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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】生物処理システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20241106BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
C02F3/34 101C
C02F1/42 B
C02F1/42 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020118380
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015501
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】壷内 里枝
(72)【発明者】
【氏名】宇和川 智
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-059705(JP,A)
【文献】特開2009-233549(JP,A)
【文献】特開2001-137890(JP,A)
【文献】特開2008-018377(JP,A)
【文献】特開2006-247469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
C02F1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア態窒素を含む被処理水を、有用生物を用いて生物処理して処理水を生成する生物処理システムの運転方法であって、
前記生物処理システムは、生物処理ユニットと、水源から供給される被処理水を前記生物処理ユニットに通水する給水ポンプと、を備え、
前記給水ポンプの常時駆動を停止した前記生物処理ユニットの運転休止中において、前記有用生物の生育環境を保持するための生育環境保持手段によって、生物環境を制御するステップを含み、
前記生育環境保持手段は、
前記有用生物の栄養源を保持する栄養基質保持手段である陽イオン交換体と、
前記有用生物に対して酸素を供給する酸素供給手段と、を備え、
それにより、前記給水ポンプを常時駆動する前記生物処理ユニットの運転再開後の生物活性を速めることを可能とし、処理性能の低下を抑制する、
運転方法。
【請求項2】
前記陽イオン交換体は、ゼオライトである、請求項に記載の運転方法。
【請求項3】
前記生物処理システムは、処理水を貯蔵する処理水槽を更に備え、
前記酸素供給手段は、前記給水ポンプの駆動停止により常時駆動をしていない前記生物処理ユニットの運転休止期間中において、前記生物処理ユニットに酸素を含む前記処理水槽に貯蔵された処理水を通水することにより、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項1又は請求項2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記酸素供給手段は、加圧空気を前記処理水に混合することにより、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項に記載の運転方法。
【請求項5】
前記処理水による通水は間欠的に実行される、請求項又は請求項に記載の運転方法。
【請求項6】
前記酸素供給手段は、前記給水ポンプの常時駆動を停止した前記生物処理ユニットの運転休止期間中において、前記給水ポンプを間欠的に駆動することで、水源から供給される被処理水を前記生物処理ユニットに間欠的に通水することにより、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項1又は請求項2に記載の運転方法。
【請求項7】
前記酸素供給手段は、加圧空気を前記被処理水に混合することにより、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項に記載の運転方法。
【請求項8】
前記栄養基質保持手段に対して、供給水及び/又は薬注により栄養基質を供給するステップを更に有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の運転方法。
【請求項9】
前記生物処理システムは、処理水中の溶存酸素量を測定する溶存酸素量測定手段を更に備え、
前記酸素供給手段は、測定された前記溶存酸素量に基づいて、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の運転方法。
【請求項10】
前記生物処理システムは、処理水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定手段を更に備え、
前記酸素供給手段は、測定された前記酸化還元電位に基づいて、前記有用生物に対して酸素を供給する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、井戸水や河川の水を浄化する方法として、アンモニア(アンモニア態窒素)を栄養源とする硝化菌等の微生物を用いる生物ろ過法が存在する。より詳細には、生物ろ過法においては、被処理水中のアンモニア(アンモニア態窒素)、亜硝酸(亜硝酸態窒素)、鉄、マンガンを、硝化細菌、鉄酸化細菌、マンガン酸化細菌等の働きにより酸化除去する。このことにより、例えばアンモニアを、不連続点処理する為の塩素を薬注する必要が生じないため、環境に対する負荷を低減することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、生物ろ過法を用いた水処理装置として、ポンプによって汲み上げられた原水が、生物担体が充填された酸化槽を経て、生物処理槽に送られて生物処理をされた後、処理槽に貯蔵されると共に、生物処理槽は、密閉容器と、コンプレッサと、陽イオン吸着能を有する担体とを備え、密閉容器内に供給された水が担体を通過する際に、硝化菌が担体に付着、増殖し、アンモニア態窒素(アンモニア性窒素)を処理する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-20059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る技術においては、生物処理槽における生物処理により、アンモニア態窒素を含む原水を酸化処理しているが、生物処理は生物活性に依存することから、休日等の運転休止時に生物が死滅、休眠した場合、運転再開後に、運転休止前と同じような性能で生物処理を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、運転再開後における生物活性の復帰を早くし、処理性能の低下を抑制することが可能な生物処理システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンモニア態窒素を含む被処理水を、有用生物を用いて生物処理して処理水を生成する生物処理システムの運転方法であって、前記生物処理システムの運転休止中において、前記有用生物の生育環境を保持するための生育環境保持手段によって、生物環境を制御するステップを含み、前記生育環境保持手段は、前記有用生物の栄養源を保持する栄養基質保持手段と、前記有用生物に対して酸素を供給する酸素供給手段と、を備える、運転方法に関する。
