(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光学計測装置
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20241106BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01C3/06 120P
G01B11/00 B
(21)【出願番号】P 2020206180
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2020043588
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 潤
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 元春
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-286624(JP,A)
【文献】特開2000-275027(JP,A)
【文献】特開2006-105835(JP,A)
【文献】米国特許第09494529(US,B1)
【文献】特開2019-002720(JP,A)
【文献】特開2010-216880(JP,A)
【文献】特開平11-132736(JP,A)
【文献】特開2009-63436(JP,A)
【文献】特開2019-158507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長の光を出力する光源と、
前記光源からの光の一部分を通過させる第1開口が形成された第1制限部材と、
前記第1開口を通過した光に対して光軸に沿って色収差を生じさせるための光学系と、
色収差が生じた前記光を計測対象物に照射する対物レンズと、
前記計測対象物に照射された光の反射光の一部分を通過させる第2開口が形成された第2制限部材と、
前記第2開口を通過した光を伝搬する光ファイバと、
前記伝搬された光を取得し、該光のスペクトルを計測する受光センサと、を備え、
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、複数のピンホールから構成される形状を有
し、
前記光ファイバは、一端の端面に前記第2開口を通過した光が入射するように、配置される、
光学計測装置。
【請求項2】
前記受光センサは、一次元に配列された複数の受光素子を含む、
請求項1に記載の光学計測装置。
【請求項3】
前記伝搬された光の一部分を通過させる第3開口が形成された第3制限部材をさらに備え、
前記受光センサは、前記第3開口を通過した光のスペクトルを計測する、
請求項1又は2のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項4】
前記第2制限部材において合焦していない波長の光が前記受光センサに受光されることを抑制するように、前記反射光の光路上に配置される減光部材をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項5】
前記第1開口は、線状の形状を有し、
前記第2開口の形状は、前記第1開口の形状に対応する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項6】
前記反射光の光路を前記光源からの光の光路から分離する光路分離素子をさらに備え、
前記第2開口は、前記光路分離素子によって分離された前記反射光の一部分を通過させるように配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項7】
前記第1制限部材と前記第2制限部材とは同一部材である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項8】
前記反射光を前記光源からの光から分岐する光カプラをさらに備える、
請求項7に記載の光学計測装置。
【請求項9】
前記光源からの光は、白色光である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項10】
前記光学計測装置は、前記計測対象物の変位を計測する変位計測装置である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学計測装置。
【請求項11】
前記第1制限部材は、複数の前記第1開口が形成されており、
前記第2制限部材は、複数の前記第2開口が形成されている、
請求項1から10に記載の光学計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共焦点光学系を用いて計測対象物の表面形状等を計測可能な光学計測装置が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、点光源から出射した光を計測対象物に照射して、計測対象物で反射した光を絞り孔(ピンホール)を経由して受光素子で受光する光学計測装置が記載されている。この光学計測装置は、点光源から出射した光が計測対象物上に焦点が合ったときに絞り孔の位置に焦点が合うよう構成されており、受光素子で受光する受光量は最大となったときに計測対象物が所定の位置にあることを検知することができる。また、このような共焦点光学系に複数の波長を出力する点光源と、色収差光学系と、分光器を組み合わせることにより、計測対象物の光軸上の位置を計測する光学計測装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、粗面を有する計測対象物を計測する場合、計測対象物に照射する光のスポット径を大きくすると、粗面の凹凸が平均化される。そのため、スポット径を大きくすることで、粗面の計測誤差を低減させることが可能になる。
【0006】
しかしながら、スポット径を大きくすると、光学計測装置の被写界深度も大きく(深く)なる。その結果、光学計測装置のリニアリティ、分解能等の性能が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、被写界深度を大きくすることなく、粗面の計測誤差を低減することのできる光学計測装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光学計測装置は、複数の波長の光を出力する光源と、光源からの光の一部分を通過させる第1開口が形成された第1制限部材と、第1開口を通過した光に対して光軸に沿って色収差を生じさせるための光学系と、色収差が生じた光を計測対象物に照射する対物レンズと、計測対象物に照射された光の反射光の一部分を通過させる第2開口が形成された第2制限部材と、第2開口を通過した光を伝搬する光ファイバと、伝搬された光を取得し、該光のスペクトルを計測する受光センサと、を備え、第1開口及び第2開口は、それぞれ、複数のピンホールから構成される形状を有する。
【0009】
