(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】成形機の制御装置および成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241106BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2020208232
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】滝井 卓
(72)【発明者】
【氏名】杉田 俊道
(72)【発明者】
【氏名】入江 雄大
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-241894(JP,A)
【文献】特開2007-196390(JP,A)
【文献】特開2004-148521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/17
B22D 17/32
G06F 3/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定項目と前記設定項目に対応する設定値とを含む成形条件の履歴情報を記憶する記憶
部と、
前記履歴情報が前記設定項目の単位で列挙される表示部と、
前記表示部に表示される前記履歴情報を前記設定項目の単位で選択する操作部と、
前記記憶部に記憶され、かつ、選択された前記履歴情報の前記設定項目に対応する過去の前記設定値に基づいて成形動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする成形機の制御装置。
【請求項2】
前記操作部において、前記設定項目の単位で前記履歴情報が選択されると、
前記表示部においては、前記設定項目の単位で前記履歴情報が列挙される表示画面から、複数の前記設定値を入力する入力画面に表示が移行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記操作部において、前記設定項目の単位で前記履歴情報が選択されると、
前記制御部においては、前記選択に対応する前記設定値だけが更新された前記成形条件、または、前記設定値に対応する他の前記設定値を含めて更新された前記成形条件に基づいて前記成形動作を制御する、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記操作部において、複数の前記設定項目に対応する前記履歴情報が選択されると、
前記制御部において、選択された複数の前記履歴情報の前記設定項目に対応する前記設定値を一括して更新された前記成形条件に基づいて前記成形動作を制御する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記操作部において、複数の前記設定項目に対応する前記履歴情報が選択されると、
前記表示部において、選択された前記設定項目に対応する複数の前記入力画面が表示画面を分割して一括表示される、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記表示部に表示されるべき前記履歴情報を前記成形条件の種別毎に選択する種別選択部を備え、
前記種別選択部で選択される前記成形条件の種別に該当する前記履歴情報が前記設定項目の単位で前記表示部に表示される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
成形装置と、
前記成形装置の動作を制御する、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の制御装
置と、
を備えることを特徴とする成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機、例えば射出成形機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所望する成形品を射出成形で得るには、射出成形するのに必要な成形条件を構成する複数の設定値を適切な値に調整する必要がある。射出成形の成形条件としては、型閉じ、射出、保圧、計量、型開き、突出しなどの各工程に対応するものがある。成形条件における設定値の調整は、射出成形機に付随する制御装置を通じて行われる。
【0003】
成形条件の調整に関わる制御装置について、例えば特許文献1および特許文献2が提案している。
特許文献1の制御装置は、過去に設定された射出成形機の成形条件の表示に伴う遡るボタンおよび下るボタンを備える。遡るボタンは、過去に設定された成形条件を時系列的に1回ずつ遡る方向に表示させるためのボタンである。下るボタンは、過去に設定された成形条件を時系列的に1回ずつ下る方向に表示させるためのボタンである。
