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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】バッテリ
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241106BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20241106BHJP
   B62J 9/14 20200101ALI20241106BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241106BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62J43/16
B62J9/14
H01M50/249
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194481
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083184
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】長屋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】行永 滉平
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/065865(WO,A1)
【文献】特開昭58-067580(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061880(WO,A1)
【文献】特開2007-118628(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015001959(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0223504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62J 43/16
B62J 9/14
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の鞍乗型車両のシートの下方に設置されるバッテリであって、
走行用の電力が充電されるバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容したバッテリケースと、を備え、
前記バッテリケースには前記シートを開閉可能に支持するシートヒンジ部が一体的に形成され
前記バッテリケースは、左右割り構造であり、左側のケース半体と右側のケース半体とから成り、
前記左側のケース半体は右面を開口したボックス状に形成され、前記右側のケース半体は左面を開口したボックス状に形成されていることを特徴とするバッテリ。
【請求項2】
前記バッテリケースの前面上部に前方に向かって下方に傾斜した傾斜面が形成され、
前記傾斜面から前方に前記シートヒンジ部が突き出していることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記バッテリケースの前面下部に車体フレームに固定されるケース固定部が形成され、
平面視にて、前記シートヒンジ部が前記ケース固定部に重なることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記バッテリケースの内側に前記バッテリモジュールを固定するモジュール固定部が形成され、
前記モジュール固定部が前記傾斜面を挟んで前記シートヒンジ部の基端部に対向することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力によって走行する電動式の鞍乗型車両が開発されている。電動式の鞍乗型車両として、シート下方にバッテリ等を収容したスクータタイプの車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両には、シートを下方から支える左右一対のシートフレームが設けられており、左右一対のシートフレームの内側にバッテリの収容空間が形成されている。左右一対のシートフレームの前側がブリッジパイプを介して接続されており、このブリッジパイプにはシートを開閉可能に連結したシートヒンジ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-051289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式の鞍乗型車両では更なるバッテリ容量の増加が望まれている。しかしながら、特許文献1に記載の鞍乗型車両では、シートヒンジ部が設けられたブリッジパイプによってバッテリの収容空間が狭められてバッテリ容量を十分に確保することが難しい。