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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B62D25/20 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020184506
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074453
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-247178(JP,A)
【文献】特開2020-097281(JP,A)
【文献】特開昭59-011971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070897(US,A1)
【文献】実開平01-063563(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びるセンタートンネルと、
前記サイドシルと前記センタートンネルとの間で前記車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、
前記フロアパネルの下側で前記リヤサイドメンバと車両の前部に位置するフロントサイドメンバとをつなぐフロアサイドメンバとを備え、
前記フロアサイドメンバは、
車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜するフロント傾斜部と、
前記フロント傾斜部の後端から車両後方に直状に延びる直状部と、
前記直状部の後端から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するリヤ傾斜部とを有し、
前記フロアサイドメンバの直状部は、前記フロアパネルのうち、前記サイドシルと前記センタートンネルとの間に位置するフロア振動面の車幅方向での中間位置に配置されていることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
車両の床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びるセンタートンネルと、
前記サイドシルと前記センタートンネルとの間で前記車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、
前記フロアパネルの下側で前記リヤサイドメンバと車両の前部に位置するフロントサイドメンバとをつなぐフロアサイドメンバとを備え、
前記フロアサイドメンバは、
車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するフロント傾斜部と、
前記フロント傾斜部の後端から車両後方に直状に延びる直状部と、
前記直状部の後端から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するリヤ傾斜部とを有することを特徴とする車両下部構造。
【請求項3】
前記フロアサイドメンバは、フロントサスペンションフレームが接続されるサスフレ接続部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記サスフレ接続部は、前記フロント傾斜部の前端から車両前方に直状に延びていることを特徴とする請求項に記載の車両下部構造。
【請求項5】
当該車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていて前記フロアサイドメンバのリヤ傾斜部に接続されるリヤクロスメンバを備え、
前記リヤ傾斜部は、
前記リヤクロスメンバが接続される接続位置よりも前方に位置する第1リヤ傾斜部と、
前記接続位置よりも後方に位置する第2リヤ傾斜部とを有し、
前記第1リヤ傾斜部は、車幅方向外側に傾斜する傾斜度合が前記第2リヤ傾斜部の傾斜度合よりも緩やかであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項6】
当該車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていて前記サイドシル、前記リヤサイドメンバおよび前記フロアサイドメンバのリヤ傾斜部に接続されるリヤクロスメンバを備え、
前記リヤ傾斜部は、上方に膨出する膨出部を有し、
前記リヤクロスメンバは、前記膨出部の上面と、該膨出部の前面または後面の少なくとも一方とに接続されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記フロアサイドメンバの後端部は、前記リヤサイドメンバに接続されていて、
前記フロアサイドメンバは、前記リヤサイドメンバと前記リヤクロスメンバとともに閉断面を形成していることを特徴とする請求項5または6に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、車両の前部に位置する各部材で構成されるフロントメンバと、車両の後部に位置する各部材で構成されるリヤメンバとを、サイドシルやフロアパネルの下側に配置されるサイドメンバによって連結する車両下部構造を備える。かかる車両下部構造とすることにより、同構造は、車両前後方向の荷重を車両の骨格部材全体で受けている。
【0003】
特許文献1に記載の車両構造では、サイドシルに相当するロッカ部15同士の間に、リヤバンパまで延びるサイドメンバ3を配置している。サイドメンバ3は、フロア部11の下面に位置する部位として、車両幅方向内側に傾斜する内入り傾斜部33と、内入り傾斜部33の後部から後方へ直状に伸びる直状部34と、直状部34の後端からロッカ部15に向かって傾斜する拡幅傾斜部35とを有する。さらにサイドメンバ3では、内入り傾斜部33、直状部34および拡幅傾斜部35の上面がフロア部11の下面に溶接されている。このようにして特許文献1の車両構造では、車両の前突時における衝撃吸収性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-97281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両構造では、サイドメンバ3を境界にしてフロア部11が車幅方向に分割されている。サイドメンバ3の直状部34は、車幅方向でロッカ部15よりもトンネル部12側に寄せて配置されている。このため、フロア部11では、直状部34を境界にして、車幅方向外側のフロア面の車幅方向の寸法が大きくなるため、フロア振動(特に面振動)が発生しやすくなるおそれがある。
【0006】
さらに、サイドメンバ3では、直状部34の後端位置よりも拡幅傾斜部35の後端位置が車幅方向に大きくオフセットしている。このため、フロア部11では、拡幅傾斜部35とトンネル部51の間や、拡幅傾斜部35同士の間のフロア面の車幅方向の寸法が大きくなるため、フロア振動が発生しやすくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、フロアサイドメンバによってフロア振動を抑制することができる車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びるセンタートンネルと、サイドシルとセンタートンネルとの間で車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、フロアパネルの下側でリヤサイドメンバと車両の前部に位置するフロントサイドメンバとをつなぐフロアサイドメンバとを備え、フロアサイドメンバは、車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜するフロント傾斜部と、フロント傾斜部の後端から車両後方に直状に延びる直状部と、直状部の後端から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するリヤ傾斜部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロアサイドメンバによってフロア振動を抑制することができる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る車両下部構造を示す下面図である。
図2図1の車両下部構造の一部および各種サスペンションを示す図である。
図3図2(a)の車両下部構造のD-D断面および比較例を示す図である。
図4図1の車両下部構造の一部および変形例を示す図である。
図5図4(a)の車両下部構造を他の方向から見た状態を示す図である。
図6図1の車両下部構造の一部を車両前方から見た状態を示す図である。
図7図1の車両下部構造の変形例の一部を詳細に示す図である。
図8図7の車両下部構造を他の方向から見た状態を示す図である。
図9図1の車両下部構造の他の変形例を模式的に示す図である。
