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特許7581833積層体、樹脂製品、袋体、および樹脂製品、袋体の製造方法。
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  • 特許-積層体、樹脂製品、袋体、および樹脂製品、袋体の製造方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】積層体、樹脂製品、袋体、および樹脂製品、袋体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B65D30/02
B32B27/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020207666
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094658
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 貴之
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 純子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 愛子
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-096322(JP,A)
【文献】特開2019-130736(JP,A)
【文献】特開平07-276831(JP,A)
【文献】特開2005-070064(JP,A)
【文献】特開2008-230182(JP,A)
【文献】特開2021-091109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B41M5/035;5/26;5/36-5/48;5/50;5/52
B65D30/00-33/38
B65D35/44-35/54;39/00-55/16
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層とシーラント層を備えた包装材料のシーラント層同士を接合した袋体であって、前記基材層に重ねて、ヒートシール層、バリア層、離型層が順に積層されてなる、袋体。
【請求項2】
少なくとも基材層とシーラント層を備えた包装材料のシーラント層同士を接合した袋体を準備する工程と、
基材と、当該基材と剥離するための離型層と、所定のバリア性を備えたバリア層と、対象物に接合されるためのヒートシール層が、この順に重ねて形成された転写フィルムを準備する工程と、
前記袋体の基材層と前記転写フィルムのヒートシール層を接合する工程と、
前記転写フィルムの前記基材を、前記離型層と剥離する工程と、
を有する、袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性を付与することが容易な転写用の積層体、およびそのような積層体を用いてバリア性が付与された樹脂製品または袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋などの袋体に用いられるフィルムである包装フィルムとしては、基材層とシーラント層が重ねられた積層フィルムが用いられている。このような包装フィルムにバリア性を付与するために、基材層やシーラント層としてバリア性を備えたものを用いたり、基材層やシーラント層以外に別途バリア層を設けたりすることが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装材料や成形品へのバリア性付与の方法としては、金属箔、金属や無機物の蒸着フィルム、バリア性樹脂を層として設けたバリアフィルムやシートを用いる方法がある。バリアフィルムやシートには、バリア性能違いで複数のラインアップが用意されているが、一般的にハイバリア・ミドルバリア・ローバリアといった大まかな区分である。そのため、ハイバリアより強いバリア性が要求される場合や、ハイバリアとミドルバリアの中間が必要な場合には、新たなバリアフィルムを製造する必要があり、コストが掛かるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、所望のバリア性能を安価で簡易に付与することが可能な積層体、および、そのような積層体を用いた樹脂製品、袋体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、
基材と、基材と剥離するための離型層と、所定のバリア性を備えたバリア層と、対象物に接合されるためのヒートシール層が、この順に重ねて形成された積層体を提供する。
【0007】
また、本発明は、
少なくとも基材層を備えた樹脂製品であって、前記基材層に重ねて、ヒートシール層、バリア層、離型層が順に積層されてなる、樹脂製品を提供する。
【0008】
また、本発明は、
少なくとも基材層とシーラント層を備えた包装材料のシーラント層同士を接合した袋体であって、前記基材層に重ねて、ヒートシール層、バリア層、離型層が順に積層されてなる、袋体を提供する。
【0009】
また、本発明は、
少なくとも基材層を備えた樹脂製品を準備する工程と、
基材と、当該基材と剥離するための離型層と、所定のバリア性を備えたバリア層と、対象物に接合されるためのヒートシール層が、この順に重ねて形成された転写フィルムを準備する工程と、
前記樹脂製品の基材層と前記転写フィルムのヒートシール層を接合する工程と、
前記転写フィルムの前記基材を、前記離型層と剥離する工程と、
を有する、樹脂製品の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、
