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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】画像補正装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/32 20170101AFI20241106BHJP
   H04N 23/15 20230101ALI20241106BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241106BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20241106BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20241106BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
G06T7/32
H04N23/15
G01N21/27 A
G01J3/36
G01J3/02 C
H04N23/60 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020172103
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063719
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】門田 啓
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-151784(JP,A)
【文献】特開2016-110320(JP,A)
【文献】特開2018-061262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0088277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/32
H04N 23/60
G01N 21/27
G01J 3/36
G01J 3/02
H04N 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得するバンド画像取得手段と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する位置差取得手段と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係と前記対象画素と前記対応画素との重なる面積とに基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する補正バンド画像作成手段と、
前記補正バンド画像を出力する補正バンド画像出力手段と、
を備える画像補正装置。
【請求項2】
前記補正バンド画像作成手段は、
前記対象画素毎に、前記複数の対応画素の間の画素値の関係と前記対象画素と前記対応画素との重なる面積とに基づいて前記対象画素の画素値から前記複数の対応画素の位置それぞれに配分する前記対象バンド画像に係る光の画素値を決定し、前記基準バンド画像の画素位置毎に、前記基準バンド画像の画素と重なる前記対象バンド画像の複数の画素から配分された前記対象バンド画像に係る光の画素値の総和を算出する、
請求項1に記載の画像補正装置。
【請求項3】
前記補正バンド画像作成手段は、前記画素値の関係として、画素値の比を用いる、
請求項1または2に記載の画像補正装置。
【請求項4】
前記補正バンド画像作成手段は、前記基準バンド画像の各画素値を、前記基準バンド画像の最小の画素値を用いて正規化する、
請求項3に記載の画像補正装置。
【請求項5】
前記補正バンド画像作成手段は、前記画素値の関係として、画素値の差を用いる、
請求項1または2に記載の画像補正装置。
【請求項6】
前記補正バンド画像作成手段は、前記基準バンド画像の各画素値を、前記基準バンド画像の画素値の標準偏差および前記対象バンド画像の画素値の標準偏差を用いて正規化する、
請求項5に記載の画像補正装置。
【請求項7】
前記位置差取得手段は、前記基準バンド画像と前記対象バンド画像を複数の小領域に分割し、前記小領域毎に、前記対象バンド画像の小領域が前記基準バンド画像の小領域に最も一致するシフト量を、前記対象バンド画像の小領域の全画素の前記位置差として算出する、
請求項1乃至6の何れかに記載の画像補正装置。
【請求項8】
前記位置差取得手段は、前記基準バンド画像と前記対象バンド画像を複数の小領域に分割し、前記小領域毎に、前記対象バンド画像の小領域が前記基準バンド画像の小領域に最も一致するシフト量を、前記対象バンド画像の小領域の中心位置の画素の前記位置差として算出し、前記中心位置の画素の位置差から補間処理によって中心位置の画素以外の画素の前記位置差を算出する、
請求項1乃至6の何れかに記載の画像補正装置。
【請求項9】
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得し、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得し、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係と前記対象画素と前記対応画素との重なる面積とに基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成し、
前記補正バンド画像を出力する、
画像補正方法。
【請求項10】
コンピュータに、
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得する処理と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する処理と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係と前記対象画素と前記対応画素との重なる面積とに基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する処理と、
前記補正バンド画像を出力する処理と、
を行わせるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像補正装置、画像補正方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や衛星から地表面の画像を取得する装置として、プッシュブルーム方式の画像取得装置が多く採用されている。この種の装置においては、画像センサに1次元アレイセンサを使用することにより、X軸方向に延びるライン状の画像を取得するように構成されている。そして、航空機や衛星の移動により画像取得装置全体をライン状の取得画像に対して垂直方向(Y軸方向)に並進させることにより、2次元の画像を形成するように構成されている。また、この種の画像取得装置を使用して複数の波長帯の画像を取得する場合には、複数の1次元アレイセンサのそれぞれに、透過させる光の波長帯域であるバンドが互いに異なる複数のフィルタを装着して被写体を撮像するように構成されている。個々の波長帯の画像はバンド画像と呼ばれる。
【0003】
また、この種の画像取得装置において生じる色ずれを、位置ずれ量に応じたバンド画像のシフトと線形補間法などの通常の補間処理との組み合わせにより低減する技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6305328号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学系の特性などにより歪曲収差が生じると、バンド間に位相差が生じ、位相差による色ずれが生じる。ここでいう位相差による色ずれとは、例えばRGB(赤・緑・青)等の複数のバンドで同じ被写体を撮像する場合に、被写体の同じ個所が各バンドの画素内のどこにくるかが異なることにより被写体とは異なる色が生じることをいう。このような位相差による色ずれは、色ずれの補正時に位置ずれ量に応じたバンド画像のシフトと線形補間法などの通常の補間処理の組み合わせによっては、低減するのは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題、すなわち、バンド画像のシフトと線形補間法等の通常の補間処理の組み合わせでは、位相差による色ずれを低減するのは困難である、という課題を解決する画像補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る画像補正装置は、
