(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】箔転写装置
(51)【国際特許分類】
B65H 43/00 20060101AFI20241106BHJP
B41F 16/00 20060101ALI20241106BHJP
G03G 15/22 20060101ALI20241106BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20241106BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65H43/00
B41F16/00 B
G03G15/22 101Z
G03G21/14
B65H37/04 Z
(21)【出願番号】P 2020178959
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 智也
(72)【発明者】
【氏名】大平 彩花
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121722(JP,A)
【文献】特開2002-166476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 43/00
B41F 16/00
G03G 15/22
G03G 21/14
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔を含む箔フィルムにシートを重ねて、シートに前記箔を転写する箔転写装置であって、
前記箔フィルムおよびシートを加熱する加熱ローラと、
前記加熱ローラとの間で前記箔フィルムおよびシートを挟んだ状態で回転することで前記箔フィルムとシートを搬送する加圧ローラと、
前記加熱ローラおよび前記加圧ローラのうち一方のローラを、他方のローラに圧接した圧接位置と、前記他方のローラから離間した離間位置との間で移動させる圧接離間機構と、
前記加圧ローラと前記加熱ローラとの間にシートを搬送する搬送ローラと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
シートの搬送方向におけるシートの一部の範囲に前記箔フィルムを圧接させて転写を実行する箔セーブモードを実行可能であり、前記箔セーブモードにおいて、前記箔フィルムをシートの先端から離間したシート上の位置でシートに圧接させ始める場合に、
前記搬送ローラを制御して、前記一方のローラを離間位置に位置させた状態でシートの搬送を開始する第1処理と、
前記搬送ローラを制御して、シートが前記加熱ローラ
と前記加圧ローラの間の転写位置に位置している状態において、シート上の箔を転写すべき領域である箔転写領域が前記転写位置に到達する前にシートの搬送を停止する第2処理と、
前記圧接離間機構を制御して、シートが停止している状態で、前記一方のローラを前記離間位置から前記圧接位置へ向けて移動させ始める第3処理と、
前記搬送ローラを制御して、前記一方のローラが前記圧接位置に到達する前に、シートの搬送を再開する第4処理と、
を実行することを特徴とする箔転写装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第4処理において、前記一方のローラが他方のローラに接触した後、前記圧接位置に到達する前に、シートの搬送を再開することを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項3】
前記一方のローラの位置を検出する離間センサを備え、
前記制御部は、前記第4処理において、前記離間センサからの信号に基づいて、シートの搬送を再開することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の箔転写装置。
【請求項4】
前記シートを検出するシートセンサであって、前記シートの搬送方向において前記加熱ローラよりも上流に配置されるシートセンサを備え、
前記制御部は、
前記第2処理において、前記シートセンサで前記シートの先端の通過を検出してからの経過時間に基づいて、シートを停止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の箔転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに箔を転写する箔転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箔転写装置として、箔フィルムが巻回された供給リールと、箔フィルムを巻き取るための巻取リールと、箔フィルムおよびシートを加熱する加熱ローラと、加熱ローラとの間で箔フィルムおよびシートを挟む加圧ローラと、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、回転する加熱ローラおよび加圧ローラによって、箔フィルムおよびシートを搬送することで、シート上のトナー像に箔を転写(以下、「箔転写」ともいう。)することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術において、例えば、箔転写の指令を受けた後、加熱ローラと加圧ローラを圧接した状態でシートの搬送を開始すると、箔フィルムが無駄に搬送されてしまう。このため、加熱ローラと加圧ローラを離間させておき、箔転写をする直前に圧接させると箔フィルムが無駄に搬送されるのを抑制できる。この場合において、シートを搬送しながら、加熱ローラと加圧ローラを圧接させると、加熱ローラと加圧ローラが圧接するときにかかる抵抗によってシートがシワになることがあるので、シートの搬送を止めた状態で加熱ローラと加圧ローラを圧接させる方法が考えられる。
