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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】押しボタン
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/62 20060101AFI20241106BHJP
   H01H 13/14 20060101ALI20241106BHJP
   H01H 13/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01H13/62
H01H13/14 Z
H01H13/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020213924
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099872
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アーマド アズリ
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-217385(JP,A)
【文献】特開2002-236966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/62
H01H 13/14
H01H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し込み動作及び回転動作が可能に支持されたボタン本体と、
前記ボタン本体に設けられ、前記ボタン本体の押し込まれる方向である第1の方向に沿った方向に対して前記ボタン本体の周方向に傾くように形成された斜面を有する突起部材と、
前記突起部材の斜面と対向する面に傾斜面が形成され、前記ボタン本体が押し込まれたときに、前記突起部材の前記斜面と接触しながら、前記突起部材を前記ボタン本体の周方向に案内する案内部材と、
前記ボタン本体に設けられ、前記ボタン本体が押し込まれることによってスイッチを押下する押下部材と、を有し、
前記突起部材が前記案内部材によって案内されることに伴って、前記ボタン本体が回転する、
押しボタン。
【請求項2】
前記斜面は、前記第1の方向に沿った方向に対する前記斜面の周方向の傾き角度である傾斜角度が異なる複数の斜面部分を有する、
請求項1に記載の押しボタン。
【請求項3】
前記斜面は、
第1の斜面部分と、
前記第1の斜面部分よりも前記第1の方向とは反対側に設けられ前記第1の斜面部分の傾斜角度よりも傾斜角度の小さい第2の斜面部分と、
を有する、
請求項2に記載の押しボタン。
【請求項4】
前記斜面は、
第3の斜面部分と、
前記第3の斜面部分よりも前記第1の方向とは反対側に設けられ前記第3の斜面部分の傾斜角度よりも傾斜角度の大きい第4の斜面部分と、
を有する、
請求項2に記載の押しボタン。
【請求項5】
前記押下部材は、前記ボタン本体の回転に連動して回転して、前記押下部材の回転方向に、前記スイッチを押下する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の押しボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、操作ノブを下方へ押し込む入力操作と、操作ノブを回動させる入力操作が可能なスイッチ素子を開示する。特許文献2は、ロータリープッシュツマミのプッシュ操作時にプッシュツマミが連動してプッシュ動作し、ロータリープッシュツマミのロータリー操作時にプッシュツマミが連動してロータリー動作しないようにしたロータリープッシュスイッチ装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-103509号公報
【文献】特開2004-241317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば押しボタンの設置位置と機能が目視で認識し辛いなど、ユーザが所望の押しボタンを押し込んだことを明瞭に認識できない状況である場合、押しボタンの操作を間違えるおそれがある。上述した特許文献にかかる技術では、押し込む動作を行ったときに単にその部材が押し込まれるのみであるので、ユーザが所望の押しボタンを押し込んだことを明瞭に認識できないおそれがある。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、押し込んだことを明瞭に認識させることが可能な押しボタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、押し込み動作及び回転動作が可能に支持されたボタン本体と、前記ボタン本体に設けられ、前記ボタン本体の押し込まれる方向である第1の方向に沿った方向に対して前記ボタン本体の周方向に傾くように形成された斜面を有する突起部材と、前記ボタン本体が押し込まれたときに、前記突起部材の前記斜面と接触しながら、前記突起部材を前記ボタン本体の周方向に案内する案内部材と、前記ボタン本体に設けられ、前記ボタン本体が押し込まれることによってスイッチを押下する押下部材と、を有し、前記突起部材が前記案内部材によって案内されることに伴って、前記ボタン本体が回転する、押しボタンを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、押し込んだことを明瞭に認識することが可能な押しボタンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる押しボタンを示す図である。
図2】実施の形態1にかかる押しボタンを示す図である。
図3】実施の形態1にかかる突起部材及び案内部材の近傍を示す図である。
図4】実施の形態1にかかる押しボタンの動作を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる押しボタンの動作を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる押下部材とスイッチと間の配置を説明するための図である。
図7】実施の形態1にかかる押下部材とスイッチと間の配置を説明するための図である。
図8】実施の形態1の第1の変形例にかかる突起部材を示す図である。
図9】実施の形態1の第2の変形例にかかる突起部材を示す図である。
図10】実施の形態1の第3の変形例にかかる突起部材を示す図である。
