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特許7581816透析システムの洗浄方法及び透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】透析システムの洗浄方法及び透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20241106BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20241106BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20241106BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61L2/18
A61L101:06
A61L101:36
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020203284
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090780
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 満隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 悦孝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 篤
(72)【発明者】
【氏名】斎尾 英俊
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-351037(JP,A)
【文献】特開2020-178813(JP,A)
【文献】特開2021-142203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61L 2/18
A61L 101/06
A61L 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析システムの洗浄方法であって、
前記透析システムは、
透析装置と、
前記透析装置に供給する透析液又は前記透析液を調製するための液体成分が流れる流路と、
前記流路に洗浄液を供給するための洗浄液供給部と、
前記流路に透析用水を供給するための水供給部と、を備え、
前記洗浄液供給部は、前記流路に酸性の洗浄液(a)を供給するための酸供給部と、前記流路に次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液(b)を供給するためのアルカリ供給部とを有し、
前記水供給部は、前記透析用水を加熱するためのヒータを備え、
前記洗浄方法は、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)と前記アルカリ供給部から供給された前記洗浄液(b)とを混合した洗浄液(a+b)によって、前記透析装置内を洗浄する第1洗浄工程を含み、
前記第1洗浄工程は、前記洗浄液(a+b)の温度を30℃以上40℃以下に調整して行い、
前記洗浄液(a+b)は、前記温度となるように、前記洗浄液(a)と、前記洗浄液(b)と、前記水供給部から供給された加温された前記透析用水とを混合することによって調製される、透析システムの洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄方法は、さらに、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)によって、前記透析装置内を洗浄する第2洗浄工程を含む、請求項1に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項3】
前記液体成分は、炭水素ナトリウムを含む原液を含み、
前記透析システムは、さらに、前記原液を供給するための原液供給部を備え、
前記洗浄方法は、さらに、前記第2洗浄工程中及び前記第2洗浄工程後に、使用済みの前記洗浄液(a)に前記原液供給部から供給された前記原液を添加して排液する工程を含む、請求項2に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄方法は、さらに、前記アルカリ供給部から供給された前記洗浄液(b)によって、前記透析装置内を洗浄する第3洗浄工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄方法は、さらに、前記第3洗浄工程中及び前記第3洗浄工程後に、使用済みの前記洗浄液(b)に前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)を添加して排液する工程を含む、請求項4に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄方法は、
さらに、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)によって、前記透析装置内を洗浄する第2洗浄工程を含み、