図10図1の車両下部構造のさらに他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びるセンタートンネルと、サイドシルとセンタートンネルとの間で車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、フロアパネルの下側でリヤサイドメンバと車両の前部に位置するフロントサイドメンバとをつなぐフロアサイドメンバとを備え、フロアサイドメンバは、車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜するフロント傾斜部と、フロント傾斜部の後端から車両後方に直状に延びる直状部と、直状部の後端から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するリヤ傾斜部とを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、フロアサイドメンバは、その車両前後に位置するフロントサイドメンバとリヤサイドメンバとを接続している。また、リヤサイドメンバは、サイドシルとセンタートンネルの間に位置する。このため、サイドシルとセンタートンネルの間にフロアサイドメンバが配置される。したがって、フロアパネルは、フロアサイドメンバを境界にして車幅方向に分割される。ここでフロアパネルでは、フロア振動面の中間位置にフロアサイドメンバを配置することでフロア振動を抑制することができる。なおフロア振動面の中間位置とは、フロアパネルの水平面において、センタートンネルとフロアサイドメンバの間の寸法と、サイドシルとフロアサイドメンバの間の寸法とがほぼ同じになる位置である。
【0013】
また上記構成では、フロアサイドメンバにフロント傾斜部とリヤ傾斜部を設定している。これにより、フロアサイドメンバの車両前後に位置するフロントサイドメンバやリヤサイドメンバとの接続位置がフロア振動面の中間位置より離れた位置であっても、2つの傾斜部の傾斜度合や長さを調整することで、2つの傾斜部の間に位置する直状部をフロア振動面の中間位置に寄せて近接させることができる。したがって上記構成によれば、フロアサイドメンバの直状部をフロア振動面の中間位置に寄せることで、フロア振動を抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の他の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びるセンタートンネルと、サイドシルとセンタートンネルとの間で車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、フロアパネルの下側でリヤサイドメンバと車両の前部に位置するフロントサイドメンバとをつなぐフロアサイドメンバとを備え、フロアサイドメンバは、車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するフロント傾斜部と、フロント傾斜部の後端から車両後方に直状に延びる直状部と、直状部の後端から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するリヤ傾斜部とを有することを特徴とする。
【0015】
上記構成では、サイドシルとセンタートンネルの間にフロアサイドメンバを配置している。このため、フロアパネルは、フロアサイドメンバを境界にして車幅方向に分割される。上記構成では、フロアサイドメンバにフロント傾斜部とリヤ傾斜部を設定している。これにより、フロアサイドメンバの車両前後に位置するフロントサイドメンバやリヤサイドメンバとの接続位置がフロア振動面の中間位置より離れた位置にあっても、2つの傾斜部の傾斜度合や長さを調整することで、2つの傾斜部の間に位置する直状部をフロア振動面の中間位置に寄せて近接させることができる。したがって上記構成によれば、フロアサイドメンバの直状部をフロア振動面の中間位置に寄せることで、フロア振動を抑制することができる。
【0016】
上記のフロアサイドメンバの直状部は、フロアパネルのうち、サイドシルとセンタートンネルとの中間位置に配置されているとよい。
【0017】
このようにフロアサイドメンバは、フロント傾斜部およびリヤ傾斜部によって、サイドシルとセンタートンネルとの中間位置、すなわちサイドシルとセンタートンネルとの間に位置する水平なフロア振動面の車幅方向での中間位置に、直状部を近接させることができる。上記構成では、フロアサイドメンバの直状部を、中間位置に重ねて配置したので、フロアサイドメンバの直状部を境界にしてフロア振動面の一方側と他方側の寸法差が小さくなり、フロア振動を抑制することができる。
【0018】
上記のフロアサイドメンバは、フロントサスペンションフレームが接続されるサスフレ接続部を有するとよい。
【0019】
これにより、フロアサイドメンバは、サスフレ接続部によって剛性の高いフロントサスペンションフレームに支持される。このため、フロアサイドメンバ自体の振動を抑制することができるので、フロアサイドメンバに接続されるフロアパネルのフロア振動も抑制することができる。
【0020】
上記のサスフレ接続部は、フロント傾斜部の前端から車両前方に直状に延びているとよい。
【0021】
このように、フロアサイドメンバでは、フロント傾斜部とは異なる部位であるサスフレ接続部が、フロント傾斜部の前端から車両前方に直状に延びている。このため、フロント傾斜部自体にフロントサスペンションフレームとの接続部を設ける場合と比べて、サスフレ接続部に接続されるフロントサスペンションフレームとの後方固定点を車幅方向外側に配置しやすくなる。その結果、フロアサイドメンバに車幅方向の荷重が作用したときに、サスフレ接続部の後方固定点から、フロントサイドメンバなどに接続されるフロントサスペンションフレームの前方固定点に荷重を分散させて逃がしやすくすることができる。このため、フロントサイドメンバ自体の振動を抑制して、フロア振動を抑制することができる。
【0022】
また、フロントサイドメンバなどに設定されるフロントサスペンションフレームの前方固定点や、フロントサスペンションフレームに接続されているトルクロッドが車幅方向の荷重を受けても、この荷重をフロアサイドメンバに分散させて逃がしやすくすることができる。このため、フロントサスペンションフレームの振動が抑制されて、操舵時の安定性を高めることができる。
【0023】
さらに、サスフレ接続部がフロント傾斜部の前端から車両前方に直状に延びているので、フロント傾斜部が前方から荷重を受けたときに、フロント傾斜部が車幅方向に変形して例えばダッシュクロスメンバやフロントサスペンションフレームなどのフロントメンバが後方に移動することを抑制することができる。
【0024】
上記の車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていてフロアサイドメンバのリヤ傾斜部に接続されるリヤクロスメンバを備え、リヤ傾斜部は、リヤクロスメンバが接続される接続位置よりも前方に位置する第1リヤ傾斜部と、接続位置よりも後方に位置する第2リヤ傾斜部とを有し、第1リヤ傾斜部は、車幅方向外側に傾斜する傾斜度合が第2リヤ傾斜部の傾斜度合よりも緩やかであるとよい。
【0025】
このように、フロアサイドメンバでは、リヤ傾斜部のうちリヤクロスメンバの接続位置よりも前方の第1リヤ傾斜部が、接続位置よりも後方の第2リヤ傾斜部に比べて傾斜度合を緩やかにしている。このため、フロアサイドメンバは、前方から荷重を受けたときに局所的に応力が集中しにくくなり、この荷重に起因して車幅方向に変形することを抑制することができる。
【0026】
また、第1リヤ傾斜部の傾斜度合が第2リヤ傾斜部よりも緩やかなので、第1リヤ傾斜部を境界とするフロア振動面の一方側と他方側の車幅方向の寸法差の変化度合も緩やかになるため、フロア振動を抑制することができる。
【0027】
仮に、第1リヤ傾斜部だけでなく第2リヤ傾斜部も傾斜度合を緩やかにすると、リヤ傾斜部の車両前後方向の寸法が大きくなり、直状部の車両前後方向の寸法が制限されてしまう。そこで上記構成では、リヤ傾斜部のうち、第2リヤ傾斜部の傾斜度合を第1リヤ傾斜部の傾斜度合を大きく急峻にすることで、リヤ傾斜部全体の車両前後の寸法が大きくなることを抑制して、車両前後方向に延びる直状部を配置するスペースを確保している。
【0028】
さらに、第2リヤ傾斜部の傾斜度合を大きくすると、前方から荷重を受けたときに第2リヤ傾斜部に局所的に応力が集中して第2リヤ傾斜部が車幅方向に変形しやすくなる傾向にある。そこで上記構成では、第2リヤ傾斜部の前方にリヤクロスメンバとの接続位置を設定することにより、第2リヤ傾斜部の車幅方向の変形をリヤクロスメンバによって抑制することができる。
【0029】
上記の車両下部構造はさらに、車幅方向に延びていてサイドシル、リヤサイドメンバおよびフロアサイドメンバのリヤ傾斜部に接続されるリヤクロスメンバを備え、リヤ傾斜部は、上方に膨出する膨出部を有し、リヤクロスメンバは、膨出部の上面と、膨出部の前面または後面の少なくとも一方とに接続されているとよい。
【0030】
ここでサイドシル、リヤサイドメンバおよびリヤ傾斜部をリヤクロスメンバによって接続する場合、仮に、リヤ傾斜部に上記構成の膨出部を設定しなければ、リヤ傾斜部の上面にリヤクロスメンバを接続することになる。このような構成では、リヤ傾斜部とリヤクロスメンバの接続面積を確保できず、リヤ傾斜部の車幅方向の変形を抑制し難くなる。そこで上記構成では、リヤ傾斜部に上方に膨出する膨出部を設けることにより、リヤクロスメンバとリヤ傾斜部の接続面積を増やして接続剛性を高めている。したがって上記構成によれば、フロアサイドメンバの変形や振動を抑制して、フロア振動も抑制することができる。
