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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241106BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J2/01 107
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 303
B41J19/18 P
B41J19/18 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020196531
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085051
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓介
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-006793(JP,A)
【文献】特開2011-189712(JP,A)
【文献】特開平10-138583(JP,A)
【文献】特開2006-273507(JP,A)
【文献】特開2016-043495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
記録媒体を検知するセンサと、
前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に配置された前記センサとを支持するキャリッジと、
前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、
前記搬送機構、前記液体吐出ヘッド及び前記移動機構を制御し、第1印刷データに基づいて第1記録媒体に双方向印刷を行い、第2印刷データに基づいて第2記録媒体に双方向印刷を行う制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
前記第1印刷データ及び前記第2印刷データに基づいて、前記第1記録媒体への印刷終了に伴って当該第1記録媒体を排出する排出動作の開始から、前記第2記録媒体を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が、所定時間よりも長いか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間よりも長いと判定された場合、前記キャリッジを、前記第1記録媒体への印刷終了に伴う前記キャリッジの印刷終了位置から、前記交差方向の他方側において前記第2記録媒体を検知する他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう印刷を開始するための他方側印刷開始位置に移動させる印刷準備処理と
前記判定処理において、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間以下であると判定された場合、前記第1記録媒体への最終印刷パスが前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう他方側印刷パス及び前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう一方側印刷パスのいずれであるかを判定する最終印刷パス判定処理と、を実行可能であり、
前記最終印刷パス判定処理において、前記最終印刷パスが前記他方側印刷パスであると判定された場合、前記印刷準備処理において、前記キャリッジを、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記他方側印刷開始位置に移動させ、前記最終印刷パスが前記一方側印刷パスであると判定された場合、前記印刷準備処理において、前記キャリッジを、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記交差方向の前記一方側において前記第2記録媒体を検知する一方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう印刷を開始するための一方側印刷開始位置に移動させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記搬送機構が、前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記液体吐出ヘッドの前記ノズルと対向する位置に向けて記録媒体を搬送する搬送部を有しており、
前記制御装置は、前記判定処理において、前記第1記録媒体への印刷終了時に前記第1記録媒体の後端が前記搬送部を通過しておらず、前記後端が前記搬送部を既に通過しているときに比べ前記第2記録媒体の搬送開始が遅れる搬送開始遅延が生じる場合に、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間よりも長いと判定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
記録媒体を検知するセンサと、
前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に前記センサを配置された前記センサとを支持するキャリッジと、
前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、
前記搬送機構、前記液体吐出ヘッド及び前記移動機構を制御し、第1印刷データに基づいて第1記録媒体に双方向印刷を行い、第2印刷データに基づいて第2記録媒体に双方向印刷を行う制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
前記第1印刷データ及び前記第2印刷データに基づいて、前記第1記録媒体への印刷終了に伴う前記キャリッジの印刷終了位置から、前記交差方向の他方側において前記第2記録媒体を検知する他方側検知位置までの前記キャリッジの移動に要する他方側検知移動時間と、前記他方側検知位置から前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう印刷を開始するための他方側印刷開始位置までの前記キャリッジの移動に要する他方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間である第1移動時間と、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記交差方向の前記一方側において前記第2記録媒体を検知する一方側検知位置までの前記キャリッジの移動に要する一方側検知移動時間と、前記一方側検知位置から前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう印刷を開始するための一方側印刷開始位置までの前記キャリッジの移動に要する一方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間である第2移動時間とを導出する移動時間導出処理と、
前記第1移動時間が前記第2移動時間よりも短い場合、前記キャリッジを前記印刷終了位置から前記他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後に前記他方側印刷開始位置まで移動させ、前記第2移動時間が前記第1移動時間以下の場合、前記キャリッジを前記印刷終了位置から前記一方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後に前記一方側印刷開始位置まで移動させる印刷準備処理とを実行可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記移動時間導出処理において、前記第1記録媒体への印刷終了に伴って当該第1記録媒体を排出する排出動作の開始から、前記第2記録媒体を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間を前記他方側検知移動時間から差し引いた時間が正となる場合は、当該差し引いた時間を前記他方側検知移動時間として前記第1移動時間を導出し、当該差し引いた時間が負又はゼロとなる場合は、当該他方側検知移動時間を0として前記第1移動時間を導出し、
前記印刷開始位置搬送時間を前記一方側検知移動時間から差し引いた時間が正となる場合は、当該差し引いた時間を前記一方側検知移動時間として前記第2移動時間を導出し、当該差し引いた時間が負又はゼロとなる場合は、当該一方側検知移動時間を0として前記第2移動時間を導出する、ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記液体吐出ヘッドの前記ノズルと対向する位置に向けて記録媒体を搬送する搬送部を有しており、