ブリッジパイプの支持剛性を確保するために、ブリッジパイプが大径化したり、ブリッジパイプを補強する支持パイプを設けたりする必要がある。このため、フレーム構造が複雑化すると共にバッテリの収容空間がさらに狭められるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、バッテリ容量を十分に確保することができると共に、シートヒンジ部の支持剛性を確保することができるバッテリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のバッテリは、電動式の鞍乗型車両のシートの下方に設置されるバッテリであって、走行用の電力が充電されるバッテリモジュールと、前記バッテリモジュールを収容したバッテリケースと、を備え、前記バッテリケースには前記シートを開閉可能に支持するシートヒンジ部が一体的に形成され、前記バッテリケースは、左右割り構造であり、左側のケース半体と右側のケース半体とから成り、前記左側のケース半体は右面を開口したボックス状に形成され、前記右側のケース半体は左面を開口したボックス状に形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のバッテリによれば、バッテリケースにシートヒンジ部が形成されているため、シートの下方にはシートヒンジ部を取り付けるためのフレームが不要になる。バッテリの収容空間が広くなり、バッテリサイズの大型化によってバッテリ容量を十分に確保することができる。また、バッテリケースにシートヒンジ部が一体的に形成されることで、シート側からの荷重に対するシートヒンジ部の支持剛性が確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の車体フレーム及び電気機器の右側面図である。
図3】本実施例の車体フレーム及びバッテリの斜視図である。
図4】本実施例のシートヒンジ部の斜視図である。
図5】本実施例のバッテリの平面図である。
図6】本実施例のバッテリの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のバッテリは、電動式の鞍乗型車両のシートの下方に設置されている。バッテリのバッテリケースには、走行用の電力が充電されるバッテリモジュールが収容されている。バッテリケースにはシートを開閉可能に支持するシートヒンジ部が形成されているため、シートの下方にはシートヒンジ部を取り付けるためのフレームが不要になる。バッテリの収容空間が広くなり、バッテリサイズの大型化によってバッテリ容量を十分に確保することができる。また、バッテリケースにシートヒンジ部が一体的に形成されることで、シート側からの荷重に対するシートヒンジ部の支持剛性が確保されている。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。本実施例では鞍乗型車両はスクータタイプの鞍乗型車両であるが、鞍乗型車両は電動式又はハイブリッド式の他の鞍乗型車両でもよい。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム10(図2参照)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントフレームカバー21が設けられており、フロントフレームカバー21の後側にはライダーの足回りを保護するレッグシールド22が設けられている。レッグシールド22の下端から後方に向かってフートボード23が延在しており、フートボード23の後方にはシートフレームカバー24が設けられている。レッグシールド22とフートボード23によってシート34の前方にライダーの足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントフレームカバー21の上側にはハンドル31が設けられ、フロントフレームカバー21の下側には一対のフロントフォーク32を介して前輪33が回転可能に支持されている。シートフレームカバー24の上側にはシート34が設けられており、シートフレームカバー24の下側にはスイングアームカバー36に覆われたスイングアーム(不図示)が設けられている。スイングアームの後部には後輪37が回転可能に支持されており、このスイングアームの後部はサスペンション38を介して車体フレーム10に接続されている。
【0013】
電動式の鞍乗型車両1にはシート34が開閉可能に支持されており、シート34の下方でシートフレームカバー24の内側にはバッテリ60(図3参照)の収容空間が形成されている。バッテリ容量の増加のためにバッテリ60の収容空間を広く確保することが望まれているが、一般的な鞍乗型車両のようにシートが車体フレームに支持される構成では、フレーム構造が複雑化してバッテリの収容空間を広く確保することが難しい。また、フレーム構造の複雑化によって車体フレームに対するバッテリの組み付け性が悪化するという不具合もある。
