光が反射されると、その反射した光が観察されるようになり、移動体1の乗員の視界を妨げる場合があるからである。
また、外部から導電層52aが観察されると、意匠性が低下する場合がある。そこで、第2暗色層52cが、導電層52aの表面の少なくとも一部分を覆っていることが好ましい。外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができるからである。
第1暗色層52b及び第2暗色層52cは、導電層52aよりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば黒色等の暗色の層である。
【0068】
このような導電層52aを構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン等の金属、及び、これらの金属の1種以上を含んでなる合金の一以上を例示することができる。
【0069】
(バスバー)
図3に示す導電体付きシート10は、一対のバスバー12を有している。図3に示すように、一対のバスバー12は、互いに離間して配置される陽極12aと陰極12bから構成されている。
移動体1において、電源5の電圧が、一対のバスバー12に印加されることで、導電体付きシート10のパターン導電体11に電流が流れる。
一対のバスバー12を構成する陽極12a、陰極12bは、電気抵抗を低くするために、パターン導電体11に比べて幅が大きくなっている。このため、一対のバスバー12を構成する陽極12a、陰極12bにおいては、抵抗加熱による発熱は生じ難い。
【0070】
一対のバスバー12を構成する陽極12a、陰極12bの高さは、パターン導電体11の高さ(図4に示すパターン導電体52の高さLH)と同じとすることが好ましい。パターン導電体11の製造と、一対のバスバー12を構成する陽極12a、陰極12bの製造を、一括して行うことが可能になるからである。
【0071】
なお、図示は省略するが、一対のバスバー12も、図4に示すパターン導電体52と同様に、金属材料からなる導電層と、導電層の表面に形成された暗色層と、を有していてもよい。暗色層によって比較的高い反射率を呈する導電層が観察されづらくなり、乗員や撮影装置の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。
【0072】
このような一対のバスバー12を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン等の金属、及び、これらの金属の1種以上を含んでなる合金の一以上を例示することができる。
一対のバスバー12を構成するための材料は、パターン導電体11を構成する材料と同じものであることが好ましい。パターン導電体11の製造と、一対のバスバー12の製造を、一括して行うことが可能になるからである。
【0073】
また、上述したように、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3の透視領域3bの領域内に配置されないようにすることが好ましい。
例えば、図2に示す例のように、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、ドア本体部2aに重なる位置に配置されることが好ましい。また、図5に示す例のように、一対のバスバー12の陽極12aと陰極12bは、サイドウィンドウ3を閉めた状態において、ドアフレーム部2bに重なる位置に配置されるようにしてもよい。
【0074】
(第1透明基板、第2透明基板)
第1透明基板61および第2透明基板62は、移動体1の乗員の視界を妨げないよう、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。第1透明基板61、第2透明基板62を構成する材料としては、ソーダライムガラスや青板ガラスが例示できる。第1透明基板61、第2透明基板62の可視光透過率は90%以上であることが好ましい。ここで、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。また、第1透明基板61、第2透明基板62は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1透明基板61、第2透明基板62を得ることができる。
【0075】
第1透明基板61と第2透明基板62は、板面の法線方向からの観察において、すなわち平面視において、略同一形状となっている。第1透明基板61、第2透明基板62は、同一の材料で構成されていてもよいし、あるいは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
【0076】
(接合層)
接合層63は、導電体付きシート10と第2透明基板62との間に配置され、導電体付きシート10と第2透明基板62とを互いに接合する。図10に示すように、合わせ板60においてパターン導電体52は、接合層63内に埋め込まれた状態となっている。
【0077】
接合層63としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができるが、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。また、合わせ板60において、接合層63と接合層63に接する基材51との境界を認識されにくくするため、接合層63の屈折率は、基材51の屈折率と同一であることが好ましい。
このような接合層63の典型的な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層63の厚みは、0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0078】