前記印刷開始位置搬送時間は、前記第1記録媒体への印刷終了時に前記第1記録媒体の後端が前記搬送部を既に通過しているときよりも前記後端が前記搬送部を通過していないときの方が長くなることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記移動時間導出処理において、前記第2記録媒体に対して前記キャリッジを前記他方側印刷開始位置に配置させて印刷を開始してから、当該第2記録媒体への印刷終了までの他方側印刷時間を導出し、当該他方側印刷時間に前記他方側検知移動時間と前記他方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間を前記第1移動時間として導出し、前記第2記録媒体に対して前記キャリッジを前記一方側印刷開始位置に配置させて印刷を開始してから、当該第2記録媒体への印刷終了までの一方側印刷時間を導出し、当該一方側印刷時間に前記一方側検知移動時間と前記一方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間を前記第2移動時間として導出することを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
記録媒体を検知するセンサと、
前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に配置された前記センサとを支持するキャリッジと、
前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、
制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
第1記録媒体への印刷終了に伴って当該第1記録媒体を排出する排出動作の開始から、第2記録媒体を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が、所定時間よりも長いか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理の結果に応じて、前記センサにて前記第2記録媒体を検知する検知位置が、前記交差方向における前記第2記録媒体の中心よりも前記一方側とするか前記一方側の逆である他方側とするかを決定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記判定処理の結果が、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間よりも長い場合には、前記第1記録媒体への最終印刷パスにおける前記キャリッジの移動方向に関わらず、前記第2記録媒体の中心よりも前記他方側にて前記第2記録媒体の検知を行い、
前記判定処理の結果が、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間以下の場合には、前記第1記録媒体への最終印刷パスにおける前記キャリッジの移動方向に応じて、前記第2記録媒体の中心よりも前記一方側にて前記第2記録媒体検知するか、前記他方側にて前記第2記録媒体検知するかを決定することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッド(液体吐出ヘッド)を搭載したキャリッジを記録媒体上に走査させ双方向で記録媒体の各行を連続して記録する際に、記録するデータを受信すると、このデータに基づいてキャリッジを走査しながら記録終了後のキャリッジ停止位置(キャリッジの印刷終了位置)を推定して、その推定位置にキャリッジを停止させるように制御し、このデータの記録の記録終了までに次のデータを受信したときに、当該次のデータに基づいてキャリッジの停止位置を算出し、算出した位置に停止目標位置を変更して、キャリッジを停止させるように制御する技術について記載されている。これにより、キャリッジ速度の減速・加速の回数を最小限にしつつ、キャリッジを適切な印字速度で移動させながら印字することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-188944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1には、一の記録媒体(第1記録媒体)と、この次に搬送される記録媒体(第2記録媒体)との記録媒体間において、通常実施される次の記録媒体検知、及び、直後の記録ヘッドの印刷開始位置について記載されていない。記録媒体を検知するためのセンサは、複数のノズルに対して走査方向の一方側のみに取り付けられていることがある。次の記録媒体の検知動作は、例えば、一の記録媒体の印刷終了位置から走査方向の当該一方側の検知位置に、記録媒体検知を行うためのセンサが搭載されたキャリッジを移動させて、次の記録媒体を検知することで実施される。センサがキャリッジの記録ヘッドよりも走査方向の当該一方側のみに配置されている場合、検知位置では、複数のノズルが次の記録媒体と重なる位置に配置された状態となる。このため、記録媒体の検知後、次の記録媒体を走査方向の当該一方側の端から印刷可能にするためには、複数のノズルが次の記録媒体と重ならない一方側印刷開始位置までキャリッジを走査方向に移動させる必要が生じる。そのため、一の記録媒体の印刷終了から次の記録媒体の印刷が終了するまでに要する時間が長くなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、第1記録媒体の印刷終了から第2記録媒体の印刷終了までに要する時間が長くなるのを抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、第1の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、記録媒体を検知するセンサと、前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に配置された前記センサとを支持するキャリッジと、前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、前記搬送機構、前記液体吐出ヘッド及び前記移動機構を制御し、第1印刷データに基づいて第1記録媒体に双方向印刷を行い、第2印刷データに基づいて第2記録媒体に双方向印刷を行う制御装置と、を備えている。そして、前記制御装置は、前記第1印刷データ及び前記第2印刷データに基づいて、前記第1記録媒体への印刷終了に伴って当該第1記録媒体を排出する排出動作の開始から、前記第2記録媒体を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が、所定時間よりも長いか否かを判定する判定処理と、前記判定処理において、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間よりも長いと判定された場合、前記キャリッジを、前記第1記録媒体への印刷終了に伴う前記キャリッジの印刷終了位置から、前記交差方向の他方側において前記第2記録媒体を検知する他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう印刷を開始するための他方側印刷開始位置に移動させる印刷準備処理と、前記判定処理において、前記印刷開始位置搬送時間が前記所定時間以下であると判定された場合、前記第1記録媒体への最終印刷パスが前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう他方側印刷パス及び前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう一方側印刷パスのいずれであるかを判定する最終印刷パス判定処理と、を実行可能であり、前記最終印刷パス判定処理において、前記最終印刷パスが前記他方側印刷パスであると判定された場合、前記印刷準備処理において、前記キャリッジを、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記他方側印刷開始位置に移動させ、前記最終印刷パスが前記一方側印刷パスであると判定された場合、前記印刷準備処理において、前記キャリッジを、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記交差方向の前記一方側において前記第2記録媒体を検知する一方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後、前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう印刷を開始するための一方側印刷開始位置に移動させる。
【0007】