この態様によれば、第1制限部材の第1開口が複数のピンホールから構成される形状を有する。これにより、開口の短径方向のスポット径を大きくすることなく、計測対象物の面に一方向に延びるラインスポットを形成することができるので、被写界深度を変化させずに維持することができる。従って、リニアリティ及び分解能等の性能の低下を抑制することができる。また、第2制限部材の第2開口を通過した反射光を、光ファイバが伝搬する。これにより、第2開口を通過した光が混ぜられ、ラインスポットの延びる一方向において合焦した複数の点での距離情報(高さ情報)が積分された状態になるので、ラインスポット内の粗面の凹凸が平均化され、合焦した波長の計測場所による変動を抑制することができる。従って、計測対象物の粗面の計測誤差を低減することができる。
【0010】
前述した態様において、光ファイバは、プラスチック光ファイバであってもよい。
【0011】
この態様によれば、光ファイバは、プラスチック光ファイバである。これにより、他の種類の光ファイバと比較して、安価にコア径の大きな光ファイバが製作できるので、第2制限部材の第2開口からの光をより多く取り込むことができ、ラインスポット内の粗面の凹凸をさらに平均化することができる。
【0012】
前述した態様において、受光センサは、一次元に配列された複数の受光素子を含んでもよい。
【0013】
この態様によれば、受光センサは、一次元に配列された複数の受光素子を含む。これにより、複数の受光素子が2次元に配列される場合と比較して、低コストで計測対象物を計測することができる。
【0014】
前述した態様において、伝搬された光の一部分を通過させる第3開口が形成された第3制限部材をさらに備え、受光センサは、第3開口を通過した光のスペクトルを計測してもよい。
【0015】
この態様によれば、受光センサは、第3開口を通過した光のスペクトルを計測する。これにより、第3開口によって所望の形状の光を形成することができるので、例えば第3開口が延びる方向(長手方向)と受光センサの各受光素子の長手方向とを対応させることで、受光素子における受光量を増加させることができる。
【0016】
前述した態様において、第2制限部材において合焦していない波長の光が受光センサに受光されることを抑制するように、反射光の光路上に配置される減光部材をさらに備えてもよい。
【0017】
この態様によれば、第2制限部材において合焦していない波長の光が受光センサに受光されることを抑制するように、減光部材が反射光の光路上に配置される。これにより、クロストークを低減することができ、計測対象物の計測精度を高めることができる。
【0018】
前述した態様において、第1開口は、線状の形状を有し、第2開口の形状は、第1開口の形状に対応してもよい。
【0019】
この態様によれば、第1開口の形状は、線状の形状を有し、第2開口の形状は、第1開口の形状に対応する。これにより、計測対象物の面に一方向に延びるラインスポットを容易に形成することができる。
【0020】
前述した態様において、反射光の光路を光源からの光の光路から分離する光路分離素子をさらに備え、第2開口は、光路分離素子によって分離された反射光の一部分を通過させるように配置されてもよい。
【0021】
この態様によれば、反射光の光路を光源からの光の光路から分離する光路分離素子をさらに備える。これにより、例えば光カプラを用いて反射光を光源の光から分岐(分波)させる必要がなくなり、第一開口部からの反射光によるノイズ光の発生を防ぐことができる。
【0022】
前述した態様において、第1制限部材と第2制限部材とは同一部材であってもよい。
【0023】
この態様によれば、第1制限部材と第2制限部材とは同一部材である。これにより、単一の制限部材を備えることになるので、複数の制限部材を備える場合と比較して、低コストで計測対象物の計測精度を高めることができる。
【0024】
前述した態様において、反射光を光源からの光から分岐する光カプラをさらに備えてもよい。
【0025】
この態様によれば、反射光を光源からの光から分岐する光カプラをさらに備える。これにより、単一の制限部材を備え、粗面の計測誤差を低減する光学計測装置を容易に実現することができる。
【0026】
前述した態様において、光源からの光は、白色光であってもよい。
【0027】
この態様によれば、光源からの光は、白色光である。これにより、光学系において、容易に色収差を生じさせることができる。
【0028】
前述した態様において、光学計測装置は、計測対象物の変位を計測する変位計測装置であってもよい。
【0029】
この態様によれば、光学計測装置は、計測対象物の変位を計測する変位計測装置である。これにより、計測対象物の粗面の変位計測誤差を低減する変位計測装置を容易に実現することができる。
【0030】
前述した態様において、第1制限部材は、複数の第1開口が形成されており、第2制限部材は、複数の第2開口が形成されていてもよい。
【0031】
この態様によれば、第2制限部材は、複数の第2開口が形成される。これにより、ラインスポット内の粗面の凹凸をさらに平均化することができるとともに、第2開口を通過する光量が増加することで計測対象物の計測を高速に行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、被写界深度を大きくすることなく、粗面の計測誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、一実施形態における光学計測装置の概略構成を例示する構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態における光学計測装置による計測対象物の計測を例示する概要図である。
【
図3】
図3は、共焦点方式の光学計測装置の性能を説明するための概念図である。
【
図4】
図4は、ピンホールを用いる共焦点方式の光学計測装置の受光量分布信号を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、一実施形態における光学計測装置の受光量分布信号を例示するグラフである。
【
図6】
図6は、一実施形態における光学計測装置の第2スリット部材を例示する平面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態における光学計測装置の第3スリット部材を例示する平面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態における光学計測装の受光用光ファイバの端面を例示する平面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態における光学計測装の減光部材を例示する平面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態の変形例における光学計測装置の概略構成を例示する構成図である。
【
図11】
図11は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置の第1例の第1スリット部材を例示する平面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置の第2例の第1スリット部材を例示する平面図である。
【
図13】
