(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】水分検知タグ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01N27/04 B
(21)【出願番号】P 2020205020
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124657(JP,A)
【文献】実開昭50-087994(JP,U)
【文献】特開2019-015589(JP,A)
【文献】特開2019-164050(JP,A)
【文献】特開2017-150888(JP,A)
【文献】特開2009-049763(JP,A)
【文献】実開昭57-102164(JP,U)
【文献】実開昭60-074034(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知領域に取り付けられ、前記被検知領域における水分の発生を検知する水分検知タグであって、
ベース基材と、
前記ベース基材に設けられたアンテナ及び2本の検知用配線と、
前記アンテナ及び前記2本の検知用配線に接続されて前記ベース基材に設けられ、前記2本の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を前記アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記2本の検知用配線は、前記ベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられて
おり、
前記ベース基材は、
当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記被検知領域に対向して当接する取付部と、
前記取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記取付部から突出した状態となる突出部とを有し、
前記アンテナ及び検出手段は、前記突出部に設けられ、
前記2本の検知用配線は、少なくとも一部が前記取付部に設けられている、水分検知タグ。
【請求項2】
請求項
1に記載の水分検知タグにおいて、
前記突出部は、二つ折り可能に構成され、
前記取付部は、前記突出部の前記二つ折りされた2つの領域のそれぞれに前記折り部を介して連接し、
前記ベース基材は、少なくとも前記突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されている、水分検知タグ。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の水分検知タグにおいて、
耐水性を具備し、前記アンテナ及び検出手段を覆うように前記ベース基材上に積層された保護層を有する、水分検知タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知領域に取り付けられ、被検知領域にて水分が発生した場合にその旨を検知する水分検知タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マンション等の集合住宅や一般的なビル等の建物においては、空調等に用いられる配管が天井裏や壁間に配設されており、この配管を用いて水等の流体の供給や排出が行われている。このような配管は、上述したように天井裏や壁間に配設されるため、建物の構造に応じてジョイント等の接合部材を用いて繋ぎ合わされることになる。ところが、このジョイント等による接合部分においては、シリコン等によってシーリングされているものの、シーリングが不完全な場合、漏水が生じる虞れがある。また、キッチンや洗面所等の流し台の下においても、流し台につながれた配管から漏水が生じる虞がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、ベース部材上に一対の導電パターンを一方向に延びるように形成しておき、水分が発生した場合にその水分によって一対の導電パターン間を短絡させ、一対の導電パターン間が絶縁状態であるか導通状態であるかをアンテナを介して読み出すことで水分の発生を検知する水分検知センサが開示されている。この技術を用いることで、上述したような漏水を検知することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたものにおいては、一対の導電パターン間が水分によって短絡することで水分の発生を検知するものであるところ、一対の導電パターンが、ベース部材上にて一方向に延びるように形成されているため、水分の発生を検知しにくい方向が生じてしまうという問題点がある。
【0006】
具体的には、一対の導電パターンが互いに近接している領域においては、少量の水分が発生した時点で一対の導電パターンが短絡するものの、一対の導電パターンが互いに離れている領域においては、少量の水分が発生しただけでは一対の導電パターンが短絡しにくいものとなってしまう。また、一対の導電パターンが互いに近接していたとしても、その領域がベース部材の中央部分である場合は、周囲にて発生した水分がベース部材の中央部分まで乗り上げてこなければ水分の発生を検知することができない。また、一対の導電パターンが互いに近接していたとしても、その領域がベース部材の1つの端辺に沿う領域である場合は、ベース部材の導電パターンが沿う端辺の近傍にて発生した水分は検知しやすいものの、ベース部材の導電パターンが沿わない端辺の近傍にて発生した水分は検知しにくいものとなってしまう。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、被検知領域に取り付けられ、被検知領域にて水分が発生した場合にその旨を検知する水分検知タグにおいて、水分検知タグの周囲にて発生した水分を検知しやすくすることができる水分検知タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
被検知領域に取り付けられ、前記被検知領域における水分の発生を検知する水分検知タグであって、
ベース基材と、
前記ベース基材に設けられたアンテナ及び2本の検知用配線と、