前記第2洗浄工程、前記第3洗浄工程、及び前記第1洗浄工程をこの順に行う、請求項4又は5に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄液(a+b)のpHは5以上6.5以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄液(a)は酢酸を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項9】
前記液体成分は、炭酸水素ナトリウムを含む原液を含み、
前記透析システムは、さらに、前記原液を供給するための原液供給部を備え、
前記第1洗浄工程の終了後、使用済みの前記洗浄液(a+b)に、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)、又は、前記原液供給部から供給された前記原液を添加して排液する工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の透析システムの洗浄方法。
【請求項10】
透析装置と、前記透析装置に供給する透析液又は前記透析液を調製するための液体成分が流れる流路と、前記流路に洗浄液を供給するための洗浄液供給部と、前記流路に透析用水を供給するための水供給部と、を備える透析システムであって、
前記洗浄液供給部は、前記流路に酸性の洗浄液(a)を供給するための酸供給部、及び、前記流路に次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液(b)を供給するためのアルカリ供給部を備え、
前記水供給部は、前記透析用水を加熱するためのヒータを備え、
前記透析システムは、前記洗浄液(a)と前記洗浄液(b)と、前記水供給部から供給された加温された前記透析用水とを混合して、温度30℃以上40℃以下の洗浄液(a+b)を調製するための第1混合部を備える、透析システム。
【請求項11】
前記液体成分は、炭水素ナトリウムを含む原液を含み、
さらに、前記原液を供給するための原液供給部、及び、
前記透析装置内を洗浄した使用済みの前記洗浄液(a)と、前記原液供給部から供給された前記原液とを混合するための第2混合部を備える、請求項10に記載の透析システム。
【請求項12】
さらに、前記透析装置内を洗浄した使用済みの前記洗浄液(b)と、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)とを混合するための第3混合部を備える、請求項10又は11に記載の透析システム。
【請求項13】
前記洗浄液(a)は酢酸を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析システムの洗浄方法及び透析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析を行う透析システムでは、配管等の透析装置内の汚れを除去し消毒するために、酢酸等による酸洗浄、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(以下、「NaOCl水溶液」ということがある。)によるアルカリ洗浄を行うことが知られている。
【0003】
NaOCl水溶液では、次亜塩素酸(HClO)及び水酸化ナトリウム(NaOH)が解離型(イオン型)として存在している。次亜塩素酸は、NaOCl水溶液のpHがアルカリ性側に傾くと、次亜塩素酸イオン(OCl)の存在割合が多くなり、酸性側に傾くと次亜塩素酸(HClO)の存在割合が多くなることが知られている。
【0004】
NaOCl水溶液に含まれる次亜塩素酸イオン及び次亜塩素酸は、それぞれ異なる特性を有し、次亜塩素酸イオンは有機物の除去(洗浄)に寄与し、次亜塩素酸は消毒に寄与する。そのため、透析装置内の洗浄を行う際にアルカリ性のNaOCl水溶液を用いると、当該NaOCl水溶液中に存在する次亜塩素酸イオンの割合が多いため、良好な消毒効果を期待することができない。このことから、アルカリ性のNaOCl水溶液に酢酸等の酸を添加して、消毒効果を強化することが知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-182325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の透析システムでは、アルカリ性のNaOCl水溶液を用いて透析装置内の汚れを除去しているが、透析システムでNaOCl水溶液中の次亜塩素酸の割合を増やした洗浄液を調製し、これを用いて透析装置内の消毒を行うことは想定されていない。
【0007】
本発明は、次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液を用いて透析システムに備えられた透析装置内の洗浄を行う場合に、良好な消毒効果を得ることができる透析システムの洗浄方法及び透析システムの提供を目的とする。また、本発明の付随的な目的は、透析排水(使用済みの洗浄液等)を下水道法並びに水質汚濁防止法(排水基準)を満たすように排液のpHを調整することができる透析システムの洗浄方法及び透析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の透析システムの洗浄方法及び透析システムを提供する。
