(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電波マップ生成装置、電波マップ提供装置、電波マップ取得利用装置、及びプローブ情報送信装置
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20241106BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241106BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20241106BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20241106BHJP
H04B 17/391 20150101ALI20241106BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
H04W16/18 110
G08G1/00 A
G08G1/13
H04B17/309
H04B17/391
H04W4/40
(21)【出願番号】P 2020178359
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】前本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】河合 茂樹
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-124374(JP,A)
【文献】特開2016-053518(JP,A)
【文献】特開2016-100606(JP,A)
【文献】特開2014-143621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04B 17/30-17/391
H04W 4/00-99/00
G08G 1/00- 1/16
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置(100)からプローブ情報を受信して電波マップを生成する電波マップ生成装置であって、
前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置において前記移動体が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び前記外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を含む前記プローブ情報を複数受信する受信部(201)と、
複数の前記プローブ情報に基づき、
前記位置において、前記無線通信を行う前記外部の通信装置が第1の外部通信装置及び第2の外部通信装置である場合、前記第1の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第1の伝搬環境情報から第1の通信速度、及び前記第2の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第2の伝搬環境情報から第2の通信速度、を算出する通信速度算出部(206)と、
前記位置において、前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を算出する接続確率算出部(208)と、
前記位置情報、前記外部通信装置識別情報、前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度、並びに前記第1の接続確率及び前記第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)と、を有する、
電波マップ生成装置(200)。
【請求項2】
さらに、複数の前記プローブ情報に基づき、
前記位置において、前記第1の伝搬環境情報から第1の通信遅延値、前記第2の伝搬環境情報から第2の通信遅延値、を算出する通信遅延算出部(207)と、を有し、
前記電波マップ保存部は、さらに、前記第1の通信遅延値及び前記第2の通信遅延値、を保存する、
請求項1記載の電波マップ生成装置。
【請求項3】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置において第1の外部通信装置との間の通信速度である第1の通信速度、前記基準位置において第2の外部通信装置との間の通信速度である第2の通信速度、前記基準位置において前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記基準位置において前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度のうち小さい方を選択して最低保証速度情報とする最低保証速度算出部(209)と、
前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の接続確率、前記第2の接続確率、前記第1の通信速度、及び前記第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出する期待値速度算出部(210)と、
前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報、を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項4】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置において第1の外部通信装置との間の通信遅延値である第1の通信遅延値、前記基準位置において第2の外部通信装置との間の通信遅延値である第2の通信遅延値、前記基準位置において前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記基準位置において前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記用途情報が
リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の通信遅延値及び前記第2の通信遅延値のうち大きい方を選択して最低保証通信遅延情報とする最低保証通信遅延算出部(211)と、
前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の接続確率、前記第2の接続確率、前記第1の通信遅延値、及び第2の通信遅延値を用いて通信遅延の期待値である期待値通信遅延情報を算出する期待値通信遅延算出部(212)
と、
前記最低保証通信遅延情報又は前記期待値通信遅延情報、を含
む電波マップリプライを送信する
送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項5】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置であって、
要求する位置を決定して要求位置情報を生成する要求位置情報生成部(110)と、
電波マップの用途を示す用途情報を生成する用途情報生成部(111)と、
前記要求位置情報及び前記用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する基準位置における最低保証速度情報を含む電波マップリプライを、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における期待値速度情報を含む前記電波マップリプライを、前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記電波マップリプライに含まれる前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報に基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項6】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置であって、
要求する位置を決定して要求位置情報を生成する要求位置情報生成部(110)と、
電波マップの用途を示す用途情報を生成する用途情報生成部(111)と、
前記要求位置情報及び前記用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が
リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する基準位置における最低保証通信遅延情報を含
む電波マップリプライを、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における期待値通信遅延情報を含む前記電波マップリプライを、前記電波マップ提供装置から受信する受信部(201)と、
前記電波マップリプライに含まれる前記最低保証通信遅延情報又は前記期待値通信遅延情報に基づき
、外部の通信装置との間で無線通信を行う
無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項7】
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置からプローブ情報を受信して電波マップを生成する電波マップ生成装置で実行される電波マップ生成方法であって、
前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置において前記移動体が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び前記外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を含む前記プローブ情報を複数受信し(S201)、
複数の前記プローブ情報に基づき、
