(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ガラスダイレクトロービングの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/12 20060101AFI20241106BHJP
B65H 54/08 20060101ALI20241106BHJP
B65H 54/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C03B37/12 Z
B65H54/08
B65H54/02 C
(21)【出願番号】P 2020165166
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】國友 晃
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-040640(JP,A)
【文献】特開2003-212590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00-54/533
C03B 37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスストランドを、綾を掛けながら円筒状に巻き取る巻き取り工程を備えるガラスダイレクトロービングの製造方法であって、
前記巻き取り工程において、
綾掛けの回帰数が10以上であり、
前記回帰数を「A」、前記回帰数の1/2以下の最大の整数を「(A/2)
*」とし、綾掛けのサイクルワインド数を帯分数「a+(b/A)」で表したとき、
「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータが
「(A/2)
*
-2」又は「(A/2)
*
-1」になる条件で綾を掛けながら前記ガラスストランドを巻き取ることを特徴とするガラスダイレクトロービングの製造方法。
【請求項2】
前記間隔パラメータが「(A/2)
*-1」になる条件で綾を掛けながら前記ガラスストランドを巻き取る請求項1に記載のガラスダイレクトロービングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスダイレクトロービングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、直接巻き取り法により製造されるガラスダイレクトロービング(DWR:Direct Wound Roving)は、例えば、引抜成形やフィラメントワインディング法などの成形法において、樹脂と補強材とを組み合わせた複合材料の補強繊維として使用される。
【0003】
一般に、ガラスダイレクトロービングは、次のようにして製造される。まず、数百~数千のノズルを有する白金製ブッシングより引き出された溶融ガラスを、数ミクロンから二十数ミクロンのガラスフィラメントに引き伸ばす。その後、それぞれのガラスフィラメントの表面に集束剤を塗布した後、ガラスフィラメントを数百~数千本引き揃え、ガラスストランドとし、回転するコレットに綾を掛けながら円筒状に巻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガラスダイレクトロービングは、解舒して引き出す際に、端面に位置するガラスストランドの折り返し点において引っ掛かりが生じる場合があった。
本発明の目的は、端面におけるガラスダイレクトロービングの解舒性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラスダイレクトロービングの製造方法は、ガラスストランドを、綾を掛けながら円筒状に巻き取る巻き取り工程を備えるガラスダイレクトロービングの製造方法であって、前記巻き取り工程において、綾掛けの回帰数が10以上であり、前記回帰数を「A」、前記回帰数の1/2以下の最大の整数を「(A/2)*」、前記回帰数の1/4以下の最大の整数を「(A/4)*」とし、綾掛けのサイクルワインド数を帯分数「a+(b/A)」で表したとき、「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータが「(A/2)*-(A/4)*」以上「(A/2)*-1」以下になる条件で綾を掛けながら前記ガラスストランドを巻き取る。
【0007】
上記構成によれば、ガラスダイレクトロービングの端面におけるガラスストランドの折り返し点間の距離が長くなる。これにより、ガラスダイレクトロービングを解舒して引き出す際に、ガラスストランドの折り返し点同士の干渉が抑制されて、端面におけるガラスダイレクトロービングの解舒性が向上する。