図13は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置の第3例の第1スリット部材を例示する平面図である。
【
図14】
図14は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置の第4例の第1スリット部材を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。さらに、本発明の技術的範囲は、当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0035】
まず、
図1を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の構成について説明する。
図1は、一実施形態における光学計測装置100の概略構成を例示する構成図である。
【0036】
図1に示すように、光学計測装置100は、例えば、光源10、投光用光ファイバ11、第1スリット部材21、ハーフミラー22、回折レンズ23、対物レンズ24、減光部材25、第2スリット部材26、受光用光ファイバ27、及び分光器30を備える。なお、本実施形態の第1スリット部材21は「第1制限部材」の一例に相当し、本実施形態のハーフミラー22は「光路分離素子」の一例に相当し、本実施形態の回折レンズ23は「光学系」の一例に相当し、本実施形態の第2スリット部材26は「第2制限部材」の一例に相当する。
【0037】
投光用光ファイバ11の一部、第1スリット部材21、ハーフミラー22、回折レンズ23、対物レンズ24、減光部材25、第2スリット部材26、及び受光用光ファイバ27の一部は、センサヘッド20に収容され又は取り付けられている。一方、光源10、投光用光ファイバ11の一部、受光用光ファイバ27の一部、及び分光器30は、コントローラ90に収容され又は取り付けられている。
【0038】
但し、光学計測装置100の各部は、センサヘッド20と、コントローラ90とに分ける構成に限定されるものではない。例えば、光学計測装置100の各部は、3つ以上に分けられていてもよい。
【0039】
光学計測装置100は、当該装置から、具体的にはセンサヘッド20から計測対象物TAまでの距離を所定の計測周期で計測する。また、光学計測装置100は、ある位置を基準とした距離の変化、つまり、変位を所定の計測周期で計測してもよい。
【0040】
本実施形態の光学計測装置100は、共焦点光学系を含んで構成される共焦点計測装置である。共焦点光学系では、例えば、第1スリット部材21の第1開口21aであって、光源10からの光の少なくとも一部分を通過させる第1開口21aと、分光器30に光を導出するための第2スリット部材26の第2開口26aとが、共役に配置される。「共役に配置」とは、光源10から照射された照明光が第1開口21aの位置で点光源を構成したとすると、計測対象物TAの表面上で焦点が合う(以下、「合焦」ともいう)ときに、同時にその反射光も第2開口26aで焦点が合うように、第1開口21aと第2開口26aとが配置されるように設計されることをいう。例えば、後述するように、線状の形状を有する第1開口21aを通過した光が計測対象物TAにラインスポットを形成して照射され、計測対象物TAから反射されたピントの合った波長の光を第2開口26aで通過させ、分光器30へと導く。
【0041】
光源10は、複数の波長成分を含む光を発するように構成されている。光源10は、図示しない制御部から入力される制御信号に基づいて動作し、例えば、当該制御信号に基づいて光の光量を変更する。
【0042】
光源10は、複数の波長成分を含む光を発することが好ましい。この場合、光源10は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)を含んで構成され、白色光を発生させる。これにより、後述する回折レンズ23において、容易に色収差を生じさせることができる。
【0043】
但し、光源10が発する光は、光学計測装置100に要求される距離範囲をカバーする波長範囲を含む光であればよく、白色光に限定されるものではない。
【0044】
投光用光ファイバ11は、光源10から光を伝搬する光ファイバである。光ファイバは、単一のコアを有するシングルコアであってもよいし、複数のコアを有するマルチコアであってもよい。投光用光ファイバ11は、その一端(
図1において右端)が光源10と光学的に接続しており、その他端(
図1において左端)がセンサヘッド20と光学的に接続している。
【0045】
投光用光ファイバ11は、プラスチック光ファイバ(POF:Plastic Optical Fiber)で構成されることが好ましい。プラスチック光ファイバは、例えばグラス光ファイバと比較して、クラッド径に対するコア径の比率(割合)が大きいという特徴を有する。本実施形態では、例えば光源10の径が1[mm]である場合、投光用光ファイバ11として、クラッド径1000[μm]、コア径が980[μm]のプラスチック光ファイバを用いる。
【0046】
第1スリット部材21は、光の一部分を通過させる第1開口21aが形成された制限部材である。第1スリット部材21は、投光用光ファイバ11から出射された光源10からの光の一部分が第1開口21aを通過するように、構成されている。具体的には、第1スリット部材21は、投光用光ファイバ11の他端(
図1において左端)とハーフミラー22との間の投光の光路上において、光軸AXが第1開口21aを通過するように配置されることで、光源10からの光が第1開口21aを通過する。この構成によれば、第1開口21aが光源となり、対象物TA上で開口形状と同じスポットが形成される。
【0047】
線状の第1開口21aが延びる方向は、後述のハーフミラー22が反射させた光の方向、例えばX軸方向に対して垂直となることが好ましい。例えば、第1スリット部材21は、線状の形状を有する第1開口21aの延びる方向が、X軸及びZ軸に垂直な軸(Y軸)方向となるように配置される。
【0048】
ハーフミラー22は、光源10からの光の一部を透過して回折レンズ23に向けるように構成されている。また、ハーフミラー22は、計測対象物TAからの反射光の一部をX軸方向に反射して第2スリット部材26に向けるように構成されている。ハーフミラー22は、例えば、該反射した光が光軸AXに対して90度の角度になるように配置される。なお、ハーフミラー22は、例えば偏光ビームスプリッタで代替されてもよい。
【0049】
このように、ハーフミラー22が、反射光の光路を光源10からの光の光路から分離することにより、例えば光カプラを用いて反射光を光源の光から分岐(分波)させる必要がなくなり、第1開口21aからの反射光によるノイズ光の発生を防ぐことができる。
【0050】
回折レンズ23は、光源10からの光に対して光軸AX方向に沿う色収差を生じさせるように構成されている。具体的には、回折レンズ23は、色収差を生じさせるための回折パターンが形成された回折面DSを有する。対物レンズ24は、色収差を生じさせた光を計測対象物TAに集めて照射するように構成されている。なお、回折レンズ23及び対物レンズ24を含むレンズ群において、光を平行光に変換する変換レンズを更に備えてもよい。