【0014】
また、バッテリを収容した樹脂製のバッテリボックスをシートフレームカバーの内側に設けて、バッテリボックスにシートが開閉可能に支持される構成も考えられる。車体フレームのフレーム構造がシンプルになるが、バッテリボックスを設けた分だけバッテリの収容空間が狭くなる。また、バッテリボックスを設けた分だけ部品点数が増加するという不具合がある。そこで、本実施例の鞍乗型車両1では、シンプルなフレーム構造でバッテリ60の収容空間が十分に確保できるように、バッテリ60に対してシート34が開閉可能に支持されている。
【0015】
以下、図2及び図3を参照して、本実施例の車体フレーム及びバッテリについて説明する。図2は本実施例の車体フレーム及び電気機器の右側面図である。図3は本実施例の車体フレーム及びバッテリの斜視図である。なお、図3は、車体フレームからバッテリ以外の電気機器が取り外された状態を示している。
【0016】
図2に示すように、車体フレーム10の前側部分には、ステアリングシャフト(不図示)が挿入されるヘッドパイプ11が設けられている。ヘッドパイプ11からフロントフレーム12が下方に向かって延出し、フロントフレーム12の下部から一対のロアフレーム13が後方に向かって延出している。一対のロアフレーム13の略中間部から一対のシートフレーム14が斜め後方に立ち上がり、一対のロアフレーム13の後部から一対のサポートフレーム15が斜め後方に立ち上がっている。一対のシートフレーム14の後部には一対のサポートフレーム15の後部が下側から接続されている。
【0017】
一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15の間、すなわちシートフレームカバー24の内側にはバッテリ60の収容空間が形成されている。設置空間の上側には、電源電力を所定電圧の直流電力に変換する充電器41と、充電器41からの直流電力を充電するバッテリ60と、直流電力の電圧を降圧するDCDCコンバータ42とが設置されている。設置空間の下部には交流電力によって駆動するモータ43が設置されている。モータ43の前方には直流電力を交流電力に変換するインバータ44が設置され、インバータ44を介してモータ43がバッテリ60に接続されている。
【0018】
一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15は、それぞれ一対のピボットブラケット16を介して前後方向で接続されている。一対のピボットブラケット16にはスイングアーム(不図示)が上下方向に揺動可能に連結されており、上記したようにスイングアームにはスイングアームカバー36が取り付けられている。スイングアームカバー36によってモータ43のスプロケット(不図示)及びチェーン(不図示)が覆われている。バッテリ60の電力がモータ43に供給されて、モータ43からスプロケット及びチェーンを介して後輪37に駆動力が出力されている。
【0019】
図3に示すように、シート34の下方には、一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15の間にバッテリ60の収容空間が形成されている。一対のシートフレーム14にはホルダプレート51が設けられており、この一対のホルダプレート51には車幅方向に延在するブリッジ52が固定されている。一対のシートフレーム14がブリッジ52を介して連結されることで、車体フレーム10全体の剛性及び強度が向上されている。また、ブリッジ52の上側にはバッテリ60が取り付けられ、ブリッジ52の下側にはモータ43(図2参照)が取り付けられている。
【0020】
ブリッジ52の両端には一対のホルダブラケット53が設けられており、一対のホルダブラケット53が一対のホルダプレート51に固定されている。一対のホルダプレート51は一対のシートフレーム14よりも前方に突き出し、一対のホルダブラケット53は一対のホルダプレート51よりも前方に突き出している。一対のホルダブラケット53及び一対のホルダプレート51によってブリッジ52がシートフレーム14よりも前方に位置付けられている。また、ブリッジ52は、バッテリ60の下部前側に干渉しないように、車幅方向外側の一対のホルダブラケット53から車幅方向内側に向かって前方へ湾曲している。
【0021】
ブリッジ52には、車幅方向に離間した一対のバッテリブラケット54と一対のモータブラケット55が設けられている。一対のバッテリブラケット54はブリッジ52から上方に突き出してバッテリ60を下側から支持し、一対のモータブラケット55はブリッジ52から下方に突き出してモータ43を上側から支持している。各ブラケット54、55の基端部はブリッジ52の表面に接合されており、各ブラケット54、55の先端部はネジ止め用の取付穴が形成されている。一対のバッテリブラケット54はブリッジ52の中央付近でバッテリ60を支持しており、一対のモータブラケット55は一対のバッテリブラケット54よりも車幅方向外側でモータ43を支持している。
