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特許7581682超音波診断装置、超音波信号処理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122387
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018932
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲哉
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181597(WO,A1)
【文献】特表2003-512914(JP,A)
【文献】特開2003-299653(JP,A)
【文献】特開平08-322839(JP,A)
【文献】特開2007-244501(JP,A)
【文献】特開平09-182749(JP,A)
【文献】特開2019-072438(JP,A)
【文献】特開2017-063977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し駆動パルスの極性が異なる複数種類の超音波送信を含むセット送信を実行する超音波診断装置であって、
超音波プローブにおいて方位方向に配されている複数の振動子のそれぞれにセット送信を実行させる送信部と、
複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、
複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、
前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長く、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は、生成される前記画像化信号のフレームごとに変化する
超音波診断装置。
【請求項2】
複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し駆動パルスの極性が異なる複数種類の超音波送信を含むセット送信を実行する超音波診断装置であって、
超音波プローブにおいて方位方向に配されている複数の振動子のそれぞれにセット送信を実行させる送信部と、
複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、
複数の種類の前記音響線信号における虚像信号部分を検出する残留エコー検出部と、
前記虚像信号部分が検出された前記音響線信号における前記虚像信号部分に対する処置部と、
処置された前記音響線信号を含む複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、
前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔、および、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔はそれぞれ異なり、
前記セット送信は、前記極性が異なる複数の超音波送信として、駆動パルスの極性が異なる第1の超音波送信及び第2の超音波送信を含み、
前記受信部は、前記第1の超音波送信に対する反射波に基づき第1の音響線信号を生成し、前記第2の超音波送信に対する反射波に基づき第2の音響線信号を生成し、
前記超音波画像化信号生成部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号に基づき画像化信号を生成し、
前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との間の時間間隔と、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は異なり、
前記残留エコー検出部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較して、他方に無い信号部分を虚像信号部分として検出し、
前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との送信順序はセット送信ごとに交互に入れ替わり、
前記処置部は、響線信号ラインデータの前記虚像信号部分を、前記音響線信号ラ
インデータよりも過去の同一極性の音響線信号ラインデータにおける対応する信号部分に置換する
超音波診断装置。
【請求項3】
前記残留エコー検出部は、時間平均が施された前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較することにより、前記虚像信号部分を検出する
請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記時間平均は、プローブ帯域最低周波数の1波長以上の時間平均である
請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記残留エコー検出部は、包絡線検波が施された前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較することにより、前記虚像信号部分を検出する
請求項からの何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記残留エコー検出部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号について相互相関処理を行い、相関度が低い有値信号が存在する部分を虚像信号部分として検出する
請求項からの何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波プローブを備えた、
請求項1からの何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し駆動パルスの極性が異なる複数種類の超音波送信を含むセット送信を実行する超音波診断方法であって、
被検体の領域分割で得られた複数の領域のうち、1の領域に対応する複数の振動子に第1セット送信を実行させ、他の領域に対応する複数の振動子に第2セット送信を実行させ、
複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成し、
複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成し、
前記第1又は第2セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長く、
前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長く、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は、生成される前記画像化信号のフレームごとに変化する
超音波信号処理方法。
【請求項9】
複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し駆動パルスの極性が異なる複数種類の超音波送信を含むセット送信を実行する超音波診断方法であって、
被検体の領域分割で得られた複数の領域のうち、1の領域に対応する複数の振動子に第1セット送信を実行させ、他の領域に対応する複数の振動子に第2セット送信を実行させ、
複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成し、
複数の種類の前記音響線信号における虚像信号部分を検出し、
前記虚像信号部分が検出された前記音響線信号における前記虚像信号部分に対する処置を行い、
処置された前記音響線信号を含む複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成し、
前記第1又は第2セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔、および、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔はそれぞれ異なり、
前記検出では、前記複数の種類の音響線信号を比較して、他の音響線信号に無い信号部分を前記虚像信号部分として検出し、
前記第1又は第2セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との送信順序はセット送信ごとに交互に入れ替わり、
前記処置では、音響線信号ラインデータの前記虚像信号部分を、前記音響線信号ラインデータよりも過去の同一極性の音響線信号ラインデータにおける対応する信号部分に置き換える
超音波信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、及び超音波信号処理方法に関し、特に、超音波診断装置における送受信にかかるビームフォーミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波パルス反射法により生体内情報を取得し、断層像として表示する医療用画像機器である。超音波診断装置は、超音波プローブ(以後、「プローブ」とする)により被検体内部に超音波を送信し、被検体組織の音響インピーダンスの差異により生じる超音波反射波(エコー)を受信し、この受信から得た電気信号に基づいて、被検体の内部組織の構造を示す超音波断層画像を生成し、モニタ(以後、「表示部」とする)上に表示するものである。この超音波診断装置において、動画表示においてリアルタイム性を向上させるためのさまざまな工夫がなされており、パルス繰り返し周期を短縮したときに生じる残留エコーによるアーチファクト(Artifacts)を軽減するための各種技術が提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-181209号公報
【文献】特開2007-244501号公報
【文献】特開2010-17373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年、動画描画時におけるリアルタイム性に対する要求が増し、リアルタイム性向上のためのパルス繰り返し周期の短縮に伴い、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトが問題となる場合がしばしばあった。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、動画描画時におけるリアルタイム性を確保し、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトの発生を抑制する超音波信診断装置、及び超音波信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる超音波診断装置は、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し駆動パルスの極性が異なる複数種類の超音波送信を含むセット送信を実行する超音波診断装置であって、超音波プローブにおいて方位方向に配されている複数の振動子のそれぞれにセット送信を実行させる送信部と、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長く、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は、生成される前記画像化信号のフレームごとに変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様にかかる超音波信診断装置、超音波信号処理方法、及びプログラムによれば、動画描画時におけるリアルタイム性を確保し、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる超音波診断装置100を含む超音波診断システム1000の外観図である。
図2】超音波診断装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図3】超音波診断装置100の送信部103の構成を示す機能ブロック図である。
図4】(a)(b)は、送信部103において生成される駆動パルス信号の一例sp、(c)は、別方式による駆動パルス信号の一例scの態様を示す模式図である。
図5】送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
図6】送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
図7】超音波診断装置100において、送信にかかる超音波ビームに基づく反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
図8】超音波診断装置100の受信部104の構成を示す機能ブロック図である。
図9】超音波診断装置100の画像化信号生成部105の構成を示す機能ブロック図である。
図10】超音波診断装置100における処理の概要を示すフローチャートである。
図11図9における送受信ビームフォーミング処理(ステップS4)の詳細を示すフローチャートである。
図12図9における超音波画像化信号生成処理(ステップS5)の詳細を示すフローチャートである。
図13図11における高調波成分抽出処理(ステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
図14】実施の形態1の変形例1にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
図15】変形例1にかかる超音波診断装置の送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
図16】実施の形態2にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
図17】実施の形態2にかかる超音波診断装置の送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
図18】実施の形態2にかかる超音波診断装置の画像化信号生成部105の構成を示す機能ブロック図である。
図19】超音波診断装置100において、送信にかかる超音波ビームに基づく反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
図20】実施の形態3にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
図21】実施の形態3にかかる超音波診断装置による送信にかかる超音波ビームの反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
図22】実施の形態3にかかる超音波診断装置の画像化信号生成部105Aの構成を示す機能ブロック図である。
図23】(a)(b)は、実施の形態3にかかる超音波診断装置における残留エコー検出部における時間平均処理の一部を示す模式図である。
図24】実施の形態3にかかる超音波診断装置における高調波成分抽出処理(図11におけるステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
図25】変形例3にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
図26】変形例3にかかる超音波診断装置による送信にかかる超音波ビームの反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
図27】変形例3にかかる超音波診断装置の画像化信号生成部105Bの構成を示す機能ブロック図である。
図28】変形例3にかかる超音波診断装置における音響線信号の保存処理(図11におけるステップS502)の詳細を示すフローチャートである。
図29】変形例3にかかる超音波診断装置における高調波成分抽出処理(図11におけるステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
図30】(a)(b)は、従来の超音波診断装置において、送信にかかる超音波ビームに基づく反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
図31】従来の超音波診断装置による送信波と反射波の被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪発明を実施するための形態に至った経緯≫
従来、超音波診断装置による動画表示において、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトが問題となる場合があった。
【0010】