〔1〕 透析システムの洗浄方法であって、
前記透析システムは、
透析装置と、
前記透析装置に供給する透析液又は前記透析液を調製するための液体成分が流れる流路と、
前記流路に洗浄液を供給するための洗浄液供給部と、を備え、
前記洗浄液供給部は、前記流路に酸性の洗浄液(a)を供給するための酸供給部と前記流路に次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液(b)を供給するためのアルカリ供給部とを有し、
前記洗浄方法は、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)と、前記アルカリ供給部から供給された前記洗浄液(b)とを混合した洗浄液(a+b)によって、前記透析装置内を洗浄する第1洗浄工程を含む、透析システムの洗浄方法。
〔2〕 前記洗浄方法は、さらに、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)によって、前記透析装置内を洗浄する第2洗浄工程を含む。
〔3〕 前記液体成分は、炭素水素ナトリウムを含む原液を含み、
前記透析システムは、さらに、前記原液を供給するための原液供給部を備え、
前記洗浄方法は、さらに、前記第2洗浄工程中及び前記第2洗浄工程後に、使用済みの前記洗浄液(a)に前記原液供給部から供給された前記原液を添加して排液する工程を含む。
〔4〕 前記洗浄方法は、さらに、前記アルカリ供給部から供給された前記洗浄液(b)によって、前記透析装置内を洗浄する第3洗浄工程を含む。
〔5〕 前記洗浄方法は、さらに、前記第3洗浄工程中及び前記第3洗浄工程後に、使用済みの前記洗浄液(b)に前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)を添加して排液する工程を含む。
〔6〕 前記洗浄方法は、
さらに、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)によって、前記透析装置内を洗浄する第2洗浄工程を含み、
前記第2洗浄工程、前記第3洗浄工程、及び前記第1洗浄工程をこの順に行う。
〔7〕 前記洗浄液(a+b)のpHは5以上6.5以下である。
〔8〕 前記洗浄液(a)は酢酸を含む。
〔9〕 前記第1洗浄工程は、前記洗浄液(a+b)の温度を25℃以上40℃以下に調整して行う。
〔10〕 透析装置と、前記透析装置に供給する透析液又は前記透析液を調製するための液体成分が流れる流路と、前記流路に洗浄液を供給するための洗浄液供給部と、を備える透析システムであって、
前記洗浄液供給部は、前記流路に酸性の洗浄液(a)を供給するための酸供給部、及び、前記流路に次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液(b)を供給するためのアルカリ供給部を備え、
前記透析システムは、前記洗浄液(a)と前記洗浄液(b)とを混合して洗浄液(a+b)を調製するための第1混合部を備える、透析システム。
〔11〕 前記液体成分は、炭素水素ナトリウムを含む原液を含み、
さらに、前記原液を供給するための原液供給部、及び、
前記透析装置内を洗浄した使用済みの前記洗浄液(a)と、前記原液供給部から供給された前記原液とを混合するための第2混合部を備える。
〔12〕 さらに、前記透析装置内を洗浄した使用済みの前記洗浄液(b)と、前記酸供給部から供給された前記洗浄液(a)とを混合するための第3混合部を備える。
〔13〕 前記洗浄液(a)は酢酸を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液を用いて透析システムに備えられた透析装置内の洗浄を行う場合に、良好な消毒効果を得ることができる。また、本発明の付随的な構成によれば、排水基準を満たすように排液のpHを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の透析システムの一例を説明する図である。
図2】本発明の透析システムで行われる第1洗浄工程の一例を説明する図である。
図3】本発明の透析システムで行われる第2洗浄+排液pH調整工程の一例を説明する図である。
図4】本発明の透析システムで行われる第3洗浄+排液pH調整工程の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部材については同一の符号を付し、その詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
(透析システム)
