(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241106BHJP
G11B 5/73 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
G11B5/73
(21)【出願番号】P 2020159795
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019178650
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中森 ゆか里
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
(72)【発明者】
【氏名】千代 敏弘
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221278(JP,A)
【文献】特開2017-193173(JP,A)
【文献】特開2012-067239(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
G11B 5/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の湿度膨張係数が4.5~6.5ppm/%RHであり、幅方向の温度膨張係数が-3.0~7.0ppm/℃であり、少なくとも一方の最外層表面において、高さ60nm以上の突起個数が0~200個/mm
2であり
、微少融解ピーク温度(T-meta)が212~240℃である二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
幅方向の熱収縮率が1.0%以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
幅方向のヤング率が7.0~12.0GPaである、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
少なくとも一方の表面粗さ(Sa1)が3.0~7.0nmである、請求項1~
3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
Sa1を構成する面とは反対側の最外層表面の表面粗さ(Sa2)が0.5~5.0nmである、請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性および表面性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、データストレージなどの塗布型磁気記録媒体のベースフィルムに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。磁気記録媒体には常に高密度記録化が要求される。
【0003】
高密度記録を達成する方法としては、一般に、トラック数の増加、記録波長の短波長化、テープ長増大の3つの方法がある。
【0004】
トラック数を多くすると1トラックの幅が狭くなるため、僅かな寸法変化がデータ欠落の原因となるため、テープ幅方向の寸法安定性の制御が重要となる。このような寸法変化は、熱収縮等の不可逆的変化と温度、湿度による膨張、収縮等の可逆的変化に分けられる。不可逆的変化はないことが好ましいが、加工工程でアニール等の処理により取り除くことができる。これに対して、可逆的変化は容易に取り除くことができないために、保存時に温度、湿度が変化するとフィルムの膨張や収縮が起こり、記録データが本来あるべき位置からずれることにより、読み取れなくなることがある。
【0005】
また、記録波長を短波長化した上で、十分な電磁変換特性を実現するためには表面平滑性が求められ、さらに、磁性層の薄膜化や微粒子磁性体を使用し磁性層表面の平滑性をさらに向上させることは有効である。
【0006】
近年の強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体用支持体においては、磁性層や非磁性層、バックコート層、さらには支持体自体の薄膜化に伴い平滑面のみならず走行面の粗面化が制約されている。製造過程で磁気記録媒体としてロール状態で保存する場合、走行面に形成されている突起が磁性面に転写し、平滑な磁性層表面に窪みを形成させたり、支持体の薄膜化に伴い支持体に含有している大きな粒子が平滑面に突き上げられ磁性層表面になだらかな凸状のウネリを発生させ磁性層表面の平滑性が低下することによってエラー信号(ミッシングパルス)が発生するといった問題がある。磁性層表面の平滑性を高めるために支持体に含有する粒子の小径化を図り、超高精細な表面として平滑性を向上させると、走行性や巻き取り、さらには表面の耐久性が不十分となる。したがって、スリット性と表面の平滑性の両立といった特性の改善に対する要求は高密度記録化のためには常に発生する課題といえる。
【0007】
上記課題を解決するために、あらゆる環境変化に対応できるような温湿度領域で優れた寸法安定性を有するポリエステルフィルム(例えば特許文献1、2)が検討されている。しかしながら、磁性層薄膜化や強磁性六方晶フェライト粉末などの微粒子磁性体を使用した磁性層表面の平滑性を担保できるための支持体の表面を得られていないのが実状である。また、湿度膨張に優れ、かつ特定の高さの突起個数の制御により走行性と平滑性を両立したポリエステルフィルムが(例えば特許文献3、4)、熱に対する寸法安定性とフィルムの剛性を両立させたポリエステルフィルム(例えば特許文献5)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-163020号公報
【文献】特開2015-25047号公報
【文献】特開2016-79410号公報
【文献】特開2018-150463号公報
【文献】特開2000-141475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、いずれも温度膨張については全く考慮されておらず、常温から高温多湿の全ての温湿度領域で優れた寸法変化を有するフィルムには至っていない。
【0010】
本発明の目的は、低温低湿、低温高湿、高温低湿、高温高湿の全ての温湿度領域で優れた寸法安定性を有し、かつ優れた表面平滑性とスリット性を両立した二軸配向ポリエステルフィルムを安定に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、次の各構成を特徴とするものである。
【0012】
(1)幅方向の湿度膨張係数が4.5~6.5ppm/%RHであり、幅方向の温度膨張係数が-3.0~7.0ppm/℃であり、少なくとも一方の最外層表面において、高さ60nm以上の突起個数が0~200個/mm2である二軸配向ポリエステルフィルム。
【0013】
(2)幅方向の熱収縮率が1.0%以下である上記(1)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0014】
(3)幅方向のヤング率が7.0~12.0GPaである上記(1)または(2)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0015】
(4)微少融解ピーク温度(T-meta)が210~240℃である上記(1)~(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0016】
(5)少なくとも一方の表面粗さ(Sa1)が3.0~7.0nmである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0017】