前記位置において、前記無線通信を行う前記外部の通信装置が第1の外部通信装置及び第2の外部通信装置である場合、前記第1の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第1の伝搬環境情報から第1の通信速度、及び前記第2の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第2の伝搬環境情報から第2の通信速度、を算出し(S202)、
前記位置において、前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を算出し(S203)、
前記位置情報、前記外部通信装置識別情報、前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度、並びに前記第1の接続確率及び前記第2の接続確率、を保存する(S204)、
電波マップ生成方法。
【請求項8】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置で実行される電波マップ提供方法であって、
前記電波マップ提供装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置において第1の外部通信装置との間の通信速度である第1の通信速度、前記基準位置において第2の外部通信装置との間の通信速度である第2の通信速度、前記基準位置において前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記基準位置において前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)、
を有し、
要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む前記電波マップリクエストを受信し(S251)、
前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合(S252:Yes)、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度のうち小さい方を選択して最低保証速度情報とし(S253)、
前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合(S252:No)、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の接続確率、前記第2の接続確率、前記第1の通信速度、及び前記第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出し(S254)、
前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報、を含む電波マップリプライを送信する(S255)、
電波マップ提供方法。
【請求項9】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置で実行される電波マップ取得利用方法であって、
要求する位置を決定して要求位置情報を生成し(S151)、
電波マップの用途を示す用途情報を生成し(S152)、
前記要求位置情報及び前記用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置に送信し(S153)、
前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する基準位置における最低保証速度情報を含む電波マップリプライを、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における期待値速度情報を含む前記電波マップリプライを、前記電波マップ提供装置から受信し(S154)、
前記電波マップリプライに含まれる前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報に基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う(S155)、
電波マップ取得利用方法。
【請求項10】
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置からプローブ情報を受信して電波マップを生成する電波マップ生成装置で実行可能な電波マップ生成プログラムであって、
前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置において前記移動体が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び前記外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を含む前記プローブ情報を複数受信し(S201)、
複数の前記プローブ情報に基づき、
前記位置において、前記無線通信を行う前記外部の通信装置が第1の外部通信装置及び第2の外部通信装置である場合、前記第1の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第1の伝搬環境情報から第1の通信速度、及び前記第2の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第2の伝搬環境情報から第2の通信速度、を算出し(S202)、
前記位置において、前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を算出し(S203)、
前記位置情報、前記外部通信装置識別情報、前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度、並びに前記第1の接続確率及び前記第2の接続確率、を保存する(S204)、
ことを前記電波マップ生成装置に実行させる、
電波マップ生成プログラム。
【請求項11】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置で実行可能な電波マップ提供プログラムであって、
前記電波マップ提供装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置において第1の外部通信装置との間の通信速度である第1の通信速度、前記基準位置において第2の外部通信装置との間の通信速度である第2の通信速度、前記基準位置において前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記基準位置において前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)、
を有し、
前記電波マップ提供プログラムは、
要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む前記電波マップリクエストを受信し(S251)、
前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合(S252:Yes)、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度のうち小さい方を選択して最低保証速度情報とし(S252)、
前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合(S252:No)、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の接続確率、前記第2の接続確率、前記第1の通信速度、及び前記第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出し(S253)、
前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報、を含む電波マップリプライを送信する(S254)、
ことを前記電波マップ提供装置に実行させる、
電波マップ提供プログラム。
【請求項12】
移動体に搭載された電波マップ取得利用装置で実行可能な電波マップ取得利用プログラムであって、
要求する位置を決定して要求位置情報を生成し(S151)、
電波マップの用途を示す用途情報を生成し(S152)、
前記要求位置情報及び前記用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置に送信し(S153)、
前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する基準位置における最低保証速度情報を含む電波マップリプライを、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における期待値速度情報を含む前記電波マップリプライを、前記電波マップ提供装置から受信し(S154)、
前記電波マップリプライに含まれる前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報に基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う(S155)、
ことを前記電波マップ取得利用装置に実行させる、
電波マップ取得利用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波マップに関する装置等であって、主に移動体に搭載されるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置、並びに、主にサーバで実現される電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置、そしてこれらの装置で実行する方法及びこれらの装置で実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信が普及するにつれ、様々な場所で無線通信を用いた通信を行う機会が増えている。とりわけ、自動車等の移動体においては、大容量のセルラー通信や、車車間通信及び路車間通信のようなV2Xなどを用いて、運転支援や自動運転制御を行う技術が注目されている。これに伴い、車両が通信機能を備えるようになり、いわゆる車両のコネクティッド化が進んでいる。