図1は、本実施形態の透析システムの一例を示す説明図である。本実施形態の透析システム1は、図1に示すように、透析装置、透析装置に供給する透析液又は透析液を調製するための液体成分が流れる流路2、及び、流路2に洗浄液(後述する酸性の洗浄液(a)及びアルカリ性の洗浄液(b))を供給するための洗浄液供給部6を備える。透析システム1はさらに、酸性の洗浄液(a)とアルカリ性の洗浄液(b)とを混合して後述する洗浄液(a+b)を調製するための第1混合部6mを備える。透析システム1は、通常さらに、透析用水を流路2に供給するための水供給部3、流路2に透析原液であるA原液及びB原液をそれぞれ供給するためのA原液供給部4及びB原液供給部5を備えることができる。
【0013】
透析装置は、血液透析を行うための透析膜(ダイアライザー)や配管等を備え、透析装置に接続された流路2から透析液が供給される。透析システムに備えられる透析装置は、1台であってもよいが、通常2台以上である。透析装置は、流路2を流れる透析液及び洗浄液(a),(b),(a+b)が、流路2から供給されるようになっている。
【0014】
流路2は、透析装置で用いられる透析液又は透析液を調製するための液体成分が流れる配管2a~2f,2h、透析用水とB原液とを混合して混合液を得るためのチャンバ21、この混合液とA原液とを混合して透析液を得るためのチャンバ22、透析装置に供給するための透析液を貯留するタンク23等を備えることができる。液体成分としては、透析用水、透析原液(A原液、B原液)、及びこれらが混合された液体が挙げられる。流路2は、水供給部3からチャンバ21に透析用水を供給するための配管2a、A原液供給部4からチャンバ22にA原液を供給するための配管2b、B原液供給部5からチャンバ21にB原液を供給するための配管2c、透析用水とB液との混合液をチャンバ22に供給するための配管2d、透析液をタンク23に供給するための配管2e、透析液をタンク23から透析装置に供給するための配管2f、タンク23から取り出された透析液をタンク23に戻す配管2h等を備えることができる。流路2には、流路2を洗浄するための洗浄液が流れることもある。
【0015】
洗浄液供給部6は、流路2に洗浄液を供給するための装置であり、流路2に酸性の洗浄液(a)を供給するための酸供給部6aと、流路2に次亜塩素酸ナトリウム(以下、「NaOCl」ということがある。)を含むアルカリ性の洗浄液(b)を供給するためのアルカリ供給部6bとを備えることができる。
【0016】
酸性の洗浄液(a)は、主として透析装置内及び流路2内に堆積した炭酸カルシウム等のスケールを除去する目的で用いられる。洗浄液(a)に含まれる酸性成分として例えば、酢酸、過酢酸、又はクエン酸を挙げることができ、洗浄液(a)は酢酸を含むことが好ましく、酢酸水溶液であることが好ましい。洗浄液(a)に含まれる酸成分の濃度は、例えば0.5重量%以上2.0重量%以下である。洗浄液(a)のpHは、例えば2.6以上3.0以下である。
【0017】
洗浄液(b)は、主として透析装置内及び流路2内に付着した有機物を除去する目的で用いられる。アルカリ性の洗浄液(b)中では、有機物の除去に寄与する次亜塩素酸イオン(OCl)の存在割合が多くなる。そのため、アルカリ性の洗浄液(b)を用いることによって透析装置内及び流路2内の有機物を除去することができる。洗浄液(b)は、NaOCl水溶液であることが好ましい。洗浄液(b)含まれるNaOClの濃度は、例えば100mg/L以上1000mg/L以下である。洗浄液(b)のpHは、例えば9.0以上11.0以下であり、9.0以上10.0以下であってもよい。洗浄液(b)のpHを上記の範囲とすることにより、洗浄液(b)中の次亜塩素酸イオンの存在割合を増やすことができる。
【0018】
洗浄液(a+b)は、主として透析装置内及び流路2内を消毒する目的で用いられるが、透析装置内及び流路2内に付着した有機物を除去する目的で用いられてもよい。洗浄液(b)は、アルカリ性側の条件下では次亜塩素酸イオン(OCl)の存在割合が多くなるが、酸性側の条件下では、消毒への寄与が高い次亜塩素酸(HClO)として存在する割合が多くなる。そのため、アルカリ性の洗浄液(b)に酸性の洗浄液(a)を添加して、洗浄液(b)よりも酸性側に傾いた洗浄液(a+b)を調製することにより、洗浄液(a+b)中の次亜塩素酸の存在割合を増加させて、透析装置内及び流路2内の消毒を行うことができる。消毒を行うための洗浄液(a+b)のpHは、例えば5以上6.5以下とすることができ、5.3以上としてもよく、5.5以上としてもよく、また、6.3以下としてもよく、6.0以下としてもよい。洗浄液(a+b)のpHを上記の範囲とすることにより、洗浄液(a+b)中の次亜塩素酸の存在割合を増やすことができるため、消毒効果を高めることができる。また、使用済みの洗浄液(a+b)を下水道に排出する際に、排水基準を満たすpHに調整しやすくなる。
【0019】
酸供給部6aは、流路2に洗浄液(a)を供給するための装置であり、例えば洗浄液(a)の貯留部(図示せず)、流路2に洗浄液(a)を供給するためのポンプ6f及び配管6c、並びに、ソレノイドバルブ等のバルブ6d,6e等を備えることができる。アルカリ供給部6bは、流路2に洗浄液(b)を供給するための装置であり、例えば洗浄液(b)の貯留部(図示せず)、流路2に洗浄液(b)を供給するためのポンプ6i及び配管6g、並びに、ソレノイドバルブ等のバルブ6h等を備えることができる。
【0020】
