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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/22 20060101AFI20241106BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20241106BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20241106BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60C9/22 D
B60C9/22 C
B60C9/18 F
B60C9/18 N
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C9/00 G
B60C11/13 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020143483
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038812
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】新井 真人
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-008250(JP,A)
【文献】特開平10-181309(JP,A)
【文献】特開2019-189188(JP,A)
【文献】特開2003-182307(JP,A)
【文献】特開2020-006723(JP,A)
【文献】特開平09-309301(JP,A)
【文献】特開昭63-315305(JP,A)
【文献】特開2000-351305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周方向溝が刻まれたトレッドと、
径方向において前記トレッドの内側に位置するベルトと、
径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、並列した複数本のバンドコードを含むバンドストリップを、螺旋状に巻き付けてなるバンドと、
を備え、
前記バンドが、前記ベルト全体を覆うフルバンドと、軸方向において離して配置され、前記ベルトの端を覆う一対のエッジバンドとからなり、
前記フルバンドが、前記フルバンドの前記バンドストリップを一重に巻き付けてなるものであり、前記エッジバンドが、前記エッジバンドの前記バンドストリップを一重に巻き付けてなるものであり、
前記フルバンドの前記バンドストリップと、前記エッジバンドの前記バンドストリップとが、同じ仕様のバンドストリップからなり、
前記バンドの断面が多数の前記バンドストリップの断面を含み、
前記フルバンドの断面において、複数の前記バンドストリップの断面が隙間をあけて並び、
それぞれの前記エッジバンドの断面において、複数の前記バンドストリップの断面が隙間なく並び、
複数の前記周方向溝のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、
軸方向において、前記エッジバンドの内端が前記ショルダー周方向溝の底から離して配置される、
タイヤ。
【請求項2】
複数の前記周方向溝のうち、最大の溝幅を有する周方向溝がワイド周方向溝であり、
前記隙間の大きさが前記ワイド周方向溝の底幅よりも狭い、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
赤道面から前記ベルトの端までの軸方向距離が基準幅であり、前記赤道面からの軸方向距離が前記基準幅の0.75倍に相当する位置が基準位置であり、
前記ショルダー周方向溝が、軸方向において、前記基準位置よりも内側に位置する、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記バンドコードが、ナイロン繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維からなるストランドとアラミド繊維からなるストランドとを撚り合わせたハイブリッドコードである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
軸方向において、前記エッジバンドの内端が前記ショルダー周方向溝の外側に位置し、
前記ベルトの端から前記ショルダー周方向溝の底までの軸方向距離に対する、前記ベルトの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離の比が、0.25以上0.90以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
軸方向において、前記エッジバンドの内端が前記ショルダー周方向溝の内側に位置し、
前記ベルトの端から前記ショルダー周方向溝の底までの軸方向距離に対する、前記ベルトの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離の比が、1.20以上1.55以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、縦荷重として正規荷重をタイヤに負荷して、このタイヤを平らな路面に接触させて得られる、基準接地面において、
赤道面に沿って計測される赤道接地長の、前記基準接地面の基準接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長に対する比で表される、前記基準接地面の形状指数が、1.10以上1.50以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記赤道面から前記ショルダー周方向溝の外縁までの軸方向距離の、前記基準幅に対する比が0.60以上0.72以下である、
請求項3に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記バンドストリップの巻き付けのテンションが、10N以上150N以下である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は、乗用車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドとベルトとの間に設けられるバンドは、実質的に周方向に延びるバンドコードを含む。このバンドとして、ベルト全体を覆うフルバンド、及び、ベルトの端を覆うエッジバンドが知られている。
【0003】
