(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】膜分離プロセス、有機物濃度低減方法および膜分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/58 20060101AFI20241106BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B01D61/58
B01D69/00
(21)【出願番号】P 2020216353
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宜記
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】花田 茂久
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202253(JP,A)
【文献】特表2019-504763(JP,A)
【文献】特開2012-120943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/58
B01D 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離機能層側と透過側とを有する分離膜の、
前記分離機能層側に供給口と排出口とを有し、前記透過側に排出口を有する分離膜エレメントAを少なくともa本と、
前記分離機能層側と前記透過側の両方に供給口と排出口とを有する分離膜エレメントBを少なくとも(b+c)本を有し(a、b、cは1以上の自然数)、
前記分離膜エレメントAがa本直列(第1段目~第a段目)に接続され、
前記分離膜エレメントBがb本、c本それぞれ直列(第1段目~第b段目、第(b+1)段目~第(b+c)段目)に接続され、
前記分離膜が逆浸透膜であり、
原液が、第1段目の前記分離膜エレメントBの少なくとも前記透過側に供給され、
前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出液が、第b段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側に供給され、前記第b段目の分離膜エレメントBの透過側排出液が、第1段目の前記分離膜エレメントAに加圧して供給され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出液が、前記第1段目の分離膜エレメントAに加圧して供給される)、
前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、第a段目の前記分離膜エレメントAにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントAの分離機能層側に供給され、前記第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され(ただし、a=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される)、
前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第(b+1)段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第2段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される)、
前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第(b+c)段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBから前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の一部が、
減圧されてから前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給され(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の一部が、
減圧されてから前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給される)、
前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液が、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側に供給されて得られる前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液)が、前記第1段目の分離膜エレメントBから前記第b段目の分離膜エレメントBのいずれか一つの分離機能層側に循環供給される、
膜分離プロセス。
【請求項2】
前記第1段目の分離膜エレメントBから前記第b段目の分離膜エレメントBまでの、前記分離機能層側の流れと前記透過側の流れが向流である、
請求項1に記載の膜分離プロセス。
【請求項3】
前記原液が、前記第1段目の分離膜エレメントBの透過側のみに供給される、
請求項1または2に記載の膜分離プロセス。
【請求項4】
前記a、b、cが全て1である、
請求項1~3のいずれかに記載の膜分離プロセス。
【請求項5】
前記bが2以上である、
請求項1~3のいずれかに記載の膜分離プロセス。
【請求項6】
前記cが2以上である、
請求項1~3のいずれかに記載の膜分離プロセス。
【請求項7】
前記aが2以上である、
請求項1~3のいずれかに記載の膜分離プロセス。
【請求項8】
前記分離膜エレメントAをさらにd本有し(dは1以上の自然数)、
前記第1段目の分離膜エレメントAから前記第a段目の分離膜エレメントAの透過側排出液の少なくとも一部を、第(a+1)段目の前記分離膜エレメントAから前記第(a+d)段目の分離膜エレメントAの少なくとも一つの分離機能層側に加圧供給する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の膜分離プロセス。
【請求項9】
前記第(a+1)段目の分離膜エレメントAから前記第(a+d)段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、前記第1段目の分離膜エレメントBから前記第b段目の分離膜エレメントBの少なくとも一つの分離機能層側に循環供給される、
請求項8に記載の膜分離プロセス。
【請求項10】
前記逆浸透膜は、陽電子消滅寿命測定法を用いて測定される孔径が7.0Å以下である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の膜分離プロセス。
【請求項11】
前記原液が有機物を含むものであって、前記有機物の濃度が100mg/L以上である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜分離プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載の膜分離プロセスを用いて原液中の有機物濃度を低減する方法であって、
次式で表される回収率Rが70%以上である、
有機物濃度低減方法。
i)d=0の場合、
前記原液の供給流量をQ1、前記第1