少なくとも基材層とシーラント層を備えた包装材料のシーラント層同士を接合した袋体を準備する工程と、
基材と、当該基材と剥離するための離型層と、所定のバリア性を備えたバリア層と、対象物に接合されるためのヒートシール層が、この順に重ねて形成された転写フィルムを準備する工程と、
前記袋体の基材層と前記転写フィルムのヒートシール層を接合する工程と、
前記転写フィルムの前記基材を、前記離型層と剥離する工程と、
を有する、袋体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望のバリア性能を安価で簡易に付与することが可能な積層体、および、そのような積層体を用いた樹脂製品または袋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る袋体を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る袋体を示す背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る袋体の積層構造を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る積層体である転写フィルムの積層構造を示す図である。
図5】応用例における袋体の積層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る袋体を示す正面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る袋体を示す背面図である。図1図2において、斜線のハッチングで示した箇所は、ヒートシールにより形成されたシール部を示している。
【0014】
本実施形態に係る袋体の構造は、図1図2に示すとおりである。1枚の長方形状(矩形状)の積層フィルムの対向する端部同士を重ねて合掌部3とし、この合掌部3をヒートシールして積層フィルムの内面同士を溶着することにより合掌部シール部4を形成して筒状体を形成する。そして、筒状体の開口端である第1縁部7、第2縁部8をヒートシールすることにより、筒状体の第1縁部7に第1縁部シール部5、第2縁部8に第2縁部シール部6を形成し、封止されたピロー形式と呼ばれる形態の袋体となる。
【0015】
合掌部3は、元の1枚の積層フィルムの端縁の位置を頂部3a、第2面2との境界を基部3bとしている。合掌部シール部4は、頂部3aから基部3bの全域に亘って形成されていてもよいし、頂部3a、基部3bに達しない範囲で形成されていてもよい。
【0016】
袋体は、互いに対向する第1面1と第2面2の2つの面に挟まれた収容部を有する。本実施形態では、第1面1は、1つの連続する面であるが、第2面2は、合掌部3の基部3bにおいて1枚のフィルムが接合されて形成された面である。図1図2に示したような袋体は、ピロー形式と呼ばれるものであり、その形態自体は公知のものである。第1面1、第2面2は、両者を区別するため、便宜上定めた相対的なものであり、どちらを、第1面として、どちらを第2面としてもよい。
【0017】
なお、本実施形態の袋体は、第1縁部シール部5または第2縁部シール部6のどちらか一方のみを形成した後、第1縁部7または第2縁部8に残ったままとなっている開口を充填口として用いて、内容物を収容部に充填し、その後、第1縁部シール部5または第2縁部シール部6の残りの一方を形成して、密封することにより得られるものである。本実施形態に係る袋体は、第1縁部シール部5または第2縁部シール部6を形成した密封後の袋体、第1縁部シール部5または第2縁部シール部6のどちらか一方のみを形成した状態の開口を有する袋体(内容物が充填されていない状態)の双方を含む。
【0018】
図面が繁雑になるため、図示は省略しているが、第1面1、第2面2には、商品名や、商品説明、製造者、原材料等、充填される内容物に関する情報が、文字や図柄の形態で印刷されている。また、図1に示すように、消費者に開封する位置を示唆する開封予定線9が、第1面1の第1縁部7付近に、第1縁部シール部5の長手方向に沿って印刷されている。図1の例では、開封予定線9として破線を印刷している。開封する位置の示唆は、他の態様で行ってもよい。
【0019】
本実施形態の袋体は、長方形状の1枚の積層フィルムで構成されている。本実施形態の袋は、上述のように、1枚の積層フィルムの対向する端部同士をヒートシールして合掌部シール部4を形成する。これにより、第1縁部7、第2縁部8が開口端となった筒状体となる。この際、積層フィルムの合掌部シール部4以外の部分で筒状体を形成している。そして、開放された第1縁部7、第2縁部8をそれぞれヒートシールして接合することにより、第1縁部シール部5、第2縁部シール部6を形成して、密封された袋体が得られる。
【0020】
<<各シール部>>
図2に示すように、合掌部シール部4は、積層フィルムの対向する端部同士を所定の幅でヒートシールすることにより形成されたシール部である。第1縁部シール部5は、合掌部シール部4を形成することにより、対向することになった第1縁部7に沿って所定の幅でヒートシールすることにより形成されたシール部である。第2縁部シール部6は、合掌部シール部4を形成することにより、対向することになった第2縁部8に沿って所定の幅でヒートシールすることにより形成されたシール部である。
【0021】
本実施形態では、各シール部は、ヒートシールにより対向するシーラント同士を溶着することにより接合して得られる。ヒ-トシ-ルは、例えば、バ-シ-ル、回転ロ-ルシ-ル、ベルトシ-ル、インパルスシ-ル、高周波シ-ル、超音波シ-ル等の公知の方法で行うことができる。なお、シール部は、接着剤により対向するフィルム同士を接着することにより形成してもよい。
【0022】