しかしながら、シートの搬送を止めた状態で加熱ローラと加圧ローラを圧接させると、シートが搬送されない状態で加熱ローラと加圧ローラから圧接時に受ける熱と圧力によって、シートに圧接痕が発生するという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、箔フィルムの無駄な搬送を抑制し、かつ、シートに圧接痕が発生するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための箔転写装置は、箔を含む箔フィルムにシートを重ねて、シートに箔を転写する装置であって、加熱ローラと、加圧ローラと、圧接離間機構と、搬送ローラと、制御部と、を備える。加熱ローラは、箔フィルムおよびシートを加熱する。加圧ローラは、加熱ローラとの間で箔フィルムおよびシートを挟んだ状態で回転することで箔フィルムとシートを搬送する。圧接離間機構は、加熱ローラおよび加圧ローラのうち一方のローラを、他方のローラに圧接した圧接位置と、他方のローラから離間した離間位置との間で移動させる。搬送ローラは、加圧ローラと加熱ローラとの間にシートを搬送する。
制御部は、シートの搬送方向におけるシートの一部の範囲に前記箔フィルムを圧接させて転写を実行する箔セーブモードを実行可能であり、前記箔セーブモードにおいて、前記箔フィルムをシートの先端から離間したシート上の位置でシートに圧接させ始める場合に、第1処理と、第2処理と、第3処理と、第4処理と、を実行する。第1処理は、搬送ローラを制御して、一方のローラを離間位置に位置させた状態でシートの搬送を開始する処理である。第2処理は、搬送ローラを制御して、シート上の箔を転写すべき領域である箔転写領域が加熱ローラと加圧ローラの間の転写位置に到達する前にシートの搬送を停止する処理である。第3処理は、圧接離間機構を制御して、シートが停止している状態で、一方のローラを離間位置から圧接位置へ向けて移動させ始める処理である。第4処理は、搬送ローラを制御して、一方のローラが圧接位置に到達する前に、シートの搬送を再開する処理である。
【0007】
この構成によれば、箔セーブモードにおいて、箔フィルムをシートの先端から離間したシート上の位置でシートに圧接させ始める場合に、シート搬送を停止して圧接を開始した後、一方のローラが圧接位置に到達する前に、シートの搬送を再開するので、シートが停止した状態で加熱ローラに圧接される時間を短くすることができる。このため、箔フィルムの無駄な搬送を抑制し、かつ、シートに圧接痕が発生するのを抑制できる。
【0008】
また、前記した構成において、制御部は、第4処理において、一方のローラが他方のローラに接触した後、圧接位置に到達する前に、シートの搬送を再開する構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、一方のローラが他方のローラに接触する前にシートの搬送を再開しないので、一方のローラが他方のローラに接触するときの抵抗がシートの搬送を邪魔することはない。このため、搬送ローラと加圧ローラの間でシートがシワになることをより確実に抑制できる。
【0010】
また、前記した構成において、箔転写装置は、一方のローラの位置を検出する離間センサを備え、制御部は、第4処理において、離間センサからの信号に基づいて、シートの搬送を再開する構成としてもよい。
【0011】
また、前記した構成において、箔転写装置は、シートを検出し、シートの搬送方向において加熱ローラよりも上流に配置されるシートセンサを備え、制御部は、第2処理において、シートセンサでシートの先端の通過を検出してからの経過時間に基づいて、シートを停止する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、箔フィルムの無駄な搬送を抑制し、かつ、シートに圧接痕が発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る箔転写装置を示す図(a)と、箔フィルムの構成を示す断面図(b)である。
【
図2】箔転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
【
図3】制御部、各センサ、各モータ、タッチパネルの接続を説明する図である。
【
図4】全面転写を実行するシートにおける圧接範囲を示す図(a)と、先端転写を実行するシートにおける箔転写領域と圧接範囲を示す図(b)である。
【
図5】中央転写を実行するシートにおける箔転写領域と圧接範囲を示す図(a)と、後端転写を実行するシートにおける箔転写領域と圧接範囲を示す図(b)である。
【
図6】全面転写指令、先端転写指令、後端転写指令および中央転写指令を受けた場合に制御部が実行する動作を示すフローチャートである。
【
図10】後端転写処理を示すフローチャートである。
【
図11】全面転写処理または先端転写処理を実行した場合のタイムチャートである。
【
図12】中央転写処理または後端転写処理を実行した場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、箔転写装置の全体構成を簡単に説明した後、本願発明の特徴部分の構成について説明する。
以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1の右側を「前」とし、
図1の左側を「後」とし、
図1の紙面手前側を「左」とし、
図1の紙面奥側を「右」とする。また、
図1の上下を「上下」とする。
【0015】
図1(a)に示すように、箔転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。箔転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0016】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(
図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述するフィルムユニットFUを着脱するための開口である。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを閉じる閉位置(
図1(a)の位置)と、開口21Aを開放する開位置(
図2の位置)との間で回動可能となっている。
【0017】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。シートトレイ3には、シートトレイ3に載置されたシートSを検知するシートトレイセンサSS0が設けられている。シートトレイセンサSS0は、シートトレイ3にシートSが載置されている場合にONとなり、シートSが載置されていない場合にOFFとなる。