【0051】
減光部材25は、例えば、クロストークを低減するための部材である。一般に、クロストークとは、計測対象物に焦点が合っていない、つまり、合焦していない波長の光がスリット部材の開口に入射する現象をいう。クロストークが発生し、合焦していない波長の光が開口を通過して受光センサに受光されると、計測対象物の距離又は変位の計測精度が悪化してしまう。
【0052】
減光部材25は、第2スリット部材26において合焦していない波長の光が、後述する受光センサ35に受光されることを抑制するように構成されている。減光部材25は、例えば、クロストークを低減するために減光する手段、及び、クロストークを低減するために光を遮蔽することができる部材の少なくとも一方を含む。また、減光部材25は、例えば、(1)光を吸収する手段、(2)光を偏向(例えば光の伝播方向を変えること等)する手段、(3)光を反射する手段、及び(4)光を散乱する手段のうち、少なくとも1つの手段を含んでもよい。例えば、減光部材25は、光を透過しない、又は、光を略透過しない材料を含む部材で構成されてもよい。
【0053】
減光部材25は、対物レンズ24から分光器30へと向かう光の経路上に配置される。具体的には、回折レンズ23において、回折面DSの反対側に位置する面BS上に減光部材25が配置されている。なお、回折面DSの反対側に位置する面BSは、平面であることが好ましいが、これに限定されるものではない。この構成によれば、減光部材25を、回折レンズ23において回折面DSの反対側に位置する面BS上に配置するので、減光部材25を配置するために、光学計測装置本来の構成を大幅に変更する必要がないので、低コストで計測対象物TAの位置の計測精度をより高めることができる。
【0054】
第2スリット部材26は、光の一部分を通過させる第2開口26aが形成された制限部材である。第2スリット部材26は、ハーフミラー22によって計測対象物TAからの反射光の光路から分離された光の一部分が第2開口26aを通過するように、構成されている。具体的には、第2スリット部材26は、計測対象物TAの表面で反射した光が、対物レンズ24、回折レンズ23、ハーフミラー22及び第2スリット部材26に向けて集光されて第2開口26aを通過するように、配置される。
【0055】
第2開口26aは、前述の第1開口21aと同様に、線状の形状を有している。線状の第2開口26aが延びる方向は、例えば、X軸及びZ軸に垂直な軸(Y軸)方向となるように配置される。
【0056】
受光用光ファイバ27は、第2開口26aを通過した光を伝搬する光ファイバである。光ファイバは、単一のコアを有するシングルコアであってもよいし、複数のコアを有するマルチコアであってもよい。受光用光ファイバ27は、その一端(
図1において左端)がセンサヘッド20と光学的に接続しており、当該一端の端面に、第2開口26aを通過した光が入射するように配置されている。また、受光用光ファイバ27は、その他端(
図1において右端)が分光器30と光学的に接続している。
【0057】
受光用光ファイバ27は、投光用光ファイバ11と同様に、プラスチック光ファイバで構成されることが好ましい。本実施形態では、例えば光源10の径が1[mm]である場合、受光用光ファイバ27として、クラッド径1000[μm]、コア径が980[μm]のプラスチック光ファイバを用いる。
【0058】
分光器30は、受光用光ファイバ27によって伝搬された光を取得し、当該光のスペクトルを計測するように構成されている。分光器30は、例えば、第3スリット部材31、第1レンズ32、回折格子33、第2レンズ34、受光センサ35、及び処理回路36を含む。
【0059】
第3スリット部材31は、光の一部分を通過させる第3開口31aが形成された制限部材である。第3スリット部材31は、受光用光ファイバ27によって伝搬された反射光の一部分が第3開口31aを通過するように、構成されている。具体的には、第3スリット部材31は、受光用光ファイバ27の他端の端面から出射された光が、第3開口31aに入射して通過するように配置される。
【0060】
第3開口31aは、前述の第1開口21a及び第2開口26aと同様に、線状の形状を有している。線状の第3開口31aが延びる方向は、例えば、X軸及びZ軸に垂直な軸(Y軸)方向となるように配置される。
【0061】
第1レンズ32は、第3開口31aを通過した反射光を略平行光に変換し、回折格子33は変換された反射光を波長成分毎に分散(「分光」ともいう)し、第2レンズ34は、分散された反射光を集める、ように構成されている。回折格子33は、光を分散するための他の手段、例えばプリズムであってもよい。
【0062】
受光センサ35は、分散された反射光を受光し、光のスペクトルを計測するように構成され、処理回路36は、受光センサ35による受光信号を読み出すように構成されている。
【0063】
より詳細には、受光センサ35は、分散された反射光に対し、波長成分毎に受光量を検出可能に構成されている。受光センサ35は、複数の受光素子を含んで構成される。各受光素子は、回折格子33の分散方向、つまり、波長方向に対応させて一次元に配列されている。これにより、各受光素子は分散された各波長成分の反射光に対応して配置され、受光センサ35は波長成分毎に受光量を検出可能になる。
【0064】
受光センサ35の一受光素子は、一画素に対応している。よって、受光センサ35は、複数の画素のそれぞれが受光量を検出可能に構成されているともいえる。なお、各受光素子は、1次元に配列される場合に限定されるものではなく、2次元に配列されていてもよい。この場合、各受光素子は、例えば回折格子33の分散方向を含む検出面上に、2次元に配列されることが好ましい。
【0065】
各受光素子は、処理回路36から入力される制御信号に基づいて、所定の露光時間の間に受光した光の受光量に応じて電荷を蓄積する。そして、各受光素子は、処理回路36から入力される制御信号に基づいて、露光時間以外、つまり、非露光時間の間に、蓄積した電荷に応じた電気信号を出力する。これにより、露光時間に受光した受光量が電気信号に変換され、受光センサ35による受光信号が読み出される。
【0066】
このように、受光センサ35が第3スリット部材31の第3開口31aを通過した光のスペクトルを計測することにより、第3開口31aによって所望の形状の光を形成することができるので、例えば第3開口31aが延びる方向(長手方向)と受光センサ35の各受光素子の長手方向とを対応させることで、受光素子における受光量を増加させることができる。
【0067】
処理回路36は、受光センサ35による受光信号に基づいて、受光した光の波長及び光量から計測対象物TAまでの距離に読み替える。処理回路36は、受光センサ35による受光信号から、受光センサ35の受光素子毎、つまり、波長毎の受光量の分布信号(以下、単に「受光量分布信号」という)を得ることができる。処理回路36は、この受光量分布信号を図示しない制御部に出力する。
【0068】