図11】実施の形態2にかかる押しボタンを示す図である。
図12】実施の形態2にかかる押しボタンの動作を示す図である。
図13】実施の形態2にかかる押しボタンの動作を示す図である。
図14】実施の形態3にかかる押しボタン装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、実質的に同じ構成要素には、同じ符号が付される。
【0010】
図1及び図2は、実施の形態1にかかる押しボタン1を示す図である。図1は、実施の形態1にかかる押しボタン1の斜視図を示し、図2は実施の形態1にかかる押しボタン1の側面図を示す。
【0011】
押しボタン1は、ボタン本体2と、案内部材10(10A,10B)と、押下部材20と、突起部材30(30A,30B)とを有する。なお、図1には、2つの突起部材30A,30Bが示されているが、突起部材30の数は任意である。また、図1には、2つの案内部材10A,10Bが示されているが、案内部材10の数は任意である。なお、案内部材10の数は、突起部材30の数と同じであってもよい。これらのことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0012】
押しボタン1(ボタン本体2)が図1及び図2の矢印Aで示す方向に押し込まれることによって、押下部材20がスイッチ4の方に移動するので、押下部材20がスイッチ4を押下する。これにより、スイッチ4が動作して、所定の機能が実行される。また、後述するように、本実施の形態では、押しボタン1(ボタン本体2)が矢印Aの方向に押し込まれると、矢印Brで示すように、押しボタン1(ボタン本体2)が、円柱形状を有するボタン本体2の周方向に沿って回転するように構成されている。したがって、押しボタン1(ボタン本体2)は、押し込まれると、矢印Brの方向に回転しながら矢印Aの方向に前進する。なお、矢印Aで示す方向、つまり、ボタン本体2が押し込まれる方向を、ストローク方向(第1の方向)と称する。また、矢印Brで示す方向を回転方向と称する。
【0013】
ここで、説明の便宜上、XYZ直交座標軸を導入する。図1及び図2には、右手系のXYZ座標系が示されている。Y軸方向は、ストローク方向に沿った方向に対応する。ストローク方向は、-Y方向に対応する。また、押しボタン1の回転方向は、ZX平面に沿った方向に対応する。また、ボタン本体2を+Y側から見て、回転方向は、反時計回りである。
【0014】
ボタン本体2は、円柱形状を有する。ボタン本体2は、矢印Aの方向(-Y方向)に見て円形に形成されている。ユーザは、ボタン本体2の+Y側に形成された天面2aに指等を接触させて、ボタン本体2を矢印Aの方向(-Y側)に押し込む。なお、天面2aには、微細なローレット加工が施されていてもよい。天面2aにローレット加工が施されていることによって、ボタン本体2が回転していることを、ユーザはより強い触覚で感じることができる。また、ボタン本体2の底面2bには、突起部材30及び押下部材20が設けられている。突起部材30及び押下部材20は、ボタン本体2と一体に形成されてもよい。
【0015】
また、ボタン本体2は、押し込み動作及び回転動作が可能に支持されている。例えば、ボタン本体2は、支持部材6によって、押し込み動作及び回転動作が可能に支持されていてもよい。上述したように、押し込み動作は矢印Aの方向の動作であり、回転動作は矢印Brの方向の動作である。支持部材6は、例えば押しボタン1を収容する筐体の上面であってもよい。支持部材6には、ボタン本体2の円形形状に対応した形状の穴が形成されていてもよく、この穴とボタン本体2の側面2cとが摺動することで、ボタン本体2が、押し込み動作及び回転動作が可能に支持されていてもよい。なお、支持部材6がボタン本体2を支持する方法はこのような構成に限られない。例えば、支持部材6は、ボタン本体2に設けられた中心軸(回転軸)を支持するようにしてもよい。
【0016】
押下部材20は、ボタン本体2が押し込まれることによってスイッチ4を押下する。実施の形態1において、スイッチ4は、押下部材20の-Y側に配置されている。実施の形態1にかかる押下部材20は、ボタン本体2の底面2bからスイッチ4の側、つまり-Y方向に延びるように形成されている。ボタン本体2が矢印Aの方向つまり-Y方向に押し込まれると、それに連動して押下部材20も矢印Aの方向つまり-Y方向に移動する。これにより、押下部材20は、スイッチ4を、矢印Aの方向つまり-Y方向に押下する。また、押下部材20の-Y側、つまりスイッチ4と対向する箇所には、傾斜面22が設けられている。押下部材20がスイッチ4を押下するとき、傾斜面22のいずれかの位置が、スイッチ4と接触し得る。
【0017】
突起部材30(30A,30B)は、ボタン本体2の底面2bからスイッチ4の側、つまり-Y方向に突出するように形成されている。また、突起部材30の先端には、案内部材10と係合可能なフック部32が形成されていてもよい。また、図1では、2つの突起部材30A,30Bが、ボタン本体2の底面2bにおいて底面2bの中心を挟んで互いに対向する位置に設けられている。なお、便宜上、初期状態において、X軸方向に沿って、2つの突起部材30Aと突起部材30Bとが設けられているとする。円形の底面2bの中心に対して+X側に突起部材30Aが設けられ、-X側に突起部材30Bが設けられている。また、突起部材30には、斜面40が形成されている。
【0018】
案内部材10(10A,10B)は、突起部材30の近傍に設けられている。案内部材10Aが突起部材30Aの近傍に設けられ、案内部材10Bが突起部材30Bの近傍に設けられている。また、図1では、案内部材10は、概ね円弧形状に形成されている。案内部材10は、ボタン本体2の周方向に沿って、2つの突起部材30の間に設けられている。しかしながら、案内部材10は、対応する突起部材30の近傍のみに配置されるような形状であってもよい。案内部材10は、例えば押しボタン1を収容する筐体に固定されていてもよい。つまり、案内部材10は、ボタン本体2を支持する支持部材6に対して自由度0で固定されていてもよい。後述するように、案内部材10は、突起部材30を矢印Bの方向に案内する。後述するように、案内部材10は、ボタン本体2が押し込まれたときに、突起部材30の斜面40と接触しながら、突起部材30をボタン本体2の周方向に案内する。突起部材30が矢印Bの方向に移動することにより、ボタン本体2が、矢印Brの方向に回転する。なお、矢印Bの方向は、矢印Brの方向に対応する方向である。
【0019】
