(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20241106BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241106BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/175 151
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/175 121
B41J2/175 169
(21)【出願番号】P 2020215324
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小阿瀬 崇
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-192743(JP,A)
【文献】特開2004-255861(JP,A)
【文献】特開2002-370375(JP,A)
【文献】特開2008-012679(JP,A)
【文献】特開2007-245655(JP,A)
【文献】中国実用新案第206733818(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、
前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、
前記排出流路を開閉可能な第1開閉部と、
前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、
前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、
前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、
前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、
前記第1開閉部は、前記キャリッジの移動に連動して前記排出流路を開閉し、
前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記キャリッジには複数の前記液体貯留部が搭載され、
複数の前記液体貯留部に対応する複数の前記排出流路が途中で合流して合流排出流路を構成し、
前記接続部は、前記排出流路の被接続部としての前記合流排出流路の被接続部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、
前記液体貯留部における前記貯留室より上流に設けられ、前記液体供給源から供給される液体をろ過するフィルターと、
前記貯留室内の上部の空気を排出可能な第1排出流路と、前記液体貯留部における前記フィルターが収容されるフィルター室の上部および前記液体貯留部における前記フィルターよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路と、を含む排出流路と、
前記第1排出流路を開閉可能な第1開閉部と、
前記第2排出流路を開閉可能な第2開閉部と、
前記第1開閉部、前記第2開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、
前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、
前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、
前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、
前記第1開閉部および前記第2開閉部は、前記キャリッジの移動に連動して前記第1排出流路および前記第2排出流路を開閉し、
前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記キャリッジには複数の前記液体貯留部が搭載され、
前記排出流路は、複数の前記液体貯留部に対応する複数の前記第1排出流路と複数の前記第2排出流路とが途中で合流して構成される合流排出流路を有し、
前記接続部は、前記排出流路の被接続部としての前記合流排出流路の被接続部に接続されることを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記接続部は前記所定位置において前記走査方向に延設され、
前記排出流路の前記被接続部は、前記走査方向において、前記接続部と対向する位置に開口することを特徴とする請求項1から請求項
4のうち何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記排出流路の被接続部に設けられ、前記排出流路を開閉可能な開閉弁と、
前記排出流路の被接続部を閉鎖する方向に前記開閉弁を付勢する付勢部と、を備え、
前記キャリッジが前記所定位置へ移動するときに、前記接続部が前記付勢部による付勢力に抗して前記開閉弁を押圧しつつ前記排出流路に挿入されることにより、前記排出流路を開放するとともに前記排出流路と前記接続部とが連通することを特徴とする請求項1から請求項
5のうち何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップを更に備え、
前記負圧発生部は、前記キャップと連通することを特徴とする請求項1から請求項
6のうち何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路を開閉可能な第1開閉部と、前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、前記排出流路の被接続部に設けられ、前記排出流路を開閉可能な開閉弁と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
前記キャリッジを所定位置の手前まで移動させることで、前記接続部で前記開閉弁を開放するとともに、前記排出流路の被接続部に前記接続部を接続することと、
前記キャリッジを前記所定位置まで移動させることで、前記レバーを、前記押圧部を押圧する方向に移動させて前記第1開閉部を開放することと、
前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引することと、を含む液体吐出装置の制御方法。
【請求項9】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路を開閉可能な第1開閉部と、前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと
、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって
、
前記キャリッジ
を所定位置まで移動させることで、前記レバーを、前記押圧部を押圧する方向に移動させて前記第1開閉部を開放することと、
前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引することと、を含む液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体貯留部を搭載するキャリッジを備える液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、インクタンク等の液体供給源から供給されたインク(液体)を液体吐出ヘッドから用紙等の媒体に吐出して印刷するインクジェット式のプリンターが知られている。こうしたプリンターのなかには、液体供給源から液体吐出ヘッドに供給されるインク等の液体を供給経路の途中で貯留する液体貯留部をキャリッジに搭載するものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された液体吐出装置は、往復動するキャリッジに液体吐出ヘッドとバッファータンク(液体貯留部の一例)とを搭載する。バッファータンクの気泡貯留室から排出路の排出口に至る気泡を、排気キャップを介してポンプで吸引するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された液体吐出装置では、気泡の排出口を記録ヘッドのノズル面の横に配置する必要があるため、キャリッジ底面積が大きくなってしまい、液体吐出装置のサイズの拡大に繋がってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続される。
【0007】
上記課題を解決する液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記液体貯留部における前記貯留室より上流に設けられ、前記液体供給源から供給される液体をろ過するフィルターと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な第1排出流路と、前記液体貯留部における前記フィルターが収容されるフィルター室の上部および前記液体貯留部における前記フィルターよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路と、を含む排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続される。
【0008】
上記課題を解決する液体吐出装置の制御方法は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路を開閉可能な第1開閉部と、前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、前記排出流路の被接続部に設けられ、前記排出流路を開閉可能な開閉弁と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記キャリッジを所定位置の手前まで移動させることで、前記接続部で前記開閉弁を開放するとともに、前記排出流路の被接続部に前記接続部を接続することと、前記キャリッジを前記所定位置まで移動させることで、前記レバーを、前記押圧部を押圧する方向に移動させて前記第1開閉部を開放することと、前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引することと、を含む。
【0009】