【0004】
また、特許文献2は、複数の設定項目を含む成形条件が設定されて動作する成形機の管理方法を提案する。この提案は、過去の任意の時点を指定し、指定された時点における成形条件を表示させる。より具体的には、特許文献2は、成形条件の変更履歴の一覧リストを現在の時刻に近いものから順に並べて表示する。特許文献2は、この一覧リストから所望の成形条件の変更事項を選択することで設定変更時点を特定し、この設定変更時点の成形機の成形条件を表示する。そして、表示された成形条件の全ての設定値を、作業者の操作(手動)または自動により、成形機の運転条件として一括して設定することで、成形機の全ての成形条件を当該成形条件の変更時点の設定値に変更して戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-121547号公報
【文献】特開2005-231251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、過去に設定した所望の成形条件を見つけるまで、遡るボタンまたは下るボタンを複数回にわたり繰り返して押さなければならない。したがって、特許文献1の提案は作業性、生産性が劣る。
また、特許文献2は、成形条件の変更履歴の一覧リストのうち、選択した変更時点における全ての成形条件が過去の条件に戻されてしまい、必要のない成形条件まで戻されてしまう。したがって、特許文献2の提案は、融通が利かない。
【0007】
そこで本発明は、オペレータが所望する設定変更に対応する履歴情報に容易にたどり着き、設定値を設定できる制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の成形機の制御装置は、設定項目と設定項目に対応する設定値とを含む成形条件の履歴情報を記憶する記憶部と、履歴情報が設定項目の単位で列挙される表示部と、表示部に表示される履歴情報を設定項目の単位で選択する操作部と、選択された履歴情報の設定項目に対応する設定値に基づいて成形動作を制御する制御部と、を備える。
【0009】
本発明の制御装置は、好ましくは、操作部において、設定項目の単位で履歴情報が選択されると、表示部においては、設定項目の単位で履歴情報が列挙される表示画面から、複数の設定値を入力する入力画面に表示が移行する。
【0010】
本発明の制御装置は、好ましくは、操作部において、設定項目の単位で履歴情報が選択されると、制御部においては、選択に対応する設定値だけが更新された成形条件、または、設定値に対応する他の設定値を含めて更新された成形条件のいずれかに基づいて成形動作を制御する。
【0011】
本発明の制御装置は、好ましくは、操作部において、複数の設定項目に対応する履歴情報が選択されると、制御部において、選択された履歴情報の設定項目に対応する設定値が更新された成形条件に基づいて成形動作を制御する。
【0012】
本発明の制御装置は、好ましくは、操作部において、複数の設定項目に対応する履歴情報が選択されると、表示部において、選択された設定項目に対応する複数の成形条件の入力画面が表示画面を分割して一括表示される。
【0013】
本発明の制御装置は、好ましくは、表示部に表示されるべき履歴情報を成形条件の種別毎に選択する種別選択部を備え、種別選択部で選択される成形条件の種別に該当する履歴情報が設定項目の単位で前記表示部に表示される。
【0014】
本発明はまた、設定項目と設定項目に対応する設定値とを含む成形条件の履歴情報を記憶する記憶部と、履歴情報が表示される表示部と、表示部に表示されるべき履歴情報を成形条件の種別毎に選択する種別選択部と、を備え、種別選択部で選択される成形条件に該当する履歴情報が表示部に表示される成形機の制御装置を提供する。
【0015】
本発明は、成形装置と、成形装置の動作を制御する制御装置と、を備える成形機を提供する。この制御装置としては以上で説明したいずれかの制御装置が適用される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オペレータが所望の設定変更の履歴に容易にたどり着き、設定値を更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る射出成形機の構成を示している。
【
図2】本実施形態に係る射出成形機の成形サイクルの一例を示している。
【
図3】本実施形態に係る制御装置の構成を示している。
【