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得するバンド画像取得手段と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する位置差取得手段と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する補正バンド画像作成手段と、
前記補正バンド画像を出力する補正バンド画像出力手段と、
を備えるように構成されている。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る画像補正方法は、
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得し、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得し、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成し、
前記補正バンド画像を出力する、
ように構成されている。
【0009】
また、本発明の他の形態に係るプログラムは、
コンピュータに、
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得する処理と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する処理と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する処理と、
前記補正バンド画像を出力する処理と、
を行わせるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上述したような構成を有することにより、位相差による色ずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置のブロック図である。
図2】プッシュブルーム方式の画像取得装置において被写体の同じ個所が各バンドの画素内の異なる場所に写像される現象を説明するための模式図である。
図3】対象バンド画像の画素の位置差を説明する図である。
図4】Rバンド画像の位置差情報の構成例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差取得部の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差情報作成部の処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差情報作成部が基準バンドおよび対象バンドの各画像を小領域に分割する例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差情報作成部の処理の他の例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差情報作成部が基準バンドおよび対象バンドの各画像を小領域間に隙間ができるように分割する例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における位置差取得部の他の例を示すブロック図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置における補正マルチバンド画像作成部の処理の一例を示すフローチャートである。
図13】対象バンド画像の画素(対象画素)と基準バンド画像の画素(対応画素)との重なりの状態を示す模式図である。
図14A】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置において使用する数式を示す図である。
図14B】本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置において使用する数式を示す図である。
図15】被写体である矩形の白板を示す図である。
図16】白板を撮像したGバンド画像の各画素の画素値の例を示す図である。
図17】白板を撮像したRバンド画像の各画素の画素値の例を示す図である。
図18】Rバンドの画素を位置差(0.5,0.5)だけシフトしたときのRバンド画像とGバンド画像の重なり状態の例を示す図である。
図19】補正Rバンド画像の各画素の画素値の例を示す図である。
図20】画素値の関係として画素値の比を用いるように構成された補正マルチバンド画像作成部の処理の他の一例を示すフローチャートである。
図21】画素値の関係として画素値の差を用いるように構成された補正マルチバンド画像作成部の処理の他の一例を示すフローチャートである。
図22】本発明の第2の実施形態に係る画像補正装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る画像補正装置10は、複数の1次元アレイセンサ11と、通信インターフェース(I/F)部12と、操作入力部13と、画面表示部14と、記憶部15と、演算処理部16とから構成されている。
【0013】
複数の1次元アレイセンサ11は、例えば1次元CCD(Charge-Coupled Device)センサや1次元CMOS(Complementary MOS)センサ等からなり、被写体18を撮像するプッシュブルーム方式の画像取得装置を構成している。複数の1次元アレイセンサ11には、透過させる光の波長帯域であるバンドが互いに異なる複数のフィルタ19が取り付けられている。使用する1次元アレイセンサ11とフィルタ19の組み合わせおよび組数によって取得するバンド画像の数、波長帯が決定される。例えば、高分解能光学衛星であるASNARO-1に搭載されたマルチバンドセンサでは以下の6バンドの画像が取得される。
バンド1:波長帯域400-450nm(Ocean Blue)
バンド2:波長帯域450-520nm(Blue)
バンド3:波長帯域520-600nm(Green)
バンド4:波長帯域630-690nm(Red)
バンド5:波長帯域705-745nm(Red Edge)
バンド6:波長帯域760-860nm(NIR)
【0014】
通信I/F部12は、例えば、専用のデータ通信回路から構成され、有線または無線を介して接続された各種装置との間でデータ通信を行うように構成されている。操作入力部13は、キーボードやマウスなどの操作入力装置から構成され、操作者の操作を検出して演算処理部16に出力するように構成されている。画面表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)などの画面表示装置から構成され、演算処理部16からの指示に応じて、補正バンド画像などを画面表示するように構成されている。
【0015】
記憶部15は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置から構成され、演算処理部16における各種処理に必要な処理情報およびプログラム151を記憶するように構成されている。プログラム151は、演算処理部16に読み込まれて実行されることにより各種処理部を実現するプログラムである。プログラム151は、通信I/F部12などのデータ入出力機能を介して外部装置(図示せず)や記憶媒体(図示せず)から予め読み込まれて記憶部15に保存される。