ここで、無線通信においては電波が干渉しあうことにより、場所によって電波の送信レベルや受信レベルに強弱が生じることが知られており、一般的にこの現象はフェージングと呼ばれている。自動車等の移動体においては移動を前提としているので、移動に伴い通信品質の変動が生じることから、特定の場所における通信品質をあらかじめ知ることができれば事前に対策を講じることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、地点とその地点での通信に利用可能となると推定される通信資源量との対応関係を示す通信資源マップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、以下の課題を見出した。
ある地点での電波伝搬路の状態又は推定結果を示す電波マップを生成する際、その地点で接続可能な基地局装置は1つとは限らない。そして、接続する基地局装置が異なると、同じ地点であっても電波伝搬路の状態又は推定結果は大きく異なる。
【0006】
本発明は、位置及び接続される外部の通信装置を特定した電波マップを生成することを目的とする。
また、本発明は、電波マップの用途に応じた情報を提供し、利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電波マップ生成装置(200)は、移動体に搭載されたプローブ情報送信装置(100)からプローブ情報を受信して電波マップを生成する電波マップ生成装置であって、前記移動体の位置を示す位置情報、前記位置において前記移動体が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び前記外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を含む前記プローブ情報を複数受信する受信部(201)と、複数の前記プローブ情報に基づき、前記位置において、前記無線通信を行う前記外部の通信装置が第1の外部通信装置及び第2の外部通信装置である場合、前記第1の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第1の伝搬環境情報から第1の通信速度、及び前記第2の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第2の伝搬環境情報から第2の通信速度、を算出する通信速度算出部(206)と、前記位置において、前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を算出する接続確率算出部(208)と、前記位置情報、前記外部通信装置識別情報、前記第1の通信速度及び前記第2の通信速度、並びに前記第1の接続確率及び前記第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)と、を有する。
【0008】
本開示の電波マップ提供装置(250)は、移動体に搭載された電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置において第1の外部通信装置との間の通信速度である第1の通信速度、前記基準位置において第2の外部通信装置との間の通信速度である第2の通信速度、前記基準位置において前記第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び前記基準位置において前記第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を保存する電波マップ保存部(204)と、要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の通信速度及び第2の通信速度のうち小さい方を選択して最低保証速度情報とする最低保証速度算出部(209)と、前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記第1の接続確率、前記第2の接続確率、前記第1の通信速度、及び前記第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出する期待値速度算出部(210)と、前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報、を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する。
【0009】
本開示の電波マップ取得利用装置(150)は、移動体に搭載された電波マップ取得利用装置であって、要求する位置を決定して要求位置情報を生成する要求位置情報生成部(110)と、電波マップの用途を示す用途情報を生成する用途情報生成部(111)と、前記要求位置情報及び前記用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、前記要求位置情報に対応する基準位置における最低保証速度情報を含む電波マップリプライを、前記電波マップリクエストに含まれる前記用途情報が前記リアルタイム通信以外を示す場合、前記要求位置情報に対応する前記基準位置における期待値速度情報を含む前記電波マップリプライを、前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、前記電波マップリプライに含まれる前記最低保証速度情報又は前記期待値速度情報に基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う無線通信部(102)と、を有する。
【0010】
本開示のプローブ情報送信装置(100)は、移動体に搭載されたプローブ情報送信装置であって、前記移動体の現在位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部(101)と、外部の通信装置との間で無線通信を行う無線通信部(102)と、前記現在位置において、前記無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び前記外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を取得する伝搬環境情報取得部(103)と、前記位置情報、前記伝搬環境情報、及び前記外部通信装置識別情報をプローブ情報として電波マップ生成装置(200)に送信する送信部(105)と、を有する。
【0011】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0012】
上述のような構成により、位置及び接続される外部の通信装置を特定した電波マップを生成することが可能となる。
また、上述のような構成により、電波マップの用途に応じた情報を提供し、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本開示の実施形態の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
【
図3】本開示の実施形態のサーバ装置である電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
【
図4】本開示の実施形態で生成する電波マップを説明する説明図
【
図5】本開示の実施形態で提供する電波マップを説明する説明図
【
図6】本開示の実施形態のプローブ情報送信装置及び電波マップ生成装置の動作を示すフローチャート
【
図7】本開示の実施形態の電波マップ取得利用装置及び電波マップ提供装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0017】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0018】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせても良い。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせても良い。
【0019】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0020】
1.実施形態
(1)関係する機器を含む全体構成
図1を用いて、本実施形態で用いる機器及びこれらの相互関係を示す全体構成をまず説明する。
【0021】
「移動体」である車両に「搭載された」車載装置A及び車載装置Cは、通信ネットワークを介してサーバ装置Bと接続されている。
ここで、「移動体」とは、移動可能な物体をいい、移動速度は任意である。また移動体が停止している場合も当然含む。例えば、自動車、自動二輪車、自転車、歩行者、船舶、航空機、及びこれらに搭載される物を含み、またこれらに限らない。
また、「搭載された」とは、移動体に直接固定されている場合の他、移動体に固定されていないが移動体と共に移動する場合も含む。例えば、移動体に乗った人が所持している場合、移動体に載置された積荷に搭載されている場合、が挙げられる。
【0022】
車載装置Aは、本実施形態のプローブ情報送信装置100に相当し、通信ネットワークを介して電波マップを生成するために必要な情報であるプローブ情報をサーバ装置Bに送信する。
【0023】
サーバ装置Bは、本実施形態の電波マップ生成装置200に相当し、車載装置Aから通信ネットワークを介してプローブ情報を受信し、プローブ情報に基づき「電波マップ」を生成又は更新する。
ここで、「電波マップ」とは、特定の位置における電波伝搬路の状態又は推定結果の集合をいい、例えば地図上の格子点毎にRSSIをマッピングしたものをいう。
【0024】