合掌部シール部4、第1縁部シール部5、第2縁部シール部6は、いずれも2mm以上15mm以下のシール幅で形成されることが好ましく、4mm以上10mm以下の幅で形成されることがより好ましい。なお、シール幅とは、シール部が延びる方向と交差する方向におけるシール部の幅を意味する。
【0023】
第1縁部シール部5は、袋体の第1縁部7まで形成されていてもよいが、袋体の第1縁部7に沿って形成されていれば、第1縁部7まで達していなくてもよい。第2縁部シール部6は、袋体の第2縁部8まで形成されていてもよいが、袋体の第2縁部8に沿って形成されていれば、第2縁部8まで達していなくてもよい。
【0024】
<<積層フィルムの詳細>>
本実施形態の袋体は、1枚の積層フィルムを筒状にして両端を封止することにより形成され、さらに、第1面1、第2面2それぞれに重ねられた転写層を備えている。積層フィルムは、少なくとも、外側から、基材層、シーラント層を含む積層体である。例えば、積層フィルムは、外側から順に、基材層、印刷層、他の層、シーラント層を積層して形成されている。印刷層、他の層は必須ではない。シーラント層は、袋体の最内面を構成する層である。袋体が熱に対する耐性を必要とされる場合は、基材層は、耐熱性をもつ材料からなることが好ましい。
【0025】
基材層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。基材層の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。また、基材層は、二軸延伸されていることが好ましい。
【0026】
また、積層フィルムは、複数の基材層を備えていてもよい。複数の基材層として第1基材層、第2基材層を備えることができる。第1基材層、第2基材層としては、上記の基材層の材料の中から、適宜組み合わせて採用することができる。例えば、最外層である第1基材層としてポリエチレンテレフタレートを用い、内層(シーラント層側)である第2基材層としてポリアミドを用いることができる。第2基材層は、一方の側縁から他方の側縁に向かって延伸されていることが好ましい。第2基材層としては、例えば、バリア性に優れたMXD(メタキシレンジアミン)を含む、ユニチカ株式会社製「エンブレム(登録商標)NC」を用いることができる。また、第2基材層として、ユニチカ株式会社製「エンブレット(登録商標)PC」や、ユニチカ株式会社製「エンブレット(登録商標)PCBC」などのポリエステルを用いてもよい。第1基材層と第2基材層は、例えばドライラミネート法を用いて積層することができる。
【0027】
印刷層は、商品内容を表示したり美感を付与したりカット部分を表示したりするために設けられる。印刷層は、バインダーと顔料を含む印刷インキにより形成される。シーラント層は、積層フィルムのうち、製袋して袋体とするときの最も袋体内方となる側に配置される。シーラント層の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂などの熱接着性樹脂が採用できる。本実施形態では、ポリエチレンを用いている。シーラント層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0028】
積層フィルムは、他の層を含んでいてもよい。他の層は、基材層の外側に設けられていてもよいし、基材層とシーラント層の間に設けられていてもよい。他の層としては、水蒸気その他のガスバリア性、遮光性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択される。例えば、他の層がガスバリア層の場合、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層が設けられる。蒸着層は、基材層に積層してもよいし、シーラント層に蒸着してもよい。あるいは、アルミニウムなどの金属箔を設けてもよい。その他にも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)や、ナイロンMXD6などの芳香族ポリアミドなどの、ガスバリア性を有する樹脂層を設けてもよい。各層は、ドライラミネート法や溶融押し出し法などを用いて積層することができる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る袋体の積層構造を示す断面図である。図3において、図面上側が外層、図面下側を内層(収容部側)として説明していく。図3に示すように、本実施形態に係る袋体の積層構造は、積層フィルム10の外面側に、転写層25が積層された構造となっている。積層フィルム10においては、最外層から最内層に向かって順に、基材層11、印刷層12、シーラント層18が積層された構成となっている。基材層11、印刷層12、シーラント層18としては、上述のような材料から適宜選択して使用することができる。内面に印刷層12が形成された基材層11とシーラント層18は、接着剤を用いたドライラミネート、接着性樹脂を用いた押出しラミネート等により接着されている。
【0030】
転写層25は、外面側から離型層22、バリア層23、ヒートシール層24が積層された構造となっている。転写層25は、後述する転写フィルム20から積層フィルム10に転写された層であり、ヒートシール層24が積層フィルム10の最外面の基材層11に接合されることにより、積層フィルム10に付加される。本実施形態に係る袋体は、図3に示すような積層構造であり、バリア層23は、積層フィルム10ではなく、転写層25に含まれている。このため、袋体を製造する際に、バリア層を備えていない安価な汎用の積層フィルムを用いて袋体を製造することができる。バリア層については、転写により後付けで付加し、図3に示したような積層構造を備えた袋体を作成することができる。なお、図3は、各層の配置順序を示すものであり、各層の厚みの比率、面方向のサイズと厚みとの比率は、必ずしも現実のものとは一致していない。