【0022】
バッテリ60のバッテリケース61にはバッテリモジュール70(図6参照)が収容されている。バッテリモジュール70は複数のバッテリセルを接続したものであり、バッテリモジュール70には走行用の電力が充電される。バッテリケース61は、左右割り構造であり、左側のケース半体62と右側のケース半体63とを有している。左側のケース半体62は右面を開口したボックス状に形成され、右側のケース半体63は左面を開口したボックス状に形成されている。左側のケース半体62が収容空間の左寄りに位置付けられ、右側のケース半体63が収容空間の中央に位置付けられている。
【0023】
バッテリ60の前面から左右のケース半体62、63の合わせ面付近が前方に突き出して縦長の突出部64が形成されている。右側のケース半体63の前面上部から前方にシートヒンジ部65が突き出しており、ケース半体63の前面下部から前方にケース固定部66が突き出している。ケース半体63の前面中央部には、突出部64の右側の空間を上下に分ける隔壁67が形成されている。シートヒンジ部65と隔壁67の間で突出部64の右側面から右方に低電圧ハーネスコネクタ68が突き出し、隔壁67とケース固定部66の間で突出部64の右側面から右方に高電圧ハーネスコネクタ69が突き出している。
【0024】
シートヒンジ部65は右側のケース半体63と一体的に鋳造されており、シートヒンジ部65にはシート34に固定されたシートヒンジブラケット78が揺動可能に支持されている。シートヒンジブラケット78のヒンジピン77がシートヒンジ部65上の溝部73(図4(B)参照)に入り込み、シートヒンジプレート75によってヒンジピン77が抜け止めされている。ヒンジピン77を支点にしてシート34が開かれることで、シートフレームカバー24の内側のバッテリ60が外部に露出される。なお、シートヒンジ部65及びシートヒンジブラケット78の詳細構成については後述する。
【0025】
ケース固定部66は、車幅方向に取付穴が貫通した円筒状に形成されている。ケース固定部66の取付穴と一対のバッテリブラケット54の取付穴に長尺ボルトが差し込まれて、長尺ボルトを介してケース固定部66が一対のバッテリブラケット54に固定されている。車体フレーム10のブリッジ52がバッテリケース61のケース固定部66に近づけられているため、一対のバッテリブラケット54が短く形成されて支持剛性が高められている。詳述はしないが、バッテリ60にはケース固定部66以外にもシートフレーム14に固定される複数の固定部が設けられている。
【0026】
図4から図6を参照して、バッテリの詳細構成について説明する。図4は本実施例のシートヒンジ部の斜視図であり、(A)はシートヒンジブラケットが取り付けられた状態、(B)はシートヒンジブラケットが取り外された状態を示している。図5は本実施例のバッテリの平面図である。図6は本実施例のバッテリの右側面図である。
【0027】
図4(A)及び図4(B)に示すように、バッテリケース61(右側のケース半体63)にはシート34(図3参照)を開閉可能に支持するシートヒンジ部65が一体的に形成されている。シートヒンジ部65の先端側の略半部には凹部71が形成されており、凹部71の底面72には車幅方向に延びた溝部73が形成されている。凹部71の基端側の側面が細溝状に切り欠かれて保持面74が形成され、保持面74にシートヒンジプレート75の縁部が入り込んでいる。固定ネジ76によってシートヒンジプレート75が凹部71の底面72に固定されて、シートヒンジプレート75に溝部73が覆われてヒンジピン77のピン穴が形成される。
【0028】
シートヒンジブラケット78は、シート34のシートプレート(不図示)を支持する支持プレート79と、支持プレート79の上面にスペーサを介してネジ止めされた挟持プレート81とを有している。支持プレート79と挟持プレート81の間にシートプレートを挟み込むことで、シートプレートに対してシートヒンジブラケット78が固定される。支持プレート79の下面には、シートヒンジ部65を挟むように車幅方向に離間した一対の脚部82が設けられている。一対の脚部82の先端部にヒンジピン77が両持ちで支持され、一対の脚部82の中間部に断面視L字状の規制プレート83が両持ちで支持されている。
【0029】
シートヒンジブラケット78がヒンジピン77を中心にして揺動することでシート34が開閉される。シート34が開かれたときには、シートヒンジブラケット78がヒンジピン77を中心に約90度揺動して、規制プレート83がシートヒンジ部65の先端部に突き当たってシートヒンジブラケット78の揺動が規制される。これにより、シート34を開けたまま作業することが可能になっている。シートヒンジ部65はシート34から下向きの負荷を受けるが、シートヒンジ部65がバッテリケース61に一体化されているため、シート34からの負荷に対して十分な支持剛性を有している。