【0016】
記憶部15に記憶される主な処理情報には、マルチバンド画像152、位置差情報153、および、補正マルチバンド画像154がある。
【0017】
マルチバンド画像152は、プッシュブルーム方式の画像取得装置によって取得された複数のバンド画像のセットである。マルチバンド画像152は、プッシュブルーム方式の画像取得装置によって取得された全てのバンド画像のセットであってもよいし、一部のバンド画像のセットであってもよい。本実施形態では、マルチバンド画像152は、Rバンド画像152-1とGバンド画像152-2とBバンド画像152-3の3バンドで構成されているものとする。例えば、上述したASNARO-1の場合、Rバンド画像152-1としてバンド4、Gバンド画像152-2としてバンド3、Bバンド画像152-3としてバンド2を、それぞれ割り当ててよい。
【0018】
位置差情報153は、マルチバンド画像152を構成する複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像、残りを対象バンド画像とするとき、基準バンド画像と対象バンド画像との間の位置差に関する情報である。本実施形態では、Gバンド画像152-2を基準バンド画像とし、Rバンド画像152-1およびBバンド画像152-3をそれぞれ対象バンド画像とする。そのため、位置差情報153は、Gバンド画像152-2に対するRバンド画像152-1の位置差を記録する位置差情報153-1と、Gバンド画像152-2に対するBバンド画像152-3の位置差を記録する位置差情報153-2とから構成されている。
【0019】
プッシュブルーム方式の画像取得装置における光学系の特性などにより歪曲収差が生じると、被写体18を撮像したときに被写体18の同じ個所が各バンドの画素内の異なる場所に写像される現象が発生する。図2はそのような現象を説明するための模式図である。図2において、実線の矩形は基準バンド画像の画素(x,y)が撮像する範囲を示し、破線の矩形は対象バンド画像の画素(x,y)が撮像する範囲を示し、黒丸は被写体18の一部を示す。図2に示す例では、被写体18の一部である黒丸が、基準バンドの画素(x,y)ではほぼ中央に位置するのに対して、対象バンドの画素(x,y)では右下に位置している。この場合、図3に示すように、対象バンドの画素(x,y)を紙面右方向にs画素(0≦s<1)だけ、紙面下方向にt画素(0≦t<1)だけ、それぞれ移動させると、基準バンド画像の画素(x,y)と対象バンド画像の画素(x,y)が撮像する範囲が一致する。このように複数のバンド画像の撮像範囲が一致することを、複数のバンド画像の画素境界が一致していると言う。また、このときの(s,t)を位置差と呼ぶ。位置差は、対象バンドかつ画素毎に異なる可能性がある。本実施形態では、位置差情報153は、対象バンドかつ画素毎に記録されている。
【0020】
図4は、Rバンド画像152-1の位置差情報153-1の構成例を示す図である。この例の位置差情報153-1は、対象バンドIDと画素毎の情報の項目から構成されている。対象バンドIDの項目には、対象バンドIDを一意に特定する識別情報が記録されている。画素毎の情報の項目は、対象バンド画像の画素位置の項目とその画素位置における位置差の項目との組み合わせから構成されている。画素位置の項目には、対象バンド画像上の画素の位置を特定するxy座標値(x,y)が記録される。また、位置差の項目には図3を参照して説明した(s,t)が記録される。図示していないが、Bバンド画像152-3の位置差情報153-2も、位置差情報153-1と同様の構成を有している。
【0021】
補正マルチバンド画像154は、マルチバンド画像152に対して色ずれが生じないよう補正を施して得られたマルチバンド画像である。補正マルチバンド画像154は、補正Rバンド画像154-1と補正Gバンド画像154-2と補正Bバンド画像154-3とから構成されている。
【0022】
演算処理部16は、MPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部15からプログラム151を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム151とを協働させて各種処理部を実現するように構成されている。演算処理部16で実現される主な処理部には、マルチバンド画像取得部161、位置差取得部162、補正マルチバンド画像作成部163、および、補正マルチバンド画像出力部164がある。
【0023】
マルチバンド画像取得部161は、1次元アレイセンサ11から構成されるプッシュブルーム方式の画像取得装置からマルチバンド画像152を取得し、記憶部15に記録するように構成されている。但し、マルチバンド画像取得部161は、上記画像取得装置からマルチバンド画像152を取得する構成に限定されない。例えば、上記画像取得装置から取得されたマルチバンド画像152が図示しない画像サーバ装置に蓄積されている場合、マルチバンド画像取得部161は、画像サーバ装置からマルチバンド画像152を取得するように構成されていてよい。
【0024】
位置差取得部162は、マルチバンド画像取得部161が取得したマルチバンド画像152の位置差情報153を取得し、記憶部15に記録するように構成されている。
【0025】
補正マルチバンド画像作成部163は、記憶部15からマルチバンド画像152と位置差情報153とを読み出し、そのマルチバンド画像152と位置差情報153とから、補正マルチバンド画像154を作成し、記憶部15に記録するように構成されている。
【0026】
補正マルチバンド画像出力部164は、記憶部15から補正マルチバンド画像154を読み出し、その補正マルチバンド画像154を画面表示部14に表示し、または/および、通信I/F部12を通じて外部装置に出力するように構成されている。補正マルチバンド画像出力部164は、補正マルチバンド画像154を構成する個々の補正Rバンド画像154-1、補正Gバンド画像154-2、補正Bバンド画像154-3をそれ単独で表示ないし出力してもよいし、補正Rバンド画像154-1と補正Gバンド画像154-2と補正Bバンド画像154-3とを合成して得られるカラー画像を画面表示部14に表示し、または/および、通信I/F部12を通じて外部装置に出力してもよい。
【0027】
図5は、本実施形態に係る画像補正装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図5を参照すると、先ず、マルチバンド画像取得部161は、1次元アレイセンサ11から構成される画像取得装置によって撮像されたマルチバンド画像152を取得し、記憶部15に記録する(ステップS1)。次に、位置差取得部162は、マルチバンド画像取得部161が取得したマルチバンド画像152の位置差情報153を取得し、記憶部15に記録する(ステップS2)。次に、補正マルチバンド画像作成部163は、記憶部15からマルチバンド画像152および位置差情報153を読み出し、それらに基づいて補正マルチバンド画像154を作成し、記憶部15に記録する(ステップS3)。次に、補正マルチバンド画像出力部164は、記憶部15から補正マルチバンド画像154を読み出し、画面表示部14に表示し、または/および、通信I/F部12を通じて外部装置に出力する(ステップS4)。
【0028】
続いて、画像補正装置10の主要な構成要素について詳細に説明する。先ず、位置差取得部162について詳細に説明する。
【0029】
図6は、位置差取得部162の一例を示すブロック図である。この例の位置差取得部162は、位置差情報作成部1621を含んで構成されている。
【0030】
位置差情報作成部1621は、記憶部15からマルチバンド画像152を読み出し、Gバンド画像152-2とRバンド画像152-1とからRバンドの位置差情報153-1を作成し、Gバンド画像152-2とBバンド画像152-3からBバンドの位置差情報153-2を作成するように構成されている。
【0031】
