(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】エンジン始動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/18 20060101AFI20241106BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20241106BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241106BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20241106BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02K7/18 B
F02N11/08 V
F02D45/00 362
F02N11/04 A
F02D29/02 321B
(21)【出願番号】P 2020200883
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】刑部 鉄也
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093576(WO,A1)
【文献】国際公開第02/27181(WO,A1)
【文献】特開2015-135105(JP,A)
【文献】特開2020-152120(JP,A)
【文献】特開2017-36666(JP,A)
【文献】特開2007-292009(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097912(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/18
F02N 11/08
F02D 45/00
F02N 11/04
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトおよび前記回転シャフトを回転可能に支持するケースを有するエンジンを始動させるエンジン始動装置であって、
電動機、電磁ピックアップおよび制御回路を備え、
前記電動機は、
前記回転シャフトまたは前記回転シャフトに固定された部品に固定された回転体と、
前記回転体に固定され、前記回転シャフトの回転中心を中心とした第1の円に沿って配置された2m個(mは2以上の整数)の永久磁石と、
前記ケースまたは前記ケースに固定された部品に固定されたコアと、
前記コアに設けられ、前記回転シャフトの周囲に前記第1の円と対向するように配置された3n個(nは1以上の整数)のコイルと、
前記回転体に設けられ、前記回転シャフトの回転中心を中心とする第2の円に沿って配置された複数の指標部とを備え、
前記2m個の永久磁石は、前記各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの一方の磁極であるm個の第1の永久磁石、および前記各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの他方の磁極であるm個の第2の永久磁石を含み、前記m個の第1の永久磁石および前記m個の第2の永久磁石は前記第1の円の周方向において1つずつ交互に等間隔に配置され、
前記3n個のコイルはn個の第1相のコイル、n個の第2相のコイルおよびn個の第3相のコイルを含み、前記n個の第1相のコイル、前記n個の第2相のコイルおよび前記n個の第3相のコイルは前記第1の円の周方向において1つずつこの順番に並ぶように等間隔に配置され、
前記電磁ピックアップは、前記ケースまたは前記ケースに固定された部品に固定され、前記回転体の回転時に前記各指標部が所定の基準位置を通過したことを示す検出信号を出力し、
前記制御回路は、前記検出信号に基づいて前記各コイルに流す電流を制御することにより前記コアに対して前記回転体を回転させ、
前記複数の指標部は、形状、大きさ、または前記第2の円の周方向の一方の隣に配置された指標部からの距離が前記複数の指標部における他の指標部と異なる特異指標部を含み、
前記特異指標部が前記基準位置を通過した時点に、前記n個の第1相のコイルのうちの少なくとも1つが前記m個の第1の永久磁石のうちのいずれか1つと対向するように、前記基準位置および前記特異指標部の配置が定められていることを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項2】
前記複数の指標部の個数は(2mー1)個であり、前記複数の指標部において、前記特異指標部は、前記回転体の一の回転方向において隣の指標部から(360/m)度離れた位置に配置され、前記特異指標部以外の各指標部は、前記回転体の前記一の回転方向において隣の指標部から(180/m)度離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動装置。
【請求項3】
前記特異指標部は、前記第2の円の周方向における長さが前記複数の指標部における他の指標部と異なることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン始動装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記回転体が停止しているときに、まず、前記検出信号に基づくことなく前記各コイルに所定のタイミングで電流を流すことによって前記回転体を回転させるオープンループ制御を行い、その後、前記特異指標部が前記基準位置を通過したことが前記検出信号に基づいて認識された時点に、前記回転体を回転させる制御を、前記オープンループ制御から、前記各コイルに電流を流すタイミングを前記検出信号に同期させて前記回転体を回転させるクローズドループ制御に切り換えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエンジン始動装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記回転体が停止しているときに、まず、前記オープンループ制御を行うことによって前記回転体を逆回転させ、その後、前記特異指標部が前記基準位置を通過したことが前記検出信号に基づいて認識された時点に、前記回転体を逆回転させる制御を前記オープンループ制御から前記クローズドループ制御に切り換え、その後、前記回転体の回転を逆回転から正回転に切り換えることを特徴とする請求項4に記載のエンジン始動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機によりクランクシャフトを回転させてエンジンを始動させるエンジン始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの始動時に、エンジンの始動のきっかけとなる回転力を電動機によりエンジンのクランクシャフトに与えるエンジン始動装置は、多くの車両に搭載されている。このようなエンジン始動装置における電動機として、例えば下記の特許文献1に記載されているように、エンジンの始動時には電動機として機能し、エンジンの始動後には発電機として機能する電動発電機が利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行を開始するに当たり、エンジンを迅速かつ円滑に始動させることができるようにすることは、車両の性能を向上させる上において1つの課題である。
【0005】
また、近年、例えば信号待ち等のために車両を短時間停止させる際にエンジンを自動的に停止させるアイドリングストップ機能を備えた車両が増加しつつある。例えば、信号待ちのためにエンジンを停止させた後、信号待ちを終えて車両を発進させる際には、エンジンを迅速かつ円滑に始動させる必要がある。そのため、アイドリングストップ機能を備えた車両に搭載されたエンジン始動装置には、エンジンの始動の迅速性および円滑性を高めることが要求される。
【0006】