段目の分離膜エレメントAから前記第a
段目の分離膜エレメントのAの透過側排出液流量の和をQ2とすると、
R=Q2/Q1×100
ii)d≧1の場合、
前記原液の供給流量をQ1、前記第1
段目の分離膜エレメントAから前記第a
段目の分離膜エレメントのAの透過側排出液流量の和をQ2、前記Q2のうち、前記第(a+1)から前記(a+d)の分離膜エレメントAのいずれかに供給される流量をQ3、前記第(a+1)の分離膜エレメントAから前記(a+d)の分離膜エレメントAの透過側排出液流量の和をQ4とすると、
R=(Q2-Q3+Q4)/Q1×100
【請求項13】
請求項1
2に記載の膜分離プロセスを用いて原液中の有機物濃度を低減する方法であって、
前記回収率Rが95%以上である、
有機物濃度低減方法。
【請求項14】
分離機能層側と透過側とを有する分離膜の、
前記分離機能層側に供給口と排出口とを有し、前記透過側に排出口を有する分離膜エレメントAを少なくともa本と、
前記分離機能層側と前記透過側の両方に供給口と排出口とを有する分離膜エレメントBを少なくとも(b+c)本を有し(a、b、cは1以上の自然数)、
前記分離膜エレメントAがa本直列(第1段目~第a段目)に接続され、
前記分離膜エレメントBがb本、c本それぞれ直列(第1段目~第b段目、第(b+1)段目~第(b+c)段目)に接続され、
前記分離膜が逆浸透膜であり、
原液供給ラインが、第1段目の前記分離膜エレメントBの少なくとも前記透過
側供給口に接続され、
前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出口が、第b段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側供給口に接続され、前記第b段目の分離膜エレメントBの透過側排出口が、第1段目の前記分離膜エレメントAの分離機能層側供給口に接続され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出口が、前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側供給口に接続される)、
前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出口が、第a段目の前記分離膜エレメントAにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントAの分離機能層側供給口に接続され、前記第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出口が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続され(ただし、a=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出口が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続される)、
前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口が、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続され、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口が、第(b+1)段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口が、第2段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続される)、
前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口が、第(b+c)段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続され、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBから前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口の一部が、
減圧弁を経由し、前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側供給口に接続され(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出口
の一部が、
減圧弁を経由し、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側供給口に接続される)、
前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側排出口が、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側供給口に接続され、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出口(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出口)が、前記第1段目の分離膜エレメントBから前記第b段目の分離膜エレメントBのいずれか一つの分離機能層側供給口に接続される、
膜分離装置。
【請求項15】
前記分離膜エレメントBは、透過側流路に透過流体が流れる有孔中心管を備え、前記有孔中心管は、一方の端面が透過側供給口、もう一方の端面が透過側排出口であり、前記第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出口が、前記第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側供給口に接続される(ただし、b=1の場合は、前記第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出口が、前記第1段目の分離膜エレメント
Bの透過側供給口とは前記分離膜エレメントBの有孔
中心管の長手方向において反対側に位置する分離機能層側供給口に接続される)、
請求項14に記載の膜分離装置。
【請求項16】
前記原液供給ラインが、前記第1段目の分離膜エレメントBの透過側供給口にのみ接続される、
請求項14または15に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液中に含まれる有機物質を分離する膜分離プロセス、有機物濃度低減方法および膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水やかん水などに含まれるイオン性物質や有害物を除くための技術として、分離膜エレメントを用いた分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜に分類される。これらの膜は、処理対象原液および目的とする分離成分、分離性能によって使い分けられている。
【0003】
分離膜エレメントとしては、様々な形態があるが、束ねられた多数の分離膜を備えることで、1個の分離膜エレメントあたりの膜面積が大きくなるように、つまり1個の分離膜エレメントあたりに得られる透過流体の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種の形状が提案されている。