また、サーバ装置Bは、本実施形態の電波マップ提供装置250に相当し、車載装置Cから通信ネットワークを介して電波マップリクエストを受信し、電波マップリクエストの内容に応じた情報である電波マップリプライを通信ネットワークを介して車載装置Cに送信する。
【0025】
車載装置Cは、本実施形態の電波マップ取得利用装置150に相当し、通信ネットワークを介して電波マップリクエストをサーバ装置Bに送信し、電波マップリクエストの内容に応じた情報である電波マップリプライを通信ネットワークを介してサーバ装置Bから受信する。
【0026】
車載装置A及び車載装置Cは、GNSS衛星から測位信号を受信し、それぞれの位置情報を取得する。
【0027】
車載装置A及び車載装置Cは、基地局との間で無線通信を行う。
【0028】
ここで、
図1では、基地局との間の無線通信と通信ネットワークによる通信とを別の通信として説明しているが、これらは同じであってもよい。すなわち、車載装置A及び車載装置Cは、基地局を介して無線通信によりサーバ装置Bと接続してもよい。
【0029】
基地局との間の無線通信方式は、例えば、IEEE802.11(WiFi(登録商標))やIEEE802.16(WiMAX(登録商標))、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G、5G等を用いることができる。あるいは、DSRC(Dedicated Short Range Communication)を用いることができる。
【0030】
通信ネットワークは、前述の無線通信方式に加えて、有線通信方式を用いることもできる。例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット、固定電話回線を用いることができる。有線通信方式を用いる場合としては、車両は自宅やその他の場所にある駐車場に停止している場合や、修理工場に収容されている場合が想定される。
【0031】
通信ネットワークは、無線通信方式と有線通信方式とを組み合わせてもよい。例えば、車載装置Aとセルラーシステムにおける基地局との間は無線通信方式で、基地局から先は、通信事業者の基幹回線やインターネット等の有線通信方式で、それぞれ接続されてもよい。
【0032】
なお、車載装置Aと車載装置Cは別の車両に搭載されている例を説明したが、これを一つの車両に搭載するようにしても良い。さらに、この場合、車載装置A及び車載装置Cを別々の装置として実装することはもちろん、車載装置Aであるプローブ情報送信装置100の機能及び車載装置Cである電波マップ取得利用装置150の機能を1つの車載装置として実装してもよい。
また、サーバ装置Bは、本実施形態の電波マップ生成装置200及び電波マップ提供装置250の両方の機能を有する例を説明したが、これを別々のサーバ装置に分けて設けてもよい。
【0033】
(2)車載装置(プローブ情報送信装置100、電波マップ取得利用装置150)の構成
図2を用いて、本実施形態の車載装置の構成について説明する。本実施形態では、車載装置が、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0034】
車載装置は、位置情報取得部101、無線通信部102、伝搬環境情報取得部103、制御部104、送信部105、受信部106、アプリケーション107、保存部108からなる。また、制御部104は、プローブ情報生成部109、要求位置情報生成部110、用途情報生成部111を実現する。
【0035】
車載装置は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の不揮発性メモリ、各種インターフェース、及びこれらを接続する内部バスで構成することができる。そして、これらのハードウェア上でソフトウェアを実行することにより、
図2に記載の各機能ブロックの機能を発揮させるように構成することができる。後述の
図3で示されるサーバ装置においても同様である。
もちろん、車載装置を、LSI等の専用のハードウェアで実現してもよい。
【0036】
車載装置は、本実施形態では半完成品としての電子制御装置(ECU(Electric Control Unit)、以下ECUと略する。)の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーションシステムが挙げられる。
なお、車載装置は、単一のECUの他、複数のECUで構成されてもよい。例えば、外部との通信を通信ECUが担当するようにしてもよい。また、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150を別々のECUで構成してもよい。
【0037】
図2の車載装置の各ブロックは、専らプローブ情報送信装置100で用いられるブロック、専ら電波マップ取得利用装置150で用いられるブロック、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150の両方で用いられるブロックがある。以下、まずプローブ情報送信装置100で用いられるブロック、次に、電波マップ取得利用装置150で用いられるブロックを説明する。
【0038】
まず、プローブ情報送信装置100で用いられるブロックを説明する。
位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部101は、主に衛星測位(GNSS)装置の測位受信機で構成される。測位受信機は、利用する衛星システムに対応する測位受信機を設ければよい。
位置情報取得部101は、測位受信機の他、位置情報の補正に用いる補正情報を供給する機器も含まれる。例えば、ジャイロセンサや加速度センサなどの慣性センサ、レーザセンサ、地図情報データベース、も位置情報取得部101として把握できる。
位置情報の測位精度は、利用する衛星システムの測位方式や、補正に用いるデータの種類、及び測位演算の結果によって異なる。例えば、GPSのような単独測位方式の場合、1m~10mの誤差を常に含んでいる。これに対し、相対測位方式やDGPS(Differential GPS)、RTK(Real Time Kinematic)-GPS測位、ネットワーク型RTK-GPS測位のように、誤差1m未満級や10cm未満級の測位方式も存在する。10cm未満級としては、RTK-GNSS/PPP-AR(準天頂衛星MADOCA方式)、PPP-RTK(準天頂衛星CLAS)方式)がある。単独測位方式にジャイロ航法やレーザセンサを併用して測位精度を1m未満級や10cm未満級に引き上げることもできる。1m未満級としては、補正データ利用のSLAS(サブメータ級測位補強サービス)方式がある。また、測位演算において、FIX解が求まる場合は用いる測位方式の精度が低い場合でも1m未満級や10cm未満級の測位精度が得られることもある。FLOAT解が求まる場合も、用いる測位方式の精度が高ければ、1m未満級の測位精度が得られることもある。なお、測位解にFIX解やFLOAT解が存在するのは、AR(Ambiguity Resolution)を行う方式である。
なお、以下の記載では、10m未満級を1m以上、1m未満級を10cm~1m、10cm未満級を10cm未満と、誤差範囲で記載する。
【0039】
無線通信部102は、外部の通信装置、本実施形態では基地局との間で「無線通信」を行い、必要な情報の送受信を行う。本実施形態では、外部の通信装置としてセルラー通信方式のeNBのような基地局を想定しているが、WiFiを用いる場合はAP、V2Xを用いる場合は他の車両や路側機であってもよい。もちろん、複数の通信方式に対応していてもよい。
ここで、「無線通信」とは、無線で信号を送信、又は/及び、受信することをいう。
【0040】
伝搬環境情報取得部103は、位置情報取得部101が取得した車両の現在位置において、無線通信部102の無線通信で用いる電波伝搬路の「伝搬環境情報」を「取得する」。例えば、伝搬環境情報取得部103は、参照信号の電波強度を測定する装置を用いることができる。
ここで、「伝搬環境情報」とは、電波伝搬路の状態又は推定結果を示すものであり、これを表す指標として、例えばRSSI、RSRP、RSRQ、SNR、SIR、BER、伝搬関数、伝搬路行列、単位時間当たりの平均ビットレート(bits/s)等が挙げられる。
また、「取得する」とは、伝搬環境情報を外部の通信装置等から取得する場合、伝搬環境情報を当該プローブ情報送信装置が自ら生成することにより取得する場合のいずれも含む。
【0041】
伝搬環境情報取得部103は、下り回線(ダウンリンク)の受信品質を評価するための情報を取得するためには、下り回線に割り当てられている周波数帯域における受信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、参照信号のRSSI、RSRP、RSRQがこれにあたる。これらの情報を用いることにより、サーバ装置の電波マップ生成装置200において、地図上の特定の位置における受信電波マップを生成又は更新することができる。
また、伝搬環境情報取得部103は、上り回線(アップリンク)の受信品質を評価するための情報を取得するためには、上り回線に割り当てられている周波数帯域における送信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、単位時間当たりの送信平均ビットレート(bits/s)がこれにあたる。あるいは、基地局において測定した参照信号のRSSI、RISP、RSRQを、基地局から受信するようにしてもよい。これらの情報を用いることにより、サーバ装置の電波マップ生成装置200において、地図上の特定の位置における送信電波マップを生成又は更新することができる。
【0042】
伝搬環境情報取得部103は、伝搬環境情報に加え、基地局を識別する外部通信装置識別情報を「取得する」。外部通信識別情報は、例えば各基地局それぞれに付与された基地局IDである。伝搬環境情報取得部103は、基地局から送信されたパケットを復号する際に、パケットに含まれる基地局IDを取得する。
ここで、「取得する」とは、外部通信装置識別情報を外部の通信装置等から取得する場合、外部通信装置識別情報を当該プローブ情報送信装置が自ら生成することにより取得する場合のいずれも含む。