図7は、位置差情報作成部1621の処理の一例を示すフローチャートである。先ず、位置差情報作成部1621は、基準バンドおよび対象バンドの各画像を、例えば図8に示すように、所定の形状およびサイズを有する複数の小領域に分割する(ステップS11)。図8では、小領域は矩形であるが、矩形以外の形状であってもよい。小領域のサイズは、1画素より十分に大きくしておくことが望ましい。
【0032】
次に位置差情報作成部1621は、対象バンドの1つ(例えばRバンド)に注目する(ステップS12)。次に位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの位置差情報を初期化する(ステップS13)。例えば、対象バンドの位置差情報が図4に示したフォーマットを有する場合、各画素位置(x,y)の位置差(s,t)をそれぞれ例えばNULL値に初期化する。
【0033】
次に位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの1つの小領域に注目する(ステップS14)。次に位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの小領域に対応する基準バンドの1つの小領域に注目する(ステップS15)。本実施形態では、対象バンドの位置差は1画素以下となる状況を想定している。そのため、注目中の対象バンドの小領域に対応する基準バンドの1つの小領域は、対象バンドの小領域と同じ位置の小領域である。即ち、注目中の対象バンドの小領域が図8の左上角の小領域であれば、基準バンドの注目する小領域は同じく図8の左上角の小領域である。
【0034】
次に位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの小領域が注目中の基準バンドの小領域に最も一致するシフト量(s,t)を算出する(ステップS16)。例えば、注目中の対象バンドの小領域の画像を、例えばX軸方向に0.2画素、Y軸方向に0.7画素だけシフトすれば、注目中の基準バンドの小領域に最も一致するならば、このX軸方向のシフト量s=0.2画素、Y軸方向のシフト量t=0.7画素が求めるシフト量になる。このようなシフト量は、位相限定相関法やSSDパラボラフィッティング法などの1画素未満の精度でシフト量を計算できるサブピクセルマッチング手法を用いて算出してよい。次に位置差情報作成部1621は、算出したシフト量(s,t)を注目中の対象バンドの小領域に含まれる全ての画素の位置差(s,t)として、注目中の対象バンドの位置差情報を更新する(ステップS17)。
【0035】
次に位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの他の1つの小領域に注目を移し(ステップS18)、ステップS15の処理に戻って、前述した処理と同様の処理を新たに注目した対象バンドの小領域に対して実行する。そして、位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの全ての小領域に注目し終えると(ステップS19でYES)、他の対象バンド(例えばBバンド)の1つに注目を移し(ステップS20)、ステップS13の処理に戻って、前述した処理と同様の処理を新たに注目した対象バンドに対して実行する。そして、全ての対象バンドに注目し終えると(ステップS21でYES)、作成した各対象バンドの位置差情報を記憶部15に保存する(ステップS22)。そして、位置差情報作成部1621は、図7に示した処理を終了する。
【0036】
図9は、位置差情報作成部1621の処理の他の例を示すフローチャートである。図9に示す処理は、ステップS17がステップS17Aに置換され、また、ステップS19とステップS20の間に新たなステップS23が設けられている点で、図7に示す処理と相違し、それ以外は図7に示す処理と同じである。図9のステップS17Aにおいて、位置差情報作成部1621は、ステップS16で算出したシフト量(s,t)を注目中の対象バンドの小領域の中心位置の画素の位置差として、注目中の対象バンドの位置差情報を更新する。そのため、図9のステップS17Aでは、注目中の小領域の中心位置の画素以外の画素の位置差は更新されず、初期値のNULL値のままである。図9のステップS23では、位置差情報作成部1621は、注目中の対象バンドの各小領域の中心位置以外の画素の位置差を、ステップS17Aで算出した各小領域の中心位置の画素の位置差から補間によって算出し、注目中の対象バンドの位置差情報を更新する。補間方法は、例えば、隣接小領域の中心との距離に応じた重み付け平均による補間としてよい。
【0037】
図7に示したように小領域毎に求めたシフト量を小領域内の全画素の位置差とする場合、小領域の境界で位置差が不連続になる可能性がある。一方、図9に示した方法では、位置差が画素位置に応じて連続して変化することになり、位置差が不連続になることはなくなる。その結果、図9に示した方法は、小領域の境界で補正画像の色に段差が生じることがなくなる効果がある。
【0038】
また、図7および図9に示した方法では、基準バンドおよび対象バンドの画像全体を隈なく小領域に分割したが、図10に示すように、位置差情報作成部1621は、小領域間に隙間(図中のハッチング部分)ができるように分割してもよい。そして、位置差情報作成部1621は、隙間に含まれる画素の位置差を、ステップS17またはステップS17Aで算出した中心位置の画素の位置差から補間で求めるようにしてよい。このときの補間は、例えば、隣接小領域の中心との距離に応じた重み付け平均による補間としてよい。このように小領域間に隙間ができるように基準バンドおよび対象バンドを複数の小領域に分割して位置差を作成する方法によれば、隙間ができないように分割する場合に比べて計算時間を減らすことができる。
【0039】
図7および図9に示した方法では、位置差情報作成部1621は、マルチバンド画像152から対象バンド画像の各画素の位置差を作成した。しかし、位置差情報作成部1621は、マルチバンド画像を取得したプラットフォーム(人工衛星や航空機など)の位置・姿勢情報から対象バンド画像の各画素の位置差を作成するようにしてもよい。一般に人工衛星や航空機から撮像した画像は、画像取得時のプラットフォームの位置や姿勢等を用いて、地図に投影することにより、画像プロダクトに加工される。マルチスペクトル画像の場合、バンド毎に地図に投影されるため、位置差情報も地図投影の過程で求められる。そのため、位置差情報作成部1621は、一般的な地図投影の方法を用いて対象バンド画像の各画素の位置差情報を作成してもよい。
【0040】
図11は、位置差取得部162の他の例を示すブロック図である。この例の位置差取得部162は、位置差情報入力部1622を含んで構成されている。
【0041】
位置差情報入力部1622は、通信I/F部12を通じて図示しない外部装置から位置差情報153を入力し、記憶部15に保存するように構成されている。あるいは、位置差情報入力部1622は、操作入力部13を通じて画像補正装置10の操作者から位置差情報153を入力し、記憶部15に保存するように構成されている。すなわち、位置差情報入力部1622は、画像補正装置10以外の装置で計算されたマルチバンド画像152の位置差情報153を入力して、記憶部15に保存するように構成されている。
【0042】
以上のように位置差取得部162は、マルチバンド画像152の位置差情報153を自ら作成するか、或いは、外部から入力して、記憶部15に保存するように構成されている。
【0043】
続いて、補正マルチバンド画像作成部163について詳細に説明する。
【0044】
図12は、補正マルチバンド画像作成部163の処理の一例を示すフローチャートである。図12を参照すると、補正マルチバンド画像作成部163は、先ず、対象バンドの1つ(例えばRバンド)に注目する(ステップS31)。次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドの補正対象バンド画像の画素値を0に初期化する(ステップS32)。対象バンドの補正対象バンド画像とは、基準バンドの各画素位置における当該対象バンドの色の画素値を保持する画像のことである。従って、補正対象バンド画像の画素位置(x,y)は、基準バンド画像の画素位置(x,y)に対応する。