上記課題を解決する液体吐出装置の制御方法は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記液体貯留部における前記貯留室より上流に設けられ、前記液体供給源から供給される液体をろ過するフィルターと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な第1排出流路と、前記液体貯留部における前記フィルターが収容されるフィルター室の上部および前記液体貯留部における前記フィルターよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路と、を含む排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記キャリッジを所定位置へ移動させることで、前記排出流路の被接続部に前記接続部を接続することと、前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記第1排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引するとともに、前記第2排出流路を介して前記フィルター室の上部および前記上流流路のうち少なくとも一方の空気を吸引することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態の液体吐出装置を備える複合機を示す斜視図。
【
図4】液体貯留部および液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジを示す斜視図。
【
図7】閉弁状態にある液体貯留部の
図6におけるF7-F7線矢視断面図。
【
図8】開弁状態にある液体貯留部の
図6におけるF7-F7線矢視断面図。
【
図11】気泡排出機構における被接続部と接続部との非接続状態を示す断面図。
【
図12】気泡排出機構における被接続部と接続部との接続状態を示す断面図。
【
図13】気泡排出機構が非接続状態にあるときの平面図。
【
図14】気泡排出機構が第1接続状態にあるときの平面図。
【
図15】気泡排出機構が第2接続状態にあるときの平面図。
【
図16】気泡排出機構が非接続状態にあるときの正面図。
【
図17】気泡排出機構が第1接続状態にあるときの正面図。
【
図18】気泡排出機構が第2接続状態にあるときの正面図。
【
図19】気泡排出機構が非接続状態にあるときの底断面図。
【
図20】気泡排出機構が第1接続状態にあるときの底断面図。
【
図21】気泡排出機構が第2接続状態にあるときの底断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、液体吐出装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の液体吐出装置は、用紙などの媒体に対してインク等の液体を吐出することにより媒体に文字や画像等を印刷(記録)するインクジェット式のプリンターである。
【0012】
図1に示すように、複合機11は、液体吐出装置12と、液体吐出装置12上に配置される画像読取装置13とを備える。複合機11は、画像読取装置13が液体吐出装置12の上側を覆う状態にあり、全体として略直方体状をなしている。
【0013】
図1では、複合機11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、重力の方向に対して垂直な水平面に沿う方向をX軸及びY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに交差(本実施形態では直交)する。以下の説明では、X軸に沿う方向を走査方向X、Y軸に沿う方向を搬送方向Y、Z軸に沿う方向を鉛直方向Zとする。また、走査方向XにおいてX軸の矢印の向く方向を+X方向、その反対方向を-X方向といい、また、搬送方向YにおけるY軸の矢印の向く方向を+Y方向、その反対方向を-Y方向ともいう。また、+X方向側を左側、-X方向側を右側ともいう。さらに、+Y方向側を前側、-Y方向側を後側ともいう。
【0014】
液体吐出装置12の前面には、複合機11の各種の操作を行うためのボタンなどの操作部15と、液体吐出装置12及び複合機11の情報などを表示する表示部16と、を有する操作パネル17が設けられている。さらに、操作パネル17の右側には、少なくとも1つ(本実施形態では5つ)の液体供給源18を保持する保持部19が設けられている。保持部19は筐体20の一部を構成し、その内部に少なくとも1つの液体供給源18を収容する。保持部19には、各液体供給源18と対応するように少なくとも1つ(本実施形態では5つ)の窓部21が形成されている。
【0015】
図2に示すように、液体供給源18は、液体を収容可能な収容室22を有する。
図1、
図2に示す例では、液体供給源18が複数あり、収容室22には、それぞれ異なる種類の液体が収容される。複数の収容室22には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの色の異なる液体が収容される。本実施形態では、
図1に示すように、収容量が多いブラック用の液体供給源18が操作パネル17側に1つ設けられ、ブラック用よりも収容量が少ないカラー用の液体供給源18が3つ設けられている。
【0016】
液体供給源18は、透明もしくは半透明の樹脂製であり、収容室22に収容された液体の液面のレベルを外部から視認可能である。
図1、
図2に示すように、液体供給源18において、窓部21と対応する領域は、外部から収容室22内のインク等の液体を視認可能な視認面23として機能している。
図2に示すように、視認面23には、収容室22に液体を補給する目安を示す下限目盛24と、収容室22に収容可能な液体の上限の目安を示す上限目盛25とが設けられている。液体供給源18は、視認面23を構成する前壁18aと、前壁18aと交差する上壁18b及び下壁18cとを有する。
【0017】
図2、
図3に示すように、液体吐出装置12は、ノズル31から液体を吐出する液体吐出ヘッド30と、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する液体貯留部50と、液体吐出ヘッド30および液体貯留部50を搭載して走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ33とを備える。液体吐出ヘッド30(以下、単に「吐出ヘッド30」ともいう。)は、移動しながら媒体M(
図3参照)に向かって液体を吐出し、吐出した液体を媒体Mに付着させて印刷する。
【0018】
図2に示すように、液体吐出装置12は、液体供給源18から吐出ヘッド30へ液体を供給する液体供給装置26と、吐出ヘッド30をメンテナンスするメンテナンス装置40とを備える。
【0019】
メンテナンス装置40は、吐出ヘッド30に対して相対移動可能に設けられたキャップ41と、キャップ41に接続された排出チューブ42とを備える。キャップ41は、吐出ヘッド30よりも下方に位置する。そのため、キャップ41は、メンテナンスのためにノズル31から吐出される液体、及びノズル31から排出される液体を受容可能である。
【0020】
キャップ41は、吐出ヘッド30から離間した退避位置と、吐出ヘッド30のノズル31が開口する面であるノズル面30Aに接触するキャッピング位置との間で移動可能に構成される。キャップ41は、キャッピング位置にあるときにノズル面30Aとの間にノズル31が開口する閉空間を形成する。キャップ41は、ノズル31が開口する閉空間を形成可能である。
【0021】
メンテナンス装置40は、排出チューブ42の途中に設けられた吸引ポンプ45を備える。液体吐出装置12は、メンテナンス装置40の吸引ポンプ45から延びる排出チューブ46の下流端が接続された廃液収容部47を備える。メンテナンス装置40は、キャップ41が吐出ヘッド30から離間した状態で吸引ポンプ45を駆動し、キャップ41に受容された液体を廃液収容部47に送る。
【0022】
また、メンテナンス装置40は、吐出ヘッド30をキャッピングした状態で吸引ポンプ45を駆動し、キャップ41とノズル面30Aとの間に形成された閉空間を減圧する。これにより、メンテナンス装置40は、吐出ヘッド30内の液体中にある気泡等の異物を液体と共にノズル31から排出させて廃液収容部47に送る。
【0023】
次に、液体供給装置26について説明する。
図2に示すように、液体供給装置26は、液体供給源18と個別に対応して複数(本実施形態では4つ)設けられているが、
図2においては図の簡略化のために1つの液体供給源18と、この液体供給源18と対応する1つの液体供給装置26を示している。複数設けられた液体供給装置26の各構成は略同じであるため、1つの液体供給装置26を説明して他の液体供給装置26の説明を省略する。
【0024】
図2に示すように、液体供給装置26は、液体供給源18に収容される液体を吐出ヘッド30に供給する液体供給路27と、液体供給路27の途中に設けられて液体を貯留可能な前述の液体貯留部50とを備える。液体貯留部50は、キャリッジ33に搭載され、キャリッジ33の移動に伴って走査方向Xに往復移動する。液体貯留部50は、液体を貯留し、貯留する液体の容積を液体の圧力変化に応じて変化させる。
【0025】
液体供給路27は、弾性変形可能なチューブにより形成されるものであってもよいし、硬質の樹脂材料からなる流路形成部材により形成されるものであってもよい。液体供給路27は、溝が形成された流路形成部材にフィルム部材を貼り付けることで形成されるものであってもよい。
【0026】
液体供給路27は、液体貯留部50よりも上流側の部分である第1供給路27aと、液体貯留部50よりも下流側の部分である第2供給路27bとを含む。液体供給装置26は、液体貯留部50と液体供給源18とを接続する供給チューブ28を備える。第1供給路27aは、供給チューブ28内に形成されている。第2供給路27bは、キャリッジ33上に設けられており、液体貯留部50からの液体を吐出ヘッド30に送る。
【0027】
図2に示すように、液体貯留部50が吐出ヘッド30および液体供給源18よりも上方に位置し、液体供給源18の少なくとも一部が吐出ヘッド30よりも下方に位置する。すなわち、吐出ヘッド30は、鉛直方向Zにおいて液体貯留部50と液体供給源18との間に位置する。なお、液体貯留部50、吐出ヘッド30及び液体供給源18の鉛直方向Zにおける位置関係は、吐出時期に吐出ヘッド30のノズル31から液体を吐出でき、待機時などの非吐出時期に吐出ヘッド30のノズル31から液体の漏れがない構成である限りにおいて任意に設定できる。
【0028】
図2に示すように、キャリッジ33には、液体貯留部50の貯留室51の上部の空気を排出可能な気泡排出機構BSが搭載されている。気泡排出機構BSは、貯留室51の上部と連通する排出流路F(
図5参照)の被接続部71(