図3は、実施の形態1にかかる突起部材30及び案内部材10の近傍を示す図である。突起部材30は、斜面40を有する。斜面40は、ストローク方向に沿った方向(Y軸方向)に対してボタン本体2の周方向に傾くように形成されている。言い換えると、斜面40は、ボタン本体2とは反対側から見て、Y軸方向に対して回転方向とは反対方向に傾くように形成されている。さらに言い換えると、斜面40は、-Y側から見て、矢印Bの方向(図3では-Z方向)とは反対方向である矢印Bxの方向(図3では+Z方向)に傾くように形成されている。
【0020】
また、案内部材10の突起部材30と対向する面には、傾斜面12が形成されていてもよい。傾斜面12は、突起部材30の斜面40と同じ側に傾いて形成されている。また、好ましくは、傾斜面12の傾きは、斜面40の傾きよりも大きい。
【0021】
ボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれると、それに連動して突起部材30も矢印Aの方向に移動する。これにより、案内部材10の先端12aが斜面40に突き当たる。さらにボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれ、突起部材30が矢印Aの方向に移動すると、斜面40は、案内部材10の先端12aを、矢印Cの方向に摺動する。そして、斜面40の傾きにより、突起部材30は、矢印Aの方向だけでなく、矢印Bの方向にも移動する。
【0022】
つまり、ボタン本体2が押し込まれると、案内部材10は、斜面40と接触しながら、突起部材30を周方向(矢印Bの方向)に案内する。言い換えると、ボタン本体2が押し込まれると、案内部材10は、斜面40と接触しながら、突起部材30を、矢印Bの方向、つまり斜面40の傾いた方向(矢印Bxの方向)とは反対方向に案内する。これにより、ボタン本体2は、突起部材30の動作と連動して、矢印Brの方向に回転する。したがって、ボタン本体2が押し込まれると、ボタン本体2は、矢印Aの方向に移動しつつ、矢印Brの方向に回転する。つまり、ボタン本体2が押し込まれると、ボタン本体2は、矢印Aの方向に移動しつつ、+Y側から見て反時計回りに回転する。
【0023】
ここで、斜面40の、Y軸方向に沿った方向に対する周方向の傾き角度である傾斜角度をθとする。この場合、ある押し込み量(押し込み長さ)Sだけボタン本体2を押し込んだとき、傾斜角度θが大きいほど、突起部材30の周方向(ZX平面に沿った方向)の移動量は大きくなる。したがって、ボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだとき、傾斜角度θが大きいほど、回転量Rは大きくなる。例えば、ボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだとき、回転量Rは、S*tanθに比例し得る。
【0024】
また、フック部32は、突起部材30の先端において、ZX平面に沿って案内部材10の側に突出するように形成されている。ボタン本体2が、+Y側、つまり押し込まれる方向とは反対側に移動しようとすると、フック部32が、案内部材10の-Y側の底面10bに突き当たる。これにより、ボタン本体2の+Y側への移動が規制される。したがって、押しボタン1が収容された筐体等からボタン本体2が離脱することを抑制することができる。
【0025】
なお、押しボタン1は、付勢部材を有してもよい。付勢部材は、ユーザがボタン本体2の押し込みを停止してボタン本体2への押し込み動作が解除された場合に、ボタン本体2が元の位置に移動するように構成されている。付勢部材は、バネ等の弾性部材で形成されていてもよい。付勢部材は、ボタン本体2の回転方向(図3の矢印Brの方向)とは反対方向に、ボタン本体2又は突起部材30を付勢してもよい。これにより、ボタン本体2への押し込み動作が解除されたときに、突起部材30が矢印Bとは反対方向に付勢される。すると、斜面40は、案内部材10の先端12aを、矢印Cとは反対方向に摺動する。これにより、ボタン本体2が、+Y側から見て時計回りに回転しつつ、+Y側に移動する。
【0026】
図4及び図5は、実施の形態1にかかる押しボタン1の動作を示す図である。図2図4及び図5を用いて、押しボタン1の動作を説明する。図2に示した状態から、矢印Aの方向にボタン本体2が押し込まれたとする。すると、図4に示すように、突起部材30Aは、上述したように、案内部材10Aに案内されて、矢印Baの方向に移動する。同様に、突起部材30Aの-X側において、突起部材30Bは、案内部材10Bに案内されて、矢印Bbの方向に移動する。したがって、ボタン本体2は、+Y側から見て反時計回り、つまり矢印Brの方向に回転する。また、ボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれるので、押下部材20は、-Y方向つまり矢印Acで示す方向に移動し、スイッチ4に近づく。また、このとき、ボタン本体2が+Y側から見て反時計回りに回転するので、押下部材20も、+Y側から見て反時計回りに回転する。
【0027】
図4に示した状態から、さらに、矢印Aの方向にボタン本体2が押し込まれたとする。すると、図5に示すように、突起部材30Aは、上述したように、案内部材10Aに案内されて、矢印Baの方向にさらに移動する。同様に、突起部材30Aの-X側において、突起部材30Bは、案内部材10Bに案内されて、矢印Bbの方向にさらに移動する。したがって、ボタン本体2は、+Y側から見て反時計回り、つまり矢印Brの方向にさらに回転する。また、ボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれるので、押下部材20は、-Y方向つまり矢印Acで示す方向に移動する。そして、押下部材20は、スイッチ4を、-Y方向つまり矢印Acで示す方向に押下する。なお、このとき、ボタン本体2が+Y側から見て反時計回りに回転するので、押下部材20も、+Y側から見て反時計回りに回転する。
【0028】
このように、実施の形態1にかかる押しボタン1は、ボタン本体2が押し込まれると、突起部材30の斜面40が案内部材10を摺動し、案内部材10が突起部材30を案内することによって、ボタン本体2が回転するように構成されている。これにより、押しボタン1を押下したユーザは、ボタン本体2を押下したときにボタン本体2が回転したことを、触覚により感知することができる。
【0029】
ここで、ボタン本体が回転しないと、ユーザは、ボタン本体を押下したか否かを、ボタン本体のストローク方向への移動を感知することのみによって、判断することとなる。そして、押しボタンの設置位置と機能が目視で認識し辛いなど、ユーザが所望の押しボタンを押し込んだことを明瞭に認識できない状況である場合、押しボタンの操作を間違えるおそれがある。