図30(a)(b)は、従来の超音波診断装置において、送信にかかる超音波ビームに基づく反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。図31は、従来の超音波診断装置による送信波と反射波の被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
【0011】
高調波成分を画像化するためのティッシュ ・ハーモニック・イメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)において、パルスインバージョン法(PI:Pulse Inversion)を利用して、同一の走査線上に極性の異なる一対の送信波Tx1、Tx2にかかる送受信を示す模式図であり、横軸は送信波Tx1、Tx2に対する表示領域に対応する深度、縦軸の方向は送信波及び反射波の極性を示す。
【0012】
送信波Tx1、Tx2それぞれに対し、受信期間内に受信した反射波に基づき、表示最大深度までの表示領域に対応する深さの被検体組織について画像化が行われる。
【0013】
図30(a)に示す例では、送信波Tx1の表示領域分の受信を行ったのち、直ちに送信波Tx2の送信および受信を開始した場合、送信波Tx1に基づいて、表示最大深度よりも深部に高反射組織による反射波Rx1が、同一の走査線についての送信波Tx2の受信期間内に振動子に到達し、送信波Tx2に対する受信の際に混入し残留エコーRE1として検出される。この場合、図31に示すように、表示領域より深部に位置する高反射組織HROからの反射波Rx1に基づく残留エコーRE1がアーチファクトAR1として表示領域内に表示される。
【0014】
また、図30(b)に示す例では、送信波Tx1の残留エコーRE1に加えて、直前に送受信された隣接する走査線についての送信波Tx2に基づいて、深部高反射組織による反射波Rx2が、現走査線についての送信波Tx1の受信期間内に振動子に到達し、送信波Tx1に対する受信の際に混入し残留エコーRE2として検出される。この場合も、深部の高反射組織HROからの反射波Rx2に基づく残留エコーRE2がアーチファクトとして表示領域内に表示される。
【0015】
これに対し、上述のとおり、超音波診断装置において、残留エコーによるアーチファクトの発生を抑止するための技術が提案されている。
【0016】
例えば、特許文献1には、パルスインバージョン法において、一対の送受信にさらにダミー送受信の期間を付加して、一対の送受信とダミー送受信との間で残留エコーを相殺する、あるいは、ダミー受信の期間を設けて一対の送受信とダミー受信との間で残留エコーを相殺する技術が開示されている。
【0017】
また、別の方法として、特許文献2には、異なる複数のパルス繰り返し周波数の超音波の送受信により複数の画像を生成し、生成された複数の画像データに基づいて残留多重エコーによるアーチファクトの発生を判定する虚像判定手段を備え、アーチファクトが発生している場合にはパルス繰り返し周波数を低減する技術が開示されている。
【0018】
さらに、別の方法として、特許文献3には、同一の方位方向について複数回に亘って不等間隔で超音波を送受信し、かつ超音波を送受信する方位方向を変えることによって複数の方位方向からのドプラ受信データおよび補正エコーを取得し、補正エコーを用いてドプラ受信データを補正することによって残留エコーが除去または低減されたドプラ受信データを取得し、残留エコーが除去または低減されたドプラ受信データから血流情報を求める技術が開示されている。
【0019】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、パルスインバージョン法の一対の送受信に対し、付加的な3回目の送受信や3回目の受信に相当する処理時間を要しフレームレートが向上しないという課題があった。
【0020】
また、特許文献2に記載の方法では、画像にフレーム間で動きが無いことが前提となり、プローブの操作中は正確な判定ができないという課題があった。
【0021】
さらに、特許文献3に記載の方法では、多数回の送受信が必要なドプラ送受信に対しては有効であるものの、一対の送受信からなるパルスインバージョン法には有効でないという課題があった。
【0022】
近年、超音波診断装置による空間コンパウンドによるBモード画像表示、カラードップラーモードや胎児心臓観察等における動画表示において、動画描画時におけるリアルタイム性に対する要求が増す一方で、リアルタイム性向上のためのパルス繰り返し周期の短縮に伴い、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトの問題が顕著になり、残留エコーに起因するアーチファクトの改善がより一層求められていた。
【0023】
そこで、発明者は、複雑な送信制御を必要としない安価な装置において、動画描画時におけるリアルタイム性を損なうことなく、描画領域よりも深部に位置する高反射組織からの残留エコーに起因するアーチファクトの発生を抑止する構成について、鋭意検討を行い、本開示にかかる超音波信診断装置、及び超音波信号処理方法に想到するに至ったものである。
【0024】
≪実施の形態1≫
<概 要>
実施の形態1に示した超音波信号処理方法は、複数レート送信を利用した画像形成方法において、第一送受信(送信波Tx1による送受信)のみを空間的に異なる複数領域に複数回行い、続いて第二送受信(送信波Tx2による送受信)を第一送受信と同一走査線位置に順次行ってこれらを受信演算に用いる方法である。
【0025】
複数領域を、互いの残留エコーが受信されない程度に空間的に離れた位置に設定して行うことにより、隣接する走査線からの残留エコー混入を抑止できることができるとともに、同一の走査線における送信波Tx1による送受信と送信波Tx2による送受信の実質的な送信間隔を、2領域分割(Tx1-Tx1-Tx2-Tx2-・・・)であれば実質的に2倍、3領域分割(Tx1-Tx1-Tx1-Tx2-Tx2-Tx2-・・・)では実質的に3倍とすることができ、フレームレートを犠牲とすることなく、短い実送信間隔で送信波Tx1→送信波Tx2の残留エコー混入を大幅に抑止できるようになる。
【0026】
<構 成>
以下、実施の形態1にかかる超音波診断装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
<超音波診断システム1000の構成>
図1は、実施の形態1にかかる超音波診断装置100を含む超音波診断システム1000の外観図である。図2は、超音波診断装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、超音波診断システム1000は、被検体に向けて超音波を送信しその反射波の受信する先端表面に列設された複数の振動子101aを有するプローブ101、プローブ101に超音波の送受信を行わせプローブ101からの出力信号に基づき超音波画像を生成する超音波診断装置100、超音波画像を画面上に表示する表示部108、操作者からの操作入力を受け付ける操作入力部110を有する。プローブ101は、ケーブル102により超音波診断装置100に接続可能に構成されている。なお、プローブ101は超音波診断装置100に含まれる態様としてもよく、表示部108は、超音波診断装置100に含まれない態様としてもよい。
【0028】
<超音波診断装置100の構成概要>
超音波診断装置100は、プローブ101の複数ある振動子101aのうち、送信又は受信の際に用いる振動子を各々に選択し、選択された振動子に対する入出力を確保するマルチプレクサ(不図示)を介して、超音波の送信を行うためにプローブ101の各振動子101aに対する高電圧印加のタイミングを制御する送信部103と、プローブ101で受波した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号を増幅し、A/D変換し、受信ビームフォーミングして音響線信号(DASデータ:Delay and Sum Data)を生成する受信部104を有する。また、受信部104からの出力信号である音響線信号から高調波成分を抽出する高調波成分抽出部105aを有し、音響線信号及びその高調波成分に対して包絡線検波、対数圧縮などの処理を実施して輝度変換し、その輝度信号を直交座標系に座標変換を施すことで超音波画像(Bモード画像)を生成する超音波画像化信号生成部105(以後、「画像化信号生成部105」と表記することがある)を備える。また、画像メモリー部106aを有し超音波画像のサブフレームデータ等を合成して超音波画像化信号を合成する画像化信号合成部106を備える。さらに、超音波画像のフレームデータを表示部108に出力するDSC107、表示部108、各構成要素を制御する制御部109を備える。また、受信部104が出力する音響線信号及び画像化信号生成部105が出力する超音波画像化信号を保存するデータ格納部(不図示)を有していてもよい。
【0029】
このうち、送信部103、受信部104、画像化信号生成部105、画像化信号合成部106は、超音波信号処理装置150を構成する。
【0030】
超音波診断装置100を構成する各要素、例えば、送信部103、受信部104、画像化信号生成部105、画像化信号合成部106、DSC107、制御部109は、それぞれ、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路により実現される。あるいは、CPU(Central Processing Unit)やGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Unit)やプロセッサなどのプログラマブルデバイスとソフトウェアにより実現される構成であってもよい。これらの構成要素は一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。また、複数の構成要素を組合せて一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。
【0031】
画像メモリー部106a、データ格納部は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、MO、DVD、DVD-RAM、半導体メモリ等を用いることができる。また、画像メモリー部106a、データ格納部は、超音波診断装置100に外部から接続された記憶装置であってもよい。
【0032】
なお、本実施の形態1にかかる超音波診断装置100は、図2で示した構成に限定されない。例えば、何れかの要素が不要な構成もあるし、プローブ101に送信部103や受信部104、またその一部などが内蔵される構成であってもよい。
【0033】
実施の形態1にかかる超音波診断装置100は、超音波信号処理装置150を構成する送信部103、受信部104、画像化信号生成部105、画像化信号合成部106に特徴を有する。そのため、本明細書では、主に、超音波信号処理装置150の各要素について、その構成及び機能を説明し、それ以外の構成については、公知の超音波診断装置に使われるものと同じ構成を適用可能であり、公知の超音波診断装置に本実施の形態1にかかる超音波信号処理装置150を置き換えて使用することが可能である。
【0034】
次に、超音波診断装置100に外部から接続されるプローブ101、超音波診断装置100における超音波信号処理装置150以外の構成について、その概要を説明する。
【0035】
プローブ101は、例えば一次元方向(以下、「方位方向」とする)に配列された複数の振動子101aを有する。プローブ101は、後述の送信部103から供給されたパルス状の電気駆動信号(以下、「駆動パルス信号」とする)をパルス状の超音波に変換する。プローブ101は、プローブ101の振動子側外表面を被検体の皮膚表面に当接させた状態で、複数の振動子から発せられる複数の超音波からなる超音波ビームを測定対象に向けて送信する。そして、プローブ101は、被検体からの複数の超音波反射波(以下、「反射波」とする)を受信し、複数の振動子によりこれら反射超音波をそれぞれ電気信号に変換して受信部104に供給する。本実施の形態1では、例えば、長尺状に192個の振動子101aを備えたプローブ101を用いている。なお、振動子101aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。
【0036】
操作入力部110は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための検査者からの超音波診断装置100に対する各種設定・操作等の各種操作入力を受け付け、制御部109に出力する。操作入力部110は、例えば、表示部108と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。この場合、表示部108に表示された操作キーに対してタッチ操作やドラッグ操作を行うことで超音波診断装置100の各種設定・操作を行うことができ、超音波診断装置100がこのタッチパネルにより操作可能に構成される。また、操作入力部110は、例えば、各種操作用のキーを有するキーボードや、各種操作用のボタン、レバー等を有する操作パネルであってもよい。また、表示部108に表示されるカーソルを動かすためのマウス等であってもよい。または、これらを複数用いてもよく、これらを複数組合せた構成のものであってもよい。
【0037】
表示部108は、いわゆる画像表示用の表示装置であって、DSC107からの画像出力を画面に表示する。表示部108には、液晶ディスプレイ、CRT、有機ELディスプレイ等を用いることができる。
【0038】
<超音波信号処理装置150の構成>
以下、超音波信号処理装置150を構成する送信部103、受信部104、画像化信号生成部105、画像化信号合成部106の構成について説明する。
【0039】
(送信部103)
送信部103は、ケーブル102を介してプローブ101と接続され、プローブ101から超音波の送信を行うために、プローブ101に存する複数の振動子101aの全てもしくは一部に当たる送信振動子に対する高電圧印加のタイミングを制御する回路である。送信部103は、プローブ101に存する複数の振動子101aから送信振動子を選択して駆動信号を供給し、超音波ビームを送信させる。なお、本明細書では、送信後に反射波の受信が行われる超音波ビームの送信単位を「送信イベント」と称呼する。
【0040】
超音波診断装置100では、送信部103は、複数の振動子101aから単数の送信振動子Sx、あるいは、送信振動子の列Sxq(q=1~qmax、qは自然数)を選択して、それぞれの送信振動子Sxqから平行に超音波ビームを送信させる構成としてもよい。あるいは、送信振動子Sxqから送信焦点に集束する集束波の超音波ビームを送信させる構成としてもよい。以後、単数の送信振動子Sxおよび送信振動子の列Sxqを区別しない場合、「送信振動子Sx」と表記することがある。
【0041】
図3は、送信部103の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、クロック発生回路1031、駆動パルス信号発生回路1032、持続時間及び電圧レベル設定部1033、遅延回路1034、遅延プロファイル生成部1035を備える。図4(a)(b)は、送信部103において生成される駆動パルス信号の一例sp及びパルスインバージョンにおける位相反転送信の態様を示す模式図である。図4(c)は別方式によって生成された駆動パルス信号の一例scの態様を示す図である。駆動パルス信号scのように無段階に電圧レベルが変化する駆動パルス信号は、リニアアンプを用いて任意形状の駆動パルス信号を生成する方式等によって得てもよいし、駆動パルス信号spに帯域制限処理を行うなどして平滑化し、駆動パルス信号scとして出力する方法をとってもよい。このように、駆動パルス信号は矩形状の信号を用いる方式でも、駆動パルス信号scの様に無段階に変化する駆動パルス信号を用いる方法のいずれもその必要性に応じて選択できる。
【0042】
クロック発生回路1031は、駆動パルス信号spの出力タイミング制御や各電圧レベルの持続時間制御の最小時間単位となるクロック信号を発生させる回路である。
【0043】
駆動パルス信号発生回路1032は、持続時間及び電圧レベル設定部1033からの出力に基づき、送信振動子Sxに含まれる振動子に超音波ビームを送信させるための駆動パルス信号spを生成して出力する回路である。
【0044】
駆動パルス信号spの発生において、駆動パルス信号発生回路1032は、例えば、図4(a)に示すように、5値(+HV/+MV/0(GND)/-MV/-HV)、又は3値(+HV/0(GND)/-HV)の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波による駆動パルス信号spを発生させる。なお、駆動パルス信号の振幅の絶対値、正負の電圧の同一性、電圧の段階数は上記に限定されない。