(導電体付きシートの製造方法)
次に、導電体付きシート10の製造方法について説明する。図11は、図4に示す導電体付きシート10の製造方法の一例を示す工程図である。
【0079】
まず、図11(a)に示すように、第1暗色層52bを形成することになる暗色層52Bを基材51上に設け、導電層52aを形成することになる金属膜52Aを暗色層52B上に設ける。
金属膜52Aは、導電層52aをなす材料として既に説明したように、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上を用いて形成され得る。金属膜52Aは、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。
【0080】
次に、図11(b)に示すように、金属膜52A上に、レジストパターン70を設ける。レジストパターン70は、形成されるパターン導電体52に対応した形となっている。ここで説明する方法では、最終的にパターン導電体52をなす箇所の上にのみ、レジストパターン70が設けられている。このレジストパターン70は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。
【0081】
次に、図11(c)に示すように、レジストパターン70をマスクとして、金属膜52A及び暗色層52Bをエッチングする。このエッチングにより、金属膜52A及び暗色層52Bがレジストパターン70と略同一のパターンにパターニングされる。この結果、パターニングされた金属膜52Aから、導電層52aが形成され、暗色層52Bから、第1暗色層52bが形成される。
【0082】
なお、エッチング方法は特に限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、エッチング液を用いるウェットエッチングや、プラズマエッチングなどが挙げられる。その後、図11(d)に示すように、レジストパターン70を除去する。
【0083】
次に、図11(e)に示すように、導電層52aの基材51の側とは反対側の面及び側面に第2暗色層52cを形成する。第2暗色層52cは、例えば導電層52aをなす材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施して、導電層52aをなしていた一部分から、金属酸化物や金属硫化物からなる第2暗色層52cを形成することができる。また、導電層52aの表面に第2暗色層52cを設けるようにしてもよい。また、導電層52aの表面を粗化して第2暗色層52cを設けるようにしてもよい。
以上のような工程によって、図4に示す導電体付きシート10を製造することができる。
【0084】
(合わせ板の製造方法)
次に、図10に示す合わせ板60の製造方法について説明する。図12は、図10に示す合わせ板60の製造方法の一例を示す工程図である。
【0085】
図10に示す合わせ板60を製造するには、例えば、図12(a)に示すように、上記のようにして製造した導電体付きシート10の基材51の側から第1透明基板61を接合し、導電体付きシート10のパターン導電体52が配置されている側から接合層63及び第2透明基板62を積層して、導電体付きシート10と第2透明基板62とを接合する。
このような工程によって、図12(b)に示すように、合わせ板60が製造される。
【0086】
<第2の実施形態>
(導電体付きシート)
上述の本発明に係る導電体付きシートの第1の実施形態においては、例えば、図4に示すように、パターン導電体52は、全て同じ線幅(LW)、同じ高さ(LH)を有する形態を例示した。
この場合、例えば、図3に示すような配置形態とすることで、各パターン導電体(11a、11b、11c)の長さを同じにすることが可能なため、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗も同じになり、各パターン導電体(11a、11b、11c)の抵抗加熱も同じになる。それゆえ、特定の領域(例えば、図2図3に示す領域7)において、各パターン導電体(11a、11b、11c)が同じ間隔(D)で並列配置されていれば、該領域を均一に加熱できることになる。
【0087】
一方、図2に例示するように、パターン導電体が配置されている領域7の面積を、サイドウィンドウ3の透視領域3bの面積よりも小さい面積とする場合には、領域7を均一加熱するよりも、加熱に勾配があった方が好ましい場合がある。すなわち、領域7に配置されるパターン導電体の抵抗加熱に、勾配があった方が好ましい場合がある。
例えば、サイドウィンドウ3において、パターン導電体が配置されている領域7の温度と、パターン導電体が配置されていない領域(領域7以外の領域)の温度との差が大きい場合、領域7とそれ以外の領域との境界に熱歪みに係る応力が集中して、サイドウィンドウ3を構成する窓ガラスが破損してしまうおそれがある。
このような不具合を回避するために、本実施形態においては、領域7に配置されるパターン導電体の抵抗加熱に勾配を持たせるようにする。
【0088】
図13は、本発明に係る導電体付きシートの第2の実施形態の一例を示す平面図である。また、図14は、図13に示すパターン導電体の配置形態の一例について説明する図である。また、図15は、図13に示す導電体付きシートのB-B線における断面構成の一例を示す断面図である。
なお、図13図14に示すパターン導電体101の配置形態は、図3図6に示すパターン導電体11の配置形態と同様であってよい。ただし、図3図6に示すパターン導電体(11a、11b、11c)は、3本とも配置領域の全域で、線幅が同じものであった。一方、図13図14に示すパターン導電体(101a、101b、101c)は、配置位置に応じて線幅が異なる。より詳しくは、図13図14に示すパターン導電体101の線幅は、領域7の一の端部の側から該端部とは反対側の端部の側に向かって大きくなっていく形態を有している。