【0043】
伝搬環境情報部103は、さらに、無線通信で用いる電波伝搬路の周波数帯域を示すバンド情報を取得してもよい。バンド情報は、例えば無線通信方式がLTEの場合、周波数帯域及びデュプレックスモードに応じてバンド1、バンド2のような数字が振られることにより区別される。バンド情報も、基地局から送信されたパケットを復号する際に、パケットに含まれるバンド情報を取得する。
周波数帯域が変わると電波伝搬路の特性も変わるので、バンド情報を含めた電波マップを生成することにより、電波伝搬路の状態をより正確に表すことができる。
【0044】
以上に説明した伝搬環境情報取得部103は、その全て又は一部を、無線通信部102の機能として無線通信部102と兼ねるようにしてもよい。
また、伝搬環境情報取得部103で取得し出力する伝搬環境情報は、各値の測定結果の絶対値ではなく、正規化した相対値で求めるようにしてもよい。例えば、電波干渉がない理想的な通信状況で引き出せる最大速度を100、最小を0とした値としてもよい。
【0045】
制御部104は、位置情報取得部101、無線通信部102、伝搬環境情報取得部103、送信部105、受信部106、アプリケーション107、保存部108の動作を制御する。また、制御部104は、それ自身でプローブ情報生成部109、要求位置情報生成部110、及び用途情報生成部111を実現している。
【0046】
プローブ情報生成部109は、位置情報取得部101で取得した位置情報、並びに伝搬環境情報取得部103で取得した伝搬環境情報及び外部通信装置識別情報を含めたプローブ情報を生成する。伝搬環境情報取得部103でバンド情報を取得した場合は、これもプローブ情報に含めてもよい。
【0047】
送信部105は、プローブ情報生成部109で生成したプローブ情報を、電波マップ生成装置200に送信する。
例えば、本実施形態の場合、プローブ情報として以下の情報を送信している。
【0048】
(プローブ情報)
タイムスタンプ:プローブ情報を生成した時刻(UTC)
位置情報:GNSSで測位した座標、緯度経度高度(WGS-84)、地図上の格子点を表すIDのいずれか
測位精度情報:測位精度のグレード[1m以上/10cm~1m/10cm未満]
通信システムID:基地局ID、バンド情報
電波強度(伝搬環境情報):受信電波強度(RSSI)の相対値
【0049】
なお、プローブ情報としてこれ以外の情報を送るようにしてもよい。
また、プローブ情報として送信する情報は、制御部104の他、特定のブロックで生成するようにしてもよい。
【0050】
以上、本実施形態のプローブ情報送信装置100によれば、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を送信しているので、これを受信した電波マップ生成装置200の側で、外部通信装置を特定した電波マップを生成することができる。
また、バンド情報を送信しているので、これを受信した電波マップ生成装置200の側で、外部通信装置に加え通信に用いているバンドを特定した電波マップを生成することができる。
また、伝搬環境情報を正規化した相対値で求めることにより、各装置の能力の割合を指標とすることができるので、装置間のばらつきを補正せずに各装置で伝搬環境情報をそのまま用いることができる。
【0051】
次に、電波マップ取得利用装置150で用いられるブロックを説明する。
要求位置情報生成部110は、車載装置である電波マップ取得利用装置150で無線通信を利用する物理的位置を要求する位置として決定し、要求位置情報を生成する。要求する位置は、例えば現在の位置でもよいし、走行計画に基づき将来走行を予定している位置としてもよい。走行計画を用いる場合、現在の車速に基づき一定時間内に到達する単一若しくは複数の地点を、要求する位置としてもよい。複数の地点の場合、例えば一定時間毎又は一定距離毎の位置を選択するようにしてもよい。
【0052】
用途情報生成部111は、電波マップの用途を示す用途情報を生成する。用途情報は、後述のアプリケーション107の目的や機能に応じて生成される。
例えば、アプリケーション107が車両遠隔監視システムにおける端末側のプログラムである場合は、監視装置側で車両の情報、例えば車載カメラの映像や速度等の車両情報を低遅延、すなわちリアルタイムに取得する必要がある。そこで、用途情報生成部111は、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示すフラグに1を設定する。
また、アプリケーション107が、車載センサから取得した各種データをまとめてビッグデータとして送信するビッグデータ送信プログラムである場合は、リアルタイムに通信を行う必要はなく、むしろ低コストでデータを送信する必要がある。そこで、用途情報生成部111は、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示すフラグに0を設定する。
【0053】
本実施形態では、用途情報生成部111として、リアルタイム通信を示すフラグを例として挙げたが、アプリケーション107の種類を示す情報を送信してもよい。
【0054】
送信部105は、要求位置情報生成部110で生成した要求位置情報、及び用途情報生成部111で生成した用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置250に送信する。
例えば、本実施形態の場合、電波マップリクエストとして以下の情報を送信している。
【0055】
(電波マップリクエスト)
要求位置情報:緯度経度高度(WGS-84)又は地図上の格子点を表すID
用途情報:リアルタイム通信フラグ(1:ON、0:OFF)
【0056】
電波マップリクエストを受信した電波マップ提供装置250は、電波マップリクエストに含まれる用途情報に応じて送信する電波マップの情報を選択し、電波マップリプライとして電波マップ取得利用装置150に送信する。電波マップ提供装置250における動作の詳細は後述する。
【0057】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。具体的には、電波マップリクエストに含まれる用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示す場合、要求位置情報に対応する基準位置における最低保証速度情報を含む電波マップリプライを受信する。また、電波マップリクエストに含まれる用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合、要求位置情報に対応する基準位置における期待値速度情報を含む前記電波マップリプライを受信する。
さらに、受信部106は、電波マップリクエストに含まれる用途情報がリアルタイム通信を示す場合、要求位置情報に対応する基準位置における最低保証通信遅延情報を含む電波マップリプライを受信してもよい。また、電波マップリクエストに含まれる用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合、要求位置情報に対応する基準位置における期待値通信遅延情報を含む電波マップリプライを受信してもよい。
最低保証速度情報、期待値速度情報、最低保証通信遅延情報、及び期待値通信遅延情報の詳細は、電波マップ提供装置250の構成及び動作で説明する。
なお、受信した最低保証速度情報、期待値速度情報、最低保証通信遅延情報、及び期待値通信遅延情報は、電波マップ提供装置250が選択した電波マップの一部であることから、これらも電波マップと呼ぶことがある。
例えば、本実施形態の場合、電波マップリプライとして以下の情報を受信している。
【0058】
(電波マップリプライ)
タイムスタンプ:電波マップを生成した時刻(UTC)
基準位置情報:緯度経度高度(WGS-84)又は地図上の格子点を表すID
測位精度情報:測位精度のグレード[1m以上/10cm~1m/10cm未満]
通信システムID:基地局ID、バンド情報
基準伝搬環境情報:最低保証速度情報又は期待値速度情報、及び最低保証通信遅延情報又は期待値通信遅延情報
有効時間帯:基準伝搬環境情報が有効となる時間帯(15分単位)
【0059】
保存部108は、受信した電波マップリプライを保存する。保存部108に保存された基準位置情報及び基準伝搬環境情報の集合は電波マップ提供装置250に保存された電波マップの一部であることから、保存部108には電波マップのレプリカが保存されているといえる。保存部108に一定期間電波マップのレプリカを保存することにより、電波マップリクエストにより電波マップ提供装置250にアクセスする機会を減らすることができる。また、有効期限を設定しておき、有効期間が経過した情報は破棄するようにしてもよい。これにより、電波マップのレプリカの鮮度を一定以上に保つことができる。
【0060】
アプリケーション107は、無線通信部102を利用するアプリケーションである。例えば、上述のように、車両遠隔監視システムにおける端末側のプログラムや、ビッグデータ送信プログラムが挙げられる。
【0061】
無線通信部102は、受信部106で受信した電波マップリプライに基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う。
電波マップリプライに最低保証速度情報や最低保証通信遅延情報が含まれている場合は、これらの情報を用いて無線通信で送信するデータ量を変更する。例えば、最低保証速度情報が低い場合、送信データ量が大きいと監視装置側でリアルタイムにデータを受信できない。そこで、送信するデータの解像度を変更したり、圧縮率を変更したり、符号化方式を変更することにより、データ量の削減を行う。これにより、低遅延でデータを送信することができる。
電波マップリプライに期待値速度情報や期待値通信遅延情報が含まれる場合は、これらの情報を用いて、一定以上の通信速度や一定以下の通信遅延が得られる地点でデータの送信を行う。これにより、データ送信に必要な時間を削減し、通信コストを削減することができる。