本実施形態では、第3スリット部材31として線状のスリットを採用し、受光センサ35として、複数の受光素子が1次元に配列された1次元CMOS(Complementariy MOS:相補型MOS)イメージセンサを採用する。すなわち、光学計測装置100は、1次元計測を前提としている。このように、受光センサ35が1次元に配列された複数の受光素子を含むことにより、複数の受光素子が2次元に配列される場合と比較して、低コストで計測対象物TAを計測することができる。
【0069】
なお、光学計測装置100は、例えば、受光センサ35として2次元CMOSイメージセンサを採用してもよい。
【0070】
次に、
図2を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の計測誤差について説明する。
図2は、一実施形態における光学計測装置100による計測対象物TAの計測を例示する概要図である。
【0071】
計測対象物TAの変位を計測する場合、
図2に示すように、センサヘッド20及び計測対象物TAの少なくとも一方を一方向(
図2のおけるX軸方向)に移動させながら、センサヘッド20から計測対象物TAに光を照射し、その反射光をセンサヘッド20で集光する。これにより、計測対象物TAの表面が走査され、センサヘッド20から計測対象物TAの表面までの距離の変化、つまり、変位が計測される。この場合、光学計測装置100は変位計測装置である。
【0072】
一般的に、このような計測における精度、つまり、計測誤差は、大まかに以下の3つの要因による誤差の合計とほぼ等しいと考えられる。すなわち、リニアリティ誤差、分解能誤差、及び移動分解能誤差である。リニアリティ誤差は、変位量に対する計測出力の直線性(リニアリティ)に関して、理想直線に対する誤差(ズレ)である。分解能誤差は、センサヘッド20及び計測対象物TAを静止状態としたときの測定値の誤差(ばらつき)である。移動分解能誤差は、センサヘッド20及び計測対象物TAの少なくとも一方を移動させたときの測定値の誤差(ばらつき)である。
【0073】
図2に示すように、計測対象物TAが、例えば、切削加工やヘアライン加工が施された金属である場合、その表面は、細かな凹凸を有する粗面になる。計測対象物TAを粗面を走査するときの計測誤差は、移動分解能誤差が相対的に大きいことが分かっている。そのため、粗面を有する計測対象物TAを計測する場合、移動分解能を向上させることが計測誤差を低減させるために重要である。
【0074】
一方、例えば鏡面加工等が施された面を走査する場合、その計測誤差において、移動分解能誤差は非常に小さくなる。よって、
図2に示す例とは異なり、鏡面を有する計測対象物を計測する場合、リニアリティ誤差及び分解能誤差を向上させることが、計測誤差を低減させるために重要である。
【0075】
また、計測対象物TAに照射する光の直径(以下、「スポット径」という)を大きくすると、スポット径内で合焦した波長に基づく計測値は平均化される。すなわち、粗面を計測するときに、スポット径を大きくすることで、粗面の凹凸を平均化することができ、粗面の計測誤差を効果的に低減させることが知られている。
【0076】
次に、
図3を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置のスポット径と被写界深度との関係について説明する。
図3は、共焦点方式の光学計測装置の性能を説明するための概念図である。
【0077】
図3に示す共焦点方式の光学計測装置のセンサヘッドSHにおいて、図示しない光源からの光を伝搬する光ファイバOFのコア径をφp、回折レンズ群L1の焦点距離をf1、対物レンズ群L2の焦点距離をf2とすると、被写界深度は、以下の式(1)のように表される。
被写界深度∝2*(f2)
2*φp/[f1*{(1/2f1)
2+1}
1/2] …(1)
【0078】
式(1)から明らかなように、被写界深度は、光ファイバFのコア径φpと対物レンズ群L2の焦点距離f2の2乗とに比例し、回折レンズ群L1の焦点距離f1に反比例する関係になっている。また、リニアリティ及び分解能等の性能は、被写界深度が小さいほど高く、被写界深度に反比例する関係であることが分かっている。
【0079】
さらに、被写界深度は、受光量分布信号の半値幅とほぼ等しいことが分かっている。半値幅は、ガウス分布の広がりの程度を表す指標として知られている。半値幅は、受光量分布信号の場合、例えば、受光量のピーク(最大値)の50%の受光量の線と受光量分布信号との2つの交点の長さ(幅)つまり、半値全幅である。以下の説明において、特に明示する場合を除き、半値幅は半値全幅を意味するものとする。
【0080】
一方、
図3に示す共焦点方式の光学計測装置において、スポット径は、以下の式(2)のように表される。
スポット径∝φp*f2*f1
-1 …(2)
【0081】
式(2)から明らかなように、スポット径は、光ファイバFのコア径φpと対物レンズ群L2の焦点距離f2に比例し、回折レンズ群L1の焦点距離f1に反比例する関係になっている。すなわち、スポット径を大きくすると被写界深度も大きく(深く)なるので、リニアリティ及び分解能等の性能は低下してしまう。
【0082】
ここで、
図4を参照しつつ、従来例の光学計測装置における受光量分布信号について説明する。
図4は、ピンホールを用いる共焦点方式の光学計測装置の受光量分布信号を例示するグラフである。
図4において、横軸は波長であり、縦軸は受光量である。計測場所1、計測場所2、及び計測場所3は、
図2に示すようにセンサヘッド20をX軸方向に移動させて計測したときの、計測対象物TAの面における計測場所であって、それぞれ、X軸方向の異なる場所を表す。また、計測場所2及び計測場所3のグラフにおいて、計測場所1において計測した受光量分布信号を破線で示す。
【0083】
図4に示す受光量分布信号は、波長ごとの受光量の分布を示す波形である。ピンホールを用いる共焦点方式の光学計測装置では、受光センサにおいて光の点計測を実行する。この場合、スポット径を小さく設定することで、
図4に示すように、受光量分布信号の半値幅は狭くなり、リニアリティ及び分解能等の性能を高めることが可能となる。
【0084】
一方、計測場所2及び計測場所3のグラフから明らかなように、計測場所によって、受光量のピーク(最大値)となる波長が激しく変動している。そのため、移動分解能による誤差が大きくなってしまう。
【0085】
次に、
図5を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置における受光量分布信号について説明する。
図5は、一実施形態における光学計測装置100の受光量分布信号を例示するグラフである。
図5において、横軸は波長であり、縦軸は受光量である。計測場所1、計測場所2、及び計測場所3は、
図2に示すようにセンサヘッド20をX軸方向に移動させて計測したときの、計測対象物TAの面における計測場所であって、それぞれ、X軸方向の異なる場所を表す。また、計測場所2及び計測場所3のグラフにおいて、計測場所1において計測した受光量分布信号を破線で示す。
【0086】
図5に示す受光量分布信号は、