前記アンテナ及び前記2本の検知用配線に接続されて前記ベース基材に設けられ、前記2本の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を前記アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記2本の検知用配線は、前記ベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられており、
前記ベース基材は、
当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記被検知領域に対向して当接する取付部と、
前記取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記取付部から突出した状態となる突出部とを有し、
前記アンテナ及び検出手段は、前記突出部に設けられ、
前記2本の検知用配線は、少なくとも一部が前記取付部に設けられている。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、水分検知タグの周囲にて水分が発生した場合、ベース基材に設けられた2本の検知用配線が短絡し、その導通状態が検出手段からアンテナを介して非接触送信されることで、水分の発生が検知されることになるが、2本の検知用配線がベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることで、水分検知タグの周囲のあらゆる方向にて発生した水分が検知しやすくなる。
【0010】
また、ベース基材が、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に被検知領域に対向して当接する取付部と、取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に取付部から突出した状態となる突出部とを有し、アンテナ及び検出手段が突出部に設けられ、2本の検知用配線が、少なくとも一部が取付部に設けられていることで、発生した水分が検知しやすくなりながらもアンテナ及び検出手段に水分が付着しにくくなる。
【0011】
また、突出部が二つ折り可能に構成され、取付部が、突出部の二つ折りされた2つの領域のそれぞれに折り部を介して連接したものにおいて、ベース基材のうち少なくとも突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されていれば、突出部の互いに対向する面を接着層によって互いに接着することで、突出部が取付部から突出した状態を保持しやすくなる。
【0012】
また、耐水性を具備し、アンテナ及び検出手段を覆うようにベース基材上に積層された保護層を有する構成とすれば、アンテナ及び検出手段がさらに水分から保護される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検知領域に取り付けられ、被検知領域にて水分が発生した場合にその旨を検知する水分検知タグにおいて、水分の発生を検知するための2本の検知用配線がベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられているため、水分検知タグの周囲のあらゆる方向にて発生した水分を検知しやすくすることができる。
【0014】
また、ベース基材が、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に被検知領域に対向して当接する取付部と、取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に取付部から突出した状態となる突出部とを有し、アンテナ及び検出手段が突出部に設けられ、2本の検知用配線が、少なくとも一部が取付部に設けられていることにより、発生した水分を検知しやすくしながらもアンテナ及び検出手段に水分が付着しにくくすることができる。
【0015】
また、突出部が二つ折り可能に構成され、取付部が、突出部の二つ折りされた2つの領域のそれぞれに折り部を介して連接したものにおいて、ベース基材のうち少なくとも突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されているものにおいては、突出部の互いに対向する面を接着層によって互いに接着することで、突出部が取付部から突出した状態を保持しやすくすることができる。
【0016】
また、耐水性を具備し、アンテナ及び検出手段を覆うようにベース基材上に積層された保護層を有するものにおいては、アンテナ及び検出手段をさらに水分から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の水分検知タグの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示した防水シートを取り除いた構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した水分検知タグの使用形態の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した水分検知タグが
図2に示したように床面に取り付けられた状態にて配管から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管から水漏れが発生したときの状態を示す図である。
【
図4】
図1に示した水分検知タグを用いて配管からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【
図5】
図4に示したシステムにおいて
図1に示した水分検知タグが
図2に示したように床面に貼着された場合の配管からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1に示した水分検知タグにおいて2本の検知用配線がベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることによる効果を説明するための図である。
【
図7】本発明の水分検知タグの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示した防水シートを取り除いた構成を示す図である。