【0062】
なお、電波マップリクエストに、上り回線用の電波マップである送信電波マップ又は下り回線用の電波マップである受信電波マップのいずれかを指定するようにしてもよい。本実施形態では受信電波マップを取得している例を示した。
原則として、上り回線の電波伝搬路の評価には送信電波マップを、下り回線の電波伝搬路の評価には受信電波マップを用いる。もっとも、上り回線と下り回線の伝搬環境が同じと評価できる場合は、上り回線の評価に受信電波マップを用いてもよいし、下り回線の評価に送信電波マップを用いてもよい。例えば、上り回線と下り回線とが同じ周波数帯域を用いるTDDモードの場合が挙げられる。別の例として、ビル等の遮蔽物により、上り回線と下り回線で同じ伝搬環境の変化が予想される場合が挙げられる。
【0063】
以上、本実施形態の電波マップ取得利用装置150によれば、電波マップリクエストに用途情報を含めて送信するので、電波マップ取得利用装置150のアプリケーション107の特徴に応じた基準伝搬環境情報を取得することができる。
また、用途情報としてリアルタイム通信を示す情報を用いることにより、低遅延を実現する通信と低コストを実現する通信とを使い分けることができる。
【0064】
(3)サーバ装置(電波マップ生成装置200、電波マップ提供装置250)の構成
図3を用いて、本実施形態のサーバ装置の構成について説明する。本実施形態では、サーバ装置が、電波マップ生成装置200と電波マップ提供装置250の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0065】
サーバ装置は、受信部201、プローブ情報保存部202、制御部203、電波マップ保存部204、及び送信部205からなる。また、制御部203は、通信速度算出部206、通信遅延算出部207、接続確率算出部208、最低保証速度算出部209、期待値速度算出部210、最低保証通信遅延算出部211、及び期待値通信遅延算出部212を実現する。
【0066】
サーバ装置は、本実施形態では完成品としてのサーバ装置の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、半完成品の形態としてはECU、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、スマートフォン、携帯電話が挙げられる。
【0067】
また、サーバ装置は移動体に搭載されてもよい。サーバ装置が移動体に搭載される場合は、直接車両同士が通信を行う車車間通信や、基地局等を介して間接的に車両同士が通信を行う車車間通信において実現される。
【0068】
図3のサーバ装置の各ブロックは、専ら電波マップ生成装置200で用いられるブロック、専ら電波マップ提供装置250で用いられるブロック、電波マップ生成装置200と電波マップ提供装置250の両方で用いられるブロックがある。以下、まず電波マップ生成装置200で用いられるブロック、次に、電波マップ提供装置250で用いられるブロックを説明する。
【0069】
まず、電波マップ生成装置200で用いられるブロックを説明する。
受信部201は、移動体である車両の位置を示す位置情報、当該位置において車両が外部の通信装置である基地局との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び基地局を識別する外部通信装置識別情報を含むプローブ情報を複数受信する。なお、複数のプローブ情報は、同一の車両でもよいが、多数の車両から受信することが望ましい。本実施形態で用いるプローブ情報は、(2)で説明した例と同じである。
【0070】
プローブ情報保存部202は、受信部201で受信したプローブ情報を保存する。プローブ情報保存部202は、情報を消去しない限り過去に受信した全てのプローブ情報を保持している。
【0071】
制御部203は、受信部201、プローブ情報保存部202、制御部203、電波マップ保存部204、及び送信部205の動作を制御する。また、制御部203は、それ自身で、通信速度算出部206、通信遅延算出部207、接続確率算出部208、最低保証速度算出部209、期待値速度算出部210、最低保証通信遅延算出部211、及び期待値通信遅延算出部212を実現している。
【0072】
ここで、
図4(a)を用いて本実施形態で生成する電波マップを参照しながら、通信速度算出部206、通信遅延算出部207、接続確率算出部208、及び電波マップ保存部204の機能を説明する。
図4(a)は、電波マップ保存部204に保存されている本実施形態の電波マップを示す図である。
【0073】
通信速度算出部206は、プローブ情報保存部202に保存されているプローブ情報を読み出し、基地局との間の電波伝搬路の伝搬環境情報から通信速度を算出する。ここで、本実施形態では、
図4(a)に示す通り、同じ位置においても接続する基地局が異なる場合を想定している。そこで、本実施形態では、同じ位置であっても基地局が異なる場合は、それぞれ別個に通信速度を算出している。つまり、同じ位置において、無線通信を行う基地局として基地局A(「第1の外部通信装置」に相当)及び基地局B(「第2の外部通信装置」に相当)がある場合、通信速度算出部206は、基地局Aとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報(「第1の伝搬環境情報」に相当)から通信速度(「第1の通信速度」に相当)を算出し、基地局Bとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報(「第2の伝搬環境情報」に相当)から通信速度(「第2の通信速度」に相当)を算出する。
【0074】
通信速度の算出方法の具体例として、
図4(b)のような、伝搬環境情報としての電波強度(RSRP)と通信速度との関係を示すテーブルを予め準備しておき、各プローブ情報の電波強度(RSRP)が属する範囲に対応する下り通信速度及び上り通信速度を求めることが挙げられる。
この例では、電波強度として、RSRPを用いたが、その他の伝搬環境情報であるSINRやRSSIを用いてもよい。
また、テーブルを用いる以外に、所定の演算により通信速度を求めてもよい。
【0075】
ここで、同一位置かつ同一基地局のプローブ情報が複数ある場合は、通信速度は統計処理を行うことにより特定位置かつ特定基地局に対して1つの情報にまとめている。統計処理の方法として、平均値や中間値、分散を求めることが挙げられるが、これらには限らない。
図4(a)においては、位置pにおいて基地局Aと接続したサンプルが7個ある場合、7個のサンプルの通信速度の平均値を、位置p及び基地局Aにおける通信速度(1.5Mbps)としている。また、位置pにおいて基地局Bと接続したサンプルが3個ある場合、3個のサンプルの通信速度の平均値を、位置p及び基地局Bにおける通信速度(0.9Mbps)としている。
これに代えて、通信速度を求める前に伝搬環境情報の段階で統計処理を行い、統計処理結果から通信速度を求めるようにしてもよい。
【0076】
なお、同一位置とは、完全に同一でなくても基準位置を中心に一定の範囲内であればよい。本実施形態では、地図情報や測位精度をもとにあらかじめ定められた地図上の格子点を中心に一定の範囲内にあるプローブ情報を、同一位置のプローブ情報としている。例えば測位精度が1m以上であれば格子点の間隔は10m、測位精度が10cm~1mであれば格子点の間隔は1m、とする。そして、本実施形態では格子点を基準位置としている。すなわち、
図4(a)で示す位置は、基準位置に相当する。
【0077】
通信遅延算出部207は、プローブ情報保存部202に保存されているプローブ情報を読み出し、基地局との間の電波伝搬路の伝搬環境情報から通信遅延値を算出する。通信遅延算出部207も、基地局毎に通信遅延値を算出している。つまり、同じ位置において、無線通信を行う基地局として基地局A(「第1の外部通信装置」に相当)及び基地局B(「第2の外部通信装置」に相当)がある場合、通信遅延算出部207は、基地局Aとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報(「第1の伝搬環境情報」に相当)から通信遅延値(「第1の通信遅延値」に相当)を算出し、基地局Bとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報(「第2の伝搬環境情報」に相当)から通信遅延値(「第2の通信遅延値」に相当)を算出する。
【0078】
通信遅延値は、いわゆるEnd-to-End遅延が想定される。例えば、プローブ車両であるプローブ情報送信装置100と電波マップ生成装置200との間の通信遅延値や、プローブ情報送信装置100と基地局との間の通信遅延値を算出することにより、本実施形態の通信遅延値としてもよい。この場合、下り通信では、例えば下りパケット内の送信時刻情報と受信時刻との差から算出してもよい。上り通信では、例えばTCP通信でのAckを用いて測定・算出したり、同環境でPINGにおけるRTTを用いて算出してもよい。通信遅延値を求めるために必要な情報は、伝搬環境情報としてプローブ情報送信装置100から送信し、プローブ情報保存部202に保存されている。
これに代えて、通信速度を求める場合と同様、電波強度と通信遅延値との関係を示すテーブルを予め準備しておき、各プローブ情報の電波強度が属する範囲に対応する上り通信遅延値及び下り通信遅延値を求めてもよい。
【0079】
通信遅延値も統計処理を行うことにより特定位置かつ特定基地局に対して1つの情報にまとめるのが望ましい。
図4(a)においては、位置pにおいて基地局Aと接続したサンプルが7個ある場合、7個のサンプルの通信遅延値の平均値を、位置p及び基地局Aにおける通信遅延値(100ms)としている。また、位置pにおいて基地局Bと接続したサンプルが3個ある場合、3個のサンプルの通信遅延値の平均値を、位置p及び基地局Bにおける通信遅延値(150ms)としている。
【0080】