また、本発明の液体吐出装置は、第2の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、記録媒体を検知するセンサと、前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に前記センサを配置された前記センサとを支持するキャリッジと、前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、前記搬送機構、前記液体吐出ヘッド及び前記移動機構を制御し、第1印刷データに基づいて第1記録媒体に双方向印刷を行い、第2印刷データに基づいて第2記録媒体に双方向印刷を行う制御装置と、を備えている。そして、前記制御装置は、前記第1印刷データ及び前記第2印刷データに基づいて、前記第1記録媒体への印刷終了に伴う前記キャリッジの印刷終了位置から、前記交差方向の他方側において前記第2記録媒体を検知する他方側検知位置までの前記キャリッジの移動に要する他方側検知移動時間と、前記他方側検知位置から前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記他方側から前記一方側へと向かう印刷を開始するための他方側印刷開始位置までの前記キャリッジの移動に要する他方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間である第1移動時間と、前記キャリッジの前記印刷終了位置から前記交差方向の前記一方側において前記第2記録媒体を検知する一方側検知位置までの前記キャリッジの移動に要する一方側検知移動時間と、前記一方側検知位置から前記第2記録媒体に対して前記交差方向の前記一方側から前記他方側へと向かう印刷を開始するための一方側印刷開始位置までの前記キャリッジの移動に要する一方側印刷開始移動時間とを足し合わせた時間である第2移動時間とを導出する移動時間導出処理と、前記第1移動時間が前記第2移動時間よりも短い場合、前記キャリッジを前記印刷終了位置から前記他方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後に前記他方側印刷開始位置まで移動させ、前記第2移動時間が前記第1移動時間以下の場合、前記キャリッジを前記印刷終了位置から前記一方側検知位置に移動させ、前記センサにて前記第2記録媒体を検知した後に前記一方側印刷開始位置まで移動させる印刷準備処理とを実行可能である。
また、本発明の液体吐出装置は、第3の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、記録媒体を検知するセンサと、前記液体吐出ヘッドと、前記ノズルに対して前記搬送方向と交差する交差方向の一方側に配置された前記センサとを支持するキャリッジと、前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させる移動機構と、制御装置と、を備えており、前記制御装置は、第1記録媒体への印刷終了に伴って当該第1記録媒体を排出する排出動作の開始から、第2記録媒体を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が、所定時間よりも長いか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果に応じて、前記センサにて前記第2記録媒体を検知する検知位置が、前記交差方向における前記第2記録媒体の中心よりも前記一方側とするか前記一方側の逆である他方側とするかを決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体吐出装置の第1~第3の観点によると、第1記録媒体の印刷終了から第2記録媒体の印刷終了までに要する時間が長くなるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2図1に示すプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図3図1に示すプリンタの概略的な平面図である。
図4】制御部のブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプリンタの印刷動作を示すフローチャートである。
図6】(a)はキャリッジが右側検知位置に配置された状況を示す説明図であり、(b)はキャリッジが左側検知位置に配置された状況を示す説明図である。
図7】(a)はキャリッジが右側印刷開始位置に配置された状況を示す説明図であり、(b)はキャリッジが左側印刷開始位置に配置された状況を示す説明図である。
図8】第1及び第2変形例に係るプリンタの印刷動作の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るプリンタ1について説明する。プリンタ1は、図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向A1、前後方向A2、及び、左右方向A3である。図2図3図6及び図7にも、図1に示す3つの方向を反映して示す。
【0011】
<プリンタ1の概要>
図1に示すように、プリンタ1は、概ね直方体に形成されており、プリンタ本体2と、プリンタ本体2の下部に装着された増設用の給紙ユニット3とを有する。プリンタ本体2は、筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。第1給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。第1給紙トレイ15は、開口12から前後方向A2に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙P1が第1給紙トレイ15に載置される。プリンタ本体2は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能である。そして、PCなどからの印刷データに基づいて印刷動作を実行する。また、ユーザによる操作ボタンの操作によっても各種機能を実行する。
【0012】
また、筐体11の前壁11aは、図1に示すように、その右方部分に開閉カバー4を有する。開閉カバー4は、その下端部において、左右方向A3に沿う回転軸(不図示)を回転中心として回動可能に構成されている。開閉カバー4を開くことで、後述の4つのタンク18a~18dにインクを補充することが可能となる。
【0013】
<プリンタ本体2の内部構造>
次に、プリンタ本体2の内部構造について説明する。図2及び図3に示すように、プリンタ本体2は、第1給送部20と、搬送ローラ対35と、記録部40と、タンクユニット18と、排紙ローラ対36と、第1ASF(Auto Sheet Feed)モータ20M(図4参照)と、LF(Line Feed)モータ35M(図4参照)と、制御部5(図4参照)とを含む。
【0014】
第1給送部20は、第1給紙トレイ15に載置される用紙P1を搬送路25へ給送する。搬送ローラ対35は、第1給送部20によって給紙された用紙P1、及び、給紙ユニット3から合流路25aを介して給紙された用紙P2を記録部40に搬送する。記録部40は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対35によって搬送された用紙P1,P2に画像を記録する。排紙ローラ対36は、記録部40によって記録された用紙P1,P2を排紙トレイ16に排紙する。
【0015】
<タンクユニット18>
タンクユニット18は、図3に示すように、4つのタンク18a~18dを有している。これら4つのタンク18a~18dは、プリンタ本体2の搬送方向の下流側且つ図3中右側の部分に設けられ、左右方向(走査方向)A3に並んで配置されている。4つのタンク18a~18dには、右側に位置するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。そして、4つのタンク18a~18dに貯留されたこれら4色のインクが4本のチューブ等(不図示)を介してインクジェットヘッド41(後述する)に供給される。
【0016】
<第1給送部20>
図2に示すように、第1給送部20が第1給紙トレイ15の上側に設けられている。第1給送部20は、第1給紙ローラ21と第1アーム22を有する。第1給紙ローラ21は、第1アーム22の先端に軸支されている。第1アーム22は、支軸22aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて第1給紙ローラ21が第1給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、第1アーム22は、第1給紙トレイ15の着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。第1給紙ローラ21は、伝達機構(不図示)を介して第1ASFモータ20Mの動力が伝達されて回転し、第1給紙トレイ15内に積載された用紙P1が、搬送路25へ給送される。
【0017】
<第1給紙トレイ15>
図2に示すように、第1給紙トレイ15は、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、第1給紙トレイ15に載置される用紙P1が第1給紙ローラ21によって給送されるときに、用紙P1を搬送路25に案内する。
【0018】
<搬送路25>
搬送路25は、筐体11内に構成されており、図2に示すように、第1給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ1の前側へ曲がっている。第1給紙トレイ15から給送された用紙P1は、搬送路25により下方から上方へUターンするように案内されて記録部40に至る。
【0019】
<合流路25a>
搬送路25には、合流路25aが接続されている。合流路25aも筐体11内に構成されており、第1給紙トレイ15よりも後方において、上下方向A1に延在しており、搬送路25に接続されている。給紙ユニット3から給送された用紙P2は、合流路25aから搬送路25へと案内され、搬送路25により下方から前方へと案内されて記録部40に至る。