【0008】
また、上記の運転方法において、前記栄養基質保持手段は、陽イオン交換体であることが好ましい。
【0009】
また、上記の運転方法において、前記陽イオン交換体は、ゼオライトであることが好ましい。
【0010】
また、上記の運転方法において、前記酸素供給手段は、前記生物処理システムに酸素を含む供給水を通水することにより、前記有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0011】
また、上記の運転方法において、前記酸素供給手段は、加圧空気を供給水に混合することにより、前記有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0012】
また、上記の運転方法において、前記生物処理システムは、処理水を貯蔵する処理水槽を更に備え、前記酸素供給手段は、前記処理水槽に貯蔵された処理水を、前記生物処理システムに対して通水することにより、前記有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0013】
また、上記の運転方法において、前記通水は間欠的に実行されることが好ましい。
【0014】
また、上記の運転方法は、前記栄養基質保持手段に対して、供給水及び/又は薬注により栄養基質を供給するステップを更に有することが好ましい。
【0015】
また、上記の運転方法において、前記生物処理システムは、処理水中の溶存酸素量を測定する溶存酸素量測定手段を更に備え、前記酸素供給手段は、測定された前記溶存酸素量に基づいて、前記有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0016】
また、上記の運転方法において、前記生物処理システムは、処理水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定手段を更に備え、前記酸素供給手段は、測定された前記酸化還元電位に基づいて、前記有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転再開後における生物活性の復帰を早くし、処理性能の低下を抑制することが可能な生物処理システムの運転方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る生物処理システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る生物処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る生物処理システムの全体構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る生物処理システムの全体構成を示す図である。
図5A】本発明の実施形態に係る生物処理システムに好適なろ材を判定する試験におけるろ材の材料を示す表である。
図5B】本発明の実施形態に係る生物処理システムに好適なろ材を判定する試験におけるろ材の構成を示す表である。
図6】本発明の実施形態に係る生物処理システムに好適なろ材を判定する試験における各ろ材構成での休止試験の結果を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る生物処理システムに好適なろ材を判定する試験における各ろ材構成での休止試験の結果を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る生物処理システムに好適なろ材を判定する試験における各ろ材構成での休止試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔1 第1実施形態〕
図1及び図2を参照することにより、本発明の第1実施形態に係る生物処理システム1の構成と動作について説明する。図1は、生物処理システム1の全体構成図である。図2は、生物処理システム1が備える制御部50の機能ブロック図である。
【0020】
〔1.1 第1実施形態の構成〕
図1に示すように、生物処理システム1は、第1給水ラインL1と、空気供給ラインL2と、第2給水ラインL3と、処理水供給ラインL4と、空気排出ラインL5と、循環ラインL6と、処理水逆流ラインL7と、排水ラインL8とを備える。また、生物処理システム1は、主として、水源11と、給水ポンプ13と、第1逆止弁15と、第2逆止弁17と、鉛直配管19と、ろ過装置20と、処理水タンク23と、溶存酸素量センサ25と、ORPセンサ27と、空気抜き弁29と、循環・逆洗ポンプ31と、第3逆止弁33と、第4逆止弁35と、制御部50とを備える。
【0021】
第1給水ラインL1は、水源11から供給される給水W1が流通するラインである。第1給水ラインL1の上流側の端部は水源11に接続される。第1給水ラインL1は、上流から下流に向けて、給水ポンプ13、第1逆止弁15、接続部J1、接続部J2を備える。
【0022】
水源11は、例えば井戸であり、この場合、井戸に貯留される井水をポンプ(不図示)で汲み上げることにより、水源11から給水W1としての井水が第1給水ラインL1に供給される。しかし、給水W1は井水に限定されず、例えば河川水であってもよい。
【0023】
給水W1として用いられる井水、河川水には、アンモニア(アンモニア態窒素)、亜硝酸(亜硝酸態窒素)、鉄、マンガンが含まれる。また、給水W1として用いられる井水、河川水に含まれるアンモニア(アンモニア態窒素)、鉄、マンガンは、後述のろ過装置20で生物処理としての生物ろ過をする際に用いられる有用生物の栄養源となる。
【0024】
給水ポンプ13は、給水W1を吸入し、後述の鉛直配管19に向けて圧送(吐出)する装置である。
【0025】
給水ポンプ13には、制御部50から指令信号が入力される。給水ポンプ13は、入力された指令信号に基づいて、駆動する。
【0026】
