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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】体組織穿孔用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20241106BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61B18/12
A61M25/00 540
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020199828
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087720
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】比恵島 徳寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 都世志
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩二
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078525(JP,A)
【文献】特表2017-506986(JP,A)
【文献】特表2017-512569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0150805(US,A1)
【文献】特開2017-113209(JP,A)
【文献】特表2015-518752(JP,A)
【文献】特開2014-161452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/16
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、
前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、
該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、
該開口窓が該チューブの遠位端面における該ルーメンの開口によって構成されており、
該チューブの遠位端に対して接近方向と離隔方向に移動可能とされた前記穿孔用頭部を含んで前記開閉機構が構成されており、
該チューブの該開口窓が該穿孔用頭部の移動により閉じられることで該ルーメンの遠位端側が外部から遮断されるようになっている体組織穿孔用デバイス。
【請求項2】
前記穿孔用頭部は、近位側へ延び出して前記チューブの前記ルーメンに挿し入れられるロッド状部を有していると共に、
該穿孔用頭部を付勢して該チューブの前記開口窓が開状態とされる位置へ該穿孔用頭部を弾性的に保持するばね部材が設けられている請求項1に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項3】
ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、
前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、
該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、
チューブの周壁を貫通して螺旋状に延びるスリットによって前記開口窓が構成されており、
該チューブにおける該スリットの形成部分軸方向の伸縮変形によって該スリットが開閉可能とされることで前記開閉機構が構成されており、
該チューブの該スリットが閉じられることで該ルーメンの遠位端側が外部から遮断されるようになっている体組織穿孔用デバイス。
【請求項4】
穿孔時の前記穿孔用頭部の体組織への押当てによって前記開口窓閉じられる一方、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓かれる前記開閉機構が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項5】
ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、
前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、
該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、
前記穿孔用頭部は切断部をもたない湾曲面形状とされており、
開口窓が穿孔用頭部を貫通して開放状態で形成されており、
該穿孔用頭部の体組織への押当てによって該開口窓体組織で覆われて閉じ、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓かれることによって前記開閉機構が構成されている体組織穿孔用デバイス。
【請求項6】
ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、
前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、
該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、
開口窓がチューブの周壁を貫通して形成され、
該チューブには移動可能なシャッターが取り付けられており、
該開口窓が該シャッターの移動によって開閉可能とされて、前記開閉機構が該シャッターを含んで構成されており、