【0018】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、ピックアップローラ11Aと、リタードローラ11Bと、搬送ローラの一例としての上流側搬送ローラ11Cと、を備えている。
【0019】
ピックアップローラ11Aは、シートトレイ3上のシートSを転写部50に向けて供給するためのローラである。リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aによって搬送されるシートSを1枚に分離するためのローラである。
【0020】
リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aの上に配置されている。リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aで送り出されるシートSの上に重なっているシートSをシートトレイ3に向けて戻す方向に回転可能となっている。
【0021】
上流側搬送ローラ11Cは、2つのローラからなり、これらのローラの間でシートSを挟んだ状態で各ローラが回転することで、シートSを搬送可能となっている。上流側搬送ローラ11Cは、シートSの搬送方向(以下、単に「搬送方向」ともいう。)における転写部50の上流に配置され、ピックアップローラ11Aで送り出されるシートSを転写部50に搬送する。
【0022】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、下流側搬送ローラ12Aおよび排出ローラ12Bを備えている。
【0023】
下流側搬送ローラ12Aおよび排出ローラ12Bは、それぞれ、2つのローラからなり、これらのローラの間でシートSを挟んだ状態で各ローラが回転することで、シートSを搬送可能となっている。下流側搬送ローラ12Aは、転写部50と排出ローラ12Bとの間に配置され、転写部50から送り出されるシートSを排出ローラ12Bに搬送する。排出ローラ12Bは、シートSの搬送方向において下流側搬送ローラ12Aの下流側に配置され、下流側搬送ローラ12Aで送り出されるシートSを筐体2の外に排出する。
【0024】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように箔フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUを備えている。
【0025】
フィルムユニットFUは、
図2に示すように、後述する供給リール31の軸方向に直交する方向において、開口21Aを通過して筐体本体21に着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。フィルムユニットFUの供給リール31には、箔フィルムFが巻回されている。
【0026】
図1(b)に示すように、箔フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、箔フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。被支持層F2は、例えば、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層であり、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0027】
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の薄い金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
【0028】
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0029】
供給リール31は、樹脂などからなり、箔フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。供給軸部31Aには、箔フィルムFの一端が固定されている。
【0030】
巻取リール35は、樹脂などからなり、箔フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。巻取軸部35Aには、箔フィルムFの他端が固定されている。
【0031】
なお、
図1等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に箔フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、フィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には箔フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最小となっている。また、フィルムユニットFUの寿命時(箔フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最大となり、供給リール31には箔フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最小となる。
【0032】
第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、箔フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、SUS(ステンレス鋼)などからなっている。
【0033】
第1案内軸41は、シートSの搬送方向において、転写部50の上流に位置する。第1案内軸41は、供給リール31から引き出される箔フィルムFの進行方向を、シートSの搬送方向と略平行となるように変更する。
【0034】
このような第1案内軸41によって案内される箔フィルムFは、被支持層F2(
図1(b)参照)を上に向けた状態で、転写部50に向けて搬送される。また、シートSは、被支持層F2が上に向いた状態の箔フィルムFの上に重ねられて、箔フィルムFとともに転写部50に向けて搬送される。
【0035】
第2案内軸42は、シートSの搬送方向において、転写部50の下流に位置する。第2案内軸42は、転写部50を通過した箔フィルムFの進行方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、箔フィルムFをシートSから剥離させている。