【0030】
これに対し、本実施の形態では、ユーザは、ボタン本体2を押下したことに連動してボタン本体2が回転するという感覚を感知できる。つまり、ユーザは、ボタン本体2を押し込んだときに、ボタン本体2がストローク方向だけでなく回転方向にも移動することを感知する。これにより、ボタン本体2を押下したときにユーザが感知できる感覚が増加する。したがって、ユーザは、ボタン本体2を押下したことを、より明瞭に認識することができる。
【0031】
なお、突起部材30の斜面40の傾斜方向を変えることによって、ボタン本体2の回転方向を変えることができる。具体的には、図3に示した例では、斜面40は、-Y側から見て+Z方向に傾くように形成されている。これにより、ボタン本体2が押し込まれると、突起部材30は、案内部材10によって-Z方向に案内され、ボタン本体2は、+Y側から見て反時計回りに回転する。
【0032】
これに対し、図3の例とは逆に、斜面40を、-Y側から見て-Z方向(矢印Bxとは逆方向)に傾くように形成してもよい。これにより、ボタン本体2が押し込まれると、突起部材30は、案内部材10によって+Z方向(矢印Bとは逆方向)に案内される。したがって、ボタン本体2は、+Y側から見て時計回りに回転する。
【0033】
そして、このように回転方向の異なる2つの押しボタン1を並べて筐体に配置してもよい。これにより、ユーザは、2つの押しボタン1を押下したときに、それぞれ異なる回転方向の回転を触覚により感知することができる。したがって、ユーザは、触覚によって、2つの押しボタン1を区別することができる。つまり、ユーザは、押しボタン1を目視することなく、押しボタン1を押下するのみで、2つの押しボタン1を区別することが可能となる。
【0034】
また、上記の2つの押しボタン1がそれぞれ動作させるスイッチ4の機能を異なるようにしてもよい。つまり、2つの押しボタン1それぞれに対応するスイッチ4の機能と2つの押しボタン1それぞれの回転方向とを対応付けるようにしてもよい。例えば、反時計回りに回転する押しボタン1に対応するスイッチ4がUP動作を作動させ、時計回りに回転する押しボタン1に対応するスイッチ4がDOWN動作を作動させるようにしてもよい。このように構成することで、ユーザは、押しボタン1を押下したときに、触覚によって、その押しボタン1に対応する機能を認識することができる。したがって、ユーザの押しボタン1の押し間違いを抑制することができる。特に、ユーザが押しボタン1を視認できない場合であっても、ユーザは、並んで配置された複数の押しボタン1に対応する機能を認識することができる。
【0035】
なお、押しボタン1を押し込んだことがユーザに認識させるための他の手段として、例えば、押しボタン1を押し込んだときに押しボタン1に振動を与えるような方法が採用されることがある。このような方法では、押しボタン1に振動を与える機構が必要となり、装置の構造が複雑となる。これに対し、実施の形態1では、ボタン本体2に、斜面40を有する突起部材30を形成することによって、ボタン本体2を押し込んだときにボタン本体2を回転させることができる。このように、突起部材30といった簡単な構造によって、ユーザは、押しボタン1を押し込んだことを明瞭に認識することができる。
【0036】
さらに、実施の形態1では、離脱防止のためにフック部32が形成された突起部材30に斜面40を形成することによって、ボタン本体2を押し込んだときにボタン本体2を回転させることができる。このように、突起部材30に離脱防止のための機構とボタン本体2を回転させるための機構とを設けた構成により、より簡単な構造によって、ユーザは、押しボタン1を押し込んだことを明瞭に認識することができる。
【0037】
また、本実施の形態では、ボタン本体2が押し込まれるとボタン本体2が回転するので、それに連動して押下部材20も回転する。このことを利用して、スイッチ4の配置等の設計の自由度を上げることができる。図6及び図7を用いて説明する。
【0038】
図6及び図7は、実施の形態1にかかる押下部材20とスイッチ4と間の配置を説明するための図である。図6は、押下部材20のスイッチ4と対向する対向面20aがフラット、つまりZX平面に平行である場合について示されている。この場合、初期状態において、押下部材20の対向面20aとスイッチ4との距離は、Lで一定である。したがって、初期状態から押下部材20がスイッチ4を押下するまでにボタン本体2を押し込む押し込み量(ストローク)は、Lで一定である。
【0039】
図7は、押下部材20のスイッチ4と対向する面に傾斜面22が設けられている場合について示されている。この場合、初期状態において、押下部材20の傾斜面22とスイッチ4との距離は、L1からL2の任意の値をとり得る。ここで、L1は傾斜面22とスイッチ4との間の最短距離であり、L2は傾斜面22とスイッチ4との間の最長距離である。
【0040】
この場合、状態(A)のように、ボタン本体2が押し込み量L1だけ押し込まれたときに、押下部材20の先端、つまり傾斜面22の最もスイッチ4の側で、押下部材20が、スイッチ4を押下するようにすることができる。また、実施の形態1では、ボタン本体2の回転に伴って押下部材20が回転するので、傾斜面22も回転する。したがって、状態(B)のように、傾斜面22の任意の位置で、押下部材20がスイッチ4に初めて接触するように構成することもできる。この場合、押下部材20がスイッチ4に初めて接触までの押し込み量は、L1からL2までの任意の量とすることができる。したがって、スイッチ4を押下するまでの押し込み量の設計の自由度、及び、スイッチ4と押下部材20との間の設計の自由度を、向上させることができる。
【0041】
また、後述するように、斜面40の傾斜角度を変えることによって、ユーザがボタン本体2を押し込んだときにユーザが受ける触覚が変化する。すなわち、後述するように、ボタン本体2を同じように押し込んだ場合でも、Y軸方向に対する傾斜角度が大きくなるにつれて、回転量が大きくなり、押し込み動作に対する重さ(抵抗力)が大きくなる。したがって、傾斜角度を調整することによって、ボタン本体2を押し込んだときの触覚を、適宜、調整することができる。
【0042】
<実施の形態1の変形例>
次に、実施の形態1の変形例について説明する。実施の形態1の変形例では、突起部材30の斜面40が、傾斜角度の異なる複数の斜面部分42を有する。
【0043】