【0031】
<<転写フィルムの詳細>>
次に、積層フィルムに転写層を転写するための積層体である転写フィルムについて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る積層体である転写フィルムの積層構造を示す図である。図4に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体である転写フィルム20は、順に、基材21、離型層22、バリア層23、ヒートシール層24を含む積層体である。離型層22、バリア層23、ヒートシール層24は転写層25を構成し、基材21から剥離されて袋体に転写される層である。
【0032】
ヒートシール層24は、袋体の外面に接合される層である。基材21は、転写層25を構成する離型層22、バリア層23、ヒートシール層24を支持するための層である。基材21の材料としては、耐熱性、加工適正等を考慮して、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。基材層は、二軸延伸されていることが好ましい。
【0033】
離型層22は、加熱により基材21から剥離する層である。離型層22が基材21から剥離することにより、転写層25である離型層22、バリア層23、ヒートシール層24が袋体等の物品に転写される。離型層22は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル-メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、電離放射線硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル-メラミン系樹脂単独、アクリル-メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル-メラミン系樹脂単独又はアクリル-メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層22を構成することが特に好ましい。
【0034】
離型層22としては、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、離型層22の厚みは、1μm以上10μm以下とすることが好ましい。例えば、離型層22として分子量100,000、ガラス転移温度が100℃であるアクリル系樹脂を用い、離型層22の厚みを5μmとすることができる。
【0035】
ヒートシール層24は、転写フィルム20のうち、基材21と反対側の袋体と接する側に配置される。ヒートシール層24の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂などの熱接着性樹脂が採用できる。本実施形態では、ポリエチレンを用いている。ヒートシール層24は未延伸であることが好ましい。
【0036】
バリア層23としては、水蒸気その他のガスバリア性、遮光性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択される。例えば、ガスバリア層の場合、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層が設けられる。蒸着層は、ヒートシール層24に蒸着することができる。バリア層としては、アルミニウムなどの金属箔を設けてもよい。その他にも、バリア層として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)や、ナイロンMXD6などの芳香族ポリアミドなどの、ガスバリア性を有する樹脂層を設けてもよい。各層は、ドライラミネート法や溶融押し出し法などを用いて積層することができる。転写フィルム20の一例としては、基材21として厚み16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、PET16μm/バリア転写層(離型層/蒸着層/ヒートシール層)の構成とすることができる。
【0037】
<<袋体の製造方法>>
次に、本実施形態に係る袋体の製造方法について説明する。まず、少なくとも基材層とシーラント層を備えた積層フィルム(包装材料)のシーラント層同士を接合した袋体を準備する工程を実行する。具体的には、図3に示したような積層フィルム10を用いて、積層フィルム10の対向する端部同士を重ねて合掌部3とし、シーラント層18同士が対向する合掌部3をヒートシールして、合掌部シール部4を形成して筒状体を形成する。そして、筒状体の開口端である第1縁部7、第2縁部8をヒートシールすることにより、筒状体の第1縁部7に第1縁部シール部5、第2縁部8に第2縁部シール部6を形成し、封止されたピロー形式と呼ばれる形態の袋体を形成する。
【0038】
次に、基材と、基材と剥離するための離型層と、所定のバリア性を備えたバリア層と、対象物に接合されるためのヒートシール層が、この順に重ねて形成された転写フィルムを準備する工程を実行する。具体的には、図4に示したような基材21、離型層22、バリア層23、ヒートシール層24を備えた転写フィルム20を用意する。
【0039】
そして、袋体の基材層と転写フィルムのヒートシール層を接合する工程を実行する。具体的には、熱ローラーと袋体との間に、ヒートシール層24を袋体側に向けた状態で転写フィルム20を挿入する。続いて、熱ローラーで転写フィルム20を袋体に抑え付けて加熱する。そして、ヒートシール層24を袋体の基材層11に接合するとともに、転写層25を熱転写(ホットスタンプ)する。
【0040】
次に、転写フィルムの基材を、離型層と剥離する工程を実行する。具体的には、転写層25が袋体と基材21の両方に接続された状態において、転写フィルム20の基材21を、転写層25の離型層22から剥離する。これにより、袋体を構成する積層構造は、図3に示したように、基材層11とシーラント層18を備えた積層フィルム10と、バリア層23を含む転写層25を備えたものとなる。