(6)Sa1を構成する面とは反対側の最外層表面の表面粗さ(Sa2)が0.5~5.0nmである、上記(5)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0018】
(7)塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、上記(1)~(6)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、スリット性、低温低湿、低温高湿、高温低湿、高温高湿の全ての温湿度領域での寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムであって、磁気記録媒体とした際に平滑な磁性層を有すると共に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さい、ミッシングパルスの発生が抑制された高密度磁気記録媒体となる二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において用いるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。また、本発明でいうポリエステルフィルムとは、フィルムを構成する主成分がポリエステルであるフィルムを表す。
【0022】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4-ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0025】
ポリマーの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT-IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0026】
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明において用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン-2,6-ナフタレート)が好ましく、また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明で用いるポリエステルとしては特に、結晶子サイズや結晶配向度を高めるプロセスが適用しやすいことから主成分がポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。ここで、主成分とはフィルム組成中80質量%以上であることをいう。
【0027】
本発明で用いるポリエチレンテレフタレートをポリマーアロイとする場合、他の熱可塑性樹脂は、ポリエステルと相溶するポリマーが好ましく、ポリエーテルイミド樹脂などがより好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば以下で示すものを用いることができる。
【0028】
【0029】
(ただし、上記式中R1は、6~30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、R2は6~30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2~20個の炭素原子を有するアルキレン基、2~20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2~8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0030】
【0031】
(nは2以上の整数、好ましくは20~50の整数である。)
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm-フェニレンジアミン、またはp-フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0032】
【0033】
または
【0034】
【0035】
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem(登録商標)1000」、「Ultem(登録商標)1010」、「Ultem(登録商標)1040」、「Ultem(登録商標)5000」、「Ultem(登録商標)6000」および「Ultem(登録商標)XH6050」シリーズや「Extem(登録商標) XH」および「Extem(登録商標) UH」の登録商標名等で知られているものである。
【0036】
本発明において、例えば、ポリエステルとポリイミドとを混合する方法としては、溶融押出前に、ポリエステルとポリイミドの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。また、ポリエステルとポリイミドとを混合する場合、溶融粘度の差があるため、ポリイミド樹脂を高濃度に混合したマスターチップを作製することが好ましく、特に、ポリエステル/ポリイミドの混合重量比率を10/90~70/30とするのが好ましく、より好ましい範囲は30/70~60/40の範囲である。
【0037】
本発明において、ポリエステルフィルム中のポリイミド樹脂の含有量は、フィルム全体に対して0.1重量%20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上15重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上10重量%以下である。上限値を超えて含有すると本発明の幅方向の湿度膨張係数が得られない場合がある。
【0038】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の湿度膨張係数は4.5~6.5ppm/%RH、好ましくは5.0~6.0ppm/%RHである。湿度膨張係数が6.5ppm/%RHより大きいと磁気データを記録・再生する環境において、湿度変化に対してフィルムが幅方向に膨張するため再生不良を起こしやすくなる。また、湿度膨張係数が4.5ppm/%RHより小さい場合は、フィルムの温度膨張係数を本願の範囲内に制御することが困難となることがある。幅方向の湿度膨張係数は、後述に示す幅方向の延伸倍率によって制御が可能である。延伸倍率を高倍率化すると湿度膨張係数は低下する。しかしながら、幅方向の延伸倍率を高倍率化すると湿度膨張係数とともに温度膨張係数が小さくなりすぎる場合があるため、延伸倍率と熱固定温度の調節が重要である。
【0039】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の温度膨張係数は-3.0~7.0ppm/℃、好ましくは-2.0~5.0ppm/℃である。温度膨張係数が-3.0ppm/℃を下回ると磁気データを記録・再生する環境の温度変化に対してフィルムが幅方向への収縮が大きくなる。一方、磁気ヘッドは温度変化に対して膨張(通常7ppm/℃)するため、相互の寸法変化が大きくなりすぎる再生不良を起こしやすくなる。温度膨張係数が7.0ppm/℃を超えると、湿度膨張係数を本願の範囲内に制御できなくなり、磁気データを記録・再生する環境の温湿度変化に対してフィルムが幅方向に膨張するため再生不良を起こしやすくなる。幅方向の温度膨張係数は、後述に示す幅方向の延伸倍率によって制御が可能である。延伸倍率を高倍率化すると温度膨張係数は低下する。本発明の幅方向の温度および湿度膨張係数を本発明の範囲内にするには、幅方向の延伸倍率、熱固定温度の調節が重要である。また、フィルム中にポリエーテルイミドを2~20重量%以下、好ましくは3~15重量%以下、さらに好ましくは5~10重量%以下の割合で含有することは、本発明の幅方向の温度および湿度膨張係数を得られやすくなり好ましい。