【0008】
上記ガラスダイレクトロービングの製造方法において、前記間隔パラメータが「(A/2)*-1」になる条件で綾を掛けながら前記ガラスストランドを巻き取ることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、端面におけるガラスダイレクトロービングの解舒性を向上させる効果がより顕著に得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端面におけるガラスダイレクトロービングの解舒性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】1回の往復移動による折り返し点の周方向位置の変位を示す説明図。
【
図4】往復移動ごとの折り返し点の周方向位置の変位を示す説明図。
【
図5】第1例における往復移動ごとの折り返し点の周方向位置の変位を示す説明図。
【
図6】第2例における往復移動ごとの折り返し点の周方向位置の変位を示す説明図。
【
図7】第3例における往復移動ごとの折り返し点の周方向位置の変位を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、ガラスダイレクトロービング10は、ガラスストランドGSを巻き取ることで円筒状に形成されている。ガラスダイレクトロービング10の巻き取り形状は、例えば、スクエアエンドチーズ形状(円筒状)である。また、以下では、ガラスダイレクトロービング10の軸方向長さを巻き幅Hと記載する。
【0013】
ガラスダイレクトロービング10は、溶融ガラスからガラスストランドGSを得る紡糸工程、及びガラスストランドGSを巻き取る巻き取り工程とを備えている。
紡糸工程としては、ブッシングを用いて溶融ガラスを紡糸する周知の方法を用いることができる。例えば、複数のノズルを有するブッシングより引き出された溶融ガラスをガラスフィラメントに引き伸ばす。その後、それぞれのガラスフィラメントの表面に集束剤を塗布した後、ガラスフィラメントを数百~数千本引き揃えてガラスストランドGSとする。
【0014】
ガラスストランドGSの直径は、例えば、1mm以上10mm以下である。ガラスストランドGSは、例えば、100~10000本のガラスフィラメントから構成される。ガラスストランドGSを形成するガラスフィラメントの直径は、例えば、3μm以上30μm以下である。
【0015】
ガラスとしては、例えば、Eガラス(アルカリ含有量2%以下のガラス)、Dガラス(低誘電率ガラス)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス)、Cガラス(耐酸性のガラス)、Mガラス(高弾性率のガラス)、Sガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Tガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Hガラス(高誘電率のガラス)、NEガラス(低誘電率ガラス)等が挙げられる。例えば、Eガラスの組成は、酸化物基準の質量%で、SiO2:52~62%、Al2O3:10~16%、B2O3:0~8%、MgO:0~5%、CaO:16~25%、及びR2O(但し、Rは、Li、Na及びKのうちの少なくとも1つ):0~2%であることが好ましい。
【0016】
集束剤中の被膜成分(樹脂成分)としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。集束剤には、必要に応じて、潤滑剤、シランカップリング剤等を含有させることもできる。
【0017】
図2に示すように、巻き取り工程では、回転する円筒状のコレット11に対して、トラバース12を用いて綾を掛けながらガラスストランドGSを巻き取ることにより、ガラスダイレクトロービング10を製造する。トラバース12としては、例えば、ワイヤートラバース、モータの回転力を往復直線運動に変換するカム機構を用いたトラバースなどの公知のものが用いられる。
【0018】
巻き取り工程では、下記の第1条件及び第2条件を満たす回帰数及びサイクルワインド数となるように綾掛けを行う。まず、綾掛けの回帰数及びサイクルワインド数について説明する。
【0019】
回帰数は、巻き取り軸線Xの軸線方向へのガラスストランドGSの往復移動分の移動、すなわち、ガラスダイレクトロービング10の巻き幅Hの2回分の移動を1単位として、ガラスストランドGSの巻き取り軸線X周りの周方向位置が同じ位置に戻るまでの移動回数を示す値である。
【0020】
例えば、回帰数が「10」である場合、軸線方向へのガラスストランドGSの往復移動を10回繰り返すことにより、ガラスストランドGSの巻き取り軸線X周りの周方向の位置が同じ位置に戻る。