図9参照)と、排出流路Fの被接続部71に対して接続および離間が可能な接続部91とを備える。また、液体吐出装置12は、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97(
図2、
図3参照)を備える。負圧発生部97は、キャップ41と連通する。
【0029】
気泡排出機構BSは、キャリッジ33が走査方向Xの所定位置にあるときに、被接続部71と接続部91とが接続可能に構成されている。
図2に示すように、負圧発生部97は、メンテナンス装置40の吸引ポンプ45をその負圧源として流用してもよい。この場合、排出チューブ42の途中には切換弁44が設けられ、この切換弁44と気泡排出機構BSとの間は排出チューブ96を通じて接続されている。切換弁44は、例えば、電磁切換弁であり、制御部100によって切換え制御される。切換弁44は、吸引ポンプ45からの負圧をキャップ41に導入する第1切換位置と、吸引ポンプ45からの負圧を気泡排出機構BSの接続部91と被接続部71との接続を介して液体貯留部50内の貯留室51およびフィルター室54に導入する第2切換位置とに切り換え可能に構成される。
【0030】
<走査系の構成>
次に、
図3を参照して、液体吐出装置12内の走査系の構成について説明する。
図3に示すように、キャリッジ33は、媒体Mが搬送される搬送方向Yと交差する幅方向Xと平行な走査方向Xに沿って往復移動可能に設けられている。キャリッジ33は、ガイドレール34に沿って走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。ガイドレール34は、例えば、金属製のメインフレームの一部をレール状に形成して構成されたり、筐体20内を走査方向Xに延びるように架設されたガイド軸により構成されたりする。
【0031】
筐体20内には、キャリッジ33の移動経路の一端部となる位置にキャリッジ33の駆動源となるキャリッジモーター35が配置されている。キャリッジモーター35の駆動軸に固定された駆動プーリー36と、その駆動プーリーと走査方向Xの反対側端部に位置する従動プーリー37との間には無端状のタイミングベルト38が掛装されている。キャリッジ33は、タイミングベルト38の一部に固定されている。そのため、キャリッジモーター35が正転駆動されると、キャリッジ33は+X方向に往動し、キャリッジモーター35が逆転駆動されると、キャリッジ33は-X方向に復動する。
【0032】
また、筐体20内には、キャリッジ33の移動経路に沿って延びるリニアエンコーダー39が設けられている。リニアエンコーダー39は、キャリッジ33の移動経路に沿って延びるリニアスケール39Aと、リニアスケール39Aに一定ピッチで形成された透光部を透過した光を検出可能にキャリッジ33に組み付けられたセンサー39Bとにより構成される。センサー39Bは、リニアスケール39Aを検出してキャリッジ33の移動距離に比例する数のパルス信号よりなるエンコーダー信号を制御部100へ出力する。
【0033】
また、
図3に示すように、キャリッジ33には、吐出ヘッド30と液体貯留部50とが搭載されている。本実施形態では、キャリッジ33には、複数の液体貯留部50が搭載されている。複数の液体貯留部50は走査方向Xに並んだ状態でキャリッジ33に搭載されている。複数の液体貯留部50は、それぞれ液体供給用の供給管部52を有する。各液体貯留部50の供給管部52には、それぞれと対応する複数の液体供給源18に一端部が接続された供給チューブ28の他端部が接続されている。このため、複数の液体貯留部50には、それぞれと対応する複数の液体供給源18から各色の液体が供給される。本例では、複数の液体貯留部50には、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの液体(インク)が供給される。各液体貯留部50内の液体は、吐出ヘッド30に供給される。なお、各液体貯留部50は、貯留室51に貯留された液体を所定範囲内の圧力にして吐出ヘッド30に供給する。つまり、液体貯留部50は、供給された液体を所定範囲内の圧力に調整して吐出ヘッド30へ供給する圧力調整弁の機能を有する。この圧力調整弁として機能する液体貯留部50の詳細な構成については後述する。
【0034】
図3に示すキャリッジ33は、非印刷時の待機位置であるホームポジションHPに位置する。印刷時には、カセットから給送される媒体Mが支持台40(例えばプラテン)支持された状態で搬送方向Yに搬送される。制御部100は、キャリッジモーター35を駆動しキャリッジ33を走査方向Xに往復移動する。そして、吐出ヘッド30は、支持台48上を搬送される媒体Mに向かって走査方向Xに移動しながら液体を吐出することで、媒体Mの表面に文字又は画像が印刷される。
【0035】
また、筐体20内において、
図3に示すホームポジションHPに位置するキャリッジ33の下方に、メンテナンス装置40が配置されている。メンテナンス装置40は、本体40Aと、本体40Aに対して昇降可能に設けられた前述のキャップ41とを備える。キャップ41は、
図3に実線で示す退避位置と、
図3に二点鎖線で示すキャッピング位置との間を昇降する。キャッピング位置に上昇したキャップ41が、吐出ヘッド30のノズル31が開口するノズル面30Aに当接することで、ノズル面30Aとキャップ41との間に閉空間が形成される。この閉空間に吸引ポンプ45が駆動されたときに負圧が導入されることで、ノズル31から液体が強制的に吸引排出される。このとき、ノズル31から増粘インク、気泡、紙粉などの異物が液体と共に排出されることで、ノズル31の目詰まりが予防または解消される。なお、キャリッジ33が非印刷時にホームポジションHPで待機するときは、キャッピング位置に上昇したキャップ41がノズル面30Aに当接して、ノズル31の開口と連通される空間がキャップ41により囲まれる閉空間とされることで、ノズル31内の液体から水分が蒸発することが抑制される。また、キャップ41内は、保湿剤により保湿されてもよい。
【0036】
図3に示すように、気泡排出機構BSは、キャリッジ33の側部に位置する被接続部71と、キャリッジ33が気泡排出処理位置にあるときに被接続部71と接続可能な接続部91とを有する。接続部91は、筐体20の内壁面または筐体20内に配置される不図示のサイドフレームに固定されている。被接続部71と接続部91とは、キャリッジ33の移動方向である走査方向Xに対向して位置する。
【0037】
接続部91は所定位置において走査方向Xに延設されている。排出流路Fの被接続部71は、走査方向Xにおいて、接続部91と対向する位置に開口する。所定位置とは、気泡排出位置P1である。
【0038】
キャリッジ33が
図3に示すホームポジションHPよりも-X方向側の位置である所定位置の一例としての気泡排出位置P1まで移動する過程で、被接続部71と接続部91は段階的に接続される。被接続部71と接続部91の詳細な構成、および段階的に接続される接続過程の詳細については後述する。
【0039】
図4は、キャリッジ33が気泡排出位置P1に位置する状態を示す。
図4に示すように、キャリッジ33は上部に収容凹部33Aを有し、その収容凹部33Aに複数の液体貯留部50が走査方向Xに並んだ状態で装着されている。複数の液体貯留部50が収容凹部33A内に装着された状態では、各供給管部52がキャリッジ33の外側に露出している。このため、各供給管部52に供給チューブ28の端部を接続することが可能である。キャリッジ33の前部には各供給管部52に接続された複数の供給チューブ28を所定の案内経路に沿ってガイドするガイド部材33Bが形成されている。
【0040】
また、キャリッジ33が
図4に示す気泡排出位置P1にあるとき、被接続部71と接続部91とが接続される。この接続状態では、排出チューブ96及び気排弁機構70を介して液体貯留部50内の貯留室51の上部に負圧が導入される。貯留室51の上部に気泡があれば、その気泡は導入された負圧により気排弁機構70及び排出チューブ96を通じて吸引され除去される。
【0041】
<液体吐出装置の電気的構成>
制御部100は、リニアエンコーダー39から入力したエンコーダー信号のパルスエッジの数をカウンターに計数させることで、カウンターの計数値に基づいてキャリッジ33の走査方向Xにおける位置であるキャリッジ位置を取得する。制御部100は、取得したキャリッジ位置に基づいてキャリッジ33の移動時における速度制御および位置制御を行う。
【0042】
制御部100は、メンテナンス実行時には、切換弁44を第1切換位置に切り換えた状態で吸引ポンプ45を駆動させる。一方、制御部100は、気泡排出処理時には、切換弁44を第2切換位置に切り換えた状態で吸引ポンプ45を駆動させるとともに、キャリッジモーター35を駆動してキャリッジ33を気泡排出処理が行われる所定位置に移動させる。
【0043】
ここで、所定位置は、キャリッジ33が非印刷時に待機する待機位置であるホームポジションHPであってもよいし、ホームポジションHPとは異なる位置であってもよい。例えば、所定位置は、ホームポジションHPよりも-X方向側の位置であってもよい。この構成である場合、キャリッジ33がホームポジションHPで待機する度に気泡排出処理が行われることを回避できる。また、キャリッジ33がホームポジションHPでメンテナンスを行う度に気泡排出処理が行われることを回避できる。
【0044】
気泡の成長は非常に遅いため、気泡排出処理の頻度は、メンテナンス頻度よりも少ない頻度でよい。気泡排出処理の頻度が過剰に高くなると、気泡がほとんど無いにも拘わらず排出流路Fに吸引力が及んで液体貯留部50内の液体(インク)が不要に排出されてしまう。これを回避すべくメンテナンス頻度よりも少ない頻度で気泡排出処理を行うため、メンテナンスが行われるメンテナンス位置(例えばホームポジションHP)とは異なる位置であって、印刷領域からメンテナンス位置に至る途中で通過しない位置に気泡排出処理位置を設定してもよい。
【0045】
さらに、
図2に示すように、液体吐出装置12は、複合機11の全体の動作を制御する制御部100を備える。制御部100は、キャリッジ33を往復移動させる動作、媒体Mを搬送する動作、吐出ヘッド30にノズル31から液体を吐出させる動作、及び正常な印刷を維持するべくノズル31から液体を吸引して排出する排出動作(クリーニング)などを制御する。
【0046】
<液体貯留部>
次に、
図5~8を参照して、液体貯留部50の詳細な構成について説明する。なお、複数の液体貯留部50は全て同じ構成なので、以下では1つの液体貯留部50について説明する。
【0047】