【0040】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面において、高さ60nm以上の突起個数は0~200個/mm2、好ましくは0~150個/mm2、さらに好ましくは0~100個/mm2である。高さ60nm以上の突起個数が200個/mm2を超えると表面の平滑性が悪化しミッシングパルスが発生する場合がある。
【0041】
なお、上記した本発明の高さ60nmの突起個数は、走査型白色干渉顕微鏡測定により求められる基準面からの高さ60nmにおける突起個数である。該突起個数が200個/mm2を超えると、例えば、磁気記録テープとして巻き取った際にバックコート層表面の凹凸が磁性層表面へ転写するために転写痕の数が多くなりミッシングパルスの発生頻度が増加する場合がある。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率は1.0%以下であることが好ましい。幅方向の熱収縮率が1.0%を超えると、磁気記録媒体の加工工程においてフィルムが幅方向に収縮し、磁気記録媒体表面にシワが発生したり、磁性層表面の平滑性が低下することがある。
【0043】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向のヤング率が7.0~12.0GPaであることが好ましく、7.0~11.0GPaであることが幅方向の湿度膨張係数の制御の観点からより好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる傾向にある。幅方向のヤング率は後述するTD延伸1、2の温度や倍率によって制御することができる。特にトータルのTD倍率が影響し、トータルのTD倍率が高いほどTDヤング率が高くなる。
【0044】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が3.5~8.0GPaであることが好ましい。長手方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の保管時の張力による保存安定性がより良好となる。長手方向のヤング率のさらに好ましい範囲は3.8~7.0GPa、さらにより好ましい範囲は4.0~6.0GPaである。長手方向のヤング率はMD延伸倍率で制御することができる。MD倍率が高いほどMDヤング率が高くなる。
【0045】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの微少融解ピーク温度(T-meta)は210~240℃であることが好ましく、より好ましくは220~235℃である。微少融解ピーク温度が210℃未満であると二軸配向ポリエステルフィルムの構造固定が不十分となり温度膨張係数を本願の範囲内に制御することが困難となる場合がある。また、微少融解ピーク温度が240℃を超えるとTD配向緩和が促進されすぎるために湿度膨張係数が大きくなりすぎ寸法安定性が低下する。さらに、表面の平滑性が低下するため本発明の表面粗さや突起高さを制御できにくくなる。
【0046】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面の表面粗さ(Sa1)は3.0~7.0nmであることが好ましく、より好ましくは3.0~5.0nmである。本発明の目的を満足するためには、該表面は走行性やスリット性を担う表面として機能することが好ましい。表面粗さ(Sa1)が3.0nm未満であると走行性やスリット性が不良となりやすく、表面粗さ(Sa1)が7.0nmを超えると磁気記録媒体とした場合に磁性層表面の平滑性低下によりミッシングパルスが多発しやすい。
【0047】
また、上述したSa1を構成する面とは反対側の最外層表面の表面粗さ(Sa2)は、上述の表面粗さ(Sa1)よりも小さいことが好ましく、本発明のミッシングパルスを満足するためには磁性層を該表面側に塗設することが好ましい。表面粗さ(Sa2)は0.5~5.0nmであることが好ましく、より好ましくは0.5~3.0nmである。表面粗さ(Sa2)が上記の範囲外であると該表面に磁性層を設け磁気記録媒体としたときに走行性やスリット性、ミッシングパルスを両立することが困難となることがある。
【0048】
本発明の表面粗さ(Sa1)および(Sa2)をそれぞれ制御するためには、平均一次粒径が0.01~0.3μmの不活性粒子を0.01~0.5質量%の範囲内で含有する層(B層)を少なくとも1層有する2層以上の積層構成を有することが好ましい。この場合、B層は走行性を担う層として機能し、フィルムの一方の最外層として設けられ、もう一方の最外層には平滑性を担う層(A層)が設けられる。A層に不活性粒子を含有する場合は、平均一次粒径が0.01~0.1μmの粒子を用いることが本発明の表面粗さ(Sa2)を制御しやすくなるので好ましい。不活性粒子の含有量としては0.01~0.2質量%の範囲で添加することができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上の積層構成とすることで両最外層表面の平滑性を制御し易くなり、優れた表面平滑性と走行性やスリット性を両立することができるため好ましい。
【0049】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、上記した高さ60nm以上の突起個数を有し、かつ表面粗さ(Sa1)が3.0~7.0nmである最外層がB層である態様が好ましい。
【0050】
本発明の高さ60nm以上の突起個数の制御方法としては、B層における含有粒子の平均一次粒子径、添加量、積層厚み、熱固定温度で制御が可能である。特にB層に含有する粒子の平均一次粒子径は0.3μm以下、好ましくは0.01~0.2μmの平均一次粒径の異なる粒子を2種類以上併用することが重要である。
【0051】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に好ましく含有される粒子としては特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できるが、本発明の高さ60nm以上の突起高さと突起個数を制御するには、単一分散する球形の粒子である有機粒子やコロイダルシリカが特に好ましい。さらに、走行性とスリット性を改善させるためにアルミナ粒子をB層に添加させると効率よく改善できるため好ましい。
【0052】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に添加される粒子の含有量は、0.005~0.8質量%が好ましく例示され、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0053】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層の積層厚み(t)は、1μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.6μm以下である。積層厚みが1μm以上になると高さ60nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御することが困難となる場合がある。