本発明は例えば上述したような課題および要求を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、エンジンの始動の迅速性および円滑性を高めることができるエンジン始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエンジン始動装置は、回転シャフトおよび前記回転シャフトを回転可能に支持するケースを有するエンジンを始動させるエンジン始動装置であって、電動機、電磁ピックアップおよび制御回路を備え、前記電動機は、前記回転シャフトまたは前記回転シャフトに固定された部品に固定された回転体と、前記回転体に固定され、前記回転シャフトの回転中心を中心とした第1の円に沿って配置された2m個(mは2以上の整数)の永久磁石と、前記ケースまたは前記ケースに固定された部品に固定されたコアと、前記コアに設けられ、前記回転シャフトの周囲に前記第1の円と対向するように配置された3n個(nは1以上の整数)のコイルと、前記回転体に設けられ、前記回転シャフトの回転中心を中心とする第2の円に沿って配置された複数の指標部とを備え、前記2m個の永久磁石は、前記各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの一方の磁極であるm個の第1の永久磁石、および前記各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの他方の磁極であるm個の第2の永久磁石を含み、前記m個の第1の永久磁石および前記m個の第2の永久磁石は前記第1の円の周方向において1つずつ交互に等間隔に配置され、前記3n個のコイルはn個の第1相のコイル、n個の第2相のコイルおよびn個の第3相のコイルを含み、前記n個の第1相のコイル、前記n個の第2相のコイルおよび前記n個の第3相のコイルは前記第1の円の周方向において1つずつこの順番に並ぶように等間隔に配置され、前記電磁ピックアップは、前記ケースまたは前記ケースに固定された部品に固定され、前記回転体の回転時に前記各指標部が所定の基準位置を通過したことを示す検出信号を出力し、前記制御回路は、前記検出信号に基づいて前記各コイルに流す電流を制御することにより前記コアに対して前記回転体を回転させ、前記複数の指標部は、形状、大きさ、または前記第2の円の周方向の一方の隣に配置された指標部からの距離が前記複数の指標部における他の指標部と異なる特異指標部を含み、前記特異指標部が前記基準位置を通過した時点に、前記n個の第1相のコイルのうちの少なくとも1つが前記m個の第1の永久磁石のうちのいずれか1つと対向するように、前記基準位置および前記特異指標部の配置が定められている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンの始動の迅速性および円滑性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置が設けられたエンジンを示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置における電動発電機を
図1中の左側から見た状態を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置における電動発電機の分解図である。
【
図4】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置の電動発電機における永久磁石、コイルおよび凸部等の位置関係、並びに電動発電機の電気的・磁気的構造を電磁ピックアップと共に示す模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置において、電磁ピックアップから出力された検出信号、凸部および永久磁石を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置における駆動制御回路、および駆動制御回路に接続されたコイル等を示す回路図である。
【
図7】エンジンにおけるクランク角とシリンダ内の圧力との関係を示すグラフである。
【
図8】本発明の第1の実施例のエンジン始動装置によるエンジン始動処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施例のエンジン始動装置を示す模式図である。
【
図10】本発明の第3の実施例のエンジン始動装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態のエンジン始動装置は、回転シャフトおよび回転シャフトを回転可能に支持するケースとを有するエンジンを始動させる装置である。本実施形態のエンジン始動装置は、電動機、電磁ピックアップおよび制御回路を備えている。
【0011】
電動機は、回転体、回転体に設けられた2m個(mは2以上の整数)の永久磁石、コア、コアに設けられた3n個(nは1以上の整数)のコイル、および複数の指標部を備えている。電動機は例えば3相ブラシレスモータの構造を有している。
【0012】
回転体は、回転シャフト、または回転シャフトに固定された部品に固定されている。2m個の永久磁石は、回転体に固定され、回転シャフトの回転中心を中心とした第1の円に沿って配置されている。また、2m個の永久磁石は、各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの一方の磁極であるm個の第1の永久磁石、および各コイルと対向する側の磁極がN極およびS極のうちの他方の磁極であるm個の第2の永久磁石を含んでいる。また、m個の第1の永久磁石およびm個の第2の永久磁石は第1の円の周方向において1つずつ交互に等間隔に配置されている。
【0013】
コアは、エンジンのケース、または当該ケースに固定された部品に固定されている。3n個のコイルは、コアに設けられ、回転シャフトの周囲に上記第1の円と対向するように配置されている。また、3n個のコイルは、n個の第1相のコイル、n個の第2相のコイルおよびn個の第3相のコイルを含んでいる。また、n個の第1相のコイル、n個の第2相のコイルおよびn個の第3相のコイルは第1の円の周方向において1つずつこの順番に並ぶように等間隔に配置されている。
【0014】
複数の指標部は、回転体に設けられ、回転シャフトの回転中心を中心とする第2の円に沿って配置されている。複数の指標部は各永久磁石の位置を示す指標として機能する。
【0015】
電磁ピックアップは、エンジンのケースまたは当該ケースに固定された部品に固定されている。電磁ピックアップは、回転体の回転時に、各指標部が所定の基準位置を通過したことを検出し、各指標部が所定の基準位置を通過したことを示す検出信号を出力する。制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて各コイルに流す電流を制御することにより、コアに対して回転体を回転させる。回転体の回転に伴い、回転シャフトが回転する。その後、エンジンが燃焼ガスの熱エネルギーに基づく作動を開始する。
【0016】
また、複数の指標部には特異指標部が含まれている。特異指標部は、形状または大きさが、複数の指標部における他の指標部と異なるものとすることが好ましい。また、特異指標部を、上記第2の円の周方向の一方の隣に配置された指標部からの距離が複数の指標部における他の指標部と異なるものとしてもよい。また、上記基準位置および特異指標部の配置は、特異指標部が上記基準位置を通過した時点に、n個の第1相のコイルのうちの少なくとも1つがm個の第1の永久磁石のうちのいずれか1つと対向するように定められている。
【0017】
このような構成を有する本実施形態のエンジン始動装置において、電磁ピックアップは各指標部が所定の基準位置を通過したことを示す検出信号を出力する。複数の指標部のうち、特異指標部は、形状もしくは大きさ、または上記第2の円の周方向の一方の隣に配置された指標部からの距離が他の指標部とは異なっている。したがって、特異指標部が上記基準位置を通過したときと、特異指標部以外の指標部が上記基準位置を通過したときとで、電磁ピックアップから出力される検出信号の波形または検出信号の出力間隔が異なる。それゆえ、制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて、特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識することができる。さらに、本実施形態のエンジン始動装置において、上記基準位置および特異指標部の配置は、特異指標部が上記基準位置を通過した時点に、n個の第1相のコイルのうちの少なくとも1つがm個の第1の永久磁石のうちのいずれか1つと対向するように定められている。したがって、制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識することにより、少なくとも1つの第1相のコイルが第1の永久磁石と対向していることを認識することができる。
【0018】