【
図8】
図7に示した水分検知タグの使用形態の一例を示す図である。
【
図9】
図7に示した水分検知タグが
図8に示したように使用された場合の特有の効果を説明するための図である。
【
図10】本発明の水分検知タグの他の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の水分検知タグの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示した防水シート20aを取り除いた構成を示す図である。
【0020】
本形態における水分検知タグは
図1に示すように、ベース基材10の表裏に耐水性を具備する防水シート20a,20bが積層、貼着され、さらに防水シート20b上に剥離紙40が剥離可能に貼着されて構成された水分検知タグ1である。
【0021】
ベース基材10は、例えばフィルム等の非導電性材料から構成されており、長方形の形状を有している。ベース基材10の一方の面には、通信用のアンテナ12及び2本の検知用配線13a,13bが形成されているとともに、検出手段となるICチップ11が搭載されている。
【0022】
アンテナ12は、ベース基材10の一方の面に、2つの二等辺三角形の導体が空隙を介して並ぶようにして形成されている。
【0023】
2本の検知用配線13a,13bは、一方の端部がICチップ11に接続され、そこからベース基材10の端辺に向かって互いに並行して延び、ベース基材10の周縁部となる4つの端辺に沿って並行して形成され、他方の端部が互いに接続されていない状態で終端している。
【0024】
ICチップ11は、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び検知用端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材10のアンテナ12及び検知用配線13a,13bが形成された面に搭載され、異方性導電ペースト(不図示)によって固定されている。ICチップ11のアンテナ端子はそれぞれアンテナ12に接続され、ICチップ11の検知用端子は、検知用配線13a,13bのそれぞれの一方の端部に接続されており、異方性導電ペーストによって、アンテナ端子がアンテナ12に、検知用端子が検知用配線13a,13bにそれぞれ導通している。ICチップ11は、アンテナ12を介した非接触通信によって得た電力による電流を検知用配線13a,13bに流すことで検知用配線13a,13b間の抵抗値を検出し、その抵抗値に基づいて検知用配線13a,13b間の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ12を介して非接触送信する。
【0025】
防水シート20a,20bは、本願発明にて保護層となるものである。
【0026】
防水シート20aは、ベース基材10のアンテナ12及び検知用配線13a,13bが設けられた面においてICチップ11及びアンテナ12を覆うように積層され、粘着層30aによって貼着されている。防水シート20aとしては、防水シート20aの一方の面に粘着層30aが積層された防水タック紙を使用することができる。
【0027】
防水シート20bは、ベース基材10の防水シート20aとは反対側の面の全面に積層され、本願発明の接着層となる粘着層30cによって貼着されている。防水シート20bとしては、防水シート20bの一方の面に粘着層30bが積層された防水タック紙を使用することができる。
【0028】
剥離紙40は、剥離台紙(不図示)の一方の面に剥離剤(不図示)が塗布されて構成され、粘着層30bによって防水シート20bに剥離可能に貼着されている。
【0029】
本形態の水分検知タグ1は上記のように構成されることで、検知用配線13a,13bが、ベース基材10の周縁部に沿って互いに並行して設けられ、ベース基材10の一方の面においてその一部が防水シート20aによって覆われているものの、その他の部分が表出している。
【0030】
以下に、上記のように構成された水分検知タグ1の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0031】
図2は、
図1に示した水分検知タグ1の使用形態の一例を示す図である。
【0032】
図1に示した水分検知タグ1は、例えば
図2に示すように、配管2が設置された被検知領域となる床面3に取り付けられ、配管2からの水漏れを検知するために使用される。その場合、剥離紙40が剥離され、表出した粘着層30bによって水分検知タグ1が床面3に貼着、固定される。
【0033】
図3は、
図1に示した水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に取り付けられた状態にて配管2から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管2から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管2から水漏れが発生したときの状態を示す図である。なお、
図3においては、説明をわかりやすくするために防水シート20aの図示を省略している。
【0034】
図1に示した水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に貼着された状態で配管2から水漏れが発生していない場合は、
図3(a)に示すように、2本の検知用配線13a,13bが導通しておらず、非導通状態となっている。
【0035】
一方、
図1に示した水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に貼着された状態において、配管2において水漏れが発生すると、発生した水漏れによる水分が配管2を伝わって床面3に溜まり、その後、
図3(b)に示すように、ベース基材10の端辺から水分検知タグ1上に水分13cが乗り上げてくる。すると、ベース基材10上にて互いに並行して形成された2本の検知用配線13a,13b間において、発生した水分13cによって短絡が生じ、それにより、2本の検知用配線13a,13bが導通状態となる。そして、この検知用配線13a,13b間の導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生した旨が検知されることになる。