図5に示すように、液体貯留部50は、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する。液体貯留部50は、貯留室51に対して液体供給源18からの液体が供給される供給管部52を有する。また、液体貯留部50は、貯留室51内の気泡を排出する排出管部53を有する。本例の液体貯留部50は、貯留室51として、
図6に示す圧力室55を有している。
【0048】
液体貯留部50は、貯留室の内壁面を形成する凹部を有する外形が略直方板状を呈する本体50Aと、本体50Aの一方の面である第1面と、他方の面である第2面とにそれぞれ固定された一対のフィルム56,57とを有する。
図5、
図6に示すように、本例の液体貯留部50は、複数の排出管部53を有する。なお、以下、一方の排出管部53を第1排出管部53Aといい、他方の排出管部53を第2排出管部53Bともいう。
【0049】
詳しくは、
図5に示すように、本体50Aの第1面には、貯留室51の内壁面の一部を形成する凹部が凹設され、この凹部の開口を第1フィルム56が覆うことで、フィルター室54、フィルター室54と連通する供給流路58Aおよび排出流路59(「第2排出流路59」ともいう。)が形成されている。供給流路58Aは、供給管部52とフィルター室54との間を連通している。また、第2排出流路59はフィルター室54と第1排出管部53A(53)との間を連通している。フィルター室54には、フィルターFTが収容されている。つまり、液体吐出装置12は、液体貯留部50における貯留室51より上流に設けられ、液体供給源18から供給される液体をろ過するフィルターFTを備える。また、フィルターFTを通過した液体は、フィルター室54とその下流で連通する供給流路58Bを通って供給室64へ供給される。供給室64には、圧力調整機構60が設けられている。また、第2排出流路59は、フィルター室54の上部に溜まる気泡およびフィルター室54とその上流側で連通する上流流路の一例である供給流路58Aにおけるフィルター室54寄りの部分に滞留する気泡を排出する。
【0050】
そのため、排出流路59におけるフィルター室54側の端部の開口は、気泡が溜まりやすい部分に位置している。本例では、第1排出管部53Aに、後述する負圧発生部97からの負圧が導入されることで、フィルター室54内の上部に溜まった気泡が排出流路59を通って外部に吸引排出される。
【0051】
本実施形態の排出流路Fは、貯留室51内の上部の空気を排出可能な第1排出流路61と、液体貯留部50におけるフィルターFTが収容されるフィルター室54の上部および液体貯留部50におけるフィルターFTよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路59とを含む。
【0052】
また、
図6に示すように、本体50Aの第2面には、圧力室55の内壁面の一部を形成する凹部が凹設され、この凹部の開口を第2フィルム57が覆うことで、圧力室55、圧力室55と連通する供給流路51Aおよび排出流路61(「第1排出流路61」ともいう。)が形成されている。圧力室55には、圧力調整機構60を構成する受圧板69が配置されている。供給流路51Aは、圧力室55から下方(重力方向)に延びて本体50Aの底部から下方へ突出する供給部50Bの供給口と連通している。また、排出流路61は、圧力室55の上部から延びて第2排出管部53Bに連通している。第1排出流路61は、圧力室55の上部に溜まる気泡を排出する。
【0053】
そのため、第1排出流路61における圧力室55側の端部の開口は、気泡が溜まりやすい部分に位置している。本例では、第2排出管部53Bに、後述する負圧発生部97からの負圧が導入されることで、圧力室55内の上部に溜まった気泡が第1排出流路61を通って外部に吸引排出される。
【0054】
図5に示すフィルターFTは、液体が通過可能な目である多数の孔を有している。フィルターFTとしては、例えば、金網や樹脂製の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体の具体的な例としては、金属メッシュフィルターや金属繊維が挙げられる。メッシュフィルターは、針金を織り込んで形成されるフィルターであり、平織、綾織、平畳織、綾畳織などのフィルターがある。
【0055】
<圧力調整機構>
次に、
図7及び
図8を参照して、液体貯留部50の圧力調整機構について説明する。
図7及び
図8に示すように、液体貯留部50は、液体供給路27の途中に設けられ、ノズル31内のインクの圧力をノズル列毎(色毎)に調整する。
【0056】
図7に示すように、液体貯留部50は、容積を変更する方向に変位可能な可動壁63が壁面の一部を構成する圧力室55と、供給室64と、弁体65と、供給室64内において弁体65を付勢する第1付勢部材66と、圧力室55内において可動壁63を圧力室55の外側に向けて付勢する第2付勢部材67と、を備える。
【0057】
圧力室55は、可動壁63とは別の位置に、供給されるインクを流入させる流入孔68と、共通液室32を介してノズル31に連通する供給流路51Aと、を有する。供給室64は、流入孔68を介して圧力室55と連通可能である。弁体65は、基端部が供給室64に配置されるとともに先端部が流入孔68を通じて圧力室55内に突出する。そして、弁体65は、その基端部に設けられたシール部651が流入孔68を閉塞する閉塞位置(
図7に示す位置)と流入孔68を開放する開放位置(
図8に示す位置)とに変位可能な状態で、供給室64に収容された第1付勢部材66によって閉塞位置に向けて付勢される。また、第2付勢部材67は、可動壁63に付着された受圧板69に一端が接触するとともに圧力室55に突出した弁体65の先端部を囲むように他端が配置される。
【0058】
液体貯留部50の弁体65は、供給室64に収容された第1付勢部材66に付勢されることにより、供給室64の圧力が上昇しても開放位置に移動することはない。一方、供給流路51Aからのインクの流出により圧力室55内の圧力が所定の圧力よりも低くなると、可動壁63が圧力室55の内側に向けて変位し、受圧板69が弁体65の先端を押すことにより、弁体65が開放位置に移動する。これにより、流入孔68を通じて供給室64内のインクが圧力室55内に流入するので、圧力室55内の圧力が上昇する。
【0059】
そして、圧力室55内の圧力上昇により可動壁63が圧力室55の外側に向けて変位し、受圧板69が弁体65の先端から離れると、弁体65が開放位置から閉塞位置に移動する。ここで、第2付勢部材67は、受圧板69が弁体65の先端に近づいたときに、受圧板69を、弁体65の先端から離れる方向に押し返す。
【0060】
そのため、圧力室55の圧力が低下して、受圧板69が第1付勢部材66及び第2付勢部材67の付勢力に抗して弁体65の先端を押圧した場合に弁体65は開放位置に移動する。また、インクの流入により圧力室55内の圧力が正圧まで上昇する前に、第2付勢部材67の付勢力によって受圧板69が弁体65から離されるので、圧力室55内の圧力は、第2付勢部材67の付勢力に応じた負圧の範囲に保持される。
【0061】
このように、弁体65の開放位置への移動は、可動壁63の変位に起因して生じる。そして、可動壁63の外面側は大気に開放されている。そのため、弁体65の開放位置への移動は、大気圧と圧力室55との差圧によって行われるので、液体貯留部50の圧力調整機構60を、差圧弁機構(あるいは自己封止弁)ともいい、差圧弁機構による自律的な圧力調整機能を自己封止機能ともいう。
【0062】
以上のように、液体貯留部50は、液体供給源18から加圧供給されたインクの液体吐出ヘッド30への流動を規制可能であるとともに、その流動を規制した下流側におけるインクの圧力を所定の負圧の範囲内に保持可能である。
【0063】
すなわち、液体貯留部50においては、インク吐出時に、供給流路51Aからインクが流出して圧力室55の圧力が大気圧未満の所定の圧力よりも低下する。そして、圧力室55の容積を減少させる方向に変位する可動壁63が弁体65を開放位置に移動させる。これにより、流入孔68からインクが圧力室55に流入して当該圧力室55の圧力が上昇する。また、インクの供給により圧力室55の圧力が大気圧未満の所定の圧力以上になると、弁体65が再び上流側からのインクの流動を規制する。
【0064】
なお、液体吐出ヘッド30に外力が加わった場合などには、その衝撃でノズル31に形成されたメニスカスが壊れ、ノズル31からインクが漏出することがある。こうしたインクの漏出を抑制するために、液体貯留部50は、第2付勢部材67の付勢力によってノズル31の上流に位置する圧力室55内を所定の負圧に保持している。
【0065】
ところで、フィルム56,57を透過する空気が液体(インク)に溶け込んだり、液体供給路27内の液体(インク)に供給チューブ28を透過して空気が溶け込んだりする場合がある。そして、その溶け込んだ空気は時間の経過とともに微小な気泡に成長し、さらに微小な気泡が結合してさらに大きく成長しながら気泡が大きくなる。そして、ある程度の大きさの気泡は液体よりも軽いため、液体が貯留される貯留室51の上部、および貯留室51よりも上流で貯留室51と連通する流路における貯留室51側の部分に溜まりやすい。この溜まった気泡は、キャリッジ33の移動に伴い発生する外力による衝撃や、メンテナンス時の吸引動作によって液体吐出ヘッド30側へ流出する場合がある。例えば、ノズル31または共通液室32内の液体(インク)に気泡が含まれると、気泡が原因でノズル31から液体を正しく吐出できず、吐出不良の発生頻度が高くなる。このため、この種の気泡は、貯留室51からノズル31とは異なる排出経路で排出することが望まれる。
【0066】
そのため、本実施形態の液体吐出装置12は、液体貯留部50の貯留室51の上部の位置などに溜まった気泡を排出するために、気泡排出機構BSを備える。気泡排出機構BSは、液体貯留部50の2つの排出管部53に負圧を導入することで、貯留室51の上部に溜まった気泡を吸引排出する機構である。
【0067】
<気泡排出機構の構成>
次に、気泡排出機構BSの詳細な構成について
図9~
図12を参照して説明する。
図9に示す気泡排出機構BSは、貯留室51内の上部の空気を排出可能な排出流路Fの途中または末端部に設けられる被接続部71を有している。そして、接続部91は、被接続部71に対して接続および離間が可能である。接続部91には、負圧発生部97により負圧が作用する。
【0068】
図9に示す気泡排出機構BSは、
図4に示すキャリッジ33に搭載された状態で、複数の液体貯留部50の各排出管部53と不図示のチューブ等の管路を通じて接続されている。気泡排出機構BSは、各排出管部53から負圧により気泡を含む液体を吸引することで気泡を排出するための複数の排出流路Fと、複数の排出流路Fの途中にそれぞれ設けられた複数の開閉部81,82(