第1混合部6mでは、透析装置内及び流路2内の消毒を行うために洗浄液(a+b)を調製することができ、洗浄液(a+b)のpHは例えば上記した範囲に調製される。上記したように、NaOClを含む洗浄液(b)はアルカリ性であり、次亜塩素酸イオンの存在割合が多いため、洗浄液(b)を用いて透析装置内及び流路2内を洗浄しても良好な消毒効果が得られにくい。そこで、アルカリ性の洗浄液(b)に酸性の洗浄液(a)を添加して酸性側に傾いた洗浄液(a+b)を調製し、次亜塩素酸の存在割合を増やした洗浄液(a+b)によって透析装置内及び流路2内を洗浄することにより、透析装置内及び流路2内の消毒効果を高めることが期待できる。第1混合部6mは、例えば、水供給部3から供給される透析用水が流れる配管2aに、洗浄液(a)及び洗浄液(b)を供給するための配管を設け(図1中、配管2aの(x)及び(y)で示す矢印)、透析用水、洗浄液(a)及び洗浄液(b)が混合される位置の配管の合流部分であってもよく、この配管の合流部分の下流に設けられたチャンバ又はタンクであってもよい。第1混合部6m又はその下流には、洗浄液(a+b)のpHを計測するためのpH測定器が設けられていてもよい。
【0021】
第1混合部6mの下流側に設けられる配管は、洗浄液(a+b)を流路2に供給するための配管となるが、この配管は、透析用水を流路2に供給するための配管2aの一部を使用することができる。
【0022】
水供給部3は、流路2に透析用水を供給するための装置であり、水供給部3から供給された透析用水は、配管2aを経てチャンバ21に供給可能となっている。水供給部3は、例えば透析用水の貯留部(図示せず)、及び、ソレノイドバルブやモータバルブ等(図示せず)を備えることができる。透析用水として、水道水の濾過及び/又はイオン交換等を行った後に、逆浸透膜によって精製したRO水を用いる場合は、水供給部3は、濾過やイオン交換を行うための濾過材、逆浸透膜等を備えていてもよく、透析用水を加熱するためのヒータを備えていてもよい。透析用水は、透析液を調製するために用いられ、また、加温した透析用水を用いて洗浄液(a+b)を加温してもよい。
【0023】
A原液供給部4は、流路2にA原液を供給するための装置であり、A原液供給部4から供給されたA原液は、配管2bを経てチャンバ22に供給可能となっている。A原液供給部4は、例えばA原液の貯留部(図示せず)、ソレノイドバルブ等のバルブ4a、及び、A原液を送り出すためのポンプ4d等を備えることができる。A原液供給部4は、流路2に供給するA原液を清浄化するためのエンドトキシン捕捉フィルタ(以下、「ETRF」ということがある。)4b、ETRF4bからの排液の排出を制御するためのソレノイドバルブ等のバルブ4cを備えていてもよい。A原液は通常、塩化ナトリウムを主成分として含む水溶液であり、さらに塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、及びブドウ糖等を含んでいてもよい。
【0024】
B原液供給部5(原液供給部)は、流路2に炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を含むB原液(原液)を供給するための装置である。B原液供給部5から供給されたB原液は、配管2cを経てチャンバ21に供給可能となっている。B原液供給部5は、例えばB原液の貯留部(図示せず)、ソレノイドバルブ等のバルブ5a、及び、B原液を送り出すためのポンプ5d等を備えることができる。B原液供給部5は、流路2に供給するB原液を清浄化するためのETRF5b、ETRF5bからの排液の排出を制御するためのソレノイドバルブ等のバルブ5cを備えていてもよい。B原液は通常、炭酸水素ナトリウムの水溶液である。
【0025】
チャンバ21は、透析用水とB原液とを混合するために、透析用水及びB原液が流れる配管2a,2cに接続されており、透析用水とB原液との混合液をチャンバ22に供給するために、配管2dを介してチャンバ22にも接続されている。チャンバ22は、配管2eを介してタンク23に接続されている。タンク23には、タンク23に貯留された透析液を透析装置に供給するためのポンプ2g、タンク23から取り出され透析装置に供給されなかった透析液をタンク23に戻す配管2hに接続されている。配管2fには、透析装置への透析液及び洗浄液(a),(b),(a+b)の供給を切替えるためのモータバルブ等のバルブ2iが設けられている。
【0026】
透析システム1は、さらに、流路2を洗浄液で洗浄する際に用いるソレノイドバルブ又はモータバルブ等のバルブ9a~9f、流路2を流れる透析液や透析液を調製するための液体成分、洗浄液等を必要に応じて排出するために用いる配管8e及びモータバルブ等のバルブ9f,9i、使用済みの洗浄液(a)にB原液供給部5から供給されるB原液を添加するために用いる配管8g及びソレノイドバルブ等のバルブ9g,9h、透析装置内及び/又は流路2内を洗浄した使用済みの洗浄液(a)とB原液とを混合するための第2混合部8m、使用済みの洗浄液(b)に酸供給部6aから供給される洗浄液(a)を添加するために用いる配管8f、並びに、透析装置内及び/又は流路2内を洗浄した使用済みの洗浄液(b)と洗浄液(a)とを混合するための第3混合部8nを備えることができる。