例えば、永久磁石の個数が4つであり、コイルの個数が3つである場合には、制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識することにより、1つの第1相のコイルが1つの第1の永久磁石と対向していることを認識することができる。また、例えば、永久磁石の個数が4つであり、コイルの個数が6つである場合には、制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識することにより、2つの第1相のコイルが2つ第1の永久磁石とそれぞれ対向していることを認識することができる。また、例えば、永久磁石の個数が12個であり、コイルの個数が18個である場合には、制御回路は、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識することにより、6つの第1相のコイルが6つ第1の永久磁石とそれぞれ対向していることを認識することができる。
【0019】
これにより、制御回路は、回転体が停止しているときに、まず、電磁ピックアップからの検出信号に基づくことなく、それぞれのコイルに所定のタイミングで電流を流すオープンループ制御を行うことによって回転体の回転を開始させ、その後、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて、特異指標部が上記基準位置を通過したことを認識した時点に、回転体を回転させる制御を、オープンループ制御から、それぞれのコイルに電流を流すタイミングを電磁ピックアップから出力される検出信号に同期させるクローズドループ制御に迅速かつ円滑に切り換えることができる。すなわち、制御回路は、第1相のコイルが第1の永久磁石と対向した状態となるタイミングを、電磁ピックアップから出力された検出信号に基づいて正確に認識することができ、そのタイミングで、回転体を回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換えることによって、オープンループ制御からクローズドループ制御への移行を迅速かつ円滑に行うことができる。そして、クローズドループ制御により回転体の回転を早期に安定させることができる。
【0020】
したがって、本実施形態のエンジン始動装置によれば、エンジンの始動時に、回転シャフトの回転トルクおよび回転数(回転速度)を、エンジンが燃焼ガスの熱エネルギーに基づく作動を開始するのに必要な回転トルクおよび回転数まで、迅速かつ円滑に引き上げることができる。よって、エンジンの始動の迅速性および円滑性を高めることができる。
【実施例1】
【0021】
(エンジン始動装置)
図1は、本発明の第1の実施例のエンジン始動装置11が設けられたエンジン1を示している。
図1において、エンジン1は、4ストロークのエンジンであり、例えば鞍乗型車両等の車両に搭載される。エンジン1は、
図1中の上側が車両の前方を向くように車両に取り付けられる。エンジン1は、クランクケース2、シリンダ3およびシリンダヘッド4を備えている。シリンダ3内にはピストン5が往復動可能に設けられている。クランクケース2にはクランクシャフト6が回転可能に支持されている。ピストン5はコネクティングロッド7を介してクランクシャフト6に接続されており、クランクシャフト6は、エンジン1の作動時において、ピストン5の往復動に応じて回転する。なお、クランクケース2はケースの具体例であり、クランクシャフト6は回転シャフトの具体例である。
【0022】
エンジン始動装置11は、電動発電機12、電磁ピックアップ32および駆動制御回路35を備えている。電動発電機12は、エンジン1の始動時には、クランクシャフト6を回転させる電動機(具体的にはブラシレスモータ)として機能し、エンジン1の始動後には、エンジン1の作動によるクランクシャフト6の回転を利用して発電を行う発電機として機能する。電動発電機12は、クランクケース2内の右部に収容され、クランクシャフト6の右端側部分に接続されている。なお、電動発電機12は電動機の具体例である。
【0023】
電磁ピックアップ32は、電動発電機12に設けられた永久磁石21A~24Lの位置を検出する機能を有している。電磁ピックアップ32は、クランクケース2内の右部であってロータケース14の外周面と対向する位置に配置されている。また、電磁ピックアップ32は、クランクケース2、またはクランクケース2に固定された部品(例えばブラケット)に固定されている。
【0024】
駆動制御回路35は、電動発電機12の駆動を制御する回路である。エンジン1およびエンジン始動装置11が設けられた車両が鞍乗型車両である場合には、駆動制御回路35は、例えば、保護ケースに収容され、鞍乗型車両のシートの下側、フロントカウルの内側等、鞍乗型車両において雨等が当たり難い箇所に配置されている。なお、
図1では、電磁ピックアップ32および駆動制御回路35を模式的に示している。また、駆動制御回路35は制御回路の具体例である。
【0025】
また、クランクケース2内において、電動発電機12の右方には、エンジン1を冷却するための冷却風を発生させるファン8が設けられている。ファン8はクランクシャフト6に接続されており、クランクシャフト6と共に回転する。また、クランクシャフト6の左端側部分には変速機9のドライブプーリ10が接続されている。
【0026】
(電動発電機)
図2は電動発電機12を示している。
図3は電動発電機12を分解した状態を示している。
図4は、電動発電機12における永久磁石21A~21L、コイル31および凸部24A~24K等の位置関係、並びに電動発電機12の電気的・磁気的構造を電磁ピックアップ32と共に模式的に示している。なお、
図2および
図4では、電動発電機12を
図1中の左側から見た状態を示している。
【0027】
電動発電機12は、
図2に示すように、ロータ13およびステータ25を備えている。ロータ13はクランクシャフト6に固定され、クランクシャフト6と共に回転する。一方、ステータ25はクランクケース2に固定されている。
【0028】
ロータ13は、
図3に示すように、ロータケース14、複数の永久磁石21A~21L、および磁石支持部材23を備えている。
【0029】
ロータケース14は、例えば鉄鋼等の磁性材料により、底壁部15および周壁部16を有する有底円筒状に形成されている。ロータケース14の底壁部15の中心部はクランクシャフト6の右端側部分に固定される。具体的には、底壁部15の中央には孔が形成され、その孔には、例えば金属材料により円筒状に形成されたボス部17が挿入されている。ボス部17は底壁部15に固定されている。ボス部17の内側にはクランクシャフト6の右端側部分が挿入される。ボス部17とクランクシャフト6とは、例えば、ボス部17の内周面に形成されたキー溝18とクランクシャフト6の外周面に形成されたキー溝との間にキーを嵌合することにより固定される。なお、ロータケース14は回転体の具体例である。
【0030】
ロータ13は2m個の永久磁石、本実施例においては例えば12個の永久磁石21A~21Lを備えている。永久磁石21A~21Lは、
図4に示すように、クランクシャフト6の回転中心Aを中心とした第1の円Bに沿って配置されている。具体的には、永久磁石21A~21Lは、ロータケース14内の外周側に全周に亘ってそれぞれ等しい角度間隔(30度)を持って配置されている。また、永久磁石21A~21Lはロータケース14に固定されている。具体的には、永久磁石21A~21Lは、
図3に示すように、4枚の磁石板22A~22Dをロータケース14内に挿入し、4枚の磁石板22A~22Dが挿入されたロータケース14に磁石支持部材23を挿入し、磁石支持部材23をロータケース14に固定することにより、ロータケース14の周壁部16の内面側に固定されている。磁石支持部材23は金属等の磁性材料により円筒状に形成されている。
【0031】
各磁石板22A~22Dは例えばフェライト磁石またはネオジム磁石であり、円弧状に湾曲した板状に形成されている。機能的に見て、各磁石板22A~22Dには3つの永久磁石が形成されている。すなわち、磁石板22Aは、その両端側部分の内周側がそれぞれS極となるように着磁され、中央部分の内周側がN極となるように着磁されている。磁石板22Aと対向するように配置される磁石板22Cも磁石板22Aと同様に着磁されている。また、磁石板22Bは、その両端側部分の内周側がそれぞれN極となるように着磁され、中央部分の内周側がS極となるように着磁されている。磁石板22Bと対向するように配置される磁石板22Dも磁石板22Bと同様に着磁されている。