図4】本実施形態に係る表示部の表示例を示し、(a)は操作部に対応する表示例、(b)は(a)において設定履歴表示ボタン押し下げたときの表示例、(c)は(a)において履歴選択ボタンを押し下げたときの表示例である。
【
図6】成形条件の履歴一覧表の動作を示し、(a)は第1形態において1行を選択した表示例であり、(b)は第1形態において2行を選択した表示例である。
【
図7】成形条件の履歴一覧表の動作を示し、(a)は第2形態の表示例であり、(b)は第3形態の表示例である。
【
図8】型閉および型開に関わる成形条件の入力画面の表示例である。
【
図10】表示画面を分割し、4つの工程の入力画面を一括して表示する例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る射出成形機1を説明する。
本実施の形態における射出成形機1は、
図1に示すように、成形装置10と、成形装置10の動作を制御する制御装置50とを備えている。射出成形機1は電動射出成形機であり、モータM1,M2,M3およびM4を有し、これらモータM1~M4の駆動力により射出成形機1の動作要素を駆動して樹脂を所定圧力で金型に充填し、金型内で樹脂を硬化させて成形品を製造する。モータM1~M4は、例えばサーボモータからなる。
【0019】
射出成形機1は、射出成形するのに必要な成形条件の設定値を制御装置50に入力することができる。射出成形機1は、入力された成形条件に基づいてモータM1,M2,M3およびM4が駆動力を発揮して、所望する成形品を得ることができる。射出成形機1は、この成形条件の入力に過去の履歴情報を用いることにより成形条件の入力を効率的に行うことができる。
以下、射出成形機1の構成を説明した後に、本実施形態における成形条件の入力手法について言及する。
【0020】
[成形装置10:
図1]
成形装置10は、
図1に示すように、型締機構20と、可塑化機構30と、を備える。
型締機構20は、固定金型23が取り付けられる固定型盤21と、可動金型27が取り付けられる可動型盤25とを備えている。型締機構20は、射出成形に先立って、可動型盤25を移動させて可動金型27を固定金型23に当接させる。そしてさらに、固定金型23と可動金型27の間の圧力を高めて型締めを行った後に、固定金型23と可動金型27の間に形成される図示を省略するキャビティに、可塑化機構30から溶融樹脂を射出して成形品を得る。型締機構20は、溶融樹脂が硬化した後の成形品をキャビティから突き出すためのエジェクタピン29を備えている。
なお、射出成形機1において、可動型盤25が設けられる側を前、固定型盤21が設けられる側を後と定義する。この前後の関係は相対的なものとする。
【0021】
可塑化機構30は、型締機構20の側である前方側に吐出ノズル32が形成された加熱シリンダ31と、加熱シリンダ31の内部に設けられるスクリュ33と、樹脂原料を加熱シリンダ31の内部に供給するための図示を省略する原料ホッパを備えている。
可塑化機構30において、スクリュ33が回転されると、原料ホッパから供給された例えばペレット状の熱可塑性樹脂が加熱シリンダ31の前方側へ搬送される。この搬送過程において、この樹脂ペレットは徐々に加熱、溶融して、スクリュ33の前方に貯留される。貯留により発生する樹脂の圧力を受けてスクリュ33は後退しながら所定量の溶融樹脂をスクリュ33の前方に計量する。その後、吐出ノズル32から、計量された溶融樹脂が型締機構20の固定金型23と可動金型27の間に形成されるキャビティへ所定量だけ射出される。
【0022】
成形装置10は、型締機構20および可塑化機構30に所定の動作を行わせるためのモータM1~M4を備えている。モータM1は射出動作および計量動作のための駆動源であり、加熱シリンダ内に設けられたスクリュ33を進退移動させる。モータM2は可塑化動作のための駆動源であり、樹脂を可塑化するためにスクリュ33を回転させる。モータM4はエジェクタ動作のための駆動源であり、エジェクタピン29を移動させて、固定金型23と可動金型27から成形品を突き出す。モータM3は型閉動作および型開動作のための駆動源であり、可動型盤25を移動させて固定金型23と可動金型27の当接(型締め)動作および離間動作ならびに型締めおよび型開き動作を行う。
モータM1~M4により駆動されるスクリュ33、可動金型27およびエジェクタピン29は射出成形機1の動作要素である。また、モータM1~M4をそれぞれ単独で指摘するときには、射出モータM1、可塑化モータM2、型開閉モータM3、エジェクタモータM4と称する。モータM1、M2、M3、M4のそれぞれに対応し、使用電力を測定する測定器などを設けることができる。測定器で測定されたモータM1~M4の使用電力に関する情報は制御装置50に送られ、モータM1、M2、M3、M4の制御に用いられる。