バンドは、バンドコードを含むバンドストリップを螺旋状に巻き付けて形成される。バンドストリップは通常、隙間をあけずに密に巻き付けられるが、隙間をあけてバンドストリップを疎に巻き付けることが検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-182307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンドストリップを疎に巻き付けてバンドを形成すると、バンドによる拘束力が低下する。拘束力の低下は、タイヤの、路面との接地面の輪郭形状に影響する。接地長が伸び、接地面積が増加すると、転がり抵抗の上昇や、操縦安定性の低下を招く恐れがある。例えば、薄いトレッドを採用すれば、転がり抵抗の上昇を抑制できる。しかし、トレッドに刻まれる周方向溝の底の部分も薄くなるため、この部分に歪みが集中するようなことがあれば、亀裂等の損傷が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる、タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るタイヤは、複数の周方向溝が刻まれたトレッドと、径方向において前記トレッドの内側に位置するベルトと、径方向において前記トレッドと前記ベルトとの間に位置し、並列した複数本のバンドコードを含むバンドストリップを、螺旋状に巻き付けてなるバンドと、を備える。前記バンドは、前記ベルト全体を覆うフルバンドと、軸方向において離して配置され、前記ベルトの端を覆う一対のエッジバンドとからなる。前記バンドの断面は多数の前記バンドストリップの断面を含む。前記フルバンドの断面において、複数の前記バンドストリップの断面は隙間をあけて並ぶ。それぞれの前記エッジバンドの断面において、複数の前記バンドストリップの断面は隙間なく並ぶ。複数の前記周方向溝のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において、前記エッジバンドの内端は前記ショルダー周方向溝の底から離して配置される。
【0008】
好ましくは、このタイヤでは、複数の前記周方向溝のうち、最大の溝幅を有する周方向溝がワイド周方向溝であり、前記隙間の大きさは前記ワイド周方向溝の底幅よりも狭い。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、赤道面から前記ベルトの端までの軸方向距離が基準幅であり、前記赤道面からの軸方向距離が前記基準幅の0.75倍に相当する位置が基準位置であり、前記ショルダー周方向溝は、軸方向において、前記基準位置よりも内側に位置する。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、前記バンドコードは、ナイロン繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維からなるストランドとアラミド繊維からなるストランドとを撚り合わせたハイブリッドコードである。
【0011】
好ましくは、このタイヤでは、軸方向において、前記エッジバンドの内端は前記ショルダー周方向溝の外側に位置する。前記ベルトの端から前記ショルダー周方向溝の底までの軸方向距離に対する、前記ベルトの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離の比は、0.25以上0.90以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤでは、軸方向において、前記エッジバンドの内端は前記ショルダー周方向溝の内側に位置する。前記ベルトの端から前記ショルダー周方向溝の底までの軸方向距離に対する、前記ベルトの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離の比は、1.20以上1.55以下である。
【0013】
好ましくは、このタイヤでは、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、タイヤのキャンバー角を0°とした状態で、縦荷重として正規荷重をタイヤに負荷して、このタイヤを平らな路面に接触させて得られる、基準接地面において、赤道面に沿って計測される赤道接地長の、前記基準接地面の基準接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長に対する比で表される、前記基準接地面の形状指数は、1.10以上1.50以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2図2は、バンドストリップを示す斜視図である。
図3図3は、バンドの形成方法を説明する概略図である。
図4図4は、図1に示されたタイヤの一部を示す断面図である。
図5図5は、接地面の形状指数を算出する方法を説明するイメージ図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における適用リムに含まれる「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。タイヤが乗用車用である場合、特に言及がない限り、正規内圧は180kPaである。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。タイヤが乗用車用である場合、特に言及がない限り、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車に装着される。図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。このリムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されている。このタイヤ2は正規状態にある。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム複合体とも称される。タイヤ-リム複合体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2と、を備える。
【0022】
図1には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部が示される。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0023】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、一対のチェーファー16、インナーライナー18及びバンド20を備える。
【0024】
トレッド4は、耐摩耗性及びグリップ性能を考慮した架橋ゴムからなる。トレッド4は、その外面22(トレッド面とも称される。)において路面と接触する。
【0025】
図1において、符号TEで示される位置は、タイヤ2の、路面との接地面の端、詳細には、接地面の軸方向外端に対応する、トレッド面22上の位置を表す。このタイヤ2において、位置TEは接地基準位置とも称される。
【0026】
接地基準位置TEを特定するための接地面(基準接地面とも称される。)は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。この基準接地面は、この装置において、タイヤ2をリムRに組み、タイヤ2の内圧を正規内圧に調整し、このタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、縦荷重として正規荷重をこのタイヤ2に負荷して、このタイヤ2を平らな路面に接触させて得られる。このタイヤ2では、基準接地面の接地幅(基準接地幅とも称される。)は、トレッド面22に沿って計測される、一方の接地基準位置TEから他方の接地基準位置TEまでの軸方向距離によって表される。