【0045】
また、超音波診断装置100では、THIにおける高調波成分の抽出を行うために、例えば、パルスインバージョン法を用いることができる。その場合、駆動パルス信号発生回路1032では、パルスインバージョン法を実施する場合には、位相が反転した連続する一対の駆動パルス信号sp1、sp2を発生する。その結果、図4(b)に示すように、駆動パルス信号発生回路1032が発生する1回目の駆動パルス信号sp1と2回目の駆動パルス信号sp2とは位相が反転した構成となる。
【0046】
このとき、必要に応じて1回目の駆動パルス信号sp1と2回目の駆動パルス信号sp2を位相反転させた対称形とせずに一部を非対称として線形信号成分を意図的に残し、利用する構成としてもよい。
【0047】
更に、高調波の抽出法は位相反転を利用した方法に限定されず、例えば既知の振幅変調法を利用した方法で構成してもよい。
【0048】
加えて、複数の送信イベントの受信結果を演算して必要とする受信信号成分を抽出する方法としては、送信イベント数は2回に限定されず、3回以上の送信イベントを行う構成としてもよい。例えば、駆動パルス信号の位相を120°ずつ、ずらした3回の送信イベントの受信結果を合成して3次高調波成分を抽出する構成等も選択できる。
【0049】
遅延プロファイル生成部1035は、集束波の超音波ビームを送信させる場合に、制御部109からの送信制御信号のうち、送信振動子Sxと送信焦点の位置を示す情報に基づき、超音波ビームの送信タイミングを決める遅延時間tpk(kは1から送信振動子の数Mまでの自然数)を振動子毎に設定して遅延回路1034に出力する回路である。これにより、遅延時間分だけ振動子毎に超音波ビームの送信を遅延させて超音波ビームの電子フォーカシングを行う。なお、送信振動子Sxから平行に超音波ビームを送信させる構成では、各振動子に対し共通の遅延時間tpkが設定される。
【0050】
遅延回路1034は、集束波の超音波ビームを送信させる場合に、送信パルスの送信タイミングについて、遅延プロファイルに基づき振動子毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信にかかる超音波ビームの集束を行う回路である。これにより、送信振動子Sxから送信焦点に対応する被検体中の特定部位に超音波ビームが集束する超音波ビームが送信される。なお、送信振動子Sxから平行に超音波ビームを送信させる構成では、各振動子に対し共通の遅延時間tpkが設定される。
【0051】
次に、送信部103による送信波の送信シーケンスについて説明する。
【0052】
図5は、送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。図5において、送信順Lは時系列に送信される送信波の送信の順番を指し、走査線番号iは整相加算処理により音響線信号のラインデータを生成する単位ラインである走査線の方方向(X方向)の位置に対応する番号を指す。
【0053】
パルスインバージョン法では、上述のとおり、同一の走査線に対し、送信波の送信ラインが共通し、位相が反転した連続する一対の駆動パルス信号により駆動されるセット送信が行われ、それぞれの反射波から得られた一対の受信信号から高調波信号が抽出されて音響線信号のラインデータが生成される。ここで、「送信ライン」とは、送信波における超音波ビームの位置を示す仮想のラインであって、例えば、送信波の超音波ビームの中心軸を用いてもよい。
【0054】
図5における送信波種別qは、パルスインバージョン法において送信される一対の送信波の極性を表し、「+」の記号によって連結された送信波Tx1、Tx2は、それぞれ、図4(b)における駆動パルス信号sp1、sp2、又は、図4(b)における駆動パルス信号sc1、sc2に基づいてセット送信される、正極性又は負極性の送信波を指す。
【0055】
制御部109は、図5に示す送信シーケンスに基づき、送信順Lごとに、走査線番号i、送信波種別qに対応する、送信振動子Sx及び駆動パルス信号の種別に関する情報(必要な場合には送信焦点に関する情報)等の送信制御信号を送信部103に出力する。送信部103は送信制御信号に基づき、送信処理が行われる。
【0056】
図5に示すように、走査線番号1のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、走査線番号97のセット送信を構成する送信波Tx197、Tx297とが、互いに交互に送信される。具体的には、送信波Tx1、Tx2の送信の間に、送信波Tx197の送信が行われ、送信波Tx197、Tx297の送信の間に、送信波Tx2の送信が行われ、送信順L(L=1~385)に従って、走査線番号1から96までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、走査線番号97から192までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、互いに交互に送信される。
【0057】
図6は、送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。図7は、送信にかかる超音波ビームに基づく反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
【0058】
このように、同一の走査線に対して行われる一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の送受信の間に、第2のセット送信における送信波Tx1、Tx2の一方を送信することにより、パルス繰り返し周期の増加を抑制しつつ、一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の時間間隔を増大することができる。そのため、フレームレートの増大を避けながら、図7に示すように、同一の走査線(走査線番号n)に対して行われる先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されて、アーチファクトARとして表示領域内に表示されることを抑止できる。
【0059】
また、図6に示すように、連続して送信が行われる走査線番号1と走査線番号97の走査線は被検体断面における伝播経路が十分に離間しているので、直前の送信波に基づく深部高反射組織による反射波が、現送信波に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されてアーチファクトARとして表示領域内に表示されることを抑止できる。
【0060】
(受信部104)
受信部104は、プローブ101で受信した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号から音響線信号を生成する。なお、「音響線信号」とは、整相加算処理がされたあとのある観測点に対する受信信号である。整相加算処理については後述する。図8は、受信部104の構成を示す機能ブロック図である。図8に示すように、受信部104は、入力部1041、受波信号保持部1042、整相加算部1043を備える。
【0061】
以下、受信部104を構成する各部の構成について説明する。
【0062】
入力部1041は、ケーブル102を介してプローブ101と接続され、送信イベントに同期してプローブ101において超音波反射波を受信して得た電気信号を増幅した後、AD変換した受信信号(RF信号)を生成する回路である。送信イベントの順に時系列に受信信号を生成し受波信号保持部1042に出力し、受波信号保持部1042は受信信号を保持する。
【0063】
ここで、受信信号(RF信号)とは、各振動子にて受信された反射超音波から変換された電気信号をA/D変換したデジタル信号であり、各振動子にて受信された超音波の送信方向(被検体の深さ方向)に連なった信号の列を形成している。
【0064】
また、パルスインバージョン法を実施する場合には、入力部1041は、同一走査線上に時間間隔をおいて送信された極性反転した一対の駆動パルス信号sp1、sp2もしくはsc1、sc2からの反射波に基づく位相が反転した一対のrf信号rf1、rf2を受信する。
【0065】
入力部1041は、送信イベントに同期してプローブ101に存する複数Nの振動子101aの一部又は全部にあたる列状に並んだ受波振動子Rwの各々が得た反射超音波に基づいて、各受波振動子Rwに対する受信信号の列を生成する。受波振動子Rwは、制御部109の指示に基づき選択される。本実施の形態1では、受波振動子Rwはプローブ101に存する振動子101aの全数Nとしている。また、受波振動子Rwが構成する受信振動子Rwの列Rwxの列中心は、送信振動子Sxと合致するよう選択され、受波振動子Rwの数は送信振動子の数よりも多い構成としてもよい。
【0066】
受波信号保持部1042は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、半導体メモリ等を用いることができる。受波信号保持部1042は、送信イベントに同期して送信部103から、各受波振動子に対する受信信号の列を入力し、1枚の超音波画像が生成されるまでの間これを保持してもよい。また、受波信号保持部1042は、例えば、ハードディスク、MO、DVD、DVD-RAM等を用いることができる。超音波診断装置100に外部から接続された記憶装置であってもよい。また、データ格納部の一部であってもよい。
【0067】
整相加算部1043は、送信イベントに同期して被検体内の計算対象走査線Bxi(以後「走査線Bxi」と表記することがある)内に存する複数の観測点について、観測点から各受信振動子が受信した受信信号列を整相加算して、音響線信号を生成する回路である。ここで、「走査線Bxi」とは、整相加算処理により音響線信号のラインデータを生成する単位ラインであり、iは走査線BxのX方向の位置に対応するインデックスである。
【0068】
図8に示すように、整相加算部1043は、受信開口設定部10431、遅延時間算出部10432、遅延処理部10433、加算部10434、及び合成部10435を備える。以下、各部の構成について説明する。
【0069】
受信開口設定部10431は、被検体中の解析対象範囲の中に走査線Bxiを設定し、音響線信号を算出対象となる走査線Bxi中の観測点Pijに対して、観測点Pijの位置に基づき受信開口Rxを設定する回路である。ここで、受信開口Rxとは、受信信号を受波した受波振動子の列から選択される振動子の列であって、観測点からの反射波に基づく受信信号列を整相加算するときに、計算の対象となる受信信号を受波した振動子の列である。また、本明細書では、観測点Pを、X方向及びY方向の座標に対応するインデックスi、jを付して表記する場合には、Pijと表記する場合がある。整相加算処理では、観測点Pijから受信開口Rx内の受波振動子各々への反射波到達の遅延時間を各々算出し、観測点Pijに対して算出した遅延時間に基づき音響線信号が算出される。
【0070】
遅延時間算出部10432は、被検体中の解析対象範囲に対応する走査線Bxi中の複数の観測点Pijに対して、観測点Pijから受信開口Rx内の受波振動子各々への反射波到達の遅延時間を算出する回路である。
【0071】
送信振動子Sxから放射された送信波は、観測点Pijに到達し、観測点Pijで音響インピーダンスの変化に応じて反射波を生成し、その反射波がプローブ101における受信開口Rx内の受波振動子Rwに戻る。任意の観測点Pijまでの経路の長さ、及び観測点Pから各受波振動子Rwまでの経路の長さは幾何学的に算出することができる。
【0072】
具体的には、観測点Pijに対する遅延時間の算出は以下のように行われる。
【0073】
遅延時間算出部10432は、受信開口Rx内の受波振動子Rwに対する受信信号の列から、走査線Bxi内の複数の観測点Pijについて、各観測点Pijと受波振動子Rw各々との間の距離の差を音速値Csで除した受波振動子Rw各々への反射超音波の到達時間差(遅延量)を算出する。
【0074】
遅延処理部10433は、観測点観測点観測点Pijに対して、受波振動子Rw各々に対する基準遅延時間を用いて音響線信号dsを生成する回路である。
【0075】
遅延処理部10433は、遅延時間算出部10432において算出された到達時間差(遅延量)に基づき各観測点観測点Pijから受波振動子Rw各々への反射波の到達時間を算出し、遅延処理部10433は反射波の到達時間に基づき各受波振動子Rwに対応する受信信号として同定する。遅延処理部10433は、この処理を走査線Bxiに含まれる複数の観測点Pijの全てについて行い、各受波振動子Rwkに対する遅延量Δtkを算出し受信信号の特定を行う。
【0076】
加算部10434は、遅延処理部10433から出力される各受波振動子Rwkに対応して同定された受信信号を入力として、それらを加算して、観測点Pに対する整相加算された音響線信号を生成する回路である。あるいは、さらに、各受波振動子Rwに対応して同定された受信信号に、各受波振動子Rwに対する重み数列(受信アポダイゼーション)を乗じて加算して、観測点Pに対する音響線信号を生成する構成としてもよい。この場合、重み数列は、受信開口Rxの列方向の中心に位置する振動子に対する重みが最大となるよう送信フォーカス点Fを中心として対称な分布をなすことが好ましい。
【0077】
遅延処理部10433において受信開口Rx内に位置する各受波振動子Rwが検出した受信信号の遅延時間を補償して加算部10434にて加算処理をすることにより、観測点Pijからの受信信号を抽出することができる。このようにして、遅延処理部10433は、走査線Bxi内の全ての観測点Pについて音響線信号を生成する。そして、計算対象となる走査線Bxijを、図5に示す態様に基づいて、方位方向に漸次移動させることにより、方位方向の位置を異ならせて超音波送信を繰り返して走査線Bxiのすべての観測点Pijについて音響線信号が生成され画像化信号生成部105に漸次出力される。
【0078】
(画像化信号生成部105)
画像化信号生成部105は、複数の走査線Bxiに対応したそれぞれの音響線信号のラインデータ等を、その強度に対応した輝度信号へと変換し、その輝度信号を直交座標系に座標変換を施すことで超音波画像化信号のラインデータ等を生成する。画像化信号生成部105はこの処理を複数の走査線Bxi毎に逐次行い、例えば生成した超音波画像化信号のラインデータを画像化信号合成部106に順次、出力する。具体的には、画像化信号生成部105は、整相加算部1043から取得した音響線信号に対してパルスバージョン法を用いて高調波成分を抽出して広帯域の音響線信号を生成したのち、これに包絡線検波、対数圧縮などの処理を実施して輝度変換し、その輝度信号を直交座標系に座標変換を施すことで超音波画像化信号のラインデータ等を生成する。超音波画像化信号は、音響線信号の強さを輝度によって表したBモード画像であってもよい。
【0079】
また、本明細書において、「超音波画像化信号」とは、音響線信号に基づき生成される像として表示される各段階の信号を指し、画像化される最終段階である輝度情報のみならず、その前段階の包絡線検波後受信信号やこれに帯域通過フィルタ処理等を行った信号処理後受信信号等も含まれる構成としてもよい。
【0080】
画像化信号生成部105は、高調波成分抽出部105aを備え、高調波成分抽出部105aにより、パルスバージョン法を用いて抽出された高調波成分から超音波画像化信号を生成する。
【0081】
このとき、高調波成分抽出部105aは、例えば、特開2015-112261号公報に記載されるように、受信部104から出力された音響線信号に対しパルスインバージョン法を実施して高調波成分を抽出する。そして、高調波成分のうち、偶数次高調波成分は、上述した同一走査線上に時間間隔をおいて送信された極性反転した一対の駆動パルス信号sp1、sp2からそれぞれ発生した2つの送信超音波にそれぞれ対応する反射波に基づく位相が反転した一対のrf信号rf1、rf2に基づく音響線信号を加算することにより、受信信号に含まれる基本波成分を除去して抽出できる。必要に応じて用いられる奇数次高調波成分は、一対のrf信号rf1、rf2に基づく音響線信号を減算して偶数次高調波成分を除去した上で必要に応じてフィルター処理を行うことにより抽出できる。奇数次高調波を用いる場合、抽出された偶数次高調波成分と奇数次高調波成分は、オールパスフィルター等により位相調整処理を行った後に加算することにより広帯域の音響線信号を得ることができる。
【0082】
図9は、超音波診断装置100の画像化信号生成部105の回路構成を示す機能ブロック図である。図9に示すように、画像化信号生成部105は、高調波成分抽出部105aを有し、高調波成分抽出部105aは、第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013、加算器503、減算器504、第1フィルタ505、第2フィルタ506、合成部507を備えた構成を採る。画像化信号生成部105は、さらに、画像化信号変換部508を有する。