【0054】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するに際しては、熱固定温度を190~235℃の範囲内で2段階以上に分けて段階高温熱固定を実施することが重要である。突起高さや表面粗さは、熱固定温度が高温になるほど高く大きくなる傾向があるが、段階高温熱固定を採用することによって、高温熱固定による突起高さと表面粗さの増加を抑制することが可能となる。さらに、熱固定温度を高く設定すると、配向緩和を起こしやすくなるため、本願の幅方向の湿度膨張係数を制御できなくなる場合があるが、段階高温熱固定を採用することによって、特に幅方向の配向緩和が緩やかとなり本願の温湿度膨張係数を好ましい範囲内に制御することが可能となる。
【0055】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは3.5~4.6μmの範囲が好ましい。厚みが3.5μmより小さくなると、剛性や寸法安定性が悪化しテープの腰が不十分となり磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が悪化する傾向がある。また、B層内の含有粒子による平滑面(A面)側への突き上げを抑制しにくくなる。また、4.6μmより大きいと、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量に対応し難い。厚みの調整方法としては、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜の際のポリマーの溶融押出時におけるスクリューの吐出量を調整し、口金から未延伸フィルムの厚みを制御することによって二軸延伸後のフィルム厚みを調節することが可能となる。
【0056】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合は、上記したB層側の表面(B面)側にバックコート層(以下BC層という)を設けることが高密度磁気記録媒体を得る上で好ましい。磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体はベースフィルムのみならず磁性層および非磁性下層やBC層自体の厚みも薄膜化の傾向にある。特に、BC層の厚みが0.4μm以下と薄膜化するとBC層表面が支持体に起因する突起の影響を受け易くなり、BC層表面の平滑性が低下する。B層表面の特定の高さの突起個数を本発明の範囲に規定することによって、より薄膜化したBC層であってもその表面の平滑性を損なうことなくミッシングパルスの発生頻度に優れた電磁変換特性を発揮できる。
【0057】
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
【0058】
まず、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
【0059】
本発明の特徴面を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
【0060】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向に同時二軸延伸した後、再度横方向に延伸し熱処理する。同時二軸延伸を実施することで本発明の高さ60nm以上の突起個数や突起高さを制御し易くなるために好ましい。
【0061】
延伸形式としては、同時二軸延伸した後にさらに幅方向に延伸する方法が好ましい。逐次二軸延伸法では、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する際に粒子部に延伸応力が集中しやすくなるため、突起高さが高くなりやすい。さらにボイドが形成されやすくなり、段階高温熱固定の際に破れを引き起こす場合がある。また、幅方向の配向が高くなりすぎることによって、温湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御することが困難となる場合がある。
【0062】
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。なお本発明はPETフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0063】
まず、PETのペレットを製造する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPETまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。
【0064】
フィルムを構成するPETに粒子を含有させるには、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水スラリーやアルコールスラリーの粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。ここで高さ60nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御するためには、粒子のスラリー濃度を5質量%以下にすることが重要である。添加する粒子が無機粒子の場合は、特定濃度に調整した粒子含有スラリーに平均粒径0.5~0.05mmのガラスビーズを加え1,000~5,000rpmで1~5時間攪拌することも非常に効果的である。
【0065】
次に、粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、粒子含有量が0.1~0.5質量%となるようにPETに練り込み粒子マスターペレットを作成することが特に重要である。粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で作成した特定濃度の粒子マスターペレットを製膜時に粒子を実質的に含有しないPETで希釈して粒子の含有量を調節する方法が好ましい。この際、特に実質的に粒子を含有しないPETペレットの配合割合が50質量%以下、好ましくは35質量%以下にすることが粒子の分散性が向上し、本発明の高さ60nm以上の突起個数を制御しやすくなる。また、高温熱固定によるフィルム破れの低減にも繋がるため特に重要である。さらに、2種類以上の粒子マスターペレットを用いる場合に、予め所定の所望の含有量になるように配合した後、再度、溶融混練した2段混練粒子マスターを用いて粒子の分散性を向上させると段階高温延伸を行う際のフィルム破れが低減するため好ましく例示される。
【0066】
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270~320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなる高精度フィルターを用いることが好ましい。また、定量供給性を向上させ、所望の積層厚みを得るためにギアポンプを設けることは上記した特徴面を形成する上で極めて好ましい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層するとよい。
【0067】
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを同時二軸延伸し、続いて再度幅方向に延伸する方法について説明する。
【0068】
なお、本発明において、MDとは二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(縦方向)を示し、TDとは二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向(横方向)を示す。
【0069】