【0032】
4枚の磁石板22A~22Dをロータケース14内に周方向に磁石板22A、22B、22C、22Dの順番に配置することにより、機能的に見て、12個の永久磁石21A~21Lがロータケース14内において周方向に、互いに隣り合う2つの永久磁石の磁極の方向が互いに反対となるように配置される。すなわち、内周側がN極となるように磁極の方向が設定された永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kと、内周側がS極となるように磁極の方向が設定された永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lとがロータケース14内の周方向(第1の円Bの周方向)において1つずつ交互に配置される。以下、内周側がN極となるように磁極の方向が設定された永久磁石を「N極の永久磁石」といい、内周側がS極となるように磁極の方向が設定された永久磁石を「S極の永久磁石」という。
【0033】
また、ロータケース14の周壁部16の外面には、
図4に示すように、複数の凸部24A~24Kが設けられている。各凸部24A~24Kは永久磁石21A~21Lの位置を示す指標として機能する。凸部24A~24Kは、クランクシャフト6の回転中心Aを中心とする第2の円Cに沿って配置されている。各凸部24A~24Kはロータケース14の周壁部16の外面から径方向に突出している。各凸部24A~24Kは、例えばプレス加工または成形等によりロータケース14の周壁部16と一体形成されている。なお、例えば磁性材料からなる複数の円柱状の小片をロータケース14の周壁部16に溶接またはねじ止め等の手段で取り付けることにより凸部24A~24Kを形成してもよい。また、凸部24A~24Kは指標部の具体例である。
【0034】
凸部24A~24Kの個数は永久磁石21A~21Lの個数よりも1つ少ない個数、すなわち(2m-1)個であり、本実施例においては11個である。11個の凸部24A~24Kは次の規則に従って配置されている。すなわち、凸部24A~24Kのうち、1つの凸部24Aは、ロータ13の逆回転方向、すなわち、
図4中の矢印Dが示す方向において隣の凸部24Kから60度離れた位置に配置されている。この60度という角度の値は、360度を永久磁石21A~21Lの個数(12個)で除した値の2倍の値であり、次の数式により算出することができる。
(360/2m)×2、すなわち、360/m
一方、凸部24A~24Kのうち、凸部24Aを除く、各凸部24B~24Kは、ロータ13の逆回転方向において隣の凸部から30度離れた位置に配置されている。この30度という角度の値は、360度を永久磁石21A~21Lの個数で除した値であり、永久磁石21A~21Lの配置の角度間隔に等しく、次の数式により算出することができる。
360/2m、すなわち、180/m
また、各凸部24A~24Kは、永久磁石21A~21Lにおいて互いに隣り合う2つの永久磁石の境界に対向する位置に配置されている。また、凸部24Aは、N極の永久磁石と、ロータ13の逆回転方向において当該N極の永久磁石の隣に配置されたS極の永久磁石との境界に対向する位置に配置されている。本実施例においては、例えば、凸部24Aは、N極の永久磁石21AとS極の永久磁石21Lとの境界に対向する位置に配置されている。また、凸部24Kは、S極の永久磁石と、ロータ13の正回転方向(矢印Dが示す方向と反対の方向)において当該S極の永久磁石の隣に配置されたN極の永久磁石との境界に対向する位置に配置されている。本実施例においては、例えば、凸部24Kは、S極の永久磁石21JとN極の永久磁石21Kとの境界に対向する位置に配置されている。
【0035】
図2に示すように、ステータ25は、コア26および複数のコイル31を備えている。コア26は、例えば金属材料により円板状に形成されたベース部27を備えている。ベース部27はクランクケース2に固定されている。ベース部27の中央には、ロータケース14に固定されたボス部17を挿入するための挿入孔28が形成されている。また、ベース部27の外周側には、例えば、鉄鋼等の磁性材料により形成された18個のティース29が設けられている。各ティース29はベース部27の外周側からベース部27の径方向に突出している。18個のティース29はベース部27の外周の全周に亘ってそれぞれ互いに等しい角度間隔を持って配置されている。
【0036】
ステータ25は3n個のコイル31、本実施例においては例えば18個のコイル31を備えている。これら18個のコイル31は、18個のティース29に巻線を施すことにより形成されている。18個のコイル31は、
図4に示すように、クランクシャフト6の周囲に第1の円Bと対向するように配置されている。具体的には、18個のコイル31は、ロータ13の回転時における12個の永久磁石21A~21Lの軌道の内周側に位置し、当該軌道と対向するように、それぞれ等しい角度間隔(20度)を持って配置されている。
【0037】
18個のコイル31は3相のコイルを形成している。すなわち、電動発電機12は、18個のコイル31のうち、6つのコイルにU相の駆動電流を流し、他の6つのコイルにV相の駆動電流を流し、残りの6つのコイルにW相の駆動電流を流すことにより駆動される。以下、コイル31につき、駆動電流の位相を区別して説明する場合には、18個のコイル31のうち、U相の駆動電流を流すコイルには31Uの符号を付し、V相の駆動電流を流すコイルには31Vの符号を付し、W相の駆動電流を流すコイルには31Wの符号を付す。これらコイル31U、31V、31Wは、ロータ13の逆回転方向、すなわち
図4中の矢印Dが示す方向において、コイル31U、コイル31V、コイル31Wの順番に配置されている。
【0038】
また、
図2に示すように、ステータ25はロータ13と同軸に配置されている。具体的には、ステータ25は、ロータケース14内において、ボス部17と永久磁石21との間に配置されている。また、コア26のベース部27に形成された挿入孔28内には、ロータケース14に固定されたボス部17が挿入されている。ステータ25は、ボス部17、ロータケース14、磁石支持部材23および各永久磁石21のいずれからも離れている。すなわち、挿入孔28の直径はボス部17の外径よりも大きく、ボス部17の外周面は挿入孔28の内周面から離れている。また、コア26および各コイル31は、ロータケース14の底壁部15から離れている。また、各ティース29の先端部は、磁石支持部材23および各永久磁石21から離れている。
【0039】
(電磁ピックアップ)
電磁ピックアップ32は、
図4に示すように、ロータケース14の外周側に、ロータケース14から所定距離離れた位置に配置されている。また、電磁ピックアップ32は、ロータ13の回転時における凸部24A~24Kの軌道の外側に位置し、当該軌道と対向するように配置されている。電磁ピックアップ32は、上述したように、クランクケース2、またはクランクケース2に固定された部品に固定されている。
【0040】
電磁ピックアップ32は、ロータ13の回転時に各凸部24A~24Kが所定の基準位置Eを通過したことを検出する。基準位置Eは、U相、V相およびW相のうちの特定の相のコイルの中のいずれか1つのコイルの中心に設定されている。本実施例においては、例えば、特定の相としてU相が選択され、基準位置Eは、
図4に示すように、6つのU相のコイル31Uのうちの1つのコイル31Uの中心に設定されている。電磁ピックアップ32は、各凸部24A~24Kが基準位置Eを通過したことを検出することが可能となるように、基準位置Eと対向する位置に配置されている。
【0041】
上述したように、凸部24Aは、N極の永久磁石21Aと、ロータ13の逆回転方向において当該N極の永久磁石21Aの隣に配置されたS極の永久磁石21Lとの境界に対向する位置に配置されている。したがって、ロータ13が逆回転している間においては、凸部24Aが基準位置Eを通過したことが電磁ピックアップ32により検出された時点に、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来る。また、凸部24Kは、S極の永久磁石21Jと、ロータ13の正回転方向において当該S極の永久磁石21Jの隣に配置されたN極の永久磁石21Kとの境界に対向する位置に配置されている。したがって、ロータ13が正回転している間においては、凸部24Kが基準位置Eを通過したことが電磁ピックアップ32により検出された時点に、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来る。