図4と同様に、波長ごとの受光量の分布を示す波形である。本実施形態の光学計測装置100では、第1スリット部材21を用いて光源10からの光を計測対象物TAに照射しているので、光が線状の第1開口21aを通過することで第1開口21aと同形状の線光源が生成され、計測対象物TAの面に線状のラインスポットが形成される。
【0087】
そのため、
図5に示すように、光学計測装置100の受光量分布信号は、
図4に示す従来例と同様に、半値幅を狭くすることができ、リニアリティ及び分解能等の性能を高いまま維持することができる。
【0088】
また、計測対象物TAからの反射光の一部分は第2スリット部材26の第2開口26aを通過し、通過した光は、計測対象物TAの面における線状に連続した複数の点での距離情報(高さ情報)を有する。受光用光ファイバ27を用いて第2開口26aを通過した光を伝搬するので、第2開口26aを通過した光が混ぜられる。その結果、計測対象物TAの面のラインスポットの延びる一方向での位置情報は失われる一方、ラインスポットの延びる一方向で合焦した複数の点での距離情報(高さ情報)が積分された状態になる。
【0089】
本実施形態では、第1開口21a及び第2開口26aが、それぞれ、線状の形状を有する例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1開口21a及び第2開口26aは、それぞれ、複数のピンホールから構成される形状であればよい。この場合、第1開口21a及び第2開口26aは、共焦点効果と粗面の凹凸を平均化する効果との両方を得ることができる。なお、第1開口21a及び第2開口26aにおける線状の形状は、複数のピンホールを連続的に配置したものとみなすことができる。
【0090】
このように、第1スリット部材21の第1開口21aが複数のピンホールから構成される形状を有することにより、開口の短径方向のスポット径を大きくすることなく、計測対象物TAの面に一方向に延びるラインスポットを形成することができるので、被写界深度を変化させずに維持することができる。従って、リニアリティ及び分解能等の性能の低下を抑制することができる。また、第2スリット部材26の第2開口26aを通過した反射光を、受光用光ファイバ27が伝搬することにより、第2開口26aを通過した光が混ぜられ、ラインスポットの延びる一方向において合焦した複数の点での距離情報(高さ情報)が積分された状態になるので、ラインスポット内の粗面の凹凸が平均化され、合焦した波長の計測場所による変動を抑制することができる。従って、計測対象物TAの粗面の計測誤差を低減することができる。
【0091】
また、光学計測装置100が計測対象物の変位を計測する変位計測装置であることにより、計測対象物TAの粗面の変位計測誤差を低減する変位計測装置を容易に実現することができる。
【0092】
次に、
図6及び
図7を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の第1スリット部材から第3スリット部材について説明する。
図6は、一実施形態における光学計測装置100の第2スリット部材26を例示する平面図である。
図7は、一実施形態における光学計測装置100の第3スリット部材31を例示する平面図である。なお、説明の簡略化のため、
図6において第2スリット部材26について説明し、第1スリット部材21は、第2スリット部材26と同一又は略同一であるため、図示及びその説明を省略する。
【0093】
図6に示すように、第2スリット部材26は、Y軸及びZ軸の平面視において矩形の形状を有し、第2開口26aは、一方向(
図6におけるY軸方向)に延びた線状の形状を有している。より詳細には、第2開口26aは、Y軸方向が長く、Z軸方向が短い、長方形の形状を有している。第2開口26aは、例えば、Y軸方向の長さが1000[μm]であり、Z軸方向の長さが50[μm]である。第2開口26aの形状は、第1開口21aの形状に対応している。よって、図示しない第1開口21aは、第2開口26aと同様に、一方向に延びた線状の形状であって、長方形の形状を有している。
【0094】
なお、
図6に示すように、第2開口26aの線状の形状は、複数であってもよい。図示しない第1開口21aの線状の形状は、第2開口26aと同様に、複数であってもよい。また、第2開口26aの形状は、少なくとも1つの角部に、丸み(R)が付されたり、面取りが施されたりする等、略長方形であってもよい。さらに、第2開口26aの形状は、線状であって、第1開口21aの形状に対応する限り、他の形状、例えば、多角形(正方形を除く)、又は楕円形であってもよい。
【0095】
このように、第1開口21aが線状の形状を有し、第2開口26aの形状が第1開口21aの形状に対応することにより、計測対象物TAの面に一方向に延びるラインスポットを容易に形成することができる。
【0096】
また、
図6に示すように、第2スリット部材26には、複数の第2開口26aが形成され、図示しない第1スリット部材21にも、複数の第1開口21aが形成されていることが好ましい。これにより、ラインスポット内の粗面の凹凸をさらに平均化することができるとともに、第2開口26aを通過する光量が増加することで計測対象物TAの計測を高速に行うことができる。
【0097】
図7に示すように、第3スリット部材31は、Y軸及びZ軸の平面視において矩形の形状を有し、第3開口31aは、一方向(
図7におけるY軸方向)に延びた線状の形状を有している。より詳細には、第3開口31aは、Y軸方向が長く、Z軸方向が短い、長方形の形状を有している。なお、第3開口31aの形状は、第2開口26aと同様に、略長方形であってもよいし、多角形(正方形を除く)、又は楕円形等であってもよい。
【0098】
次に、
図8を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の投光用光ファイバ及び受光用光ファイバについて説明する。
図8は、一実施形態における光学計測装置100の受光用光ファイバ27の端面を例示する平面図である。なお、
図8に示す受光用光ファイバ27の端面は、第2スリット部材26側の端面であり、第2スリット部材26の第2開口26aを破線で示す。また、説明の簡略化のため、
図8において受光用光ファイバ27について説明し、投光用光ファイバ11は、受光用光ファイバ27と同一又は略同一であるため、図示及びその説明を省略する。
【0099】
図8に示すように、受光用光ファイバ27は、前述したプラスチック光ファイバである。受光用光ファイバ27は、クラッド径27aに対してコア径27bの比率(割合)が大きい。これにより、他の種類の光ファイバと比較して、ファイバ径27aに対するコア径27bの比率(割合)を大きくすることが可能となるので、第2スリット部材26の第2開口26aからの光をより多く取り込むことができ、ラインスポット内の粗面の凹凸をさらに平均化することができる。
【0100】
前述したように、本実施形態の光学計測装置100のように、スリット部材を用いて計測対象物の面にラインスポットを照射する場合、隣接する計測点からの合焦していないノイズ光が、開口を通過して受光センサに受光されてしまう可能性がある。そのため、当該ノイズ光によるクロストークが発生するおそれがある。
【0101】
次に、