図10参照)を有する気排弁機構70と、接続機構90とを備える。
【0069】
気排弁機構70は、排出流路Fに負圧を導入するために負圧供給側の接続部91と接続される被接続部71を備える。接続機構90は、被接続部71と接続可能に構成される接続部91を備える。気排弁機構70は、複数の開閉部81,82を含む多連弁機構(
図10参照)を内蔵する。
【0070】
第1開閉部81は、第1排出流路F1を開閉可能に構成される。第1開閉部81は、キャリッジ33の移動に連動して第1排出流路F1を開閉する。また、第2開閉部82は、第2排出流路F2を開閉可能に構成される。第2開閉部82は、キャリッジ33の移動に連動して第2排出流路F2を開閉する。第1開閉部81および第2開閉部82は、キャリッジ33の移動に連動して第1排出流路F1および第2排出流路F2を開閉する。
【0071】
気排弁機構70は、多連弁機構を内蔵する機構本体72と、機構本体72の走査方向Xと平行な幅方向の一側部に固定された被接続部71と、多連弁機構を駆動するためのレバー73とを備える。気排弁機構70は、機構本体72の正面となる一面にフィルム74が一部露出する被押圧部75となっている。フィルム74の内側に形成された合流排出流路FC内に収容されている多連弁機構を外側からフィルム74を介して駆動するために被押圧部75を有している。
図10に示すように、レバー73は、その先端の駆動部73Aが円形の被押圧部75の中央部を押圧することで、内部に収容された押圧部84を押圧して変位させることで、多連弁機構を一斉に開弁させるように構成されている。
【0072】
図9、
図10に示す接続機構90は筐体20の内面またはこの内面に沿って配置されたサイドフレーム(図示略)に固定されている。これに対して、気排弁機構70は、複数の液体貯留部50と共にキャリッジ33に搭載されている。よって、気排弁機構70は、接続機構90に対してキャリッジ33の走査方向Xに相対移動可能となっている。
【0073】
図9に示すように、レバー73は、鉛直方向Zと平行な回転軸線を有する回転軸76を中心に回動可能に設けられている。レバー73の駆動部73Aに対して回転軸76を挟んで反対側となる端部には、接続機構90が有するガイド部材93と係合可能な被係合部73Bが形成されている。ガイド部材93は、レバー73の被係合部73Bと係合するとともに被係合部73Bとの係合によりレバー73を回動するようにガイドすることが可能なガイド面93Aを有する。そして、レバー73の被係合部73Bと、ガイド部材93とは走査方向Xに対向して位置している。
【0074】
また、
図9に示すように、被接続部71には、走査方向Xと平行な軸線をもつ被接続孔71Aが設けられている。一方、接続機構90の接続部91には、被接続孔71Aに挿入可能な針状の接続ノズル92が走査方向Xにおける+X側に向かって突出している。被接続孔71Aと接続ノズル92は走査方向Xに対向して位置している。なお、被接続部71に接続部91が接続されるように接続部91を案内するガイド部77を有している。接続ノズル92は、接続機構90を構成する基板90Aから+X方向側に延出する保持部90Bに保持された状態で走査方向Xにスライド可能に設けられてもよい。
【0075】
このため、キャリッジ33が走査方向Xに所定位置まで移動すると、被接続部71と接続部91とが接続する。すなわち、被接続部71の被接続孔71Aに、接続部91の接続ノズル92が挿入される。接続機構90において接続ノズル92の基部にはその軸線と交差する向きに排出チューブ96が接続されている。この排出チューブ96は、
図2に示すように、切換弁44を介して吸引ポンプ45に接続されている。本実施形態では、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97は、吸引ポンプ45を負圧駆動源とする。つまり、負圧発生部97は、メンテナンス装置40の負圧駆動源を共通の負圧駆動源としている。
【0076】
次に、
図10を参照して、気泡排出機構BSの内部構成について説明する。
図10に示すように、気排弁機構70は、複数本(例えば8本)の導入管部78を有している。複数の導入管部78は、キャリッジ33に組み付けられたとき、各液体貯留部50と対向する-Y方向に向かって突出している。複数の導入管部78は、排出流路Fの一部となっている。
【0077】
気排弁機構70には、複数の排出流路78Aの途中に配置される複数の開閉部81,82が内蔵されている。開閉部81,82は、Y方向に移動可能な弁体79と、ゴムシート80と、弁体79をゴムシート80に押し付ける方向に付勢する第1ばね83とを備える。弁体79は+Y方向に突出する軸部79Aを有している。気排弁機構70の機構本体72は、複数本の導入管部78を有する配管部材72Aと、配管部材72Aとゴムシート80を挟んで組み付けられている基部材72Bと、基部材72Bの+Y方向側の面の一部が開放された開口部を覆うフィルム74とにより構成される。基部材72Bの開口がフィルム74によって覆われることで、その内部に合流排出流路FCが形成されている。
【0078】
液体吐出装置12は、第1開閉部81を開閉させる方向に移動可能な押圧部84と、キャリッジ33の移動に連動して押圧部84を移動させるレバー73とを備える。本例の液体吐出装置12は、第1排出流路F1を開閉可能な第1開閉部81と、第2排出流路F2を開閉可能な第2開閉部82とを備える。第1開閉部81および第2開閉部82は、キャリッジ33の移動に連動して第1排出流路F1および第2排出流路F2を開閉する。
【0079】
排出流路Fは、複数の液体貯留部50に対応する複数の第1排出流路F1と複数の第2排出流路F2とが途中で合流して構成される合流排出流路FCを有する。
接続部91は、排出流路Fの被接続部71としての合流排出流路FCの被接続部71に接続される。
【0080】
弁体79の軸部79Aは、合流排出流路FC内に一部突出している。合流排出流路FC内には、1つの押圧部84がY方向に変位可能な状態で収容されている。また、合流排出流路FC内には、この押圧部84を弁体79が第1ばね83により付勢される付勢方向と同じ方向に付勢する第2ばね85が配置されている。1つの押圧部84は、複数の弁体79の全ての軸部79Aと対向する1つの面を押圧面84Aとして有する。
【0081】
1つの押圧部84は、フィルム74と対向する面の中央部に凸部84Bを有する。そして、レバー73は、フィルム74を間に挟んで押圧部84の凸部84Bを押圧可能な凸部よりなる駆動部73Aを先端部に有する。
【0082】
レバー73が退避位置にあるとき、押圧部84は-Y方向側に退避しており、弁体79が第1ばね83の付勢力によりゴムシート80に押し付けられることにより閉弁状態にある。一方、レバー73が回動して押圧部84を押し込むことで、押圧部84が押圧面84Aにより全ての弁体79を第1ばね83の付勢力に抗して開放側に変位させる。この結果、全ての弁体79が開弁状態になる。これら全ての弁体が開弁状態にあるとき、複数の排出流路Fが合流排出流路FCで合流することになる。
【0083】
本例では、複数の液体貯留部50に対応する複数の排出流路Fが途中で合流して合流排出流路FCを構成する。つまり、第1開閉部81と第2開閉部82とが開弁すると、複数の排出流路Fは合流排出流路FCで合流する。特に本実施形態では、接続部91は、複数の排出流路Fの被接続部71としての合流排出流路FCの被接続部71に接続される。
【0084】
排出流路Fは、複数の液体貯留部50に対応する複数の第1排出流路F1と複数の第2排出流路F2とが途中で合流して構成される合流排出流路FCを有する。接続部91は、排出流路Fの被接続部71としての合流排出流路FCの被接続部71に接続される。なお、ゴムシート80は、配管部材72Aと基部材72Bとの接続箇所をシールするシール部材も兼ねている。
【0085】
次に、
図11および
図12を参照して被接続部71と接続部91との接続構造について説明する。
排出流路Fの被接続部71に設けられ、排出流路Fを開閉可能な開閉弁V1と、排出流路Fの被接続部71を閉鎖する方向に開閉弁V1を付勢する付勢部の一例としての第3ばね88とを備える。キャリッジ33が所定位置へ移動するときに、接続部91が第3ばね88による付勢力に抗して開閉弁を押圧しつつ排出流路Fに挿入されることにより、排出流路Fを開放するとともに排出流路Fと接続部91とが連通する。
【0086】
図11に示すように、被接続部71は、被接続孔71Aの内側にゴムシート86と、弁体87と、弁体87をゴムシート86に押し付ける方向である-X方向に付勢する第3ばね88とを有する。
図11の状態まで接続ノズル92が挿入された段階では、弁体87がゴムシート86に押し当てられているので、閉弁状態にある。接続部91は、その内部に形成された流路91Aと連通する管部91Bを有し、この管部91Bに排出チューブ96の端部が接続されている。また、接続部91には、弁体87が開弁位置にあるとき、合流排出流路FCと接続ノズル92とを連通させる吸引流路89が形成されている。この吸引流路89も合流排出流路FCの一部を構成する。
【0087】
図12に示すように、キャリッジ33と共に被接続部71が-X方向にさらに移動すると、接続ノズル92がさらに深く被接続孔71Aに挿入され、第3ばね88の付勢力に抗して弁体87を+X方向に変位させることで開弁状態となる。この接続状態では、排出チューブ96からの負圧が、接続ノズル92、弁体87の開弁部および流路89を通じて合流排出流路FCに導入される。なお、排出流路Fは、排出流路59,61、排出流路59,61と排出流路78Aとの間を接続するチューブ等の流路、排出流路78A、合流排出流路、吸引流路89を含んで構成される。そして、複数の排出流路Fがある場合、本実施形態のように複数の排出流路Fが途中で合流排出流路FCとして合流してもよいし、合流しなくてもよい。また、複数の排出流路Fは、貯留室51の上部の空気を排出する第1排出流路F1と、フィルター室54の上部の空気を排出する第2排出流路F2とを含んでもよいし、第1排出流路F1のみ、あるいは第2排出流路F2のみからなる複数の排出流路でもよい。
【0088】
次に液体吐出装置12の作用を説明する。
気泡排出処理を行ってから気泡が発生する所定時間が経過すると、液体貯留部50内の貯留室51の上部の気泡滞留領域BA、あるいはフィルター室54の上部およびフィルターFTよりも上流に位置する上流流路に気泡滞留領域BAがあり、これらの領域に気泡が成長し溜まる場合がある。
【0089】