【0027】
図1に示されるように、このタイヤ2のトレッド4には、周方向に延びる複数の周方向溝24が刻まれる。このタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝24が刻まれる。これら周方向溝24は、軸方向に並列する。これら周方向溝24のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝24がショルダー周方向溝24sである。軸方向において内側に位置する周方向溝24がセンター周方向溝24cである。
【0028】
周方向溝24の溝幅及び溝深さは、排水性及びグリップ性能を考慮して決められる。このタイヤ2では、周方向溝24の溝幅は基準接地幅の1%以上15%以下である。周方向溝24の溝深さは5mm以上10mm以下である。溝幅は、周方向溝24の一方の縁から他方の縁までの距離で表される。溝深さは、周方向溝24の縁から底までの距離で表される。
【0029】
周方向溝24が刻まれることにより、トレッド4には複数の陸部26が構成される。これら陸部26のうち、軸方向において外側に位置する陸部26がショルダー陸部26sである。軸方向において内側に位置する陸部26がセンター陸部26cである。センター陸部26cとショルダー陸部26sとの間に位置する陸部26がミドル陸部26mである。このタイヤ2のセンター陸部26cは赤道面上に位置する。
【0030】
図1において、両矢印TAで示される長さはトレッド4の厚さである。この厚さTAはバンド20の外面からトレッド面22までの距離を赤道面に沿って計測することにより得られる。このタイヤ2では、この厚さTAは4mm以上15mm以下である。
【0031】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4よりも径方向内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かって延びる。サイドウォール6は耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0032】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0033】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10は、コア28と、エイペックス30とを備える。図示されないが、コア28はスチール製のワイヤを含む。エイペックス30は、径方向においてコア28の外側に位置する。エイペックス30は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0034】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。このカーカス12はラジアル構造を有する。
【0035】
カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ32を含む。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ32からなる。カーカスプライ32は、それぞれのコア28の周りにて折り返される。
【0036】
図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードは有機繊維からなるコードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0037】
ベルト14は、径方向において、トレッド4の内側に位置する。このタイヤ2では、ベルト14は、トレッド4の内側において、カーカス12とバンド20との間に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。このタイヤ2のベルト14の幅は、タイヤ2の断面幅(JATMA等参照)の55%以上90%以下である。
【0038】
ベルト14は、径方向に積層された少なくとも2つの層34で構成される。このタイヤ2のベルト14は、径方向に積層された2つの層34からなる。2つの層34のうち、内側に位置する層34が内側層36であり、外側に位置する層34が外側層38である。図1に示されるように、内側層36は外側層38の幅よりも広い幅を有する。軸方向において、内側層36の端40は外側層38の端42よりも外側に位置する。外側層38の端42から内側層36の端40までの距離は3mm以上10mm以下である。
【0039】
図示されないが、内側層36及び外側層38はそれぞれ、並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0040】
それぞれのチェーファー16は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー16はリムRと接触する。このタイヤ2では、チェーファー16は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0041】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0042】
バンド20は、径方向において、トレッド4とベルト14との間に位置する。バンド20は、ベルト14に積層される。軸方向においてバンド20の端44はベルト14の端46よりも外側に位置する。ベルト14の端46からバンド20の端44までの距離は5mm以上10mm以下である。
【0043】
バンド20はバンドコードを含む。タイヤ2において、バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。このバンド20は、ジョイントレス構造を有する。
【0044】
このタイヤ2では、バンド20は、フルバンド48と、一対のエッジバンド50とからなる。フルバンド48は、ベルト14全体を覆う。一対のエッジバンド50は軸方向に離して配置される。それぞれのエッジバンド50はベルト14の端46を覆う。図1においてエッジバンド50は、フルバンド48とトレッド4との間に位置する。このエッジバンド50が、フルバンド48とベルト14との間に位置してもよい。
【0045】
次に、タイヤ2を製造するための方法について説明する。このタイヤ2の製造では、トレッド4、ビード10、カーカス12、ベルト14等を組み合わせて、未加硫状態のタイヤ2、すなわち、図1に示されたタイヤ2のための生タイヤが準備される。生タイヤは、モールド(図示されず)に投入され、モールド内で加圧及び加熱される。これにより、生タイヤは加硫され、図1に示されたタイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤを準備する工程、及び生タイヤを加硫する工程を含む。
【0046】