【0021】
ガラスダイレクトロービング10の端面を含む、巻き取り軸線Xに直交する同一平面上においては、ガラスストランドGSは、巻き取り軸線X周りに等間隔に並ぶ回帰数と同数の周方向位置のいずれかに位置し、その位置は、巻き取りが進むにしたがって徐々に半径方向外方へ移動していく。ガラスダイレクトロービング10の両端面におけるガラスストランドGSの位置は、ガラスストランドGSの折り返し点の位置になる。
【0022】
サイクルワインド数は、ガラスストランドGSが往復移動する間のガラスストランドGSの巻き数である。換言すると、ガラスダイレクトロービング10の巻き幅HをガラスストランドGSが移動する間のコレット11の回転数の2倍の値である。
【0023】
また、サイクルワインド数は、整列本数と回帰数とから求めることもできる。整列本数は、ガラスストランドGSの巻き取りの開始点から、ガラスストランドGSの周方向位置が開始点の周方向位置に最初に戻るまでの間に、ガラスストランドGSがコレット11の周りを回転する回数である。整列本数を回帰数で除算することにより、ガラスストランドGSが往復移動する間のガラスストランドGSの巻き数であるサイクルワインド数が得られる。
【0024】
次に、第1条件及び第2条件について説明する。
第1条件は、回帰数を10以上とすることである。回帰数は、好ましくは11以上60以下であり、より好ましくは13以上30以下である。
【0025】
第2条件は、回帰数を「A」とし、サイクルワインド数を帯分数「a+(b/A)」で表したとき、「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータを特定範囲R内とすることである。上記特定範囲Rは、回帰数の1/2以下の最大の整数を「(A/2)*」、回帰数の1/4以下の最大の整数を「(A/4)*」としたとき、「(A/2)*-(A/4)*」以上「(A/2)*-1」以下の範囲である。
【0026】
回帰数の1/2以下の最大の整数は、回帰数の1/2の数値の小数点以下を切り捨てた数値に等しい。回帰数の1/4以下の最大の整数は、回帰数の1/4の数値の小数点以下を切り捨てた数値に等しい。例えば、回帰数が「13」である場合、(A/2)*は、6(=13/2=6.5→6)であり、(A/4)*は、3(=13/4=3.25→3)である。
【0027】
図3及び
図4は、ガラスダイレクトロービング10の片側の端面における、往復移動ごとのガラスストランドGSの折り返し点の周方向位置Pの変位を矢印Yで示す説明図である。
図3は、1回の往復移動による折り返し点の変位を示し、
図4は、折り返し点が最初の周方向位置Pに戻るまでの往復移動ごとの折り返し点の変位を示す。
【0028】
図3に示すように、ガラスダイレクトロービング10の片側の端面において、ガラスストランドGSの折り返し点が取り得る周方向位置Pの数は、回帰数と同数であり、各周方向位置Pはそれぞれ、360°を回帰数で除した値である角度間隔θで周方向に並ぶ。
図3及び
図4は、回帰数13の場合を図示している。この場合、周方向位置Pの数は、13であり、各周方向位置Pの角度間隔θは、約28°(≒360/13)になる。
【0029】
図3に示すように、サイクルワインド数を帯分数で表したときの上記の「b」及び「A-b」はそれぞれ、ガラスストランドGSを1回、往復移動させた場合に、往復移動前の折り返し点の周方向位置P(P1)と、往復移動後の折り返し点の周方向位置P(P2)との間の周方向間隔を示すパラメータである。
【0030】
具体的には、往復移動前の折り返し点の周方向位置P(P1)と、往復移動後の折り返し点の周方向位置P(P2)との間の左回りの周方向間隔が、角度間隔θの「b」倍の角度と、巻き取り軸線Xと周方向位置Pとの間の距離から求められ、同右回りの周方向間隔が、角度間隔θの「A-b」倍の角度と、巻き取り軸線Xと周方向位置Pとの間の距離から求められる。したがって、1回の往復移動後のガラスストランドGSの折り返し点の周方向位置P(P2)は、往復移動前の折り返し点の周方向位置P(P1)から左回りに角度間隔θの「b」倍の角度ずれた周方向位置P、及び右回りに角度間隔θの「A-b」倍の角度ずれた周方向位置Pになる。
【0031】
次に、「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータが、「(A/2)*-(A/4)*」以上「(A/2)*-1」以下の特定範囲R内である点について説明する。
【0032】