【0042】
また、電磁ピックアップ32は、各凸部24A~24Kが基準位置Eを通過したこと示す検出信号を出力する。すなわち、電磁ピックアップ32は、磁石およびピックアップコイルを内蔵している。ロータ13の回転時には、電磁ピックアップ32に内蔵された磁石により形成された磁界が凸部24A~24Kの接近、離間により変化し、それに伴ってピックアップコイルに電圧が発生する。電磁ピックアップ32はその電圧に対応した信号を検出信号として出力する。電磁ピックアップ32は駆動制御回路35のマイクロコンピュータ41に接続されている(
図6参照)。電磁ピックアップ32から出力された検出信号はマイクロコンピュータ41に入力される。
【0043】
図5は、ロータ13が逆回転しているときに電磁ピックアップ32から出力される検出信号と、検出信号に対応する凸部24A~24K(一部の凸部のみ図示)および永久磁石21A~21L(一部の永久磁石のみ図示)を模式的に示している。なお、
図5では、検出信号と凸部24A~24Kとの対応関係を明示するために、凸部24A~24Kおよび永久磁石21A~21Lの配列方向を変更しているので注意されたい。すなわち、
図5において、検出信号の時間軸の方向が図中の右方向であり、それに合わせるために、
図5における凸部24A~24Kおよび永久磁石21A~21Lの配列方向は、
図4に示すこれらの配列方向に対して逆になっている。
【0044】
ロータ13が回転しているとき、電磁ピックアップ32は、凸部24A~24Kが基準位置Eを通過するごとに検出信号を出力する。
図5中のPは、ロータ13が一定の速度で逆回転している間、凸部24A~24Kが基準位置Eを順次通過したときに電磁ピックアップ32から出力される検出信号を示している。凸部24B~24Kは30度間隔に配置されているので、ロータ13が一定の速度で逆回転している間に凸部24B~24Kが基準位置Eを順次通過した場合、検出信号Pの出力間隔Kはそれぞれ互いに等しくなる。一方、凸部24Aと凸部24Kとの間の間隔は60度であるので、ロータ13が一定の速度で逆回転している間に凸部24Kおよび凸部24Aが基準位置Eを順次通過した場合、凸部24Kに対応する検出信号Pと凸部24Aに対応する検出信号Pとの出力間隔はKの2倍、すなわち2Kになる。したがって、ロータ13が逆回転している間においては、直前の検出信号Pとの間の出力間隔が2Kである検出信号Pが出力されたとき、その時点に、凸部24Aが基準位置Eを通過したと認識することができる。一方、ロータ13が正回転している間においては、直前の検出信号Pとの間の出力間隔が2Kである検出信号Pが出力されたとき、その時点に、凸部24Kが基準位置Eを通過したと認識することができる。
【0045】
(駆動制御回路)
図6は駆動制御回路35、および駆動制御回路35に接続されたコイル31U、31V、31W等を示している。なお、
図6において、コイル31U、31V、31Wについては電気的な観点から簡略化して示している。
【0046】
駆動制御回路35は、コイル31U、31V、31Wにそれぞれ流す駆動電流を制御することにより電動発電機12を駆動する回路である。
図6に示すように、駆動制御回路35は、駆動電流供給回路36およびマイクロコンピュータ41を備えている。
【0047】
駆動電流供給回路36の入力端子37には、車両に搭載されたバッテリーから出力される例えば12Vの直流電圧Vbが印加され、これにより、駆動電流供給回路36に直流電流が供給される。また、駆動電流供給回路36の出力側には電流検出用抵抗39を介してコイル31U、31V、31Wが接続されている。また、駆動電流供給回路36は、6個のFET(電界効果トランジスタ)38A~38Fを備えている。FET38A~38Fのオン、オフにより、コイル31U、31V、31Wに供給される駆動電流が切り換わる。
【0048】
マイクロコンピュータ41には、駆動電流供給回路36のFET38A~38Fのそれぞれのゲート端子G1~G6が接続されている。マイクロコンピュータ41は、駆動電流供給回路36のFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることにより、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御し、ステータ25に対するロータ13の回転方向および回転数(回転速度)を制御する。また、マイクロコンピュータ41には電磁ピックアップ32が接続されている。また、マイクロコンピュータ41は、車両に設けられたメインコントローラと接続されている。
【0049】
マイクロコンピュータ41は、ロータ13を回転させる制御として、オープンループ制御およびクローズドループ制御の2通りの制御を行う。オープンループ制御は、予め設定された制御シーケンスに従ってFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることにより、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに駆動電流を流すタイミングを制御するものである。オープンループ制御は、電磁ピックアップ32からの検出信号に基づくことなく行われる制御であり、検出信号とは非同期の制御である。一方、クローズドループ制御は、例えばベクトル制御であり、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づいてFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることにより、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに駆動電流を流すタイミングを制御するものである。クローズドループ制御は検出信号と同期した制御である。また、詳細な説明を省略するが、ロータ13が回転しているとき、回転角度に応じて特定のコイル31に無負荷誘起電圧が生じる。クローズドループ制御においては、電磁ピックアップ32からの検出信号に加え、上記無負荷誘起電圧に基づいてコイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流が制御される。
【0050】
また、マイクロコンピュータ41は、ロータ13が逆回転しているときには、電磁ピックアップ32から出力される検出信号の出力間隔に基づいて、凸部24Aが基準位置Eを通過したことを認識する。これにより、マイクロコンピュータ41は、ロータ13が逆回転しているときに、N極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21KがU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを認識することができる。一方、ロータ13が正回転しているときには、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から出力される検出信号の出力間隔に基づいて、凸部24Kが基準位置Eを通過したことを認識する。これにより、マイクロコンピュータ41は、ロータ13が正回転しているときに、S極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21LがU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを認識することができる。
【0051】
また、駆動電流供給回路36とコイル31U、31V、31Wとの間には電流検出用抵抗39が接続されている。詳細な説明は省略するが、マイクロコンピュータ41は、電流検出用抵抗39を用いてコイル31U、31V、31Wのそれぞれを流れる駆動電流を検出することができる。
【0052】
なお、本実施例において、ロータ13が逆回転する場合に、N極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kがそれぞれ第1の永久磁石に当たり、S極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lがそれぞれ第2の永久磁石に当たり、U相のコイル31Uが第1相のコイルに当たり、凸部24Aが特異指標部に当たる。また、ロータ13が正回転する場合には、S極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lがそれぞれ第1の永久磁石に当たり、N極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kがそれぞれ第2の永久磁石に当たり、U相のコイル31Uが第1相のコイルに当たり、凸部24Kが特異指標部に当たる。