【0027】
第2混合部8m及び第3混合部8nでは、透析装置内及び/又は流路2内を洗浄した使用済みの洗浄液(a),(b),(a+b)を下水道に排液するにあたり、排水基準を満たすように使用済みの洗浄液(a),(b),(a+b)のpHを調整する。具体的には、使用済みの洗浄液(a),(b),(a+b)のpHが例えば5.8以上8.6以下の範囲内となるように調整する。図1に示す透析システムでは、第2混合部8mと第3混合部8nとは同じ位置に設けられている場合を示しているが、異なる位置に設けられていてもよい。第2混合部8mは、透析装置からの使用済みの洗浄液(a)が流れる配管と配管8gとの合流部分であってもよく、当該合流部分又はその下流に設けられたチャンバ又はタンクであってもよい。第3混合部8nは、透析装置からの使用済みの洗浄液(b)が流れる配管と配管8fとの合流部分であってもよく、当該合流部分又はその下流に設けられたチャンバ又はタンクであってもよい。第2混合部8m及び第3混合部8n、又はその下流には、下水道へ排出される排液のpHを測定するためのpH測定器が設けられていてもよい。
【0028】
上記したポンプ2g,4d,5d,6f,6iとしては、公知のポンプを用いることができ、例えば往復ポンプ及び回転ポンプ等の容積式ポンプであってもよく、遠心式ポンプ及びプロペラポンプ等の非容積式ポンプであってもよい。バルブ2i,4a,4c,5a,5c,6d,6e,6h,9a~9iとしては、公知のバルブを用いることができ、例えばモータバルブ及びソレノイドバルブ等を用いることができる。
【0029】
(透析システムによる透析液の供給)
透析システム1により透析装置に透析液の供給を行う際には、バルブ4a,4c,5a,5cを開き、その他のバルブは閉じた状態とする。これにより、配管2aに透析用水を供給するとともに、ポンプ4dを作動して配管2bにA原液を供給し、ポンプ5dを作動して配管2cにB原液を供給する。配管2a,2cに供給された透析用水及びB原液をチャンバ21で混合することにより混合液を調製し、配管2dに送り出された混合液と配管2bに送り出されたA原液とをチャンバ22で混合することにより透析液を調製する。チャンバ22で調製された透析液は、配管2eを経てタンク23に貯留され、バルブ2iを開いてポンプ2gを作動することにより透析装置に供給され、透析装置に供給されなかった透析液は配管2hを介してタンク23に戻る。
【0030】
(透析システムの洗浄方法)
本実施形態の透析システムの洗浄方法は、例えば上記した透析システム1において実施することができる。透析システム1の洗浄方法は、透析システム1による透析装置への透析液の供給後に行うことができる。透析システム1の洗浄方法は、酸供給部6aから供給された洗浄液(a)と、アルカリ供給部6bから供給された洗浄液(b)とを混合した洗浄液(a+b)によって、透析装置内を洗浄する第1洗浄工程を含む。第1洗浄工程は、流路2内を洗浄することもできる。以下では、第1洗浄工程により、透析装置内及び流路2を洗浄する場合について説明する。
【0031】
第1洗浄工程は、透析装置内及び流路2内を消毒する、又は、透析装置内及び流路2内に付着した有機物を除去するために行うことができる。第1洗浄工程において透析装置内及び流路2内を消毒する場合には、消毒効果を向上させるために加温した洗浄液(a+b)を用いてもよい。この場合、洗浄液(a+b)の温度は25℃以上40℃以下であることが好ましく、30℃以上であってもよく、35℃以上であってもよく、39℃以下であってもよい。加温した洗浄液(a+b)を調製する方法としては特に限定されないが、例えば、水供給部3から供給される透析用水を加温しておき、この加温された透析用水と洗浄液(a)及び(b)とを混合することによって調製することができる。透析用水の加温は、例えば、水供給部3に備えられたヒータによって行うことができる。
【0032】
透析システム1の洗浄方法は、さらに、酸供給部6aから供給された洗浄液(a)によって、透析装置内を洗浄する第2洗浄工程、及び/又は、アルカリ供給部6bから供給された洗浄液(b)によって、透析装置内を洗浄する第3洗浄工程を含んでいてもよい。第2洗浄工程及び第3洗浄工程は、流路2内を洗浄することもできる。以下では、第2洗浄工程及び第3洗浄工程により、透析装置内及び流路2を洗浄する場合について説明する。透析システム1の洗浄方法が第1~第3洗浄工程を含む場合、その順序は特に限定されないが、第2洗浄工程、第3洗浄工程、及び第1洗浄工程をこの順に行うことが好ましい。
【0033】
第2洗浄工程で使用された使用済みの洗浄液(a)、及び、第3洗浄工程で使用された使用済みの洗浄液(b)は、通常、それぞれ下水道への排水基準を満たすpH(例えば、5.8以上8.6以下)に調整した上で下水道に排液される。そのため、透析システム1の洗浄方法は、第2洗浄工程を行う場合には、第2洗浄工程中及び第2洗浄工程後に、使用済みの洗浄液(a)にB原液供給部5から供給されたB原液を添加して排液のpHを調整する工程(以下、「第2洗浄+排液pH調整工程」ということがある。)を含むことが好ましく、第3洗浄工程を行う場合には、第3洗浄工程中及び第3洗浄工程後に、使用済みの洗浄液(b)に酸供給部6aから供給された洗浄液(a)を添加して排液のpHを調整する工程(以下、「第3洗浄+排液pH調整工程」ということがある。)を含むことが好ましい。