【0036】
第3案内軸43は、シートSから箔フィルムFを剥離させるときの箔フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)を規定している。ここで、剥離角度は、箔フィルムFのうち、第1案内軸41と第2案内軸42の間で張架される部分と、第2案内軸42と第3案内軸43の間で張架される部分とのなす角である。第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された箔フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内している。
【0037】
転写部50は、シートSと箔フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61と、圧接離間機構70とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと箔フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0038】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、箔フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0039】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟み、回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。このように加圧ローラ51と加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟んだ状態で、加圧ローラ51および加熱ローラ61が回転することで、シートSおよび箔フィルムFが搬送される。なお、加熱ローラ61が回転駆動されることで加圧ローラ51が従動回転される構成としてもよい。
【0040】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、箔フィルムFおよびシートSを加熱する。加熱ローラ61は、箔フィルムFの下側に配置され、箔フィルムFと接触している。
【0041】
圧接離間機構70は、加熱ローラ61および加圧ローラ51のうち一方のローラを、他方のローラに圧接した圧接位置と、他方のローラから離間した離間位置との間で移動させる機構である。本実施形態では、圧接離間機構70は、加熱ローラ61を、
図1に実線で示す圧接位置と、
図1に二点鎖線で示す離間位置との間で移動させることで、加熱ローラ61を箔フィルムFに対して接触・離間させている。ここで、圧接位置は、加熱ローラ61が加圧ローラ51に圧接した位置である。また、離間位置は、加熱ローラ61が加圧ローラ51から離間した位置である。
【0042】
このように構成された箔転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された箔フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と箔フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0043】
転写部50においては、シートSと箔フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に転写層F22、つまり、箔が転写される。加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部は、転写位置である。
【0044】
箔転写が行われた後、シートSと箔フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと箔フィルムFが第2案内軸42を通過すると、箔フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから箔フィルムFが剥離される。
【0045】
シートSから剥離された箔フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、箔フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0046】
図3に示すように、箔転写装置1は、搬送モータ80と、クラッチ81と、接離モータ90と、カムCAと、離間センサSAと、制御部300と、タッチパネルTPとをさらに備えている。
【0047】
搬送モータ80は、ピックアップローラ11A、リタードローラ11B、上流側搬送ローラ11Cおよび加圧ローラ51を駆動するためのモータである。ピックアップローラ11Aは、クラッチ81を介して搬送モータ80から駆動が入力される。
【0048】
接離モータ90は、カムCAを駆動して、加熱ローラ61を圧接位置と離間位置との間で移動させるためのモータである。加熱ローラ61が離間位置にある場合に、カムCAが接離モータ90から駆動を受けて回転すると、加熱ローラ61を支持するフレームを押し上げて加熱ローラ61を離間位置から圧接位置に移動させる。また、加熱ローラ61が圧接位置にある場合に、カムCAが接離モータ90から駆動を受けて回転すると、カムCAによるフレームの押し上げが解除される。カムCAによるフレームの押し上げが解除されると、加熱ローラ61は、自重により、圧接位置から離間位置に移動する。
【0049】
離間センサSAは、加熱ローラ61の位置を検知するセンサである。具体的には、離間センサSAは、加熱ローラ61を支持するフレームを検知することで、加熱ローラ61が離間位置に位置するときONとなり、離間位置に位置しないときにOFFとなる。離間センサSAは、例えば、光センサであり、圧接離間機構70の近傍に設けられている。
【0050】