【0053】
(エンジン始動処理)
エンジン始動装置11は、エンジン1を始動させるエンジン始動処理を行う。また、エンジン始動装置11は、エンジン始動処理において、スイングバック制御を行う。スイングバック制御とは、エンジン1の始動時にクランクシャフト6を一旦逆回転させてから正回転させることで、クランクシャフト6が電動発電機12の動力により圧縮上死点を乗り越えるための助走距離をかせぐ制御である。
【0054】
図7は、スイングバック制御を説明するための図であり、クランク角とシリンダ3内の圧力との関係を示している。
図7において、スイングバック制御では、まず、クランク角P1で停止しているクランクシャフト6を、電動発電機12により、圧縮上死点P3を乗り越えることができない程度の小さめのトルクで逆回転させる。その後、クランク角が圧縮上死点P3の手前の位置P2に達したとき、クランクシャフト6は圧縮上死点P3を乗り越えることができずに停止するので、そのタイミングを見計らって、クランクシャフト6の回転を逆回転から正回転に切り換える。その後、電動発電機12により、クランクシャフト6に、圧縮上死点P0を乗り越えるのに十分なトルクを与え、クランクシャフト6がエンジン1における燃焼ガスの熱エネルギーによって正回転を継続することが可能となるまで、クランクシャフト6を正回転させる。
【0055】
図8は、エンジン始動装置11によるエンジン始動処理を示している。エンジン1が停止し、クランクシャフト6およびロータ13が停止している状態において、例えば、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41にエンジン始動信号が出力されたとき、
図8に示すエンジン始動処理が開始され、上述したスイングバック制御が実行される。具体的には、マイクロコンピュータ41が、まず、オープンループ制御により、電動発電機12のロータ13を逆回転させる(ステップS1)。
【0056】
ロータ13が逆回転を開始すると、電磁ピックアップ32から検出信号が出力されるようになる。マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号の出力間隔に基づいて、凸部24Aが基準位置Eを通過したか否かを判断する(ステップS2)。
【0057】
マイクロコンピュータ41は、凸部24Aが基準位置Eを通過したことを認識したとき(ステップS2:YES)、その時点に、ロータ13を逆回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換える(ステップS3)。上述したように、電動発電機12においては、ロータ13が逆回転しているときに凸部24Aが基準位置Eを通過した時点において、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置が定められている。したがって、マイクロコンピュータ41は、凸部24Aが基準位置Eを通過したことを認識することによって、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを正確に認識することができる。よって、マイクロコンピュータ41は、凸部24Aが基準位置Eを通過したことを認識した時点に、ロータ13を逆回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換えることにより、オープンループ制御からクローズドループ制御への移行を円滑に行うことができる。
【0058】
ロータ13を逆回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換えた後、マイクロコンピュータ41は、ロータ13の回転数を検出する(ステップS4)。マイクロコンピュータ41は、この回転数の検出を、ロータ13の回転数の移動平均を算出することにより行う。
【0059】
続いて、マイクロコンピュータ41は、ロータ13の回転数の検出結果に基づき、ロータ13の回転数が減少したか否かを判断する(ステップS5)。すなわち、ロータ13の逆回転に伴い、クランクシャフト6はシリンダ3内の圧力に抗して逆回転している。
図7に示すように、クランクシャフト6が逆回転し、クランク角が圧縮上死点P3付近に接近すると、シリンダ3内の圧力が高くなるため、クランクシャフト6の回転数が減少し、それに伴ってロータ13の回転数が減少する。マイクロコンピュータ41は、クランク角が圧縮上死点P3付近に接近したことにより、ロータ13の回転数が減少したことを検出する。
【0060】
ロータ13の回転数が減少したことが検出されない間(ステップS5:NO)、マイクロコンピュータ41は、クローズドループ制御によりロータ13を逆回転させながら、ロータ13の回転数の検出を継続する。一方、ロータ13の回転数が減少したことが検出されたとき(ステップS5:YES)、マイクロコンピュータ41は、ステップS4で検出されたロータ13の回転数に基づき、ロータ13の回転数の減少が検出された時点から、ロータ13が停止するまでの推定所要時間を決定する(ステップS6)。すなわち、スイングバック制御では、
図7に示すように、クランク角が圧縮上死点P3に接近し、シリンダ3内の圧力に抗し切れずにクランクシャフト6およびロータ13が停止したときに、クランクシャフト6およびロータ13の回転方向を反転させる。ロータ13の回転数が減少すると、電磁ピックアップ32からの検出信号が弱くなるので、電磁ピックアップ32からの検出信号に基づいてロータ13の停止位置を認識することは困難である。そこで、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から十分な強さの検出信号が出力され、その検出信号に基づいてクローズドループ制御が行われている間のロータ13の回転数に基づき、ロータ13の回転数の減少が検出された時点からロータ13が停止するまでの推定所要時間を決定する。この推定所要時間の決定は、例えば、クローズドループ制御が行われている間のロータ13の回転数と、ロータ13の回転数が減少を開始した時点からロータ13が停止するまでの所要時間との関係を実験等により調べて記述したデータテーブルまたは計算式等を用いて行う。
【0061】
続いて、マイクロコンピュータ41は、ロータ13の回転数の減少が検出された時点から上記推定所要時間が経過したか否かを判断する(ステップS7)。そして、ロータ13の回転数の減少が検出された時点から上記推定所要時間が経過したとき(ステップS7:YES)、マイクロコンピュータ41は、オープンループ制御により、ロータ13の回転方向を反転させ、ロータ13を正回転させる(ステップS8)。
【0062】
クランク角が圧縮上死点P3に接近してクランクシャフト6およびロータ13が停止したときには、電磁ピックアップ32から検出信号が出力されなくなるが、その後、ロータ13が正回転を開始すると、電磁ピックアップ32から検出信号が出力されるようになる。マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号の出力間隔に基づいて、凸部24Kが基準位置Eを通過したか否かを判断する(ステップS9)。
【0063】
マイクロコンピュータ41は、凸部24Kが基準位置Eを通過したことを認識したとき(ステップS9:YES)、その時点に、ロータ13を正回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換える(ステップS10)。上述したように、電動発電機12においては、ロータ13が正回転しているときに凸部24Kが基準位置Eを通過した時点に、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Kの配置が定められている。したがって、マイクロコンピュータ41は、凸部24Kが基準位置Eを通過したことを認識することによって、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを正確に認識することができる。よって、マイクロコンピュータ41は、凸部24Kが基準位置Eを通過したことを認識した時点に、ロータ13を正回転させる制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換えることにより、オープループ制御からクローズドループ制御への移行を円滑に行うことができる。