【0036】
このように、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっており、一方、配管2から水漏れが発生している場合は、検知用配線13a,13b間が導通状態となるため、検知用配線13a,13b間の導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生していることを検知することができる。
【0037】
以下に、上述した作用を利用して水分検知タグ1を用いて配管2からの水漏れの発生を検知する具体的な方法について説明する。
【0038】
図4は、
図1に示した水分検知タグ1を用いて配管2からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【0039】
図1に示した水分検知タグ1を用いて
図2に示した配管2からの水漏れを検知するためのシステムとしては、
図4に示すように、水分検知タグ1に対して非接触通信が可能な読取手段となるリーダライタ5と、リーダライタ5と有線または無線を介して接続された処理手段となる管理用パソコン6とを有するシステムが考えられる。なお、読取手段のみならず処理手段が内蔵されたハンディターミナルをリーダライタとして用いることも考えられ、その場合、管理用パソコンが不要となる。
【0040】
図5は、
図4に示したシステムにおいて
図1に示した水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に貼着された場合の配管2からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図1に示した水分検知タグ1においては、リーダライタ5が水分検知タグ1に近接され、リーダライタ5にて水分検知タグ1が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ5から、水分検知タグ1に電力が供給されるとともに、検知用配線13a,13b間の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が水分検知タグ1に対して送信される(ステップ2)。
【0042】
リーダライタ5から供給された電力が水分検知タグ1にて得られるとともに、リーダライタ5から送信された命令が水分検知タグ1のアンテナ12を介してICチップ11にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13a,13b間に電流が供給される。
【0043】
ICチップ11においては、供給された電流を用いて検知用配線13a,13b間の抵抗値が検出されることで、検知用配線13a,13b間の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13a,13b間に電流が供給されても、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっていることから検知用配線13a,13b間には電流が流れず、それにより、ICチップ11において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0044】
ICチップ11においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態になっていると判断され、その判断結果が検知用配線13a,13b間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される(ステップ5)。なお、検知用配線13a,13b間が導通状態である場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、後述するように、検知用配線13aと検知用配線13bとが水分13cによって短絡した抵抗値、すなわち、最大でも、検知用配線13aと検知用配線13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値となることから、ICチップ11において、検知用配線13a,13b間が非導通状態であると判断するための抵抗値として、ほぼ無限大ではなく、検知用配線13aと検知用配線13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0045】
一方、水分検知タグ1が
図2に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生している場合は、上述したように、検知用配線13aと検知用配線13bとが水分13cによって短絡することで導通状態となっているため、ICチップ11においては、検知用配線13aと検知用配線13bとが水分13cが付着した領域間で接続された抵抗値が検出されることになる。
【0046】
検知用配線13aと検知用配線13bとが水分13cによって短絡することで導通状態となっている場合は、上述したように、検出される抵抗値は、最大でも検知用配線13aと検知用配線13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値となることから、ICチップ11においては、検出された抵抗値が、検知用配線13aと検知用配線13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値以下である場合は、検知用配線13a,13b間が導通状態にあると判断され、その判断結果が検知用配線13a,13b間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される。なお、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっている場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、上述したようにほぼ無限大となることから、ICチップ11において、検知用配線13a,13b間が導通状態にあると判断するための抵抗値として、検知用配線13aと検知用配線13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値ではなく、それのよりも大きな一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0047】