図8は、実施の形態1の第1の変形例にかかる突起部材30Xを示す図である。第1の変形例にかかる突起部材30Xの斜面40は、斜面部分42A(第1の斜面部分)と、斜面部分42B(第2の斜面部分)とを有する。斜面部分42Bは、斜面部分42Aの+Y側、つまりストローク方向とは反対側に設けられている。斜面部分42Aの傾斜角度をθaとし、斜面部分42Bの傾斜角度をθbとすると、θa>θbである。つまり、斜面部分42Bの傾斜角度θbは、斜面部分42Aの傾斜角度θaよりも小さい。
【0044】
したがって、案内部材10が斜面部分42Aに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量は、案内部材10が斜面部分42Bに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量よりも大きい。つまり、初期状態からボタン本体2を押し込んで案内部材10が斜面部分42Aに接している間は、ユーザは、ボタン本体2の、押し込み量に対して大きな回転量の回転を、触覚によって感知する。一方、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Bに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Aに接していたときと比較して、ボタン本体2の押し込み量に対する回転量が小さくなったと感じる。
【0045】
また、案内部材10が斜面部分42Aに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)は、案内部材10が斜面部分42Bに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)よりも大きい。したがって、案内部材10が斜面部分42Aに接しているとき、ユーザは、押し込み動作に対する大きな抵抗力を感じる。一方、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Bに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Aに接していたときと比較して、押し込み動作に対する抵抗力が小さくなったと感じる。
【0046】
ここで、抵抗力の変化に関する説明を行う。まず、抵抗力を垂直抗力と捉えた場合について考える。斜面部分42に働く垂直抗力をNとすると、垂直抗力のY軸方向の成分はNsinθであるので、傾斜角度θが大きいと、垂直抗力のY軸方向の成分も大きくなる。したがって、ユーザがY軸方向にボタン本体2を押し込むときに感じる抵抗力は、案内部材10が斜面部分42Aに接しているときの方が、案内部材10が斜面部分42Bに接しているときよりも大きい。次に、抵抗力を摩擦力と捉えた場合について考える。ボタン本体2に対する-Y方向の押し込み力をFとする。案内部材10が斜面部分42Aに接しているとき、斜面部分42Aには、F1a=Fsinθaに対応する垂直抗力Naがかかり得る。したがって、斜面部分42Aには、垂直抗力Naに比例する摩擦力(動摩擦力)が働く。一方、案内部材10が斜面部分42Bに接しているとき、斜面部分42Bには、F1b=Fsinθbに対応する垂直抗力Nbがかかり得る。したがって、斜面部分42Bには、垂直抗力Nbに比例する摩擦力(動摩擦力)が働く。ここで、θa>θbであるので、Na>Nbである。したがって、斜面部分42Aにかかる摩擦力は、斜面部分42Bにかかる摩擦力よりも大きい。そして、斜面部分42における運動方向は傾斜方向に対応するので、斜面部分42における抵抗力は摩擦力に対応する。したがって、案内部材10が斜面部分42Aに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)は、案内部材10が斜面部分42Bに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)よりも大きい。
【0047】
突起部材30Xの斜面40をこのような形状とすることで、例えば、以下のような構成が考えられる。押下部材20がスイッチ4に接するまでは、案内部材10が斜面部分42Aに接触し、押下部材20がスイッチ4に接した後は、案内部材10が斜面部分42Bに接触するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。
【0048】
これにより、ユーザは、スイッチ4が動作する前に、押し込み動作に対する大きな抵抗力を感知し、ボタン本体2の大きな回転量を感知することができる。これにより、ユーザは、スイッチ4を誤って動作させることを抑制することができる。すなわち、スイッチ4が動作する前の押し込み動作に対する抵抗力が大きいため、軽い力で押しボタン1に触れただけでは押しボタン1が押し込まれ難いので、誤動作を抑制することができる。また、ボタン本体2の大きな回転量を感知することによって、誤って押しボタン1に触れた場合に押しボタン1が押し込まれたことをより明瞭に認識できるので、誤動作を抑制することができる。
【0049】
また、上述したように、2つの押しボタン1それぞれに対応するスイッチ4の機能と2つの押しボタン1それぞれの回転方向とを対応付けた場合、ユーザは、スイッチ4が押下される前に、その押しボタン1に対応する機能を認識できる。すなわち、押しボタン1を押し込んだとき、スイッチ4が動作する前の押しボタン1の回転量が大きい。したがって、ユーザは、押しボタン1を押し込んだときに、スイッチ4が動作する前に押しボタン1の回転方向を、より明瞭に認識することができる。例えば、上述したように、反時計回りに回転する押しボタン1に対応するスイッチ4がUP動作を作動させ、時計回りに回転する押しボタン1に対応するスイッチ4がDOWN動作を作動させるとする。この場合、ユーザがUP動作を作動させようとしてある押しボタン1を押し込んだが、押しボタン1が時計回りに回転したことをユーザが感知すると、ユーザは、スイッチ4が動作する前に、押し込んだ押しボタン1が誤りであったことを認識できる。また、ユーザがUP動作を作動させようとしてある押しボタン1を押し込み、押しボタン1が反時計回りに回転したことをユーザが感知すると、ユーザは、スイッチ4が動作する前に、押し込んだ押しボタン1が正しいことを認識できる。したがって、より確実に正しいボタン操作を行うことができる。
【0050】