【0064】
ロータ13およびクランクシャフト6が圧縮上死点を乗り越えて正転を継続し、エンジン1が始動したとき、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41に、エンジン1が始動したことを知らせる信号が出力される。これに応じ、マイクロコンピュータ41は、電動発電機12の制御を発電制御に切り換える(ステップS11:YES、ステップS12)。これにより、エンジン始動処理は終了する。
【0065】
以上説明した通り、本発明の第1の実施例のエンジン始動装置11においては、ロータ13が逆回転しているときに、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点において、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように、基準位置Eおよび凸部24Aの配置が定められている。この構成により、ロータ13の逆回転を開始させるときに、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たタイミングをマイクロコンピュータ41に正確に認識させることができる。そして、このタイミングで、ロータ13を逆回転させるため制御をオープンループ制御からクローズドループ制御へ切り換えるようにすることで、当該制御の切換を迅速かつ円滑に行うことができ、ロータ13の逆回転を早期に安定させることができる。したがって、エンジン1の始動時のスイングバック制御において、クランクシャフト6を迅速かつ円滑に逆回転させることができる。
【0066】
また、本実施例のエンジン始動装置11によれば、ロータ13が正回転しているときに、凸部24Kが基準位置Eを通過した時点において、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように、基準位置Eおよび凸部24Kの配置が定められている。この構成により、ロータ13の正回転を開始させるときに、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たタイミングをマイクロコンピュータ41に正確に認識させることができる。そして、このタイミングで、ロータ13を正回転させるため制御をオープンループ制御からクローズドループ制御へ切り換えるようにすることで、当該制御の切換を迅速かつ円滑に行うことができ、ロータ13の正回転を早期に安定させることができる。したがって、エンジン1の始動時に、クランクシャフト6の回転トルクおよび回転数を、エンジン1が燃焼ガスの熱エネルギーに基づく作動を開始するのに必要な回転トルクおよび回転数まで、迅速かつ円滑に引き上げることができ、エンジン1の始動の迅速性および円滑性を高めることができる。
【0067】
また、本実施例のエンジン始動装置11の電動発電機12において、凸部24A~24Kの個数は永久磁石21A~21Lの個数よりも1つ少ない個数であり、凸部24Aは、ロータ13の逆回転方向において隣の凸部24Kから60度(360度を永久磁石21A~21Lの個数で除した角度の2倍の角度)離れた位置に配置され、各凸部24B~24Kは、ロータ13の逆回転方向において隣の凸部から30度(360度を永久磁石21A~21Lの個数で除した角度)離れた位置に配置されている。この構成により、ロータ13を回転させるためのクローズドループ制御を電磁ピックアップ32からの検出信号に基づいて高精度に行うことができ、かつ電磁ピックアップ32からの検出信号の出力間隔に基づいて、ロータ13の逆回転時には凸部24Aが基準位置Eを通過したことをマイクロコンピュータ41に正確に認識させることができ、ロータ13の正回転時には凸部24Kが基準位置Eを通過したことマイクロコンピュータ41に正確に認識させることができる。
【0068】
また、各凸部24A~24Kは、永久磁石21A~21Lにおいて互いに隣り合う2つの永久磁石の境界に対向する位置に配置されている。したがって、ロータ13の逆回転時においても正回転時においても、互いに隣り合う2つの永久磁石の境界が基準位置Eを通過したときに、電磁ピックアップ32から検出信号が出力される。よって、ロータ13を逆回転させるためのクローズドループ制御とロータ13を正回転させるためのクローズドループ制御との共通化を図ることができ、電動発電機12の駆動制御を簡素化することができる。
【0069】
また、本実施例のエンジン始動装置11は、凸部24A~24Kおよび電磁ピックアップ32により永久磁石21A~21Lの位置を検出する構成を備えているので、電動発電機12は、永久磁石21A~21Lの位置を検出する手段としてホールセンサを備えていない。したがって、電動発電機12をエンジン1のクランクケース2内のクランクシャフト6に容易に設けることができる。すなわち、従来、ブラシレスモータ等、整流子を持たない電動機は、電動機のロータに設けられた永久磁石の位置(ロータの位置)を検出するためのホールセンサ(ホール素子)を備えている。ホールセンサの耐熱温度はおよそ120度である。電動機をエンジンのクランクケース内のクランクシャフトに取り付けた場合、電動機にエンジンオイルがかかり、または電動機がエンジンオイルに浸かる。エンジンオイルの温度は、エンジンの駆動時には、ホールセンサの耐熱温度である120度を超える。したがって、ホールセンサを備えた電動機をクランクケース内のクランクシャフトに取り付ける場合には、エンジンオイルの熱からホールセンサを保護するための対策を検討しなければならない。これに対し、電動発電機12はホールセンサを備えていないので、このような対策は不要である。また、電磁ピックアップ32の耐熱温度は、エンジン駆動時におけるエンジンオイルの温度よりも十分に高い。それゆえ、電動発電機12をエンジン1のクランクケース2内のクランクシャフト6に容易に設けることができ、また、電動発電機12の近傍に電磁ピックアップ32を容易に設けることができる。
【実施例2】
【0070】
図9は本発明の第2の実施例のエンジン始動装置51を示している。
図4に示す第1の実施例のエンジン始動装置11の電動発電機12においては、永久磁石21A~21Lにおいて互いに隣り合う2つの永久磁石の境界と対向する位置に凸部24A~24Kが配置されている。これに対し、第2の実施例のエンジン始動装置51の電動発電機52においては、
図9に示すように、永久磁石21A~21Lのそれぞれにおいて、第1の円Bの周方向における中央と対向する位置に凸部24A~24Kが配置されている。
【0071】
本実施例においては、ロータ13が逆回転しているとき、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点、または凸部24Aが基準位置Eと対向した時点において6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置が定められている。このような構成の場合、ロータ13が正回転しているときには、凸部24Kが基準位置Eを通過した時点、または凸部24Kが基準位置Eと対向した時点において6つのN極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uと対向する位置に来る。
【0072】
このような構成を有する本発明の第2の実施例のエンジン始動装置51によっても、本発明の第1の実施例のエンジン始動装置11と同様の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0073】
図10は本発明の第3の実施例のエンジン始動装置61を示している。
図4に示す第1の実施例のエンジン始動装置11の電動発電機12において、ロータケース14の周壁部16の外面には凸部24A~凸部24Kが設けられ、これら凸部24A~24Kの形状および大きさはそれぞれ互いに同じである。これに対し、第3の実施例のエンジン始動装置61の電動発電機62においては、ロータケース14の周壁部16の外面に、
図10に示すような凸部64A~64Kが設けられている。
【0074】