【0031】
上記のフロアサイドメンバの後端部は、リヤサイドメンバに接続されていて、フロアサイドメンバは、リヤサイドメンバとリヤクロスメンバとともに閉断面を形成しているとよい。
【0032】
これにより、フロアサイドメンバ、リヤサイドメンバおよびリヤクロスメンバ全体の剛性を閉断面によって高めることができるので、リヤサイドメンバの支持剛性やフロアサイドメンバの接続剛性を高めることができる。その結果、フロアサイドメンバの振動を抑制して、この振動に起因するフロア振動を小さくすることができる。さらに、閉断面の構成部材の一つが、車両前方に延びているフロアサイドメンバであるため、フロアサイドメンバ側に荷重を分散させて応力集中を回避させるなどの調整をしやすい。
【実施例
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、本実施例において、接続とは、別々の部材をつなぎ合わせる接合、別々の部材が接触する当接、各部材が同じ部材となる一体化という各形態を含む。
【0034】
図1は、本発明の実施例に係る車両下部構造100を示す下面図である。図中では車両下部構造100を車両下方から見た状態を示している。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0035】
車両下部構造100は、車両の床面を形成するフロアパネル102と、一対のサイドシル104、106と、センタートンネル108とを備える。一対のサイドシル104、106は、車幅方向に離間していて、フロアパネル102の縁110、112に沿って車両前後方向に延びている。センタートンネル108は、フロアパネル102の車幅方向の中央で車両前後方向にわたって延びている。フロアパネル102は、図中点線Aで囲んだフロア水平面114と、フロア水平面114の車幅方向外側にそれぞれ配置され図中点線B、Cで囲んだ上方傾斜部116、118とを含む。
【0036】
車両下部構造100はさらに、一対のサスペンション固定部120、122と、一対のリヤサイドメンバ124、126と、一対のフロアサイドメンバ128、130とを備える。なお車両下部構造100は、図1に示すように左右対称な構造となっているため、以下では、特に必要な場合を除き、車幅方向右側の構造のみ説明する。
【0037】
図2は、図1の車両下部構造100の一部および各種サスペンション132、134を示す図である。図2(a)は、サスペンション固定部120およびその周辺構造を拡大して示している。図2(b)、図2(c)は、揺動軸の方向(揺動軸線方向)が異なる一般的なサスペンション132、134の概略構成を示している。
【0038】
サスペンション固定部120は、図2(b)に示す後輪136用の揺動するサスペンション132が固定される部位である。サスペンション132は、いわゆるセミインディペンデントアクスルの構造を示していて、トレーリングリンク138と、車幅方向に延びるカップリングプロファイル140と、ショックアブソーバ142とを有する。サスペンション132は、トレーリングリンク138の前端部144を通る車幅方向の揺動軸Sbを有する。
【0039】
サスペンション固定部120には、図2(b)のトレーリングリンク138の前端部144が固定される。またサスペンション固定部120は、図1に示すようにリヤサイドメンバ124の傾斜部146に接続されている。
【0040】
リヤサイドメンバ124は、フロアパネル102の下側に位置しサイドシル104とセンタートンネル108との間で車両の後端148から車両前方に延びる部材であって、サイドシル104の例えば車幅方向内側でサイドシル104よりも車両後方まで延びている。なおリヤサイドメンバ124は、サイドシル104の車幅方向内側に限られず、車両後側に配置してもよい。
【0041】
リヤサイドメンバ124の傾斜部146は、図1に示すように車両前方に向かうほど車幅方向外側に傾斜する部位である。このように傾斜したリヤサイドメンバ124の傾斜部146にサスペンション固定部120が接続されているため、車両下部構造100において、図2(a)のサスペンション固定部120を通る揺動軸Saは、傾斜部146に直交するように車幅方向内側に向かうほど車両前側に傾斜した方向となっている。
【0042】
また図2(c)に示すサスペンション134は、いわゆるスプリングストラット独立懸架式サスペンションであって、ホイールキャリア150と、タイロッド152と、下部Aアームリンク154と、ショックアブソーバ156とを有する。サスペンション134は、下部Aアームリンク154の前端部158および後端部160を通る車両前後方向の揺動軸Scを有する。
【0043】
車両下部構造100は、サスペンション固定部120にサスペンション132、134を適用することにより、車幅方向内側に向かうほど車両前側に傾斜した方向を揺動軸線方向とする揺動軸Saに限らず、車幅方向や車両前後方向を揺動軸線方向とする揺動軸Sb、Scを有することになる。なお車両下部構造100は、揺動軸Sa、Sb、Scとは異なり、図示は省略するが、車幅方向内側に向かうほど車両後側に傾斜した方向を揺動軸線方向とする揺動軸を有するサスペンションにも適用可能である。
【0044】
このため、サスペンション固定部120に接続されるリヤサイドメンバ124は、例えば車両走行中にサスペンション132からサスペンション固定部120を介して揺動軸線方向の荷重を受ける。また車両下部構造100をサスペンション134に適用した場合には、リヤサイドメンバ124は、車両前後方向を揺動軸線方向とする揺動軸Scが設定されていても、車両走行中の振動などにより、車幅方向の振動成分としての荷重を受ける。すなわちリヤサイドメンバ124は、サスペンション固定部120を介して揺動軸線方向または車幅方向の荷重を受けることになる。
【0045】
フロアサイドメンバ128は、図1に示すフロアパネル102の下側でリヤサイドメンバ124と車両の前部に位置するフロントメンバ162またはフロントサイドメンバ164とをつないでいる。フロントメンバ162は、車幅方向に延びサイドシル104、106の間に配置されるダッシュクロスメンバ166と、フロントサスペンションフレーム168とを含む。なお図中では、フロントサスペンションフレーム168の外形を鎖線で示し、フロントサスペンションフレーム168と重なる各種部材を透過して示している。またダッシュクロスメンバ166の車幅方向外側には、車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するブレース169a、169bが配置され、ダッシュクロスメンバ166とサイドシル104、106とを連結している。
【0046】
サイドシル104の車両前側には、フロントサイドエクステンション170が配置されている。また、フロントサイドメンバ164とフロントサイドエクステンション170の間にはフロントサスペンション172が位置している。なお車両下部構造100において車幅方向左側では、図1に示すようにサイドシル106の車両前側に位置するフロントサイドエクステンション174と、フロントサイドメンバ176と、フロントサスペンション178とが配置されている。
【0047】
またフロントサスペンションフレーム168には、フロアサイドメンバ128、130との後方固定点180、182と、フロントサイドメンバ164、176との中間固定点184、186とが設定されている。さらにフロントサスペンションフレーム168には、中間固定点184、186よりも車両前側に位置する他の部材との前方固定点188、190が設定されている。なおフロントサイドメンバ164、176とフロアサイドメンバ128、130とは別体の部材としたが、これに限らず、一体構造としてもよい。
【0048】
ここで上記したようにリヤサイドメンバ124は、サスペンション固定部120を介して揺動軸線方向または車幅方向の荷重を受ける。そこで車両下部構造100では、リヤサイドメンバ124の揺動軸線方向または車幅方向の振動を抑制するために、フロアサイドメンバ128およびサスペンション固定部120を、リヤサイドメンバ124の隣接する領域(図3(a)参照)または対向する領域(図9(a)および図9(b)参照)にそれぞれ接続する構成を採用している。
【0049】
図3は、図2(a)の車両下部構造100のD-D断面および比較例を示す図である。リヤサイドメンバ124は、図3(a)のD-D断面に示すように、その下面192にサスペンション固定部120が接続されている。また、図2(a)に示すフロアサイドメンバ128の後端部194は、膨出部196を有する。膨出部196は、点線Eで囲んで示されるように、リヤサイドメンバ124側に膨出した部位である。
【0050】
さらに膨出部196は、図3(a)に示すように、サスペンション固定部120が接続されたリヤサイドメンバ124の下面192に隣接する車幅方向内側の側面198に接続される。このようにして、サイドメンバ128およびサスペンション固定部120は、リヤサイドメンバ124の隣接する領域すなわち車幅方向内側の側面198および下面192にそれぞれ接続されている。またリヤサイドメンバ124の側面198は、サスペンション132の揺動軸Sbを傾斜させた揺動軸Sa(図2(a)参照)の揺動軸線方向にほぼ直交する側面である。
【0051】