【0023】
成形装置10は、モータM1、M2、M3、M4のそれぞれに対応するサーボアンプSA1、SA2、SA3、SA4を備える。サーボアンプSA1~SA4は、それぞれ、制御装置50からの指令値と、モータM1~M4からフィードバックされるエンコーダ信号との比較値に基づき、例えば3相PWM信号によってモータM1~M4を駆動させる。すなわち、サーボアンプSA1~SA4およびモータM1~M4は、射出成形機1を駆動させる駆動部として機能する。また、サーボアンプSA1~SA4は、モータM1~M4からフィードバックされたエンコーダ信号に基づき位置フィードバック信号を生成し、その位置フィードバック信号を制御装置50に送信する。
【0024】
[制御装置50:
図1]
次に、制御装置50について説明する。
制御装置50は、コンピュータにより構成され、射出成形機1の動作状態を監視するとともにサーボアンプSA1~SA4を介してモータM1~M4の動作を制御する。モータM1~M4の動作の制御は、成形装置10の成形+動作を制御することを意味する。
制御装置50は、
図1に示すように、制御部51と、記憶部53と、操作部55と、表示部57と、を有する。制御装置50は、制御部51~表示部57以外の要素を含むことができる。
【0025】
[射出成形機1の成形サイクル:
図2]
射出成形機1は、
図2に示される1サイクルの動作を行うことにより単数または複数の成形品を形成する。
図2に示すように、1サイクルにおいては、型締めを含む型閉工程、射出工程、可塑化工程、型開工程、エジェクタ工程および待機工程がこの順に実行される。制御装置50は、この一連のサイクルの実行を制御する。なお、
図2は単に各モータのON/OFFを示したものであり(上側線がON/下側線がOFF)、モータの回転方向(正転/逆転)は示してはいない。また、以上で列挙された工程は例示であり、他の工程を含んでもよい。
【0026】
1サイクルを構成する以上の型閉工程~エジェクタ工程のそれぞれにおいて、成形条件が設定される。その中で、一例として、型開工程における可動型盤25の移動速度、型開きの開始位置および完了位置、型開する速度(型開速度)などの設定項目に対応する設定値が成形条件として設定される。
【0027】
[制御部51:
図1]
制御部51は、記憶部53から読み出されたプログラムに基づき、各種機能を実行する。この機能は、モータM1~M4の動作を制御する第1機能と、成形条件の入力を制御する第2機能と、を含む。
第1機能は、サーボアンプSA1~SA4を制御することにより、モータM1~M4の動作を制御する。
第2機能は、記憶部53に記憶されている過去の成形条件の履歴情報を利用して、これから入力すべき成形条件の設定値の入力およびその確定を行う。第1機能は、確定された成形条件にしたがって、モータM1~M4の動作を制御する。第2機能について、追ってより詳しく説明する。
制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)から構成される。
【0028】
[記憶部53:
図1]
記憶部53は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、各種プログラムおよびデータを格納する。記憶部53は、物理的に一体をなしていてもよいし、物理的に複数の記憶要素に分かれていてもよい。物理的に一体をなしている場合に、記憶されるデータの種別に応じて、記憶領域が区分できる。物理的に複数の記憶要素に分かれている場合には、記憶されるデータの種別に応じて、記憶される要素を特定できる。
【0029】
[操作部55,表示部57:
図1]
操作部55は、射出成形機1のオペレータによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御部51に出力する。表示部57は、制御部51による制御下で、操作部55における入力操作に応じた画像を表示する。
【0030】
表示部57の表示画面は、射出成形機1の設定などに用いられる。オペレータは、表示部57で表示される表示画面を見ながら、操作部55を操作することにより成形装置10の設定などを行う。
【0031】
操作部55および表示部57は、例えばタッチパネルで構成することで、一体化してもよい。
図1においては、両者の存在を明確にするために、操作部55および表示部57が独立する例を示している。
【0032】
[制御装置50の具体的構成:
図3,
図4,
図5]
次に、
図3、
図4および
図5を参照して、制御装置50のより具体的な内容を説明する。
はじめに操作部55について説明する。
操作部55は、
図3および