【0045】
次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドの1つの画素位置の画素に注目する(ステップS33)。この注目する対象バンドの画素位置の画素を対象画素と呼ぶ。次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象画素を当該対象画素の位置差(s,t)だけシフトしたときに重なる基準バンドの画素位置の画素を最大4画素だけ抽出する(ステップS34)。この対象画素と重なる基準バンドの画素を対応画素と呼ぶ。ここで、対象バンドの各画素の位置差(s,t)におけるsとtは0以上1画素未満であって画素の整数倍の位置差はないものとする。すると、sとtの両方が0でない場合、注目中の対象バンドの画素位置(x,y)の対象画素は、基準バンドの4つの画素、即ち画素位置(x,y)、(x-1,y)、(x,y-1)、(x-1,y-1)の4つの対応画素と重なる。図13はそのような重なりの状態を示す模式図であり、実線の矩形は基準バンドの対応画素、破線の矩形は対象バンドの対象画素をそれぞれ示す。また、sとtのどちらか一方が0のときは、注目中の対象バンドの画素位置(x,y)の対象画素は基準バンドの2つの画素と重なり、sとtの両方が0のときは、注目中の対象バンドの画素位置(x,y)の対象画素は基準バンドの1つの画素と重なる。このように、sとtのどちらか、或いは両方が0の場合、対応画素の数は4ではない。しかし、対象画素と重ならない対応画素は、対象画素と重なる面積が0であるため、対象画素と重なる対応画素と同様に扱っても影響はない。そのため、以降、式の上では、sとtのどちらか、或いは両方が0の場合も区別せずに扱う。
【0046】
次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドの対象画素が基準バンドの各対応画素と重なる面積を求める(ステップS35)。画素位置(x,y)の対象画素が、画素位置(x,y)、(x,y-1)、(x-1,y)、(x-1,y-1)の各対応画素と重なる面積を、それぞれu(0,0)、u(0,1)、u(1,0)、u(1,1)とすると、それらの面積はs,tを用いて図14Aに示す式1で与えられる。
【0047】
次に補正マルチバンド画像作成部163は、基準バンドの対応画素間の画素値の関係と各対応画素が注目中の対象画素と重なる面積とに基づいて、注目中の対象画素の画素値から、基準バンドの複数の対応画素に対応する補正対象バンド画像の複数の画素に割り振る値を求める(ステップS36)。すなわち、補正マルチバンド画像作成部163は、輝度値あるいは明度がバンド間で強い相関を持つことに着目し、注目中の対象バンドの対象画素の画素値を、基準バンドの複数の対応画素の間の画素値の関係と同じになるように、基準バンドの複数の対応画素に対応する補正対象バンド画像の複数の画素に割り振る。
【0048】
本発明で利用可能な画素値の関係として、画素値の比がある。また、画素値の比の代わりに、画素値の差を利用することもできる。補正マルチバンド画像作成部163は、画素値の比を使用するとき、ステップS36では、図14Aの式2に従って、補正対象バンド画像の複数の画素に割り振る値を算出する。また、補正マルチバンド画像作成部163は、画素値の差を使用するとき、ステップS36では、図14Aの式3に従って、補正対象バンド画像の複数の画素に割り振る値を算出する。式2および式3において、T(x,y)は注目中の対象バンドの画素位置(x,y)の対象画素の画素値、C(x-p,y-q)(p,q=0,1)は基準バンドの対応画素の画素値、u(p,q)は図13を参照して説明した対象画素と基準バンドの対応画素とが重なる領域の面積、TC(x,y,p,q)は補正バンド画像の対応画素(x-p,y-q)(p,q=0,1)の画素値T´(x-p,y-q)(p,q=0,1)に割り振られる値である。
【0049】
画素値の関係として画素値の比を用いるか、画素値の差を用いるかは任意である。例えば、対象バンドと基準バンドの対応画素で明るさの比が同じであるとの条件が成立する環境では、画素値の比を用いてよい。即ち、明るさの比を比較できるためには、基準となる画素値0が光の当たっていない状態となっており、そこから各バンドに入る明るさに比例して画素値が定まる環境であれば、画素値の比を用いてよい。しかし、特に人工衛星から地上を撮像した画像では、得たい信号である地表面で反射した光だけでなく、大気で散乱した光もセンサに入射する。そのため、大気で散乱した光の分だけ画素値は大きくなる。大気で散乱する光は波長が短い方が大きいため、バンドによってどれだけ画素値が大きくなってくるかが異なる。そのため、人工衛星から地上を撮像した画像では、画素値の比が明るさの比にならないことがある。従って、そのような環境では、画素値の関係として画素値の差を用いるのが好ましい。その理由は、各バンドの画素値が一定量加算されていても画素値の差は変化しないためである。画素値の差を用いることで、人工衛星から地上を撮像した画像に対して、大気で散乱した光等により出力が加算される影響を取り除くことができる。そのため、画素値の差を用いることにより、画素値の比が明るさの比となっていない場合でも、色ずれのない補正画像を作成することができる。
【0050】
再び図12を参照すると、補正マルチバンド画像作成部163は、ステップS36で求めた補正対象バンド画像の複数の画素に割り振る値を、補正対象バンド画像のそれら複数の画素の画素値(初期値は0)に加算する(ステップS37)。即ち、補正対象バンド画像の、基準バンドと位相を合わせた画素(x,y)の画素値をT’(x,y)とすると、T’(x,y)は図14Aの式8で求められることになる。
【0051】
次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドの他の画素位置の1つの対象画素に注目を移し(ステップS38)、ステップS39を経由してステップS34へ戻り、上述した処理と同様の処理を繰り返す。そして、補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドの全ての画素に注目し終えると(ステップS39でYES)、他の対象バンドの1つ(例えばBバンド)に注目を移し(ステップS40)、ステップS41を経由してステップS32に戻り、上述した処理と同様の処理を繰り返す。そして、補正マルチバンド画像作成部163は、全ての対象バンドに注目し終えると(ステップS41でYES)、補正対象バンド画像を記憶部15に保存する(ステップS42)。即ち、補正マルチバンド画像作成部163は、上述のようにして作成した補正Rバンド画像154-1および補正Bバンド画像154-3を記憶部15に書き込む。また、補正マルチバンド画像作成部163は、基準バンドのGバンド画像152-2をそのまま補正Gバンド画像154-2として記憶部15に書き込む。そして、補正マルチバンド画像作成部163は、図12に示した処理を終了する。
【0052】
以上説明したように本実施形態に係る画像補正装置10によれば、位相差による色ずれを低減することができる。その理由は、画像補正装置10は、被写体を撮像して得られた複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、対象バンド画像と基準バンド画像との間の位置差を取得し、対象バンド画像の画素を上記位置差だけシフトしたときに対象バンド画像の画素と重なる基準バンド画像の複数の画素の間の画素値の関係に基づいて、基準バンド画像の画素位置における対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成するためである。以下、上記効果を簡単な例を挙げて説明する。
【0053】