また、ピックアップローラ11Aと上流側搬送ローラ11Cとの間には、シートセンサSS1が設けられている。シートセンサSS1は、シートの搬送方向において加熱ローラ61よりも上流に配置され、シートSを検出するセンサである。シートセンサSS1は、シートSの先端および後端の通過を検出可能である。例えば、シートセンサSS1は、例えば、シートSが接触することで回動するレバーと、レバーの位置を検知する光センサとからなるセンサを用いることができる。なお、本願にいうシートSの先端は、シートSの搬送方向における前方の端の意味である。
【0051】
制御部300は、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、ROM等に記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。
【0052】
タッチパネルTPは、ユーザによって操作されるボタンなどを表示するパネルである。なお、タッチパネルTPは、
図1に示すように、例えばカバー22の上面に設けられている。
【0053】
図3に示すように、タッチパネルTPは、入力部B1と、スタートボタンB2とを表示する。入力部B1は、タッチパネルTPに表示される数値などを変更するための複数のボタンを有している。スタートボタンB2は、箔転写を実行するためのボタンである。
【0054】
制御部300は、シートSの搬送方向におけるシートSの全範囲に箔フィルムFを圧接させて転写を実行する全面転写モードと、搬送方向におけるシートSの一部の範囲に箔フィルムFを圧接させて転写を実行する箔セーブモードと、を実行可能である。なお、全面転写モードは、幅方向においてシートSの一部の範囲においてのみ箔フィルムFがシートSと圧接する場合を含む。
【0055】
ユーザは、箔セーブモードで箔転写を実行する場合に、入力部B1を操作して、箔セーブモードでの動作を設定することが可能である。具体的には、シートSの先端から箔転写を開始するまでの長さである先端余白長さL1と、箔転写をする範囲の長さである箔転写長さLTとを設定することができる。
【0056】
そして、制御部300は、入力された転写モードと、ユーザが設定した入力情報に基づいて、加熱ローラ61をシートSに圧接させる圧接範囲を、箔を転写すべき箔転写領域TAを含むように決定する。具体的には、制御部300は、シートセンサSS1がシートSの先端を検出してから、加熱ローラ61を圧接させ始めるまでの時間と、所定のタイミングから加熱ローラ61を離間させ始めるまでの時間を決定する。ここでの所定のタイミングは、転写モードに応じて、搬送モータ80をONにしたとき、シートセンサSS1がシートの後端を検出したとき、離間センサSAがOFFになったときや、などとすることができる。
【0057】
図4(a)に示すように、全面転写モードが選択される場合、先端余白長さL1と箔転写長さLTは設定されない。制御部300は、シートSの全部を含む範囲を圧接範囲として、全面転写モードを実行する。
【0058】
箔セーブモードには、
図4(b)に示す先端転写モードと、
図5(a)に示す中央転写モードと、
図5(b)に示す後端転写モードが含まれる。
図4(b)に示すように、先端転写モードを選択する場合、ユーザは、先端余白長さL1を設定せず、箔転写長さLTのみを設定する。このとき、ユーザが設定した箔転写長さLTに相当する範囲が箔転写領域TAとなる。
【0059】
図5(a)に示すように、中間転写モードを選択する場合、ユーザは、先端余白長さL1と、箔転写長さLTを設定する。このとき、ユーザが設定した箔転写長さLTに相当する範囲が箔転写領域TAとなる。
【0060】
図5(b)に示すように、後端転写モードを選択する場合、ユーザは、先端余白長さL1のみを設定し、箔転写長さLTを設定しない。このとき、先端余白長さL1に対応する領域に対して、搬送方向の後側の範囲が箔転写領域TAとなる。
【0061】
ユーザにより、転写モード等を設定された後、スタートボタンBが押されると、タッチパネルTPは、各モードに応じた指令や箔転写領域TAの情報を制御部300に出力する。以下の説明では、全面転写モードが選択された場合に制御部300に出力される指令を、「全面転写指令」と称し、先端転写モードが選択された場合に制御部300に出力される指令を、「先端転写指令」と称する。また、後端転写モードが選択された場合に制御部300に出力される指令を、「後端転写指令」と称し、中央転写モードが選択された場合に制御部300に出力される指令を、「中央転写指令」と称する。
【0062】
制御部300は、各転写モードにおいて転写指令を受けると、加熱ローラ61を離間位置に位置させ、クラッチ81を介してピックアップローラ11Aを駆動し、シートトレイ3上のシートSを転写部50に向けて供給する。その後、制御部300は、各転写モードに応じた処理を実行する。
【0063】
以下に、各転写モードで制御部300が実行する処理を説明する。なお、箔転写を実行していない初期状態において、加熱ローラ61は離間位置に位置し、離間センサSAはONとなっている。
【0064】
各転写モードにおいて、シートトレイ3にシートSが載置された状態で、スタートボタンB6が押されると、制御部300は、搬送モータ80を駆動し、シートSをピックアップしてシートSを転写部50に搬送する。そして、制御部300は、1枚目のシートSの先端が転写位置に到達する前にシートSの搬送を停止する。その後、制御部300は、加熱ローラ61を離間位置から圧接位置に移動させる。
【0065】
ここで、全面転写モードおよび先端転写モードを実行する場合、制御部300は、加熱ローラ61が圧接位置に到達した後にシートSを搬送して箔転写を実行する。
【0066】
一方、中央転写モードおよび後端転写モードを実行する場合、すなわち、箔フィルムFをシートSの先端から離間したシート上の位置でシートに圧接させ始める場合に、制御部300は、加熱ローラ61が圧接位置に到達する前に、シートSを搬送して箔転写を実行する。詳しくは、中央転写モードおよび後端転写モードを実行する場合、制御部300は、第1処理と、第2処理と、第3処理と、第4処理と、を実行する。
【0067】
第1処理は、制御部300が上流側搬送ローラ11Cを制御して、加熱ローラ61を離間位置に位置させた状態でシートSの搬送を開始する処理である。
【0068】