図3(b)に示す比較例の車両下部構造100Aは、フロアサイドメンバ128が配置されていない点で車両下部構造100と異なる。このため、車両下部構造100Aは、車両走行中にサスペンション132からサスペンション固定部120を介して伝達される荷重によって、リヤサイドメンバ124が矢印Fに示す揺動軸方向または車幅方向に揺動し、点線Gに示すように本来の位置からずれて振動してしまう。
【0052】
これに対して図2(a)の車両下部構造100では、リヤサイドメンバ124にサスペンション固定部120から伝達される荷重を、リヤサイドメンバ124のうちサスペンション固定部120の周辺200、すなわちサスペンション固定部120から荷重が伝達される荷重伝達経路の上流側で、フロアサイドメンバ128を介してフロントメンバ162またはフロントサイドメンバ164まで分散させて逃がすことができる。
【0053】
また図2(a)に示すように、フロアサイドメンバ128の後端部194が、リヤサイドメンバ124の側面198に接続される膨出部196を有するので、フロアサイドメンバ128のリヤサイドメンバ124に対する接続面積を増やすことができる。このため、フロアサイドメンバ128のリヤサイドメンバ124に対する接続剛性を高めることができ、フロアサイドメンバ128は、リヤサイドメンバ124から荷重を受けやすくなる。さらにリヤサイドメンバ124の側面198が揺動軸Saの揺動軸線方向にほぼ直交する側面であるため、リヤサイドメンバ124が受けた荷重を、剛性の高いフロアサイドメンバ128で効率的に受けて分散させて逃がすことができる。
【0054】
その結果、リヤサイドメンバ124の揺動軸線方向または車幅方向の振動、特にリヤサイドメンバ124のうちフロアサイドメンバ128との接続位置よりも下流側の荷重伝達経路での振動が抑制される。したがって車両下部構造100によれば、リヤサイドメンバ124の振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネル102のフロア振動を小さくすることができる。
【0055】
図2(a)に示すように、車両下部構造100では、フロアサイドメンバ128の膨出部196がリヤサイドメンバ124側に膨出しているので、この膨出量の分だけフロアサイドメンバ128の後端部194をリヤサイドメンバ124側に近づけるように傾斜または湾曲させる必要がない。このため、フロアサイドメンバ128が車両前後方向から荷重を受けたときに、車両前後方向に縮むように変形することを抑制することができる。
【0056】
車両下部構造100はさらに、図1に示すように車両前後方向に離間した第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204を備える。第1リヤクロスメンバ202は、車幅方向に延びていてフロアサイドメンバ128、130の後端部194、206およびリヤサイドメンバ124、126に接続されている。第2リヤクロスメンバ204は、車幅方向に延びていてリヤサイドメンバ124、126の前端部208、210およびフロアサイドメンバ128、130に接続されている。
【0057】
これにより、サスペンション固定部120を介してリヤサイドメンバ124に伝達された荷重を、リヤサイドメンバ124からフロアサイドメンバ128、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204に分散させて逃がすことができる。また、フロアサイドメンバ128がリヤサイドメンバ124から荷重を受けても、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204によってフロアサイドメンバ128の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0058】
なおリヤサイドメンバ124に伝達された荷重を、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204より剛性あるいは重量のあるフロアサイドメンバ128側へ荷重を逃がすことができるので、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204の剛性や厚みの増加を抑制しつつ、リヤサイドメンバ124の振動を抑制することができる。
【0059】
図2(a)に示すように、第1リヤクロスメンバ202がフロアサイドメンバ128の後端部194に接続されているため、フロアサイドメンバ128の後端部194がリヤサイドメンバ124および第1リヤクロスメンバ202によって支持されることになり、リヤサイドメンバ124からフロアサイドメンバ128の後端部194に伝達された荷重を第1リヤクロスメンバ202側へ逃がしやすくなるので、フロアサイドメンバ128の振動を抑制することができる。さらにフロアサイドメンバ128の後端部194を介してリヤサイドメンバ124と第1リヤクロスメンバ202との間で振動を伝達しやすくなるので、リヤサイドメンバ124および第1リヤクロスメンバ202の振動も抑制することができる。さらに、第1リヤクロスメンバ202とリヤサイドメンバ124との接続面に重ねてフロアサイドメンバ128が接続されているので、第1リヤクロスメンバ202およびリヤサイドメンバ124の接続剛性を高めることができる。また、フロアサイドメンバ128は、リヤサイドメンバ124を支持していてさらに第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204に接続されている。このため、フロアサイドメンバ128の支持剛性が高められて、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0060】
図1に示すように、車両下部構造100では、フロアサイドメンバ128、130、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204で枠構造が形成され、さらにリヤサイドメンバ124、126、第1リヤクロスメンバ202および第2リヤクロスメンバ204で枠構造が形成される。このため、これらの枠構造を構成する各部材全体の剛性を高めて、リヤサイドメンバ124、126やフロアサイドメンバ128、130の支持剛性を高めることができる。
【0061】
図2(a)の車両下部構造100において、サスペンション固定部120を介してリヤサイドメンバ124に伝達される荷重の伝達経路が、揺動軸Saの揺動軸線方向と交差する方向、例えば車両前方または車両後方に分岐した場合を想定する。かかる場合、車両下部構造100では、図2(a)に示すように、車両前後方向に離間した第1リヤクロスメンバ202と第2リヤクロスメンバ204を、揺動軸Saを挟む位置に配置している。このため、車両下部構造100では、荷重伝達経路の分岐点よりも下流側に各々伝達される荷重を第1リヤクロスメンバ202または第2リヤクロスメンバ204に伝達することができる。その結果、リヤサイドメンバ124の揺動軸線方向または車幅方向の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。
【0062】
またリヤサイドメンバ124は、図2(a)に示すように揺動軸方向または車幅方向において、サイドシル104とフロアサイドメンバ128とに挟持されている。これにより、サスペンション固定部120を介してリヤサイドメンバ124に伝達される荷重を、剛性の高いフロアサイドメンバ128およびサイドシル104に伝達して分散させることができる。なおフロアサイドメンバ128は、第2リヤクロスメンバ204よりも、荷重伝達経路のうちサイドシル104を経由しない経路の上流側に接続されている。
【0063】
さらにフロアサイドメンバ128は、リヤサイドメンバ124と第2リヤクロスメンバ204とともに図2(a)の鎖線Hで囲んだ枠構造としての三角形状のトラス構造の閉断面212を形成している。これにより、フロアサイドメンバ128、リヤサイドメンバ124および第2リヤクロスメンバ204全体の剛性を閉断面212によって高めることができるので、リヤサイドメンバ124の支持剛性を高めることができる。その結果、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制し、さらにフロアサイドメンバ128の振動も抑制されるので、これらの振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。しかも、閉断面212の構成部材の一つが、車両前方に延びているフロアサイドメンバ128であるため、フロアサイドメンバ128側に荷重を分散させて応力集中を回避させるなどの調整がしやすくなる。
【0064】
また車両下部構造100では、リヤサイドメンバ124が図1に示すように傾斜部146を有していて、フロアサイドメンバ128の後端部194に接続されるリヤサイドメンバ124の側面198が、この傾斜部146に形成されている。このため、フロアサイドメンバ128の後端部194をリヤサイドメンバ124に近づけるように大きく傾斜させなくても、フロアサイドメンバ128とリヤサイドメンバ124との接続面積を増やすことができる。このため、フロアサイドメンバ128とリヤサイドメンバ124との接続剛性を高めることができる。
【0065】