図9を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の減光部材について説明する。
図9は、一実施形態における光学計測装置100の減光部材25を例示する平面図である。
【0102】
図9に示すように、減光部材25は、例えば、回折レンズ23において、回折面DSの反対側に位置する面BS上に配置されている。なお、回折面DSの反対側に位置する面BSは、平面であるのが好ましいが、これに制限されない。この構成によれば、減光部材25を、回折レンズ23において回折面DSの反対側に位置する面BS上に配置するので、減光部材25を配置するために、光学計測装置本来の構成を大幅に変更する必要がないので、低コストで計測対象物TAの計測精度をより高めることができる。
【0103】
減光部材25は、第2スリット部材26において合焦していない波長の光が受光センサ35において受光されることを抑制するように、構成されればよい。従って、減光部材25は、回折レンズ23に配置される場合に限定されるものではない。例えば、減光部材25は、
図1に示す計測対象物TAからの反射光の光路上において対物レンズ24と分光器30に含まれる回折格子33との間に配置される。具体的には、減光部材25は、対物レンズ24、第1レンズ32、又は、回折格子33上に配置されてもよい。なお、減光部材25は、レンズや部材上に配置される場合に限定されず、別個の部材として、対物レンズ24と回折格子33との間に配置されてもよい。この構成によれば、減光部材25を、反射光の光路上において対物レンズ24と、回折格子33との間に配置することができるので、減光部材25の配置位置に関する自由度が高まる。
【0104】
また、減光部材25は、第2スリット部材26における第2開口26aの形状に対応した形状を有する。具体的には、
図9に示すように、減光部材25は、線状の形状を有する。この構成によれば、第2スリット部材26における第2開口26aの形状に応じた形状の減光部材25を配置することで、クロストークを効率的に低減することができる。さらに、減光部材25は、第2スリット部材26における第2開口26aの配置位置に対応するように配置される。この構成によれば、第2スリット部材26における第2開口26aの配置位置に応じた位置に減光部材25を配置することで、クロストークを効率的に低減することが適切に配置することができる。
【0105】
なお、減光部材25を配置する範囲は、光の強度や広がり等に応じて適宜設定されてもよい。さらに、減光部材25の厚さは、減光部材25に含まれる材料や部材の内容や各レンズの配置状況に応じて適宜設定されてもよい。
【0106】
このように、第2スリット部材26において合焦していない波長の光が受光センサ35に受光されることを抑制するように、減光部材25を反射光の光路上に配置することにより、クロストークを低減することができ、計測対象物TAの計測精度を高めることができる。
【0107】
(第1変形例)
次に、
図10を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の第1変形例について説明する。なお、
図1から
図9に示した光学計測装置と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0108】
図10は、一実施形態の第1変形例における光学計測装置100Aの概略構成を例示する構成図である。
【0109】
図10に示す光学計測装置100Aは、ハーフミラー22及び第2スリット部材26に代えて光カプラ40及び投受光用光ファイバ41を備える点で、
図1に示した光学計測装置100と相違する。
【0110】
図10に示すように、反射光の光路は光源10からの光の光路から分離されず、計測対象物TAの表面で反射した光が、対物レンズ24、回折レンズ23、及び第1スリット部材21に向けて集光されて第1開口21aを通過するように、構成されている。すなわち、
図10に示す光学計測装置100Aでは、光源10からの光の一部分を通過させる第1開口が形成された第1制限部材と、計測対象物TAの反射光の一部分を通過させる第2開口が形成された第2制限部材とが、同じ第1スリット部材21である。これにより、単一の制限部材を備えることになるので、複数の制限部材を備える場合と比較して、低コストで計測対象物TAの計測精度を高めることができる。
【0111】
投光用光ファイバ11は、その一端(
図10において右端)が光源10と光学的に接続しており、受光用光ファイバ27は、その一端(
図10において右端)が第3スリット部材31と光学的に接続しており、当該一端の端面から出射された光が、第3開口31aを通過するように配置されている。投光用光ファイバ11の他端(
図10において左端)及び受光用光ファイバ27の他端(
図10において左端)と、投受光用光ファイバ41の他端(
図10において右端)とは、光カプラ40を介して光学的に結合されている。
【0112】
投受光用光ファイバ41は、光を伝搬する光ファイバである。光ファイバは、単一のコアを有するシングルコアであってもよいし、複数のコアを有するマルチコアであってもよい。
【0113】
光カプラ40は、計測対象物TAの反射光を光源10からの光から分岐するように構成されている。光カプラ40は、例えば融着延伸型(溶融延伸型ともいう)の光カプラを含んで構成される。
【0114】
具体的には、光カプラ40は、投光用光ファイバ11から入射された光を投受光用光ファイバ41に伝送するとともに、投受光用光ファイバ41から入射された光を分割して投光用光ファイバ11及び受光用光ファイバ27にそれぞれ伝送する。なお、光カプラ40によって投受光用光ファイバ41から投光用光ファイバ11に伝送された光は、光源10において終端される。
【0115】
このように、光カプラ40が、計測対象物TAの反射光を光源10からの光から分岐することにより、単一の制限部材を備え、粗面の計測誤差を低減する光学計測装置100Aを容易に実現することができる。
【0116】
(第2変形例)
次に、
図11から
図14を参照しつつ、一実施形態に従う光学計測装置の第2変形例について説明する。なお、
図1から
図9に示した光学計測装置と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0117】
図11は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置100の第1例の第1スリット部材21Aを例示する平面図である。
図12は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置100の第2例の第1スリット部材21Bを例示する平面図である。
図13は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置100の第3例の第1スリット部材21Cを例示する平面図である。
図14は、一実施形態の第2変形例における光学計測装置100の第4例の第1スリット部材21Dを例示する平面図である。なお、説明の簡略化のため、
図11から