該チューブには該シャッターの開口側移動端と閉鎖側移動端を規定する当接面が設けられている体組織穿孔用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心房中隔などの体組織に開存孔を形成する体組織穿孔用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、心房細動の治療法の1つとして、左心房の適切な部位をアブレーションカテーテルによって焼灼する手技が採用されている。アブレーションカテーテルは、心房中隔を貫通して右心房から左心房へ差し入れられる場合があり、その場合には心房中隔を貫通する開存孔を予め形成しておく必要がある。心房中隔の穿孔は、例えば卵円窩を穿刺するブロッケンブロー法による開存孔の形成方法が知られている。ブロッケンブロー法では、チューブのルーメンに穿刺針を挿通した構造を有する特許第6416084号公報(特許文献1)に示された医療機器のような穿孔用デバイスを用い、右心房に差し入れられたチューブの先端から穿刺針を突出させて卵円窩を穿孔することで開存孔を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6416084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、チューブの遠位部分の側面に開口部が形成されており、チューブのルーメンから開口部を通じて造影剤や生理食塩水等をチューブの遠位において放出することが可能とされている。また、開口部からルーメンの近位側への血液の流入を防ぐために、生理食塩水等の液体によってルーメンの内圧を血圧以上に保つ必要がある。
【0005】
また、穿刺針を用いた卵円窩の穿孔では、穿孔後のチューブの左心房への挿入を把握する手段として、造影による透視や穿刺針からの手応えの他、圧力の計測が採用される。即ち、開口部を通じて心房内に連通されたチューブのルーメン内の圧力を計測することにより、チューブの先端位置を圧力の変化に基づいて把握することができる。
【0006】
しかしながら、常時開放された開口部に作用する血圧に基づいてチューブの先端位置を把握しようとすると、右心房と左心房の僅かな内圧差に基づく判定が必要であった。
【0007】
本発明の解決課題は、上述の如き従来の体組織穿孔用デバイスが内在していた課題の少なくとも一つを解決し得る、新規な構造の体組織穿孔用デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、該開口窓が該チューブの遠位端面における該ルーメンの開口によって構成されており、該チューブの遠位端に対して接近方向と離隔方向に移動可能とされた前記穿孔用頭部を含んで前記開閉機構が構成されており、該チューブの該開口窓が該穿孔用頭部の移動により閉じられることで該ルーメンの遠位端側が外部から遮断されるようになっているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた体組織穿孔用デバイスによれば、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられて開口窓が開閉機構によって閉じられることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用が阻止されてルーメンの内圧が低下し、穿孔完了後などに穿孔用頭部の体組織への押当てが解除されて開口窓が開閉機構によって開かれることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用によってルーメンの内圧が上昇するようにできる。これにより、穿孔時と穿孔前及び穿孔後において、ルーメンの内圧変化が大きく生じて、穿孔を体組織に形成する過程をルーメンの内圧変化に基づいてより確実且つ容易に把握することが可能となる。また、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、穿孔用頭部が開口窓に接近して開口窓を覆うことにより、開口窓が閉じた状態とされ、穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、穿孔用頭部が開口窓から離れることにより、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じるようにもできて、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
【0011】
さらに、例えば、開口窓を施術者の操作によって能動的に開閉可能とすることも可能であり、それによれば、造影剤や薬液などをルーメンを通じて開口窓から患者の体内へ投与する場合に、開口窓が所定の投与位置に達するまでは開口窓を閉じておいて、開口窓が所定の投与位置に達した後に開口窓を開くように操作することができる。
第2の態様は、第1の態様に記載された体組織穿孔用デバイスにおいて、前記穿孔用頭部は、近位側へ延び出して前記チューブの前記ルーメンに挿し入れられるロッド状部を有していると共に、該穿孔用頭部を付勢して該チューブの前記開口窓が開状態とされる位置へ該穿孔用頭部を弾性的に保持するばね部材が設けられているものである。
第3の態様は、ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、該チューブの周壁を貫通して螺旋状に延びるスリットによって前記開口窓が構成されており、該チューブにおける該スリットの形成部分の軸方向の伸縮変形によって該スリットが開閉可能とされることで前記開閉機構が構成されており、該チューブの該スリットが閉じられることで該ルーメンの遠位端側が外部から遮断されるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた体組織穿孔用デバイスによれば、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられて開口窓が開閉機構によって閉じられることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用が阻止されてルーメンの内圧が低下し、穿孔完了後などに穿孔用頭部の体組織への押当てが解除されて開口窓が開閉機構によって開かれることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用によってルーメンの内圧が上昇するようにできる。これにより、穿孔時と穿孔前及び穿孔後において、ルーメンの内圧変化が大きく生じて、穿孔を体組織に形成する過程をルーメンの内圧変化に基づいてより確実且つ容易に把握することが可能となる。また、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、チューブにおける開口窓の形成部分が収縮状態となって、螺旋に延びるスリット状の開口窓の幅が狭くされることにより、開口窓が閉じた状態とされる。さらに、例えば、穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、チューブにおける開口窓の形成部分が伸長状態となって、螺旋に延びるスリット状の開口窓の幅が広くされることにより、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じるようにできて、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