【0004】
逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、有孔集水管と、有孔集水管の周囲に巻き付けられた分離膜とを備える。分離膜は、供給液(被処理液)を分離膜表面へ供給する供給側流路材、供給水に含まれる成分を分離する分離膜、分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を集水管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成される。
【0005】
逆浸透膜ろ過の課題の一つとして、運転動力のコストが挙げられる。逆浸透ろ過において、分離膜エレメントに供給される流体の圧力は、分離膜エレメントから排出される濃縮水の浸透圧よりも高い圧力であることが必要とされるため、特に高い回収率で運転される際においては、濃縮水の浸透圧がより高圧になるため、供給流体の圧力を高くする必要があり、運転動力のコストが高くなる。
【0006】
運転動力の低減方法として、例えば、特許文献1には、膜間のイオン濃度差を低減することによって、運転動力を低減することが提案されている。即ち、通常の逆浸透膜ろ過においては、分離膜の透過側の濃度は非常に低く、浸透圧が小さいため、膜面と透過側の浸透圧差が大きくなるが、透過側に浸透圧を有する液を流すことによって、膜面と透過側の浸透圧差を低減するものである。
【0007】
一方、近年、世界的に透析患者が増えてきており、透析患者のクオリティオブライフの観点から在宅透析の需要拡大が著しい。人工透析においては、一般的に一回の治療において90Lから150L程度の大量の透析液を使用する必要がある。一方で、人工透析に用いられた透析液には、血液から移動した尿素などの老廃物が含まれるため、透析液は一度の使用によって廃棄されることが一般的である。
透析液は、一般的には水道水を逆浸透膜エレメントで処理し、イオン性物質および不純物を取り除いた水に、透析液の成分を混合させることによって精製される。しかし、上述の通り、一回の治療において大量の透析液が必要なため、大量の水道水が使用されることになる。したがって、水道水の供給が断続的な地域や水道水の使用が制限されるような地域においては、必要な量の水道水の確保が難しい。さらに、災害時に断水が続くと透析液を水道水から作ることができなくなる。そのため、使用済透析液の再利用の要望は高まってきており、使用済透析液の再生技術の提案がいくつかなされている。
例えば、使用済みの透析液から、吸着剤によって不純物、老廃物、及び電解質を取り除くことが提案されており、特許文献2には二段階で吸着剤カートリッジを用いるシステムが提案されている。また、特許文献3にはウレアーゼ及びイオン交換樹脂または無期吸着剤による尿素除去システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2018-515340号公報
【文献】特開2014-204958号公報
【文献】特表2014-530643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の使用済み透析液からの尿素除去方法では、吸着剤やイオン交換樹脂を用いるため、大量の透析廃液を処理するにあたっては、廃棄物量が多くなるため、運転コストが高くなる。本発明の目的は、イオンおよび有機物質を含む原液の有機物質濃度を低減するにあたって、廃棄物量および運転コストを小さくすることができる膜分離プロセスおよび有機物濃度低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によれば、分離機能層側と透過側とを有する分離膜の、前記分離機能層側に供給口と排出口とを有し、前記透過側に排出口を有する分離膜エレメントAを少なくともa本と、前記分離機能層側と前記透過側の両方に供給口と排出口とを有する分離膜エレメントBを少なくとも(b+c)本を有し(a、b、cは1以上の自然数)、前記分離膜エレメントAがa本直列(第1段目~第a段目)に接続され、前記分離膜エレメントBがb本、c本それぞれ直列(第1段目~第b段目、第(b+1)段目~第(b+c)段目)に接続され、原液が、第1段目の前記分離膜エレメントBの少なくとも前記透過側に供給され、前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出液が、第b段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側に供給され、前記第b段目の分離膜エレメントBの透過側排出液が、第1段目の前記分離膜エレメントAに加圧して供給され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの前記透過側排出液が、前記第1段目の分離膜エレメントAに加圧して供給される)、前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、第a段目の前記分離膜エレメントAにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントAの分離機能層側に供給され、前記第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され(ただし、a=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される)、前記第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、前記第b段目または第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第(b+1)段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され(ただし、b=1の場合は、前記第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第2段目の前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される)、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液が、第(b+c)段目の前記分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBから前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の一部が、前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給され(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の一部が、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給される)、前記第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液が、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBにかけて、隣り合う前記分離膜エレメントBの透過側に供給されて得られる前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液(ただし、c=1の場合は、前記第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液)が、前記第1段目の分離膜エレメントBから前記第b段目の分離膜エレメントBのいずれか一つの分離機能層側に循環供給される、膜分離プロセスが、提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、イオン性物質および有機物を高濃度で含む原液を、低運転コストで逆浸透膜処理することのできる方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一般的な分離膜エレメントの一部展開斜視図である。