まず、未延伸フィルムをMD、TD方向に同時二軸延伸する。延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安として決めることができる。Tg+20~Tg+50℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+20℃~Tg+30℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下し、同時二軸延伸後に再度幅方向に延伸する際に安定して延伸することが困難となることがある。同時二軸延伸時のMD延伸倍率は3~6倍、好ましくは3.1~5.0倍である。TD延伸倍率は3.3~6倍、好ましくは3.5~5倍である。
【0070】
次に、再度TD方向に延伸(TD延伸2)を行う。TD延伸2の延伸温度は180~220℃、好ましくは190~210℃である。TD延伸2の延伸倍率は好ましくは1.3~2倍であり、より好ましくは1.4~1.7倍である。TD延伸2の延伸倍率や延伸温度が本発明の範囲外であると温湿度膨張係数を本願の範囲内に制御できなくなる場合がある。またこの時、MD方向に1.05~1.3倍の範囲内で同時二軸延伸するとTD方向に再延伸した際にB面の表面突起がTD方向に連なりすぎることを抑制する効果がある。面積倍率は12~30倍、好ましくは14~25倍である。面積倍率が本願の範囲外であると温湿度膨張係数の両立が困難となる場合がある。面積倍率が30倍を超えると温湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御できなくなる場合や、高さ60nm以上の突起個数が多くなりすぎる場合がある。面積倍率が12倍を下回ると、本発明の温湿度膨張係数を得ることが困難となる傾向にある。
【0071】
次にこの二軸延伸フィルムを幅方向に弛緩しながら熱固定処理する。熱固定処理条件として、熱固定温度は、190~235℃が好ましく、さらに好ましくは200~230℃である。熱固定温度は2段階以上に分けて段階高温熱固定を施すことが本発明の温湿度膨張係数の両立と高さ60nm以上の突起個数制御、表面粗さ、およびフィルム破れの観点より好ましい。段階高温熱固定の条件は、1段目熱固定温度(HS1)は(TD延伸2の延伸温度+3℃)~(TD延伸2の延伸温度+20℃)が好ましく例示される。2段目熱固定温度(HS2)は、(HS1+5℃)~(HS1+15℃)の範囲が好ましい。3段目熱固定温度(HS3)は、(HS2)~(HS2+10℃)の範囲が好ましく、さらに好ましくは、(HS2+2℃)~(HS2+10℃)である。本発明の温湿度膨張係数および微少融解ピーク温度(T-meta)を得るためには、2段目の熱固定温度を215℃以上、好ましくは220~235℃に設定すると制御しやすくなり好ましい。
【0072】
熱固定処理時間は0.5~10秒の範囲、弛緩率は幅方向に0.8~2.0%で行うのが好ましい。次に130~180℃に調整された冷却ゾーンに導き徐冷した後、フィルムエッジ部を裁断してロールに巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0073】
TD延伸2の延伸温度と1段目熱固定温度に差があり、熱固定温度が上述の範囲よりも高いとフィルムが緩和しやすくなり、本発明の湿度膨張係数を得ることが困難となり寸法安定性が低下しやすい。さらに、表面平滑性が低下し本発明の表面粗さを得ることが困難となる場合がある。一方で熱固定温度が低すぎるとTD熱収縮率を本願の範囲内に制御できない場合や結晶性が低くなりやすく、磁気記録媒体の製造工程においてベースフィルムの平面性が低下しミッシングパルスの発生頻度が増加する傾向がある。
【0074】
次に、磁気記録媒体は例えば次のように製造される。
【0075】
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1~3m幅にスリットし、速度20~300m/min、張力50~300N/mで搬送しながら、一方の面に非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより厚み0.5~1.5μm塗布し乾燥後、さらに磁性塗料を厚み0.1~0.3μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80~130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面にバックコートを厚み0.3~0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(金属ロール、7段)を用い、温度70~120℃、線圧0.5~5kN/cmで行う。その後、60~80℃にて24~72時間エージング処理し、12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
【0076】
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
【0077】
以下、単に「部」と記載されている場合は、「質量部」を意味する。
【0078】
[磁性層形成塗液]
バリウムフェライト磁性粉末 100部
〔板径:20.5nm、板厚:7.6nm、板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)飽和磁化:44Am2/kg、BET比表面積:60m2/g〕
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α-アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
[非磁性層形成用塗布液]
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長 :0.09μm、BET法による比表面積 50m2/g
平均針状比 : 7
DBP吸油量: 27~38ml/100g
表面処理層 :Al2O3 8質量%
カーボンブラック 25部
コンダクテックスSC-U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体 MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1.0部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO7、LTO8、次世代LTOテープ(LTO9))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
【0079】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが好適に用いられる塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体としては、例えば、磁性層がバリウムフェライト等の強磁性粉末をポリウレタン樹脂等のバインダーに均一に分散させて磁性塗液を作成し、その塗液を塗布して磁性層が形成された塗布型磁気記録媒体を例示することができる。
【0080】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0081】
(1)幅方向の湿度膨張係数(ppm/%RH)
フィルムの幅方向に対して、下記装置を恒温恒湿槽内に設置し、以下の条件にて変形量の測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における幅方向の湿度膨張係数とした。
【0082】
測定装置 :大倉インダストリ(株)製 テープ伸び量試験機 1TTM1
恒温恒湿槽 :(株)カトー製 TP計装 Version 1.04
試料サイズ :幅 10mm × 長さ 200mm(サンプル長)