【0012】
の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された体組織穿孔用デバイスにおいて、穿孔時の前記穿孔用頭部の体組織への押当てによって前記開口窓閉じられる一方、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓かれる前記開閉機構が設けられているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた体組織穿孔用デバイスによれば、開口窓の開閉によるルーメンの内圧変化に基づいて、穿孔の過程(例えば、穿孔開始前と、穿孔中と、穿孔完了後)をより確実且つ容易に把握することができる。
【0014】
の態様は、ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、前記穿孔用頭部は切断部をもたない湾曲面形状とされており、該開口窓が穿孔用頭部を貫通して開放状態で形成されており、該穿孔用頭部の体組織への押当てによって該開口窓体組織で覆われて閉じ、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓かれることによって前記開閉機構が構成されているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた体組織穿孔用デバイスによれば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、穿孔用頭部を貫通する開口窓が体組織で覆われることにより、開口窓が閉じた状態とされる。穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、穿孔用頭部を貫通する開口窓が体組織で覆われることなく開放されて、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じることから、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
【0020】
第6の態様は、ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備え、該開口窓を通じて該ルーメンへ体内の圧力が及ぼされて検出可能とされており、該開口窓を開閉する開閉機構が設けられており、該開口窓がチューブの周壁を貫通して形成され、該チューブには移動可能なシャッターが取り付けられており、該開口窓が該シャッターの移動によって開閉可能とされて、前記開閉機構が該シャッターを含んで構成されており、該チューブには該シャッターの開口側移動端と閉鎖側移動端を規定する当接面が設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた体組織穿孔用デバイスによれば、例えば、穿孔前や穿孔時には開口窓をシャッターによって閉じ、穿孔完了後に開口窓を開いて、造影剤や薬液などをルーメンから開口窓を通じて放出することができる。これにより、必要に応じて開口部を開くことによって患者の体内への薬液等の投与が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
上述の適宜の態様によっては、ルーメンの開放と遮断を必要に応じて切り替えることが可能になったり、チューブ先端の位置や体組織の穿孔の過程などをより明確な圧力差に基づいて容易かつ確実に把握することができるようになったりする。それ故、本発明によれば、前述の如き従来の体組織穿孔用デバイスが内在していた課題の少なくとも一つを解決し得る、新規な構造の体組織穿孔用デバイスが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態としての高周波ニードルの遠位部分を示す縦断面図であって、遠位開口部が開いた状態を示す図
図2図1に示す高周波ニードルの遠位部分を示す縦断面図であって、遠位開口部が閉じた状態を示す図
図3図1に示す高周波ニードルをブロッケンブロー法に用いる場合の施術用装置を説明する図
図4】本発明の第2実施形態としての高周波ニードルの遠位部分を示す側面図であって、スリットが開いた状態を示す図
図5図4に示す高周波ニードルの遠位部分を示す側面図であって、スリットが閉じた状態を示す図
図6】本発明の第3実施形態としての高周波ニードルの遠位部分を示す側面図
図7】本発明の第4実施形態としての高周波ニードルの遠位部分を示す縦断面図であって、開口窓が閉じた状態を示す図
図8図7に示す高周波ニードルの遠位部分を示す縦断面図であって、開口窓が開いた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第1実施形態として、高周波ニードル10が示されている。高周波ニードル10は、チューブ12の遠位に穿孔用頭部14が配された構造を有している。以下、使用状態で施術者側となる高周波ニードル10の基端側を近位、患者側となる高周波ニードル10の先端側を遠位として説明する。
【0026】
チューブ12は、長さ方向に貫通するルーメン16を内部に備えた中空筒状とされている。チューブ12は、可撓性を備えており、血管などの体内管腔の湾曲に追従して変形可能とされている。チューブ12は、金属、合成樹脂、繊維強化樹脂、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等によって形成され、好適には金属製とされている。チューブ12は、導電性を有することが望ましく、その場合には外周側に電気絶縁材料からなる絶縁層が設けられ得る。もっとも、チューブ12は、全体が絶縁材料によって形成されていてもよい。