これらの気泡滞留領域BAは、排出流路Fに連通している。詳しくは、貯留室51の上部の気泡滞留領域BAは、第1排出流路F1に連通している。また、フィルター室54の上部または上流流路の気泡滞留領域BAは第2排出流路F2に連通している。通常は、第1開閉部81および第2開閉部82は遮断状態にある。また、被接続部71と接続部91は、離間しているので、開閉弁V1は遮断状態にある。
【0090】
複数の液体貯留部50内の液体は負圧の状態にある。このため、第1開閉部、第2開閉部は遮断されているので、複数の液体貯留部50内の圧力が所定の負圧に保たれる。
気泡を排出する処理を行う所定時期になると、制御部100は、切換弁44を、吸引ポンプ45からの負圧をキャップ41に導入する第1切換位置から、吸引ポンプ45からの負圧を気泡排出機構BSの接続部91と被接続部71との接続を介して液体貯留部50内の貯留室51およびフィルター室54に導入する第2切換位置とに切り換える。次に、制御部100は、負圧発生部97を駆動させる。すなわち、制御部100は吸引ポンプを駆動させる。この結果、接続部91に負圧が導入される。キャリッジモーター35を駆動してキャリッジ33を気泡排出位置P1まで移動させる。このとき、キャリッジ33の移動に応じて所定の順序で段階的に排出流路Fが開放される。
【0091】
キャリッジ33が所定位置の一例である気泡排出位置P1に到達する前は、
図13、
図16、
図19に示すように、被接続部71に対して接続部91はまだ離間している。
キャリッジ33が気泡排出位置P1にさらに近づくと、
図14、
図17、
図20に示すように、被接続部71に対して接続部91が接続される第1接続状態になる。このため、開閉弁V1が開放される。この結果、合流排出流路FCに負圧が導入される。これにより第1開閉部81および第2開閉部82に対して気泡排出方向の下流側の領域である合流排出流路FCがまず負圧状態となる。
【0092】
そして、キャリッジ33が気泡排出位置P1に到達して気泡排出機構BSが第2接続状態になると、
図15、
図18、
図21に示すように、レバー73が押圧部84を第1開閉部81および第2開閉部82を開放する方向へ押すので、両開閉部81,82が共に開放される。この結果、第1排出流路F1を通じて貯留室51の上部に負圧が導入されるとともに、第2排出流路F2を通じてフィルター室54の上部および上流流路に負圧が導入される。気泡滞留領域BAの気泡が負圧によって吸引されることで排出流路F1,F2から合流排出流路FCを通って、さらに被接続部71と接続部91との接続箇所、排出チューブ96を経て廃液収容部47に回収される。
【0093】
ここで、開閉部81,82と開閉弁V1との開放される順番が逆であったり同じタイミングで開放されたりすると、開閉部81,82が開放されたときに合流排出流路FCがまだ負圧になっていないため、通常、負圧状態にある液体貯留部50へ空気が逆流してしまう可能性がある。
【0094】
これに対して、本実施形態では、合流排出流路FCを先に負圧状態にしてから開閉部81,82を開放するので、空気の逆流を回避できる。
そして、所定時間の気泡排出処理を終えると、キャリッジ33を所定位置の一例である気泡排出位置P1から離れる方向に移動させる。このとき、まず開閉部81,82が遮断され、次に開閉弁V1が遮断される。このため、液体貯留部50内の負圧状態が保たれる。
【0095】
<液体吐出装置の第1制御方法>
本実施形態の液体吐出装置12は、次の第1制御方法を行う。
キャリッジ33を所定位置の手前まで移動させることで、接続部91で開閉弁V1を開放するとともに、排出流路Fの被接続部71に接続部91を接続する。
【0096】
キャリッジ33を所定位置まで移動させることで、レバー73を、押圧部84を押圧する方向に移動させて第1開閉部81を開放する。
負圧発生部97により接続部91に負圧を作用させることで、排出流路Fを介して貯留室51内の空気を吸引する。
【0097】
<液体吐出装置の第2制御方法>
本実施形態の液体吐出装置12は、次の第2制御方法を行う。
キャリッジ33を所定位置の手前まで移動させることで、接続部91で開閉弁V1を開放するとともに、排出流路Fの被接続部71に接続部91を接続する。
【0098】
キャリッジ33を所定位置まで移動させることで、レバー73を、押圧部84を押圧する方向に移動させて第1開閉部81および第2開閉部82を開放する。
負圧発生部97により接続部91に負圧を作用させることで、第1排出流路F1を介して貯留室51内の空気を吸引するとともに、第2排出流路F2を介してフィルター室54の上部および上流流路のうち少なくとも一方の空気を吸引する。
【0099】
以上、詳述したように本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)液体吐出装置12は、ノズル31から液体を吐出する液体吐出ヘッド30と、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する液体貯留部50と、液体吐出ヘッド30および液体貯留部50を搭載して走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ33とを備える。液体吐出装置12は、貯留室51内の上部の空気を排出可能な排出流路Fと、排出流路Fの被接続部71に対して接続および離間が可能な接続部91と、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97と、を備える。キャリッジ33が所定位置へ移動することで、接続部91が排出流路Fの被接続部71に接続される。このため、排出流路Fの被接続部71をノズル面30Aの隣とは異なる位置に配置できるので、キャリッジ33の底面積が大きくならない。よって、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制しつつ、液体貯留部50内の空気を除去できる。
【0100】
(2)キャリッジ33には複数の液体貯留部50が搭載される。複数の液体貯留部50に対応する複数の排出流路Fが途中で合流して合流排出流路FCを構成する。接続部91は、排出流路Fの被接続部71としての合流排出流路FCの被接続部71に接続される。この構成によれば、排出流路Fを途中で合流するため、排出流路Fを設けるスペースを小さくでき、プリンタサイズ拡大を抑制できる。
【0101】
(3)排出流路Fを開閉可能な第1開閉部81を更に備える。第1開閉部81は、キャリッジ33の移動に連動して排出流路Fを開閉する。よって、排出流路Fの開閉をキャリッジ33の移動だけで行うことができるため、開閉のための駆動機構を別に設ける必要がなく、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制できる。
【0102】
(4)第1開閉部81を開閉させる方向に移動可能な押圧部84と、キャリッジ33の移動に連動して押圧部84を移動させるレバー73とを備える。よって、排出流路Fの開閉を簡単な機構で行うことができるため、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制できる。
【0103】
(5)液体吐出装置12は、ノズル31から液体を吐出する液体吐出ヘッド30と、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する液体貯留部50と、液体吐出ヘッド30および液体貯留部50を搭載して走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ33とを備える。液体吐出装置12は、液体貯留部50における貯留室51より上流に設けられ、液体供給源18から供給される液体をろ過するフィルターFTと、貯留室51内の上部の空気を排出可能な第1排出流路F1と、液体貯留部50におけるフィルターFTが収容されるフィルター室54の上部および液体貯留部50におけるフィルターFTよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路F2と、を含む排出流路Fとを備える。さらに、液体吐出装置12は、排出流路Fの被接続部71に対して接続および離間が可能な接続部91と、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97と、を備える。キャリッジ33が所定位置へ移動することで、接続部91が排出流路Fの被接続部71に接続される。よって、排出流路Fの被接続部71をノズル面30Aとは異なる位置に設けるため、キャリッジ33の底面積が大きくならない。よって、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制しつつ、液体貯留部50内の空気を除去できる。
【0104】
(6)キャリッジ33には複数の貯留部が搭載され、排出流路Fは、複数の貯留部に対応する複数の第1排出流路F1と複数の第2排出流路F2とが途中で合流して構成される合流排出流路FCを有する。接続部91は、排出流路Fの被接続部71としての合流排出流路FCの被接続部71に接続される。よって、排出流路Fを途中で合流するため、排出流路Fを設けるスペースを小さくでき、液体吐出装置12のサイズの拡大を一層抑制できる。
【0105】
(7)第1排出流路F1を開閉可能な第1開閉部81と、第2排出流路F2を開閉可能な第2開閉部82と、を更に備える。第1開閉部81および第2開閉部82は、キャリッジ33の移動に連動して第1排出流路F1および第2排出流路F2を開閉する。よって、排出流路の開閉をキャリッジ33の移動だけで行うことができるため、開閉のための駆動機構を別に設ける必要がなく、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制できる。
【0106】
(8)第1開閉部81、第2開閉部82を開閉させる方向に移動可能な押圧部84と、キャリッジ33の移動に連動して押圧部84を移動させるレバー73とを備える。よって、排出流路Fの開閉を簡単な機構で行うことができるため、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制できる。
【0107】
(9)接続部91は所定位置において走査方向Xに延設される。排出流路Fの被接続部71は、走査方向Xにおいて、接続部91と対向する位置に開口する。よって、排出流路Fと接続部91とを容易に接続させることができる。
【0108】