【0083】
本実施の形態では、上述のとおり、受信部104は、送信波Tx1の送受信により得られた第1の音響線信号のラインデータと、送信波Tx2の送受信により得られた第2の音響線信号のラインデータを、図5に示す送信順Lに従って、画像化信号生成部105に出力する。
【0084】
高調波成分抽出部105aにおいて、第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013には、第1の音響線信号のラインデータ、第2の音響線信号のラインデータが、送信順Lに従ってそれぞれ記憶される。
【0085】
加算器503は、第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013から、同一の走査線について取得された第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータとを選択的に読み出し、第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータとを加算することにより、偶数次高調波成分を抽出して第1フィルタ505に出力する。第1フィルタ505は、加算結果からノイズ成分を除去するための帯域通過フィルターである。
【0086】
減算器504は、第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013から、同一の走査線について取得された第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータとを選択的に読み出し、第1の音響線信号のラインデータから第2の音響線信号のラインデータとを減算することにより、基本波成分及び奇数次高調波成分を抽出して第2フィルタ506に出力する。第2フィルタ506は、減算結果から基本波成分を除去して奇数次高調波成分を抽出するための帯域通過フィルターである。
【0087】
合成部507は、第1フィルタ505から出力された偶数次高調波成分と第2フィルタ506から出力された奇数次高調波成分とを加算することにより、基本波成分が除去され、高調波成分が含まれた音響線信号のラインデータを生成し、画像化信号変換部508に出力する。
【0088】
画像化信号変換部508は、これに包絡線検波、対数圧縮などの処理を実施して輝度変換し、その輝度信号を直交座標系に座標変換を施すことで超音波画像化信号のラインデータ等を生成して画像化信号合成部106に出力する。
【0089】
(画像化信号合成部106)
画像化信号合成部106は、画像化信号生成部105から出力される複数の走査線Bxiに対応した超音波画像化信号のラインデータ等を観測点の位置を基準に合成して超音波画像のフレームデータ等を生成する回路である。ここで、「フレーム」とは、1枚の超音波画像を構築する上で必要な1つのまとまった信号を形成する単位をさす。1フレーム分の合成された音響線信号を「音響線信号のフレームデータ」とする。
【0090】
画像化信号合成部106は、DRAM、集積回路に含まれるSRAMなどの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部106aを備え、画像化信号生成部105から出力された複数の走査線Bxiに対応する超音波画像化信号のラインデータ等が記憶される。
【0091】
画像化信号合成部106は、走査線Bxiに対応する超音波画像化信号のラインデータを画像メモリー部106aに記憶する際、観測点Pijについて算出された音響線信号は、観測点Pijの位置に対応する画像メモリー部106aのアドレスに記憶することにより超音波画像のフレームデータを生成する。
【0092】
合成された超音波画像のフレームデータはDSC107に出力され、表示部108に表示される。
【0093】
<動作について>
以上の構成からなる超音波診断装置100の超音波信号処理動作について説明する。
【0094】
(超音波診断装置100における処理の概要)
図10は、超音波診断装置100における超音波信号処理の概要を示すフローチャートである。超音波診断装置100において、送信振動子Sxを方位方向に漸次移動させて、パルスインバージョン法を用いて走査する走査線総数の2倍に相当するML回の送受信を行う場合の処理を示すフローチャートである。
【0095】
先ず、超音波検査開始後、制御部109は、送信順Lについて、走査線の方位方向番号Iを規定する配列IDS[L]、送信パルス種別qを規定するを決定する(ステップS1)。ここで、Lは送信順を表すインデックスであり、MLを走査線総数×2としたとき、L=1~MLである。ここで、走査線の方位方向番号Iは、送信される超音波ビームの位置を示す送信ラインに対応する。
【0096】
次に、制御部109は、送信順Lを初期値に設定し(ステップS2)、メモリ等に記憶されている配列[L]、QDS[L]を入力し、走査線番号i、送信パルス種別qを設定する(ステップS3)。
【0097】
例えば、図5における送信シーケンスの場合、配列IDS[L](L=1~385)=
[1,97,1,97,2,98,2,98・・・,96,192,96,192]、配列QDS[L](L=1~385)=[Tx1,Tx1,Tx2,Tx2,Tx1,Tx1,Tx2,Tx2・・・Tx1,Tx1,Tx2,Tx2]となる。
【0098】
次に、後述する図11に示すフローチャートに基づき、送受信ビームフォーミング処理を行う(ステップS4)。すなわち、送信部103は、送信振動子Sxの方位方向の位置Iを初期値に設定した状態で、送信振動子Sx内の振動子に超音波ビームを送信させ、受信部104は、得られた反射波に基づき、走査線Bxiに対応した音響線信号のラインデータを生成し、画像化信号生成部105に出力する。
【0099】
次に、ステップS5では、画像化信号生成部105は、後述する図12に示すフローチャートに基づき、受信部104から出力される、走査線Bxiに対応した音響線信号のラインデータから、超音波画像化信号のラインデータを生成する。さらに、画像化信号合成部106は、それぞれの送信振動子Sxの方位方向の位置に関して、複数の走査線Bxiに対応した超音波画像化信号のラインデータを合成して超音波画像のフレームデータを生成してもよい。
【0100】
次に、ステップS6では、DSC107は超音波画像化信号のラインデータに基づき超音波画像を含む表示画像を作成して表示部108に表示させる。
【0101】
次に、送信順Lが最大値MLであるか否かを判定し(ステップS7)、I最大値MLでない場合には、Lをインクリメントして(ステップS8)、ステップS3に戻り、Lが最大値MLである場合には、すべての走査線Bxiについて超音波画像化信号の表示が完了しているので、ステップS9に進み処理を終了する。あるいは、終了しない場合にはステップS3に戻る。
【0102】
(送受信にかかるビームフォーミング処理)
以下、ステップS4における処理動作の詳細について説明する。
【0103】
図11は、図10における送受信ビームフォーミング処理(ステップS4)の詳細を示すフローチャートである。
【0104】
先ず、制御部109は、走査線番号i、送信波種別qに対応する、送信振動子Sx及び駆動パルス信号の種別に関する情報(必要な場合には送信焦点に関する情報)等の送信制御信号を送信部103に出力する。送信部103は送信制御信号に基づき送信条件を設定する(ステップS401)。
【0105】
次に、送信部103は、送信振動子Sxに超音波ビームを送信させるための駆動信号を供給する送信処理(送信イベント)を行う(ステップS402)。
【0106】
次に、入力部1041は、プローブ101での超音波反射波の受信から得た電気信号に基づき受信信号(RF信号)を生成し受波信号保持部1042に出力し、受波信号保持部1042に受信信号を保持する(ステップS403)。
【0107】
次に、最初に計算対象とする観測点P(i,j)に対し、観測点P(i,j)の深さ方向座標Yを表すインデックスjを初期値に設定し(ステップS404)、走査線Bxiの位置に基づき受信開口Rxを構成する振動子の列を設定する(ステップS405)。受信開口Rxは、例えば、観測点P(i,j)を通る走査線を基準に対称に設定してもよい。
【0108】
次に、遅延時間算出部10432は、基準到達時間t(j)の算出する(ステップS406)。基準到達時間t(j)とは、観測点P(i,j)と受信開口Rxの列中心に位置する受波振動子Rwとの間を超音波が往復するために要する時間である。
【0109】
次に、受信開口Rx内の受波振動子Rwを識別するインデックスkを初期値に設定する(ステップS407)。本例では、一例として、初期値として、受信開口Rxに含まれる受波振動子Rw(kmin~kmax)の最小値kminに設定する。
【0110】
次に、遅延時間算出部10431は、受波振動子Rwkについて、観測点P(i,j)からの反射波が到達する際の遅延時間Δtkを算出する(ステップS408)。
【0111】
次に、遅延処理部10433は、受波信号保持部1042から受信信号の列RF(k)を読込み(ステップS410)、受信信号の列RF(k)中の、受信信号値RF(k,t(j)+Δtk)を特定し、受信信号値RF(k,t(j)+Δtk)と加算レジスタに記憶されている音響線信号ds(i,j)との和を算出して(ステップS411)、新たな音響線信号ds(i,j)を加算レジスタに保存する(ステップS412)。
【0112】
そして、受波振動子Rwを識別するインデックスkが最大値kmaxであるか否かを判定し(ステップS413)、最大値kmaxでない場合には、kをインクリメントして(ステップS414)、ステップS408に戻り、kが受信開口Rx中の受波振動子Rwの最大値kmaxである場合には、観測点P(i,j)に対する音響線信号dS(i,j)の算出が完了しており、jが最大値jmaxであるか否かを判定する(ステップS415)。jが最大値jmaxでない場合には、jをインクリメントして(ステップS416)、ステップS406に戻り、jが最大値jmaxである場合には、走査線Bxi上に位置するすべての観測点P(i,j)に対する音響線信号dS(i,j)の算出が完了しており、処理を終了する。
【0113】
(超音波画像化信号生成処理)
以下、ステップS5における処理動作の詳細について説明する。
【0114】
図12は、図10における超音波画像化信号生成処理(ステップS5)の詳細を示すフローチャートである。
【0115】
制御部109は、メモリ等に記憶されている配列[L]、QDS[L]を入力し、走査線番号i、送信パルス種別qを設定する (ステップS501)。次に、高調波成分抽出部105aの第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013に、送信順Lに従って、音響線信号のラインデータそれぞれが保存される(ステップS502)。ここで、音響線信号のラインデータとは、第1の音響線信号のラインデータ、第2の音響線信号のラインデータの何れかである。
【0116】
次に、保存された音響線信号のラインデータに対し、同一の走査線番号iであって、反対パルス種別qの音響線信号がすでに何れかのメモリに保存されているか否かを判定し(ステップS503)、保存されていない場合にはステップS5の処理を終了し、保存されている場合にはステップS504に進み、高調波成分抽出処理を行う。
【0117】
図13は、図12における高調波成分抽出処理(ステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
【0118】
高調波成分抽出部105aにおいて、第1メモリ5011、第2メモリ5012、第3メモリ5013に保存されている、同一の走査線Bxiに関する第1及び第2のパルス種別qの音響線信号、すなわち第1の音響線信号及び第2の音響線信号をメモリから選択的に読み出し(ステップS5041)、加算器503により第1及び第2のパルス種別qの音響線信号の加算処理を行い偶数次高調波成分を抽出するとともに、必要に応じて減算器504により減算処理を行い奇数次高調波成分を抽出し(ステップS5045)、その後、フィルタリング処理(ステップS5046)により減算結果から基本波成分を除去して奇数次高調波成分のみを抽出する。そして、偶数次高調波信号及び必要に応じて抽出された奇数次高調波信号を合成して(ステップS5047)、高調波成分が含まれた音響線信号のラインデータを生成し、画像化信号変換部508に出力する。
【0119】
次に、図11のステップS505において、画像化信号変換部508は、これに包絡線検波、対数圧縮などの処理を実施して輝度変換し、その輝度信号を直交座標系に座標変換を施すことで超音波画像化信号のラインデータ等を生成して、画像化信号合成部106に出力する(ステップS506)。
【0120】
<小 括>
以上のとおり、実施の形態1に係る超音波診断装置100では、同一の走査線に対して行われる一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の送受信の間に、第2のセット送信の送信波Tx1、Tx2の一方が送信されることにより、パルス繰り返し周期の増加を抑制しつつ、一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の時間間隔を増大することができる。そのため、フレームレートの増大を避けながら、同一の走査線内の先の送信波Tx1に基づく反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されることを抑止できる。
【0121】
また、連続して送信が行われる走査線は被検体断面における伝播経路が十分に離間しているので、直前の送信波に基づく深部高反射組織による反射波が、現送信波に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されることを抑止できる。
【0122】
<変形例1>
実施の形態1にかかる超音波診断装置100を説明したが、本開示は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態1に何ら限定を受けるものではない。以下、そのような形態の一例として、超音波診断装置100の変形例を説明する。
【0123】
変形例1にかかる超音波診断装置では、領域分割数と1レート送受信の連続送受信回数は同一である必要はなく、例えば4領域を順次1レート2連続送受信する方法としてもよい。すなわち、領域の分割数には制限がなく、適宜分割・走査制御を行うことができる。例えば、分割領域の空間的位置が離れれば離れるほど互いの残留エコー混入抑止は高度に行えるが、多くのシステムch数が必要となる。一方、分割領域の空間的位置が近いほど互いの残留エコー混入抑止効果は弱まるが、システムch数の少ない場合でも実現可能となる。
【0124】
図14は、変形例1にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの一例を示す図である。図14に示す態様では、被検体断面を方位方向に2つのエリアに分割し、それぞれのエリアにおいて、実施の形態1にかかる超音波診断装置100における図5に示す態様と同様の送信シーケンスに基づくセット送信が、順次、行なわれる構成を採る。
【0125】
具体的には、変形例1にかかる超音波診断装置では、図14に示すように、被検体断面の方位方向における紙面左方に位置するエリア1/2では、走査線番号1のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、走査線番号49のセット送信を構成する送信波Tx149、Tx249とが、互いに交互に送信される。具体的には、送信波Tx1、Tx2の送信の間に、送信波Tx149の送信が行われ、送信波Tx149、Tx249の送信の間に、送信波Tx2の送信が行われ、送信順L(L=1~196)に従って、走査線番号1から49までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、走査線番号48から96までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、互いに交互に送信される。
【0126】
同様に、被検体断面の方位方向における紙面右方に位置するエリア2/2では、送信順L(L=1~196)以降に、走査線番号135のセット送信を構成する送信波Tx1135、Tx2135と、走査線番号97のセット送信を構成する送信波Tx197、Tx297とが、互いに交互に送信される。そして、送信順L(L=197~385)に従って、走査線番号135から192までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、走査線番号97から134までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、互いに交互に送信される。