【0027】
ルーメン16は、本実施形態において略円形断面で延びているが、断面形状は特に限定されない。本実施形態のチューブ12は、1つのルーメン16だけを備えるシングルルーメン構造とされているが、例えば、複数のルーメンを備えるマルチルーメン構造であってもよい。ルーメン16は、遠位端部が大径の収容部18とされており、内周面には収容部18の近位端において環状の段差20が形成されている。ルーメン16は、チューブ12を長さ方向に貫通しており、チューブ12の遠位端に開口する開口窓としての遠位開口部22を通じて遠位へ向けて開放されている。
【0028】
ルーメン16の収容部18には、穿孔用頭部14を備える可動部材26が挿入されている。可動部材26は、穿孔用頭部14と、穿孔用頭部14から近位側へ延び出す摺動部28とを備えており、摺動部28の一部又は全部が収容部18に挿入されている。
【0029】
穿孔用頭部14は、エネルギー供給によって体組織に開存孔を形成するものであって、例えば、供給される高周波エネルギーによって体組織を焼灼して、体組織に開存孔を形成する。穿孔用頭部14への通電は、専用の配線を設けることによっても実現可能であるが、例えば、導電性のチューブ12を通電用の配線として利用することもでき、これによれば構造の簡略化や部品点数の削減などが実現される。
【0030】
穿孔用頭部14は、具体的な形状を限定されるものではないが、管腔内を移動する際に引っ掛かりが生じ難くなるように、遠位側の表面が角をもたない湾曲面とされていることが望ましく、例えば遠位に向けて凸となる略半球状とされている。穿孔用頭部14は、近位端の外径が、チューブ12の内径よりも大きくされており、本実施形態ではチューブ12の外径と略同じとされている。穿孔用頭部14は、チューブ12の遠位側へ離れて配されており、ルーメン16の遠位開口部22が穿孔用頭部14よりも近位において開放されている。
【0031】
穿孔用頭部14は、近位側へ向けて延び出す摺動部28によってチューブ12から遠位へ離れた位置に保持されている。摺動部28は、ロッド状とされており、ルーメン16の収容部18に対して遠位開口部22から挿入可能とされている。摺動部28は、全体を収容部18へ挿入可能な長さ及び直径とされている。
【0032】
ルーメン16の収容部18には、ばね部材30が配されている。ばね部材30は、穿孔用頭部14がチューブ12から遠位へ離れた位置に可動部材26を弾性的に突出させて必要に応じて位置決めする。また、ばね部材30は、弾性変形に基づいて、チューブ12から離れた穿孔用頭部14のチューブ12への接近移動(チューブ12に対する近位への相対移動)を許容する。本実施形態のばね部材30は、摺動部28の近位端と段差20との間に介装されたコイルスプリングによって構成されている。本実施形態では、ばね部材30の近位端がチューブ12の段差20によって近位への移動を制限されており、穿孔用頭部14のチューブ12への接近移動によって、ばね部材30が穿孔用頭部14と段差20の間で圧縮される。ばね部材30は、コイルスプリングに限定されるものではなく、穿孔用頭部14へ遠位側への付勢力を及ぼすものであればよく、板ばねやゴム状弾性体等によって構成してもよい。
【0033】
可動部材26に外力が作用しない静置時には、ばね部材30が伸長状態とされて、穿孔用頭部14がチューブ12から遠位に離れた位置で可動部材26が位置決めされる。可動部材26に対して近位側へ向けた外力が作用すると、可動部材26がばね部材30を押し込むことでばね部材30が収縮し、穿孔用頭部14のチューブ12に対する接近移動が許容される。また、穿孔用頭部14がチューブ12に接近した状態で、可動部材26に作用する外力が解除されると、ばね部材30の弾性的な復元力によって、穿孔用頭部14がチューブ12から離隔する方向へ移動する。従って、穿孔用頭部14は、チューブ12に対して、初期位置から近位側への移動を許容されると共に、初期位置へ向けた遠位側への移動も許容される。
【0034】
穿孔用頭部14がチューブ12に対して接近移動することにより、ルーメン16の遠位開口部22を穿孔用頭部14によって閉じることが可能とされている。従って、遠位開口部22を開閉する開閉機構32が、ばね部材30によって近位側及び遠位側への移動を許容された穿孔用頭部14を含んで構成されている。
【0035】
なお、穿孔用頭部14がルーメン16の遠位開口部22を閉じるとは、遠位開口部22が完全な密閉状態とされる場合だけに限定解釈されるものではなく、遠位開口部22が完全には閉塞されず、遠位開口部22の開口面積を小さくして流体流動を制限する場合を含む。具体的には、本実施形態において、穿孔用頭部14がチューブ12の遠位端に接触せずに接近することで、穿孔用頭部14とチューブ12の遠位端の間に隙間が形成されている場合、ルーメン16の遠位開口部22を通じた流体流動が当該隙間によって制限されることから、遠位開口部22は穿孔用頭部14によって閉じられているとみなすことができる。また、穿孔用頭部14が周方向で部分的にチューブ12の遠位端に接触している場合も、遠位開口部22は密閉されていないが、遠位開口部22は穿孔用頭部14によって閉じられているとみなすことができる。
【0036】
このような構造とされた高周波ニードル10は、例えば、心房中隔の卵円窩Aに開存孔を形成する手技(ブロッケンブロー法)に用いられる。高周波ニードル10は、例えば、図3に示すように、シース34に挿通され、チューブ12が近位においてトランスデューサ36に接続される。シース34には、必要に応じてダイレータ等の高周波ニードル10以外の器具を挿通してもよく、例えばシース34内に配されたダイレータに対して、高周波ニードル10が挿通される。なお、図3では、分かり易さのために、高周波ニードル10が体外でシース34に挿入されたダイレータ(ダイレータ in シース)に挿通された状態を図示したが、高周波ニードル10は、シース34が図示しないガイドワイヤによって体内へ挿入された後で、シース34内に配されたダイレータに挿通される。
【0037】