【0020】
<搬送ローラ対35、及び、排紙ローラ対36>
搬送ローラ対35は、下側に配置された搬送ローラ35aと上側に配置されたピンチローラ35bとを有する。搬送ローラ35aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。ピンチローラ35bは、搬送ローラ35aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ35aとピンチローラ35bとは、協働して用紙P1及びロール紙P2を上下方向A1から挟持し、用紙P1,P2を記録部40へ搬送する。
【0021】
排紙ローラ対36は、下側に配置された排紙ローラ36aと、上側に配置された拍車ローラ36bとを有する。排紙ローラ36aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。拍車ローラ36bは、排紙ローラ36aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ36aと拍車ローラ36bとは、協働して用紙P1,P2を上下方向A1から挟持し、用紙P1,P2を排紙トレイ16に搬送する。
【0022】
<記録部40>
図2及び図3に示すように、記録部40は、インクジェットヘッド41と、センサ45、キャリッジ51と、ヘッド移動機構50と、プラテン6とを有する。キャリッジ51は、走査方向(左右方向A3であって、用紙P1,P2の搬送方向と直交する方向)へ往復移動する。インクジェットヘッド41は、キャリッジ51に支持されている。
【0023】
インクジェットヘッド41の下面には、当該インクジェットヘッド41の下方に搬送された用紙P1,P2に対してインクを吐出する複数のノズル41aが形成されている。複数のノズル41aは、図3に示すように、搬送方向に沿って配列されたノズル列が走査方向に4列形成されるように配置されている。本実施形態において、図3中最も右側の吐出口列に属する吐出口41aからは、ブラックインクが吐出され、他の3列の吐出口列に属する吐出口41aからは、カラーインク(マゼンタ、シアン、イエロー)が吐出される。インクジェットヘッド41は、印刷データに基づく制御部5の制御により、ノズル41aから各色のインクを微小なインク滴として吐出する。
【0024】
インクジェットヘッド41には、チューブジョイント44が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント44に連結された可撓性の4本のチューブ(不図示)を介して、インクジェットヘッド41とタンクユニット18とが接続され、各色のインクがインクジェットヘッド41に供給される。
【0025】
インクジェットヘッド41の下方には、搬送ローラ対35によって搬送される用紙P1,P2を支持するプラテン6が配設されている。プラテン6は、キャリッジ51の往復移動範囲のうち、用紙P1,P2が通過する部分に配設されている。プラテン6の幅は、搬送可能な用紙P1,P2の最大幅より十分に大きいので、搬送路25を搬送される用紙P1,P2は常にプラテン6上を通過する。
【0026】
センサ45は、図3に示すように、インクジェットヘッド41とともにキャリッジ51に支持されている。また、センサ45は、図3に示すように、複数のノズル41aに対して左右方向A3の左側(一方側)に配置されている。また、センサ45は、複数のノズル41aに対して搬送方向上流側に配置されている。なお、センサ45は、搬送方向において、最も下流に位置するノズル41aよりも搬送方向上流側に配置されておればよい。本実施形態におけるセンサ45は、公知の光センサから構成されているが、用紙P1,P2がインクジェットヘッド41とプラテン6との間に搬送されてきたことを検知することが可能であれば、どのようなセンサであってもよい。センサ45は、発光部と受光部とを有し、発光部が下方に向かって光を照射し、プラテン6及び用紙P1,P2のいずれかからの反射光を受光部が受光するように構成されている。そして、センサ45は、プラテン6からの反射光量と、用紙P1,P2からの反射光量との差により用紙P1,P2の有無を検知することができる。
【0027】
ヘッド移動機構50は、図3に示すように、一対のガイドレール52、及び、ベルト伝達機構53を含む。一対のガイドレール52は、前後方向A2に離隔して配置され、左右方向A3に互いに平行に延在している。キャリッジ51は、これら一対のガイドレール52を跨ぐように配置され、当該一対のガイドレール52上を左右方向A3に沿って往復移動される。
【0028】
また、ベルト伝達機構53は、2つのプーリ54,55と、一部がキャリッジ51に固定された無端状のタイミングベルト56と、キャリッジモータ50Mとを含む。2つのプーリ54,55は、左右方向A3に互いに離隔して配置され、タイミングベルト56が架け渡されている。プーリ54は、キャリッジモータ50Mの駆動軸と連結されており、キャリッジモータ50Mが駆動されることで、タイミングベルト56が走行し、キャリッジ51とともにインクジェットヘッド41が走査方向に移動する。
【0029】
インクジェットヘッド41は、印刷データに基づく制御部5の制御により、ノズル41aから各色のインクを吐出する。つまり、キャリッジ51が左右方向A3へ往復移動することにより、インクジェットヘッド41が用紙P1,P2に対して走査されると共に、ノズル41aから、各色のインクを吐出することで、プラテン6上を搬送される用紙P1,P2に画像が記録される。なお、プリンタ1内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ51には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ51の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ51の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、キャリッジモータ50Mの回転駆動が制御される。
【0030】
<給紙ユニット3>
給紙ユニット3は、図1図2に示すように、筐体60と、第2給紙トレイ61と、第2給送部80と、第2ASF(Auto Sheet Feed)モータ80M(図4参照)とを含む。筐体60は、図1に示すように、直方体形状を有しており、プリンタ本体2の下部に着脱可能に構成されている。筐体60の前壁60aの略中央には、開口60bが形成されている。第2給紙トレイ61は、開口60bから前後方向A2(直交する方向)に挿抜可能、すなわち、筐体60から着脱可能に構成されている。
【0031】
<第2給紙トレイ61>
第2給紙トレイ61は、図2に示すように、所望のサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙P2が載置可能に構成されている。また、第2給紙トレイ61は、後方端部に斜壁部61aを有する。斜壁部61aは、第2給紙ローラ81によって給送される用紙P2を合流路25aに向かって案内する。
【0032】
<第2給送部80>
図2に示すように、第2給送部80は、第2給紙トレイ61の上側に設けられている。第2給送部80は、第2給紙ローラ81と第2アーム82を有する。第2給紙ローラ81は、第2アーム82の先端に軸支されている。第2アーム82は、支軸82aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて第2給紙ローラ81が第2給紙トレイ61に接触するように下側へ回動されている。また、第2アーム82は、第2給紙トレイ61の着脱する際に上方の退避可能に構成されている。第2給紙ローラ81は、伝達機構(不図示)を介して第2ASFモータ80Mの動力が伝達されて回転し、第2給紙トレイ61内に積載された用紙P2が、搬送路91を経由して合流路25aへ給送される。
【0033】
<搬送路91>
搬送路91は、筐体60内に構成されており、図2に示すように、第2給紙トレイ61の後側の端部から上方に延在している。搬送路91は、給紙ユニット3がプリンタ本体2に装着されたときに、その上端が合流路25aの下端と接続される。そして、第2給紙トレイ61から給送された用紙P2は、搬送路91を経由して合流路25aへと案内される。
【0034】
図4に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含み、これらが協働して、第1ASFモータ20M、第2ASFモータ80M、LFモータ35M、キャリッジモータ50M、インクジェットヘッド41等の動作を制御する。例えば、制御部5は、PCから送信された印刷データに基づいて、インクジェットヘッド41、第1ASFモータ20M、LFモータ35M、キャリッジモータ50M等を制御して、用紙P1に画像等を記録させる。また、制御部5は、PCから送信された印刷データに基づいて、インクジェットヘッド41、第2ASFモータ80M、LFモータ35M、キャリッジモータ50M等を制御して、用紙P2に画像等を記録させる。
【0035】