荷重 :10g
測定回数 :3回
温度 :30℃
湿度条件 :<1> 40%RHで6時間保持
<2> 80%RHで6時間保持(昇湿レート:0.7%RH/min)
<3> 40%RHに降湿(降湿レート:1.4%RH/min)後、6時間保持
<4> 80%RHに昇湿(昇湿レート:0.7%RH/min)
測定(L40):湿度条件<3>の湿度40%RH 6時間保持後のサンプル長を計測(L40)
測定(L80):湿度条件<4>の湿度40%RHから80%RHまで昇湿(昇湿レート:0.7%RH/min)させた時のサンプル長を計測(L80)。
【0083】
ΔL(mm):寸法変化量ΔL(L80-L40)
次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出した。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=106×{(ΔL/(測定前のサンプル長×湿度差)}
測定前のサンプル長=200(mm)
湿度差=40(%)
(2)幅方向の温度膨張係数(ppm/℃)
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて窒素雰囲気下で測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における温度膨張係数とした。
【0084】
測定装置 :真空理工(株)製 熱機械試験機
TM-9400(天秤部および加熱炉)
TMS-9000(マルチ熱分析ステーション)
試料サイズ :幅4mm×長さ15mm(サンプル長)
荷重 :5g
回数 :3回
温度 :25℃→50℃→20℃→50℃(昇温レート:1℃/min)
測定(L0):再昇温時の30℃でのサンプル長(L0 測定(L1):再昇温時の40℃でのサンプル長(L1)
ΔL(mm):寸法変化量ΔL(L1-L0)
次式から温度膨張係数を算出した。
【0085】
温度膨張係数(ppm/℃)=106×{(ΔL/(測定前のサンプル長×温度差)}
測定前のサンプル長=15(mm)
温度差=10(℃)
(3)高さ60nm以上の突起個数(個/mm2)
走査型白色干渉顕微鏡を用いて、場所を変えて100視野測定した。サンプルセットは、ステージのY軸方向がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをセットした。
【0086】
以下の測定条件にて測定する。得られた画像について、付属の解析ソフトを用い粒子解析し高さ閾値60nmを設定して各視野の高さ60nm以上の突起個数を求め、その総数を1mm2あたりに換算した値を高さ60nm以上の突起個数とした。
[測定条件]
・装置:日立ハイテクサイエンス製 走査型白色干渉顕微鏡 VS1540
・対物レンズ:50倍
・波長フィルター:530white
・測定モード :Wave
[変換処理条件]と
・補間 :完全補間
・フィルター :メジアン3×3
・面補正 :4次
(4)熱収縮率
JIS C2318(1997年)に従って測定した。サンプルサイズの長手方向がフィルムの幅方向となるように作成し、以下の条件測定し幅方向の熱収縮率を求めた。
【0087】
サンプルサイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件 :温度100℃、処理時間30分
荷重 :無荷重
熱収縮率(%)=[(L0-L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L :加熱処理後の標線間隔
(5)ヤング率
ASTM-D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定した。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
【0088】
測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
引張り速度:1mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回。
【0089】
(6)微少融解ピーク温度(T-meta)
JIS-K7121(1987年)に従って、示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)、Tmの少し低温側に現れる微小吸熱ピーク温度をT-metaとした。Tmのピーク面積から算出される熱量を融解熱量ΔHmとする。
【0090】
(7)表面粗さ(Sa1)、(Sa2)
フィルムの両面について、前記(3)に記載の装置を用いて、同条件にて場所を変えて100視野の測定を実施し、変換処理を施した後、付帯の解析ソフトにおいて各視野の面粗さ(Sa)を求めた。各面について100視野の平均値を求め、値が大きい方をSa1、小さい方をSa2とした。
【0091】
(8)積層厚み(μm)
以下の条件にて断面観察を場所を変えて10視野行い、得られた厚み(μm)の平均値を算出しA層の厚み(μm)とした。
【0092】
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H-7100FA型
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:1万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD-ZD断面(TD:幅方向、ZD:厚み方向)
測定回数:1視野につき3点、10視野を測定する。
【0093】
(9)スリット性
フィルムを幅1mにスリットする際、スリット速度を変更しフィルム端部の切れ味を目視にて以下に示す方法により評価した。なお、Cをスリット性不良と判断した。
【0094】
AA:速度70m/分でも端部が歪になることなくスリット可能。
【0095】
A:速度60m/分以上70m/分未満で端部に歪が発生する。
【0096】
B:速度50m/分以上60m/分未満で端部に歪が発生する。
【0097】
C:速度50m/分未満でフィルム表面にシワが発生し端部が歪になる。
【0098】
(10)ミッシングパルス発生頻度
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面に下記に従って磁性塗料および非磁性塗料を塗布し12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、磁気テープとした。
【0099】
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
(板径:20.5nm、板厚:7.6nm、
板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)
飽和磁化:44Am2/kg、BET比表面積:60m2/g)
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α-アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)
粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 85部
平均長軸長 : 0.09μm、BET法による比表面積 50m2/g
平均針状比 : 7
DBP吸油量: 27~38ml/100g
表面処理層 : Al2O3 8質量%
カーボンブラック 15部
“コンダクテックス”(登録商標)SC-U(コロンビアンカーボン社製)