(10)液体吐出装置12は、排出流路Fの被接続部71に設けられ、排出流路Fを開閉可能な開閉弁V1と、排出流路Fの被接続部71を閉鎖する方向に開閉弁を付勢する付勢部とを備える。キャリッジ33が所定位置へ移動するときに、接続部91が付勢部による付勢力に抗して開閉弁を押圧しつつ排出流路Fに挿入されることにより、排出流路Fを開放するとともに排出流路Fと接続部91とが連通する。よって、接続していない時には排出流路Fを閉鎖することができるため、インク垂れや液体貯留部50からの水分蒸発を抑制することができる。
【0109】
(11)液体吐出装置12は、ノズル31が開口する閉空間を形成可能なキャップ41を更に備える。負圧発生部97は、キャップ41と連通する。よって、負圧発生部97を吸引クリーニングにも兼用できるため、別に吸引機構を設ける必要がなく、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制できる。
【0110】
(12)液体吐出装置12は、ノズル31から液体を吐出する液体吐出ヘッド30と、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する液体貯留部50と、液体吐出ヘッド30および液体貯留部50を搭載して走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ33とを備える。さらに、液体吐出装置12は、貯留室51内の上部の空気を排出可能な排出流路Fと、排出流路Fを開閉可能な第1開閉部81と、第1開閉部81を開閉させる方向に移動可能な押圧部84と、キャリッジ33の移動に連動して押圧部84を移動させるレバー73とを備える。また、液体吐出装置12は、排出流路Fの被接続部71に設けられ、排出流路Fを開閉可能な開閉弁V1と、排出流路Fの被接続部71に対して接続および離間が可能な接続部91と、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97とを備える。液体吐出装置12の制御方法は、キャリッジ33を所定位置の手前まで移動させることで、接続部91で開閉弁を開放するとともに、排出流路Fの被接続部71に接続部91を接続することと、キャリッジ33を所定位置まで移動させることで、レバー73を、押圧部84を押圧する方向に移動させて第1開閉部を開放することと、負圧発生部97により接続部91に負圧を作用させることで、排出流路Fを介して貯留室51内の空気を吸引することと、を含む。この方法によれば、液体貯留部50内の空気を除去できるとともに、空気を除去する過程で貯留室51への空気の逆流を抑制することができる。
【0111】
(13)液体吐出装置12は、ノズル31から液体を吐出する液体吐出ヘッド30と、液体供給源18から液体吐出ヘッド30に供給される液体を貯留可能な貯留室51を有する液体貯留部50と、液体吐出ヘッド30および液体貯留部50を搭載して走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ33とを備える。さらに、液体吐出装置12は、液体貯留部50における貯留室51より上流に設けられ、液体供給源18から供給される液体をろ過するフィルターFTと、貯留室51内の上部の空気を排出可能な第1排出流路F1と、液体貯留部50におけるフィルターFTが収容されるフィルター室54の上部および液体貯留部50におけるフィルターFTよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路F2と、を含む排出流路Fとを備える。また、液体吐出装置12は、排出流路Fの被接続部71に対して接続および離間が可能な接続部91と、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97と、を備える。液体吐出装置12の制御方法は、キャリッジ33を所定位置へ移動させることで排出流路Fの被接続部71に接続部91を接続するとともに、負圧発生部97により接続部91に負圧を作用させることで、第1排出流路F1を介して貯留室51内の空気を吸引するとともに、第2排出流路F2を介してフィルター室54の上部および上流流路のうち少なくとも一方の空気を吸引することと、を含む。この方法によれば、液体貯留部50内の空気を除去することができる。
【0112】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0113】
・押圧部84を1つとしたが、複数の押圧部84を設けてもよい。例えば、液体貯留部50は、第1貯留室と第2貯留室とを有し、複数の第1貯留室の上部の空気を排出する第1排出流路と、複数の第2貯留室の上部の空気を排出する第2排出流路とを備える構成とする。そして、第1開閉部は、複数の第1排出流路を開閉可能な一方の第1開閉部と、複数の第2排出流路を開閉可能な他方の第1開閉部とを有する。そして、押圧部は、一方の第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な第1押圧部と、他方の第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な第2押圧部とを備える構成としてもよい。例えば、第1貯留室としてのフィルター室の上部の空気を排出する第1排出流路を開閉可能な一方の第1開閉部と、第2貯留室としての圧力室の上部の空気を排出する第2排出流路を開閉可能な他方の第1開閉部とを備える構成とする。そして、複数ある一方の第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な一つの第1押圧部と、複数ある他方の第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な一つの第2押圧部とを別々に備える。そして、キャリッジの移動に連動して第1押圧部を移動させるレバーと、キャリッジの移動に連動して第2押圧部を移動させるレバーとを備える構成としてもよい。この場合、レバーは、第1押圧部と第2押圧部とを別々に移動させる別々に設けられた第1レバーと第2レバーでもよいし、第1押圧部と第2押圧部とを1つのレバーで移動させる共通のレバーであってもよい。
【0114】
・液体貯留部は、ダンパーであってもよい。キャリッジ33に搭載されたダンパーは、液体を貯留する貯留室と、貯留室の壁面の一部を形成するダイヤフラムを有する。ダンパーは、キャリッジ33の移動時に発生する液体の圧力変動をダイヤフラムの変形により吸収する。つまり、ダンパーは、液体供給源18から供給チューブ28を介して供給される液体を一時的に貯留し、キャリッジ33の往復移動時などに発生する圧力変動を緩和しつつ第2供給路27bを通じて液体を吐出ヘッド30に供給する。そして、気泡排出機構BSは、ダンパーの貯留室の上部と連通する排出流路の被接続部と、排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部91と、接続部91に負圧を作用させる負圧発生部97とを備える。気泡排出機構BSは、キャリッジ33が走査方向Xの所定位置にあるときに、被接続部71と接続部91とが接続可能に構成される。この構成によっても、液体吐出装置12に、液体貯留部50の貯留室51の上部の空気を排出する構成を設けても、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制することができる。
【0115】
・前記実施形態では、液体貯留部50は、貯留室51とフィルター室54とを備えたが、貯留室51を備えるがフィルター室54を備えない液体貯留部50であってもよい。この場合、フィルターFTは、液体貯留部50とは別部材として設けられてもよい。この構成であっても、貯留室51の上部の空気を除去する構成を、液体吐出装置12のサイズの拡大を抑制しつつ液体吐出装置12に設けることができる。
【0116】
・複数の排出流路の下流端部のそれぞれに被接続部を有し、複数の被接続部の個々に接続される複数の接続部を有する構成でもよい。
・前記実施形態では、複数の排出流路を備えたが、排出流路は一つでもよい。
【0117】
・負圧発生部97の負圧駆動源は、メンテナンス装置40の負圧駆動源である吸引ポンプ45を流用する構成に限定されず、専用の吸引ポンプを備えてもよい。この場合、メンテナンス装置が行うクリーニングは吸引クリーニングに限定されない。すなわち、メンテナンス装置は、ノズル31よりも上流側で液体を加圧することでノズル31から液体を強制的に排出する加圧クリーニングを行ってもよい。
【0118】
・排出流路Fは1つのみでもよい。この場合、1つの排出流路に被接続部を設けてもよい。
・貯留室51の上部の気泡のみ排出し、フォルター室の上部の気泡および上流流路の気泡を排出しない構成でもよい。
【0119】
・開閉部81と開閉弁V1とのうち一方のみを設けてもよい。
・貯留室51の上部の気泡を排出する複数の排出流路F1と、フィルター室54の上部の気泡を排出する複数の排出流路F2とを、別々に合流させて2つの合流排出流路を設ける構成でもよい。この場合、被接続部と接続部は、合流排出流路ごとに設けられてもよい。
【0120】
・複数個の液体貯留部50を、それぞれ2個以上のN個の液体貯留部50とM個の液体貯留部50に分け、N個とM個に分けた液体貯留部の群ごとに合流排出流路を設けてもよい。N個の液体貯留部50の貯留室51の上部の気泡を排出するN個の排出流路F1とN個の液体貯留部50のフィルター室54の上部の気泡を排出するN個の排出流路F2とを合流した1つの合流排出流路FC1とする。また、M個の液体貯留部50の貯留室51の上部の気泡を排出するM個の排出流路F1とM個の液体貯留部50のフィルター室54の上部の気泡を排出するM個の排出流路F2とを合流した1つの合流排出流路FC2とする。これら2つの合流排出流路FC1,FC2のそれぞれに被接続部を設け、これら2つの被接続部に対して対応する2つの接続部をキャリッジ33の移動に応じて接続させてもよい。
【0121】
・合流排出流路の数は、1つまたは2つに限定されず、3つ以上の複数であってもよい。
・複数の排出流路を合流させなくてもよい。例えば、複数の排出流路のそれぞれに個々に開閉部を設けてもよい。そして、複数の排出流路の個々に接続部と接続可能な被接続部を設けてもよい。
【0122】
・液体供給源18は、液体を収容可能な構成であればよく、例えば、交換可能なカートリッジタイプとしてもよい。この場合、インクカートリッジがキャリッジ33に装着されるオンキャリッジタイプでもよいし、インクカートリッジが筐体20側のホルダーに装着されるオフキャリッジタイプでもよい。また、液体供給源18は、キャリッジ33に搭載され、液体を補充可能なタンクタイプでもよい。
【0123】
・液体貯留部50は、フィルターFTを備えない構成としてもよい。