第1逆止弁15は、第1給水ラインL1へ空気供給ラインL2からの空気の混入や循環ラインL6からの水の逆流を防ぐ弁である。
【0027】
接続部J1において、第1給水ラインL1に対し、空気供給ラインL2が接続される。空気供給ラインL2は、接続点J1において、給水W1に対し加圧空気A1を供給するラインである。空気供給ラインL2は、第2逆止弁17を備える。
【0028】
第2逆止弁17は、空気供給ラインL2に水が逆流することを防ぐ弁である。
【0029】
空気供給ラインL2により、後述の鉛直配管19の下方から、給水W1に対して加圧空気A1が供給されることにより、鉛直配管19において、給水W1中と加圧空気A1とが攪拌される度合いが高まり、延いては、給水W1中の溶存酸素濃度が高まる。
【0030】
なお、加圧状態での空気の注入/混合方法としては、例えばコンプレッサでのインライン注入が挙げられる。この他にも、ブロワ、エゼクタ、マイクロバブルやファインバブル発生装置等を用いてもよい。即ち、エゼクタを用いる場合は空気供給ラインL2は大気圧で空気を供給してもよく、また、マイクロバブルやファインバブル発生装置を用いる場合は、これらを含む液体を供給してもよい。このような手段によって、第二給水ラインL3が加圧状態でありさえすればよく、その加圧空気の注入/混合方法を限定するものでは無い。
【0031】
接続部J2において、第1給水ラインL1に対し、鉛直配管19が接続される。
鉛直配管19は、第1給水ラインL1から供給される給水W1が流通する配管であり、略鉛直に設置される。しかし、これには限定されず、給水W1が鉛直配管19の下方から上方に向かって流通する配管であればよい。
【0032】
なお、空気の混合を促進する目的で、鉛直配管19は所定の長さを有するが、例えば1m以上として、給水W1と空気との接触時間を1秒以上確保するとより好適である。また、この他の空気の混合方法として、例えばインラインミキサやバッフル板等を用いる方法でもよい。
【0033】
給水W1と、空気供給ラインL2によって供給される加圧空気A1とが、接続点J1において混合された後、給水W1と加圧空気A1との混合物が、鉛直配管19の下方から上方に流通することにより、給水W1と加圧空気A1とが攪拌され、給水W1中の溶存酸素濃度が高まる。給水W1中の溶存酸素は、後述のろ過装置20で生物処理を行う有用生物の生命維持のために用いられる。とりわけ、ろ過装置20の運転休止中に、給水W1によって給水W1中の溶存酸素がろ過装置20にもたらされることにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となる。
【0034】
接続部J3において、鉛直配管19に対し第2給水ラインL3が接続される。第2給水ラインL3は、鉛直配管19を経由した給水W1と加圧空気A1との混合物を、ろ過装置20に対して、当該ろ過装置20の上方から供給するラインである。
【0035】
ろ過装置20は、給水W1をろ過するための装置である。とりわけ本実施形態において、ろ過装置20は、硝化細菌、鉄酸化細菌、マンガン酸化細菌等の有用生物を用いた生物ろ過により、給水W1中のアンモニア(アンモニア態窒素)、亜硝酸(亜硝酸態窒素)、鉄、マンガンを酸化除去する。
【0036】
ろ過装置20は、ろ材21を格納する。ろ材21は陽イオン交換体である。ろ材21として、陽イオン交換体を用いることにより、陽イオン交換体自体に、有用生物を付着させることが可能になると共に、給水W1中にアンモニア(アンモニア態窒素)、鉄、マンガン等が含まれる場合、これらを陽イオン交換体に吸着させることが可能となる。陽イオン交換体としては、例えばゼオライトを用いることが好適であるが、これには限定されない。
また、ろ材は酸化鉄や酸化マンガン等の濁質を捕捉するため、5mm以下のろ材径であることが望ましい。
【0037】
ろ材21が、ろ過装置20内の有用生物としての微生物の栄養源となる、アンモニア(アンモニア態窒素)、鉄、マンガン等を保持することにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下を抑制することが可能となる。
【0038】
なお、以降では、ろ過装置20を「生物処理ユニット」と呼称し、ろ材21を、「栄養基質保持手段」と呼称することがある。
【0039】
ろ過装置20における生物ろ過の仕組みは以下の通りである。すなわち、ろ過装置20に給水W1をしばらく通水すると、給水W1中に含まれるアンモニア(アンモニア態窒素)、亜硝酸(亜硝酸態窒素)、鉄、マンガンを栄養源とする微生物である有用生物がろ材21上に繁殖する。有用生物が繁殖することにより、例えば鉄は、ろ材21の上層で酸化鉄コロイドとなってろ材21上に析出する。一方でマンガンは、ろ材21の上~中間層で酸化マンガンコロイドとなって析出する。アンモニア(アンモニア態窒素)については、ろ材21の上層から、亜硝酸を経由して硝酸へと酸化され、処理水W2として、処理水供給ラインL4によりろ過装置20から供給される。
【0040】
処理水供給ラインL4は、処理水W2が流通するラインである。処理水供給ラインL4は上流側でろ過装置20に接続され、下流側で処理水タンク23に接続される。処理水W2は、ろ過装置20から処理水タンク23に向けて、処理水供給ラインL4を流通する。また、処理水供給ラインL4は、溶存酸素量センサ25と、ORPセンサ27とを備える。
【0041】
溶存酸素量センサ25は、処理水供給ラインL4を流通する処理水W2中の溶存酸素量を検出する機器である。溶存酸素量センサ25は、処理水供給ラインL4に接続されている。また、溶存酸素量センサ25は、制御部50と電気的に配置されている。溶存酸素量センサ25で検出された処理水W2の溶存酸素量の値(以下、「検出溶存酸素量」とも呼称する)は、制御部50へ検出信号として送信される。本実施形態においては、溶存酸素量センサ25は、溶存酸素量を検出し、制御部50へ溶存酸素量の値を送信する。
【0042】
ORPセンサ27は、処理水供給ラインL4を流通する処理水W2の酸化還元電位を検出する機器である。ORPセンサ27は、処理水供給ラインL4に配置されている。また、ORPセンサ27は、制御部50と電気的に接続されている。ORPセンサ27で検出された処理水W2の酸化還元電位値ORP(以下、「検出ORP値」ともいう)は、制御部50へ検出信号として送信される。本実施形態において、ORPセンサ27は、リアルタイムで酸化還元電位値ORPを検出し、制御部50へ酸化還元電位値ORPを送信する。なお、「酸化還元電位」は、処理水W2の酸化力(溶存酸素濃度)が高くなる程、正の値で大きい値を示す。
【0043】