なお、本実施形態の制御部5では、CPU及びASICを1つずつ有しているが、制御部5は、ASICを1つだけ含み、この1つのASICが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASICを複数含み、これら複数のASICが必要な処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部5は、センサ45などが接続されている。
【0036】
続いて、プリンタ1の印刷動作について、図5図7を参照しつつ以下に説明する。制御部5は、図5に示すように、S1において、印刷データを受信したか否かを判定し、受信していない場合(NO)はS1を繰り返して待機し、受信した場合(YES)は、S2に進む。本実施形態における印刷データは、先に搬送される第1用紙に画像を印刷するための第1印刷データと、第1用紙の次に搬送される第2用紙に画像を印刷するための第2印刷データとを含む。また、本実施形態における両印刷データに基づいて印刷される用紙は第1給送部20によって給送される用紙P1であるが、第2給送部80によって給送される用紙P2であってもよい。なお、印刷データは、受信に限らず、印刷データを記憶したメモリなどの記憶媒体から読み出すことで、当該印刷データを受信したものと同様に、S2に進んでもよい。
【0037】
制御部5は、S2において、第1ASFモータ20Mを制御して、第1給送部20により第1給紙トレイ15の用紙P1(以下、第1用紙P1ともいう)を搬送ローラ対35に向けて給送する。搬送ローラ対35に到達した用紙P1は、その先端が搬送ローラ対35との接触により揃えられ、先端レジストレーションが行われる。
【0038】
また、S2においては、制御部5が、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を待機位置から右側検知位置に移動させる。なお、キャリッジ51を移動させて用紙P1に最初に印刷する位置が、用紙P1の左右方向A3の中央よりも左側位置である場合、キャリッジ51を待機位置から左側検知位置に移動させてもよい。待機位置は、図6(a)中二点鎖線で示す位置であって、キャリッジ51がプラテン6と重ならない位置であってプラテン6よりも左右方向A3の右側の位置である。右側検知位置は、図6(a)中実線で示す位置であってキャリッジ51の一部がプラテン6と重なる位置であって、センサ45が搬送されてきた用紙P1,P2の右端部と重なることが可能な位置である。また、左側検知位置は、図6(b)中実線で示す位置であってキャリッジ51全体がプラテン6と重なる位置であって、センサ45が搬送されてきた用紙P1,P2の左端部と重なることが可能な位置である。
【0039】
次に、制御部5は、S3において、第1用紙P1の頭出し動作を行う。つまり、制御部5が、LFモータ35Mを制御して、搬送ローラ対35で第1用紙P1に最初の印刷パス(キャリッジ51を移動させつつインクジェットヘッド41からインクを吐出して印刷を行うパス)により印刷を行うための印刷開始位置まで搬送する。
【0040】
次に、制御部5は、S4において、頭出しされた第1用紙P1があるか否かを判定する。第1用紙P1がセンサ45にて検知されない場合(NO)、センサ45の故障や用紙ジャムに関するエラー報知を行ってフローを終了する。なお、エラーが第1用紙P1のジャムの場合、当該ジャムした用紙P1を除去してから、再度、S2からやり直してもよい。第1用紙P1がセンサ45にて検知された場合(YES)、S5に進む。
【0041】
制御部5は、S5において、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を右側検知位置から右側印刷開始位置に移動させる。なお、キャリッジ51が左側検知位置にある場合は、左側印刷開始位置に移動させてもよい。右側印刷開始位置は、図7(a)に示すように、左右方向A3において右側検知位置よりも右側であってキャリッジ51の一部がプラテン6と重なりインクジェットヘッド41の複数のノズル41aが用紙P1,P2と重ならない位置である。また、左側印刷開始位置は、図7(b)に示すように、左右方向A3において左側検知位置よりも左側であってキャリッジ51の一部がプラテン6と重なりインクジェットヘッド41の複数のノズル41aが用紙P1,P2と重ならない位置である。キャリッジ51が右側検知位置から右側印刷開始位置まで移動するための移動距離は、左側検知位置から左側印刷開始位置まで移動するための移動距離よりも短い。このため、キャリッジ51が右側印刷開始位置と右側検知位置との間を移動するのに要する時間は、左側印刷開始位置と左側検知位置との間を移動するのに要する時間よりも短くなる。
【0042】
この後、制御部5は、第1印刷データに基づいて、キャリッジモータ50M、インクジェットヘッド41、LFモータ35Mを制御して、第1用紙P1に所定の画像を印刷する。本実施形態におけるプリンタ1は、キャリッジ51の左右方向A3への1回の移動(印刷パスともいう)の間にインクジェットヘッド41の複数のノズル41aからインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ対35及び/又は排紙ローラ対36によって用紙P1,P2を前方に所定量搬送する搬送動作とを交互に行うことで、用紙P1,P2に画像を印刷する。そして、プリンタ1は、キャリッジ51の左右方向A3の右方向へ移動する印刷パスのときと、左右方向A3の左方向へ移動する印刷パスのときとで、それぞれインクジェットヘッド41からインクを吐出させる双方向印刷を印刷データに基づいて行う。
【0043】
つまり、キャリッジ51が右側印刷開始位置(又は左側印刷開始位置)に配置されているときの印刷パスは、キャリッジ51が所定速度に達するまで当該右側印刷開始位置(又は左側印刷開始位置)から左方(又は右方)に加速させつつ移動させ、所定速度に達したら定速で左方(又は右方)に移動させる。そして、第1印刷データに基づく所定のインク吐出位置にインクが着弾する吐出タイミングでインクジェットヘッド41からインクを吐出させて第1用紙P1に画像を形成し、この後、キャリッジ51を減速させて所定位置で停止する。この所定位置は、左右方向A3において、第1用紙P1における次のインク吐出位置の一方側の端部(直前の印刷パスにおけるキャリッジ51の移動方向側の端部)から、キャリッジ51を所定速度まで加速するための最短加速範囲以上、一方側に離れた位置であって最も次のインク吐出位置に近い位置となる。この印刷パスの後に上述の搬送動作を行い、その後に、直前の印刷パスとはキャリッジ51の移動向きが逆方向の印刷パスを実行しながらインクを吐出することで、第1用紙P1に画像が形成されていく。このようなインク吐出動作と搬送動作とを交互に繰り返し、第1印刷データに基づいた画像を第1用紙P1に形成する。
【0044】
次に、制御部5は、S6において、第1用紙P1に対する印刷パスが最終印刷パスであるか否かを判定する。最終印刷パスでない場合(NO)、S6が繰り返し行われる。一方、最終印刷パスの場合(YES)、S7に進む。
【0045】
次に、制御部5は、S7において、印刷データに基づいて、第1用紙P1への印刷終了(最終印刷パスの終了)に伴って第1用紙P1を排出する排出動作の開始から、第1用紙P1の次に搬送する用紙P1(以下、第2用紙P1ともいう)を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が、所定時間よりも長いか否かを判定する(判定処理)。このS7での判定処理においては、制御部5が印刷データを受信してから第1印刷データに基づく最終印刷パスの直前の印刷パスによる印刷が開始されるまでに判定された以下の3つの判定処理の結果のうちのいずれかの結果により、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長いと判定する場合、当該判定を優先する。まず、1つ目の判定処理として、制御部5が、第1印刷データに基づいて、第1用紙P1の先端レジストレーションが行われてから第1用紙P1の最終印刷パスが終了するまでの第1用紙P1の搬送量が当該第1用紙P1の用紙長に相当する搬送量以下であるかを判定する。搬送量が用紙長に相当する搬送量以下の場合、第1用紙P1への印刷が終了した時点において第1用紙P1が搬送ローラ対35によって挟持された状態であり、搬送ローラ対35が第1用紙P1を搬送するために駆動する状態になる。この場合、当該第1用紙P1をある程度排出してから第2用紙P1の給送を開始する必要があるため、給送開始遅延が生じる。このときの第2用紙P1の給送開始タイミングは最終印刷パスでの印刷が開始されるタイミングとなる。一方、第1用紙P1の搬送量が当該第1用紙P1の用紙長に相当する搬送量を超えている場合、第1用紙P1への印刷が終了した時点において第1用紙P1の後端が搬送ローラ対35を既に通過している状態である。この場合、給送開始遅延が生じないため、当該第1用紙P1を排出するための待ち時間を確保する必要がない。このときの第2用紙P1の給送開始タイミングは最終印刷パスの直前の印刷パスでの印刷が開始されるタイミングとなる。このように給送開始遅延が生じた場合、給送開始までに待ち時間(最終印刷パス分)が発生するため、第1用紙P1を排出する排出動作の開始から、第2用紙P1を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間が長くなる。つまり、搬送量が用紙長に相当する搬送量以下の場合、印刷開始位置搬送時間が、予め定められた所定時間よりも長い時間となって、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長い(YES)と判定し、S9に進む。本実施形態における所定時間とは、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置が左右方向A3において右側検知位置から最も離れた位置にあっても第2用紙P1が印刷開始位置に搬送されるまでに、キャリッジ51を右側検知位置に移動させることが可能な時間である。本実施形態における第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置とは、第1用紙P1に対する最終印刷パスにおいてインクジェットヘッド41からのインク吐出が終了した時点の位置である。一方、搬送量が用紙長に相当する搬送量を超えている場合、給送開始までに待ち時間がないため、印刷開始位置搬送時間が所定時間以下となって、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間以下である(NO)と判定し、S8に進む。