【0034】
以下、透析システム1の洗浄方法の一例について、第2洗浄工程、第2洗浄+排液pH調整工程、第3洗浄工程、第3洗浄+排液pH調整工程、及び第1洗浄工程をこの順に行い、第1洗浄工程では、透析装置内及び流路2内の消毒を行う場合を例に挙げて説明する。
【0035】
本実施形態の透析システム1の洗浄方法では、透析装置への透析液の供給を行った後に第2洗浄工程を行う。第2洗浄工程では、A原液供給部4、B原液供給部5、アルカリ供給部6bのそれぞれから、A原液、及びB原液が流路2に供給されないように、バルブ4a,4c,5a,5cを閉じる。次に、洗浄液(a)が流路2に供給されるように、バルブ6d,6eを開け、バルブ9c,9e,9h,9gを閉じた状態とする。このとき、バルブ9fは閉じた状態とし、タンク23から洗浄液(a)が下水道に排液されないようにする。次に、ポンプ6fを作動して配管6cに洗浄液(a)を供給することにより流路2に洗浄液(a)を供給して、透析装置内及び流路2内の炭酸カルシウム等のスケールを除去するための洗浄を行う。
【0036】
図3は、本実施形態の透析システムで行われる第2洗浄+排液pH調整工程の一例を説明する図である。図3では、第2洗浄+排液pH調整工程において液体(水、B原液、洗浄液等)が流れる配管を塗りつぶして示している。第2洗浄+排液pH調整工程では、第2洗浄工程中及び第2洗浄工程後にタンク23に貯まった液を排液する際に、排液のpHを調整する。第2洗浄+排液pH調整工程では、バルブ9hを閉じ、バルブ5a,5cを開いた状態で、ポンプ5dを作動する。そして、図3に示すように、透析装置内及び流路2内に洗浄液(a)供給しながら、B原液供給部から配管8gにB原液を供給する。このとき、第2混合部8mにおいて、透析装置内及び流路2内を洗浄した使用済みの洗浄液(a)とB原液とが混合されるように、透析装置からの使用済みの洗浄液(a)を排出するタイミング及びバルブ9f,9gを開閉するタイミング等を調整することにより、使用済みの洗浄液(a)をB原液によって中和し、排水基準を満たすpHに調整された排液を下水道に排出することができる。
【0037】
第2混合部8mにおいて、排液(使用済みの洗浄液(a)とB原液との混合液)のpHは、例えば、第2混合部8mに設けられたpH測定器で測定しながら、使用済みの洗浄液(a)及びB原液の供給量を調整することによって調整してもよい。あるいは、透析装置内の液体を排出するための排液部分等及び/又はバルブ9f近傍に設けたpH測定器で測定された使用済みの洗浄液(a)のpH及び予め測定されたB原液のpHに基づいて、透析装置からの使用済みの洗浄液(a)の供給量(流量)及びB原液供給部から供給されるB原液の供給量(流量)を調整することにより、上記排液のpHを調整するようにしてもよい。
【0038】
本実施形態の透析システム1の洗浄方法では、第2洗浄+排液pH調整工程の終了後に第3洗浄工程を行う。第3洗浄工程では、まずバルブ5a,5c,9g,9fを閉じる。また、洗浄液(b)が流路2及び透析装置に供給されるように、バルブ6hを開け、バルブ9c,9d,9eを閉じた状態とする。このとき、バルブ9fは閉じた状態とし、タンク23から洗浄液(b)が下水道に排液されないようにする。次に、ポンプ6iを作動して配管6gに洗浄液(b)を供給することにより流路2に洗浄液(b)を供給して、透析装置内及び流路2内に付着した有機物等を除去するための洗浄を行う。
【0039】
図4は、本実施形態の透析システムで行われる第3洗浄+排液pH調整工程の一例を説明する図である。図4では、第3洗浄+排液pH調整工程において液体(水、洗浄液等)が流れる配管を塗りつぶして示している。第3洗浄+排液pH調整工程では、第3洗浄工程中及び第3洗浄工程後にタンク23に貯まった液を排液する際に、排液のpHを調整する。第3洗浄+排液pH調整工程では、バルブ6e,9eを閉じ、バルブ6dを開いた状態で、ポンプ6fを作動する。これにより、図4に示すように、透析装置内及び流路2内に洗浄液(b)供給しながら、酸供給部6aから配管8fに洗浄液(a)が供給される。このとき、第3混合部8nにおいて、透析装置内及び流路2内を洗浄した使用済みの洗浄液(b)と洗浄液(a)とが混合されるように、透析装置から使用済みの洗浄液(b)を排出するタイミング及びバルブ9f,9i等を開閉するタイミング等を調整することにより、使用済みの洗浄液(b)を洗浄液(a)によって中和し、排水基準を満たすpHに調整された排液を下水道に排出することができる。
【0040】
第3混合部8nにおいて、排液(使用済みの洗浄液(b)と洗浄液(a)との混合液)のpHは、例えば、第3混合部8nに設けられたpH測定器で測定しながら、使用済みの洗浄液(b)及び洗浄液(a)の供給量を調整することによって調整してもよい。あるいは、透析装置内の液体を排出するための排液部分等及び/又はバルブ9f近傍に設けたpH測定器で測定された使用済みの洗浄液(b)のpH及び予め測定された洗浄液(a)のpHに基づいて、透析装置からの使用済みの洗浄液(b)の供給量(流量)及び酸供給部6aから供給される洗浄液(a)の供給量(流量)を調整することにより、上記排液のpHを調整するようにしてもよい。