接続確率算出部208は、プローブ情報保存部202に保存されているプローブ情報を読み出し、特定の位置において基地局と無線通信を行う確率である接続確率を求める。接続確率算出部208も、基地局毎に接続確率を算出している。つまり、同じ位置において、基地局Aと無線通信を行う確率(「第1の接続確率」に相当)及び基地局Bと無線通信を行う確率(「第2の接続確率」に相当)を算出する。
例えば、
図4(a)では、位置pにおいて基地局と接続したサンプルが10個あり、そのうち基地局Aと接続したサンプルが7個、基地局Bと接続したサンプルが3個ある場合、基地局Aの接続確率は0.7、基地局Bの接続確率は0.3となる。
【0081】
電波マップ保存部204は、プローブ情報保存部202から読み出したプローブ情報、並びに通信速度算出部206、通信遅延算出部207、及び接続確率算出部208で算出した結果を電波マップとして保存する。
図4(a)の例では、位置(「位置情報」に相当)、時間帯、接続基地局(「外部通信装置識別情報」に相当)、通信速度(「第1の通信速度」及び「第2の通信速度」に相当)、通信遅延値(「第1の通信遅延値」及び「第2の通信遅延値」に相当)、基地局への接続確率(「第1の接続確率」及び「第2の接続確率」に相当)を保存している。
【0082】
プローブ情報保存部202からプローブ情報を読み出して統計処理を行うとともに、通信速度、通信遅延値、及び接続確率を算出する処理の頻度は適宜定めることができる。例えば1日毎に処理を行う場合、1日の決まった時間にプローブ情報保存部202からその日に受信したプローブ情報を読み出して処理を行い、電波マップを生成するようにしてもよい。1日毎のようにある程度長いスパンで更新するようにすれば、電波マップのユーザである電波マップ取得利用装置150の側で更新タイミングをまたいだ新旧の電波マップが併存することを防止することができる。
もちろん、受信部201でプローブ情報を受信する毎に処理を行ってもよい。
【0083】
電波マップ保存部204の電波マップは、処理の頻度毎に既存の電波マップを消去して新たに生成してもよいが、既存の電波マップのデータも含めて処理を行い、電波マップを更新して新たな電波マップを生成するようにしてもよい。つまり、本実施形態では生成という語を用いているが、生成とは更新を含む概念である。
【0084】
なお、本実施形態では、
図4(a)のように基地局までを特定して電波マップを生成しているが、さらに同一基地局のバンド情報までを特定して電波マップを生成するようにしてもよい。これにより、バンド情報単位のレベルで正確な情報を生成することができる。
【0085】
また、上の説明では接続する基地局が基地局A及び基地局Bの2つの場合を説明したが、
図4(a)の位置rのように同一位置で3つ以上の基地局と接続が可能な場合も同様の処理を行う。3つ以上の基地局が存在する場合の任意の2つに着目すれば、上の説明と同様の処理が行われている。
【0086】
以上、本実施形態の電波マップ生成装置200によれば、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を受信して電波マップを生成しているので、接続する基地局単位のレベルで正確な情報を有する電波マップを生成することができる。
また、本実施形態の電波マップ生成装置200によれば、通信速度、通信遅延値、接続確率を算出するので、特定の地点での通信速度や通信遅延値の最低保証値や期待値を容易に算出することができる。
【0087】
次に、電波マップ提供装置250で用いられるブロックを説明する。
電波マップ保存部204は、電波マップ生成装置200で説明したとおり、基地局単位のレベルで通信速度、通信遅延値、及び接続確率を含む電波マップを保存している。
【0088】
受信部201は、要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む電波マップリクエストを電波マップ取得利用装置150から受信する。本実施形態で用いる電波マップリクエストは、(2)で説明した例と同じである。用途情報は、本実施形態ではリアルタイム通信フラグであり、リアルタイム通信を示す場合は1、非リアルタイム通信を示す場合は0が設定されている。
【0089】
最低保証速度算出部209、期待値速度算出部210、最低保証通信遅延算出部211、及び期待値通信遅延算出部212の説明は、
図4(a)及び
図5を用いて説明する。
図5は、電波マップ提供装置250から提供される電波マップを示す図である。
図5(a)は、用途情報がリアルタイム通信を示す場合に提供される電波マップ、
図5(b)は、用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合に提供される電波マップである。
【0090】
受信部201で受信した用途情報が、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を「示す」場合、最低保証速度算出部209は、受信部201で受信した「要求位置情報に対応する」基準位置における第1の通信速度及び第2の通信速度のうち小さい方を選択することにより、最低保証速度情報を算出する。
図4(a)の電波マップの場合、
図5(a)の通り、位置pにおける通信速度のうち小さい方である基地局Bとの通信速度(0.9Mbps)が選択されている。
ここで、「示す」とは、用途を直接示す場合の他、用途以外示す場合でもこれにより用途を特定することができればよい。
また、「要求位置情報に対応する」とは、要求位置情報が示す位置と同じ又は近傍にあることをいう。
【0091】
最低保証速度は、特定の地点での最低限保証される通信速度という意義を有する。すなわち、最低保証速度を用いれば、最も通信状況の悪い場合を前提に通信計画を立てることができる。したがって、例えば車両からの情報をリアルタイムに取得する必要がある車両遠隔監視システムに利用することができる。
【0092】
受信部201で受信した用途情報が、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信「以外」を「示す」場合、期待値速度算出部210は、受信部201で受信した「要求位置情報に対応する」基準位置における第1の接続確率、第2の接続確率、第1の通信速度、及び第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出する。
図4(a)の電波マップの場合、
図5(b)の通り、位置pにおける基地局Aとの通信速度及び接続確率、並びに位置pにおける基地局Bとの通信速度及び接続確率を用いて、
1.5Mbps×0.7+0.9Mbps×0.3=1.3Mbps
を期待値速度としている。
ここで、「以外」とは、リアルタイム通信を除く趣旨であり、リアルタイム通信を除いた全て又は一部であればよい。
【0093】
期待値速度は、特定の地点で通常想定される通信速度という意義を有する。すなわち、期待値速度を用いれば、平均して利用可能な通信速度を用いて通信計画を立てることができる。したがって、例えばビッグデータを送信するタイミングを決定するビッグデータ送信プログラムに利用することができる。
【0094】
受信部201で受信した用途情報が、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を「示す」場合、最低保証通信遅延算出部211は、受信部201で受信した「要求位置情報に対応する」基準位置における第1の通信遅延値及び第2の通信遅延値のうち大きい方を選択することにより、最低保証通信遅延情報を算出する。
図4(a)の電波マップの場合、
図5(a)の通り、位置pにおける通信遅延のうち大きい方である基地局Bとの通信遅延値(150ms)が選択されている。
【0095】
受信部201で受信した用途情報が、リアルタイムに通信を行うリアルタイム通信「以外」を「示す」場合、期待値通信遅延算出部212は、受信部201で受信した「要求位置情報に対応する」基準位置における第1の接続確率、第2の接続確率、第1の通信遅延値、及び第2の通信遅延値を用いて通信遅延の期待値である期待値通信遅延情報を算出する。
図4(a)の電波マップの場合、
図5(b)の通り、位置pにおける基地局Aとの通信遅延値及び接続確率、並びに位置pにおける基地局Bとの通信遅延値及び接続確率を用いて、
100ms×0.7+150ms×0.3=115ms
を期待値通信遅延値としている。
【0096】
なお、
図4(a)の電波マップにおいて、位置oや位置qのように接続する基地局が1つの場合は、最低保証速度算出部209、期待値速度算出部210、最低保証通信遅延算出部211、及び期待値通信遅延算出部212での計算を行っても位置oや位置qでの通信速度及び通信遅延値と同じ値となるから、位置oや位置qでの通信速度及び通信遅延値をそのまま出力してもよい。
【0097】
また、
図4(a)の電波マップにおいて、位置rのように接続する基地局が3つ以上の場合も、全ての基地局を対象に計算を行えばよい。この場合においても、任意の2つの基地局に着目すれば、位置pと同様の計算を含んでいる。
【0098】
送信部205は、最低保証速度算出部209で算出した最低保証速度情報又は期待値速度算出部210で算出した期待値速度情報、並びに最低保証通信遅延算出部211で算出した最低保証通信遅延情報又は期待値通信遅延算出部212で算出した期待値通信遅延情報、を含む電波マップリプライを送信する。本実施形態で用いる電波マップリプライは、(2)で説明した例と同じである。
【0099】
本実施形態では、用途情報がリアルタイム通信を示す場合、送信部205は最低保証値、すなわち、最低保証速度情報又は/及び最低保証通信遅延情報を送信する。また、用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合、送信部205は期待値、すなわち期待値通信速度情報又は/及び期待値通信遅延情報を送信する。そして、この組み合わせは、電波マップ取得利用装置150のアプリケーション107の種類や、電波マップリクエストの内容に応じて変更することができる。