凸部64A~64Kの個数は、永久磁石21A~21Lの個数よりも1つ少ない個数、すなわち11個であり、凸部64Aと凸部64Kとの間の角度間隔は、永久磁石21A~21Lの角度間隔の2倍の角度間隔(60度)であり、凸部64A~64Kのそれぞれの角度間隔のうち、凸部64Aと凸部64Kとの間の角度間隔を除く角度間隔は、永久磁石21A~21Lの角度間隔と等しい角度間隔(30度)である。また、各凸部64A~64Kは、永久磁石21A~21Lにおいて互いに隣り合う2つの永久磁石の境界と対向する位置に配置されている。
【0075】
また、凸部64A~64Kにおいて、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kは、形状および大きさがそれぞれ互いに同じである。また、凸部64B、64D、64F、64H、64Jは、形状および大きさがそれぞれ互いに同じである。しかしながら、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kと、凸部64B、64D、64F、64H、64Jとは、形状または大きさがそれぞれ互いに異なる。具体的には、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kの第2の円Cの周方向における長さが、凸部64B、64D、64F、64H、64Jの第2の円Cの周方向における長さよりも長い。例えば、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kの第2の円Cの周方向における長さは、凸部64B、64D、64F、64H、64Jの第2の円Cの周方向における長さのおよそ2倍である。また、長い凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kと、短い凸部64B、64D、64F、64H、64Jとは、第2の円Cの周方向において1つずつ交互に配置されている。
【0076】
また、ロータ13が逆回転しているときに、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kのうちのいずれかが基準位置Eを通過した時点に、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来るように、基準位置Eおよび凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kの配置が定められている。また、このような配置の場合、ロータ13が正回転しているときには、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kのうちのいずれかが基準位置Eを通過した時点に、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来る。
【0077】
凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kと、凸部64B、64D、64F、64H、64Jとは、第2の円Cの周方向における長さがそれぞれ互いに異なるので、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kが基準位置Eを通過したときと、凸部64B、64D、64F、64H、64Jが基準位置Eを通過したときとでは、電磁ピックアップ32から出力される検出信号の波形が異なる。したがって、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づいて、基準位置Eを通過した凸部が、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kであるか、凸部64B、64D、64F、64H、64Jであるかを識別することができる。
【0078】
また、ロータ13が逆回転しているときに、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づいて、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kのうちのいずれかが基準位置Eを通過したことを認識することによって、6つのN極の永久磁石21A、21C、21E、21G、21I、21Kが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを認識することができる。また、ロータ13が正回転しているときには、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づいて、凸部64A、64C、64E、64G、64I、64Kのうちのいずれかが基準位置Eを通過したことを認識することによって、6つのS極の永久磁石21B、21D、21F、21H、21J、21Lが6つのU相のコイル31Uとそれぞれ対向する位置に来たことを認識することができる。
【0079】
このような構成を有する本発明の第3の実施例のエンジン始動装置61によっても、本発明の第1の実施例のエンジン始動装置11と同様の作用効果が得られる。
【0080】
なお、上記第1の実施例では、ロータ13が逆回転しているときに、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点にN極の永久磁石がU相のコイル31Uと対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置を定めたが、ロータ13が逆回転しているときに、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点にS極の永久磁石がU相のコイル31Uと対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置を定めてもよい。また、ロータ13が逆回転しているときに、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点にN極(またはS極)の永久磁石がV相のコイル31Vと対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置を定めてもよいし、ロータ13が逆回転しているときに、凸部24Aが基準位置Eを通過した時点にN極(またはS極)の永久磁石がW相のコイル31Wと対向する位置に来るように基準位置Eおよび凸部24Aの配置を定めてもよい。上記第2および第3の実施例においても同様の変更を行うことができる。
【0081】
また、本発明において、電動発電機のロータに設ける永久磁石の個数は12個に限定されず、電動発電機のコアに設けるコイル(ティース)の個数は18個に限定されない。また、凸部の個数は永久磁石の個数に応じて変更することができる。
【0082】
また、本発明において、電動発電機の中心側にロータを配置し、そのロータの外周側にコアを配置してもよい。この場合には、例えばロータケースを軸方向に長くし、ロータケースの周壁部の外面における複数の凸部の位置をコアの位置と軸方向においてずらすようにする。そして、複数の凸部の回転軌道の外側に当該回転軌道と対向するように電磁ピックアップを配置する。
【0083】
また、エンジン始動処理においてスイングバック制御を行わないようにしてもよい。上記各実施例では、エンジン始動装置11が発電機能を有する電動発電機12を備える場合を例にあげたが、エンジン始動装置が発電機能を有しない電動機を備える構成としてもよい。また、本発明は、アイドリングストップ機能を備えていない車両にも適用することができる。また、本発明は、エンジンを備えた鞍乗型車両以外の車両にも適用することができ、エンジンを備えた車両以外の装置にも適用することができる。
【0084】
また、上記第3の実施例において、凸部の個数を永久磁石の個数と同じとし、複数の凸部をロータケース14の全周に亘ってすべて等しい角度間隔を持って配置してもよい。例えば、永久磁石21A~21Lと同数の12個の凸部をロータケース14の周壁部16の外面に30度間隔で配置してもよい。
【0085】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うエンジン始動装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 エンジン
2 クランクケース(ケース)
6 クランクシャフト(回転シャフト)
11、51、61 エンジン始動装置
12、52、62 電動発電機(電動機)
13 ロータ
14 ロータケース(回転体)
21A~21L 永久磁石
24A~24K、64A~64K 凸部(指標部)
25 ステータ
26 コア
31 コイル
32 電磁ピックアップ
35 駆動制御回路(制御回路)