間隔パラメータが特定範囲R内であることは、1回の往復移動後のガラスストランドGSの折り返し点の周方向位置P(P2)が、当該端面において折り返し点が取り得る周方向位置Pのうち、往復移動前の折り返し点の周方向位置P(P1)から最も離れた周方向位置P(P3)の近傍にあることを意味する。
【0033】
特定範囲Rは、(a)周方向位置P(P1)から最も離れた周方向位置P(P3)から、角度間隔θの1倍の角度分だけ周方向位置P(P1)に近づいた周方向位置P(P4)と、(b)上記(a)において指定された周方向位置P(P3)から、角度間隔θの(A/4)
*倍の角度分だけ周方向位置P(P1)に近づいた周方向位置のうち、より周方向位置P(P1)に近い周方向位置P(P5)、との間となるような範囲である。なお、
図3のように、周方向位置Pの数が奇数である場合、周方向位置P(P1)から最も離れた周方向位置P(P3)は2か所存在することになる。
図3では、2か所の周方向位置P(P3)をそれぞれP31(P3)、P32(P3)として示している。
【0034】
間隔パラメータは、回帰数が10以上17以下である場合には、「(A/2)*-2」又は「(A/2)*-1」であることが好ましく、「(A/2)*-1」であることがより好ましい。また、間隔パラメータは、回帰数が18以上である場合には、「(A/2)*-3」以上「(A/2)*-1」以下であることが好ましく、「(A/2)*-2」又は「(A/2)*-1」であることがより好ましく、「(A/2)*-1」であることが更に好ましい。
【0035】
第1例として、回帰数が「13」であり、サイクルワインド数が「10.38」であるとする。この場合の往復移動ごとのガラスストランドGSの折り返し点の周方向位置Pの変位を
図4及び
図5に示す。第1例のサイクルワインド数の帯分数は、「10+(5/13)」である。したがって、「b=5」、「A-b=8」となり、間隔パラメータは、「5」となる。また、「(A/2)
*-(A/4)
*」以上「(A/2)
*-1」以下の特定範囲Rは、「3(=6-3)」以上「5(=6-1)」以下となる。第1例は、回帰数が10以上である第1条件、及び間隔パラメータが特定範囲R内である第2条件を同時に満たす。
【0036】
第2例として、回帰数が「13」であり、サイクルワインド数が「10.70」であるとする。この場合の往復移動ごとのガラスストランドGSの周方向位置Pの変位を
図6に示す。第2例のサイクルワインド数の帯分数は、「10+(9/13)」である。したがって、「b=9」、「A-b=4」となり、間隔パラメータは、「4」となる。特定範囲Rは、第1例と同様に「3」以上「5」以下となる。第2例は、回帰数が10以上である第1条件、及び間隔パラメータが特定範囲R内である第2条件を同時に満たす。
【0037】
第3例として、回帰数が「13」であり、サイクルワインド数が「10.16」であるとする。この場合の往復移動ごとのガラスストランドGSの周方向位置Pの変位を
図7に示す。第3例のサイクルワインド数の帯分数は、「10+(2/13)」である。したがって、「b=2」、「A-b=11」となり、間隔パラメータは、「2」となる。特定範囲Rは、第1例と同様に「3」以上「5」以下となる。第3例は、回帰数が10以上である第1条件を満たし、間隔パラメータが特定範囲R内である第2条件を満たさない。
【0038】
このように、回帰数が同じであっても、サイクルワインド数に関する第2条件を満たす巻き方と、満たさない巻き方が存在する。本実施形態の巻き取り工程では、上記の第1条件及び第2条件を同時に満たす回帰数及びサイクルワインド数となるように綾掛けを行っている。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のガラスダイレクトロービング10の製造方法は、回転するコレット11に綾を掛けながらガラスストランドGSを円筒状に巻き取る巻き取り工程において、上記の第1条件及び第2条件を同時に満たす回帰数及びサイクルワインド数となるように綾掛けを行っている。
【0040】
間隔パラメータが「(A/2)*-(A/4)*」以上であることにより、ガラスダイレクトロービング10の片側の端面に形成されるガラスストランドGSの折り返し点のうち、連続して形成される二つ折り返し点の間の周方向の距離、すなわち、1回の往復移動の前後の折り返し点の間の周方向の距離が長くなる。
【0041】
間隔パラメータが「(A/2)*-1」以下であることにより、ガラスダイレクトロービング10の片側の端面に形成されるガラスストランドGSの折り返し点のうち、周方向に隣り合う二つ折り返し点の間の半径方向における距離が長くなる。
【0042】
例えば、