【0030】
図5に示すように、バッテリケース61の前面上部にシートヒンジ部65が形成され、バッテリケース61の前面下部にケース固定部66が形成されており、平面視にてシートヒンジ部65がケース固定部66に重なっている。より詳細には、シートヒンジ部65の基端部がケース固定部66の車幅方向中央部に重なっている。シート34側からシートヒンジ部65に作用した荷重が、シートヒンジ部65の真下のケース固定部66に受け止められる。よって、ケース固定部66に作用する曲げモーメントが抑えられて、バッテリ60が一対のバッテリブラケット54を介してブリッジ52に安定的に支持される。
【0031】
図6に示すように、バッテリケース61の前面上部には前方に向かって下方に傾斜した第1の傾斜面85aが形成されている。第1の傾斜面85aの下方は、車幅方向右側(紙面手前)の第1の陥没部86aと車幅方向左側(紙面奥方)の突出部64に分かれている。右側の第1の陥没部86aには第1の傾斜面85aの下端から後方に向かって下方に傾斜した第2の傾斜面85bが形成され、左側の突出部64には第1の傾斜面85aの斜面を延長させた第3の傾斜面85cが形成されている。また、第1の陥没部86aには、第2の傾斜面85bの下端から前方に向かって下方に傾斜した第4の傾斜面85dが形成されている。
【0032】
第1の陥没部86aの下方には隔壁67を挟んで第2の陥没部86bが形成されている。第2の陥没部86bには、隔壁67の下面から後方に向かって下方に傾斜した第5の傾斜面85eと、第5の傾斜面85eの下端から前方に向かって下方に傾斜した第6の傾斜面85fが形成されている。バッテリケース61の前面下部には、第6の傾斜面85fの下端から後方に向かって下方に傾斜した第7の傾斜面85gが形成されている。このように、バッテリケース61の前面には、第1-第7の傾斜面85a-85gによって上方から下方に向かって凸面と凹面が交互に形成されている。
【0033】
第1、第2の傾斜面85a、85bから前方にシートヒンジ部65が突き出している。第1、第2の傾斜面85a、85bとシートヒンジ部65の境界の断面積が広くなって、シートヒンジ部65の大型化を伴うことなく、シート34からの荷重に対してシートヒンジ部65の支持剛性が高められている。第1の陥没部86aの第2、第4の傾斜面85b、85dの前方で突出部64の右側面が露出しており、この突出部64の右側面から右方に低電圧ハーネスコネクタ68が突き出している。低電圧ハーネスコネクタ68が第1の陥没部86aに収まっているため、低電圧ハーネスコネクタ68が外部からの衝撃等から保護される。
【0034】
第2の陥没部86bの第5、第6の傾斜面85e、85fの前方で突出部64の右側面が露出しており、この突出部64の右側面から右方に高電圧ハーネスコネクタ69が突き出している。高電圧ハーネスコネクタ69が第2の陥没部86bに収まっているため、高電圧ハーネスコネクタ69が外部からの衝撃等から保護される。第6、第7の傾斜面85f、85gから前方にケース固定部66が突き出している。第6、第7の傾斜面85f、85gとケース固定部66の境界の断面積が広くなって、ケース固定部66の大型化を伴うことなく、バッテリ60からの荷重に対してケース固定部66の支持剛性が高められている。
【0035】
バッテリケース61の内側には、バッテリモジュール70を固定する第1-第3のモジュール固定部87a-87cが形成されている。第1のモジュール固定部87aは、第1、第2の傾斜面85a、85bの内側の三角形状の空間に位置し、バッテリモジュール70の前縁上部を固定している。第2のモジュール固定部87bは、第4、第5の傾斜面85d、85eの内側の三角形状の空間に位置し、バッテリモジュール70の前縁中央部を固定している。第3のモジュール固定部87cは、第6、第7の傾斜面85f、85gの内側の三角形状の空間に位置し、バッテリモジュール70の前縁下部を固定している。
【0036】
第1のモジュール固定部87aが第1、第2の傾斜面85a、85bを挟んでシートヒンジ部65の基端部に対向している。第1のモジュール固定部87aに固定されたバッテリモジュール70の剛性によって、第1、第2の傾斜面85a、85b付近が補強されている。第3のモジュール固定部87cが第6、第7の傾斜面85f、85gを挟んでケース固定部66に対向している。第3のモジュール固定部87cに固定されたバッテリモジュール70の剛性によって、第6、第7の傾斜面85f、85g付近が補強されている。これにより、上方からの荷重に対してシートヒンジ部65及びケース固定部66の支持剛性が高められている。詳述はしないが、バッテリケース61の内側には、第1-第3のモジュール固定部87a-87c以外にも複数のモジュール固定部が設けられている。
【0037】