このタイヤ2の製造では、生タイヤの準備工程において未加硫状態のバンド20(以下、生バンド)が形成される。生タイヤの加硫工程において、この生バンドが加硫され、タイヤ2の一部をなすバンド20が得られる。バンド20の形成以外は従来の製造方法と同様にして行われるので、その説明は省略される。
【0047】
このタイヤ2の製造では、バンド20の形成のために、図2に示された、バンドストリップ52が用いられる。バンドストリップ52は、並列した複数本のバンドコード54を含み、これらバンドコード54はトッピングゴム56で覆われる。バンドストリップ52は帯状である。バンドストリップ52に含まれるバンドコード54は、バンドストリップ52の長さ方向に延びる。
【0048】
図2に示されたバンドストリップ52は8本のバンドコード54を含む。このバンドストリップ52に含まれるバンドコード54の本数は8本に限られない。バンドストリップ52に含まれるバンドコード54の本数は、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。このタイヤ2では、バンドストリップ52に含まれるバンドコード54の本数は2本以上15本以下である。
【0049】
前述したように、このタイヤ2のバンド20は、フルバンド48と、一対のエッジバンド50とからなる。このタイヤ2では、フルバンド48及びエッジバンド50は同じ仕様のバンドストリップ52で構成される。フルバンド48及びエッジバンド50がそれぞれ異なる仕様のバンドストリップ52で構成されてもよい。
【0050】
図示されないが、このタイヤ2の製造では、成形機のドラムにおいてバンド20は形成される。ドラムにおいてベルト14を形成した後に、バンドストリップ52にテンションをかけながらこのバンドストリップ52を螺旋状に巻き付け、バンド20が形成される。特に、このタイヤ2の製造では、隙間をあけてバンドストリップ52を巻き付けてフルバンド48が形成され、隙間をあけずにバンドストリップ52を巻き付けてエッジバンド50が形成される。言い換えれば、フルバンド48はバンドストリップ52を疎に巻き付けて形成され、エッジバンド50はバンドストリップ52を密に巻き付けて形成される。
【0051】
このタイヤ2の製造では、バンドストリップ52の巻き付けのテンションは10N以上150N以下の範囲で設定される。この巻き付けのテンションは、バンドストリップ52に含まれるバンドコード54、1本当たりの荷重(N)で表される。
【0052】
このタイヤ2の製造では、バンド20の形成のために、例えば、フルバンド48用に1本のバンドストリップ52が準備され、エッジバンド50用に2本のバンドストリップ52が準備される。
【0053】
タイヤ2における赤道面に対応する位置を基準に、フルバンド48の端58に対応する位置、エッジバンド50の外端60に対応する位置、そしてエッジバンド50の内端62に対応する位置がそれぞれ、フルバンド48の端相当位置、エッジバンド50の内端相当位置、そしてエッジバンド50の外端相当位置として成形機のドラム上に設定される。
【0054】
フルバンド48の一方の端相当位置から他方の端相当位置に向けてフルバンド48用のバンドストリップ52を疎に巻き付けて、フルバンド48が形成される。エッジバンド50の外端相当位置から内端相当位置に向けてエッジバンド50用のバンドストリップ52を密に巻き付けて、一方のエッジバンド50が形成される。エッジバンド50の内端相当位置から外端相当位置に向けてエッジバンド50用の別のバンドストリップ52を密に巻き付けて、他方のエッジバンド50が形成される。これにより、バンド20が得られる。このバンド20の形成では、フルバンド48の安定な形成の観点から、フルバンド48の端58の部分(バンドストリップ52の巻き数で一巻きから二巻き程度)がバンドストリップ52を密に巻き付けて形成されてもよい。
【0055】
このタイヤ2の製造では、バンド20の形成に用いる、バンドストリップ52の本数を減らすことができる観点から、例えば、図3に示す要領にてバンドストリップ52を巻き付けて、バンド20が形成されてもよい。
【0056】
図3(a)に示されたバンド20の形成例では、1本のバンドストリップ52を用いてバンド20が形成される。この形成例では、一方のエッジバンド50の内端相当位置から軸方向外向きにバンドストリップ52を密に巻き付けて、一方のエッジバンド50が形成される。フルバンド48の一方の端相当位置からその他方の端相当位置に向けて、このバンドストリップ52を疎に巻き付けて、フルバンド48が形成される。他方のエッジバンド50の外端相当位置から軸方向内向きにバンドストリップ52を密に巻き付けて、他方のエッジバンド50が形成される。これにより、バンド20が得られる。
【0057】
図3(b)に示されたバンド20の形成例では、2本のバンドストリップ52を用いてバンド20が形成される。この形成例では、赤道面側から軸方向外向きに、2本のバンドストリップをそれぞれ、疎に巻き付けて、フルバンド48が形成される。エッジバンド50の外端相当位置から軸方向内向きに、2本のバンドストリップ52をそれぞれ、密に巻き付けて、左右のエッジバンド50が形成される。これにより、バンド20が得られる。
【0058】
図3(c)に示されたバンド20の形成例においても、2本のバンドストリップ52を用いてバンド20が形成される。この形成例では、エッジバンド50の内端相当位置から軸方向外向きに、2本のバンドストリップ52をそれぞれ、密に巻き付けて、左右のエッジバンド50が形成される。フルバンド48の端相当位置から赤道面に向けて、2本のバンドストリップ52をそれぞれ、疎に巻き付けて、フルバンド48が形成される。これにより、バンド20が得られる。
【0059】
前述したように、このタイヤ2のバンド20に含まれるバンドコード54は実質的に周方向に延びる。バンド20は、このバンドコード54を含むバンドストリップ52によって形成される。このバンド20を構成するバンドストリップ52も実質的に周方向に延びる。バンドストリップ52が周方向に対してなす角度は5°以下である。
【0060】
図4には、図1に示されたタイヤ2の断面の一部が示される。図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0061】
前述したように、このタイヤ2のバンド20はバンドストリップ52を螺旋状に巻き付けて形成される。このバンド20は、バンドストリップ52を螺旋状に巻き付けてなる、タイヤ2の要素である。このため、図4に示されるように、バンド20の断面は多数のバンドストリップ52の断面を含む。フルバンド48はバンドストリップ52を疎に巻き付けて形成されるので、このフルバンド48の断面においては、複数のバンドストリップ52の断面が隙間をあけて並ぶ。左右に位置する一対のエッジバンド50はそれぞれ、バンドストリップ52を密に巻き付けて形成されるので、このエッジバンド50の断面においては、複数のバンドストリップ52の断面が隙間なく並ぶ。
【0062】