【0046】
次に、制御部5が、2つ目の判定処理として、第2用紙P1の先端レジストレーションが行われてから印刷開始位置までの第2用紙P1の搬送量が所定長に相当する搬送量以下であるかを判定する。本実施形態における所定長としては、例えば、第2用紙P1の用紙長の1/4の長さであり、この長さ分だけ第2用紙P1を搬送する場合、当該搬送時間がある程度長くなるため、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置が左右方向A3において右側検知位置から最も離れた位置にあっても第2用紙P1が印刷開始位置に搬送されるまでに、キャリッジ51を右側検知位置に移動させることができる。したがって、搬送量が所定長に相当する搬送量を超えている場合、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長い(YES)と判定し、S9に進む。なお、第2用紙P1の所定長は、適宜、設定すればよい。一方、搬送量が所定長に相当する搬送量以下である場合、キャリッジ51が右側検知位置に移動するまでに第2用紙P1が印刷開始位置に達し、次の動作に遅れが生じる。このため、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間以下である(NO)と判定し、S8に進む。
【0047】
次に、制御部5が、3つ目の判定処理として、第1用紙P1の次に搬送される用紙が第2給送部80によって給送される用紙P2であるかを判定する。第2給送部80は、増設用の給紙ユニット3に設けられており、第2給送部80によって給送される用紙P2の搬送ローラ対35までの搬送距離が第1給送部20によって給送される用紙P1の搬送ローラ対35までの搬送距離よりも大幅に長くなる。このように搬送距離が長くなる分だけ、給送開始から搬送ローラ対35に到達するまでの給送時間が所定給送時間(本実施形態においては第1給送部20によって用紙P1が搬送ローラ対35まで給送される時間)よりも長くなる。つまり、次に搬送される用紙が第2給送部20によって給送される用紙P2である場合、給送時間が長くなるため、印刷開始位置搬送時間が、予め定められた所定時間よりも長い時間となって、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長い(YES)と判定し、S9に進む。一方、次に搬送される用紙が第1給送部20によって給送される用紙P1である場合、給送時間が所定給送時間となって、制御部5は、印刷開始位置搬送時間が所定時間以下である(NO)と判定し、S8に進む。
【0048】
次に、制御部5は、S8において、第1用紙P1への最終印刷パスが左方から右方に向かう右向きの印刷パスであるか否かを判定する。右向きの印刷パスであると判定された場合(YES)、S9に進む。左向きの印刷パスであると判定された場合(NO)、S12に進む。
【0049】
次に、制御部5は、S9において、キャリッジモータ50Mを制御して、第1用紙P1への印刷終了(最終印刷パスの印刷終了)に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置までキャリッジ51を移動させる。このとき、制御部5は、第1用紙P1の排出動作と第2用紙P1の給送・頭出し動作も行う。つまり、制御部5が、第1ASFモータ20M及びLFモータ35Mを制御して、排紙ローラ対36で第1用紙P1を排紙トレイ16へ排出するとともに、第2用紙P1の第1給紙トレイ15から搬送ローラ対35に向けての給送を継続し、先端レジストレーション終了後に、搬送ローラ対35で第2用紙P1に最初の印刷パスにより印刷を行うための印刷開始位置まで搬送する。なお、上述したように第1用紙P1への印刷が終了した時点において第1用紙P1の後端が搬送ローラ対35を既に通過しているか否かで給送開始タイミングが異なるが、この時点ではすでに第2用紙P1の給送が開始されているため、給送を継続し、その後に頭出し動作が行われる。
【0050】
次に、制御部5は、S10において、第2用紙P1があるか否かを判定する。キャリッジ51が右側検知位置に配置されており、第2用紙P1が印刷開始位置まで正常に搬送されていると、センサ45が第2用紙P1を検知する。制御部5は、センサ45が第2用紙P1を検知した場合(YES)、S11に進む。一方、センサ45が第2用紙P1を検知しない場合(NO)、センサ45の故障や用紙ジャムに関するエラー報知を行ってフローを終了する。なお、エラーが第2用紙P1のジャムの場合、当該ジャムした用紙P1を除去してから、再度、第2用紙P1を搬送ローラ対35まで給送して先端レジストレーションを行ってから、S9からやり直してもよい。
【0051】
次に、制御部5は、S11において、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を右側検知位置から右側印刷開始位置に移動させる。そして、S15に進む。
【0052】
S8からS12に進むと、制御部5は、キャリッジモータ50Mを制御して、第1用紙P1への最終印刷パスの終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から左側検知位置までキャリッジ51を移動させる。このとき、制御部5は、S9と同様に、第1用紙P1の排出動作と第2用紙P1の給送・頭出し動作も行う。つまり、制御部5が、第1ASFモータ20M及びLFモータ35Mを制御して、排紙ローラ対36で第1用紙P1を排紙トレイ16へ排出するとともに、第2用紙P1の第1給紙トレイ15から搬送ローラ対35に向けて給送を継続し、先端レジストレーション終了後に、搬送ローラ対35で第2用紙P1に最初の印刷パスにより印刷を行うための印刷開始位置まで搬送する。
【0053】
次に、制御部5は、S13において、第2用紙P1があるか否かを判定する。キャリッジ51が左側検知位置に配置されており、第2用紙P1が印刷開始位置まで正常に搬送されていると、センサ45が第2用紙P1を検知する。制御部5は、センサ45が第2用紙P1を検知した場合(YES)、S14に進む。一方、センサ45が第2用紙P1を検知しない場合(NO)、S10と同様に、センサ45の故障や用紙ジャムに関するエラー報知を行ってフローを終了する。なお、エラーが第2用紙P1のジャムの場合、当該ジャムした用紙P1を除去してから、再度、第2用紙P1を搬送ローラ対35まで給送して先端レジストレーションを行ってから、S12からやり直してもよい。
【0054】
次に、制御部5は、S14において、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を左側検知位置から左側印刷開始位置に移動させる。
【0055】
次に、制御部5は、S15において、第2印刷データに基づいて、キャリッジモータ50M、インクジェットヘッド41、LFモータ35Mを制御して、上述の第1用紙P1と同様に、第2用紙P1に所定の画像を印刷する。
【0056】
次に、制御部5は、S16において、第2用紙P1への最終印刷パスが終了したか否かを判定する。最終印刷パスが終了していない場合(NO)、S16が繰り返し行われる。一方、最終印刷パスが終了した場合(YES)、S17に進む。
【0057】
次に、制御部5は、キャリッジモータ50M、LFモータ35Mを制御して、排紙ローラ対36で第2用紙P1を排紙トレイ16に排出し、待機位置までキャリッジ51を移動させる。こうして、プリンタ1の印刷動作が終了する。
【0058】
本実施形態におけるプリンタ1が、本発明に係る「液体吐出装置」に該当する。本実施形態における第1給送部20、第2給送部80、搬送ローラ対35、及び、排紙ローラ対36が、本発明に係る「搬送機構」に該当する。また、搬送ローラ対35が、本発明に係る「搬送部」に該当する。また、インクジェットヘッド41が、本発明に係る「液体吐出ヘッド」に該当する。また、ヘッド移動機構50が、本発明に係る「移動機構」に該当する。また、制御部5が、本発明に係る「制御装置」に該当する。また、S7が、本発明に係る「判定処理」に該当する。また、S8が、本発明に係る「最終印刷パス判定処理」に該当する。また、S9~S14が、本発明に係る「印刷準備処理」に該当する。