処理水タンク23は、処理水供給ラインL4から供給される処理水W2を貯蔵するタンクである。また、後述のように、ろ過装置20の運転休止時に、処理水タンク23から、循環ラインL6に対して循環水としての処理水W3が供給される。更に、後述のように、ろ過装置20の逆洗時に、処理水タンク23から、処理水逆流ラインL7に対して、逆洗のために用いられる処理水W4が供給される。循環ラインL6及び処理水逆流ラインL7の機能については、後述する。
【0044】
ろ過装置20には、その上方において、空気排出ラインL5が接続される。空気排出ラインL5は、ろ過装置20内で余剰となった空気A2を、ろ過装置20の外部に排出するラインである。空気排出ラインL5は、空気抜き弁29を備える。
【0045】
空気抜き弁29は、ろ過装置20内に貯留する給水W1に対して空気を溶かし込むために、ろ過装置20内で余剰となった空気A2をろ過装置20から抜くための弁である。空気抜き弁29は、開度調整弁であり、その開度を調整することにより、余剰となった空気A2を、所定量の給水W1と共に排出する。余剰となった空気A2は、給水W1と共にろ過装置20から抜かれることにより、ろ過装置20内に空気溜まりが発生することを防ぐことが可能となる。これにより、ろ過装置20内は満水となり、給水W1の水面が揺れることもなくなり、ろ材21が安定的に格納されることが可能となる。また、ろ材21に接触する給水W1が枯れることを抑制できる。
【0046】
処理水タンク23には、上記のように、循環ラインL6が接続される。
循環ラインL6は、ろ過装置20の運転休止時に、ろ過装置20に対して間欠的に通水する際、処理水タンク23に貯留された処理水を、第1給水ラインL1に循環するためのラインである。処理水タンク23に貯留された処理水は酸素を含む。循環ラインL6は、酸素を含んだ処理水W3を第1給水ラインL1まで循環させ、処理水W3、又は酸素の追加供給が必要な場合には、処理水W3と加圧空気A1との混合物を、鉛直配管19、及び第2給水ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給する。これにより、ろ過装置20内の有用生物に酸素が供給される。なお、以降では、空気供給ラインL2と循環ラインL6とを、まとめて「酸素供給手段」と呼称することがある。
【0047】
循環ラインL6は、上流側で処理水タンク23に接続され、下流側で接続部J1に接続される。循環ラインL6は、接続部J1において、第1給水ラインL1と、空気供給ラインL2とに接続される。また、循環ラインL6は、循環・逆洗ポンプ31、第3逆止弁33を備える。
【0048】
循環・逆洗ポンプ31は、処理水タンクに貯留された処理水を吸入し、接続部J1において、吸入した処理水を第1給水ラインL1に向けて圧送(吐出)する装置である。
【0049】
循環・逆洗ポンプ31は、制御部50と電気的に接続されている。循環・逆洗ポンプ31には、制御部50から指令信号が入力される。循環・逆洗ポンプ31は、制御部50により入力された指令信号に基づいて、駆動する。
【0050】
第3逆止弁33は、第1給水ラインL1や空気供給ラインL2からの逆流を防ぐ弁である。
【0051】
また、循環ラインL6には、接続部J3において処理水逆流ラインL7が接続される。処理水逆流ラインL7は、ろ過装置20内のろ材21を逆洗するための処理水W4を、ろ過装置20に供給するラインである。上記のように、ろ過装置20内のろ材21には、酸化鉄コロイドや酸化マンガンコロイドが析出するが、これらはろ材21上にとどまるため、ろ材21を逆洗することにより、定期的に洗い出す必要がある。処理水逆流ラインL7は、この逆洗に用いる処理水W4を、ろ過装置20に供給するラインである。
【0052】
処理水逆流ラインL7は、上流側で循環ラインL6に接続され、下流側でろ過装置20に接続される。また、処理水逆流ラインL7には、第4逆止弁35が設置される。
【0053】
第4逆止弁35は、ろ過装置20からの処理水W4の逆流を防ぐ弁である。
【0054】
処理水逆流ラインL7と循環ラインL6との接続部J3には、処理水タンク23から供給される処理水の流路を切り替える切替弁(図示せず)が配置されている。切替弁により流路を処理水逆流ラインL7側に切り替えることで、循環・逆洗ポンプ31は、処理水タンク23に貯留された処理水を吸入し、ろ過装置20に向けて、吸入した処理水W4を圧送(吐出)する。
【0055】
逆洗は、タイマーを用いて計測する時間が所定の周期に達した場合、もしくはろ過装置20前後での流出水と流入水とのの圧力差が規定値となった場合に実施する。タイマーを用いる場合には、5~168時間毎に逆洗を実施することが望ましい。圧力差に基づいて逆洗を実施する場合には、差圧が300kPa以下の場合に逆洗を実施することが望ましい。
逆洗の際の流速は、ろ過に用いる生物が洗浄により流出しないよう、逆洗時のろ層の膨張率が1.4倍以下となる流速に設定することが望ましい。また、その際の線速度は40m/h以下が望ましい。
【0056】
また、ろ過装置20には、その上方において、排水ラインL8が接続される。排水ラインL8は、処理水逆流ラインL7によって供給される処理水W4により、ろ過装置20内のろ材21が逆洗される際、ろ材21を逆洗した後の排水W5を、ろ過装置20の上方から排出するラインである。
【0057】
制御部50は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部50において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、生物処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部50の機能の一部について説明する。
【0058】
図2は、制御部50の機能ブロックである。制御部50は、運転モード切替部501と、酸素供給制御部502とを備える。
【0059】
運転モード切替部501は、生物処理システム1の運転モードを切り替える。具体的には、運転モード切替部501は、生物処理システム1の運転モードを、通常運転モードと、運転休止モードと、逆洗モードとの間で切り替える。
【0060】
より詳細には、運転モード切替部501は、生物処理システム1の運転モードを、通常運転モードとする際、給水ポンプ13を駆動し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させると共に、循環・逆洗ポンプ31の駆動を停止させる。これにより、給水W1と加圧空気A1との混合物がろ過装置20に供給されることで、ろ過装置20内の有用生物の活性が維持される。一方で、処理水タンク23からは、処理水W3が第1給水ラインL1に供給されることも、処理水W4がろ過装置20に供給されることもない。