トランスデューサ36は、ルーメン16内の圧力を電気信号化してモニター38に表示する。ルーメン16には生理食塩水を収容した加圧バッグ40が接続されている。加圧バッグ40は、ルーメン16に対して生理食塩水を血圧以上の圧力で供給することによって、血液がルーメン16を通じてトランスデューサ36へ流入しないようにしている。加圧バッグ40によるルーメン16の加圧は、例えば、ルーメン16内に作用する心臓内圧に応じて制御され得る。
【0038】
高周波ニードル10のチューブ12には、高周波発生器42が接続されている。高周波発生器42により発生した高周波エネルギーがチューブ12を通じて穿孔用頭部14へ供給されることにより、穿孔用頭部14が穿孔作動する。高周波発生器42に接続された対極板44が患者に装着されることにより、高周波通電時の患者の感電が防止されている。なお、チューブ12が非導電性材料によって形成される場合には、穿孔用頭部14に高周波エネルギーを供給するための配線を、チューブ12とは別に設ければよい。
【0039】
ブロッケンブロー法については、従来から知られていることから、詳細な説明は省略するが、先ず、施術者は、血管等の体内管腔に予め挿通された図示しないガイドワイヤに沿ってダイレータが挿入されたシース34を右心房まで挿入する。次に、施術者は、ガイドワイヤを抜去したシース34に挿入されたダイレータに対して高周波ニードル10を挿通して右心房まで挿入する。シース34に挿入された高周波ニードル10は、図1のように、ルーメン16の遠位開口部22が開放されていることから、右心房の心臓内圧がルーメン16を介してトランスデューサ36によって計測され、モニター38に表示される。
【0040】
次に、施術者は、高周波ニードル10の先端である穿孔用頭部14を、シース34の遠位端から突出させて、心房中隔の卵円窩Aに押し当てる。穿孔用頭部14は、卵円窩Aへの押当てによって近位側へ押し込まれて、チューブ12の遠位端に対して接近移動する。そして、図2に示すように、穿孔用頭部14がルーメン16の遠位開口部22を閉じて、ルーメン16内への心臓内圧の作用が阻止される。本実施形態では、ルーメン16内への心臓内圧の作用がなくなると、加圧バッグ40によるルーメン16内の加圧が停止されることから、ルーメン16内の圧力が低下する。これにより、トランスデューサ36によるルーメン16の内圧低下の検出がモニター38に表示され、卵円窩Aに対する穿孔用頭部14の押当てを圧力の変化によって把握することができる。
【0041】
卵円窩Aに押し当てられた穿孔用頭部14に高周波電力を供給することにより、穿孔用頭部14が穿孔作動し、卵円窩Aに開存孔を形成する。穿孔用頭部14が卵円窩Aを貫通すると、穿孔用頭部14に作用していた卵円窩Aへの押当てによる外力が解除されて、穿孔用頭部14が初期位置へ復帰するようにチューブ12から離隔する。これにより、ルーメン16の遠位開口部22が開放されて、ルーメン16内に左心房の心臓内圧が作用する。それに伴って、加圧バッグ40によるルーメン16内の加圧が再開されて、ルーメン16内の圧力が上昇する。また、ルーメン16の遠位開口部22が左心房に開放されることから、左心房の内圧がトランスデューサ36によって検出されてモニター38に表示される。検出されるルーメン16の内圧が、低下した後で増大し、且つ増大後の内圧が左心房の内圧を示すことによって、高周波ニードル10による卵円窩Aの穿孔が完了し、高周波ニードル10の先端部が左心房へ挿入されたことを把握することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係る高周波ニードル10は、遠位開口部22が開閉機構32によって開閉可能とされており、遠位開口部22が開いた状態ではルーメン16の内圧が心房内圧と略等しくなると共に、遠位開口部22が閉じた状態ではルーメン16の内圧が心房内圧よりも大幅に低くなる。遠位開口部22は、卵円窩Aの穿孔前後において開いていると共に、卵円窩Aの穿孔時には閉じる。それゆえ、ルーメン16の内圧変化に基づいて、高周波ニードル10の遠位端が右心房内へ挿入された穿孔前の状態と、高周波ニードル10の遠位端が卵円窩Aに押し当てられた穿孔中の状態と、高周波ニードル10の遠位端が左心房内へ挿入された穿孔後の状態とを、把握することができる。特に、穿孔中に遠位開口部22が閉じることによって、ルーメン16の内圧が右心房と左心房の内圧差よりも大きく変化することから、ルーメン16の内圧変化に基づいて穿孔の過程をより確実に把握することができる。
【0043】
本実施形態において、開閉機構32は、チューブ12や可動部材26とは別体のばね部材30の伸縮変形によって開閉作動する。ばね部材30は、開閉機構32の作動のために設けられることから、ばね特性や材質、形状などを開閉作動に適するように設定し易い。それゆえ、穿孔用頭部14が遠位開口部22を閉じるために必要となる力の大きさや、穿孔用頭部14が遠位開口部22を開く際の移動速度、穿孔用頭部14の移動ストロークなどを、ばね部材30によって精度良く設定することができる。
【0044】
卵円窩Aの穿孔完了後には、ルーメン16の遠位開口部22が開放されていることから、遠位開口部22からルーメン16を通じて造影剤や薬剤などを左心房へ投与することもできる。また、穿孔完了後には、高周波ニードル10をダイレータが挿入されたシース34から基端側へ抜き取ると共に、ダイレータをシース34から抜き取って、高周波ニードル10に代えてアブレーションカテーテルなどの治療用カテーテルをシース34に挿通すれば、卵円窩Aの開存孔に挿通されたシース34を通じて、治療用カテーテルの遠位端を左心房へ差し入れることができる。
【0045】
なお、施術者が穿孔用頭部14をワイヤー等によって近位へ向けて引くなどして、施術者が穿孔用頭部14を能動的に移動させ、遠位開口部22の開閉を能動的に操作することができるようにしてもよい。
【0046】
図4には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第2実施形態として、高周波ニードル50が示されている。高周波ニードル50は、チューブ52の遠位端に穿孔用頭部14が固着された構造を有している。以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0047】