【0089】
図14図15における各パターン導電体の関係を述べると、まず、図14において、パターン導電体101aの始点PD1から第1の屈曲点PD2へ図中のY方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側の方向に位置するパターン導電体101a(線幅LW1)に相当する。
また、図14において、パターン導電体101bの第1の屈曲点PE2から第2の屈曲点PE3へ図中のY方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側から2番目に位置するパターン導電体101b(線幅LW2)に相当する。
同様に、図14において、パターン導電体101cの第1の屈曲点PF2から第2の屈曲点PF3へ図中のY方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側から3番目に位置するパターン導電体101c(線幅LW3)に相当する。
また、図14において、パターン導電体101cの第3の屈曲点PF4から第4の屈曲点PF5へ図中のY方向とは反対方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側から4番目に位置するパターン導電体101c(線幅LW4)に相当する。
同様に、図14において、パターン導電体101bの第3の屈曲点PE4から第4の屈曲点PE5へ図中のY方向とは反対方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側から5番目に位置するパターン導電体101b(線幅LW5)相当する。
同様に、図14において、パターン導電体101aの第2の屈曲点PD3から終点PD4へ図中のY方向とは反対方向に向かって延びる線分の断面が、図15において図中最も左側から6番目に位置する(換言すれば、図中最も右側の方向に位置する)パターン導電体101a(線幅LW6)に相当する。
【0090】
図15に示す導電体付きシート100において、各パターン導電体(101a、101b、101c)の高さは、いずれも同じ高さ(LH)である。
一方、線幅に関しては、図中最も左側の方向に位置するパターン導電体101aの線分から図中最も右側の方向に位置するパターン導電体101aの線分に向かって、線幅が大きくなっている。
より詳しくは、図中最も左側の方向に位置するパターン導電体101aの線分の線幅(LW1)が最も小さく、左側から右側に向かって順に、パターン導電体の線分の線幅が大きくなっていき、図中最も右側の方向に位置するパターン導電体101aの線分の線幅(LW2)が最も大きくなっている。
【0091】
ここで、上記のように、パターン導電体101の線幅が、領域7の一の端部の側から該端部とは反対側の端部の側に向かって大きくなっていく形態を有している場合であっても、各パターン導電体(101a、101b、101c)の抵抗を同じにすることができる。
例えば、図14に示すパターン導電体101において、X方向に延びる線分の線幅については、いずれも同じ大きさとし、Y方向に延びる線分(若しくは、Y方向とは反対方向に向かって延びる線分)の線幅については、図15に示すような関係とすればよい。
【0092】
より詳しくは、まずX方向に延びる線分の線幅について述べると、図14に示す、パターン導電体101aの第1の屈曲点PD2から第2の屈曲点PD3へ延びる線分、パターン導電体101bの始点PE1から第1の屈曲点PE2へ延びる線分、パターン導電体101bの第2の屈曲点PE3から第3の屈曲点PE4へ延びる線分、パターン導電体101bの第4の屈曲点PE5から終点PE6へ延びる線分、パターン導電体101cの始点PF1から第1の屈曲点PF2へ延びる線分、パターン導電体101cの第2の屈曲点PF3から第3の屈曲点PF4へ延びる線分、パターン導電体101cの第4の屈曲点PF5から終点PF6へ延びる線分については、いずれも同じ線幅とする。
上記のように、図14に示すパターン導電体101において、X方向に延びる線分の線幅をいずれも同じ大きさとすれば、各パターン導電体(101a、101b、101c)のX方向に延びる部分に関しては、長さ(W1)も高さ(LH)も同じであることから、抵抗も同じにすることができる。
【0093】
次に、Y方向(若しくは、Y方向とは反対方向)に延びる線分の線幅について述べると、図14に示す、パターン導電体101aの始点PD1から第1の屈曲点PD2へ延びる線分の線幅(線幅LW1)、パターン導電体101bの第1の屈曲点PE2から第2の屈曲点PE3へ延びる線分の線幅(線幅LW2)、パターン導電体101cの第1の屈曲点PF2から第2の屈曲点PF3へ延びる線分の線幅(線幅LW3)、パターン導電体101cの第3の屈曲点PF4から第4の屈曲点PF5へ延びる線分の線幅(線幅LW4)、パターン導電体101bの第3の屈曲点PE4から第4の屈曲点PE5へ延びる線分の線幅(線幅LW5)、パターン導電体101aの第2の屈曲点PD3から終点PD4へ延びる線分の線幅(線幅LW6)、の関係を、例えば、
LW1+LW6=LW2+LW5=LW3+LW4
となるようにする。
このようにすれば、各パターン導電体(101a、101b、101c)のY方向とY方向とは反対方向に延びる部分の抵抗の合計値は、長さ(各L1)も高さ(LH)も同じであることから、抵抗の合計値も同じにすることができる。
【0094】
すなわち、上記のようにすれば、各パターン導電体(101a、101b、101c)の抵抗(より詳しくは、各パターン導電体において、一対のバスバー12の陽極12aから陰極12bに至る各線分の抵抗を合わせた全体の抵抗)を同じにすることができる。