第2処理は、制御部300が上流側搬送ローラ11Cを制御して、シートS上の箔転写領域TAが加熱ローラ61と加圧ローラ51の間の転写位置に到達する前にシートSの搬送を停止する処理である。制御部300は、第2処理において、シートセンサSS1でシートSの先端の通過を検出してからの経過時間に基づいて、シートSを停止する。制御部300は、シートセンサSS1がシートSの先端の通過を検出してから時間T11が経過したときにシートSを停止する。時間T11は、ユーザが設定した先端余白長さL1に応じて決定される時間であり、箔転写領域TAが、転写位置に到達する直前にシートSを停止できるような時間である。
【0069】
第3処理は、制御部300が圧接離間機構70を制御して、シートSが停止している状態で、加熱ローラ61を離間位置から圧接位置へ向けて移動させ始める処理である。
【0070】
第4処理は、制御部300が上流側搬送ローラ11Cを制御して、圧接位置に到達する前に、シートSの搬送を再開する処理である。本実施形態において、第4処理は、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触した後、シートSの搬送を再開する。制御部300は、第4処理において、離間センサSAからの信号に基づいて、シートSの搬送を再開する。制御部300は、離間センサSAがONからOFFになってから時間T22が経過したときに、シートSの搬送を再開する。
【0071】
次に、制御部300が実行する動作の一例について、
図6のフローチャートを参照して説明する。制御部300は、箔転写装置1の電源が投入された後、
図6に示す処理を繰り返し実行している。
【0072】
図6に示すように、制御部300は、まず、全面転写指令があるか否かを判断する(S101)。ステップS101において全面転写指令があると判断した場合には(Yes)、制御部300は、全面転写処理を実行して(S102)、本処理を終了する。
【0073】
ステップS101において全面転写指令がないと判断した場合には(No)、制御部300は、先端転写指令があるか否かを判断する(S103)。ステップS103において先端転写指令があると判断した場合には(Yes)、制御部300は、先端転写処理を実行して(S104)、本処理を終了する。
【0074】
ステップS103において先端転写指令がないと判断した場合には(No)、制御部300は、後端転写指令があるか否かを判断する(S105)。ステップS105において後端転写指令があると判断した場合には(Yes)、制御部300は、後端転写処理を実行して(S106)、本処理を終了する。
【0075】
ステップS105において後端転写指令がないと判断した場合には(No)、制御部300は、中央転写指令があるか否かを判断する(S107)。ステップS107において中央転写指令があると判断した場合には(Yes)、制御部300は、中央転写処理を実行して(S108)、本処理を終了する。ステップS107において中央転写指令がないと判断した場合には(No)、制御部300は、本処理を終了する。
【0076】
次に、
図7および
図11のフローチャートを参照して、制御部300が実行する先端転写処理の一例について具体的に説明する。
図11は、全面転写処理または先端転写処理を実行した場合の動作を示している。
図11において、実線は、先端転写処理の場合を示し、破線は、全面転写処理の場合を示す。
図7に示す先端転写処理において、制御部300は、搬送モータ80をONにした後(S1,t1)、シートセンサSS1がONされたかを判定する(S2)。
【0077】
ステップS2において、制御部300は、シートセンサSS1がONされるまで待ち、シートセンサSS1がONされたと判定すると(S2,Yes,t2)、その後、シートセンサSS1がONされてから時間T1が経過したかを判定する(S3)。
【0078】
ステップS3において、制御部300は、シートセンサSS1がONされてから時間T1が経過したと判定した場合(S3,Yes,t3)、シートSの先端が転写位置の直前に到達したと判定し、搬送モータ80をOFFし、接離モータ90をONする(S4,t3)。これにより、シートSの搬送が停止した状態で、加熱ローラ61が離間位置から圧接位置へ向けて移動を開始する。時間T1は、シートセンサSS1がONとなってから、シートSの先端が転写位置に到達する直前にシートSを停止できるような時間である。
【0079】
ステップS4の後、制御部300は、離間センサSAがOFFであるかを判定する(S5)。制御部300は、離間センサSAがOFFとなるまで待ち、離間センサSAがOFFであると判定した場合(S5,Yes,t32)、離間センサOFFとなってから時間T2が経過したかを判定する(S6)。時間T2は、離間センサSAがOFFとなってから、加熱ローラ61が圧接位置に到達するまでにかかる時間である。
【0080】
ステップS6において、制御部300は、離間センサSAがOFFとなってから時間T2が経過するまで待ち、離間センサSAがOFFとなってから時間T2が経過したと判定した場合(S6,Yes,t5)、接離モータ90をOFFし(S7,t5)、搬送モータ80をONし(S8,t5)、シートSの搬送を再開する。
【0081】
ステップS8の後、制御部300は、搬送モータ80がONとなってから設定時間TXが経過したかを判定する(S9)。設定時間TXは、箔転写長さLTに応じて決定される時間であり、箔転写領域TAの全体に箔転写するのに十分な時間である。
【0082】
ステップS9において、制御部300は、搬送モータ80がONとなってから設定時間TXが経過するまで待ち、搬送モータ80がONとなってから設定時間TXが経過したと判定した場合(S9,Yes,t7)、接離モータ90をONして加熱ローラ61を離間し(S10,t7)、シートセンサSS1がOFFとなったかを判定する(S11)。
【0083】
ステップS11において、制御部300は、シートセンサSS1がOFFとなるまで待ち、シートセンサSS1がOFFとなったと判定した場合(S11,Yes,t9)、次のシートSがあるかを判定する(S12)。制御部300は、次のシートSがあることはシートトレイセンサSS0がONとなっていることで判定することができる。
【0084】
ステップS12において、制御部300は、次のシートSがあると判定した場合(S12,Yes)、次のシートSをピックアップして(S13)、ステップS2に移行する。一方、ステップS12において、制御部300は、次のシートSがないと判定した場合(S12,No)、搬送モータ80をOFFして(S15)、処理を終了する。