図4(a)に示すように、設定履歴表示ボタン55Aと、履歴選択ボタン55Bと、選択履歴確定ボタン55Cと、を備える。これらボタン類は、表示部57に表示される。
【0033】
[設定履歴表示ボタン55A:
図4,
図5]
設定履歴表示ボタン55Aは、過去に設定された成形条件の履歴一覧表を表示させるボタンである。
設定履歴表示ボタン55Aを、クリックするなどの操作をすると、設定履歴表示ボタン55Aを操作した時刻を基準にして時系列順に遡って成形条件(設定値)の履歴が一覧表として表示部57に表示される。成形条件の履歴一覧表の表示例については後述する。前記ボタンは、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)におけるタッチパネルによるソフトウェアボタンを想定しているが、本発明においてこれに限定されることがなく、プルダウンメニュー、チェックボックス、スライドスイッチ等、選択操作が可能なソフトウェアによる操作部、または機械式の操作部であってもよい。
【0034】
表示部57に表示される設定履歴表示ボタン55Aの一例が
図4(a)に示されている。
図4(a)は、表示部57の大部分を占めるように大きく表示されているが、射出成形機1のオペレータが認識できる限り、設定履歴表示ボタン55Aは表示部57の限られた一部に小さく表示されてもよい。履歴選択ボタン55Bおよび選択履歴確定ボタン55Cも同様である。
【0035】
設定履歴表示ボタン55Aを押し下げると、
図4(b)に示すように、表示すべき成形条件の種別を訪ねる選択ボタン55A1,55A2,55A3,55A4が表示部57に表示される。選択ボタン55A1は、射出に関する成形条件の履歴一覧表の表示を要求する場合に押し下げられ、選択ボタン55A2は、可塑化に関する成形条件の履歴一覧表の表示を要求する場合に押し下げられる。選択ボタン55A3は、温度に関する成形条件の履歴一覧表の表示を要求する場合に押し下げられ、選択ボタン55A4は、型開閉に関する成形条件の履歴一覧表の表示を要求する場合に押し下げられる。押し下げられる選択ボタン55A1,55A2,55A3,55A4に応じて、表示部57には該当する成形条件の履歴一覧表が表示される。また、選択ボタン55A1,55A2,55A3,55A4のいずれかが押し下げられると、
図4(b)の表示から
図4(a)の表示に戻る。
これにより履歴表示を所望の成形条件の種別によって絞り込めるため、所望の設定履歴を探す効率が向上し作業性を高めることができる。
【0036】
[履歴選択ボタン55B:
図4]
履歴選択ボタン55Bは、選択の形態を選ぶときに押し下げられる。
履歴選択ボタン55Bによる形態の選択は、一例として以下の第1形態、第2形態および第3形態の三つの形態を含んでいる。履歴選択ボタン55Bを押し下げると、
図4(c)に示すように、第1形態、第2形態および第3形態のそれぞれに対応する第1形態ボタン55B1、第2形態ボタン55B2および第3形態ボタン55B3が表示される。オペレータは、第1形態ボタン55B1、第2形態ボタン55B2および第3形態ボタン55B3のいずれかを押し下げる。なお本実施形態においては、成形条件の履歴一覧を表示させる前に履歴選択ボタン55Bを表示させる例を示すが、履歴選択ボタン55Bは後述するように、成形条件の履歴一覧と同一画面に表示してもよい。
【0037】
第1形態(55B1):表示画面で選択した設定項目だけを選択する。
第2形態(55B2):表示画面で選択した設定項目を除いた、同じサイクルの他の設定項目を全て選択する。
第3形態(55B3):表示画面で選択した設定項目に加えて、同じサイクルの他の設定項目を全て選択する。
【0038】
[成形条件の履歴一覧:
図5]
第1形態ボタン55B1、第2形態ボタン55B2および第3形態ボタン55B3のいずれかを押し下げると、該当する成形条件の履歴一覧が表形式で表示部57に表示される。
図5にその一例が示されている。
図5は、先に選択ボタン55A4が押し下げられていることを前提として、型開閉工程に関する成形条件の履歴一覧表Tが表示部57に表示される例を示している。履歴一覧表Tは、過去の成形条件に関する履歴情報が設定項目の単位で列挙される。
【0039】
履歴一覧表Tは、
図5に示すように、最上位に該当する先頭行に「選択」、「時刻」、「工程」、「設定項目」、「単位」ならびに「変更後」の設定値および「変更前」の設定値が掲げられている。この履歴一覧表Tはあくまで一例であり、他の要素を含んでもよいし、一部の要素を含まなくてもよい。例えば、設定値について、「変更後」だけを表示させてもよい。