【0041】
このように、袋体を製造した後、転写フィルム20からバリア層23を含む転写層25を袋体の表面に転写するようにしたので、バリア層を有していない安価な包装材料(積層フィルム)で袋体を形成した後、後付けで必要なだけバリア機能を付加した袋体を得ることが可能となる。後付けで付加するため、転写層25は、袋体の全面に付加することもできるし、一部にのみ付加することもできる。
【0042】
<<応用例>>
次に、本実施形態に係る袋体の応用例について説明する。図5は、応用例における袋体の積層構造を示す図である。図5においては、説明の便宜上、積層フィルム10と転写層25で袋体の積層構造を示している。上述のように、積層フィルム10は、基材層11、印刷層12、シーラント層18を含み、転写層25は、離型層22、バリア層23、ヒートシール層24を含んでいる。図5において、基材層11は、積層フィルム10の最上方に位置し、ヒートシール層24は、各転写層25の最下方に位置している。
【0043】
図5に示すような袋体を作成する場合、まず、積層フィルム10にて、袋体を作成する。そして、その袋体の表面に、転写フィルム20から転写層25を転写する。図5の例では、全面に転写層25を二層付加した後、一部に転写層25を一層付加している。これにより、一部においては、バリア層23が三層形成され、他の一部においては、バリア層23が二層形成されることになる。バリア層23が三層の箇所は、バリア層23が二層の箇所よりもバリア性が高まる。
【0044】
バリア層23を備えた転写層25を、要求されるバリア性に応じて、必要な回数だけ転写することにより、バリア性をコントロールすることができる。例えば、バリア層を備えていない積層フィルム10を用意しておくとともに、比較的弱いバリア性のバリア層23を含む転写フィルム20を用意しておく。そして、要求されるバリア強度に合わせて、転写回数を決定し、積層フィルム10に積層されるバリア層23の数を定める。このようにすることにより、要求されるバリア強度に合わせて高価な積層フィルムを作成する必要がなく、安価で柔軟に必要なバリア強度を持つ包装材料を提供することができる。
【0045】
転写層25を複数重ねて形成できるため、強度のバリア性を必要とする場合は、多数回転写を重ねればよく、微弱なバリア性で十分な場合には、1回だけ転写を行えばよい。このため、基本の包装材料としては、積層フィルム10に示したように、バリア層を備えない安価なものを用意しておくだけでよく、全体的なコストの削減が見込まれる。また、特性の異なるバリア性のバリア層を有する転写フィルム20を用意しておくことにより、特性の異なるバリア性を簡易に付与することも可能となる。
【0046】
<<袋体以外の樹脂製品>>
上記実施形態では、基材層とシーラント層を備えた包装材料のシーラント層同士を接合した袋体を対象としてバリア性を付与したが、本発明は、袋体以外の樹脂製品に適用することが可能である。具体的には、例えば、PETボトルやペン軸に適用することが可能である。PETボトルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であり、ペン軸は、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PET製である。これらの樹脂製品に対して、上述の袋に対して行ったようにして、バリア製を付与する。
【0047】
具体的には、基材21、離型層22、バリア層23、ヒートシール層24を備えた転写フィルム20を用意する。そして、樹脂製品の基材層と転写フィルムのヒートシール層を接合する工程を実行する。続いて、転写フィルム20を樹脂製品に抑え付けて加熱する。そして、ヒートシール層24を樹脂製品の基材層に接合するとともに、転写層25を熱転写(ホットスタンプ)する。
【0048】
次に、転写フィルムの基材を、離型層と剥離する工程を実行する。具体的には、転写層25が樹脂製品と基材21の両方に接続された状態において、転写フィルム20の基材21を、転写層25の離型層22から剥離する。これにより、安価で柔軟に必要なバリア強度を持つ樹脂製品を提供することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、袋体としてピロー形式の包装袋を例にとって説明したが、三方袋、四方袋、ガセット袋、4ピラー袋、自立袋等の様々な形態の袋体に適用することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、積層フィルムにより作成された包装袋に対して、後付けでバリア層を付加するようにしたが、転写により積層フィルムにバリア層を付加し、その後、バリア層が付加された包装材料を用いて、包装袋を作成するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、転写フィルムを用いて熱転写により、転写層を対象物に転写するようにしたが、インモールド成形により射出された樹脂に転写することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・第1面
2・・・第2面
3・・・合掌部
3a・・・合掌部の頂部
3b・・・合掌部の基部
4・・・合掌部シール部
5・・・第1縁部シール部
6・・・第2縁部シール部
7・・・第1縁部
8・・・第2縁部
9・・・開封予定線
10・・・積層フィルム
11・・・基材層
12・・・印刷層
18・・・シーラント層
20・・・転写フィルム(積層体)
21・・・基材
22・・・離型層
23・・・バリア層
24・・・ヒートシール層
25・・・転写層
図1
図2
図3
図4
図5