今、被写体18として、図15に示すような矩形の白板WBを考える。白板WBの背景は黒色とする。バンド画像は4×4画素からなり、各画素の画素値の範囲は0~255とする。図16は、白板WBを撮像したGバンド画像の各画素G11~G44の画素値の例を示す。この例では、白板WBはGバンドの画素G33のみで撮像されており、画素G33の画素値は255、それ以外の画素の画素値は0になっている。図17は、白板WBを撮像したRバンド画像の各画素R11~R44の画素値の例を示す。この例では、白板WBはRバンドの画素R34、R44、R33、R43で撮像されており、それらの画素値はそれぞれ255/4、それら以外の画素の画素値は0になっている。このとき、Rバンドの画素R34、R44、R33、R43の位置差(s,t)はそれぞれ(0.5,0.5)とする。
【0054】
図18は、Rバンドの画素R34、R44、R33、R43をそれぞれ位置差(0.5,0.5)だけシフトしたときのRバンド画像とGバンド画像の重なり状態の例を示している。この例では、Rバンドの画素R34は、Gバンド画像のG24、G34、G23、G33の4つの画素と重なっている。また、Rバンドの画素R44は、Gバンド画像のG34、G44、G33、G43の4つの画素と重なっている。また、Rバンドの画素R33は、Gバンド画像のG23、G33、G22、G32の4つの画素と重なっている。また、Rバンドの画素R43は、Gバンド画像のG33、G43、G32、G42の4つの画素と重なっている。
【0055】
以上のような例の場合、画素G33に対応する補正Rバンド画像の画素R33’の画素値は、画素R34から画素R33’に割り振る画素値と、画素R44から画素R33’に割り振る画素値と、画素R33から画素R33’に割り振る画素値と、画素R43から画素R33’に割り振る画素値との和として与えられる。
【0056】
画素R34から画素R33’に割り振る画素値は、式2を用いると、255/4なる。即ち、画素R34の画素値の全てが画素R33’に配分される。その理由は、画素R34と重なる4つの画素G24、G34、G23、G33の間の画素値の関係は、に画素値の比の場合、0:0:0:254であるため、同じような画素値の比の関係になるように画素R34を画素R24’、R34’、R23’、R33’に割り振ると、0:0:0:254/4となるためである。同様に、画素R44の画素値の全てが画素R33’に割り振られ、画素R33の画素値の全てが画素R33’に割り振られ、画素R43の画素値の全てが画素R33’に割り振られる。その結果、補正Rバンド画像の画素R33’の画素値は、図19に示すように、255になる。以上は、画素値の関係として画素値の比を用いる式2の場合であるが、画素値の差を用いる式3の場合も同様に、画素R34、R44、R33、R43の画素値の全てが画素R33’に割り振られ、補正Rバンド画像の画素R33’の画素値は、255になる。
【0057】
一方、上述したように画素R34、R44、R33、R43の画素値の全てが画素R33’に割り振られるため、画素R33’以外の補正Rバンド画像の画素に画素R34、R44、R33、R43から割り振られる画素値は0である。その結果、補正Rバンド画像の画素R33’以外の画素の画素値は、図19に示すように全て0になる。その結果、Gバンド画像と補正Rバンド画像とを合成しても、色ずれは発生しない。
【0058】
これに対して、図18に示したシフト後のRバンド画像の各画素値から通常の補間式を用いて図18のGバンド画像の各画素位置に対応する補正Rバンド画像の各画素の画素値を求める場合、画素R33’を中心とする一定範囲の画素(例えば画素R24’、R34’、R44’、R23’、R33’、R43’、R22’、R32’、R42’)にRバンドの画素値が配分された補正Rバンド画像が得られる。その結果、Gバンド画像と補正Rバンド画像とを合成すると、白板BWは、外側が赤く、中央が緑の板のイメージになる。即ち、色ずれが発生する。
【0059】
以上は、補正Rバンド画像を例にして本実施形態における色ずれ効果を説明したが、補正Bバンド画像における色ずれも同様に低減することができる。また、白板を例にして色ずれ補正の効果を説明したが、他の種類の被写体でも同様の効果が得られるのは勿論のことである。因みに、黒色背景上の斜めの白線の場合、通常の補間方式による色ずれ補正では、斜めの白線の端が画素中のどこにくるかがバンド毎に異なると、白線の両側のある場所では赤が強調され、別の場所では青あるいは緑が強調されるような色ずれが発生する。本発明によれば、そのような色ずれも低減することができる。
【0060】
以上、第1の実施形態に係る画像補正装置10の構成、動作、および効果について説明した。続いて、第1の実施形態の幾つかの変形例について説明する。
【0061】
<変形例1>
図20は、画素値の関係として画素値の比を用いるように構成された補正マルチバンド画像作成部163の処理の他の一例を示すフローチャートである。図20を参照すると、補正マルチバンド画像作成部163は、図20の処理を開始すると、基準バンド画像であるGバンド画像152-2と対象バンド画像であるRバンド画像152-1およびBバンド画像152-3の各画素の画素値に対して、明度の比が画素値の比となるように正規化を行う(ステップS51)。そして、補正マルチバンド画像作成部163は、正規化された基準バンドと対象バンドの画素値を使用して、図12に示したステップS31~S42の処理を実行する。
【0062】
対応画素の画素間の画素値の関係として、画素値の比を用いるのは、画素値の比が明るさの比になっていることを前提としているためである。しかし、例えば大気の散乱による光が入る等により光の入っていない状態が画素値0ではなく、大気散乱分のオフセットが加わっていると、基準バンド画像および対象バンド画像における画素値の比が明るさの比に正確に一致しない。そのため、正規化せずに元の基準バンド画像および対象バンド画像を使って色ずれ補正を行うと、補正した対象バンドの画素値が基準バンドの画素値の比を基にしたものにならない。
【0063】
そこで、補正マルチバンド画像作成部163は、マルチバンド画像取得部161によって取得されたマルチバンド画像にオフセット分が加わっていても、正しく画素値の比を用いて補正できるようにするための画素値の正規化を行う。本例では、補正マルチバンド画像作成部163は、画像中のどこかに光の当たっていない画素があると仮定し、各バンド画像の最小値を光が当たっていない場合のオフセット成分とみなして、正規化を行う。
【0064】
先ず、補正マルチバンド画像作成部163は、対象バンド毎に、図14Aの式4に示すように、対象バンドの画素値の最小値を用いて、対象バンドの画素値の正規化を行う。式4において、T(x,y)はマルチバンド画像取得部161によって取得された対象バンドの画素位置(x,y)の画素値、minT(i,j)は当該対象バンドの画素値の最小値、T”(x,y)は正規化された対象バンドの画素値をそれぞれ表す。このように、補正マルチバンド画像作成部163は、Rバンド画像中の最小の画素値を用いてRバンド画像を正規化し、Bバンド画像中の最小の画素値を用いてBバンド画像を正規化する。
【0065】
また、補正マルチバンド画像作成部163は、図14Aの式5に示すように、基準バンドの画素値の最小値を用いて、基準バンドの画素値の正規化を行う。式5において、C(x,y)はマルチバンド画像取得部161によって取得された基準バンドの画素位置(x,y)の画素値、minC(i,j)は当該基準バンドの画素値の最小値、C”(x,y)は正規化された基準バンドの画素値をそれぞれ表す。このように、補正マルチバンド画像作成部163は、Gバンド画像中の最小の画素値を用いてGバンド画像を正規化する。
【0066】
補正マルチバンド画像作成部163は、Rバンド画像152-1、Gバンド画像152-2、および、Bバンド画像152-3の代わりに、上述したようにして正規化されたRバンド画像、Gバンド画像、および、Bバンド画像を使用して、図12のステップS31以降の処理を実行する。このとき、補正マルチバンド画像作成部163は、図14Aの式2の代わりに、例えば、図14Bに示す式2’を使用する。なお、式2’の右辺の最後の項は対象バンドの画素値の絶対値が相対的に補正前と変わらないようにするための補正項である。補正項は省略してもよい。