【0061】
また、運転モード切替部501は、生物処理システム1の運転モードを、運転休止モードとする際、給水ポンプ13の駆動を停止し、空気供給ラインL2から酸素の追加供給が必要な場合には加圧空気を供給させた上で、循環・逆洗ポンプ31を間欠的に駆動する。これにより、処理水タンク23に貯留される、酸素を含んだ処理水W3、又は、必要に応じて、処理水W3と酸素を供給させる加圧空気A1との混合物が、間欠的にろ過装置20に対して通水される。これにより、ろ過装置20内の有用生物の活性が維持される。
【0062】
また、運転モード切替部501は、生物処理システム1の運転モードを、逆洗モードとする際、給水ポンプ13の駆動を停止し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させず、循環・逆洗ポンプ31の駆動を駆動する。これにより、処理水タンク23に貯留される処理水W4が、ろ過装置20に格納されるろ材21の逆洗に用いられる。
【0063】
酸素供給制御部502は、生物処理システム1の運転モードが運転休止モードにある間、溶存酸素量センサ25によって検出される検出溶存酸素量、及び/又は、ORPセンサ27によって検出される検出ORP値に基づいて、酸素供給手段による酸素の供給を制御する。
【0064】
より詳細には、検出溶存酸素量が第1の閾値を下回った場合には、空気供給ラインL2によって供給される加圧空気A1の量を増加させると共に、処理水タンク23から循環される処理水W3の量を増加させる。検出溶存酸素量が、第1の閾値よりも高い第2の閾値を上回った場合には、空気供給ラインL2によって供給される加圧空気A1、及び処理水タンク23から循環される処理水W3の供給を停止する。なお、加圧空気A1の供給の増加・停止と、処理水W3の供給の増加・停止については、いずれか一方のみを制御してもよい。
【0065】
また、検出ORP値が第3の閾値を下回った場合には、空気供給ラインL2によって供給される加圧空気A1の量を増加させると共に、処理水タンク23から循環される処理水W3の量を増加させる。検出ORP値が、第3の閾値よりも高い第4の閾値を上回った場合には、空気供給ラインL2によって供給される加圧空気A1、及び処理水タンク23から循環される処理水W3の供給を停止する。なお、加圧空気A1の供給の増加・停止と、処理水W3の量の供給の増加・停止については、いずれか一方のみを制御してもよい。
【0066】
〔1.2 第1実施形態の動作〕
〔1.2.1 通常運転モード〕
上記のように、通常運転モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13は駆動され、空気供給ラインL2から加圧空気が供給されると共に、循環・逆洗ポンプ31の駆動は停止する。
【0067】
これにより、給水W1と加圧空気A1との混合物が、鉛直配管19と第2供給ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給される。ろ過装置20に供給された給水W1中の、アンモニア(アンモニア態窒素)、亜硝酸(亜硝酸態窒素)、鉄、マンガンは、ろ過装置20内の有用生物としての微生物により生物処理され、その結果、アンモニア(アンモニア態窒素)と亜硝酸(亜硝酸態窒素)は硝酸へと酸化される。一方で、鉄は酸化鉄コロイドとなり、マンガンは酸化マンガンコロイドとなって、ろ材21に捕捉される。その後、硝酸を含む処理水W2は、処理水供給ラインL4を経由して、処理水タンク23に貯留される。
【0068】
〔1.2.2 運転休止モード〕
上記のように、運転休止モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13の駆動は停止し、空気供給ラインL2から加圧空気が供給され、循環・逆洗ポンプ31は間欠的に駆動する。
【0069】
これにより、処理水W3と加圧空気A1との混合物が、鉛直配管19と第2供給ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給される。すなわち、ろ過装置20において、処理水W3に含まれる酸素と加圧空気A1に含まれる酸素とが、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給されることにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下が抑制される。
【0070】
〔1.2.3 逆洗モード〕
上記のように、逆洗モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13の駆動は停止し、空気供給ラインL2から加圧空気は供給されず、循環・逆洗ポンプ31は駆動される。
【0071】
これにより、処理水W4によって、ろ過装置20内のろ材21に析出した酸化鉄コロイドや酸化マンガンコロイドは逆洗され、その排水W5は、排水ラインL8を経由して系外に排出される。
【0072】
〔1.3 第1実施形態が奏する効果〕
上述した第1実施形態に係る生物処理システム1の運転方法によれば、例えば、以下の効果が奏される。
【0073】
生物処理システム1の運転方法は、アンモニア態窒素を含む被処理水を、有用生物を用いて生物処理して処理水W2を生成する生物処理システム1の運転方法であって、生物処理システム1の運転休止中において、有用生物の生育環境を保持するための生育環境保持手段によって、生物環境を制御するステップを含み、生育環境保持手段は、有用生物の栄養源を保持する栄養基質保持手段と、有用生物に対して酸素を供給する酸素供給手段と、を備える、運転方法である。
【0074】
生物処理ユニットの運転休止中に、生物処理ユニットで用いられる有用生物に対して、栄養源と酸素を供給することにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下を抑制することが可能となる。
【0075】
また、栄養基質保持手段は、陽イオン交換体であることが好ましい。
【0076】
栄養基質保持手段として陽イオン交換体を用いることにより、栄養基質保持手段自体に、有用生物(微生物)を付着させることが可能となると共に、被処理水中にアンモニア、鉄・マンガンが含まれる場合、これらアンモニア、鉄・マンガンを、栄養基質保持手段に吸着させることが可能となる。
【0077】
また、陽イオン交換体は、ゼオライトであることが好ましい。
【0078】