したがって車両下部構造100によれば、フロアサイドメンバ128が車両前後方向から荷重を受けても車両前後方向に縮むように変形することを抑制しつつ、リヤサイドメンバ124の揺動軸線方向または車幅方向の振動を抑制して、この振動に起因する捩り振動やフロア振動を小さくすることができる。なお車両下部構造100では、サスペンション132が固定されるサスペンション固定部120に接続されるリヤサイドメンバ124を、第2リヤクロスメンバ204とサイドシル104で挟持しているので、サスペンション132の振動も抑制することができる。
【0066】
またフロアサイドメンバ128は、図1に示すリヤサイドメンバ124とフロントメンバ162との間で車幅方向内側に凹んだ凹部214を有し、凹部214においてリヤサイドメンバ124の側面198(図2(a)参照)に接続されている。これにより、フロアサイドメンバ128の一部となる凹部214を車幅方向内側に配置することができるので、フロアパネル102の面振動を抑制することができる(後述)。また、フロアサイドメンバ128が凹部214においてリヤサイドメンバ124の側面198に接続されているので、両者の接続面積を増やして、接続剛性を高めることができる。
【0067】
ここで車両下部構造100は、図1に示すようにサイドシル104、106とセンタートンネル108の間にフロアサイドメンバ128、130がそれぞれ配置されている。このため、フロアパネル102は、フロアサイドメンバ128、130を境界にして車幅方向に分割されている。
【0068】
そこで車両下部構造100では、フロア振動を抑制するために、フロアパネル102でのフロア振動面の中間位置216、218にフロアサイドメンバ128、130を寄せて近接して配置する構成を採用した。フロア振動面の中間位置216とは、フロアパネル102の水平面114において、センタートンネル108とフロアサイドメンバ128の間の寸法Laと、サイドシル104とフロアサイドメンバ128の間の寸法Lbとがほぼ同じになる位置である。
【0069】
図4は、図1の車両下部構造100の一部および変形例を示す図である。フロアサイドメンバ128は、図4(a)に示すようにフロント傾斜部220と、直状部222と、リヤ傾斜部224とを有する。フロント傾斜部220は、車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜する部位である。直状部222は、フロント傾斜部220の後端226から車両後方に直状に延びる部位である。リヤ傾斜部224は、直状部222の後端228から車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜する部位である。
【0070】
このように車両下部構造100では、フロアサイドメンバ128に2つの傾斜部すなわちフロント傾斜部220とリヤ傾斜部224を設定している。これにより、フロアサイドメンバ128の車両前後に位置するフロントメンバ162またはフロントサイドメンバ164とリヤサイドメンバ124との接続位置がフロア振動面の中間位置216より離れた位置であっても、2つの傾斜部の傾斜度合や長さを調整することで、2つの傾斜部の間に位置する直状部222をフロア振動面の中間位置216に寄せて近接させることができる。したがって車両下部構造100によれば、フロアサイドメンバ128の直状部222をフロア振動面の中間位置216に寄せることで、フロア振動を抑制することができる。
【0071】
つまりフロアサイドメンバ128では、フロント傾斜部220およびリヤ傾斜部224によって、サイドシル104とセンタートンネル108との中間位置、すなわちサイドシル104とセンタートンネル108との間に位置する水平なフロア振動面の車幅方向での中間位置216に、直状部222を近接させ、さらに配置することができる。
【0072】
このように車両下部構造100では、図1に示すようにフロアサイドメンバ128の直状部222を、中間位置216に重ねて配置したので、直状部222を境界にしてフロアパネル102のフロア振動面の一方側と他方側の寸法差が小さくなり、すなわち寸法Laと寸法Lbが同じ寸法に近づくため、フロア振動を抑制することができる。
【0073】
図4(a)に示すように、フロアサイドメンバ128はさらに、サスフレ接続部230を有する。サスフレ接続部230は、フロント傾斜部220の前端232から車両前方に直状に延びていて、後方固定点180(図1参照)にてフロントサスペンションフレーム168が接続される。なおフロント傾斜部220の前端232は、図1に示すブレース169a、169bの傾斜面と車幅方向で重なる位置に配置されている。
【0074】
これにより、フロアサイドメンバ128は、サスフレ接続部230によって剛性の高いフロントサスペンションフレーム168に支持される。このため、フロアサイドメンバ128自体の振動を抑制することができるので、フロアサイドメンバ128に接続されるフロアパネル102のフロア振動も抑制することができる。
【0075】
図4(a)に示すように、フロアサイドメンバ128では、フロント傾斜部220とは異なる部位であるサスフレ接続部230が、フロント傾斜部220の前端232から車両前方に直状に延びている。このため車両下部構造100では、仮にフロント傾斜部220自体にフロントサスペンションフレーム168との接続部を設ける場合と比べて、サスフレ接続部230に接続されるフロントサスペンションフレーム168との後方固定点180を車幅方向外側に配置しやすくなる。
【0076】
その結果、フロアサイドメンバ128に車幅方向の荷重が作用したときに、サスフレ接続部230の後方固定点180から、車幅方向左側のフロントサイドメンバ176などに接続されるフロントサスペンションフレーム168の前方固定点188図1参照)に荷重を分散させて逃がしやすくすることができる。このため、フロントサイドメンバ176自体の振動を抑制して、フロア振動を抑制することができる。
【0077】
また、図1のフロントサイドメンバ164、176などに設定されるフロントサスペンションフレーム168の前方固定点188、190や、フロントサスペンションフレーム168に接続されている不図示のトルクロッドが車幅方向の荷重を受けても、この荷重をフロアサイドメンバ128、130に分散させて逃がしやすくすることができる。このため、フロントサスペンションフレーム168の振動が抑制されて、操舵時の安定性を高めることができる。
【0078】
図4(a)に示すように、サスフレ接続部230がフロント傾斜部220の前端232から車両前方に直状に延びているので、フロント傾斜部220が前方から荷重を受けたときに、フロント傾斜部220が車幅方向に変形して例えば図1に示すダッシュクロスメンバ166やフロントサスペンションフレーム168などのフロントメンバ162が後方に移動することを抑制することができる。
【0079】
サスフレ接続部230は、図1に示すようにフロアサイドメンバ124の前端部であって、ダッシュクロスメンバ166の上面および後面に接続されている。さらにサスフレ接続部230の上部に、フロントサスペンションフレーム168が接続される。つまり、フロアサイドメンバ124は、ダッシュクロスメンバ166とフロントサスペンションフレーム168とで上下方向で挟持されている。
【0080】
図4(a)に示すように、フロアサイドメンバ128のリヤ傾斜部224には、第2リヤクロスメンバ204が接続されている。リヤ傾斜部224は、第1リヤ傾斜部234と第2リヤ傾斜部236とを有する。第1リヤ傾斜部234は、第2リヤクロスメンバ204が接続される接続位置238よりも前方に位置している。第2リヤ傾斜部236は、この接続位置238よりも後方に位置している。そして第1リヤ傾斜部234は、車幅方向外側に傾斜する傾斜度合が第2リヤ傾斜部236の傾斜度合よりも緩やかである。このため、フロアサイドメンバ128は、前方から荷重を受けたときに局所的に応力が集中しにくくなり、この荷重に起因して車幅方向に変形することを抑制することができる。
【0081】
図4(a)に示すように、第1リヤ傾斜部234の傾斜度合が第2リヤ傾斜部236よりも緩やかなので、第1リヤ傾斜部234を境界とするフロア振動面の一方側と他方側の車幅方向の寸法差の変化度合も緩やかになるため、フロア振動を抑制することができる。仮に、第1リヤ傾斜部234だけでなく第2リヤ傾斜部236も傾斜度合を緩やかにすると、リヤ傾斜部224の車両前後方向の寸法が大きくなり、直状部222の車両前後方向の寸法が制限されてしまう。
【0082】
そこで車両下部構造100では、リヤ傾斜部224のうち、第2リヤ傾斜部236の傾斜度合を第1リヤ傾斜部234の傾斜度合より大きく急峻にすることで、リヤ傾斜部224全体の車両前後の寸法が大きくなることを抑制して、車両前後方向に延びる直状部222を配置するスペースを確保している。
【0083】
また、第2リヤ傾斜部236の傾斜度合を大きくすると、前方から荷重を受けたときに第2リヤ傾斜部236に局所的に応力が集中して第2リヤ傾斜部236が車幅方向に変形しやすくなる傾向にある。そこで車両下部構造100では、第2リヤ傾斜部236の前方に第2リヤクロスメンバ204との接続位置238を設定することにより、第2リヤ傾斜部236の車幅方向の変形を第2リヤクロスメンバ204によって抑制することができる。
【0084】