このように、リーダライタ5においては、水分検知タグ1にて検出された検知用配線13a,13b間の導通状態を、アンテナ12を介して非接触送信させることになる。
【0048】
上記のようにして水分検知タグ1からリーダライタ5に非接触送信された検出結果がリーダライタ5にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ5にて受信された検出結果は管理用パソコン6に転送される(ステップ7)。
【0049】
リーダライタ5から転送されてきた検出結果が管理用パソコン6にて受信されると(ステップ8)、管理用パソコン6において、水分検知タグ1からリーダライタ5に非接触送信され、管理用パソコン6に転送されてきた検出結果に基づいて、配管2から水漏れが発生しているかどうかが判断されることになる(ステップ9)。具体的には、リーダライタ5から管理用パソコン6に転送されてきた検出結果において、検知用配線13a,13b間が非導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していないと判断され、検知用配線13a,13b間が導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していると判断されることになる。
【0050】
ここで、2本の検知用配線13a,13bがベース基材10の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることによる効果について説明する。
【0051】
図6は、
図1に示した水分検知タグ1において2本の検知用配線13a,13bがベース基材10の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることによる効果を説明するための図である。
【0052】
上述したように、
図1に示した水分検知タグ1においては、水分検知タグ1が取り付けられた床面3にて水分が発生した場合、発生した水分が水分検知タグ1の周囲からベース基材10上に乗り上げて2本の検知用配線13a,13bに付着することで検知用配線13a,13bが短絡し、その導通状態がICチップ11からアンテナ12を介して非接触送信されることで、水分の発生が検知される。そのため、
図1に示した水分検知タグ1において2本の検知用配線13a,13bがベース基材10の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることにより、
図6に示すように、水分検知タグ1の周囲のあらゆる方向にて発生した水分が2本の検知用配線13a,13bに付着しやすくなり、水分の発生を検知しやすくすることができる。
【0053】
また、アンテナ13及びICチップ11を覆うようにベース基材10に耐水性を具備する防水シート20a,20bが積層されていることにより、アンテナ12及びICチップを水分から保護することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の水分検知タグの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示した防水シート120aを取り除いた構成を示す図である。
【0055】
本形態における水分検知タグは
図7に示すように、
図1に示したものに対してベース基材110及び防水シート120a,120bの構成が異なる水分検知タグ101である。
【0056】
本形態における水分検知タグ101のベース基材110には、折り部となる3組のミシン目114a~114cが設けられている。3組のミシン目114a~114cは、ベース基材110の中央部分において一方向に向かって空隙を介して直列に並んだ1組のミシン目114aが設けられるとともに、ミシン目114aの両側に並行して延びるように2組のミシン目114b,114cがそれぞれ設けられており、2組のミシン目114b,114cのそれぞれも、一方向に向かって2つの空隙を介して直列に並んで設けられている。このように3組のミシン目114a~114cが設けられたベース基材110は、ミシン目114bとミシン目114cとで挟まれた領域が突出部116となり、ミシン目114b,114cとベース基材110の端辺とで挟まれた領域がそれぞれ取付部115a,115bとなる。そして、ICチップ11及びアンテナ12が、ミシン目114aとミシン目114cとの間に設けられていることから突出部116に設けられ、検知用配線13a,13bの一部が取付部115a,115bに設けられたものとなる。なお、検知用配線13a,13bは、少なくとも一部が取付部115a,115bに設けられていればよく、その全部が取付部115a,115bに設けられたものであってもよい。
【0057】
防水シート120aには、ミシン目114a~114cに対向するようにミシン目121a~121cが設けられ、防水シート120bにも、ミシン目114a~114cに対向するようにミシン目(不図示)が設けられている。
【0058】
図8は、
図7に示した水分検知タグ101の使用形態の一例を示す図である。
【0059】
図7に示した水分検知タグ1は、例えば
図8に示すように、配管2が設置された被検知領域となる床面3に取り付けられ、配管2からの水漏れを検知するために使用される。その場合、剥離紙40が剥離され、粘着層30bが表出した面が内側となるようにベース基材110及び防水シート120a,120bがミシン目114a,121aにて二つ折りされるとともに、粘着層30bが表出した面が外側となるようにベース基材110及び防水シート120a,120bがミシン目114b,114c,121b,121cにて谷折りに折り曲げられる。
【0060】
そして、