【0085】
次に、
図8のフローチャートを参照して、制御部300が実行する全面転写処理の一例について説明する。全面転写処理は、後半の一部の処理が先端転写処理と異なるだけで、その他の処理(S1~S8)は先端転写処理と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、全面転写処理では、制御部300は、ステップS8の後、シートセンサSS1がOFFとなったかを判定する(S11)。
【0087】
ステップS11において、制御部300は、シートセンサSS1がOFFとなるまで待ち、シートセンサSS1がOFFとなったと判定した場合(S11,Yes,t9)、次のシートSがあるかを判定する(S12)。
【0088】
ステップS12において、制御部300は、次のシートSがあると判定した場合(S12,Yes)、次のシートSをピックアップして(S13)、ステップS11に移行する。一方、ステップS12において、制御部300は、次のシートSがないと判定した場合(S12,No)、加熱ローラ61を離間し(S14)、その後、搬送モータ80をOFFして(S15)、処理を終了する。
【0089】
次に、
図9および
図12のフローチャートを参照して、制御部300が実行する中央転写処理の一例について説明する。
図12は、中央転写処理または後端転写処理を実行した場合の動作を示している。
図12において、実線は、中央転写処理の場合を示し、破線は、後端転写処理の場合を示す。
図9に示す中央転写処理において、制御部300は、搬送モータ80をONにした後(S1,t1)、シートセンサSS1がONされたかを判定する(S2)。
【0090】
ステップS2において、制御部300は、シートセンサSS1がONされるまで待ち、シートセンサSS1がONされたと判定すると(S2,Yes,t2)、その後、シートセンサSS1がONされてから時間T11が経過したかを判定する(S31)。時間T11は、上述したようにユーザが設定した先端余白長さL1に応じて決定される時間であり、箔転写領域TAが、転写位置に到達する直前にシートSを停止できるような時間である。
【0091】
ステップS31において、制御部300は、シートセンサSS1がONされてから時間T11が経過したと判定した場合(Yes,t31)、箔転写領域TAが転写位置の直前に到達したと判定し、搬送モータ80をOFFし、接離モータ90をONする(S4,t31)。これにより、シートSの搬送が停止した状態で、加熱ローラ61が離間位置から圧接位置へ向けて移動を開始する。
【0092】
ステップS4の後、制御部300は、離間センサSAがOFFであるかを判定する(S5)。制御部300は、離間センサSAがOFFとなるまで待ち、離間センサSAがOFFであると判定した場合(S5,Yes,t32)、離間センサOFFとなってから時間T22が経過したかを判定する(S61)。時間T22は、離間センサSAがOFFとなってから、加熱ローラ61が接触するまでにかかる時間である。
【0093】
ステップS61において、制御部300は、離間センサSAがOFFとなってから時間T22が経過するまで待ち、離間センサSAがOFFとなってから時間T22が経過したと判定した場合(S61,Yes,t40)、搬送モータ80をONして(S62,t40)、その後、離間センサOFFから時間T23が経過したかを判定する(S63)。時間T23は、離間センサSAがOFFとなってから、加熱ローラ61が圧接位置に到達するまでにかかる時間である。なお、時間T23は、時間T22より長い時間である。
【0094】
ステップS63において、制御部300は、離間センサOFFから時間T23が経過するまで待ち、離間センサOFFから時間T23が経過したと判定した場合(S63,Yes,t5)、接離モータ90をOFFし(S64)、ステップS9に移行する。
ステップS9以降は、先端転写処理の場合と同じであるので、説明を省略する。
【0095】
次に、
図10のフローチャートを参照して、制御部300が実行する後端転写処理の一例について説明する。後端転写処理は、後半の一部の処理が中央転写処理と異なるだけで、前半の処理(S1~S5,S61~S64)は中央転写処理と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
後端転写処理では、中央転写処理の場合のように箔転写領域TAが転写位置を通過した後、シートSが転写位置にある間に加熱ローラ61を離間させるのではなく、シートSの後端が転写位置を通過した後に加熱ローラ61を離間させる。そのため、
図10に示すように、制御部300は、ステップS64の後、シートセンサSS1がOFFとなったかを判定する(S71)。
【0097】
ステップS71において、制御部300は、シートセンサSS1がOFFとなるまで待ち、シートセンサSS1がOFFとなったと判定した場合(S71,Yes,t9)、次のシートSがあるかを判定する(S72)。
【0098】
ステップS72において、制御部300は、次のシートSがあると判定した場合(S72,Yes)、次のシートSをピックアップし(S73)、シートSの後端が転写位置を通過したかを判定する(S74)。なお、シートSの後端が転写位置を通過したかは、シートセンサSS1がOFFとなってから時間T3が経過したかを判定すればよい。
【0099】
ステップS74において、制御部300は、シートSの後端が転写位置を通過するまで待ち、シートSの後端が転写位置を通過したと判定した場合(S74,Yes,t9)、接離モータ90をONし(t10)、加熱ローラ61を離間し(S75)、離間が完了したら接離モータ90をOFFし(t11)、ステップS2に移行する。
【0100】
一方、ステップS72において、制御部300は、次のシートSがないと判定した場合(S72,No)、接離モータ90をONして加熱ローラ61を離間させ(S76)、搬送モータ80をOFF(S77)して、処理を終了する。
【0101】
以上に説明した本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