このタイヤ2では、フルバンド48は、バンドストリップ52を疎に巻き付けて形成されるので、軽量化に貢献する。その一方で、このフルバンド48はバンド20による拘束力を低下させる。拘束力の低下は、接地面の輪郭に影響する。接地長が伸び、接地面積が増加すると、タイヤ2において発熱が促されることが懸念される。この場合、フルバンド48の軽量化が転がり抵抗の低減に貢献できない。
【0063】
ところがこのタイヤ2のトレッド4の端の部分(以下、ショルダー部64)には、バンドストリップ52を密に巻き付けて形成されたエッジバンド50が位置する。このタイヤ2では、エッジバンド50がフルバンド48とともにショルダー部64を効果的に拘束する。接地長が伸び、接地面積が増加することが抑えられるので、接地面積の増加を起因とする発熱が抑えられる。このタイヤ2では、フルバンド48の軽量化が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0064】
接地面積の増加が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な応答性が維持される。このタイヤ2では、フルバンド48の軽量化による操縦安定性への影響が抑えられる。このタイヤ2は、操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0065】
図4において、符号BTはショルダー周方向溝24sの底を表す。周方向溝24の底BTは最深部において表されるが、このショルダー周方向溝24sのように底が軸方向に広がる場合はその中心位置において底BTが表される。
【0066】
このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド50の内端62はショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置される。このタイヤ2では、このショルダー周方向溝24sの底BTの部分に特異な歪みが集中し、亀裂等の損傷が生じることが防止される。このタイヤ2は、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0067】
このタイヤ2では、接地面の輪郭が丸みを帯びているかは基準接地面の形状指数Fにより判断される。この形状指数Fが図5を用いて以下に説明される。
【0068】
図5には、基準接地面の輪郭形状のモデルが示される。図5において、上下方向はタイヤ2の周方向に相当し、左右方向はタイヤ2の軸方向に相当する。紙面に対して垂直な方向はこのタイヤ2の径方向に相当する。
【0069】
図5において、一点鎖線LPは、基準接地面における、タイヤ2の赤道面に対応する直線である。基準接地面において赤道面の特定が困難な場合は、この基準接地面の軸方向中心線がこの赤道面に対応する直線として用いられる。両矢印P100は、直線LPを含む平面と基準接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP100が、基準接地面において、赤道面に沿って計測される赤道接地長である。
【0070】
図5において、実線LMは、基準接地面の軸方向外端(以下、接地端SE)を通り、直線LPに平行な直線である。実線L80は、直線LMと直線LPとの間に位置し、直線LM及び直線LPに平行な直線である。両矢印A100は、直線LPから直線LMまでの軸方向距離を表す。この距離A100は基準接地面の最大幅、すなわち基準接地幅の半分に相当する。両矢印A80は、直線LPから直線L80までの軸方向距離を表す。この図5においては、距離A80の、距離A100に対する比率は80%に設定される。つまり、直線L80は、基準接地面の基準接地幅の80%の幅に相当する位置を表す。両矢印P80は、直線L80を含む平面と基準接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP80が、基準接地面において、基準接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長である。
【0071】
このタイヤ2では、基準接地面において特定される、赤道接地長P100及び基準接地長P80を用いて表される、赤道接地長P100の、基準接地長P80に対する比(P100/P80)が、基準接地面の輪郭形状の形状指数Fとして用いられる。この形状指数Fは、値が大きいほど基準接地面が丸みを帯びた輪郭を有することを表す。
【0072】
このタイヤ2では、基準接地面の形状指数Fは1.50以下である。前述したように、このタイヤ2では、バンドストリップ52を疎に巻き付けてフルバンド48を構成する一方で、バンドストリップ52を密に巻き付けてエッジバンド50を構成することで、接地長が伸び、接地面積が増加することを抑え、この接地面積の増加を起因とする発熱が抑えられる。つまり、基準接地面の形状指数Fが1.50以下であれば、接地面のラウンド化に起因する転がり抵抗の増加が抑えられる。これに対して、形状指数Fが1.10を下回ると、耐摩耗性が低下する。つまり、形状指数Fが1.10以上であれば、良好な耐摩耗性が維持される。したがって、このタイヤ2では、耐摩耗性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減が図れる観点から、基準接地面の形状指数Fは1.10以上が好ましく、1.15以上がより好ましく、1.20以上がさらに好ましい。この形状指数Fは1.50以下が好ましく、1.45以下がより好ましく、1.40以下がさらに好ましい。
【0073】
図4において、両矢印WGで示される長さは、フルバンド48の断面に含まれる一のバンドストリップの断面と、この一のバンドストリップの断面の隣に位置する他のバンドストリップの断面との間の距離である。この距離WGが、フルバンド48に構成される隙間の大きさである。なお、隙間がない状態とは、この距離WGが0.5mm以下であることを意味する。
【0074】
このタイヤ2では、フルバンド48の軽量化を促し転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、フルバンド48の隙間の大きさWGは2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。フルバンド48がバンド20の拘束力の発揮に貢献できる観点から、この隙間の大きさWGは12mm以下が好ましく、11mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0075】
図4において、両矢印WSはセンター周方向溝24cの底幅である。この底幅WSは、左右の溝壁と底との境界間の距離で表される。このタイヤ2では、トレッド4に刻まれた、4本の周方向溝24のうち、図4に示されたセンター周方向溝24cが最大の溝幅を有する。このセンター周方向溝24cは、ワイド周方向溝24wとも称される。センター周方向溝24cの底幅WSは、ワイド周方向溝24wの底幅でもある。
【0076】