履歴一覧表Tは1行について「時刻」~「変更前」のそれぞれの履歴情報が列挙されており、オペレータは1行の単位で所望する設定値を選択できる。この1行には設定項目が含まれており、設定項目に対応する設定値の選択は設定項目の単位で行われる。
【0040】
「選択」は、同じ行に表示されている工程における設定項目について「変更後」の値(設定値)を採用する場合に、例えば指先によるタッチまたはマウスでクリックするボタンである。
「時刻」は、同じ行に表示されている工程における設定項目について「変更後」の値(設定値)が設定された月日を含む時刻が表示される。同じ時刻のデータおよび時刻が近似するデータは同じ成形サイクルに含まれることを表している。
「工程」は、前述した型閉工程~型開工程の何れに該当するかを記号で示している。ここでは記号「D」が表示されるが、Dは型開閉工程を表しているものとする。
【0041】
「設定項目」は、「工程」に属する具体的な成形項目が表示される。ここではa,b,cなどの記号で表示されるが、具体的には型開速度、型閉開始位置、型締力などが該当する。また、ここでは同一サイクルにおける「設定項目」として、a~cの3つだけが明示されているが、型開および型閉における型の移動速度などの他の設定項目を含むことができる。
【0042】
「単位」は、設定項目の単位が表示される。例えば、「設定項目」aが型開速度に対応するとその単位は例えばmm/sec.(ミリメートル/秒)または仕様値最高速度に対する比率%(パーセント)といった具合である。
設定値において、「変更後」は、当該時刻に行われた成形における設定項目の設定値を示し、「変更前」は、当該時刻より先行して行われた成形における設定項目の設定値が表示される。たとえば、「2020/11/25 10:25」の時刻に行われた「工程」Dの「設定項目」aの設定値は「0.5(mm/sec.)」であるが、これは先行する「変更前」の設定値「1.0(mm/sec.)」から変更された後の値である。
【0043】
履歴一覧表Tが表示される表示部57の画面には、
図5に示すように、他に以下の内容およびボタンが表示される。
表示部57の画面の左上部分には、履歴一覧表Tに含まれる工程「D」に関する履歴件数枠61が表示される。ここでは、型開閉工程に関する成形条件の履歴件数が158件であることが示されている。この158件とは、履歴一覧表Tが設定項目ごとに158行のデータから構成されることを意味する。
履歴件数枠61の下には、選択形態枠62が表示される。選択形態枠62の中には、
図4(c)において押し下げられる第1形態ボタン55B1、第2形態ボタン55B2および第3形態ボタン55B3に対応する形態が表示される。ここでは第1形態55B1が押し下げられており、選択形態として第1(形態)が表示される。なお、第1形態は、前述したように、選択された設定値だけが適用されることを意味する。
【0044】
表示部57の画面の中央上部には、選択確定ボタン63が表示される。履歴一覧表Tの中から選択された1行に含まれる「変更後」の設定値の選択を確定する際に、選択確定ボタン63が押し下げられる。
選択確定ボタン63の右隣には成形条件の入力画面への移行を行う画面移行ボタン64が表示される。選択確定ボタン63を押し下げた後に、画面移行ボタン64を押し下げることにより、表示部57は成形条件の入力画面に移行する。
【0045】
画面移行ボタン64の右隣には前画面、つまり
図4(a)の表示に戻ることを指示するリターンボタン65が表示される。
リターンボタン65の右隣には、履歴一覧表Tを上下にスクロールさせるための上スクロールボタン66と下スクロールボタン67が表示される。
図5の状態で表示されている成形条件の履歴よりも前の成形条件の履歴を参照したいときなどに上スクロールボタン66と下スクロールボタン67が用いられる。
【0046】
[成形条件の履歴一覧からの展開:
図6,
図7,
図8]
次に、
図5に示される履歴一覧表Tにおいて1行分の成形条件の選択がなされたときの履歴一覧表Tの動作を、第1形態~第3形態の順に説明する。
【0047】
[第1形態:
図6(a),(b)]
図6(a)に第1形態の例が示されている。つまり、この例は2020月11月25日における工程Dの設定項目aについて、変更後の0.5mm/sec.を選択する。なお、
図6および
図7において、丸付きの数字は、オペレータによる操作の順番を示している。
図6(a)において、選択形態が第1形態であるから、このオペレータの操作は、「選択」が黒塗りされた行の成形条件(設定値)が選択されたことを意味する。
【0048】
オペレータは、次に、選択確定ボタン63を押し下げることにより、先に選択した1行分の設定値の選択が確定する。これにより、これから行われる射出成形の作業において、当該業の「変更後」の設定値が適用される。