【
図3】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図6】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図8】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図9】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図10】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図11】本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図12】膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【
図13】膜分離プロセスの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(1)分離膜
<概要>
分離膜としては、使用方法、目的などに応じた分離性能を有する膜が用いられる。分離膜は、単一層であってもよいし、分離機能層と基材とを備える複合膜であってもよい。また、複合膜においては、分離機能層と基材との間に、さらに多孔性支持層があってもよい。
【0014】
ここで、分離機能層を有する面を供給側または分離機能層側の面、分離機能層を有する面とは反対側の面を透過側の面と呼び、供給側の面が互いに向かい合うように形成された状態の分離膜のことを分離膜対と呼ぶ。
<分離機能層>
分離機能層は、分離機能および支持機能の両方を有する層であってもよいし、分離機能のみを備えていてもよい。なお、「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を備える層を指す。
【0015】
分離機能層が分離機能および支持機能の両方を有する場合、分離機能層としては、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれるポリマーを主成分として含有する層が好ましく適用される。
【0016】
一方、分離機能層としては、孔径の制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという点で、架橋高分子が好ましく使用される。特に、供給流体中の成分の分離性能に優れるという点で、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて得られるポリアミド分離機能層や、有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成可能である。
【0017】
例えば、分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することで形成できる。例えば、多孔性支持層上に多官能アミン水溶液を塗布し、余分な多官能アミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することで、重縮合が起きてポリアミド分離機能層が得られる。
【0018】
分離機能層は、陽電子消滅寿命測定法を用いて測定される孔径が7.0Å以下であることが好ましい。分離機能層の孔径が7.0Å以下であることで、分離膜による尿素などの有機物の分離が高効率で達成される。
【0019】
また、孔径は5.0Å以上であると実用性のある透水性を有することができるため、好ましい。
【0020】
陽電子消滅寿命測定法とは、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ピコ秒から数十ナノ秒のオーダー)を測定し、その消滅寿命に基づいて、0.1~10nmの空孔の大きさ、その数密度、およびその大きさの分布などの情報を非破壊的に評価する手法である。この測定方法については、「第4版実験化学講座」第14巻、485頁、日本化学会編,丸善株式会社(1992)に記載されている。
【0021】
分離機能層における平均孔半径Rは、上記の陽電子消滅寿命τに基づいて、以下の式(1)から求めている。式(1)は、厚さΔRの電子層にある半径Rの空孔にo-Psが存在すると仮定した場合の関係を示しており、ΔRは経験的に0.166nmと求められている(Nakanishi他,Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics,Vol.27,p.1419,John Wiley & Sons,Inc.(1989)にその詳細が記載されている)。
【0022】
【0023】
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、樹脂が素材の場合、多孔性樹脂層とも言い換えることができる。
【0024】
多孔性支持層に使用される材料や、その形状は特に限定されないが、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成されてもよい。多孔性支持層の組成は特に限定されないが、熱可塑性樹脂によって形成されていることが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂とは、鎖状高分子物質からできており、加熱すると外力によって変形または流動する性質が表れる樹脂のことをいう。熱可塑性樹脂の例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・スチレン共重合体などが使用できる。これらの中から化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
【0025】
多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を、後述する基材(例えば密に織ったポリエステル不織布)の上に一定の厚みに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
【0026】
なお、後述の分離膜エレメントBにおいては、分離膜の透過側に供給される流体の浸透圧によって逆浸透膜処理を行う際の浸透圧差を低減することから、供給流体を分離膜機能層の界面近傍、すなわち、多孔性支持層の表面近傍まで浸透しやすい構造であることが好ましい。
<基材>
分離膜の強度、寸法安定性などの観点から、分離膜は基材を有してもよい。基材としては、強度、流体透過性の点で繊維状の基材を用いることが好ましい。
【0027】
基材としては、長繊維不織布および短繊維不織布それぞれを好ましく用いることができる。
<分離膜対>