フルバンド48に構成される隙間は、バンドストリップ52の縁66によって構成される。フルバンド48は、バンドストリップ52を螺旋状に巻き付けて構成されるので、周方向溝24の底の部分には、このバンドストリップ52の縁66が配置される。隙間の大きさが周方向溝24の底幅よりも広い場合、周方向溝24の底の部分には、隙間を構成する、2つのバンドストリップの縁66のうち、一方の縁66のみが配置されるケースがある。特に、最大の溝幅を有するワイド周方向溝24wの底の部分に一方の縁66のみが配置された場合、このワイド周方向溝24wの底の部分には、この縁66を起因とする、歪みの集中が生じやすく、その集中の程度によっては、ワイド周方向溝24wの底の部分に亀裂等の損傷が生じる恐れがある。
【0077】
しかしこのタイヤ2では、フルバンド48における隙間の大きさWGはワイド周方向溝24wの底幅WSよりも狭い。このため、ワイド周方向溝24wの底の部分には、隙間を構成するバンドストリップの2つの縁66が配置される。歪みがそれぞれの縁66に分散されるので、このタイヤ2では、縁66の存在を起因とする歪みの集中が抑えられる。ワイド周方向溝24wの底の部分において亀裂等の損傷が生じることが防止されるので、このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から、このタイヤ2では、フルバンド48における隙間の大きさWGはワイド周方向溝24wの底幅WSよりも狭いのが好ましい。
【0078】
このタイヤ2では、ワイド周方向溝24wの底の部分において亀裂等の損傷が生じることが効果的に防止される観点から、バンドストリップ52の隙間の幅WGの、ワイド周方向溝24wの底幅WSに対する比(WG/WS)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0,7以下がさらに好ましい。フルバンド48の軽量化の観点から、この比(WG/WS)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0,3以上がさらに好ましい。
【0079】
図4において、両矢印DSで示される長さはベルト14の端46からショルダー周方向溝24sの底BTまでの軸方向距離である。両矢印DEで示される長さは、ベルト14の端46からエッジバンド50の内端62までの軸方向距離である。
【0080】
前述したように、このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド50の内端62はショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置される。特に、このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド50の内端62はショルダー周方向溝24sの外側に位置する。この場合、ベルト14の端46からショルダー周方向溝24sの底BTまでの軸方向距離DSに対する、ベルト14の端46からエッジバンド50の内端62までの軸方向距離DEの比(DE/DS)は0.25以上が好ましく、0.90以下が好ましい。
【0081】
比(DE/DS)が0.25以上に設定されることにより、エッジバンド50がショルダー部64を効果的に拘束する。接地長が伸び、接地面積が増加することが抑えられるので、接地面積の増加を起因とする発熱が抑えられる。このエッジバンド50は、転がり抵抗の低減に貢献する。この観点から、この比(DE/DS)は0.35以上がより好ましく、0.50以上がさらに好ましい。
【0082】
比(DE/DS)が0.90以下に設定されることにより、エッジバンド50の内端62がショルダー周方向溝24sから十分に離して配置される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの底BTの部分に特異な歪みが集中し、損傷が生じることが防止される。このエッジバンド50は、耐久性の確保に貢献する。この観点から、この比(DE/DS)は0.80以下がより好ましく、0.65以下がさらに好ましい。
【0083】
図4において、両矢印DBで示される長さは、赤道面からベルト14の端46までの軸方向距離である。このタイヤ2では、この距離DBは基準幅とも称される。符号PBで示される位置は、赤道面からの軸方向距離が基準幅DBの0.75倍に相当する、トレッド面22上の位置である。このタイヤ2では、この位置PBは基準位置とも称される。両矢印DGで示される長さは、赤道面からショルダー周方向溝24sの外縁までの軸方向距離である。
【0084】
ショルダー周方向溝24sがトレッド4の端に近づくほど、このショルダー周方向溝24sの底の部分には歪みが集中しやすい。しかしこのタイヤ2では、軸方向において、ショルダー周方向溝24sはその全体が基準位置PBよりも内側に位置するので、ショルダー周方向溝24sの底BTの部分に特異な歪みが集中し、損傷が生じることが効果的に防止される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの位置による耐久性への影響が抑えられる。この観点から、このタイヤ2では、軸方向において、ショルダー周方向溝24sはその全体が基準位置PBよりも内側に位置するのが好ましい。
【0085】
このタイヤ2では、良好な耐久性が確保できる観点から、赤道面からショルダー周方向溝24sの外縁までの軸方向距離DGの、基準幅DBに対する比(DG/DB)は、0.75以下が好ましく、0.72以下がより好ましい。排水性の観点から、この比(DG/DB)は、0.55以上が好ましく、0.60以上がより好ましい。
【0086】
前述したように、このタイヤ2のバンド20はバンドコード54を含む。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがバンドコード54として用いられる。この有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。拘束力の発揮の観点から、このバンドコード54は、ナイロン繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維のストランドと、アラミド繊維のストランドとを撚合わせたハイブリッドコードであるのが好ましい。特に、ハイブリッドコードをバンドコード54として用いた場合、バンドストリップ52を疎に巻き付けてフルバンド48を構成しても、このフルバンド48による拘束力の低下が効果的に抑えられる。このタイヤ2は、耐久性及び操縦安定性への影響を効果的に抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。この観点から、バンドコード54は、ナイロン繊維のストランドと、アラミド繊維のストランドとを撚合わせたハイブリッドコードであるのがより好ましい。
【0087】