【0059】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長い場合、第1用紙P1の次に搬送される第2用紙P1が最初の印刷パスにより印刷が行われる印刷開始位置まで搬送されるのに時間を要することとなる。この間に、右側(他方側)印刷開始位置までの距離が短い右側(他方側)検知位置にキャリッジ51を移動させて第2用紙P1を検知することが可能となる。この結果、右側検知位置から右側印刷開始位置までの移動に要する時間が短いため、第1用紙P1の印刷終了から第2用紙P1の印刷が終了するまでに要する時間が長くなるのを抑制することが可能となる。つまり、第2用紙P1を印刷開始位置に搬送させるまでに、キャリッジ51を右側検知位置及び左側検知位置のいずれにも移動させることが可能であれば、キャリッジ51を右側検知位置に移動させておき、キャリッジ51の次の移動先までの移動時間を短くすることで、第2用紙P1の印刷が終了するまでに要する時間が長くなるのを抑制することができる。
【0060】
また、S7(判定処理)において、印刷開始位置搬送時間が所定時間以下であると判定された場合においても、S8において、第1用紙P1の最終印刷パスが右側へと向かう印刷パスである場合に、キャリッジ51を右側検知位置に短時間で移動させることが可能となり、第1用紙P1の最終印刷パスが左側へと向かう印刷パスである場合に、キャリッジ51を左側検知位置に短時間で移動させることができる。
【0061】
また、制御部5が、S7において、第1用紙P1の最終印刷パスの終了時に、当該第1用紙P1が搬送ローラ対35によって挟持された状態であり、搬送ローラ対35が第1用紙P1を搬送するために駆動する状態になるときに、第2用紙P1の給送開始遅延が生じる。これにより、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長いと判定される。このため、特に時間を導出するなどの制御を必要とせず、判定処理(S7)の制御が簡単になる。
【0062】
上述の実施形態においては、S6の後のS7において、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長いと判定された場合は右側印刷開始位置までキャリッジ51を移動させて印刷を実行していたが、第1変形例として、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置を経由して右側印刷開始位置までのキャリッジ51の移動に要する時間である第1移動時間TRと、当該停止位置から左側検知位置を経由して左側印刷開始位置までのキャリッジ51の移動に要する時間である第2移動時間TLとを導出し、これら移動時間に基づいてキャリッジ51を右側又は左側印刷開始位置まで移動させて印刷を実行してもよい。なお、上述の実施形態と同様なものについては同符号で示し説明を省略する。
【0063】
本変形例においては、図8に示すように、制御部5が印刷データを受信してから第1印刷データに基づく最終印刷パスの直前の印刷パスによる印刷が開始されるまでにS201が実行される。S201では、制御部5が、印刷データ(第1印刷データ及び第2印刷データ)に基づいて第1移動時間TRと第2移動時間TLとを導出する。まず、制御部5は、第1用紙P1に対する最終印刷パスの終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置までのキャリッジ51の移動に要する右側検知移動時間TR1と、当該印刷終了位置から左側検知位置までのキャリッジ51の移動に要する左側検知移動時間TL1とを導出する。また、このとき、制御部5は、右側検知位置から右側印刷開始位置までのキャリッジ51の移動に要する右側印刷開始移動時間TR2と、左側検知位置から左側印刷開始位置までのキャリッジ51の移動に要する左側印刷開始移動時間TL2とについても導出する。
【0064】
さらに制御部5は、第1用紙P1への印刷終了(最終印刷パスによる印刷終了)に伴って第1用紙P1を排出する排出動作の開始から、第1給送部20によって第2用紙P1を搬送ローラ対35に給送するまでの時間T2と、第2用紙P1を搬送ローラ対35から印刷開始位置(第2用紙P1に最初の印刷パスによって印刷が行われる位置)まで搬送するために要する搬送時間T3とを導出する。なお、制御部5は、第1用紙P1の次に搬送される用紙が第2用紙P2である場合は、時間T2に代えて、第1用紙P1を排出する排出動作の開始から、第2給送部80によって第2用紙P2を搬送ローラ対35に給送するまでの時間T4が導出される。時間T4は、上述したように搬送距離が長くなる分だけ、時間T2よりも長くなる。また、これら時間T2,T4は、上述の給送開始遅延が生じる場合、第1用紙P1の排出動作の開始時点における第2用紙P1(又は第2用紙P2)の先端位置が、当該給送開始遅延が生じないときよりも搬送方向に沿って搬送ローラ対35から離れた位置となり、時間が長くなる。つまり、給送開始遅延が生じる場合は、給送開始遅延が生じていないときよりも、後述の印刷開始位置搬送時間T1が長くなる。そして、制御部5は、第2用紙P1が給送される場合は時間T2と搬送時間T3とを足し合わせて印刷開始位置搬送時間T1を導出する。一方、制御部5は、第2用紙P2が給送される場合は時間T4と搬送時間T3とを足し合わせて印刷開始位置搬送時間T1を導出する。こうして、制御部5は、第1印刷データ及び第2印刷データに基づいて、第1用紙P1を排出する排出動作の開始から、第2用紙P1を印刷開始位置に搬送するまでの印刷開始位置搬送時間T1が導出される。なお、本変形例においても第2用紙P1の給送開始タイミングは上述の実施形態と同様であり、給送開始遅延が生じる場合は、第1用紙P1に対する最終印刷パスでの印刷が開始されるタイミングとなり、給送開始遅延が生じない場合は、第1用紙P1に対する最終印刷パスの直前の印刷パスでの印刷が開始されるタイミングとなる。
【0065】
そして、制御部5は、右側検知移動時間TR1から印刷開始位置搬送時間T1を差し引いた時間が正となる場合、当該差し引いた時間を右側検知移動時間TR1とする。そして、制御部5は、この右側検知移動時間TR1と右側印刷開始移動時間TR2と足し合わせて第1移動時間TRを導出する。一方、制御部5は、右側検知移動時間TR1から印刷開始位置搬送時間T1を差し引いた時間が負又は0となる場合、右側検知移動時間TR1を0とする。このように右側検知移動時間TR1を0とするのは、第2用紙P1を印刷開始位置に搬送するまでの時間内に、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置に到達するためである。そして、制御部5は、0である右側検知移動時間TR1と右側印刷開始移動時間TR2と足し合わせて第1移動時間TRを導出する。
【0066】
また、制御部5は、左側検知移動時間TL1から印刷開始位置搬送時間T1を差し引いた時間が正となる場合、当該差し引いた時間を左側検知移動時間TL1とする。そして、制御部5は、この左側検知移動時間TL1と左側印刷開始移動時間TL2と足し合わせて第2移動時間TLを導出する。一方、制御部5は、左側検知移動時間TL1から印刷開始位置搬送時間T1を差し引いた時間が負又は0となる場合、左側検知移動時間TL1を0とする。このように左側検知移動時間TL1を0とするのも、第2用紙P1を印刷開始位置に搬送するまでの時間内に、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から左側検知位置に到達するためである。そして、制御部5は、0である左側検知移動時間TL1と左側印刷開始移動時間TL2と足し合わせて第2移動時間TLを導出する。
【0067】
次に、制御部5は、S202において、第1用紙P1に対する印刷パスが最終印刷パスであるか否かを判定する。最終印刷パスでない場合(NO)、S202が繰り返し行われる。一方、最終印刷パスの場合(YES)、S203に進む。次に、制御部5は、S203において、第1移動時間TRが第2移動時間TLよりも短いか否かを判定し、短い場合(YES)、S204に進む。一方、第1移動時間TRが第2移動時間TL以上の場合(NO)、S207に進む。
【0068】
次に、制御部5は、S204において、上述のS9と同様に、キャリッジモータ50Mを制御して、第1用紙P1への最終印刷パスの印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置までキャリッジ51を移動させる。このとき、制御部5は、第1用紙P1の排出動作、第2用紙P1の給送・頭出し動作も行う。
【0069】
次に、制御部5は、上述のS10,S11と同様なS205,S206を実行する。つまり、制御部5は、第2用紙P1があるか否かを判定し、センサ45が第2用紙P1を検知した場合(YES)、S206に進み、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を右側検知位置から右側印刷開始位置に移動させる。一方、センサ45が第2用紙P1を検知しない場合(NO)、センサ45の故障や用紙ジャムに関するエラー報知を行ってフローを終了する。なお、上述の実施形態と同様にして、S204からやり直してもよい。
【0070】