また車両下部構造100では、図1に示すフロアパネル102がフロア水平面114との上方傾斜部116、118によって振動面が分断されているので面振動を抑制することができる。さらに上方傾斜部116、118をフロア水平面114の車幅方向外側に設けたので、フロアサイドメンバ128、130を車幅方向中央側に配置しやすくなり、リヤサイドメンバ124、126に接続するためにリヤサイドメンバ124、126側に屈曲させやすくなる。なお車両下部構造100では、フロア振動面の中間位置216、218にフロアサイドメンバ128、130を配置することで、フロアパネル102のフロア水平面114の振動面を車幅方向にほぼ均等に4分割している。
【0085】
図5は、図4(a)の車両下部構造100を他の方向から見た状態を示す図である。図5(a)、図5(b)は、フロアサイドメンバ128、130を斜め下方、斜め上方からそれぞれ見た状態を示す図である。
【0086】
第2リヤ傾斜部236は、図4(a)、図5(a)および図5(b)に示す側面240を有する。図4(a)のうち側面240が示されている部分だけは側面図であり、それ以外の部分は上面図である。第2リヤ傾斜部236の側面240には、上方に膨出した上方膨出部242が形成されている。第2リヤクロスメンバ204は、図4(a)に示すように、上方膨出部242の上面244(図5(a)参照)と前面246に接続されている。上方膨出部242は、第2リヤクロスメンバ204との接続面積を増やすために、図4(a)に示す前端部248が側面視で傾斜または円弧状になっている。この上方膨出部242の前端部248の形状に合わせて、図5(b)に示す第2リヤクロスメンバ204の後端部250も傾斜している。さらに、第2リヤクロスメンバ204の上端部252は、後方に延びて上方膨出部242の上面244に当接させることにより、両者の接続面積を増やしている。
【0087】
ここでサイドシル104、リヤサイドメンバ124およびフロアサイドメンバ128のリヤ傾斜部224を第2リヤクロスメンバ204によって接続する場合、仮に、リヤ傾斜部224に上方膨出部242を設定しなければ、リヤ傾斜部224の上面に第2リヤクロスメンバ204を接続することになる。このような構成では、リヤ傾斜部224と第2リヤクロスメンバ204の接続面積を確保できず、リヤ傾斜部224の車幅方向の変形を抑制し難くなる。
【0088】
そこで車両下部構造100では、リヤ傾斜部224の第2リヤ傾斜部236に上方膨出部242を設けることにより、第2リヤクロスメンバ204とリヤ傾斜部224の接続面積を増やして接続剛性を高めて、フロアサイドメンバ128の変形や振動を抑制して、フロア振動も抑制することができる。
【0089】
図4(b)、図4(c)は、いずれも本発明の実施例であり、フロアサイドメンバ128、変形例のフロアサイドメンバ128Aの模式図である。なお図中の一点鎖線I、Jは、前突時のフロアサイドメンバ128、128Aの状態を示している。
【0090】
図4(c)の変形例のフロアサイドメンバ128Aは、直状部222の後端228からリヤ傾斜部224Aが一定の傾斜度合で車幅方向外側に傾斜している点で、フロアサイドメンバ128と異なる。フロアサイドメンバ128Aでは、リヤ傾斜部224Aの傾斜度合によっては図4(c)の一点鎖線Jに示すように前突時に直状部222の後端228が車幅方向内側に大きく変形するおそれがある。
【0091】
これに対して図4(b)のフロアサイドメンバ128は、傾斜度合の異なる第1リヤ傾斜部234および第2リヤ傾斜部236によりリヤ傾斜部224を形成している。このため、フロアサイドメンバ128は、図4(b)の一点鎖線Iに示すように前突時に直状部222の後端228の車幅方向内側への変形を抑制することができる。
【0092】
なお車両下部構造100はさらに、図4(a)に示すように第2リヤクロスメンバ204の車両前側に沿って延びる連結部材254と、連結部材254の車幅方向外側に位置するブラケット256、258とを有する。連結部材254は、上方膨出部242の上面244と前面246に接合することで上方膨出部242とブラケット256を連結する。ブラケット256は、図1に示すリヤサイドフレーム124を第2リヤクロスメンバ204とともに上下方向から挟持し、さらにサイドシル104にも接続されている(図6参照)。
【0093】
また車両下部構造100では、図5(a)に示すように連結部材254を、フロアサイドメンバ128、130の上部で車幅方向において挟持するようにして接続している。この構成により、第2リヤクロスメンバ204とフロアサイドメンバ128、130の接続面を増やすことができるため、これらの接続剛性を高めることができる。さらに図5(b)に示すように、第2リヤクロスメンバ204の後端部250と上端部152をまたぐ領域には、リヤシート取付ブラケット(不図示)を固定するブラケット固定部259が設けられている。そして、このブラケット固定部259とフロアサイドメンバ128の上方膨出部242とを上下方向で重なるように配置することにより、不図示のリヤシートが上下方向に振動することを抑制できる。
【0094】
図6は、図1の車両下部構造100の一部を車両前方から見た状態を示す図である。車両下部構造100は、図6に示すように、第2リヤクロスメンバ204の外側端部の下面260と、ブラケット256の外側端部の上面262とで、リヤサイドフレーム124およびサイドシル104を挟持している。
【0095】
図7は、図1の車両下部構造100の変形例の一部を詳細に示す図である。図7(a)は、変形例の車両下部構造100Aの一部の下面図である。図7(b)は、図7(a)の車両下部構造100Aを斜め下方から見た状態を示している。図8は、図7の車両下部構造100Aを他の方向から見た状態を示す図である。
【0096】
変形例の車両下部構造100Aは、第2リヤクロスメンバ204に代えて、連結部材254、ブラケット256、258を含めた部材としての第2リヤクロスメンバ204Aを備える点で、上記の車両下部構造100と異なる。
【0097】
車両下部構造100Aでは、図7(a)に示すように、第2リヤクロスメンバ204Aがサイドシル104およびリヤサイドメンバ124に接合されていて、サイドシル104がリヤサイドメンバ124に接合されている。つまり、第2リヤクロスメンバ204Aに接合されるサイドシル104およびリヤサイドメンバ124は、互いに接合されている。
【0098】
このため車両下部構造100Aでは、第2リヤクロスメンバ204Aを支持する部材の剛性すなわち第2リヤクロスメンバ204Aの支持剛性を高めつつ、第2リヤクロスメンバ204Aに伝達される荷重や振動を、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124に分散して逃がすことができる。したがって、第2リヤクロスメンバ204Aの振動を抑制することができる。
【0099】
第2リヤクロスメンバ204Aは、図7(a)および図7(b)に示す第1接合部264と、図7(b)に示す第2接合部266とを有する。第1接合部264は、図中点線Kで囲まれた箇所であり、第2リヤクロスメンバ204Aの下側フランジ268、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124が上下方向に重なっている。
【0100】
第2接合部266は、図7(b)の図中点線Lで囲まれた箇所であり、第2リヤクロスメンバ204Aの側面フランジ270、サイドシル104の内側側面272およびリヤサイドメンバ124の不図示の側面フランジが上下方向に重なっている。
【0101】
これにより、第2リヤクロスメンバ204A、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124による三枚接合面積を増やしつつ、これらの部材を第1接合部264および第2接合部266によって上下方向および車幅方向に対して強固に三枚接合することができる。したがって車両下部構造100Aでは、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124に対する第2リヤクロスメンバ204Aの接続剛性を高めて、第2リヤクロスメンバ204Aの振動、特に捩れ振動を抑制することができる。
【0102】
第2リヤクロスメンバ204Aの下側端部274には、車両前後方向に拡幅した拡幅部276が形成されている。拡幅部276には、第1接合部264および第2接合部266が形成され、さらに第3接合部278が形成されている。第3接合部278は、図7(a)および図7(b)の点線Mで囲まれた箇所であり、サイドシル104とは重ならず、第2リヤクロスメンバ204Aの下側フランジ268とリヤサイドメンバ124の下面280が二枚接合される。
【0103】
このように、第2リヤクロスメンバ204Aの拡幅部276には、リヤサイドメンバ124とともに二枚接合される第3接合部278と、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124が三枚接合される第1接合部264および第2接合部266とが形成されている。このため、第2リヤクロスメンバ204Aのリヤサイドメンバ124に対する接続面積を増やして、第2リヤクロスメンバ204Aの接続剛性を高めることができる。
【0104】