前述したように、このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド50の内端62はショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置される。好ましくは、フルバンド48における隙間は、その幅WGがワイド周方向溝24wの底幅WSよりも狭くなるように構成される。これにより、周方向溝24の底の部分において、歪みが集中することが抑えられ、耐久性の向上が図られる。このため、このタイヤ2は、厚さTAが11mm以下の薄いトレッドをトレッド4として採用できる。薄いトレッド4は転がり抵抗の低減に貢献する。この観点から、このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド50の内端62がショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置されるとともに、フルバンド48における隙間が、その大きさWGがワイド周方向溝24wの底幅WSよりも狭くなるように構成されるのがより好ましい。
【0088】
図6は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ72の一部を示す。図6には、タイヤ72の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ72の断面の一部が示される。図6において、左右方向はタイヤ72の軸方向であり、上下方向はタイヤ72の径方向である。図6の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ72の周方向である。
【0089】
このタイヤ72では、エッジバンド74の構成以外は図1に示されたタイヤ2の構成と略同等の構成を有する。図1に示されたタイヤ2の要素と同一の要素については、同じ符号を付して、その説明は省略される。
【0090】
このタイヤ72においても、図1に示されたタイヤ2と同様、バンド20は、バンドストリップ52を螺旋状に巻き付けてなり、このバンド20の断面は多数のバンドストリップ52の断面を含む。フルバンド48はバンドストリップ52を疎に巻き付けて形成されるので、このフルバンド48の断面においては、複数のバンドストリップ52の断面が隙間をあけて並ぶ。左右のエッジバンド74はバンドストリップ52を密に巻き付けて形成されるので、このエッジバンド74の断面においては、複数のバンドストリップ52の断面が隙間なく並ぶ。
【0091】
このタイヤ72では、バンドストリップ52を疎に巻き付けて形成されたフルバンド48が軽量化に貢献する。バンドストリップ52を密に巻き付けて形成されたエッジバンド74がフルバンド48とともにショルダー部64を効果的に拘束する。接地長が伸び、接地面積が増加することが抑えられるので、接地面積の増加を起因とする発熱が抑えられる。このタイヤ72では、フルバンド48の軽量化が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。このタイヤ72は、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0092】
さらにこのタイヤ72では、接地面積の増加が抑えられるので、良好な応答性が維持される。このタイヤ72では、フルバンド48の軽量化による、操縦安定性への影響が抑えられる。このタイヤ72は、操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0093】
そしてこのタイヤ72では、軸方向において、エッジバンド74の内端76はショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置される。このタイヤ72では、このショルダー周方向溝24sの底BTの部分に特異な歪みが集中し、亀裂等の損傷が生じることが防止される。このタイヤ72は、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0094】
図6において、両矢印DSで示される長さはベルト14の端46からショルダー周方向溝24sの底BTまでの軸方向距離である。両矢印DEで示される長さは、ベルト14の端46からエッジバンド74の内端76までの軸方向距離である。
【0095】
前述したように、このタイヤ72では、軸方向において、エッジバンド74の内端76はショルダー周方向溝24sの底BTから離して配置される。特に、このタイヤ72では、軸方向において、エッジバンド74の内端76はショルダー周方向溝24sの内側に位置する。この場合、ベルト14の端46からショルダー周方向溝24sの底BTまでの軸方向距離DSに対する、ベルト14の端46からエッジバンド74の内端76までの軸方向距離DEの比(DE/DS)は1.20以上が好ましく、1.55以下が好ましい。
【0096】
比(DE/DS)が1.20以上に設定されることにより、エッジバンド74の内端76がショルダー周方向溝24sから十分に離して配置される。このタイヤ72では、ショルダー周方向溝24sの底BTの部分に特異な歪みが集中し、損傷が生じることが防止される。このエッジバンド74は、耐久性の確保に貢献する。この観点から、この比(DE/DS)は1.22以上がより好ましく、1.25以上がさらに好ましい。
【0097】
比(DE/DS)が1.55以下に設定されることにより、エッジバンド74の長さが適切に維持され、エッジバンド74の質量による、転がり抵抗への影響が抑えられる。このタイヤ72では、低い転がり抵抗が維持される。この観点から、この比(DE/DS)は1.50以下がより好ましく、1.45以下がさらに好ましい。
【0098】
以上説明したように、本発明によれば、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる、タイヤが得られる。本発明は、特に、JATMA規格における速度記号がW以上であるタイヤにおいて、顕著な効果を奏する。
【実施例
【0099】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
[実施例1]
図1及び図4に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=215/55R17 94W)を得た。
【0101】
この実施例1では、バンドは図2に示されたバンドストリップを用いて形成された。フルバンド(FB)はバンドストリップを疎に巻き付けて形成され、左右のエッジバンド(EB)はバンドストリップを密に巻き付けて形成された。このことが、表1のFBの欄に「L」で、EBの欄に「T」で表されている。ナイロン繊維からなるストランド(構成=940dtex/1)と、アラミド繊維からなるストランド(構成=1100dtex/1)とを撚り合わせて構成されたハイブリッドコードが、バンドコードとして使用された。
【0102】
フルバンドにおける隙間の大きさWGの、ワイド周方向溝の底幅WSに対する比(WG/WS)は0.36に設定された。赤道面からショルダー周方向溝の外縁までの軸方向距離DGの、基準幅DBに対する比(DG/DB)は、0.62に設定された。ベルトの端からショルダー周方向溝の底BTまでの軸方向距離DSに対する、ベルトの端からエッジバンドの内端までの軸方向距離DEの比(DE/DS)は、0.60に設定された。
【0103】
[比較例1]