そして、各パターン導電体(101a、101b、101c)の抵抗が同じであることから、各パターン導電体(101a、101b、101c)に流れる電流(I)も同じ大きさになる。
【0095】
なお、上記については、パターン導電体の本数がより多い形態でも同様である。すなわち、複数のパターン導電体が、それぞれ、一の方向に延びた後、前記一の方向とは異なる方向であって、かつ、前記一の方向とは反対の方向とも異なる方向に向かって延び、その後、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分を有する場合に、各パターン導電体における前記一の方向に延びる部分の線幅と、前記一の方向とは反対の方向に延びる部分の線幅との和が、複数のパターン導電体で同じになるようにすればよい。
【0096】
一方、図13図14に示すパターン導電体(101a、101b、101c)は、配置位置に応じて線幅が異なる。より詳しくは、図13図14に示すパターン導電体101の線幅は、領域7の一の端部の側から該端部とは反対側の端部の側に向かって大きくなっていく形態を有している。
そして、図13図14に示すパターン導電体(101a、101b、101c)においては、流れる電流(I)が同じ大きさであることから、各線分の線幅に応じて、図中最も左側の方向に位置するパターン導電体101aの線分(線幅LW1)の抵抗加熱が最も大きくなり、左側から右側に向かって順に抵抗加熱が小さくなっていき、図中最も右側の方向に位置するパターン導電体101aの線分(線幅LW6)の抵抗加熱が最も小さくなる。
すなわち、図13図14に示すパターン導電体101においては、図中左側から右側に向かって、抵抗加熱が小さくなっていく。これは、図13に示す領域7において、図中左側から右側に向かって(図中のX方向に向かって)、抵抗加熱が小さくなっていくことに相当する。
【0097】
ここで、図13に示す領域7において、図中最も左側の方向に位置するパターン導電体は、図2に示すサイドウィンドウ3の領域7において、最も前方側に配置されるパターン導電体に相当する。同様に、図14に示す領域7において、図中最も右側の方向に位置するパターン導電体は、図2に示すサイドウィンドウ3の領域7において、最も後方側に配置されるパターン導電体に相当する。
【0098】
そして、図13に示す領域7において、図中左側から右側に向かって(図中のX方向に向かって)、配置されるパターン導電体の抵抗加熱が小さくなっていくことから、図2に示すサイドウィンドウ3の領域7においても、同様に、最も前方側に配置されるパターン導電体から最も後方側に配置されるパターン導電体に向かって、抵抗加熱が小さくなっていくことになる。すなわち、図2に示すサイドウィンドウ3の領域7において、最も前方側が最も温度が高くなり、前方側から後方側に向かって温度が低くなっていき、最も後方側で最も温度が低くなる。
【0099】
それゆえ、図2に示すサイドウィンドウ3の前方側から後方側に延びる方向においては、領域7とそれ以外の領域との境界で温度差が大きくなることを抑制することができる。
そして、温度差が大きくなることを抑制することができることから、領域7とそれ以外の領域との境界に熱歪みに係る応力が集中して、サイドウィンドウ3を構成する窓ガラスが破損してしまうという不具合も、回避することができる。
【0100】
なお、図13図15を用いた例では、図2に示すサイドウィンドウ3の前方側から後方側に延びる方向において、領域7に温度勾配を持たせる例を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。
領域7が有する温度勾配は、図2に示すサイドウィンドウ3の下方側から上方側に延びる方向において、下方側の温度が高く、上方側の温度が低いものであってもよい。
この場合は、例えば、図5に示す例のように、パターン導電体と一対のバスバーの配置を時計回りに90°回転させた配置とし、領域7において、図5に示すサイドウィンドウ3の上方側に配置されるパターン導電体の線分の線幅が、図5に示すサイドウィンドウ3の下方側に配置されるパターン導電体の線分の線幅よりも大きくなるようにすればよい。
【0101】
(合わせ板)
本実施形態に係る導電体付きシート100も、上記の第1の実施形態に係る導電体付きシート10と同様に、合わせ板を構成することができる。
例えば、図10に例示する合わせ板60や、図12に例示する合わせ板60の製造方法において、導電体付きシート10に替えて、本実施形態に係る導電体付きシート100を用いればよい。
【0102】
以上、本発明に係る導電体付きシート、合わせ板、及び移動体について、それぞれの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0103】
1 移動体
2 ドア
2a ドア本体部
2b ドアフレーム部
3 サイドウィンドウ
3a 窓ガラス
3b 透視領域
4 ドアミラー
5 電源
6 角部
7 領域
10 導電体付きシート
11 パターン導電体
11a、11b、11c パターン導電体
12 一対のバスバー
12a 陽極
12b 陰極
21 パターン導電体
21a、21b、21c パターン導電体
31 パターン導電体
31a、31b、31c パターン導電体
41 パターン導電体
51 基材
52 パターン導電体
52a 導電層
52b 第1暗色層
52c 第2暗色層
52A 金属膜
52B 暗色層
60 合わせ板
61 第1透明基板
62 第2透明基板
63 接合層
70 レジストパターン
100 導電体付きシート
101 パターン導電体
101a、101b、101c パターン導電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15