【0127】
図15は、変形例にかかる超音波診断装置の送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
【0128】
このように、同一の走査線に対して行われる一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の送受信の間に、第2のセット送信の送信波Tx1、Tx2の一方が送信されることにより、パルス繰り返し周期の増加を抑制しつつ、一対のセット送信における送信波Tx1、Tx2の時間間隔を増大することができる。そのため、実施の形態1と同様に、フレームレートの増大を避けながら、同一の走査線内の先の送信波Tx1に基づく反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されることを抑止できる。
【0129】
また、図15に示すように、連続して送信が行われる走査線番号1と走査線番号49、あるいは、走査線番号135と走査線番号97の走査線は被検体断面における伝播経路が十分に離間しているので、実施の形態1と同様に、直前の送信波に基づく深部高反射組織による反射波が、現送信波に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されることを抑止できる。
【0130】
なお、変形例1にかかる超音波診断装置において、領域の分割数や空間的位置関係、1レートの連続送受信回数はシステム要件以外のプローブ形状、走査方法(リニア型、セクタ型等)、プローブ周波数帯域、送受信周波数、表示深度、観察部位等を鑑みて適宜設定・選択(ユーザー選択含む)される。このとき、1レート2連続送信の送信にかかる走査線の位置は送信開口の半分より離れていることが好ましい。こうすることで、1レート2連続送信の第一送信1の回目の送信開口より外側に第一送信2回目の走査線が設定されることになり、第一送信の1回目の混入を効果的に抑止することが可能となる。
【0131】
≪実施の形態2≫
<概 要>
実施の形態2にかかる方法は、複数レート送受信のうち、第一送受信(送信波Tx1による送受信)と第二送受信(送信波Tx2による送受信)の間隔は充分に長く空け、送信波Tx2による送受信と隣接する走査線に対する送信波Tx1による送受信との間隔は短くする方法である。
【0132】
実施の形態2の方法では、隣接する走査線からの残留エコー混入は抑止できないため、送信方向に対してほぼ垂直に位置する膜状の高エコー組織に由来する残留エコーは除去できないが、送信間隔の変更という単純な仕組みのみでTx1→Tx2混入は抑止できるため、膜状でない非連続組織からの残留エコーは抑止することができるうえ、送信波Tx1による送受信と送信波Tx2による送受信の双方を充分長い間隔で送受信した際よりもフレームレートを向上できる。
【0133】
さらに、好ましくは送信波Tx2の送受信と隣接する走査線の送信波Tx1送受信の間隔をフレームごとに複数変化させることで、隣接する走査線からの残留エコー混入位置を複数位置に分散させ、通常行われるフレーム平均表示等を行った際に残留エコー虚像の影響を軽減させることが可能となる。
【0134】
<具体的態様>
実施の形態1にかかる超音波診断装置100では、パルスインバージョン法により、図5に示す態様の送信シーケンスに基づいて、第1の走査線におけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2と、第1の走査線とは方位方向に所定距離以上離間した第2の走査線におけるセット送信を構成する送信波Tx197、Tx297とが、互いに交互に送信される構成とした。
【0135】
これに対し、実施の形態2にかかる超音波診断装置では、実施の形態1にかかる超音波診断装置100に対し送信シーケンスが異なり、パルスインバージョン法のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に異なる時間間隔をおいて不等間隔に送信されるとともに、同一の走査線iにおけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2との時間間隔を、Tx2に対する反射波に残留エコーが混入しない十分な時間長とした点に特徴がある。
【0136】
図16は、実施の形態2にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。図17は、実施の形態2にかかる超音波診断装置の送信部103による送信にかかる超音波ビームの被検体断面における伝播経路を示す模式図である。
【0137】
図16において、送信順L、走査線番号i、送信波種別qの意味は図5と同様である。また、走査線番号iのセット送信を構成し送信ラインが共通する一対の送信波を送信波Tx1、Tx2とするとき、「+」の記号によって連結された送信波Tx1、Tx2がパルスインバージョン法によりセット送信される。具体的には、図15、16に示すように、送信順L(L=1~385)に従って、走査線番号1から192までのセット送信を構成し送信ラインが共通する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に送信される。このとき、実施の形態2に係る超音波診断装置では、走査線番号iのセット送信における送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1が、走査線番号iのセット送信における送信波Tx2と走査線番号i+1のセット送信における送信波Tx1i+1との時間間隔T2よりも長い点に特徴がある。ここで、送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1は、先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信期間に振動子に到達しないために十分な時間長とするものとする。
【0138】
このように、同一の走査線に対して行われる一対のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2の時間間隔を十分に確保することにより、図19に示すように、少なくとも同一の走査線(走査線番号n)に対して行われる先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信の際に混入し残留エコーとして検出されて、アーチファクトARとして表示領域内に表示されることを抑止することができる。
【0139】
図18は、実施の形態2にかかる超音波診断装置の画像化信号生成部105´の構成を示す機能ブロック図である。
【0140】
実施の形態2にかかる超音波診断装置では、上述のとおり、送信順Lに従って、走査線番号1から192までのセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2にかかる送受信が、順次、交互に行われる構成を採る。そのため、加算器503又は減算器504に供給するための、同一の走査線における第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータを記憶する第1メモリ5011と第2メモリ5012を備えていればよい。図9に示す実施の形態1に係る超音波診断装置100の回路構成と比較して、第3メモリ5013を削減することができ回路構成を簡素化することができる。
【0141】
<小 括>
以上のとおり、実施の形態2にかかる超音波診断装置では、複雑な送信制御を必要としない安価な装置において、少なくとも同一の走査線iにおけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1を、十分な時間長とすることにより、後の送信波Tx2に対する受信の際に残留エコーが混入して、アーチファクトとして表示されることを抑止できる。
【0142】
≪実施の形態3≫
<概 要>
実施の形態3の超音波信号処理方法は、複数レート送受信の送受信間隔を不同一とし、レート間の受信情報比較結果に基づいて残留エコー混入を判定する方法である。例えば、複数レート送受信による画像形成方法の代表例であるパルスインバージョン法の場合、送信波Tx1と送信波Tx2の受信エコーは極性が反転しており、非線形効果による波形の変形を含むものの、そのエコー強度、すなわち包絡線に基づく時系列振幅情報は一定以上の相関がある。そのため、同一組織に対するエコー強度が、送信波Tx1では高振幅なのに送信波Tx2がそれとは大きく異なって低振幅ということは生じない。送信波Tx1と送信波Tx2の送信間隔を不同一とすることにより、残留エコーが入り込む位置(深度方向)を別位置とすることができ、残留エコーにより生じた送信波Tx1と送信波Tx2の振幅情報の相関係数低下を検知することにより、残留エコー混入を判定することが可能となる。
【0143】
実施の形態3にかかる超音波診断装置では、セット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に異なる時間間隔をおいて不等間隔に送信される点は実施の形態2と同様である。
【0144】
しかしながら、実施の形態3にかかる超音波診断装置では、同一の走査線iにおけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1が、先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信期間に振動子に到達する時間間隔である点で実施の形態2と相違する。
【0145】
また、同一の走査線について取得された第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータに基づき、残留エコーに依拠した信号部分を検出する。
【0146】
そして、判定によって残留エコーが検知された場合、得られた音響線信号から画像化信号を形成する第1の方法として、残留エコー虚像が検知された部分の画像化信号には複数レート送信の演算で得られた受信演算結果ではなく、送信波Tx1もしくは送信波Tx2に基づく受信信号のいずれか一方のみを用いて画像化信号を生成するものである。
【0147】
以下、実施の形態3にかかる超音波診断装置の構成について説明する。
【0148】
<構 成>
実施の形態3にかかる超音波診断装置では、制御部109からの送信制御信号に基づく送信部103による超音波ビームの送信シーケンスと、超音波信号処理装置150が、実施の形態1,2と異なる態様を採る。そのため、超音波診断装置の構成を示す機能ブロック図において、主に、制御部109から発せられる送信シーケンスの態様と超音波信号処理装置150について、その構成及び機能を説明し、それ以外の構成については、実施の形態1に係る構成と同じであるため説明を省略する。
【0149】
(送信シーケンス)
図20は、実施の形態3にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
【0150】
図20において、送信順L、走査線番号i、送信波種別qの意味は図16と同様である。また、走査線番号iのセット送信を構成し送信ラインが共通する一対の送信波を送信波Tx1、Tx2とするとき、「+」の記号によって連結された送信波Tx1、Tx2がパルスインバージョン法によりセット送信される。具体的には、図20に示すように、送信順L(L=1~385)に従って、走査線番号1から192までのセット送信を構成し送信ラインが共通する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に送信される。このとき、実施の形態3に係る超音波診断装置では、走査線番号iのセット送信における送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1と、走査線番号iのセット送信における送信波Tx2と走査線番号i+1のセット送信における送信波Tx1i+1との時間間隔T2とが互いに相違する点に特徴がある。ここで、同一の走査線における送信波Tx1、Tx2の送信の時間間隔T1は、先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信期間に振動子に到達する時間間隔としてもよい。同様に、隣接する走査線における送信波Tx1、Tx2の送信の時間間隔T2は、先の送信波Tx2に基づく深部高反射組織による反射波Rx2が、後の送信波Tx1i+1に対する受信期間に振動子に到達する時間間隔としてもよい。実施の形態3に係る超音波診断装置では、この時間間隔T1と時間間隔T2との長さを違いに基づいて、同一の走査線について取得された第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータに混入した残留エコーの重なりを防止して、第1の音響線信号のラインデータと第2の音響線信号のラインデータに混入した残留エコーによる信号部分を検出することができる。
【0151】
図21は、実施の形態3にかかる超音波診断装置による送信にかかる超音波ビームの反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
【0152】
上述のとおり、実施の形態3にかかる超音波診断装置では、パルスインバージョン法のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に異なる時間間隔をおいて不等間隔に送信される。そのため、図21に示すように、走査線nにおける先の送信波Tx1に基づく深部高反射組織からの反射波Rx1が、後の送信波Tx2に対する受信期間内に振動子に到達するまでの時間と、直前の走査線n-1における後の送信波Tx2n-1に基づく深部高反射組織からの反射波Rx2が、走査線nにおける先の送信波Tx1に対する受信期間内に振動子に到達するまでの時間とが相違する。その結果、第2の音響線信号ラインデータに中に混入した残留エコーに依拠した虚像信号部分の位置と、第1の音響線信号ラインデータに中に混入した虚像信号部分の位置が相違し、第1の音響線信号ラインデータと第2の音響線信号ラインデータとでは、虚像信号部分の存在位置が異なる態様を採る。
【0153】
(超音波画像化信号生成部105A)
超音波画像化信号生成部105A(以後、「画像化信号生成部105A」と表記することがある)における高調波成分抽出部105Aaでは、同一の走査線について取得された第1の音響線信号のラインデータにおける有値の異常信号部分と、第2の音響線信号のラインデータにおける有値の異常信号部分とを検出して識別することにより、残留エコーに基づく虚像信号部分を検出する構成を採る。
【0154】
図22は、実施の形態3にかかる超音波診断装置の画像化信号生成部105Aの構成を示す機能ブロック図である。図22に示すように、画像化信号生成部105Aにおいて、高調波成分抽出部105Aaにおける第1メモリ5011、第2メモリ5012、加算器503、減算器504、第1フィルタ505、第2フィルタ506、合成部507、及び画像化信号変換部508は、図18に示した実施の形態2にかかる超音波診断装置における画像化信号生成部105の構成と同じであり、同じ番号を付して説明を省略する。
【0155】
画像化信号生成部105Aは、高調波成分抽出部105Aaに、残留エコー検出部509A、第1信号遮断部5101A、第2信号遮断部5102Aからなる処置部510Aを備えた点で、画像化信号生成部105と相違する。以下では、これらの構成について説明する。
【0156】
先ず、図22に示す高調波成分抽出部105Aaでは、受信部104から出力された第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータが、それぞれ第1メモリ5011、第2メモリ5012に送信順Lに従ってそれぞれ記憶されている。
【0157】
残留エコー検出部509Aは、第1メモリ5011、第2メモリ5012から、それぞれ第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータを読み出して、第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータについて相互相関処理を行い、相関度が低い有値の信号が存在する部分を虚像信号部分として検出する。すなわち、残留エコー検出部509Aは、第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータを互いに比較して、第2の音響線信号のラインデータに存在しない第1の音響線信号のラインデータの信号部分の位置に関する情報を第1信号遮断部5101Aに出力するとともに、第1の音響線信号のラインデータに存在しない第2の音響線信号のラインデータの信号部分の位置に関する情報を第2信号遮断部5102Aに出力する。