チューブ52は、遠位部分とされる先端部分の周壁に開口窓としてのスリット54が形成されている。スリット54は、軸方向に傾斜しながら周方向に延びる螺旋状とされており、静置状態において開いて、ルーメン16を側方へ開放している。なお、スリット54の軸方向の開口幅は、特に限定されないが、図4では見易さのために大きく示されている。
【0048】
チューブ52におけるスリット54の形成部分である伸縮部56は、スリット54の開口幅の変化を伴って軸方向に伸縮変形可能とされている。即ち、スリット54の軸方向間を周方向に延びる伸縮部56は、螺旋状であることから、軸方向の傾斜角度の変化によって軸方向に伸縮可能となっている。そして、図5に示すように、伸縮部56が軸方向において収縮することにより、スリット54の開口幅が小さくなって、スリット54が閉じるようになっている。また、図4に示すように、伸縮部56が軸方向において伸長することにより、スリット54の開口幅が大きくなって、スリット54が開くようになっている。このように、スリット54を開閉する本実施形態の開閉機構58は、チューブ52の伸縮部56によって構成されている。
【0049】
本実施形態の穿孔用頭部14は、チューブ52の遠位端に溶着や接着等の手段で固着されており、又はチューブ52と一体的に形成されており、チューブ52の遠位端に対する相対的な移動は許容されていない。穿孔用頭部14は、ルーメン16の遠位開口部22を覆って閉塞するように設けられている。遠位開口部22を通じたルーメン16内と外部(患者の体内)との間での液体の流動が、穿孔用頭部14によって阻止されていることから、本実施形態の遠位開口部22は開口窓を構成しない。
【0050】
このような構造とされた高周波ニードル50は、第1実施形態の高周波ニードル10と同様に、例えば卵円窩Aの穿孔等の体組織への開存孔の形成に用いられる。そして、卵円窩Aに穿孔用頭部14が押し当てられると、スリット54が閉じて、ルーメン16に対する心臓内圧の作用が阻止されることでルーメン16の内圧が低下し、卵円窩Aを貫通して穿孔用頭部14の卵円窩Aへの押当てが解除されると、スリット54が開いて、ルーメン16に対する心臓内圧の作用によってルーメン16の内圧が上昇することから、ルーメン16の内圧変化に基づいて穿孔の開始と完了を把握することができる。
【0051】
本実施形態の高周波ニードル50によれば、遠位端にスリット54が形成されたチューブ52を採用することで、第1実施形態のばね部材30のような部品の追加を要することなく、部品点数の少ない簡単な構造によって、ルーメン16の内圧変化に基づく穿孔過程の監視を実現することができる。
【0052】
なお、施術者が、穿孔用頭部14をワイヤー等によって近位へ向けて引くなどして、伸縮部56を能動的に伸縮させ、スリット54の開閉を能動的に操作することができるようにしてもよい。
【0053】
図6には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第3実施形態として、高周波ニードル60が示されている。高周波ニードル60は、チューブ12の遠位端に穿孔用頭部62が固着された構造を有している。
【0054】
穿孔用頭部62は、チューブ12の遠位端に対して移動不能に固定されており、ルーメン16の遠位開口部22を塞いでいる。また、穿孔用頭部62には、開口窓として多数の貫通孔64が形成されており、それら貫通孔64がルーメン16に連通されている。貫通孔64は開放状態で設けられており、ルーメン16が遠位端において貫通孔64を通じて外部へ開放されている。なお、本実施形態では、穿孔用頭部62に小径の貫通孔64が多数設けられている構造について説明するが、貫通孔64は、その数や大きさ、形状などについて限定されるものでなく、例えばルーメン16の延長上に設けられる1つだけであってもよい。なお、貫通孔64は、後述する開閉機構66による開閉によってルーメン16の内圧変化を十分に大きく生じさせるために、孔断面積の合計が十分に大きいことが望ましく、貫通孔64の数を少なくする場合には、各貫通孔64の孔断面積を大きくすることが望ましい。
【0055】
このような構造とされた高周波ニードル60は、第1実施形態の高周波ニードル10と同様に、例えば卵円窩A等の体組織に対する開存孔の形成に用いられる。そして、卵円窩Aに穿孔用頭部62が押し当てられると、貫通孔64が卵円窩Aによって覆われて閉じて、ルーメン16に対する心臓内圧の作用が阻止されることでルーメン16の内圧が低下する。また、高周波ニードル60が卵円窩Aを貫通して、穿孔用頭部62の卵円窩Aへの押当てが解除されると、貫通孔64が卵円窩Aから離れて開いて、ルーメン16に対する心臓内圧の作用によってルーメン16の内圧が増大する。これらにより、ルーメン16の大幅な内圧変化に基づいて、穿孔の開始と完了を把握することができる。上記の説明からも分かるように、本実施形態の開閉機構66は、穿孔用頭部62の体組織(卵円窩A)に対する押当てと、押当ての解除とによって、貫通孔64が開閉されることで構成される。
【0056】
本実施形態の高周波ニードル60によれば、高周波ニードル60の変形を要することなく外形を維持しながら、貫通孔64を開閉することができ、ルーメン16の内圧変化に基づいて穿孔を監視することができる。それゆえ、開口窓(貫通孔64)の開閉作動の信頼性がより高いと共に、高周波ニードル60の先端部分において破断リスクの低減が図られる。
【0057】
また、貫通孔64が形成された穿孔用頭部62を採用することによって、第1実施形態のばね部材30のような部品の追加を要することなく、部品点数の少ない簡単な構造によって、ルーメン16の内圧変化に基づく穿孔過程の監視を実現することができる。
【0058】
図7には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第4実施形態として、高周波ニードル70が示されている。高周波ニードル70は、チューブ72の遠位端に穿孔用頭部14が固着された構造を有している。
【0059】
チューブ72は、周壁の遠位部分を貫通する開口窓としての窓部74を備えている。窓部74は、チューブ72の軸方向や周方向に複数が設けられていてもよいが、本実施形態では1つだけが形成されている。そして、チューブ72のルーメン16は、遠位開口部22が穿孔用頭部14によって塞がれていると共に、窓部74を通じて外部へ開放されている。