図9は、実施の形態1の第2の変形例にかかる突起部材30Yを示す図である。第2の変形例にかかる突起部材30Yの斜面40は、斜面部分42C(第3の斜面部分)と、斜面部分42D(第4の斜面部分)とを有する。斜面部分42Dは、斜面部分42Cの+Y側、つまりストローク方向とは反対側に設けられている。斜面部分42Cの傾斜角度をθcとし、斜面部分42Dの傾斜角度をθdとすると、0≦θc<θdである。つまり、斜面部分42Dの傾斜角度θdは、斜面部分42Cの傾斜角度θcよりも大きい。
【0051】
したがって、案内部材10が斜面部分42Cに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量は、案内部材10が斜面部分42Dに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量よりも小さい。つまり、初期状態からボタン本体2を押し込んで案内部材10が斜面部分42Cに接している間は、ユーザは、ボタン本体2の、押し込み量に対して小さな回転量の回転を、触覚によって感知する。つまり、案内部材10が斜面部分42Cに接している間、θc≠0であれは、ユーザは、ボタン本体2の回転が小さいと感じ、θc=0であれば、ユーザは、ボタン本体2が回転しないと感じる。さらに、斜面部分42Cの傾斜角度θcが小さいので、押し込み動作に対する抵抗力は小さい。したがって、案内部材10が斜面部分42Cに接しているとき、ユーザは、押し込み動作に対する抵抗力が小さいと感じる。
【0052】
また、第2の変形例にかかる突起部材30Yの斜面40は、斜面部分42Cと斜面部分42Dとの間に、段差部43を有する。したがって、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が段差部43に接すると、押し込み動作に対して大きな抵抗力が働く。さらに、ユーザがこの抵抗力に抗してボタン本体2を押し込んで、案内部材10が斜面部分42Dに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Cに接していたときと比較して、ボタン本体2の押し込み量に対する回転量が大きくなったと感じる。さらに、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Cに接していたときと比較して、押し込み動作に対する抵抗力が大きくなったと感じる。
【0053】
突起部材30Yの斜面40をこのような形状とすることで、例えば、以下のような構成が考えられる。押下部材20がスイッチ4に接するまでは、案内部材10が斜面部分42Cに接触し、押下部材20がスイッチ4に接した後は、案内部材10が斜面部分42Dに接触するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。また、押下部材20がスイッチ4に接する直前に、案内部材10が段差部43に接するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。
【0054】
これにより、ユーザは、スイッチ4が動作する前では、軽い力でボタン本体2を押し込むことができ、スイッチ4が動作する直前に、大きな抵抗力を感じる。したがって、ユーザは、スイッチ4が動作する瞬間をより明瞭に感知することができる。また、押下部材20がスイッチ4を押下している間、ユーザは、ボタン本体2の大きな回転量を感知することができる。これにより、ユーザは、スイッチ4が機能していることを、明瞭に認識することができる。したがって、ユーザの押しボタン1の操作に対する触感(ハプティクス)を向上させることができる。
【0055】
図10は、実施の形態1の第3の変形例にかかる突起部材30Zを示す図である。第3の変形例にかかる突起部材30Zの斜面40は、斜面部分42E(第1の斜面部分)と、斜面部分42F(第2の斜面部分,第3の斜面部分)と、斜面部分42G(第4の斜面部分)とを有する。斜面部分42Fは、斜面部分42Eの+Y側、つまりストローク方向とは反対側に設けられている。斜面部分42Gは、斜面部分42Fの+Y側、つまりストローク方向とは反対側に設けられている。
【0056】
斜面部分42Eの傾斜角度をθeとし、斜面部分42Fの傾斜角度をθfとし、斜面部分42Gの傾斜角度をθgとすると、θe>θfであり、θf<θgである。つまり、斜面部分42Fの傾斜角度θfは、斜面部分42Eの傾斜角度θeよりも小さい。また、斜面部分42Gの傾斜角度θgは、斜面部分42Fの傾斜角度θfよりも大きい。
【0057】
θe>θfであるので、案内部材10が斜面部分42Eに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量は、案内部材10が斜面部分42Fに接しているときにボタン本体2を押し込み量Sだけ押し込んだときの回転量よりも大きい。つまり、初期状態からボタン本体2を押し込んで案内部材10が斜面部分42Eに接している間は、ユーザは、ボタン本体2の、押し込み量に対して大きな回転量の回転を、触覚によって感知する。一方、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Fに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Eに接していたときと比較して、ボタン本体2の押し込み量に対する回転量が小さくなったと感じる。
【0058】
また、案内部材10が斜面部分42Eに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)は、案内部材10が斜面部分42Fに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)よりも大きい。したがって、案内部材10が斜面部分42Eに接しているとき、ユーザは、押し込み動作に対する大きな抵抗力を感じる。一方、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Fに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Eに接していたときと比較して、押し込み動作に対する抵抗力が小さくなったと感じる。
【0059】
また、θf<θgであるので、案内部材10が斜面部分42Gに接しているときの押し込み量Sに対する回転量は、案内部材10が斜面部分42Fに接しているときの押し込み量Sに対する回転量よりも大きい。つまり、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Gに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Fに接していたときと比較して、ボタン本体2の押し込み量に対する回転量が大きくなったと感じる。