【0158】
第1信号遮断部5101Aは、第1メモリ5011から、第1の音響線信号のラインデータを取得するとともに、残留エコー検出部509Aから第1の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分の位置に関する情報を取得する。そして、第1信号遮断部5101Aは、虚像信号部分が検出された信号部分を削除して第1の音響線信号を加算器503、減算器504に出力する。
【0159】
送信波Tx1と送信波Tx2のいずれの受信情報を用いるかは、送信波Tx1の受信情報と送信波Tx2の受信情報の間で相関係数が低下した際に、小さい振幅を示した受信情報を用いることで残留エコーの混入していない受信情報を得ることができる。
【0160】
一つの画像化信号内に受信演算結果に基づく受信情報と演算を行わないで得られた受信情報の2種が混在することになるが、最も残留エコー虚像が顕著に現れて問題となるのは無エコー~低エコー領域であり、もともと受信情報が少ないため、受信情報の質が変化したとしても情報の損失は少なく、残留エコー虚像が除去されて正しいエコーレベルが表示できる有用性の方が大きい。
【0161】
同様に、第2信号遮断部5101Aは、第2メモリ5012から、第1の音響線信号のラインデータを取得するとともに、残留エコー検出部509Aから第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分の位置に関する情報を取得する。そして、第2信号遮断部5102Aは、虚像信号部分が検出された信号部分を削除して第2の音響線信号を加算器503、減算器504に出力する。
【0162】
加算器503は、第1信号遮断部5101Aから虚像信号部分が取り除かれた第1の音響線信号のラインデータと、第2信号遮断部5102Aから虚像信号部分が取り除かれた第2の音響線信号のラインデータを読み出し、両者を加算することにより、偶数次高調波成分を抽出して第1フィルタ505に出力する。
【0163】
このとき、第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分は削除されているため、当該信号部分では加算処理は行なわれず、偶数次高調波成分を抽出することができない。そのため、虚像信号が検出された信号部分については、他方の虚像信号部分が検出されていない方の第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータの基本波成分のみが、第1フィルタ505に出力される。
【0164】
同様に、必要に応じて用いられる減算器504は、第1信号遮断部5101Aから虚像信号部分が取り除かれた第1の音響線信号のラインデータと、第2信号遮断部5102Aから虚像信号部分が取り除かれた第2の音響線信号のラインデータを読み出し、第1の音響線信号のラインデータから第2の音響線信号のラインデータとを減算することにより、基本波成分及び奇数次高調波成分を抽出して第2フィルタ506に出力する。
【0165】
このとき、第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分は削除されているため、当該信号部分では減算処理は行なわれず、奇数次高調波成分を抽出することができない。そのため、虚像信号が検出された信号部分については、他方の虚像信号部分が検出されていない方の第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータの基本波成分のみが、第2フィルタ506に出力される。
【0166】
その後、合成部507、画像化信号変換部508を介して、超音波画像化信号のラインデータ等を生成して画像化信号合成部106に出力する。これにより、第1の音響線信号と第2の音響線信号から残留エコーによる虚像信号部分を除去して画像化信号ラインデータを生成して、表示画像におけるアーチファクトを低減することができる。
【0167】
(残留エコー混入を検出する方法の具体例)
本発明の第三の方法である、複数レート送受信の送受信間隔を不同一とし、複数レート間の受信情報比較結果に基づいて残留エコー混入を判定する方法の具体例を示す。
【0168】
複数レート間の受信情報比較方法としては、例えばパルスインバージョンの受信結果比較の場合を例にとると、(1)受信時間波形情報の一方を極性反転して比較する方法、(2)予め用意したテンプレートと畳み込み演算を行い、その演算結果を比較する方法、(3)一定区間の時間波形情報をフーリエ変換し、その周波数成分を比較する方法、(4)受信時間波形情報の包絡線を各々得て比較する方法、等が挙げられるが、いずれの場合も非線形効果による波形変形方向の違いを吸収できる程度の時間区間分が平均化されるよう処理を行うことが好ましい。
【0169】
すなわち、残留エコー検出部509Aは、入力した第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータに対し、時間平均処理を施した後に相互相関処理を行い、虚像信号部分を検出してもよい。図23(a)(b)は、実施の形態3にかかる超音波診断装置における残留エコー検出部における時間平均処理の一部を示す模式図である。
【0170】
図23(a)に示すように、残留エコー検出部509Aに入力された第1の音響線信号のラインデータRx1及び第2の音響線信号のラインデータRx2は、非線形効果による波形変形の方向が異なるため、単純な反転比較では高い相関は得られない。そのため、変形方向の違いを吸収できる程度の時間区間分を平均化する処理を施した受信信号Rx1´、Rx2´を生成し比較することが好ましい。このとき、時間平均は、プローブ帯域最低周波数の1波長以上の時間平均としてもよい。例えば、プローブ帯域最低周波数が4~18MHzでは、4MHzの1波長以上の時間平均を行ってもよい。
【0171】
また、上記に挙げた方法では、残留エコー検出部509Aは、第1の音響線信号及び第2の音響線信号に包絡線に基づいた情報を用いて比較を行うことが好ましい。例えば、包絡線検波を施した後に、両者を比較することにより、処理負荷軽減や比較データ点数を少なくできる点から好ましい。
【0172】
さらに、データ点数は画像表示時のピクセル数を下回らない範囲で間引き処理を行った後に比較を行ってもよい。比較判定処理は相関係数による判定処理が好ましく、残留エコー判定閾値はプローブ形状、走査方法(リニア型、セクタ型等)、プローブ周波数帯域、送受信周波数、表示深度、観察部位等を鑑みて適宜設定・選択(ユーザー選択含む)される。
【0173】
<動 作>
以上の構成からなる実施の形態3にかかる音波診断装置の高調波成分抽出処理について説明する。
【0174】
図24は、実施の形態3にかかる超音波診断装置における高調波成分抽出処理(図12におけるステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
【0175】
高調波成分抽出部105Aaにおいて、第1メモリ5011、第2メモリ5012から、同一の走査線Bxiに関する第1及び第2のパルス種別qにかかる第1の音響線信号ラインデータ及び第2の音響線信号ラインデータを読み出し(ステップS5041)、この第1及び第2の音響線信号ラインデータ間の相関処理を行い、当該データにおける残留エコーに依拠した虚像信号部分の位置を検出して(ステップS5042A)、第1及び第2の音響線信号ラインデータから残留エコーに起因する虚像信号部分を除去する(ステップS5043A)。そして、加算器503により虚像信号部分が除去された第1及び第2の音響線信号ラインデータの加算処理を行うことにより、虚像部分を除く信号部分について偶数次高調波成分を抽出するとともに、必要に応じて減算器504により減算処理を行うことにより、虚像部分を除く信号部分について奇数次高調波成分を抽出する(ステップS5045A)。その後、フィルタリング処理(ステップS5046)により減算結果から基本波成分を除去して奇数次高調波成分のみを抽出し、偶数次高調波信号及び必要に応じて抽出された奇数次高調波信号を合成して(ステップS5047)、高調波成分が含まれた音響線信号のラインデータを生成し、画像化信号変換部508に出力する。
【0176】
<小 括>
以上のとおり、実施の形態3にかかる超音波診断装置では、送信波Tx1又は2に基づく深部高反射組織による反射波Rx1が、他方の送信波Tx1又は2に対する受信の際に混入するときの残留エコーの重なりを防止することにより、第1の音響線信号と第2の音響線信号に混入した残留エコーによる虚像信号部分を独立に検出することができる。そして、第1の音響線信号と第2の音響線信号から残留エコーによる虚像信号部分を除去して表示することができる。
【0177】
このとき、同一の走査線における送信波Tx1又は2の受信信号に基づいて虚像信号部分を独立に検出と除去が行われることから、方位方向における分解能の劣化を抑止できる。
【0178】
また、実施の形態3にかかる超音波診断装置では、この残留エコーによる虚像信号部分の検出及び除去にかかる処理を、特許文献2に記載の技術のように2画面分のフレームデータを生成してフレーム間差分を行うという処理と比べて、遥かに短い時間で判定可能であることから、動画表示処理のなかでラインデータ単位にてリアルタイムに行うことができる。
【0179】
具体的には、フレーム単位で送信間隔を変化させてフレーム間の画像差分を検出する方法では1フレームを形成する送信数分、たとえば1フレームが192本の走査線数で構成される場合では192本分の送受信時間がかかり、判定にプローブ操作などの動きが影響して誤判定となるケースが少なからず生じる。これに対し、実勢の形態3に示した方法では前記の例であれば、1/192の時間を要するのみなのでこういった誤判定がほとんど生じない。
【0180】
そのため、動画表示においてフレームレートを低下させることなく、アーチファクトARとして表示領域内に表示されることを抑止することが可能となる。
【0181】
上記はあくまで一例であり、他の画像化信号の形成方法により残留エコー虚像を低減してもよい。
【0182】
<変形例2>
変形例2にかかる超音波診断装置では、第1の音響線信号と第2の音響線信号に混入した残留エコーによる虚像信号部分を検出したのち、適応的に異なる動作を行う構成としてもよい。判定によって残留エコーが検知された場合、様々な方法でその検知結果を利用することができる。
【0183】
例えば、残留エコーによる虚像信号部分が検出された場合、動画表示において表示領域内に残留エコーによるアーチファクトが表示されていることを警告する表示を行ってもよい。この場合、画像はそのまま表示し、残留エコーが検知された旨の警告を表示してもよい。
【0184】
あるいは、例えば、残留エコーが検知された音響線信号に基づく画像部を表示する際に着色表示するなどして、表示画像におけるアーチファクトに相当する部分を識別表示してよい。この場合、残留エコーの非検知部は通常の白黒画像によって表示するのに対し、残留エコーの検知部は着色されて非検知部と区別可能に表示される。
【0185】
また、残留エコーが検知された次のフレームより送信波Tx1、Tx2とも送信間隔を長くすることで、当該フレームには残留エコーによる虚像が表示されるが、次のフレームからパルス繰り返し周波数を低減して虚像が表示されなくなる態様としてもよい。あるいは、アーチファクトが検出された場合には、以後の送受信におけるパルス繰り返し周波数を低減する態様してもよい。
【0186】
また、残留エコーが検知された場合、次の走査線に進まず同一走査線位置に、直ちに送信波Tx1、Tx2の送信間隔を長くした送信を再送信して当該フレームから残留エコー虚像を含んだ画像を表示させないようにしてもよい。この場合、アーチファクトが検出された同一の走査線について、パルス周期を増加した状態でセット送受を再度行うことにより、残留エコーによるアーチファクトを軽減した画像化信号ラインデータを生成し、以後、パルス周期を元に戻してセット送受を繰り返す構成としてもよい。
【0187】
以上により、表示画像におけるアーチファクトを低減することができる。
【0188】
<変形例3>
(概 要)
実施の形態3にかかる超音波診断装置では、パルスインバージョン法におけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、順次、交互に異なる時間間隔をおいて不等間隔に送信されることにより、第1の音響線信号と第2の音響線信号に混入した残留エコーによる虚像信号部分を検出し、第1の音響線信号と第2の音響線信号から残留エコーによる虚像信号部分を除去して表示する構成とした。実施の形態3にかかる超音波診断装置では、残留エコーにより生じた送信波Tx1とTx2に基づく音響線信号の振幅情報の相関係数低下を検知することにより、残留エコー混入を判定することが可能となる。
【0189】
そして、判定によって残留エコーが検知された場合、得られた音響線信号から画像化信号を形成する第2の方法として、変形例3にかかる超音波診断装置では、パルスインバージョン法におけるセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2は不等間隔に送信されるとともに、送信波Tx1、Tx2の送信順序はセット送信ごとに交互に入れ替わる構成を採る。さらに、音響線信号ラインデータの虚像信号部分を、この音響線信号ラインデータよりも過去の同一極性の音響線信号ラインデータにおける対応する信号部分に置換して、画像化信号ラインデータを生成する構成としてもよい。
【0190】
すなわち、隣接する走査線で送信波Tx1と送信波Tx2の送信順を互い違いに入れ替えて行い、隣接する走査線の送信波Tx1,Tx2受信情報を利用して残留エコーの混入しない領域のみで受信演算結果を得る方法である。隣接する走査線と演算処理を行うため、方位方向の受信情報質変化を伴うが、Bモード単独表示でなく、カラーモードやMモードとの同時表示モードでは操作者の関心がBモード以外にあることが多く、残留エコー虚像が表示されることにより操作者の関心・観察を妨げないため、このような際に特に有用な方法となる。
【0191】
以下、変形例3にかかる超音波診断装置の構成について説明する。
【0192】
(構 成)
変形例3にかかる超音波診断装置では、制御部109からの送信制御信号に基づく送信部103による超音波ビームの送信シーケンスと、超音波信号処理装置150Bが、実施の形態3と異なる態様を採る。そのため、超音波診断装置の構成を示す機能ブロック図において、主に、制御部109から発せられる送信シーケンスの態様と超音波信号処理装置150Bについて、その構成及び機能を説明し、それ以外の構成については、実施の形態1に係る構成と同じであるため説明を省略する。
【0193】
[送信シーケンス]
図25は、変形例3にかかる超音波診断装置の送信部103による送信シーケンスの態様を示す図である。
【0194】
図25において、送信順L、走査線番号i、送信波種別q、「+」の意味は図10と同様である。具体的には、図25に示すように、送信順L(L=1~385)に従って、走査線番号1から192までのセット送信が、セット送信ごとに極性の異なる送信波Tx1、Tx2の送信順序を交互に入れ替えて繰り返される構成を採る。また、変形例3に係る超音波診断装置と同様に、走査線番号iのセット送信における送信波Tx1、Tx2との時間間隔T1と、走査線番号iのセット送信における送信波Tx2又はTx2と走査線番号i+1のセット送信における送信波Tx1i+1又はTx2i+1との時間間隔T2とが互いに相違する。ここで、送信の時間間隔T1、T2は、先の送信波に基づく深部高反射組織による反射波が、後の送信波に対する受信期間に振動子に到達する時間間隔とする。
【0195】
図26は、変形例3にかかる超音波診断装置による送信にかかる超音波ビームの反射波が振動子に到達するまでの態様を示す模式図である。
【0196】
上述のとおり、変形例3にかかる超音波診断装置では、実施の形態3にかかる超音波診断装置と同様に、パルスインバージョン法のセット送信を構成する送信波Tx1、Tx2が、異なる時間間隔をおいて不等間隔に送信される。これにより、送信波Tx1又はTx2に基づく深部高反射組織による反射波Rx1又はRx2が、他方の送信波Tx1又はTx2に対する受信の際に混入するときの残留エコーRE1、RE2の重なりを防止することができ、第1の音響線信号と第2の音響線信号に混入した残留エコーによる虚像信号部分を独立に検出することができる。
【0197】
[超音波画像化信号生成部105B]
図27は、変形例3にかかる超音波診断装置の超音波画像化信号生成部105B(以後、「画像化信号生成部105B」と表記することがある)の構成を示す機能ブロック図である。図27に示すように、画像化信号生成部105Bにおいて、高調波成分抽出部105Aaにおける第1メモリ5011、第2メモリ5012、加算器503、減算器504、第1フィルタ505、第2フィルタ506、合成部507、画像化信号変換部508、及び残留エコー検出部509Aは、図22に示した実施の形態2にかかる超音波診断装置における画像化信号生成部105Aの構成と同じであり、同じ番号を付して説明を省略する。