【0067】
<変形例2>
図21は、画素値の関係として画素値の差を用いるように構成された補正マルチバンド画像作成部163の処理の他の一例を示すフローチャートである。図21を参照すると、補正マルチバンド画像作成部163は、図21の処理を開始すると、図12と同様に対象バンドの1つ(例えばRバンド)に注目する(ステップS31)。次に補正マルチバンド画像作成部163は、注目中の対象バンドと基準バンド間の明度の差が画素値の差となるように正規化を行う(ステップS61)。そして、補正マルチバンド画像作成部163は、正規化された基準バンドと対象バンドの画素値を使用して、図12に示したステップS32以降の処理を実行する。なお、図12に示したステップS41におけるNO判定時にはステップS61に戻って、上述した処理と同様の処理を繰り返す。
【0068】
対応画素の画素間の画素値の関係として、画素値の差を用いるのは、画素値の差が明るさの差になっていることを前提としているためである。しかし、例えばバンド間で感度に違いがある等の理由で同じ明るさの違いでも、バンドによって値の差が異なる場合がある。このような場合、画素値の差が明るさの差に正確に一致しなくなるため、正規化せずに元の基準バンド画像および対象バンド画像を使って色ずれ補正を行うと、補正した対象バンドの画素値が基準バンドの画素値の差を基にしたものにならない。
【0069】
そこで、補正マルチバンド画像作成部163は、マルチバンド画像取得部161によって取得されたマルチバンド画像のバンド間で感度に差がある等の場合でも、正しく画素値の差を用いて補正できるようにするための画素値の正規化を行う。補正マルチバンド画像作成部163は、図21のステップS61では、図14Aの式6を用いて、正規化された基準バンドの画素値を算出する。式6において、C(x,y)は正規化前のGバンド画像の画素値、σ(C(x,y))は基準バンドの画素値の標準偏差、σ(T(x,y))は対象バンドの画素値の標準偏差、C”(x,y)は正規化された基準バンドの画素値、をそれぞれ示す。
【0070】
式6により、正規化された基準バンドの画素値の分散(標準偏差)は、対象バンドの画素値の分散(標準偏差)と同じになるため、基準バンドと対象バンドのコントラストを揃えることができる。そして、コントラストが揃うことにより、基準バンドと対象バンド間で明度の変化に対する感度を合わせることができる。補正マルチバンド画像作成部163は、Gバンド画像152-2の代わりに、上述したようにして正規化されたGバンド画像を使用して、図12のステップS32以降の処理を実行する。このとき、補正マルチバンド画像作成部163は、図14Aの式3の代わりに、例えば、図14Bに示す式3’を使用する。
【0071】
上記では、基準バンドの画素値を補正することにより、基準バンドと対象バンド間で明度の変化に対する感度を合わせたが、対象バンドの画素値を補正することにより、基準バンドと対象バンド間で明度の変化に対する感度を合わせるようにしてもよい。
【0072】
<変形例3>
位置差情報153は、図4に示す例では、対象バンド画像の画素毎の画素位置と位置差の組のリストで記録した。しかし、位置差情報153は上記記録方法に限定されない。例えば、位置差情報153は、対象バンド画像を位置差が同じ複数の画素の集まりからなる複数の部分領域に分割し、部分領域毎の画素位置と位置差の組のリストで記録してよい。部分領域の形状は、例えば矩形であってよい。また部分領域の画素位置は、矩形であれば左上画素と右下画素の画素位置の組であってよい。また、対象バンド画像の全画素の位置差がほぼ同じであれば、位置差を1つだけ記録するように構成されていてよい。
【0073】
更に、位置差情報153は、数値情報として記録する代わりに、数式あるいは数式の係数として記録してもよい。例えば、位置差が光学的歪曲で生じる場合、位置差は、焦点面上の対象バンドの画素と基準バンドの画素の位置関係や光学的な特性により決定される。そのため、画素毎の位置差は、画素位置を引数とする光学特性で定まる式で表現できる。従って、この式あるいはその係数を位置差情報153として記録するようにしてもよい。画素毎の位置差は、上記式から計算で求めることができる。
【0074】
また、位置差取得部162は、対象バンド毎に、算出された各画素位置の位置差から近似平面を算出し、その算出した近似平面を表す式あるいは式の係数を位置差情報153として記録するようにしてもよい。上記近似平面は、例えば、対象バンドの各画素が画素位置xと画素位置yと位置差(s,t)の3次元のデータ(x,y,(s,t))から構成される3次元点群データとする場合、点群との二乗距離の合計を最小にする平面であってよい。例えば、近似平面として図14Aの式7で与えられる平面を使用する場合、位置差取得部162は、算出された各画素位置の位置差を用いて、もっともフィットする行列Aとベクトルbを求めることにより、全画素の位置差情報153を表す式を求めることができる。上記では、対象バンドの各画素位置の位置差を用いて式7の係数を求めたが、図7を参照して説明した各小領域の中心位置の画素の位置差を用いて、もっともフィットする行列Aとベクトルbを求めるようにしてもよい。
【0075】
<変形例4>
上記では、マルチバンド画像152は、RGBの3バンドの画像とした。しかし、マルチバンド画像152は、上記以外であってよい。例えば、マルチバンド画像152は、RGBの3バンドと近赤外バンドとの4バンドの画像であってよい。このようにマルチバンド画像152のバンド数に制約はなく、任意の波長帯の任意のバンド数とすることができる。
【0076】
<変形例5>
上記では、対象バンドの画素(x,y)と基準バンドの同じ画素位置の画素(x,y)の位置差(s,t)は、0以上1未満として説明したが、位置差(s,t)は0未満あるいは1以上であってもよい。任意の位置差(s,t)に対して、sを超えない最大の整数をs0、tを超えない最大の整数をt0とし、s’=s-s0、t’=t-t0とする。すると、基準バンドの画素(x,y)に対し、x’=x-s0、y’=y-t0とすれば、対象バンドの画素(x,y)と基準バンドの画素(x’,y’)の位置差は0以上1未満の(s’,t’)となる。そのため、基準バンドの画素(x,y)を画素(x’,y’)、位置差(s,t)を位置差(s’,t’)に置き換えれば、上記と同じ処理で補正バンド画像の画素値を求めることができる。
【0077】
[第2の実施形態]
図22は、本発明の第2の実施形態に係る画像補正装置20のブロック図である。図22を参照すると、画像補正装置20は、バンド画像取得手段21と位置差取得手段22と補正バンド画像作成手段23と補正バンド画像出力手段24とを含んで構成されている。
【0078】
バンド画像取得手段21は、被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得するように構成されている。バンド画像取得手段21は、例えば、図1のマルチバンド画像取得部161と同様に構成することができるが、それに限定されない。
【0079】
位置差取得手段22は、バンド画像取得手段21によって取得された複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、対象バンド画像とバンド画像取得手段21によって取得された基準バンド画像との間の位置差を取得するように構成されている。位置差取得手段22は、例えば、図1の位置差取得部162と同様に構成することができるが、それに限定されない。
【0080】