例えば、リアルタイム通信に属する自動運転制御の場合、通信速度よりも通信遅延が重要になる。そこで、用途情報がリアルタイム通信を示す場合、送信部205は最低保証通信遅延情報を送信する。
また、非リアルタイム通信に属する動画・センサデータ伝送の場合、通信遅延よりも通信速度が重要になる。そこで、用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合、送信部205は期待値速度情報を送信する。
【0100】
以上、本実施形態の電波マップ提供装置250によれば、電波マップリクエストに含まれる用途情報に応じて最低保証速度情報又は期待値速度情報を送信するので、電波マップの利用態様に適した情報を提供することができる。
【0101】
(4)電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200の動作
プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200は、共に電波マップの生成に関与している。以下、
図6のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200の動作を説明する。
なお、以下の動作は、プローブ情報送信装置100で実行されるプローブ情報送信方法を示すだけでなく、プローブ情報送信装置100で実行可能なプローブ情報送信プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ生成装置200で実行される電波マップ生成更新方法を示すだけでなく、電波マップ生成装置200で実行可能な電波マップ生成更新プログラムの処理手順を示すものである。
そして、これらの処理は、
図6で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0102】
プローブ情報送信装置100の位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する(S101)。
伝搬環境情報取得部103は、現在位置において、外部の通信装置との間で行う無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報を取得する(S102)。
伝搬環境情報取得部103は、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を取得する(S103)
そして、送信部105は、S101で取得した位置情報、S102で取得した伝搬環境情報、及びS103で取得した外部通信識別情報、をプローブ情報として電波マップ生成装置200に送信する(S104)。
【0103】
電波マップ生成装置200の受信部201は、車両の位置を示す位置情報、位置情報が示す位置において車両が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び外部通信装置を識別する外部通信識別情報、を含むプローブ情報を複数受信し、プローブ情報保存部202に保存する(S201)。
通信速度算出部206は、複数のプローブ情報に基づき、位置情報が示す位置において、無線通信を行う外部の通信装置が第1の外部通信装置及び第2の外部通信装置である場合、第1の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第1の伝搬環境情報から第1の通信速度、及び第2の外部通信装置との間の電波伝搬路の伝搬環境情報である第2の伝搬環境情報から第2の通信速度、を算出する(S202)。
接続確率算出部208は、位置情報が示す位置において、第1の外部通信装置と無線通信を行う確率である第1の接続確率、及び第2の外部通信装置と無線通信を行う確率である第2の接続確率、を算出する(S203)。
電波マップ保存部204は、S201で受信した位置情報及び外部通信装置識別情報、S202で算出した第1の通信速度及び第2の通信速度、並びにS203で算出した第1の接続確率及び第2の接続確率、を保存する(S204)。
【0104】
(5)電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150の動作
電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150は、共に電波マップの利用に関与している。以下、
図7のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150の動作を説明する。
なお、以下の動作は、電波マップ提供装置250で実行される電波マップ提供方法を示すだけでなく、電波マップ提供装置250で実行可能な電波マップ提供プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ取得利用装置150で実行される電波マップ取得利用方法を示すだけでなく、電波マップ取得利用装置150で実行可能な電波マップ取得利用プログラムの処理手順を示すものである。
そして、これらの処理は、
図7で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0105】
電波マップ取得利用装置150の要求位置情報生成部110は、要求する位置を決定して要求位置情報を生成する(S151)。
用途情報生成部111は、電波マップの用途を示す用途情報を生成する(S152)。
そして、送信部105は、S151で生成した要求位置情報、及びS152で生成した用途情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置250に送信する(S153)。
【0106】
電波マップ提供装置250の受信部201は、要求する位置を示す要求位置情報、及び電波マップの用途を示す用途情報、を含む電波マップリクエストを受信する(S251)。
制御部203は、電波マップリクエストに含まれる用途情報がリアルタイムに通信を行うリアルタイム通信を示すか否かを判定する(S252)。
用途情報がリアルタイム通信を示す場合(S252:Yes)、要求位置情報に対応する基準位置における第1の通信速度及び第2の通信速度のうち小さい方を選択して最低保証速度情報とする(S253)。
用途情報がリアルタイム通信以外を示す場合(S252:No)、要求位置情報に対応する基準位置における第1の接続確率、第2の接続確率、第1の通信速度、及び第2の通信速度を用いて通信速度の期待値である期待値速度情報を算出する(S254)。
そして、送信部205は、S253で取得した最低保証速度情報、又はS254で取得した期待値速度情報を含む電波マップリプライを送信する(S255)。
【0107】
電波マップ取得利用装置150の受信部106は、電波マップリプライを電波マップ提供装置250から受信する(S154)。
そして、S154で受信した電波マップリプライに基づき、外部の通信装置との間で無線通信を行う(S155)。例えば、アプリケーション107を実行して、外部の通信装置に対し、車両が収集した車両情報を送信する。
【0108】
2.総括
以上、本発明の各実施形態におけるプローブ情報送信装置、電波マップ生成装置、電波マップ提供装置、電波マップ取得利用装置の特徴について説明した。
【0109】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0110】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0111】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0112】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0113】
各実施形態は、車両に搭載されるプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、車両用以外の専用又は汎用の装置も含むものである。
【0114】
各実施形態では、各実施形態に開示のプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置を車両に搭載する前提で説明したが、歩行者が所持する前提としてもよい。
【0115】
また、本発明の装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0116】
また各装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0117】
本発明の電波マップ生成装置や電波マップ提供装置は、各種サービスの提供を目的とするために用いられることが想定される。かかるサービスの提供に伴い、本発明の装置が使用され、本発明の方法が使用され、又は/及び本発明のプログラムが実行されることになる。
【0118】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0119】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置は、主として自動車に搭載される車両用の電子制御装置として説明したが、自動二輪車、電動機付自転車、鉄道はもちろん、歩行者、船舶、航空機等、移動する移動体全般に適用することが可能である。
また、携帯電話やタブレット、ゲーム機等、様々な用途に用いられる装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
100 プローブ情報送信装置、101 位置情報取得部、102 無線通信部、103 伝搬環境情報取得部、105 送信部、106 受信部、109 プローブ情報生成部、110 要求位置情報生成部、111 用途情報生成部、150 電波マップ取得利用装置、200 電波マップ生成装置、201 受信部、202 プローブ情報保存部、204 電波マップ保存部、205 送信部、206 通信速度算出部、208 接続確率算出部、209 最低保証速度算出部、210 期待値速度算出部、250 電波マップ提供装置