図14において、第1スリット部材21A、21B、21C、及び21Dのぞれぞれについて説明する。第2スリット部材26A、26B、26C、26Dは、対応する第1スリット部材21A、21B、21C、21Dと同一又は略同一である。つまり、第2スリット部材26A、26B、26C、26Dの第2開口26b,26c,26d,26eは、対応する第1スリット部材21A、21B、21C、21Dの第1開口21b,21c,21d,21eと同一又は略同一である。そのため、第2スリット部材26A、26B、26C、26Dは、図示及びその説明を省略する。
【0118】
第2変形例における光学計測装置100は、
図1から
図9に示した光学計測装置100と略同一であるが、第1スリット部材21と開口が異なる、第1スリット部材21A、21B、21C、及び21Dと、第2スリット部材26と開口が異なる、第2スリット部材26A、26B、26C、及び26Dと、を備える点で相違する。
【0119】
図11に示すように、第1例の第1スリット部材21Aには、1つの第1開口21bが形成されている。第1開口21bは、Y軸及びX軸の平面視において矩形の形状を有し、一方向(
図11におけるY軸方向)に延びた線状の形状を有している。より詳細には、第1開口21bは、Y軸方向が長く、X軸方向が短い、長方形の形状を有している。
【0120】
なお、第1開口21bの形状は、一方向に延びる直線状である場合に限定されるものではない。第1開口21bの形状は、例えば半円の形状等、Y軸及びX軸の平面視において曲線状であってもよい。また、第2スリット部材26Aについても、同様に、第2開口の形状は曲線状であってもよい。
【0121】
図12に示すように、第2例の第1スリット部材21Bには、複数のピンホールから構成され、1列に配置される第1開口21cが形成されている。第1開口21cの各ピンホールは、Y軸及びX軸の平面視において円形又は略円形の形状を有しており、一方向(
図12におけるY軸方向)に配置されている。
【0122】
図13に示すように、第3例の第1スリット部材21Cには、2つの第1開口21dが形成されている。各第1開口21dは、
図11に示す第1開口21bと同様に、Y軸及びX軸の平面視において矩形の形状を有し、一方向(
図13におけるY軸方向)に延びた線状の形状を有している。
【0123】
なお、2つの第1開口21dが形成される場合に限定されるものはなく、第1スリット部材21Cに、3つ以上の複数の第1開口が形成されていてもよい。また、2つの第1開口21bは、互いに平行である場合に限定されるものではない。2つの第1開口21bは、例えば、Y軸及びX軸の平面視において所定の角度θ(0°<θ≦90°)を形成するように、配置されていてもよい。この場合、所定の角度θが90°であるとき、2つの第1開口21dのうち、一方は一方向(
図13におけるY軸方向)に沿って延びており、他方が直交する他方向(
図13におけるX軸方向)に沿って延びている。
【0124】
図14に示すように、第4例の第1スリット部材21Dには、複数のピンホールから構成され、2列に配置される第1開口21eが形成されている。第1開口21eの各ピンホールは、
図12に示す第1開口21cの各ピンホールと同様に、Y軸及びX軸の平面視において円形又は略円形の形状を有しており、一方向(
図14におけるY軸方向)に配置されている。また、複数のピンホールから構成される各列は、互いに平行に配置されている。
【0125】
なお、複数のピンホールから構成される第1開口21eは、2列に配置される場合に限定されるものではない。第1開口21eは、複数のピンホールを3列以上の複数列に配置されていてもよい。
【0126】
このように、第1スリット部材21A、21B、21C、及び21Dの構成であっても、第1開口21b、21c、21d、及び21eが光源となり、対象物TA上で開口形状と同じスポットが形成される。そして、第2変形例における光学計測装置100は、第1スリット部材21A、21B、21C、及び21Dと、対応する第2スリット部材26A、26B、26C、及び26Dとを備えることにより、共焦点効果と粗面の凹凸を平均化する効果との両方を得ることができる。
【0127】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本発明の一実施形態に従う光学計測装置100,100Aによれば、第1スリット部材21、21A、21B、21C、21Dの第1開口21a、21b、21c、21d、21eは、複数のピンホールから構成される形状を有する。これにより、開口の短径方向のスポット径を大きくすることなく、計測対象物TAの面に一方向に延びるラインスポットを形成することができるので、被写界深度を変化させずに維持することができる。従って、リニアリティ及び分解能等の性能の低下を抑制することができる。また、第2スリット部材26、26A、26B、26C、26Dの第2開口を通過した反射光が、受光用光ファイバ27によって伝搬される。これにより、第2開口を通過した光が混ぜられ、ラインスポットの延びる一方向において合焦した複数の点での距離情報(高さ情報)が積分された状態になるので、ラインスポット内の粗面の凹凸が平均化され、合焦した波長の計測場所による変動を抑制することができる。従って、計測対象物TAの粗面の計測誤差を低減することができる。
【0128】
(附記1)
複数の波長の光を出力する光源(10)と、
前記光源(10)からの光の一部分を通過させる第1開口(21a、21b、21c、21d、21e)が形成された第1制限部材(21、21A、21B、21C、21D)と、
前記第1開口(21a、21b、21c、21d、21e)を通過した光に対して光軸に沿って色収差を生じさせるための光学系と、
色収差が生じた前記光を計測対象物(TA)に照射する対物レンズ(24)と、
前記計測対象物(TA)に照射された光の反射光の一部分を通過させる第2開口(26a、26b、26c、26d、26e)が形成された第2制限部材(26、26A、26B、26C、26D)と、
前記第2開口を通過した光を伝搬する光ファイバと、
前記伝搬された光を取得し、該光のスペクトルを計測する受光センサ(35)と、を備え、
前記第1開口(21a、21b、21c、21d、21e)及び前記第2開口(26a、26b、26c、26d、26e)は、それぞれ、複数のピンホールから構成される形状を有する
光学計測装置(100,100A)。
【符号の説明】
【0129】
10…光源、11…投光用光ファイバ、20…センサヘッド、21,21A,21B,21C,21D…第1スリット部材、21a,21b,21c,21d,21e…第1開口、22…ハーフミラー、23…回折レンズ、24…対物レンズ、25…減光部材、26,26A,26B,26C,26D…第2スリット部材、26a,26b,26c,26d,26e…第2開口、27…受光用光ファイバ、27a…ファイバ径、27b…コア径、30…分光器、31…第3スリット部材、31a…第3開口、32…第1レンズ、33…回折格子、34…第2レンズ、35…受光センサ、36…処理回路、40…光カプラ、41…投受光用光ファイバ、90…コントローラ、100,100A…光学計測装置、AX…光軸、BS…面、DS…回折面、TA…計測対象物。