また、第2リヤクロスメンバ204Aでは、拡幅部276を介して第3接合部278から第1接合部264および第2接合部266にリヤサイドメンバ124の振動や荷重を分散させて逃がしやすくすることができる。このため、リヤサイドメンバ124の振動がサイドシル104に伝達されて第2リヤクロスメンバ204Aの振動を抑制することができる。
【0105】
さらに図8に示すように、第2リヤクロスメンバ204Aの拡幅部276には、第4接合部282と第5接合部284が形成されている。第4接合部282は、図中の点線Nで囲まれた箇所であり、第2リヤクロスメンバ204Aの上側フランジ288と、サイドシル104の上面286と、ここでは不図示のフロアパネル102と上下方向で重なって接合される。
【0106】
第5接合部284は、図中の点線Oで囲まれた箇所であり、第4接合部282に隣接していて、フロアパネル102とは重ならず、第2リヤクロスメンバ204Aの上側フランジ288とサイドシル104の上面286と上下方向で重なって接合される。なお第5接合部284は、これに限定されず、フロアパネル102と重なるようにして三枚接合してもよい。あるいは、第5接合部284は、変形例として、第2リヤクロスメンバ204Aの上側フランジ288とサイドシル104の上面286との間で重なるようにリヤサイドメンバ124を延ばして、三枚接合することにより、サイドシル104の上面286に形成された他の第1接合部として機能させてもよい。
【0107】
なお4枚以上の板材をスポット溶接する場合、溶接工程の安定性が低くなり接合コストおよび接合時間が増加する。そこで、4枚接合する代わりに、第2リヤクロスメンバ204Aにおいて、サイドシル104と三枚接合する部位と、フロアパネル102と三枚接合する部位とを分けることで、第2リヤクロスメンバ204A、サイドシル104、リヤサイドメンバ124、フロアパネル102を4枚接合する場合と比べて、溶接作業および溶接時間を短縮することができる。しかも、フロアパネル102と接合される三枚接合部としての第4接合部282と、サイドシル104と接合される第5接合部284の変形例である三枚接合部としての他の第1接合部とを隣接して配置することで、他の第1接合部から隣接する第4接合部282にフロアパネル102の振動を分散させて逃がしやすくすることができる。このため、フロアパネル102の振動がサイドシル102や第2リヤクロスメンバ204Aに伝達されてフロアパネル102の振動を抑制することができる。なお、接合コストおよび接合時間を許容することができる場合、第2リヤクロスメンバ204A、サイドシル104、リヤサイドメンバ124、フロアパネル102を4枚接合してもよい。
【0108】
また車両下部構造100Aは、他の接合部290、292を有する。接合部290は、図8の点線Pで囲まれた箇所であって、フロアパネル102と、リヤサイドメンバ124と、第2リヤクロスメンバ204Aと上下方向で重なって三枚接合される。接合部292は、図7(a)および図7(b)に示すようにサイドシル104とリヤサイドメンバ124と上下方向で重なって二枚接合される。ただし接合部292は、これに限られず、第2リヤクロスメンバ204Aを延ばして、サイドシル104とリヤサイドメンバ124とともに三枚接合するようにしてもよい。
【0109】
図7(b)に示すリヤサイドメンバ124は、第2リヤクロスメンバ204Aの側面フランジ294に隣接する内側側面296と、内側側面296に連続する上面フランジ298と、下面280に連続する側面フランジ300と、側面フランジ300に連続する下側フランジ302を有する。ここで、リヤサイドメンバ124は、上面フランジ298と、下面280と、内側側面296と、サイドシル104の内側側面272とで閉断面を形成している。なお外側側面は、サイドシル104の内側側面272と兼用している。リヤサイドメンバ124は、片持ち状のため、その下面280に側面フランジ300と下側フランジ302を設けることで、サイドシル104との接合面積を増やしている。
【0110】
車両下部構造100Aでは、第2リヤクロスメンバ204Aは、サイドシル104とリヤサイドメンバ124との接合面すなわち三枚接合される第1接合部264および第2接合部266の箇所に重なるようにしてサイドシル104およびリヤサイドメンバ124に接合されている。
【0111】
これにより、サイドシル104とリヤサイドメンバ124の接合面と、第2リヤクロスメンバ204Aとサイドシル104の接合面と、第2リヤクロスメンバ204Aとリヤサイドメンバ124の接合面とを近接または重ねることができる。このため、第2リヤクロスメンバ204Aの支持剛性を高めることができる。また、支持剛性が高くなったサイドシル104とリヤサイドメンバ124の接合面に第2リヤクロスメンバ204Aを接合することで、サイドシル104およびリヤサイドメンバ124に対する第2リヤクロスメンバ204Aの接続剛性を高めることができる。したがって、第2リヤクロスメンバ204Aの振動をより十分に抑制することができる。
【0112】
ここで図2(a)に示す車両下部構造100の点Qの箇所では、リヤサイドメンバ124が、第1リヤクロスメンバ202、フロアサイドメンバ128に連結されるので、第2リヤクロスメンバ204Aの支持剛性を高めることができる。なお点Qの箇所において、フロアサイドメンバ128、第1リヤクロスメンバ202、リヤサイドメンバ124は、上下方向で重なって三枚接合されている。また、この三枚接合された点Qを含む領域に隣接して、リヤサイドメンバ124とフロアサイドメンバ128とが二枚接合された領域、さらにフロアパネル102も重なった三枚接合された領域、および、第1リヤクロスメンバ202とフロアサイドメンバ128が二枚接合された領域が形成されている。これにより、第2リヤクロスメンバ204Aの支持剛性をより十分に高めることができる。
【0113】
図2(a)に示す車両下部構造100での点線Rは、サイドシル104とリヤサイドメンバ124の接合領域を示している。この接合領域では、サイドシル104の後部の後方に凹部304が設けられ、この凹部304にリヤサイドメンバ124の凸部306が接合される。これにより、リヤサイドメンバ124とサイドシル104とを、車両前後方向および車幅方向で接合することができるため、第2リヤクロスメンバ204Aの支持剛性を高めることができる。
【0114】
また第2リヤクロスメンバ204Aのうち図2(a)に示す拡幅部276の後部307は、リヤサイドメンバ124の内側側面296(図7(b)参照)と略直交する方向に延びている。さらに拡幅部276の後部307は、内側部分307aと外側部分307bとを有する。内側部分307aは、外側部分307bに連続していて外側部分307bの車幅方向内側に位置する部位である。この内側部分307aは、図2(a)に示すように外側部分307bよりも傾斜度合が大きくなっていて、フロアサイドメンバ128のリヤ傾斜部224(図4(a)参照)に沿うように傾斜している。この構成により、拡幅部276とリヤサイドメンバ124の前端部208との接合面積を増やしつつ、拡幅部276に伝達された振動をフロアサイドメンバ128の前方側に伝達しやすくなる。また、拡幅部276の後部307の内側部分307aを、サスペンション固定部120を通る揺動軸Saに沿って傾斜させた場合には、サスペンション固定部120からリヤサイドメンバ124に伝達される振動をフロアサイドメンバ128に伝達しやすくなる。なおサスペンション固定部120は、不図示のブラケットによりサイドシル104にも接合してよい。
【0115】
なお車両下部構造100では、フロントサイドメンバ164、フロアサイドメンバ128およびリヤサイドメンバ124は、それぞれ別体としたが、これに限定されず、一体構造であってもよい。そして本明細書中、サイドメンバとは、フロントサイドメンバ164、フロアサイドメンバ128およびリヤサイドメンバ124のすべてを含む概念である。
【0116】
図9は、図1の車両下部構造100の他の変形例を模式的に示す図である。図9(a)に示す車両下部構造100B、100Cは、揺動軸Ta、Tbが車幅方向、車両前後方向であるとき、フロアサイドメンバ128およびサスペンション固定部120を、リヤサイドメンバ124の車幅方向に対向する領域すなわち側面308、310にそれぞれ接続している。このような車両下部構造100B、100Cであっても、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0117】
図9(b)に示す車両下部構造100D、100Eは、揺動軸Ta、Tbが車幅方向、車両前後方向であるとき、フロアサイドメンバ128およびサスペンション固定部120を、リヤサイドメンバ124の上下方向に対向する領域すなわち上面312、下面314にそれぞれ接続している。このような車両下部構造100D、100Eであっても、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0118】
なお車両下部構造100、100B~100Eでは、フロアサイドメンバ128およびサスペンション固定部120を、リヤサイドメンバ124の隣接または対向する領域にそれぞれ接続するようにしたが、これに限定されない。一例として、サスペンション132のショックアブソーバ142(図2(a)参照)がサスペンション固定部120に固定される場合、フロアサイドメンバ128およびショックアブソーバ142を、リヤサイドメンバ124の隣接または対向する領域にそれぞれ接続するようにしてもよい。なおショックアブソーバ142の車両前後方向の幅寸法は、サスペンション固定部120の車両前後方向の幅寸法よりも小さい。