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 22部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ-ダで混練した。0.5mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ-トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0100】
得られた非磁性層形成用塗布液を、PETフィルム上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.07μmになるように塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。その後、カレンダ後の厚みが0.35μmとなるようにバックコート層(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。次いでカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にてカレンダ処理を行った後、65℃で、72時間キュアリングした。さらに、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
【0101】
上記により得られた磁気テープカートリッジ(磁気テープ全長500m)をIBM社製LTO-7ドライブにセットし、磁気テープを張力0.55N、走行速度8m/秒で1,500往復走行させた。
【0102】
上記走行後の磁気テープカートリッジをリファレンスドライブ(IBM社製LTO7ドライブ)にセットし、磁気テープを走行させて記録再生を行った。走行中の再生信号を外部AD(Analog/Digital)変換装置に取り込み、再生信号振幅が平均(全トラックでの測定値の平均)に対して80%以上低下した信号をミッシングパルスとして、その発生頻度を磁気テープ全長で除して、磁気テープの単位長さ当たりのミッシングパルス発生頻度(単位:回/m)として求めた。ミッシングパルス発生頻度が2.5回/m以下のテープを信頼性の高い磁気テープとし、ミッシングパルス発生頻度が2.5回/mを超えて発生するテープを不良とし、以下の基準で判断した。
【0103】
AA:ミッシングパルス発生頻度が1.5回/m未満
A:ミッシングパルス発生頻度が1.5回/m以上、2.0回/m未満
B:ミッシングパルス発生頻度が2.0回/m以上、2.5回/m未満
C:ミッシングパルス発生頻度が2.5回/m以上。
【0104】
(11)磁気テープの環境変化安定性
上記(10)にて作成した磁気テープを恒温恒湿槽内に設置したフィルム寸法測定装置(
図1)にセットし、荷重を50gとし、下記の温湿度条件でテープの幅を測定した。
【0105】
・温湿度条件<1> : 10℃ 10%RH
<2> : 10℃ 80%RH
<3> : 29℃ 80%RH
<4> : 45℃ 24%RH
<5> : 45℃ 10%RH
寸法測定は、<1>→<2>→<3>→<4>→<5>の順に行い、それぞれの温湿度に達してから2時間放置した後にテープの幅を測定した(それぞれのテープ幅をL<1>、L<2>、L<3>、L<4>、L<5>とする)。
【0106】
各条件間のテープ幅変化を求め、さらに磁気ヘッドの温度膨張(7ppm/℃)を考慮した補正(7ppm/℃×各条件間の温度差を差し引く)を行い、下記式の通り条件間のテープ幅変化を求めた。
【0107】
変化量(1) ΔL<3>-L<1> = |L<3>-L<1>-(7×19)|
変化量(2) ΔL<5>-L<2> = |L<5>-L<2>-(7×35)|
上記、変化量(1)(2)のうち大きい変化量をテープ幅(12.65mm)で割り、ppm単位に換算したものを温湿度環境変化におけるテープ幅変化(ppm)とし、以下の基準で判断した。
【0108】
A:500ppm未満
B:500ppm以上800ppm未満
C:800ppm以上
【実施例】
【0109】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートをPEN、ポリエーテルイミドをPEIと表記する。
【0110】
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140~230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
【0111】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0112】
移行後、反応系を230℃から275℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料-1)。
【0113】
(2-a)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2a)を得た。
【0114】
(2-b)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2b)を得た。
【0115】
(2-c)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.15μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2c)を得た。
【0116】
(2-d)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.17μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2d)を得た。
【0117】
(2-e)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を94質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の5質量%水スラリーに平均粒径0.05mmのガラスビーズを加え1,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しガラスビーズを除去した水スラリーを6質量部(コロイダルシリカ粒子として0.3質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.3質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2e)を得た。
【0118】
(2-f)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子の5質量%水スラリーに平均粒径0.05mmのガラスビーズを加え3,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しガラスビーズを除去した水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2f)を得た。
【0119】
(2-g)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と1次平均粒径0.02μmのアルミナ粒子の10質量%水スラリーに平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを加え3,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しジルコニアビーズを除去した水スラリーを10質量部(アルミナ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、アルミナ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2g)を得た。