S203からS207に進むと、制御部5は、上述のS12と同様に、キャリッジモータ50Mを制御して、第1用紙P1への最終印刷パスの印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から左側検知位置までキャリッジ51を移動させる。このとき、制御部5は、第1用紙P1の排出動作、第2用紙P1の給送・頭出し動作も行う。
【0071】
次に、制御部5は、上述のS13,S14と同様なS208,S209を実行する。制御部5は、S209において、第2用紙P1があるか否かを判定し、センサ45が第2用紙P1を検知した場合(YES)、S209に進み、キャリッジモータ50Mを制御して、キャリッジ51を左側検知位置から左側印刷開始位置に移動させる。一方、センサ45が第2用紙P1を検知しない場合(NO)、S205と同様に、センサ45の故障や用紙ジャムに関するエラー報知を行ってフローを終了する。なお、上述の実施形態と同様にして、S207からやり直してもよい。
【0072】
次に、制御部5は、上述のS15~S17と同様なS210~S212を実行する。制御部5は、S210において、キャリッジモータ50M、インクジェットヘッド41、LFモータ35Mを制御して、第2用紙P1に所定の画像を印刷する。そして、制御部5は、S211において、第2用紙P1への最終印刷パスが終了したか否かを判定し、最終印刷パスが終了していない場合(NO)、S211を繰り返し、最終印刷パスが終了した場合(YES)、S212に進み、キャリッジモータ50M、LFモータ35Mを制御して、第2用紙P1を排紙トレイ16に排紙し、第2用紙P1への最終印刷パスの終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から待機位置までキャリッジ51を移動させる。こうして、プリンタ1の印刷動作が終了する。
【0073】
本変形例におけるS201が、本発明に係る「移動時間導出処理」に該当する。また、S204~S209が、本発明に係る「印刷準備処理」に該当する。
【0074】
以上に述べたように、本変形例によると、第1用紙P1への印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から、第2用紙P1に対して印刷を開始するための位置である右側又は左側印刷開始位置にキャリッジを移動させる時間が長くなるのを抑制することが可能となる。このため、第1用紙P1の印刷終了から第2用紙P1の印刷が終了するまでに要する時間が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0075】
また、S201においては、給送開始遅延を反映した印刷開始位置搬送時間T1を加味した第1移動時間TR及び第2移動時間TLを導出することが可能となる。
【0076】
別の変形例として、これら第1移動時間TR及び第2移動時間TLの導出において、制御部5が、右側検知移動時間TR1から搬送時間T3を差し引いた時間が正となる場合、当該差し引いた時間を右側検知移動時間TR1とし、右側検知移動時間TR1から搬送時間T3を差し引いた時間が負又は0となる場合、右側検知移動時間TR1を0として、第1移動時間TRを導出し、左側検知移動時間TL1から搬送時間T3を差し引いた時間が正となる場合、当該差し引いた時間を左側検知移動時間TL1とし、左側検知移動時間TL1から搬送時間T3を差し引いた時間が負又は0となる場合、左側検知移動時間TL1を0として、第2移動時間TLを導出してもよい。これにおいても、第2用紙P1の搬送時間T3を加味した第1移動時間TR及び第2移動時間TLを導出することが可能となる。
【0077】
上述の第1変形例においては、S201において、右側検知移動時間TR1と右側印刷開始移動時間TR2とを足し合わせて第1移動時間TRを導出し、左側検知移動時間TL1と左側印刷開始移動時間TL2とを足し合わせて第2移動時間TLとを導出していたが、第2変形例として、右側印刷時間TR3を加味した第1移動時間TRを導出し、左側印刷時間TL3を加味した第2移動時間TLを導出してもよい。上述の第1変形例と同様なものについては同符号で示し説明を省略する。
【0078】
第2変形例においては、図8中の括弧内に示すように、制御部5は、S301において、上述のS201と同様にして、右側検知移動時間TR1、右側印刷開始移動時間TR2、左側検知移動時間TL1、左側印刷開始移動時間TL2を導出する。また、制御部5は、S301において、第2印刷データに基づいて右側印刷時間TR3と左側印刷時間TL3も加えて導出する。右側印刷時間TR3は、キャリッジ51を右側印刷開始位置から左右方向A3に沿って左側に移動させながら第2用紙P1に印刷を開始し、当該第2用紙P1への印刷が終了(第2用紙P1に対する最終印刷パスにおいてインクジェットヘッド41からのインク吐出が終了する時点)するまでに要する印刷時間である。左側印刷時間TL3は、キャリッジ51を左側印刷開始位置から左右方向A3に沿って右側に移動させながら第2用紙P1に印刷を開始し、当該第2用紙P1への印刷が終了するまでに要する印刷時間である。
【0079】
そして、制御部5が、S301において、右側印刷時間TR3に右側検知移動時間TR1と右側印刷開始移動時間TR2とを足し合わせた時間を第1移動時間TRとして導出し、左側印刷時間TL3に左側検知移動時間TL1と左側印刷開始移動時間TL2とを足し合わせた時間を第2移動時間TLとして導出する。
【0080】
次に、制御部5が、S203と同様なS303において、第1移動時間TRが第2移動時間TLよりも短いか否かを判定し、短い場合(YES)、S204に進み、第1移動時間TRが第2移動時間TL以上の場合(NO)、S207に進む。これ以降は上述の第1変形例と同様である。
【0081】
このような変形例においては、S301において導出された第1移動時間TRには右側印刷時間TR3が加味され、第2移動時間TLには左側印刷時間TL3が加味されている。このため、例えば、第1用紙P1の印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置を経由して右側印刷開始位置にキャリッジ51を移動させる時間が、当該キャリッジ51の印刷終了位置から左側検知位置を経由して左側印刷開始位置にキャリッジ51を移動させる時間よりも長くなっても、これらの差よりも、左側印刷時間TL3から右側印刷時間TR3を差し引いた差が大きい場合は、第1移動時間TRが第2移動時間TLよりも短くなり、S204に進む。一方、第1用紙P1の印刷終了に伴うキャリッジ51の印刷終了位置から左側検知位置を経由して左側印刷開始位置にキャリッジ51を移動させる時間が、当該キャリッジ51の印刷終了位置から右側検知位置を経由して右側印刷開始位置にキャリッジ51を移動させる時間よりも長くなっても、これらの差よりも、右側印刷時間TR3から左側印刷時間TL3を差し引いた差が大きい場合は、第1移動時間TRが第2移動時間TL以上となり、S207に進む。この結果、第1用紙P1の印刷終了から第2用紙P1の印刷が終了するまでに要する時間が長くなるのを効果的に抑制することが可能となる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態においては、S7において、予め判定された3つの判定処理の結果より、印刷開始位置搬送時間が所定時間よりも長いか否かを判定しているが、3つの判定処理のうちのいずれか1又は2つだけの判定結果より、判定してもよい。
【0083】
上述の第1変形例においては、元の右側及び左側検知移動時間TR1,TL1から印刷開始位置搬送時間T1を差し引いた時間に応じて、右側及び左側検知移動時間TR1,TL1を導出しているが、元の右側及び左側検知移動時間TR1,TL1に基づいて第1及び第2移動時間TR,TLを導出してもよい。これにおいても、第1変形例と同様な効果を得ることができる。
【0084】
また、センサ45は、ノズル41aに対して左右方向A3の右側(他方側)に配置されていてもよい。この場合、上述の実施形態及び各変形例における右及び左側を入れ替えた制御とすればよい。
【0085】
また、上述の実施形態及び各変形例においては、搬送ローラ対35に用紙が搬送されたか否かを給送部による給送量で検知しているが、搬送ローラ対35近傍に用紙検知センサを設けて、用紙が搬送ローラ対35に搬送されたか否かを検知してもよい。
【0086】
また、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用することにも限られない。インク以外の液体を吐出する、インクジェットヘッド以外の液体吐出ヘッドに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンタ(液体吐出装置)
5 制御部(制御装置)
20 第1給送部(搬送機構の一部)
35 搬送ローラ対(搬送機構の一部、搬送部)
36 排紙ローラ対(搬送機構の一部)
41 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
45 センサ
50 ヘッド移動機構(移動機構)
51 キャリッジ
80 第2給送部(搬送機構の一部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8