・液体吐出装置12は、インク以外の他の液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。なお、液体吐出装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体吐出装置から吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する液体吐出装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置であってもよい。
【0124】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続される。
【0125】
この構成によれば、排出流路の被接続部をノズル面の隣とは異なる位置に配置できるので、キャリッジ底面積が大きくならない。よって、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制しつつ、液体貯留部内の空気を除去できる。
【0126】
(B)上記液体吐出装置において、前記キャリッジには複数の前記液体貯留部が搭載され、複数の前記液体貯留部に対応する複数の前記排出流路が途中で合流して合流排出流路を構成し、前記接続部は、前記排出流路の被接続部としての前記合流排出流路の被接続部に接続されてもよい。
【0127】
この構成によれば、排出流路を途中で合流するため、排出流路を設けるスペースを小さくでき、プリンタサイズ拡大を抑制できる。
(C)上記液体吐出装置は、前記排出流路を開閉可能な第1開閉部を更に備え、前記第1開閉部は、前記キャリッジの移動に連動して前記排出流路を開閉してもよい。
【0128】
この構成によれば、排出流路の開閉をキャリッジの移動だけで行うことができるため、開閉のための駆動機構を別に設ける必要がなく、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制できる。
【0129】
(D)上記液体吐出装置は、前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーとを備えてもよい。
この構成によれば、排出流路の開閉を簡単な機構で行うことができるため、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制できる。
【0130】
(E)液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記液体貯留部における前記貯留室より上流に設けられ、前記液体供給源から供給される液体をろ過するフィルターと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な第1排出流路と、前記液体貯留部における前記フィルターが収容されるフィルター室の上部および前記液体貯留部における前記フィルターよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路と、を含む排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備え、前記キャリッジが所定位置へ移動することで、前記接続部が前記排出流路の前記被接続部に接続される。
【0131】
この構成によれば、排出流路の被接続部をノズル面とは異なる位置に設けるため、キャリッジ底面積が大きくならない。よって、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制しつつ、液体貯留部内の空気を除去できる。
【0132】
(F)上記液体吐出装置において、前記キャリッジには複数の前記液体貯留部が搭載され、前記排出流路は、複数の前記液体貯留部に対応する複数の前記第1排出流路と複数の前記第2排出流路とが途中で合流して構成される合流排出流路を有し、前記接続部は、前記排出流路の被接続部としての前記合流排出流路の被接続部に接続されてもよい。
【0133】
この構成によれば、排出流路を途中で合流するため、排出流路を設けるスペースを小さくでき、液体吐出装置のサイズの拡大を一層抑制できる。
(G)上記液体吐出装置は、前記第1排出流路を開閉可能な第1開閉部と、前記第2排出流路を開閉可能な第2開閉部と、を更に備え、前記第1開閉部および前記第2開閉部は、前記キャリッジの移動に連動して前記第1排出流路および前記第2排出流路を開閉してもよい。
【0134】
この構成によれば、排出流路の開閉をキャリッジの移動だけで行うことができるため、開閉のための駆動機構を別に設ける必要がなく、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制できる。
【0135】
(H)上記液体吐出装置は、前記第1開閉部、前記第2開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、を備えてもよい。
【0136】
この構成によれば、排出流路の開閉を簡単な機構で行うことができるため、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制できる。
(I)上記液体吐出装置において、前記接続部は前記所定位置において前記走査方向に延設され、前記排出流路の前記被接続部は、前記走査方向において、前記接続部と対向する位置に開口してもよい。
【0137】
この構成によれば、排出流路と接続部とを容易に接続させることができる。
(J)上記液体吐出装置において、前記排出流路の被接続部に設けられ、前記排出流路を開閉可能な開閉弁と、前記排出流路の被接続部を閉鎖する方向に前記開閉弁を付勢する付勢部と、を備え、前記キャリッジが前記所定位置へ移動するときに、前記接続部が前記付勢部による付勢力に抗して前記開閉弁を押圧しつつ前記排出流路に挿入されることにより、前記排出流路を開放するとともに前記排出流路と前記接続部とが連通してもよい。
【0138】
この構成によれば、接続していない時には排出流路を閉鎖することができるため、インク垂れや液体貯留部からの水分蒸発を抑制することができる。
(K)上記液体吐出装置は、前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップを更に備え、前記負圧発生部は、前記キャップと連通してもよい。
【0139】
この構成によれば、負圧発生部を吸引クリーニングにも兼用できるため、別に吸引機構を設ける必要がなく、液体吐出装置のサイズの拡大を抑制できる。
(L)液体吐出装置の制御方法は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な排出流路と、前記排出流路を開閉可能な第1開閉部と、前記第1開閉部を開閉させる方向に移動可能な押圧部と、前記キャリッジの移動に連動して前記押圧部を移動させるレバーと、前記排出流路の被接続部に設けられ、前記排出流路を開閉可能な開閉弁と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記キャリッジを所定位置の手前まで移動させることで、前記接続部で前記開閉弁を開放するとともに、前記排出流路の被接続部に前記接続部を接続することと、前記キャリッジを前記所定位置まで移動させることで、前記レバーを、前記押圧部を押圧する方向に移動させて前記第1開閉部を開放することと、前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引することと、を含む。
【0140】
この方法によれば、液体貯留部内の空気を除去できるとともに、空気を除去する過程で貯留室への空気の逆流を抑制することができる。
(M)液体吐出装置の制御方法は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体供給源から前記液体吐出ヘッドに供給される前記液体を貯留可能な貯留室を有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドおよび前記液体貯留部を搭載して走査方向に往復移動可能なキャリッジと、前記液体貯留部における前記貯留室より上流に設けられ、前記液体供給源から供給される液体をろ過するフィルターと、前記貯留室内の上部の空気を排出可能な第1排出流路と、前記液体貯留部における前記フィルターが収容されるフィルター室の上部および前記液体貯留部における前記フィルターよりも液体供給方向の上流に位置する上流流路のうち少なくとも一方の空気を排出可能な第2排出流路と、を含む排出流路と、前記排出流路の被接続部に対して接続および離間が可能な接続部と、前記接続部に負圧を作用させる負圧発生部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記キャリッジを所定位置へ移動させることで、前記排出流路の被接続部に前記接続部を接続することと、前記負圧発生部により前記接続部に負圧を作用させることで、前記第1排出流路を介して前記貯留室内の空気を吸引するとともに、前記第2排出流路を介して前記フィルター室の上部および前記上流流路のうち少なくとも一方の空気を吸引することと、を含む。
【0141】
この構成によれば、液体貯留部内の空気を除去することができる。
【符号の説明】
【0142】
11…複合機、12…液体吐出装置、13…画像読取装置、15…操作部、16…表示部、17…操作パネル、18…液体供給源、20…筐体、21…窓部、23…視認面、26…液体供給装置、27…液体供給路、27a…第1供給路、30…液体吐出ヘッド、30A…ノズル面、31…ノズル、33…キャリッジ、39…リニアエンコーダー、40…メンテナンス装置、41…キャップ、44…切換弁、45…吸引ポンプ、47…廃液収容部、50…液体貯留部、51…貯留室、52…供給管部、53…排出管部、54…フィルター室、55…圧力室、59…第2排出流路、60…圧力調整機構、61…第1排出流路、70…気排弁機構、71…被接続部、73…レバー、81…第1開閉部、82…第2開閉部、84…押圧部、88…付勢部の一例としての第3ばね、90…接続機構、91…接続部、92…接続ノズル、96…排出チューブ、97…負圧発生部、100…制御部、X…走査方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向、FT…フィルター、BS…気泡排出機構、F…排出流路、F1…排出流路の一例としての第1排出流路、F2…排出流路の一例としての第2排出流路、FC…合流排出流路、V1…開閉弁、HPホームポジション、P1…所定位置の一例としての気泡排出位置。