以上、本実施例によれば、バッテリケース61にシートヒンジ部65が形成されているため、シート34の下方にはシートヒンジ部65を取り付けるためのフレームが不要になる。バッテリ60の収容空間が広くなり、バッテリサイズの大型化によってバッテリ容量を十分に確保することができる。また、バッテリケース61にシートヒンジ部65が一体的に形成されることで、シート34側からの荷重に対するシートヒンジ部65の支持剛性が確保されている。また、車体フレーム10のフレーム構造がシンプルになって、車体フレーム10に対するバッテリ60の組み付け性が向上される。
【0038】
なお、本実施例のバッテリはスクータタイプの鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、シートの下方にバッテリが設置される乗り物であればよい。
【0039】
また、本実施例では、シートヒンジ部が第1、第2の傾斜面から前方に突き出しているが、シートヒンジ部は第1の傾斜面及び第2の傾斜面の少なくとも一方から突き出していればよい。
【0040】
また、本実施例では、バッテリケースの前面には凸面と凹面が形成されているが、バッテリケースの前面の形状は特に限定されない。例えば、バッテリケースの前面が平坦に形成されていれもよく、バッテリケースの平坦な前面からシートヒンジ部が突き出していてもよい。
【0041】
また、本実施例では、シートヒンジ部がバッテリケースの前面から突き出してるが、シートヒンジ部はシートを開閉可能に支持するようにバッテリケースから突き出していればよい。例えば、バッテリケースの後面や側面からシートヒンジ部が突き出していてもよい。
【0042】
また、本実施例では、バッテリケースには、平面視にてシートヒンジ部とケース固定部が重なっているが、シートヒンジ部とケース固定部の位置関係は特に限定されない。
【0043】
また、本実施例では、モジュール固定部が第1、第2の傾斜面を挟んでシートヒンジ部の基端部に対向しているが、モジュール固定部とシートヒンジ部の位置関係は特に限定されない。
【0044】
また、本実施例では、バッテリが車体フレームに固定されているが、車体フレームにはバッテリホルダが固定され、バッテリホルダに対してバッテリが着脱可能に装着されてもよい。
【0045】
以上の通り、本実施例のバッテリ(60)は、電動式の鞍乗型車両(1)のシート(34)の下方に設置されるバッテリであって、走行用の電力が充電されるバッテリモジュール(70)と、バッテリモジュールを収容したバッテリケース(61)と、を備え、バッテリケースにはシートを開閉可能に支持するシートヒンジ部(65)が一体的に形成されている。この構成によれば、バッテリケースにシートヒンジ部が形成されているため、シートの下方にはシートヒンジ部を取り付けるためのフレームが不要になる。バッテリの収容空間が広くなり、バッテリサイズの大型化によってバッテリ容量を十分に確保することができる。また、バッテリケースにシートヒンジ部が一体的に形成されることで、シート側からの荷重に対してシートヒンジ部の支持剛性が確保されている。
【0046】
本実施例のバッテリにおいて、バッテリケースの前面上部に前方に向かって下方に傾斜した傾斜面(第1の傾斜面85a)が形成され、傾斜面から前方にシートヒンジ部が突き出している。この構成によれば、傾斜面とシートヒンジ部の境界の断面積が広くなって、シートヒンジ部の大型化を伴うことなく、シート側からの荷重に対するシートヒンジ部の支持剛性を高めることができる。
【0047】
本実施例のバッテリにおいて、バッテリケースの前面下部に車体フレームに固定されるケース固定部(66)が形成され、平面視にて、シートヒンジ部がケース固定部に重なる。この構成によれば、シート側からシートヒンジ部に作用する荷重が、シートヒンジ部の真下のケース固定部によって受け止められる。ケース固定部に作用する曲げモーメントが抑えられて、ケース固定部によってバッテリケースが安定的に支持される。
【0048】
本実施例のバッテリにおいて、バッテリケースの内側にバッテリモジュールを固定するモジュール固定部(第1のモジュール固定部87a)が形成され、モジュール固定部が傾斜面を挟んでシートヒンジ部の基端部に対向する。この構成によれば、モジュール固定部に固定されたバッテリモジュールの剛性によってバッテリケースの傾斜面付近が補強される。よって、シート側からの荷重に対するシートヒンジ部の基端部の支持剛性を高めることができる。
【0049】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0050】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0051】
1 :鞍乗型車両
34 :シート
60 :バッテリ
61 :バッテリケース
65 :シート連結部
66 :ケース固定部
70 :バッテリモジュール
85a:第1の傾斜面(傾斜面)
87a:第1のモジュール固定部(モジュール固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6