【0120】
(3)2成分組成物(PET/PEI)ペレットの作製:温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレット(原料-1)とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem”(登録商標)1010のペレットを供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有した2成分組成物ペレットを得た。なお、作製した2成分組成物ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料-3)。
【0121】
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、PETペレット(原料-1)を29質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2c)67質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、PETペレット(原料-1)28質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2e)64質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料-2a)4質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=8|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0122】
この積層未延伸フィルムを同時二軸延伸機にて100℃で長手方向(MD方向)に3.3倍延伸(MD延伸1)、幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて200℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に1.1倍(MD延伸2)、幅方向に1.5倍同時に延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで熱処理温度を段階的に上げながら、1段目を温度212℃で2秒間、2段目を温度222℃で5秒間、さらに3段目224℃で3秒間熱処理を行い、150℃の温度で1.7%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表4に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
【0123】
以下、表に各実施例、比較例の原料組成、製膜条件、二軸配向ポリエステルフィルムの物性、磁気テープの特性等を示す。
【0124】
(実施例2~4)
表に示す粒子処方となるように、B層原料および延伸条件を変更して厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
【0125】
(実施例5)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、PETペレット(原料-1)を29質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2c)67質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、PETペレット(原料-1)20質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)12質量部、平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2e)64質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料-2a)4質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=8|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0126】
この積層未延伸フィルムを同時二軸延伸機にて100℃で長手方向(MD方向)に3.1倍延伸(MD延伸1)、幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて200℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に1.1倍(MD延伸2)、幅方向に1.6倍同時に延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで熱処理温度を段階的に上げながら、1段目を温度212℃で2秒間、2段目を温度222℃で5秒間、さらに3段目224℃で3秒間熱処理を行い、150℃の温度で1.7%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表4に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
【0127】
(比較例1)
表に示すとおり、延伸条件を変更して厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0128】
(比較例2)
表に示す粒子処方となる原料を用いて、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=4|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0129】
この積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて90℃で3段階で長手方向に3.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用し1段目に2.5倍、2段目1.34倍、3段目1.05倍で行った。
【0130】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて195℃の温度の加熱ゾーンで幅方向に1.4倍延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに150℃の温度で0.5%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
(比較例3)
表に示す粒子処方となるように原料および延伸条件、熱固定温度を変更して、厚さ4.4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
(比較例4)
表に示すとおり、熱固定温度を変更した以外は実施例2と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0133】
(比較例5)
表に示す通り、熱固定温度を変更した以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0134】
(比較例6)
表に示す通り、延伸条件、熱固定温度を変更した以外は実施例4と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【符号の説明】
【0139】
1:レーザー発信器
2:受光部
3:荷重検出器
4:荷重
5~8:フリーロール
9:磁気テープ
10:レーザー光