図8に示すように、ベース基材110の取付部115a,115bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部116が取付部115a,115bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定される。
【0061】
上記のようにして床面3に固定された水分検知タグ101においても、第1の実施の形態にて示したものと同様に、配管2から水漏れが発生した場合、水漏れによる水分が検知用配線13a,13bに付着して検知用配線13a,13bが短絡することにより、水漏れが検知されることになる。その場合、2本の検知用配線13a,13bがベース基材110の周縁部に沿って互いに並行して設けられていることにより、水分検知タグ101の周囲のあらゆる方向にて発生した水分が2本の検知用配線13a,13bに付着しやすくなり、水分の発生を検知しやすくすることができる。
【0062】
ここで、
図7に示した水分検知タグ101が
図8に示したように使用された場合の特有の効果について説明する。
【0063】
図9は、
図7に示した水分検知タグ101が
図8に示したように使用された場合の特有の効果を説明するための図である。
【0064】
図7に示した水分検知タグ101が、
図8に示したように、ベース基材110の取付部115a,115bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部116が取付部115a,115bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定された状態においては、上述したようにアンテナ12及びICチップ11が突出部116に設けられていることで、
図9に示すように、水分検知タグ101の周囲の床面3にて発生した水分13cがベース基材110上に乗り上げてきても、乗り上げてきた水分13cがアンテナ12及びICチップ11に付着しにくくなり、アンテナ12及びICチップ11を水分から保護することができる。
【0065】
また、ベース基材110の取付部115a,115bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部116が取付部115a,115bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定された状態において、二つ折りされた突出部116が、防水シート120bのベース基材110との積層面とは反対側の面に積層された粘着層30bによって互いに対向する面が互いに接着された状態となれば、突出部116が取付部115a,115bから突出して床面3上に起立した状態を保持しやすくすることができる。なお、本形態においては、ベース基材110の床面3への取付面に防水シート120bが積層されているため、防水シート120bのとの積層面とは反対側の面に積層された粘着層30bが接着層となって、突出部116が二つ折りされた場合に互いに対向する面が互いに接着されることになるが、ベース基材110の床面3への取付面に防水シート120bが積層されていない場合は、上述したように、ベース基材110のアンテナ12及び検知用配線13a,13bが設けられていない面に積層された粘着層30cが接着層となって、突出部116が二つ折りされた場合に互いに対向する面が互いに接着されることになる。
【0066】
なお、本形態においては、ベース基材110及び防水シート120a,120bを折り曲げる折り部としてミシン目114a~114c,121a~121cを例に挙げて説明したが、ベース基材110及び防水シート120a,120bを折り曲げる折り部として、スリットや筋押し等を適用してもよい。
【0067】
(他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、2本の検知用配線13a,13bが、ベース基材10,110の4つの端辺に沿って互いに並行して延びていることで、ベース基材10,110の周縁部に沿って互いに並行して設けられているが、ベース基材上の構成やデザイン等による制約によって2本の検知用配線がベース基材の4つの端辺の一部にて互いに並行していない構成であってもよい。特に、上述した実施の形態にて示したもののように、ベース基材10,110の検知用配線13a,13bが設けられた面に防水シート20a,120aが積層されたものにおいては、防水シート20a,120aが積層された領域は、そもそも周囲にて発生した水分が検知用配線13a,13bに付着しないため、2本の検知用配線13a,13bが互いに並行して設けられている必要はない。このように、2本の検知用配線がベース基材の4つの端辺の一部にて互いに並行していない構成も含めて、本願発明では、2本の検知用配線がベース基材の周縁部に沿って互いに並行して設けられていると定義する。
【0068】
図10は、本発明の水分検知タグの他の実施の形態を示す図であり、ベース基材上の構成のみを示す。
【0069】
図10(a)に示すように、2本の検知用配線113a,113bが、ベース基材10の3つの端辺に沿って互いに並行して延びているものの、ベース基材10の残りの1つの端辺においては、その一部にて一方の検知用配線113aが設けられていない構成であってもよい。
【0070】
また、
図10(b)に示すように、2本の検知用配線213a,213bが、ベース基材10の2つの端辺に沿って互いに並行して延びているものの、ベース基材10の残りの2つの端辺においては、その一部のそれぞれにて一方の検知用配線213a,213bが設けられていない構成であってもよい。また、
図10(b)に示すように、2本の検知用配線213a,213bがそれぞれ、その一方の端部がICチップ11に接続され、そこから2つに分岐して延びた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,101 水分検知タグ
2 配管
3 床面
5 リーダライタ
6 管理用パソコン
10,110 ベース基材
11 ICチップ
12 アンテナ
13a,13b,113a,113b,213a,213b 検知用配線
13c 水分
20a,20b,120a,120b 防水シート
30a~30c 粘着層
40 剥離紙
115a,115b 取付部
116 突出部
114a~114c,121a~121c ミシン目