オペレータは、次に、画面移行ボタン64を押し下げる。これにより、表示部57は履歴一覧表Tの表示から成形条件の入力画面の表示に変わる。
図8に成形条件の入力画面の表示例が示されているが、この表示例については、第3形態の説明の後に説明する。
また本実施形態においては、オペレータが所望の履歴を選択後、選択確定ボタン63の押し下げ、画面移行ボタン64の押し下げの順で操作することにより、成形条件の入力画面に移行する例を示したが本発明はこれに限定されない。選択確定ボタン63の押し下げ、画面移行ボタン64の押し下げをすることなく、オペレータが所望の履歴を選択操作すると同時に、成形条件の入力画面に移行するようにしてもよい。これによりオペレータの操作を単純化して、操作時間を短縮できるので生産性を向上することができる。
【0049】
次に、
図6(b)も第1形態に属する例を示している。
図6(b)の例は、前述の
図6(a)の選択に加えて、2020月11月20日付けの設定項目cについて、「変更後」の65kNを選択する。
図6(b)においても、選択形態が第1形態であるから、このオペレータの操作は、「選択」が黒塗りされた2行の成形条件(設定値)だけが選択されたことを意味する。ここでは2行、つまり2つの設定項目の選択を示しているが、3行以上を一度に選択することもできる。
その後のオペレータの操作は、
図6(a)と同様である。
【0050】
[第2形態:
図7(a)]
次に、第2形態について、
図7(a)を参照して説明する。
第2形態は、選択した1行に表示されている設定項目を除いた、同じ運転サイクル動作のために変更された他の設定項目を全て選択する。したがって、
図7(a)の例では、マウスによる選択自体は設定項目aであるが、実際に「選択」がなされ黒塗りにされたのは、設定項目b、設定項目cおよびここでは表示されていない他の設定項目を含む行である。
この選択の操作の後には、第1形態の説明と同様に、オペレータは選択確定ボタン63、画面移行ボタン64を順に押し下げる。
【0051】
[第3形態:
図7(b)]
次に、第3形態について、
図7(b)を参照して説明する。
第3形態は、選択した成形条件が該当する項目に加えて、同じ運転サイクル動作のために変更された他の項目を全て選択する。したがって、
図7(b)の例では、マウスによる選択自体は設定項目aであり、設定項目aに対応する行の「選択」が黒塗りにされたのに加えて、設定項目bと設定項目cのそれぞれに対応する行の「選択」が黒塗りにされる。ここでは表示されていない設定項目を含む行についても同様である。
この選択の操作の後には、第1形態の説明と同様に、オペレータは選択確定ボタン63、画面移行ボタン64を順に押し下げる。
[第4実施形態]
次に、第4形態について、説明する。
第4形態は、選択した成形条件が該当する項目に加えて、同じ時刻において設定されていた設定項目を全て記憶装置から読みだして選択する。つまり当該時刻において運転されていた成形条件を再現することを意味する。
この選択の操作の後には、第1形態の説明と同様に、オペレータは選択確定ボタン63、画面移行ボタン64を順に押し下げる。
【0052】
[成形条件の入力画面:
図8]
次に、
図8を参照して、成形条件の入力画面の表示部57における表示例を説明する。この表示例は、金型の開閉に関する成形条件の入力画面に関するものである。この入力画面は、
図2に示される型閉工程と型開工程における成形条件の入力に関わる。
図8に示すように、この入力画面70は、型締め力が入力、表示される型締力領域71と、型閉動作に関する設定値が入力、表示される型閉領域73と、型開動作に関する設定値が入力、表示される型開領域75と、入力された設定値(成形条件)を確定させるための確定ボタン78とが表示されている。
【0053】
型閉領域73には、型閉のときの可動金型27の移動速度(V11,V12,V13,V14)とその速度が適用される位置(L11,L12,L13,L14)とが対応して示される。なお、ここには具体的な設定値の入力、表示は省略されている。また、型閉領域73には、型閉に要する時間が表示される型閉時間領域74が表示されている。
【0054】
型開領域75には、型開のときの可動金型27の移動速度(V21,V22,V23,V34)とその速度が適用される位置(L21,L22,L23,L24)とが対応して示される。なお、ここには具体的な設定値の入力、表示は省略されている。また、型開領域75には、型開に要する時間が表示される型開時間領域76が表示されている。
【0055】
図8の表示例において、型開時間領域76には型開速度が0.5(mm/sec.)と入力、表示されているが、これは前述した