【0060】
ルーメン16には、シャッター76が収容されている。シャッター76は、例えば円筒状の部材とされており、ルーメン16の内径と略同じ外径を有している。シャッター76は、チューブ72に対して長さ方向に移動可能な状態で取り付けられており、特に、窓部74を外れた位置(図7参照)と、窓部74を覆う位置(図8参照)とに移動可能とされている。シャッター76を移動させる機構は、特に限定されないが、例えば、シャッター76から近位へ向けて延び出す開閉操作部材としてのワイヤー77を設けて、ルーメン16を延びるワイヤー77を近位において押し引き操作することにより、シャッター76を移動させることができる。
【0061】
このような構造とされた高周波ニードル70は、第1実施形態の高周波ニードル10と同様に、例えば卵円窩Aの穿孔等の体組織への開存孔の形成に用いられる。本実施形態では、開閉機構78がシャッター76を含んで構成されており、施術者が必要に応じてシャッター76を移動させることによって、窓部74を能動的に開閉させることが可能とされている。それゆえ、遠位におけるルーメン16の開放が不要な状態では、必要に応じてシャッター76を開位置へ移動させて窓部74を開くことにより、例えば、ルーメン16から心房内へ造影剤や薬液、生理食塩水等を投与することができる。
【0062】
なお、穿孔用頭部14の卵円窩Aへの当接によってシャッター76が閉じ、穿孔用頭部14が卵円窩Aを貫通することによってシャッター76が開くようにしてもよい。要するに、シャッター76は、施術者の操作によって能動的に開閉するものに限定されず、例えば穿孔時の押圧力の作用及び解除等によって受動的に開閉するものであってもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、体組織穿孔用デバイスを心房中隔(卵円窩)の穿孔に用いる例について説明したが、開存孔を形成する体組織は心房中隔に限定されるものではない。
【0064】
本発明における開閉機構による開口窓の開閉は、第1実施形態において説明したように部分的な開状態や部分的な閉状態を含むものであり、開口窓を完全な開状態と閉状態とに切り換える必要はない。即ち、本発明における開閉機構は、圧力変化の検知や液体の流通制御などの目的に応じて当該目的を達成する程度に、開口窓の開口量(開口窓の開口の程度)を変化させ得るものであればよい。
【0065】
穿孔用頭部は、穿孔のためのエネルギーを発するものであればよく、必ずしも高周波エネルギーに限定されるものではない。例えば、通電やレーザー等によって加熱することで体組織を焼灼する昇温体(熱エネルギー)などによっても、穿孔用頭部は構成され得るし、複数のエネルギーを組み合わせて採用することも可能である。また、デバイスの外部からエネルギーを供給する態様の他、内部にエネルギーを蓄える手段を備えていても良い。
【0066】
穿孔用頭部は、材質や硬度,形状などを特に限定されるものでなく、チューブと同じ材質としてもよい。また、穿孔用頭部は、必ずしもチューブに対して別体のものに限定されず、チューブと一体とされていてもよい。
【0067】
第1~第4実施形態の構造は、適宜に組み合わせて採用することもできる。具体的には、例えば、第2実施形態に示した螺旋状のスリット54を備えるチューブ52と、第3実施形態に示した貫通孔64を備える穿孔用頭部62とを組み合わせることによって、開口窓の開口面積を確保することもできる。
【0068】
また、例えば、第3実施形態に示した貫通孔64を備える穿孔用頭部62と、第4実施形態に示した窓部74とシャッター76を備えるチューブ72とを組み合わせてもよい。これにより、貫通孔64の開閉によって穿孔過程をルーメン16の内圧に基づいて監視することができると共に、窓部74の開閉によって、ルーメン16の遠位における開口面積を能動的に変更することができて、ルーメン16からの造影剤や薬液等の投与量を制御することができる。
【0069】
第4実施形態では、シャッター76がチューブ72の中心軸方向に移動することで窓部74を開閉する構造について説明したが、例えば、シャッター76がチューブ72の中心軸回りで周方向に移動することによって窓部74を開閉する構造も採用され得る。
【0070】
前記第1実施形態では、穿孔用頭部14への押圧外力の作用によって開口窓(遠位開口部)22が閉じ、穿孔用頭部14への押圧外力の解除によって開口窓22が開く開閉機構とされていたが、反対に、穿孔用頭部への押圧外力の作用によって開口窓が開き、穿孔用頭部への押圧外力の解除によって開口窓が閉じる開閉機構を採用することも可能である。かかる開閉機構は、例えば自転車用の仏式や米式のバルブ機構のようにバルブ機構の突出先端への押圧力の作用で開き且つ押圧力の解除で閉じるような開閉機構を採用することで実現可能である。このような開閉機構を採用すれば、例えば体組織の穿孔に際して、体組織への押し当てによって開状態となった開閉機構が、体組織の穿孔貫通によって閉状態となることで、ルーメン内へ及ぼされる圧力変化を検知することもできる。
【0071】
前記第1実施形態の穿孔用頭部14のように、穿孔の前後で移動する部材を利用して、移動位置を検出する位置センサを装着することも可能である。例えば電気的に穿孔用頭部14の位置を検出すれば、穿孔に際しての体組織への押当て反力の作用状態と穿孔貫通に伴う反力の解除状態とを、より正確に検知することもできる。
なお、本発明は、もともと以下(i)~(vi)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) ルーメンを有する中空のチューブを備え、該チューブの先端側にはエネルギー供給によって穿孔作動する穿孔用頭部を備えている体組織穿孔用デバイスであって、前記チューブの先端部分において前記ルーメンを外部へ連通する開口窓を備えており、該開口窓を開閉する開閉機構が設けられている体組織穿孔用デバイス、
(ii) 穿孔時の前記穿孔用頭部の体組織への押当てによって前記開口窓を閉じ、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓を開く前記開閉機構が設けられている(i)に記載の体組織穿孔用デバイス、