補正バンド画像作成手段23は、対象バンド画像の画素を対象画素とし、対象画素を位置差取得手段22によって取得された位置差だけシフトしたときに対象画素と重なる基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、基準バンド画像の画素位置における対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成するように構成されている。補正バンド画像作成手段23は、例えば、図1の補正マルチバンド画像作成部163と同様に構成することができるが、それに限定されない。
【0081】
補正バンド画像出力手段24は、補正バンド画像作成手段23によって作成された補正バンド画像を出力するように構成されている。補正バンド画像出力手段24は、例えば、図1の補正マルチバンド画像出力部164と同様に構成することができるが、それに限定されない。
【0082】
以上のような構成を有する画像補正装置20は、以下のように動作する。すなわち、先ず、バンド画像取得手段21は、被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得する。次に、位置差取得手段22は、バンド画像取得手段21によって取得された複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、対象バンド画像とバンド画像取得手段21によって取得された基準バンド画像との間の位置差を取得する。次に、補正バンド画像作成手段23は、対象バンド画像の画素を対象画素とし、対象画素を位置差取得手段22によって取得された位置差だけシフトしたときに対象画素と重なる基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、基準バンド画像の画素位置における対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する。次に、補正バンド画像出力手段24は、補正バンド画像作成手段23によって作成された補正バンド画像を出力する。
【0083】
以上のように構成され、動作する画像補正装置20によれば、位相差による色ずれを低減することができる。その理由は、画像補正装置20は、被写体を撮像して得られた複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、対象バンド画像と基準バンド画像との間の位置差を取得し、対象バンド画像の画素を対象画素とし、対象画素を位置差だけシフトしたときに対象画素と重なる基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、基準バンド画像の画素位置における対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成するためである。
【0084】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
マルチバンド画像(マルチスペクトル画像)を色ずれの生じない画像に補正する画像補正装置、画像補正方法、画像補正プログラムとして利用できる。また、衛星や航空機から地上を撮像して得られた画像を地図に投影する等の画像幾何投影時における色ずれの補正に利用できる。
【0086】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得するバンド画像取得手段と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する位置差取得手段と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する補正バンド画像作成手段と、
前記補正バンド画像を出力する補正バンド画像出力手段と、
を備える画像補正装置。
[付記2]
前記補正バンド画像作成手段は、
前記対象画素毎に、前記複数の対応画素の間の画素値の関係と前記対象画素と前記対応画素との重なる面積とに基づいて前記対象画素の画素値から前記複数の対応画素の位置それぞれに配分する前記対象バンド画像に係る光の画素値を決定し、前記基準バンド画像の画素位置毎に、前記基準バンド画像の画素と重なる前記対象バンド画像の複数の画素から配分された前記対象バンド画像に係る光の画素値の総和を算出する、
付記1に記載の画像補正装置。
[付記3]
前記補正バンド画像作成手段は、前記画素値の関係として、画素値の比を用いる、
付記1または2に記載の画像補正装置。
[付記4]
前記補正バンド画像作成手段は、前記基準バンド画像の各画素値を、前記基準バンド画像の最小の画素値を用いて正規化する、
付記3に記載の画像補正装置。
[付記5]
前記補正バンド画像作成手段は、前記画素値の関係として、画素値の差を用いる、
付記1または2に記載の画像補正装置。
[付記6]
前記補正バンド画像作成手段は、前記基準バンド画像の各画素値を、前記基準バンド画像の画素値の標準偏差および前記対象バンド画像の画素値の標準偏差を用いて正規化する、
付記5に記載の画像補正装置。
[付記7]
前記位置差取得手段は、前記基準バンド画像と前記対象バンド画像との間の画像相関により前記位置差を算出する、
付記1乃至6の何れかに記載の画像補正装置。
[付記8]
前記位置差取得手段は、前記基準バンド画像と前記対象バンド画像を複数の小領域に分割し、前記小領域毎に、前記対象バンド画像の小領域が前記基準バンド画像の小領域に最も一致するシフト量を、前記対象バンド画像の小領域の全画素の前記位置差として算出する、
付記1乃至7の何れかに記載の画像補正装置。
[付記9]
前記位置差取得手段は、前記基準バンド画像と前記対象バンド画像を複数の小領域に分割し、前記小領域毎に、前記対象バンド画像の小領域が前記基準バンド画像の小領域に最も一致するシフト量を、前記対象バンド画像の小領域の中心位置の画素の前記位置差として算出し、前記中心位置の画素の位置差から補間処理によって中心位置の画素以外の画素の前記位置差を算出する、
付記1乃至7の何れかに記載の画像補正装置。
[付記10]
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得し、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得し、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成し、
前記補正バンド画像を出力する、
画像補正方法。
[付記11]
コンピュータに、
被写体を撮像して得られた複数のバンド画像を取得する処理と、
前記複数のバンド画像のうちの1つを基準バンド画像とし、残りの少なくとも1つを対象バンド画像とし、前記対象バンド画像と前記基準バンド画像との間の位置差を取得する処理と、
前記対象バンド画像の画素を対象画素とし、前記対象画素を前記位置差だけシフトしたときに前記対象画素と重なる前記基準バンド画像の複数の画素のそれぞれを対応画素とし、前記複数の対応画素の間の画素値の関係に基づいて、前記基準バンド画像の画素位置における前記対象バンド画像に係る光の画素値を保持する補正バンド画像を作成する処理と、
前記補正バンド画像を出力する処理と、
を行わせるためのプログラム。
【符号の説明】
【0087】
10 画像補正装置
11 1次元アレイセンサ
12 通信I/F部
13 操作入力部
14 画面表示部
15 記憶部
16 演算処理部
17 光学系
18 被写体
20 画像補正装置
21 バンド画像取得手段
22 位置差取得手段
23 補正バンド画像作成手段
24 補正バンド画像出力手段
151 プログラム
152 マルチバンド画像
152-1 Rバンド画像
152-2 Gバンド画像
152-3 Bバンド画像
153 位置差情報
153-1 位置差情報
153-2 位置差情報
154 補正マルチバンド画像
154-1 補正Rバンド画像
154-2 補正Gバンド画像
154-3 補正Bバンド画像
161 マルチバンド画像取得部
162 位置差取得部
163 補正マルチバンド画像作成部
164 補正マルチバンド画像出力部
1621 位置差情報作成部
1622 位置差情報入力部
WB 白板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22