ゼオライトの表面にはアンモニアが吸着するため、微生物がアンモニアを栄養源として延命することが可能となる。そのため、ろ材としてゼオライトを使用することにより、生物処理ユニットの休止中に、微生物がアンモニアを栄養源として使用し、高い生物活性を保つことができることで、運転再開時の処理能力回復が早くなる。更に、ろ材にゼオライトが含まれることで、ろ材を、例えば、単なる砂、アンスラサイト、特殊セラミックスとした場合に比較して、通常運転を再開した際のアンモニア、亜硝酸イオン等の漏洩がより抑えられる。
【0079】
また、生物処理システム1は、処理水を貯蔵する処理水タンク23を更に備え、酸素供給手段は、処理水タンク23に貯蔵された処理水W2を、生物処理システム1に対して通水することにより、有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0080】
処理水タンク23内において処理水は空気と接しているため、処理水W3には酸素が溶け込んでいる。このため、処理水W3を生物処理ユニット内で循環させる場合、原水・排水を節水することが可能となる。
【0081】
また、通水は間欠的に実行されることが好ましい。
【0082】
間欠通水により、生物処理ユニットの通常運転休止時にも、良好なろ材の状態を保つことができ、通常運転を再開した際のアンモニア、亜硝酸イオン等の漏洩が抑えられる。
【0083】
また、生物処理システム1は、処理水W2中の溶存酸素量を測定する溶存酸素量センサ25を更に備え、酸素供給手段は、測定された溶存酸素量に基づいて、有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0084】
処理水中の溶存酸素量が低い場合に、生物処理ユニットへの供給水(被処理水)に含まれる酸素量が不足していると判断し、生物処理ユニットに対して、より多くの酸素を供給することにより、生物処理における、例えばアンモニア除去性能の低下を抑制することが可能となる。
【0085】
また、生物処理システム1は、処理水W2の酸化還元電位を測定するORPセンサ27を更に備え、酸素供給手段は、測定された酸化還元電位に基づいて、有用生物に対して酸素を供給することが好ましい。
【0086】
処理水W2中の酸化還元電位が低い場合に、生物処理ユニット20への供給水(被処理水)に含まれる酸素量が不足していると判断し、生物処理ユニット20に対して、より多くの酸素を供給することにより、生物処理における、例えばアンモニア除去性能の低下を抑制することが可能となる。
【0087】
〔2 第2実施形態〕
図3を参照することにより、本発明の第2実施形態に係る生物処理システムの構成と動作について説明する。なお、説明の便宜上、以下では第2実施形態に係る生物処理システム1Aが、第1実施形態に係る生物処理システム1と相違する点について述べ、その他の説明は省略する。
【0088】
〔2.1 第2実施形態の構成〕
第1実施形態に係る生物処理システム1では、循環ラインL6は、上流側の端部を処理水タンク23とし、下流側の端部を接続部J1としていた。一方で、図3に示すように、第2実施形態に係る生物処理システム1Aでは、循環ラインL6は、上流側の端部を処理水タンク23とすることでは生物処理システム1と同一であるものの、下流側の端部を接続部J2とする。
【0089】
また、第1実施形態に係る生物処理システム1では、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501は、給水ポンプ13の駆動を停止し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させ、循環・逆洗ポンプ31を間欠的に駆動していた。一方で、第2実施形態に係る生物処理システム1Aでは、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501Aは、給水ポンプ13の駆動を停止し、循環・逆洗ポンプ31を間欠的に駆動する点では、生物処理システム1と同一であるものの、空気供給ラインL2から加圧空気は供給させない。
【0090】
すなわち、第2実施形態に係る生物処理システム1Aにおいては、運転休止中に、加圧空気A1に含まれる酸素は用いず、処理水W3に含まれる酸素のみを、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給する。
【0091】
〔2.2 第2実施形態の動作〕
通常運転モード、及び逆洗モードにおける生物処理システム1Aの動作は、第1実施形態に係る生物処理システム1の動作と同一であるため、その説明を省略する。
【0092】
〔2.2.1 運転休止モード〕
上記のように、運転休止モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13の駆動は停止し、空気供給ラインL2から加圧空気は供給されず、循環・逆洗ポンプ31は間欠的に駆動する。
【0093】
これにより、処理水W3が、鉛直配管19と第2供給ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給される。すなわち、ろ過装置20において、処理水W3に含まれる酸素が、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給されることにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下が抑制される。
【0094】
〔2.3 第2実施形態が奏する効果〕
上述した第2実施形態に係る生物処理システム1Aの運転方法によれば、例えば、以下の効果が奏される。
【0095】
生物処理システム1Aは、処理水W2を貯蔵する処理水タンク23を更に備え、酸素供給手段は、処理水タンク23に貯蔵された処理水W3を、生物処理システム1に対して通水することにより、有用生物に対して酸素を供給する。
【0096】
処理水タンク23内において処理水W2は空気と接しているため、処理水W2には酸素が溶け込んでいる。このため、処理水W2を生物処理ユニット20内で循環させる場合、原水・排水を節水し、空気供給を節約することが可能となる。
【0097】
〔3 第3実施形態〕
図4を参照することにより、本発明の第3実施形態に係る生物処理システムの構成と動作について説明する。なお、説明の便宜上、以下では第3実施形態に係る生物処理システム1Bが、第1実施形態に係る生物処理システム1と相違する点について述べ、その他の説明は省略する。
【0098】
〔3.1 第3実施形態の構成〕
第1実施形態に係る生物処理システム1では、上流側の端部を処理水タンク23とし、下流側の端部を接続部J1とする循環ラインL6が存在していた。一方で、図4に示すように、第3実施形態に係る生物処理システム1Bでは、循環ラインL6は存在しない。
【0099】