【0041】
図2は、本実施形態の透析システムで行われる第1洗浄工程の一例を説明する図である。図2では、第1洗浄工程において液体(水、洗浄液等)が流れる配管を塗りつぶして示している。本実施形態の透析システム1の洗浄方法では、第3洗浄+排液pH調整工程の終了後に第1洗浄工程を行う。第1洗浄工程では、バルブ6d,6e,6hを開け、バルブ9c,9d,9e,9f,9g,9h,9iを閉じた状態とする。次に、水供給部3から配管2aに透析用水を供給し、ポンプ6f,6iを作動して配管6cに洗浄液(a)を供給し、配管6gに洗浄液(b)を供給する。これにより、図2に示すように、第1混合部6mにおいて、透析用水に、洗浄液(a)及び洗浄液(b)を混合して、良好な消毒効果が発揮できるpHに調整した洗浄液(a+b)を調製し、流路2及び透析装置に洗浄液(a+b)を供給する。このとき、水供給部3に設けられたヒータで透析用水を加温し、水供給部3から加温された透析用水と、洗浄液(a)及び洗浄液(b)とを混合することにより、例えば温度25℃~40℃に加温した洗浄液(a+b)を調製し、消毒効果を向上させるようにしてもよい。これにより、透析装置内及び流路2内の消毒を行うことができる。
【0042】
第1混合部6mにおいて、洗浄液(a+b)のpHは、例えば、第1混合部6mに設けられたpH測定器で測定しながら、洗浄液(a)及び洗浄液(b)の供給量(流量)を調整することによって調整してもよい。あるいは、予め測定された洗浄液(a)及び洗浄液(b)に基づいて、酸供給部6aから供給される洗浄液(a)の供給量(流量)及びアルカリ供給部6bから供給される洗浄液(b)の供給量(流量)を調整することにより、洗浄液(a+b)のpHを調整するようにしてもよい。
【0043】
第1洗浄工程の終了後、使用済みの洗浄液(a+b)を下水道に排液する。使用済みの洗浄液(a+b)のpHが排水基準を満たさない場合は、上記で説明したように、酸供給部6aから洗浄液(a)を供給する、又は、B原液供給部5からB原液を供給することにより、使用済みの洗浄液(a+b)のpHを排水基準を満たすpHに調整して排出してもよい。
【0044】
このように、本実施形態の透析システム1の洗浄方法では、洗浄液(a)を添加することによって、洗浄液(b)に含まれる次亜塩素酸イオン及び次亜塩素酸の存在割合を調整した洗浄液(a+b)を調製し、この洗浄液(a+b)を用いて透析装置内及び流路2内を洗浄することができる。洗浄液(a+b)の調製にあたり、透析システム1に備えられている洗浄液(a)及び洗浄液(b)を用いることができるため、透析システム1の外部に、洗浄液(a)及び洗浄液(b)を供給するための装置、洗浄液(a+b)を調製して供給するための装置等を設ける必要がない。また、水供給部3から供給される透析用水を加温しておくことにより、加温した洗浄液(a+b)を調製することができるため、洗浄液(a+b)による消毒効果をより一層高めて透析装置内及び流路2内を洗浄することができる。これにより、透析システム1に備えられた装置を用いて、透析システム1の良好な消毒を行うことができる。
【0045】
さらに、透析装置内及び流路2内の洗浄に用いた使用済みの洗浄液(a)を下水道に排液する際にも、透析システム1に備えられたB原液を用いて、使用済みの洗浄液(a)のpHを排水基準を満たすように調整することができる。同様に、透析装置内及び流路2内の洗浄に用いた使用済みの洗浄液(b)を下水道に排液する際にも、透析システム1に備えられた洗浄液(a)を用いて、使用済みの洗浄液(b)のpHを排水基準を満たすように調整することができる。そのため、使用済みの洗浄液(a),(b)を下水道に排出する際に、透析システム1の外部にこれらのpHを調整するための成分を供給するための装置等を設ける必要がない。
【0046】
上記した実施形態では、透析装置内及び流路2内を洗浄する洗浄液として、洗浄液(a),(b),(a+b)を用いる場合について説明したが、洗浄液としてこれら以外のその他の洗浄液を使用することもできる。その他の洗浄液を使用して透析装置内及び流路2内の洗浄を行う場合、洗浄液供給部6は必要に応じてその他の洗浄液を供給する供給部を備えていてもよい。
【0047】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 透析システム、2 流路、2a~2f,2h 配管、2g ポンプ、2i バルブ、3 水供給部、4 A原液供給部、4a,4c バルブ、4b エンドトキシン捕捉フィルタ、4d ポンプ、5 B原液供給部、5a,5c バルブ、5b エンドトキシン捕捉フィルタ、5d ポンプ、6 洗浄液供給部、6a 酸供給部、6b アルカリ供給部、6c,6g 配管、6d,6e,6h バルブ、6f,6i ポンプ、6m 第1混合部、8e~8g 配管、8m 第2混合部、8n 第3混合部、9a~9i バルブ、21,22 チャンバ、23 タンク。
図1
図2
図3
図4