図6(a)において履歴一覧表Tから選択された設定値である。この選択は型開時間を過去の0.5(mm/sec.)に戻すことを意味する。この選択の時と当該0.5(mm/sec.)で成形されていた時との間に他の型開速度が採用されていたとしても、他の型開時間に影響を受けない。
他の型締力領域71、型閉速度領域74を含む型閉領域73、型開速度領域76を除く型開領域75は、具体的な設定値の表示が書略されているが、型開速度領域76と同様に履歴一覧表Tにおいて選択された設定値が入力、表示される。
【0056】
また、型締力領域71~型開速度領域76には、オペレータが例えばテンキーを用いて設定値を入力することができる。
さらに、以上の他に、型締力領域71~型開速度領域76には、先行する射出成形において適用された設定値を引き継いで入力、表示させることもできる。
【0057】
図8においては、型開速度の設定に関する表示例が示されているが、成形条件の入力画面に表示される設定項目の全てについて、成形条件の履歴一覧表からの選択により条件を設定できる。
【0058】
オペレータは、以上の操作により入力画面70で要求される設定値を全て入力した後に、確定ボタン78を押し下げることで、当該設定値を確定し、更新させることができる。
【0059】
[効 果]
本実施形態の制御装置が奏する効果を説明する。
本実施形態によれば、履歴一覧表Tとして表示される成形条件から必要な設定値を選択できる。したがって、オペレータは所望の設定変更履歴にたどり着くまで、過去に遡るまたは過去から戻るボタンを繰り返し押す必要がない。これにより、本実施形態によれば、オペレータが所望する設定変更に対応する履歴情報に容易にたどり着き、設定値を選択できる。
【0060】
次に、本実施形態によれば、履歴一覧表Tに基づく設定値の選択をした後に、オペレータが選択確定ボタン63を押し下げるだけで、入力画面に過去の当該設定値を入力できる。この入力は、過去の設定値に戻すということもできる。
【0061】
さらに本実施形態によれば、実験計画法などのように、予め決められた試験条件、設定値、設定パターンを種々繰り返し組み合わせて成形機を運転する場合においても、履歴一覧表Tから個別の設定値を選択して、設定値の変更を行うことができる。これにより、本実施形態によれば、良品成形条件出しの実験の際などの作業性が向上できる。
【0062】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、
図5に示した履歴一覧表Tは、型開閉工程(D)だけが示されており、設定項目として型開閉工程(D)に属するものだけが選択可能とされていた。したがって、成形条件の入力画面は、
図8に示すように、型開閉工程に関する入力画面だけが表示される。しかし、
図9に示すように、履歴一覧表Tには複数種類の工程(A,B,C,D…)が表示されることもあり、複数種、ここでは4種類の工程A,B,C,Dの設定項目が選択されたとする。そうすると、
図10に示すように、表示部57を分割して工程A,B,C,Dのそれぞれに対応する4つの入力画面を同時に表示することができる。これによると設定履歴上の設定項目を一括して変更する際に、変更する設定項目の各設定画面を一括して表示できるので、設定項目を確認する作業性が高まる。
また、選択の形態を選ぶ履歴選択ボタン55Bは、
図11に示すように、成形条件の履歴一覧とともに表示部57に表示されてもよい。この場合、所望の履歴情報を選択する前に、「選択」の形態を選定するような手順によるものとしてもよいし、所望の履歴情報を選択した後、「選択」の形態を選定するような手順よるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 射出成形機
10 成形装置
20 型締機構
21 固定型盤
23 固定金型
25 可動型盤
27 可動金型
29 エジェクタピン
30 可塑化機構
31 加熱シリンダ
32 吐出ノズル
33 スクリュ
35 原料ホッパ
50 制御装置
51 制御部
53 記憶部
55 操作部
55A 設定履歴表示ボタン
55A1,55A2,55A3,55A4 選択ボタン
55B 履歴選択ボタン
55B1 第1形態ボタン
55B2 第2形態ボタン
55B3 第3形態ボタン
55C 選択履歴確定ボタン
57 表示部
61 履歴件数枠
62 選択形態枠
63 選択確定ボタン
64 画面移行ボタン
65 リターンボタン
66 上スクロールボタン
67 下スクロールボタン
71 型締力領域
73 型閉領域
74 型閉時間領域
75 型開領域
76 型開時間領域
78 確定ボタン
M1 射出モータ
M2 可塑化モータ
M3 型開閉モータ
M4 エジェクタモータ