図5において5本の矢印Yで示すように、第1例では、最初の折り返し点の周方向位置P(P1)から、その隣の周方向位置P(P6)のいずれか一方に至るまでに、ガラスストランドGSが5回、往復移動する。この場合、周方向位置P(P1)に位置する折り返し点と、その隣の周方向位置P(P6)に位置する折り返し点とは、ガラスストランドGSの5回の往復移動分、半径方向に離れることになる。
【0043】
間隔パラメータが「(A/2)*-1」以下である場合、ガラスストランドGSの折り返し点が隣の周方向位置に至るまでの往復移動の回数が3回以上になる。そのため、周方向に隣り合う二つ折り返し点の間の半径方向における距離を、3回の往復移動分以上に離すことができる。
【0044】
このように、ガラスダイレクトロービング10の端面におけるガラスストランドGSの折り返し点間の周方向の距離及び半径方向の距離が長くなることにより、ガラスダイレクトロービング10を解舒して引き出す際に、ガラスストランドGSの折り返し点同士が干渉することが抑制される。その結果、端面におけるガラスダイレクトロービング10の解舒性が向上する。
【0045】
実際に、下記条件で、第1例~第3例の回帰数及びサイクルワインド数となるように綾掛けする巻き取り工程を行うことにより製造したガラスダイレクトロービングについて、解舒性の評価試験を行った。評価試験としては、床から高さ1mの台の上に、軸方向が水平となるようにガラスダイレクトロービングを置いた状態としてガラスストランドを自由落下させる試験を5回行った。そして、10往復分のガラスストランドが落下するまでの間に、折り返し点の引っ掛かりによってガラスストランドの落下が停止した回数をカウントした。その結果を表1に示す。
【0046】
ガラスダイレクトロービングの巻き幅:325mm
ガラスダイレクトロービングの内径(コレットの外径):150mm
ガラスダイレクトロービングの番手:2400TEX
【0047】
【表1】
表1に示すように、上記の第1条件及び第2条件を同時に満たさない第3例と比較して、第1条件及び第2条件を同時に満たす第1例及び第2例は、落下試験における停止回数が減少した。特に、間隔パラメータが「(A/2)
*-1」である第1例は、落下試験における停止回数が「0」であり、端面における解舒性が顕著に高い結果であった。
【0048】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)ガラスダイレクトロービング10の製造方法は、ガラスストランドGSを、綾を掛けながら円筒状に巻き取る巻き取り工程を備えている。巻き取り工程において、綾掛けの回帰数が10以上であり、回帰数を「A」、回帰数の1/2以下の最大の整数を「(A/2)*」、回帰数の1/4以下の最大の整数を「(A/4)*」とし、綾掛けのサイクルワインド数を帯分数「a+(b/A)」で表したとき、「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータが「(A/2)*-(A/4)*」以上「(A/2)*-1」以下になる条件で綾を掛けながらガラスストランドGSを巻き取る。
【0049】
上記構成によれば、ガラスダイレクトロービング10の端面におけるガラスストランドGSの折り返し点間の距離が長くなる。これにより、ガラスダイレクトロービング10を解舒して引き出す際に、ガラスストランドGSの折り返し点同士の干渉が抑制されて、端面におけるガラスダイレクトロービング10の解舒性が向上する。
【0050】
(2)間隔パラメータが「(A/2)*-1」になる条件で綾を掛けながらガラスストランドGSを巻き取ることが好ましい。
上記構成によれば、端面におけるガラスダイレクトロービング10の解舒性を向上させる効果がより顕著に得られる。
【0051】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)ガラスストランドが綾を掛けながら円筒状に巻き取られてなるガラスダイレクトロービングであって、綾掛けの回帰数が10以上であり、前記回帰数を「A」、前記回帰数の1/2以下の最大の整数を「(A/2)*」、前記回帰数の1/4以下の最大の整数を「(A/4)*」とし、綾掛けのサイクルワインド数を帯分数「a+(b/A)」で表したとき、「b」及び「A-b」のうちの小さい方の値である間隔パラメータが「(A/2)*-(A/4)*」以上「(A/2)*-1」以下であることを特徴とするガラスダイレクトロービング。
【0052】
(ロ)前記間隔パラメータが「(A/2)*-1」である前記ガラスダイレクトロービング。
(ハ)巻き取り形状がスクエアエンドチーズである前記ガラスダイレクトロービングの製造方法又は前記ガラスダイレクトロービング。
【符号の説明】
【0053】
GS…ガラスストランド
10…ガラスダイレクトロービング