箔転写装置1では、箔転写を実行する前まで加熱ローラ61と加圧ローラ51を離間させておき、箔転写を実行する直前に加熱ローラ61と加圧ローラ51を圧接させる。このため、箔フィルムFが無駄に搬送されるのを抑制できる。さらに、箔転写装置1では、シートSの先端から、箔セーブモードにおいて、箔フィルムをシートの先端から離間したシート上の位置でシートに圧接させ始める場合に、シート搬送を停止して圧接を開始した後、加熱ローラ61が圧接位置に到達する前に、シートSの搬送を再開する。このため、シートが停止した状態で加熱ローラ61に圧接される時間を短くすることができるので、加熱ローラ61が圧接位置に到達した後にシートSの搬送を再開する場合に比べて、圧接痕の発生を抑制することができる。この結果、箔フィルムFの無駄な搬送を抑制し、かつ、シートSに圧接痕が発生するのを抑制できる。
【0102】
また、制御部300は、第4処理において、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触した後、圧接位置に到達する前に、シートSの搬送を再開する。このため、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触する前にシートSの搬送を再開しないので、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触するときの抵抗がシートSの搬送を邪魔することはない。この結果、上流側搬送ローラ11Cと加圧ローラ51の間でシートSがシワになることをより確実に抑制できる。
【0103】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造や処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0104】
前記実施形態では、制御部300は、第4処理において、上流側搬送ローラ11Cを制御して、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触したときにシートSの搬送を再開していたが、例えば、
図12の搬送モータ80の動作における細線のように、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触した後、加熱ローラ61が圧接位置に到達する前までの間(時刻t41)にシートSの搬送を再開してもよい。この形態では、前記実施形態よりも上流側搬送ローラ11Cと加圧ローラ51の間でシートSがシワになることをより確実に抑制できる。
【0105】
前記実施形態では、制御部300は、第4処理において、上流側搬送ローラ11Cを制御して、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触したときにシートSの搬送を再開していたが、
図12の搬送モータ80の動作における細線のように、制御部300は、加熱ローラ61が加圧ローラ51に接触する前(t42)にシートSの搬送を再開してもよい。この場合には、前記実施形態よりもさらにシートSに圧接痕が発生するのをより確実に抑制できる。
【0106】
前記実施形態では、
図7~
図9のステップS4において、搬送モータ80をOFFし、同時に接離モータ90をONしていた(
図11における時刻t3,
図12における時刻t31も参照)が、搬送モータ80をOFFした後、所定時間待ってから接離モータ90をONしてもよい。
【0107】
前記実施形態では、制御部が各転写処理モード、先端余白長さ、箔転写長さをユーザが入力することによって圧接範囲を決定していたが、制御部がシートのトナー像を検知して圧接範囲を決定してもよい。
【0108】
前記実施形態では、各モードにおいて加圧ローラ51を停止させる際などにおいて、搬送ローラ(11A~12B)のすべてを停止させたが、本発明はこれに限定されず、シートSに接触している搬送ローラだけを停止させてもよい。
【0109】
前記実施形態では、加熱ローラ61を加圧ローラ51に対して圧接・離間させたが、本発明はこれに限定されず、加圧ローラを加熱ローラに対して圧接・離間させてもよい。
【0110】
前記実施形態では、箔転写装置として、シート上に形成されたトナー像の上に箔を転写するものを例示したが、本発明はこれに限定されず、箔転写装置は、シートに箔を転写するものであればどのようなものであってもよい。
【0111】
前記実施形態では、箔転写用フィルムカートリッジFCに供給リール31と巻取リール35を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、箔転写用フィルムカートリッジに供給リールを設け、筐体に巻取リールを設けてもよい。
【0112】
前記実施形態では、入力部の一例としてタッチパネルTPに表示されるボタンを例示したが、本発明はこれに限定されず、入力部は、例えばユーザの操作によって押圧位置と解除位置に移動可能な押しボタン(スイッチ)などであってもよい。
【0113】
前記実施形態では、タッチパネルTPからの信号に基づいて制御部が各モードを実行するように構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置と箔転写装置が一体に構成される場合には、印刷転写指令に含まれる画像データに基づいて制御部がシート上のトナー領域の大きさや位置を判断し、トナー領域の大きさや位置に基づいて各モードを選択してもよい。
【0114】
前記実施形態では、シートセンサを、レバーと、レバーの位置を検知する光センサとで構成したが、本発明はこれに限定されず、シートセンサは、例えば、光センサのみで構成されていてもよい。
【0115】
前記実施形態では、箔フィルムFを4層で構成したが、本発明はこれに限定されず、箔フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
【0116】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 箔転写装置
11A ピックアップローラ
11B リタードローラ
11C 上流側搬送ローラ
50 転写部
51 加圧ローラ
61 加熱ローラ
70 圧接離間機構
80 搬送モータ
90 接離モータ
300 制御部
S シート
SA 離間センサ
SS1 シートセンサ