また、第1実施形態に係る生物処理システム1では、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501は、給水ポンプ13の駆動を停止し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させ、循環・逆洗ポンプ31を間欠的に駆動させていた。一方で、第3実施形態に係る生物処理システム1Bでは、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501Bは、給水ポンプ13を間欠的に駆動し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させ、循環・逆洗ポンプ31の駆動を停止させる。
【0100】
すなわち、第3実施形態に係る生物処理システム1Bにおいては、運転休止中に、給水W1に含まれる酸素及び栄養基質と加圧空気A1に含まれる酸素とを、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給する。
【0101】
〔3.2 第3実施形態の動作〕
通常運転モード、及び逆洗モードにおける生物処理システム1Bの動作は、第1実施形態に係る生物処理システム1の動作と同一であるため、その説明を省略する。
【0102】
〔3.2.1 運転休止モード〕
上記のように、運転休止モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13は間欠的に駆動し、空気供給ラインL2から加圧空気が供給され、循環・逆洗ポンプ31の駆動は停止する。
【0103】
これにより、給水W1と加圧空気A1との混合物が、鉛直配管19と第2供給ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給される。すなわち、ろ過装置において、給水W1に含まれる酸素及び栄養基質と、加圧空気A1に含まれる酸素とが、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給されることにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下が抑制される。
【0104】
〔3.3 第3実施形態が奏する効果〕
上述した第3実施形態に係る生物処理システム1Bの運転方法によれば、例えば、以下の効果が奏される。
【0105】
酸素供給手段は、加圧空気を注入した給水W1を通水することにより、有用生物に対して酸素を供給する。
【0106】
加圧状態で空気を注入することにより、給水W1中の溶存酸素濃度を高めることで、給水W1に含まれる、アンモニア、鉄、及びマンガン等の酸化反応度を高めることが可能となる。また、通常運転時に、給水W1に加圧空気を供給しておくことで、運転休止時に、ろ過装置20内に余剰の溶存酸素が残る。この余剰の溶存酸素を使用することで、生物活性を保つ可能性につながる。更に、給水W1中の酸素濃度が高いことで間欠通水の頻度を減らせる可能性につながる。
【0107】
また、上記の運転方法は、栄養基質保持手段に対して、給水W1により栄養基質を供給するステップを更に有する。
【0108】
栄養基質保持手段において栄養基質が枯渇しそうな場合に、原水自体により、栄養基質保持手段に対して栄養基質を供給することにより、栄養基質保持手段に保持される栄養基質の消費量(減少量)が抑制される。
【0109】
〔4 第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る生物処理システムの構成と動作について説明する。なお、説明の便宜上、以下では第4実施形態に係る生物処理システム1Cが、第3実施形態に係る生物処理システム1Bと相違する点について述べ、その他の説明は省略する。
【0110】
〔4.1 第4実施形態の構成〕
第4実施形態に係る生物処理システム1Cの全体構成は、図4に示す第3実施形態に係る生物処理システム1Bの全体構成と同一であるため、その図示を省略する。
【0111】
第3実施形態に係る生物処理システム1Bでは、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501Bは、給水ポンプ13を駆動し、空気供給ラインL2から加圧空気を供給させ、循環・逆洗ポンプ31の駆動を停止させていた。一方で、第4実施形態に係る生物処理システム1Cでは、運転モードが運転休止モードにある際、運転モード切替部501Cは、給水ポンプ13を間欠的に駆動し、循環・逆洗ポンプ31の駆動を停止する点では、生物処理システム1Bと同一であるものの、空気供給ラインL2から加圧空気は供給させない。
【0112】
すなわち、第4実施形態に係る生物処理システム1Cにおいては、運転休止中に、加圧空気A1に含まれる酸素は用いず、給水W1に含まれる酸素のみを、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給する。なお、給水W1自体に酸素を含める手段には、タンク曝気、エゼクタ、落水などによる空気混合が含まれる。
【0113】
〔4.2 第4実施形態の動作〕
通常運転モード、及び逆洗モードにおける生物処理システム1Cの動作は、第3実施形態に係る生物処理システム1Bの動作と同一であるため、その説明を省略する。
【0114】
〔4.2.1 運転休止モード〕
上記のように、運転休止モードにおいて、運転モード切替部501の制御により、給水ポンプ13は間欠的に駆動し、空気供給ラインL2から加圧空気は供給されず、循環・逆洗ポンプ31の駆動は停止する。
【0115】
これにより、給水W1が、鉛直配管19と第2供給ラインL3を経由して、ろ過装置20に供給される。すなわち、ろ過装置において、給水W1に含まれる酸素及び栄養基質が、ろ過装置20内の有用生物としての微生物に供給されることにより、運転再開後の生物活性の復帰を早めることが可能となり、処理性能の低下が抑制される。
【0116】
〔4.3 第4実施形態が奏する効果〕
上述した第4実施形態に係る生物処理システム1Cの運転方法によれば、例えば、以下の効果が奏される。
【0117】
酸素供給手段は、生物処理システム1Cに酸素を含む給水W1を通水することにより、有用生物に対して酸素を供給する。
【0118】
有用生物に対して供給すべき酸素として、給水W1自体に含まれる酸素を用いることにより、特段の装置を用いることなく、有用生物に対して酸素を供給することが可能となる。
【0119】
〔5 実験データ〕
以下の試験方法により、ろ材21として好適な材質について検討した。
【0120】