(iii) 前記開口窓が前記穿孔用頭部を貫通して開放状態で形成されており、該穿孔用頭部の体組織への押当てによって該開口窓を体組織で覆って閉じ、該穿孔用頭部の体組織への押当ての解除によって該開口窓を開く前記開閉機構が構成される(ii)に記載の体組織穿孔用デバイス、
(iv) 前記開口窓が前記チューブの遠位端に開口しており、
前記穿孔用頭部が該開口窓に対して接近方向と離隔方向に移動可能とされて、前記開閉機構が該穿孔用頭部を含んで構成されている(i)~(iii)の何れか一項に記載の体組織穿孔用デバイス、
(v) 前記開口窓が前記チューブの周壁を貫通して螺旋状に延びるスリットとされており、該チューブにおける該開口窓の形成部分が軸方向の伸縮に伴う変形によって該開口窓を開閉可能とされて、前記開閉機構が該チューブにおける該開口窓の形成部分を含んで構成されている(i)~(iv)の何れか一項に記載の体組織穿孔用デバイス、
(vi) 前記開口窓が前記チューブの周壁を貫通して形成され、該チューブには移動可能なシャッターが取り付けられており、該開口窓が該シャッターの移動によって開閉可能とされて、前記開閉機構が該シャッターを含んで構成されている(i)~(v)の何れか一項に記載の体組織穿孔用デバイス、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられて開口窓が開閉機構によって閉じられることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用が阻止されてルーメンの内圧が低下し、穿孔完了後などに穿孔用頭部の体組織への押当てが解除されて開口窓が開閉機構によって開かれることにより、ルーメンへの心臓内圧の作用によってルーメンの内圧が上昇するようにできる。これにより、穿孔時と穿孔前及び穿孔後において、ルーメンの内圧変化が大きく生じて、穿孔を体組織に形成する過程をルーメンの内圧変化に基づいてより確実且つ容易に把握することが可能となる。また、例えば、開口窓を施術者の操作によって能動的に開閉可能とすることも可能であり、それによれば、造影剤や薬液などをルーメンを通じて開口窓から患者の体内へ投与する場合に、開口窓が所定の投与位置に達するまでは開口窓を閉じておいて、開口窓が所定の投与位置に達した後に開口窓を開くように操作することができる。
上記(ii)に記載の発明では、開口窓の開閉によるルーメンの内圧変化に基づいて、穿孔の過程(例えば、穿孔開始前と、穿孔中と、穿孔完了後)をより確実且つ容易に把握することができる。
上記(iii)に記載の発明では、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、穿孔用頭部を貫通する開口窓が体組織で覆われることにより、開口窓が閉じた状態とされる。穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、穿孔用頭部を貫通する開口窓が体組織で覆われることなく開放されて、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じることから、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
上記(iv)に記載の発明では、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、穿孔用頭部が開口窓に接近して開口窓を覆うことにより、開口窓が閉じた状態とされ、穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、穿孔用頭部が開口窓から離れることにより、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じるようにもできて、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
上記(v)に記載の発明では、例えば、穿孔時に穿孔用頭部が体組織に押し当てられると、チューブにおける開口窓の形成部分が収縮状態となって、螺旋に延びるスリット状の開口窓の幅が狭くされることにより、開口窓が閉じた状態とされる。また、例えば、穿孔前や穿孔完了後に穿孔用頭部が体組織への押当てを解除されると、チューブにおける開口窓の形成部分が伸長状態となって、螺旋に延びるスリット状の開口窓の幅が広くされることにより、開口窓が開いた状態とされる。このように、穿孔の過程に応じた開閉機構による開口窓の開閉によって、ルーメン内の圧力変化が生じるようにできて、ルーメン内の圧力変化に基づいて穿孔の過程を把握することができる。
上記(vi)に記載の発明では、例えば、穿孔前や穿孔時には開口窓をシャッターによって閉じ、穿孔完了後に開口窓を開いて、造影剤や薬液などをルーメンから開口窓を通じて放出することができる。これにより、必要に応じて開口部を開くことによって患者の体内への薬液等の投与が可能になる。
【符号の説明】
【0072】
10 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス 第1実施形態)
12 チューブ
14 穿孔用頭部
16 ルーメン
18 収容部
20 段差
22 遠位開口部(開口窓)
26 可動部材
28 摺動部
30 ばね部材
32 開閉機構
34 シース
36 トランスデューサ
38 モニター
40 加圧バッグ
42 高周波発生器
44 対極板
50 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス 第2実施形態)
52 チューブ
54 スリット(開口窓)
56 伸縮部
58 開閉機構
60 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス 第3実施形態)
62 穿孔用頭部
64 貫通孔(開口窓)
66 開閉機構
70 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス 第4実施形態)
72 チューブ
74 窓部(開口窓)
76 シャッター
77 ワイヤー
78 開閉機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8