【0198】
画像化信号生成部105Bは、高調波成分抽出部105Baに、第1信号選択部5111B、第2信号遮断部5112Bからなる処置部511Bを備えた点で、画像化信号生成部105Aと相違する。以下では、これらの構成について説明する。
【0199】
図22に示す高調波成分抽出部105Baでは、高調波成分抽出部105Aaと同様に、受信部104から出力された第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータが、それぞれ第1メモリ5011、第2メモリ5012に送信順Lに従ってそれぞれ記憶される。併せて、画像化信号生成部105Bから後段への出力に同期して、第1メモリ5011、第2メモリ5012に記憶された第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータが、それぞれ第3メモリ5013B、第4メモリ5014Bに出力されて記憶される。これにより、第3メモリ5013B、第4メモリ5014Bには、第1メモリ5011、第2メモリ5012に記憶されている第1の音響線信号のラインデータ及び第2の音響線信号のラインデータの直前の送信セットにかかる同一極性の音響線信号ラインデータが記憶されることとなる。
【0200】
残留エコー検出部509Aによる虚像信号部分の検出は、画像化信号生成部105Aと同様である。
【0201】
第1信号選択部5111Aは、第1メモリ5011から第1の音響線信号のラインデータ、第3メモリ5013Bから第1の音響線信号のラインデータと直前の送信セットにかかる同一極性の音響線信号のラインデータ(「直前同極性音響線信号」とする)を取得するとともに、残留エコー検出部509Aから第1の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分の位置に関する情報を取得する。そして、第1信号選択部5111Aは、第1の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分が検出された信号部分を、直前同極性音響線信号の対応部分に置換して、第1の音響線信号を加算器503、減算器504に出力する。
【0202】
同様に、第2信号選択部5121Aは、第2メモリ5011から第2の音響線信号のラインデータ、第4メモリ5014Bから第2の音響線信号のラインデータと直前同極性音響線信号を取得するとともに、残留エコー検出部509Aから第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分の位置に関する情報を取得する。そして、第2信号選択部5121Aは、第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分が検出された信号部分を、直前同極性音響線信号の対応部分に置換して、第2の音響線信号を加算器503、減算器504に出力する。
【0203】
加算器503は、第1信号選択部5111Aから虚像信号部分が直前同極性音響線信号の対応部分に置換された第1の音響線信号のラインデータと、第2信号選択部5112Aから虚像信号部分が直前同極性音響線信号の対応部分に置換された第2の音響線信号のラインデータを取得し、両者を加算することにより、偶数次高調波成分を抽出して第1フィルタ505に出力する。
【0204】
このとき、第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分は、直前同極性音響線信号の対応部分を用いて加算処理が行われて偶数次高調波成分が抽出される。そのため、虚像信号が検出された信号部分についても、実施の形態3と異なり、ライン全体にわたって第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータに基づく偶数次高調波成分が抽出されて、第1フィルタ505に出力される。
【0205】
同様に、必要に応じて用いられる減算器504は、第1信号選択部5111Aから虚像信号部分が直前同極性音響線信号の対応部分に置換された第1の音響線信号のラインデータと、第2信号選択部5112Aから虚像信号部分が直前同極性音響線信号の対応部分に置換された第2の音響線信号のラインデータを取得し、第1の音響線信号のラインデータから第2の音響線信号のラインデータとを減算することにより、基本波成分及び奇数次高調波成分を抽出して第2フィルタ506に出力する。
【0206】
このとき、第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータにおける虚像信号部分は、直前同極性音響線信号の対応部分を用いて加算処理が行われて偶数次高調波成分が抽出される。そのため、虚像信号が検出された信号部分についても、実施の形態3と異なり、ライン全体にわたって第1の音響線信号のラインデータ又は第2の音響線信号のラインデータに基づく基本波成分と奇数次高調波成分が抽出されて、第2フィルタ506に出力される。
【0207】
合成部507、画像化信号変換部508は、超音波画像化信号のラインデータ等を生成して画像化信号合成部106に出力する。
【0208】
(動 作)
以上の構成からなる変形例3にかかる音波診断装置の高調波成分抽出処理について説明する。
【0209】
図28は、変形例3にかかる超音波診断装置における高調波成分抽出処理(図12におけるステップS502)の詳細を示すフローチャートである。
【0210】
先ず、高調波成分抽出処理では、走査線番号I-1の音響線信号を種別qごとに第3メモリ5013B、第4メモリ5014Bに保存する(ステップS5021B)。次に、走査線番号Iの音響線信号を入力し種別qごとに第1メモリ5011B、第2メモリ5012Bに保存する(ステップS5022B)。
【0211】
図29は、変形例3にかかる超音波診断装置における高調波成分抽出処理(図12におけるステップS504)の詳細を示すフローチャートである。
【0212】
ステップS5041における音響線信号の入力と、ステップS5042Aにおける残留エコーの検出処理は、図24における高調波成分抽出部105Aaにおける処理と同じである。
【0213】
ステップS5043Bでは、走査線番号Iの第1及び第2のパルス種別qの音響線信号における残留エコーに依拠する虚像信号部分を、直前同極性音響線信号の対応部分に置換する。そして、加算器503により虚像信号部分が直前同極性音響線信号の対応部分に置換された第1及び第2の音響線信号ラインデータの加算処理を行うことにより、虚像部分を含むライン全体について偶数次高調波成分を抽出するとともに、減算器504により減算処理を行うことにより、虚像部分含むライン全体について奇数次高調波成分を抽出する(ステップS5045B)。
【0214】
ステップS5046におけるフィルタリング処理と、ステップS5047における合成処理は、図24における高調波成分抽出部105Aaにおける処理と同じである。以上により、高調波成分が抽出された音響線信号のラインデータを生成し、画像化信号変換部508に出力する。
【0215】
(小 括)
以上のとおり、変形例3にかかる超音波診断装置では、残留エコーの重なりを防止することにより、混入した残留エコーによる虚像信号部分を独立に検出するとともに、第1の音響線信号と第2の音響線信号における残留エコーによる虚像信号部分を直前同極性音響線信号の対応部分に置換された、ライン全体にわたって高調波信号が抽出された画像化信号ラインデータを生成することができる。これにより、虚像信号が検出された部分に直前同極性音響線信号の高調波信号を利用することにより、距離分解能とコントラストの劣化を抑止することができる。そのため、表示画像におけるアーチファクトをより一層低減することができる。
【0216】
上記はあくまで一例であり、他の画像化信号の形成方法により残留エコー虚像を低減してもよい。
【0217】
≪その他の変形例≫
(1)本開示における複数レート送受信とはパルスインバージョン法に代表される位相反転法や振幅変調法(PM:Pulse amplitude Modulation)など、2回の送受信結果を演算して画像化信号を形成する方法のみならず、位相反転法と振幅変調法とを組み合わせたPIPM法(Pulse Inversion Pulse amplitude Modulation)や位相を180度ずつずらした送信を3回行ってこれらを演算することで3次高調波を抽出する方法等、3回以上の送受信結果を 演算して画像化信号を形成する方法を含む構成としてもよい。
【0218】
(2)本開示はいずれも表示モード(Bモード、Bモード+カラードプラ、Bモード+カラードプラ+パルスドプラ、Bモード+超音波弾性解析、Bモード+造影剤ハーモニックイメージング)に応じて適用/非適用を自動的あるいはユーザー選択的に切り替えてもよい。例えば、Bモードのみ表示の場合は本発明の第二の発明を適用するが、フレームレートが厳しいBモード+カラードプラ+パルスドプラの同時表示モードではフレームレートを優先して送信波Tx1の送受信→送信波Tx2の送受信の間隔も最小の送信間隔として残留エコーの抑制を行わない等や、超音波診断装置の信号処理能力があまり高くない装置に、本開示の実施の形態3にかかる方法を適用する場合、Bモードのみ表示の場合は残留エコー判定を行うが、信号処理負荷の高まるBモード+超音波弾性解析同時表示モードでは残留エコー判定を行わない等、ユーザーの要求や処理負荷の優先度を鑑みて適用/非適用を切り替えてもよい。
【0219】
(3)上記実施の形態にかかる超音波診断装置では、送信部103、受信部104の構成は、実施の形態に記載した構成以外にも、適宜変更することができる。例えば、上記した実施の形態にかかる超音波診断装置では、整相加算部は、複数の計算対象領域について、計算対象領域内に位置する複数の観測点について整相加算処理を行い音響線信号のラインデータを複数生成し、画像化信号合成部は、生成された音響線信号のフレームデータに基づく信号を、観測点の位置を基準に合成して超音波画像化信号のフレームデータを生成する構成を示した。これに対し、変形例にかかる超音波診断装置では、複数の計算対象領域について、整相加算部による整相加算処理から得られた信号を、例えば、画像メモリー部106a等のメモリに格納しておき、それらに基づき、1フレーム分のフレームデータを生成する構成としてもよい。すなわち、複数の計算対象領域に対応したデータ集合としてラインデータを生成する処理を介さずに、超音波画像化信号のフレームデータを生成する構成としてもよい。
【0220】
(4)送信部103は、実施の形態では、プローブ101に存する複数の振動子101aの一部に当たる送信振動子の列Txを設定し、超音波送信ごとに送信振動子の列Txを列方向に漸次移動させながら超音波送信を繰り返し、プローブ101に存する全ての振動子101aから超音波送信を行う構成としてもよいし、プローブ101に存する全ての振動子101aから超音波送信を行う構成としてもよい。
【0221】
(5)実施の形態にかかる超音波診断装置では、プローブ101は、複数の振動子101aが方位方向に列設されている構成とした。しかしながら、プローブ101の形状はリニアプローブの他、例えば、コンベックスプローブからなる構成としてもよい。コンベックスプローブは深さ方向の計測範囲が20~30cmとリニアプローブに比べて大きい。そのため、コンベックスプローブではフレームレートの縮減が求められる。
【0222】
これに対し、変形例にかかる超音波診断装置では、上記した構成により、走査線の延伸方向の深さ方向に対する角度に係わらず走査線Bxiの深さ方向の長さを確保し深部までの計測を可能にすることができる。そのため、深さ方向の計測範囲が大きいというコンベックスプローブの特性に適応できる。
【0223】
(6)対象走査線Bxiは、線状に限定されず、矩形領域、台形や円弧状等のその他の形状の領域としてもよい。また、走査線Bxiの数は、限定されず、実施の形態で示した例以上であってもよい。また、走査線Bxiは振動子列の中心線に対し左右対称であることにも限定されない。また、超音波照射領域Axと相似の砂時計型の領域としてもよい。また、送信イベントごと設定される走査線Bxiが振動子列方向に重なるように設定してもよい。合成開口法により重なる領域の音響線信号を合成することにより生成される超音波画像のS/N比を向上できる。
【0224】
(7)振動子101aの個数は、任意に設定することができる。また、リニア走査方式の電子スキャンプローブとしてもよく、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいは上記コンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0225】
(8)本開示を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0226】
例えば、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。例えば、本発明の超音波診断装置の診断方法のコンピュータプログラムを有しており、このプログラムに従って動作する(又は接続された各部位に動作を指示する)コンピュータシステムであってもよい。
【0227】
また、上記超音波診断装置の全部、もしくは一部、またビームフォーミング部の全部又は一部を、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等の記録媒体、ハードディスクユニットなどから構成されるコンピュータシステムで構成した場合も本発明に含まれる。上記RAM又はハードディスクユニットには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置はその機能を達成する。
【0228】
また、上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1つのシステムLSI(Large Scale Integration(大規模集積回路))から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。なお、LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。上記RAMには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。例えば、本発明のビームフォーミング方法がLSIのプログラムとして格納されており、このLSIがコンピュータ内に挿入され、所定のプログラム(ビームフォーミング方法)を実施する場合も本発明に含まれる。
【0229】
なお、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサー(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0230】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【0231】
また、各実施の形態にかかる、超音波診断装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。上記超音波診断装置の診断方法や、ビームフォーミング方法を実施させるプログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。プログラムや信号を記録媒体に記録して移送することにより、プログラムを独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい、また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0232】
また、上記実施形態にかかる超音波診断装置の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)やプロセッサなどのプログラマブルデバイスとソフトウェアにより実現される構成であってもよい。後者の構成は、いわゆるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Unit)である。これらの構成要素は一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。また、複数の構成要素を組合せて一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。
【0233】