バンドをフルバンドのみで構成した他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。この比較例1では、フルバンドは、バンドストリップを疎に巻き付けて形成されたセンター部と、バンドストリップを密に巻き付けて形成された、一対のサイド部とからなる。このことが、表1のFBの欄に「T+L」で表されている。
【0104】
この比較例1では、サイド部が、実施例1におけるエッジバンドに相当し、ベルトの端からサイド部の内端までの軸方向距離は、ベルトの端からショルダー周方向溝の底BTまでの軸方向距離DSの0.60倍に設定された。センター部における隙間の大きさは、ワイド周方向溝の底幅WSの0.36倍に設定された。
【0105】
[比較例2]
隙間をあけずにバンドストリップを巻き付けてフルバンドを構成した他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。バンドストリップを密に巻き付けてフルバンドを構成したことが、表1のFBの欄に「T」で表されている。
【0106】
[比較例3]
距離DEを変えて比(DE/DS)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。この比較例3では、エッジバンドの内端の位置は、軸方向において、ショルダー周方向溝の底BTの位置と一致している。
【0107】
[実施例2]
フルバンドにおける隙間の大きさWGを変えて比(WG/WS)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
【0108】
[実施例3]
図6に示された基本構成を備え、下記の表2に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=195/55R16 87W)を得た。
【0109】
この実施例3においても、バンドは図2に示されたバンドストリップを用いて形成された。フルバンド(FB)はバンドストリップを疎に巻き付けて形成され、左右のエッジバンド(EB)はバンドストリップを密に巻き付けて形成された。このことが、表2のFBの欄に「L」で、EBの欄に「T」で表されている。ナイロン繊維からなるストランド(構成=940dtex/1)と、アラミド繊維からなるストランド(構成=1100dtex/1)とを撚り合わせて構成されたハイブリッドコードがバンドコードとして使用された。
【0110】
この実施例3では、比(WG/WS)は0.63に設定された。比(DG/DB)は、0.72に設定された。比(DE/DS)は、1.26に設定された。
【0111】
[比較例4]
バンドをフルバンドのみで構成した他は実施例3と同様にして、比較例4のタイヤを得た。この比較例4では、比較例1と同様、フルバンドは、バンドストリップを疎に巻き付けて形成されたセンター部と、バンドストリップを密に巻き付けて形成された、一対のサイド部とからなる。
【0112】
この比較例4では、センター部における隙間の大きさは、ワイド周方向溝の底幅WSの0.63倍に設定された。ベルトの端からサイド部の内端までの軸方向距離は、ベルトの端からショルダー周方向溝の底BTまでの軸方向距離DSの1.26倍に設定された。
【0113】
[比較例5]
隙間をあけずにバンドストリップを巻き付けてフルバンドを構成した他は実施例3と同様にして、比較例5のタイヤを得た。
【0114】
[比較例6]
距離DEを変えて比(DE/DS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例3と同様にして、比較例6のタイヤを得た。この比較例6では、エッジバンドの内端の位置は、軸方向において、ショルダー周方向溝の底BTの位置と一致している。
【0115】
[実施例4]
距離DGを変えて比(DG/DB)を下記の表2に示される通りとした他は実施例3と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
【0116】
[実施例5]
フルバンドにおける隙間の大きさWGを変えて比(WG/WS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例3と同様にして、実施例5のタイヤを得た。
【0117】
[操縦安定性]
試作タイヤを正規リムに組み、空気を充填してタイヤの内圧を正規内圧に調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースでこの試験車両を走行させた。ドライバーに操縦安定性を評価(官能評価)させた。その結果が、下記の表1及び表2に指数で示されている。数値が大きいほど、タイヤは操縦安定性に優れる。
【0118】
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が、下記の表1及び表2に指数で示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
実施例1-2及び比較例1-3
リム:7.0J
内圧:250kPa
縦荷重:5.88kN
実施例3-5及び比較例4-6
リム:6.0J
内圧:250kPa
縦荷重:4.82kN
【0119】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み、このタイヤに空気を充填して内圧を正規内圧に調整した。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤをドラム(半径=1.7m)上で走行させた。走行速度は100km/hに設定した。タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。その結果が、下記の表1及び表2に指数で示されている。数値が大きいほど、タイヤは耐久性に優れる。なお、実施例1-2及び比較例1-3では、縦荷重は8.86kNに設定された。実施例3-5及び比較例4-6では、縦荷重は7.33kNに設定された。
【0120】
[総合性能]
各評価において得た指数の合計を算出した。その結果が、下記の表1及び表2の「総合性能」の欄に示されている。この数値が大きいほど、好ましい。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1及び表2に示されるように、実施例では、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減が達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明された、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図る技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0125】
2、72・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
20・・・バンド
22・・・トレッド面
24、24s、24c、24w・・・周方向溝
48・・・フルバンド
50、74・・・エッジバンド
52・・・バンドストリップ
54・・・バンドコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6