【0060】
また、案内部材10が斜面部分42Gに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)は、案内部材10が斜面部分42Fに接しているときにユーザが感じる押し込み動作に対する重さ(抵抗力)よりも大きい。したがって、ボタン本体2が押し込まれて案内部材10が斜面部分42Gに接すると、ユーザは、案内部材10が斜面部分42Fに接していたときと比較して、押し込み動作に対する抵抗力が大きくなったと感じる。
【0061】
突起部材30Zの斜面40をこのような形状とすることで、例えば、以下のような構成が考えられる。押下部材20がスイッチ4に接するまでは、案内部材10が斜面部分42Eに接触するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。また、押下部材20がスイッチ4に接してからスイッチ4を深押し状態とするまでの間は、案内部材10が斜面部分42Fに接触するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。また、押下部材20の押下によりスイッチ4が深押し状態となった後は、案内部材10が斜面部分42Gに接触するように、押しボタン1の構成要素及びスイッチ4を配置する。
【0062】
ここで、「深押し状態」とは、スイッチ4を深く押し込んで、スイッチ4の押し込み深さが浅い場合とは異なる機能を作動させる状態である。「深押し状態」は、例えば、所謂「長押し状態」に対応する操作であり得る。例えば、スイッチ4が音量UPの機能を作動させる場合、深押し状態では、スイッチ4の押し込み深さが浅い場合と比較して、音量の増加速度が速くなるようにしてもよい。また、例えば、スイッチ4が装置の電源の機能を作動させる場合、スイッチ4の押し込み深さが浅い場合は、装置のスリープ状態を解除し、深押し状態では、装置の電源オフ又は電源オンとなるようにしてもよい。
【0063】
これにより、第1の変形例と同様に、ユーザは、スイッチ4が動作する前に、押し込み動作に対する大きな抵抗力を感知し、ボタン本体2の大きな回転量を感知することができる。これにより、ユーザは、スイッチ4を誤って動作させることを抑制することができる。さらに、スイッチ4が深押し状態となったときに押し込み動作に対する大きな抵抗力を感知し、ボタン本体2の大きな回転量を感知することができる。これにより、ユーザは、スイッチ4が深押し状態となったことを、より明瞭に認識することができる。
【0064】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、押下部材とスイッチとの位置関係が、実施の形態1と異なる。なお、実施の形態1にかかる押しボタン1のその他の構成については、実施の形態1にかかるものと実質的に同様であるので、適宜、説明を省略する。
【0065】
図11は、実施の形態2にかかる押しボタン1を示す図である。実施の形態1と同様に、実施の形態2にかかる押しボタン1は、ボタン本体2と、案内部材10と、押下部材20と、突起部材30とを有する。なお、実施の形態2においても、実施の形態1と実質的に同様のXYZ直交座標軸を導入する。
【0066】
実施の形態1と同様に、押しボタン1(ボタン本体2)が矢印Aで示す方向つまり-Y方向に押し込まれることによって、押下部材20がスイッチ4を押下する。これにより、スイッチ4が動作して、所定の機能が実行される。また、実施の形態1と同様に、押しボタン1(ボタン本体2)が矢印Aの方向に押し込まれると、矢印Brで示すように、押しボタン1(ボタン本体2)が、ボタン本体2の周方向に沿って回転するように構成されている。
【0067】
ここで、実施の形態2にかかるボタン本体2、案内部材10及び突起部材30の形状は、実施の形態1のものと実質的に同様である。また、案内部材10と突起部材30との位置関係は、実施の形態1と実質的に同様である。したがって、ボタン本体2が回転する機構は、実施の形態1と実質的に同様である。したがって、ボタン本体2が回転する機構の説明は省略する。
【0068】
ここで、実施の形態1では、スイッチ4は、押下部材20の-Y側に配置されている。これに対し、実施の形態2では、スイッチ4は、押下部材20の回転方向の側に配置されている。図11では、スイッチ4は、押下部材20の-X側に配置されている。
【0069】
実施の形態1と同様に、ボタン本体2が矢印Aの方向つまり-Y方向に押し込まれると、それに連動して押下部材20も矢印Acの方向つまり-Y方向に移動する。また、実施の形態1と同様に、ボタン本体2が矢印Brの方向に回転するので、それに連動して、押下部材20も、矢印Bcで示す方向に回転する。そして、押下部材20の回転方向に形成された側面24が、スイッチ4に突き当たる。これにより、押下部材20は、スイッチ4を、矢印Bcの方向、つまり押下部材20の回転方向に押下する。
【0070】
図12及び図13は、実施の形態2にかかる押しボタン1の動作を示す図である。図11に示した状態から、ボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれたとする。すると、図12に示すように、ボタン本体2は矢印Brの方向に回転する。ボタン本体2の動作に連動して、押下部材20は、矢印Acの方向に移動し、矢印Bcの方向に回転する。これにより、押下部材20の側面24は、スイッチ4に近づく。
【0071】
図12に示した状態から、さらに、ボタン本体2が矢印Aの方向に押し込まれたとする。すると、図13に示すように、ボタン本体2は矢印Brの方向にさらに回転する。ボタン本体2の動作に連動して、押下部材20は、矢印Acの方向にさらに移動し、矢印Bcの方向にさらに回転する。そして、押下部材20の側面24がスイッチ4に突き当たる。これにより、押下部材20は、スイッチ4を、矢印Bcの方向、つまり押下部材20の回転方向に押下する。
【0072】
本実施の形態では、ボタン本体2を押し込むとボタン本体2が回転するように構成されている。したがって、ボタン本体2と一体に形成された押下部材20も回転する。実施の形態2では、この押下部材20の回転動作を利用して、押下部材20がスイッチ4を押下するように構成されている。つまり、スイッチ4を押下部材20の回転方向の側に配置し、押下部材20の側面24は、押下部材20の回転動作によってスイッチ4を押下する。このような構成により、スイッチ4を、押しボタン1の-Y側、つまりボタン本体2が押し込まれる方向に配置することが不要となる。これにより、押しボタン1とスイッチ4との間の配置に関する設計の自由度が向上する。そして、例えば、実施の形態1の場合と比較して、押しボタン1及びスイッチ4の、Y軸方向の配置スペースを小さくすることが可能となる。