【0119】
図9(c)に示す車両下部構造100F、100Gは、揺動軸Ta、Tbが車幅方向、車両前後方向であるとき、フロアサイドメンバ128とリヤサイドメンバ124を、サスペンション固定部120を介して車幅方向に対向するように配置し、サスペンション固定部120にそれぞれ接続している。このような車両下部構造100F、100Gであっても、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0120】
図10は、図1の車両下部構造100のさらに他の変形例を示す図である。図10(a)は、変形例のフロアサイドメンバ128B、130Aを示している。図示のようにフロアサイドメンバ128B、130Aは、左右対称な構造となっているため、ここでは、フロアサイドメンバ128Bの構造を説明する。
【0121】
フロアサイドメンバ128Bは、フロント傾斜部220に代えて、車両後方に向かうほど車幅方向外側に傾斜するフロント傾斜部220Aを有する点で、上記のフロアサイドメンバ128と異なる。フロアサイドメンバ128Bでは、フロント傾斜部220Aの後端226Aから車両後方に直状部222が直状に延びて、さらにフロント傾斜部220Aの前端232Aから車両前方にサスフレ接続部230直状に延びている。
【0122】
このため、フロアサイドメンバ128Bの車両前後に位置する図1に示すフロントメンバ162またはフロントサイドメンバ164とリヤサイドメンバ124との接続位置がフロア振動面の中間位置216(図1参照)より離れた位置であっても、2つの傾斜部すなわちフロント傾斜部220Aおよびリヤ傾斜部224の傾斜度合や長さを調整することで、2つの傾斜部の間に位置する直状部222をフロア振動面の中間位置216に寄せて近接させて、フロア振動を抑制することができる。
【0123】
なお車両下部構造100では、図1に示すようにフロアサイドメンバ128の前端位置すなわちフロントサイドメンバ164とフロアサイドメンバ128の接続位置、および、フロアサイドメンバ128の後端位置すなわちフロアサイドメンバ128とリヤサイドメンバ124あるいはサイドシル104との接続位置が、フロア振動面の中間位置216よりも車幅方向外側に位置する。一方、変形例のフロアサイドメンバ128Bを適用した場合には、フロアサイドメンバ128Bの前端位置が中間位置216よりも車幅方向内側に配置され、その後端位置が中間位置216よりも車幅方向外側に配置している。
【0124】
ただし、図10(a)に示す変形例に限定されず、図示は省略するが、フロアサイドメンバの前端位置および後端位置のうちの一方が中間位置216よりも車幅方向外側に配置してもよい。また、フロアサイドメンバの前端位置および後端位置のうちの一方が中間位置216にあってもよい。なおフロアサイドメンバの前端位置が中間位置216にある場合、例えば直状部222の前端にフロントサイドメンバ164が接続される。またフロアサイドメンバの後端位置が中間位置216にある場合、例えば直状部222の後端にリヤサイドメンバ124が接続される。
【0125】
図10(b)に示す車両下部構造100Hでは、リヤサイドメンバ124Aをフロアパネル102Aの下面に接合しつつ、フロアパネル102Aの側面316と、サイドシル104Aと、リヤサイドメンバ124Aの側面318とが車幅方向に重なって三枚接合されている。またフロアパネル102Aの車幅方向内側は、センタートンネル108Aおよび補強部材320に接合される。なおサイドシル104Aとセンタートンネル108Aの間には、フロアパネル102Aの上方で車幅方向に延びるクロスメンバ322が配置されている。
【0126】
この車両下部構造100Hでは、クロスメンバ322に伝達される荷重や振動を、三枚接合された箇所を介してサイドシル104Aおよびリヤサイドメンバ124Aに分散して逃がすことができる。したがって、クロスメンバ322の振動を抑制することができる。さらにフロアパネル102Aの振動を、サイドシル104A、リヤサイドメンバ124Aおよびクロスメンバ322に分散させて逃がすことができるため、フロアパネル102Aの振動を抑制することができる。
【0127】
図10(c)に示す車両下部構造100Iでは、サイドシル104Bの車両後側にリヤサイドメンバ124Bが配置され、さらに第2リヤクロスメンバ204Bに接合されるサイドシル104Bおよびリヤサイドメンバ124Bを互いに接合している。さらに図示ように、サイドシル104Bとリヤサイドメンバ124Bの接合面324と、第2リヤクロスメンバ204Bとサイドシル104Bの接合面326と、第2リヤクロスメンバ204Bとリヤサイドメンバ124Bの接合面328とを近接させている。
【0128】
このため車両下部構造100Iでは、第2リヤクロスメンバ204Bの支持剛性を高めつつ、第2リヤクロスメンバ204Bに伝達される荷重や振動を、サイドシル104Bおよびリヤサイドメンバ124Bに分散して逃がすことができる。したがって、第2リヤクロスメンバ204Bの振動を抑制することができる。
【0129】
なお車両下部構造100は、複数の揺動軸に対応した複数のサスペンション固定部を有してもよい。このような場合、どれか一つの揺動軸に対応したサスペンション固定部120およびフロアサイドメンバ128を、リヤサイドメンバ124の隣接または対向する領域にそれぞれ接続すればよい。これにより、リヤサイドメンバ124の揺動軸方向または車幅方向の振動を抑制することができる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
100、100B~100I…車両下部構造
102、102A…フロアパネル
104、104A、104B、106…サイドシル
108、108A…センタートンネル
110、112…フロアパネルの縁
114…フロア水平面
116、118…上方傾斜部
120、122…サスペンション固定部
124、124A、124B、126…リヤサイドメンバ
128、128A、128B、130、130A…フロアサイドメンバ
132、134…サスペンション
136…右側後輪
138…トレーリングリンク
140…カップリングプロファイル
142、156…ショックアブソーバ
144…トレーリングリンクの前端部
146…リヤサイドメンバの傾斜部
148…車両の後端
150…ホイールキャリア
152…タイロッド
154…下部Aアームリンク
158…下部Aアームリンクの前端部
160…下部Aアームリンクの後端部
162…フロントメンバ
164、176…フロントサイドメンバ
166…ダッシュクロスメンバ
168…フロントサスペンションフレーム
169a、169b…ブレース
170、174…フロントサイドエクステンション
172、178…フロントサスペンション
180、182…後方固定点
184、186…中間固定点
188、190…前方固定点
192、280、314…リヤサイドメンバの下面
194、206…フロアサイドメンバの後端部
196…膨出部
198…リヤサイドメンバの側面
200…サスペンションの周辺
202…第1リヤクロスメンバ
204、204A、204B…第2リヤクロスメンバ
208、210…リヤサイドメンバの前端部
212…閉断面
214…フロアサイドメンバの凹部
216、218…フロア振動面の中間位置
220、220A…フロント傾斜部
222…直状部
224、224A…リヤ傾斜部
226、226A…フロント傾斜部の後端
228…直状部の後端
230…サスフレ接続部
232、232A…フロント傾斜部の前端
234…第1リヤ傾斜部
236…第2リヤ傾斜部
238…第2リヤクロスメンバの接続位置
240…第2リヤ傾斜部の側面
242…上方膨出部
244…上方膨出部の上面
246…上方膨出部の前面
248…上方膨出部の前端部
250…第2リヤクロスメンバの後端部
252…第2リヤクロスメンバの上端部
254…連結部材
256、258…ブラケット
259…ブラケット固定部
260…第2リヤクロスメンバの外側端部の下面
262…ブラケットの外側端部の上面
264…第1接合部
266…第2接合部
268…第2リヤクロスメンバの下側フランジ
270、294…第2リヤクロスメンバの側面フランジ
272…サイドシルの内側側面
274…第2リヤクロスメンバの下側端部
276…拡幅部
278…第3接合部
282…第4接合部
284…第5接合部
286…サイドシルの上面
288…第2リヤクロスメンバの上側フランジ
290、292…他の接合部
296…リヤサイドメンバの内側側面
298…リヤサイドメンバの上面
300…リヤサイドメンバの側面フランジ
302…リヤサイドメンバの下側フランジ
304…サイドシルの凹部
306…リヤサイドメンバの凸部
307…拡幅部の後部
307a…拡幅部の後部の内側部分
307b…拡幅部の後部の外側部分
308、310…リヤサイドメンバの側面
312…リヤサイドメンバの上面
316…フロアパネルの側面
318…リヤサイドメンバの側面
320…補強部材
322…クロスメンバ
324、326、328…接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10