上記実施形態にかかる超音波診断装置では、記憶装置であるデータ格納部を超音波診断装置内に含む構成としたが、記憶装置はこれに限定されず、半導体メモリ、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、磁気記憶装置、等が、超音波診断装置に外部から接続される構成であってもよい。
【0234】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0235】
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0236】
また、超音波診断装置には、プローブ及び表示部が外部から接続される構成としたが、これらは、超音波診断装置内に一体的に具備されている構成としてもよい。
【0237】
また、プローブは、送受信部の一部の機能をプローブに含んでいてもよい。例えば、送受信部から出力された送信電気信号を生成するための制御信号に基づき、プローブ内で送信電気信号を生成し、この送信電気信号を超音波に変換する。併せて、受信した反射超音波を受信電気信号に変換し、プローブ内で受信電気信号に基づき受信信号を生成する構成を採ることができる。
【0238】
また、各実施の形態にかかる超音波診断装置、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。更に上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【0239】
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【0240】
≪まとめ≫
以上、説明したように、本実施の形態にかかる超音波診断装置は、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせる送信部と、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づき複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、複数の種類の前記音響線信号に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、前記送信部は、第1のセット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔に、前記第1のセット送信とは異なる第2のセット送信における複数の種類の前記超音波送信のうちの少なくとも一つを行うことを特徴とする。
【0241】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信は、前記複数の種類の超音波送信として、駆動パルスの極性が異なる第1の超音波送信及び第2の超音波送信を含み、前記受信部は、前記第1の超音波送信に対する反射波に基づき第1の音響線信号を生成し、前記第2の超音波送信に対する反射波に基づき第2の音響線信号を生成し、前記超音波画像化信号生成部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記送信部は、前記第1のセット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との時間間隔に、前記第2のセット送信における前記第1の超音波送信又は前記第2の超音波送信を行う構成としてもよい。
【0242】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記送信部は、前記複数の振動子から選択された送信振動子の列から超音波ビームを送信させて前記超音波送信を行わせ、前記第1のセット送信にかかる送信ラインと、前記第2のセット送信にかかる送信ラインとは、方位方向において前記送信振動子の列の長さの1/2以上離間している構成としてもよい。
【0243】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、超音波診断装置であって、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせる送信部と、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長い構成としてもよい。
【0244】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信は、駆動パルスの極性が異なる第1の超音波送信及び第2の超音波送信を含み、前記受信部は、前記第1の超音波送信に対する反射波に基づき第1の音響線信号を生成し、前記第2の超音波送信に対する反射波に基づき第2の音響線信号を生成し、前記超音波画像化信号生成部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、は、前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との間の時間間隔である構成としてもよい。
【0245】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は、生成される前記画像化信号のフレームごとに変化する構成としてもよい。
【0246】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、超音波診断装置であって、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせる送信部と、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信部と、複数の種類の前記音響線信号における虚像信号部分を検出する残留エコー検出部と、前記虚像信号部分が検出された前記音響線信号における前記虚像信号部分に対する処置部と、処置された前記音響線信号を含む複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成する超音波画像化信号生成部とを備え、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔、および、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔はそれぞれ異なり、前記残留エコー検出部は、前記複数の種類の音響線信号を比較して、他の音響線信号に無い信号部分を前記虚像信号部分として検出する構成としてもよい。
【0247】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信は、前記複数の種類の超音波送信として、駆動パルスの極性が異なる第1の超音波送信及び第2の超音波送信を含み、前記受信部は、前記第1の超音波送信に対する反射波に基づき第1の音響線信号を生成し、前記第2の超音波送信に対する反射波に基づき第2の音響線信号を生成し、前記超音波画像化信号生成部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との間の時間間隔と、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は異なり、前記残留エコー検出部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較して、他方に無い信号部分を虚像信号部分として検出する構成としてもよい。
【0248】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記処置部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号における異常信号部分を削除する構成としてもよい。
【0249】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との送信順序はセット送信ごとに交互に入れ替わり、
前記処置部は、前記音響線信号ラインデータの前記虚像信号部分を、前記音響線信号ラインデータよりも過去の同一極性の音響線信号ラインデータにおける対応する信号部分に置換する構成としてもよい。
【0250】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記残留エコー検出部は、時間平均処理が施された前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較することにより、前記虚像信号部分を検出する構成としてもよい。
【0251】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記時間平均は、プローブ帯域最低周波数の1波長以上の時間平均である構成としてもよい。
【0252】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記残留エコー検出部は、包絡線検波が施された前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較することにより、前記虚像信号部分を検出する構成としてもよい。
【0253】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記残留エコー検出部は、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号について相互相関処理を行い、相関度が低い有値信号が存在する部分を虚像信号部分として検出する構成としてもよい。
【0254】
本実施の形態にかかる超音波信号処理方法は、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせ、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信し、複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記送信では、第1のセット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔に、前記第1のセット送信とは異なる第2のセット送信における複数の種類の前記超音波送信のうちの少なくとも一つを行うことを特徴とする。
【0255】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、超音波信号処理方法であって、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせ、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づき複数の種類の音響線信号を生成し、複数の種類の前記音響線信号に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、画像化信号を生成し、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔は、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔よりも長い構成としてもよい。
【0256】
また、別の態様では、上記いずれかの態様の前記超音波プローブを備えた超音波診断装置であってもよい。
【0257】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、超音波信号処理方法であって、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせ、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成し、複数の種類の前記音響線信号における虚像信号部分を検出し、前記虚像信号部分が検出された前記音響線信号における前記虚像信号部分に対する処置を行い、処置された前記音響線信号を含む複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記セット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔、および、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔はそれぞれ異なり、前記検出では、前記複数の種類の音響線信号を比較して、他の音響線信号に無い信号部分を前記虚像信号部分として検出する構成としてもよい。
【0258】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信は、前記複数の種類の超音波送信として、駆動パルスの極性が異なる第1の超音波送信及び第2の超音波送信を含み、前記音響線信号の生成では、前記第1の超音波送信に対する反射波に基づき第1の音響線信号を生成し、前記第2の超音波送信に対する反射波に基づき第2の音響線信号を生成し、前記画像化信号の生成では、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との間の時間間隔と、それぞれが異なるセット送信に含まれる連続した2つの前記超音波送信の間の時間間隔は異なり、前記検出では、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号を比較して、他方に無い信号部分を虚像信号部分として検出する構成としてもよい。
【0259】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記処置では、前記第1の音響線信号及び前記第2の音響線信号における異常信号部分を削除する構成としてもよい。
【0260】
また、別の態様では、上記いずれかの態様において、前記セット送信における前記第1の超音波送信と前記第2の超音波送信との送信順序はセット送信ごとに交互に入れ替わり、前記処置では、前記音響線信号ラインデータの前記虚像信号部分を、前記音響線信号ラインデータよりも過去の同一極性の音響線信号ラインデータにおける対応する信号部分に置換する構成としてもよい。
【0261】
また、本実施の形態にかかるプログラムは、コンピュータに超音波信号処理を行わせるプログラムであって、前記超音波信号処理は、複数の振動子が方位方向に配設された超音波プローブから、送信ラインが共通し複数の種類の超音波送信を含むセット送信を、送信ラインの方位方向の位置を異ならせて複数回行わせ、複数の種類の前記超音波送信に対する反射波に基づく受信信号を前記超音波プローブから取得し、複数の種類の音響線信号を生成する受信し、複数の種類の前記音響線信号に基づき画像化信号を生成し、前記送信では、第1のセット送信における複数の種類の前記超音波送信の間の時間間隔に、前記第1のセット送信とは異なる第2のセット送信における複数の種類の前記超音波送信のうちの少なくとも一つを行う構成としてもよい。
【0262】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0263】
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
【0264】
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0265】
本開示にかかる超音波診断装置、超音波信号処理方法、及びプログラムは、従来の超音波診断装置の性能向上、特に画質向上として有用である。また本開示は超音波への適用のみならず、複数のアレイ素子を用いたセンサ等の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0266】
100 超音波診断装置
150 超音波信号処理装置
101、101C プローブ
101a、101Ca 超音波振動子
102 ケーブル
103 送信部
104 受信部
1041 入力部
1042 受信信号保持部
1043 整相加算部
10431 受信開口設定部
10432 遅延時間適算出部
10433 遅延処理部
10434 加算部
10435 合成部
105、105´、105A、105B 超音波画像化信号生成部
105a 高調波成分抽出部
5011 第1メモリ
5012 第2メモリ
5013、5013B 第3メモリ
5014B 第4メモリ
503 加算器
504 減算器
505 第1フィルタ
506 第2フィルタ
507 合成部
508 画像化信号変換部
509A 残留エコー検出部
510A、511B 処置部
5101B 第1信号遮断部
5102B 第2信号遮断部
5111B 第1信号選択部
5112B 第2信号選択部
106 画像化信号合成部
106a 画像メモリ部
107 DSC
108 表示部
109 制御部
1000 超音波信号処理システム
図1
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