【0073】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
図14は、実施の形態3にかかる押しボタン装置100を示す図である。押しボタン装置100は、上述した実施の形態にかかる押しボタン1(1A,1B)と、筐体102とを有する。なお、図14の例では、押しボタン装置100は2つの押しボタン1を有するが、押しボタン1の数は、2以上の任意の数であり得る。押しボタン装置100は、複数の押しボタンを有する任意の装置であり得る。
【0074】
筐体102は、押しボタン1を収容する。筐体102の上面102aに穴110A,110Bが形成されている。穴110Aには、押しボタン1Aが埋め込まれている。穴110Bには、押しボタン1Bが埋め込まれている。押しボタン1Aは、穴110Aによって押し込み動作及び回転動作が可能に支持されていてもよい。押しボタン1Bは、穴110Bによって押し込み動作及び回転動作が可能に支持されていてもよい。
【0075】
実施の形態3にかかる押しボタン1は、上述した実施の形態と実質的に同様の構成を有するので、説明を省略する。また、図示されていないが、押しボタン装置100の内部の押しボタン1それぞれの近傍には、対応する押しボタン1によって動作されるスイッチ4が設けられている。ここで、2つのスイッチ4は、押下されるとそれぞれ異なる機能を作動させる。
【0076】
押しボタン1A,1Bは、押し込まれたときに、互いに反対の方向に回転するように構成されている。つまり、押しボタン1A,1Bのそれぞれのボタン本体2A,2Bが押し込まれたときの回転方向は、押しボタン1A,1Bで互いに異なる。例えば、押しボタン1Aのボタン本体2Aを押し込むと、押しボタン1Aのボタン本体2Aは、矢印B1で示すように、反時計回りに回転する。また、押しボタン1Bのボタン本体2Bを押し込むと、押しボタン1Bのボタン本体2Bは、矢印B2で示すように、時計回りに回転する。
【0077】
なお、好ましくは、ボタン本体2は、ボタン本体2の天面2aが筐体102の上面102aから突出していないように配置されている。このように配置されていることによって、筐体102の上面102aの表面の出っ張りを小さくすることができる。なお、本実施の形態にかかるボタン本体2は、押し込まれる方向に見て円形に形成されているので、ボタン本体2が回転しても、ボタン本体2の回転を筐体102の上面102aに形成された穴110が阻害することが抑制されている。
【0078】
実施の形態3にかかる押しボタン装置100は、上記のように構成されているので、押しボタン1を目視しなくても、押しボタン1を押し込むだけで、その押しボタン1に対応する機能を認識することができる。例えば、押しボタン1Aに対応するスイッチ4がUP動作を作動させ、押しボタン1Bに対応するスイッチ4がDOWN動作を作動させるとする。この場合、ユーザは、押しボタン1Aを押し込むと反時計回りに回転することを触覚で感知するので、押しボタン1Aに対応する機能がUP動作であると認識することができる。同様に、ユーザは、押しボタン1Bを押し込むと時計回りに回転することを触覚で感知するので、押しボタン1Bに対応する機能がDOWN動作であると認識することができる。したがって、ユーザの押しボタン1の押し間違いを抑制することができる。
【0079】
なお、見た目で押しボタンの動作を認識できない目の不自由なユーザに対し、ボタン又はボタンの近傍に、そのボタンの機能を示す点字を付すことにより、そのボタンの機能を知らせることが、一般に行われている。しかしながら、ユーザが点字に繰り返し触れることで、点字の出っ張りが消耗又は劣化する可能性があり、ユーザが点字を適切に認識できないおそれがある。これに対し、実施の形態3では、押しボタン1が、機能ごとに異なる方向に回転するように構成されている。したがって、目の不自由なユーザであっても、押しボタン1の機能を容易に認識することが可能となる。
【0080】
なお、実施の形態3にかかる押しボタン装置100は、2つの押しボタン1を有するとしているが、3つ以上の押しボタン1を有してもよい。この場合、3つ以上の押しボタン1の回転方向と回転量(押し込み動作に対する抵抗力)とを互いに異なるようにすることで、3つ以上の押しボタン1の機能を、触覚によって、認識することができる。例えば、押しボタン装置100が4つの押しボタン1を有してもよい。この場合、例えば、第1の押しボタン及び第2の押しボタンの回転方向を反時計回りとし、第3の押しボタン及び第4の押しボタンの回転方向を時計回りとする。また、第1の押しボタンの回転量(押し込み動作に対する抵抗力)を、第2の押しボタンの回転量(押し込み動作に対する抵抗力)よりも大きくする。また、第3の押しボタンの回転量(押し込み動作に対する抵抗力)を、第4の押しボタンの回転量(押し込み動作に対する抵抗力)よりも大きくする。このような構成により、4つの押しボタン1に対応する機能を、触覚によって、認識することができる。つまり、複数の押しボタン1の回転の仕方を互いに異なるようにすることで、4つの押しボタン1に対応する機能を、触覚によって、認識することができる。
【0081】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1の変形例の構成と実施の形態2の構成とは、互いに適用可能である。したがって、例えば、実施の形態2にかかる突起部材を、第1の変形例にかかる突起部材としてもよい。
【0082】
また、上述した実施の形態では、突起部材30にはフック部32が形成されているが、突起部材30には、フック部32が形成されていなくてもよい。ボタン本体2の離脱防止のためのフック部は、突起部材30とは別の構成要素に設けられていてもよい。しかしながら、フック部32が形成された突起部材30に斜面40が形成されていることによって、フック部と突起部材とを別個に設けることが不要となる。したがって、押しボタン1の構造が簡素化される。
【符号の説明】
【0083】
1 押しボタン
2 ボタン本体
4 スイッチ
6 支持部材
10 案内部材
12 傾斜面
20 押下部材
22 傾斜面
24 側面
30 突起部材
32 フック部
40 斜面
42 斜面部分
43 段差部
100 押しボタン装置
102 筐体
110A,110B 穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14