図5Aは、本試験において用いたろ材21の材料を示す。ろ材21の材料としては、砂、ゼオライト、アンスラサイト、特殊セラミックスの4種類の材料を用いた。なお、図5Aに示すように、砂は、直径が0.5mmであり、一般的なろ過材として用いられることが多い。硬質ゼオライトは、直径が0.6mmであり、アンモニア吸着能を有する。アンスラサイトは、直径が0.7mmであり、一般的なろ過材として用いられることが多い。特殊セラミックスは、直径が0.5mmであり、マンガン吸着能を有する。
【0121】
図5Bは、各試験体のカラムの構成を示す。図5Bに示すように、各試験体は、ろ材21の上層30cmと下層70cmとで、同一の材料を用いる場合と、各々が異なる二種類の材料を用いる場合とがある。「カラム1」は、上層下層共にろ材として砂を用いる構成を有する。「カラム2」は、上層としてゼオライトを、下層として砂を用いる構成を有する。「カラム3」は、上層下層共にゼオライトを用いる構成を有する。「カラム4」は、上層にアンスラサイト、下層に特殊セラミックスを用いる構成を有する。
【0122】
図6は、第1の休止試験の結果を示すグラフである。より詳細には、生物処理システム1の運転を、外気温13.8℃~26.7℃、平均気温19.1℃で11.7日間停止し、その間、8時間に1回、10分間、処理水W3を曝気なしでろ過装置20に間欠的に通水した後の、通常運転時における通水再開後の経過時間と、処理水W2中の窒素量との関係を示すグラフである。
【0123】
図6の4つのグラフから分かるように、ろ材21がゼオライトのみの「カラム3」を有する生物処理システム1においては、処理水W2中に、アンモニア(アンモニア態窒素)や、亜硝酸(亜硝酸態窒素)は漏洩していない。また、ろ材21が砂とゼオライトの「カラム2」を有する生物処理システム1においては、「カラム3」を有する生物処理システム1ほどではないものの、「カラム1」を有する生物処理システム1と「カラム4」を有する生物処理システム1に比較して、アンモニア(アンモニア態窒素)や、亜硝酸(亜硝酸態窒素)の漏洩量は少ない。このことから、ろ材21として、ゼオライトを用いることが有効であると言える。
【0124】
図7は、第2の休止試験の結果を示すグラフである。より詳細には、生物処理システム1の運転を、外気温18.0℃~28.8℃、平均気温23.7℃で5.7日間停止し、その間、8時間に1回、10分間、処理水W3を曝気なしでろ過装置20に間欠的に通水した後の、通常運転時における通水再開後の経過時間と、処理水W2中の窒素量との関係を示すグラフである。
【0125】
図7の4つのグラフにおいて、ろ材21が砂のみの「カラム1」を有する生物処理システム1においては、処理水W2中に亜硝酸(亜硝酸態窒素)がやや漏洩している。また、ろ材21がアンスラサイトと特殊セラミックの「カラム4」を有する生物処理システム1においては、アンモニア(アンモニア態窒素)と亜硝酸(亜硝酸態窒素)がやや漏洩している。一方で、ろ材21が砂とゼオライトの「カラム2」を有する生物処理システム1や、ろ材21がゼオライトのみの「カラム3」を有する生物処理システム1においては、アンモニア(アンモニア態窒素)と亜硝酸(亜硝酸態窒素)の漏洩はほぼ見られなかった。このことから、ろ材21として、ゼオライトを用いることが有効であると言える。
【0126】
図8は、第3の休止試験の結果を示すグラフである。より詳細には、生物処理システム1の運転を、外気温22.1℃~31.4℃、平均気温25.8℃で4.7日間停止した。その間、「カラム1」、「カラム3」、「カラム4」を有する生物処理システム1については、運転を完全に停止した。一方で、「カラム2」を有する生物処理システム1については、8時間に1回、10分間、処理水W3を曝気ありでろ過装置20に間欠的に通水した。図8の4つのグラフは、これらの運転停止後の、通常運転時における通水を再開した後の経過時間と、処理水W2中の窒素量との関係を示すグラフである。
【0127】
図8の4つのグラフにおいて、ろ材21が砂のみの「カラム1」を有する生物処理システム1においては、第2の休止試験の結果に比較して、アンモニア(アンモニア態窒素)や亜硝酸(亜硝酸態窒素)の漏洩量が大幅に増加した。ろ材21が砂とゼオライトの「カラム2」を有する生物処理システム1においては、アンモニア(アンモニア態窒素)がやや漏洩した。ろ材がゼオライトのみの「カラム3」を有する生物処理システム1においては、アンモニア(アンモニア態窒素)や亜硝酸(亜硝酸態窒素)がやや漏洩した。ろ材がアンスラサイトと特殊セラミックの「カラム4」を有する生物処理システム1においては、第2の休止試験の結果に比較して、亜硝酸(亜硝酸態窒素)の漏洩量が大幅に増加した。
このことから、ろ材21としてゼオライトを用いることが有効であると共に、運転休止時における間欠通水が有効であると言える。
【0128】
〔6 変形例〕
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0129】
例えば、上記の実施形態においては、給水W1に含まれる栄養基質が、ろ過装置20内の栄養基質保持手段に供給されるとしたが、これには限定されない。例えば、生物処理システム1~1C内のいずれかのラインに、栄養基質を薬注する栄養基質薬注装置を設置することにより、栄養基質保持手段に栄養基質を供給してもよい。あるいは、ろ過装置20内の栄養気質保持手段に栄養基質を供給することに特化した供給水ラインを、別途設けてもよい。
【0130】
また、上記の実施形態において、酸素供給制御部502は、生物処理システム1の運転モードが運転休止モードにある間、溶存酸素量センサ25によって検出される検出溶存酸素量、及び/又は、ORPセンサ27によって検出される検出ORP値に基づいて、酸素供給手段による酸素の供給を制御するとしたが、これには限定されない。例えば、酸素供給制御部502は、酸素供給手段を、タイマーを用いて制御することにより、一定間隔で酸素を供給してもよい。この場合、具体的には、1~48時間ごとに、1~60分間、処理水タンク23から循環される処理水W3を、ろ過装置20に通水してもよい。
【符号の説明】
【0131】
1,1A,1B,1C 生物処理システム
11 水源
13 給水ポンプ
20 ろ過装置(生物処理ユニット)
21 ろ材(栄養基質保持手段)
23 処理水タンク
25 溶存酸素量センサ
27 ORPセンサ
29 空気抜き弁
31 循環・逆洗ポンプ
50 制御部
501 運転モード切替部
502 酸素供給制御部
L1 第1給水ライン
L2 空気供給ライン
L3 第2給水ライン
L4 処理水供給ライン
L5 空気排出ライン
L6 循環ライン
L7 処理水逆流ライン
L8 排水ライン
W1 給水
W2,W3,W4 処理水
W5 排水
A1 加圧空気
A2 余剰空気
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8