分離膜は、供給側流路材、透過側流路材と分離膜対を形成する。分離膜は、供給側流路材を挟んで供給側の面が対向するように配置される。また、透過側の面の間には透過側流路材が配置される。透過側流路は、透過流体が有孔中心管に流れるように、透過側の面の間が、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止される。
(2)分離膜エレメント
本発明の膜分離プロセスは、分離膜エレメントAおよび分離膜エレメントBを有する。
(分離膜エレメントA)
分離膜エレメントAは
図1で示したように、分離膜、供給側流路材(4)、透過側流路材(5)、有孔中心管(2)を備える。
分離膜エレメントAにおいて、分離膜は、供給側流路材(4)、透過側流路材(5)と分離膜対を形成する。分離膜は、供給側流路材(4)を挟んで供給側の面が対向するように配置される。また、透過側の面の間には透過側流路材(5)が配置される。透過側流路は、透過流体が有孔中心管(2)に流れるように、透過側の面の間が、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止(閉口)され、長方形状の分離膜対が形成される。
【0028】
供給側流路材(4)は、分離膜の供給側の面に挟まれるように配置され、分離膜に供給流体を供給する流路(すなわち供給側流路)を形成する。さらに供給流体の濃度分極を抑制するために、供給流体の流れを乱すような形状になっていることが好ましい。
【0029】
供給側流路材(4)は、ネット、あるいは空隙を有するシートに凸状物が設けられたような連続形状を有している部材であってもよいし、あるいは分離膜に対して0より大きく1未満である投影面積比を示す不連続形状を有するものであってもよい。また、供給側流路材(4)は分離膜と分離可能であってもよいし、分離膜に固着していてもよい。
【0030】
なお、供給側流路材(4)の素材は特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であっても構わない。
【0031】
供給側流路材(4)の厚みが大きいと圧力損失が小さくなるが、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜面積が小さくなる。厚みが小さいと流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や流体透過性能が低下してしまう。各性能のバランスや運転コストを考慮すると、供給側流路材(4)の厚みは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは300~900μmである。
【0032】
供給側流路材(4)の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することもできるし、あるいはマイクロスコープを用いて撮影した画像を解析することによって測定することもできる。
【0033】
供給側流路材(4)がネットである場合、ネットは複数の糸により構成されている。複数の糸は、交点において互いに交差し、交点部分が最も厚みが大きくなる。
【0034】
ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、長さ方向に一様に増加または減少してもよく、増加と減少を繰り返すような形態であっても構わない。糸の径が長さ方向において増加と減少を繰り返すような形態である場合、糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差するような形態であることが好ましい。糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差することによって、供給側流路の圧力損失を低くすることができる。
【0035】
また、交差する複数の糸の径は同じであっても異なっていても構わない。交差する複数の糸の径が異なっている場合、厚みが一定であれば、径の小さい糸は圧力損失の低減効果が大きく、径の大きい糸は流れを乱す乱流効果が大きくなる。
【0036】
上述の圧力損失と乱流効果とのバランスから、ネットを構成する糸断面の径は、(最小部の径)/(最大部の径)が0.1以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.6以下である。
【0037】
ネットを構成する糸の傾斜角は、供給流体の流れる方向に対して平行方向であれば、圧力損失を低くすることができるが、濃度分極低減効果は小さくなり、垂直方向であれば、圧力損失は高くなるが、濃度分極低減効果を大きくすることができる。圧力損失と濃度分極低減効果のバランスから、糸の傾斜角度は供給流体の平均流れ角度に対して、-60°以上60°以下であることが好ましい。ここで、平均流れ角度とは、1枚の分離膜対の中での流れ角度の平均値である。
【0038】
複数の糸が交差する交点の間隔は、大きいほど圧力損失は小さくなり、小さいと圧力損失は大きくなる。それらのバランスから、交点間隔は、1.0mm以上10mm以下が好ましく、1.1mm以上8mm以下がより好ましく、1.2mm以上5mm以下がさらに好ましい。
【0039】
ネットを構成する糸の断面形状は特に限定されず、楕円、円、三角形、四角形、不定形などを用いることができるが、ネットと分離膜表面が接する部分の面積が小さいと分離膜表面とネットとの擦れによる分離膜性能の低下を抑制することができるうえ、流れのデッドゾーンを小さくすることができ、濃度分極を抑制することができるため、好ましい。ネットと分離膜表面が接する部分の分離膜に対する投影面積比は、0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.2以下がより好ましい。
【0040】
ネットを構成する糸の材質は、供給側流路材(4)としての剛性を維持することができ、分離膜表面を傷つけないものであれば特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性エラストマーなどが好ましく用いられる。
【0041】
透過側流路材(5)は、分離膜の透過側の面に挟まれるように配置され、分離膜を透過した流体を有孔中心管(2)の孔まで導く透過側流路を形成する役割を担う。
【0042】
透過側流路材(5)は、透過側流路の流動抵抗を低減し、かつ加圧ろ過下においても分離膜の透過流体流路への落ち込みを抑制し、流路を安定に形成される点では、透過側流路材(5)の横断面積比が0.30~0.75であることが好ましく、0.40~0.60であることがより好ましい。透過側流路材(5)の種類は限定されず、トリコットのような緯編物、不織布のような多孔性シートに突起物を配置したシート、フィルムや不織布を凹凸加工した凹凸加工シートなどを用いることができる。
【0043】
特定の横断面積比を有する透過側流路材(5)を本発明の分離膜エレメントに配置することにより、透過側流路の流動抵抗をより低減することができ、それに伴い、流動抵抗が大きい流路材を含む分離膜エレメントと、同じ回収率で運転した際、供給流体の流速が速まり濃度分極を小さくでき、特に高回収率運転下における濃度分極の増加やスケールの発生をさらに抑制することができる。
【0044】
横断面積比は、分離膜エレメントの集水管長手方向と平行な方向に沿って、透過側流路材の凸部を通るように切断し、その断面について、凸部の中心と隣接する凸部の中心の距離と透過側流路材の高さの積に対する、凸部の中心と隣接する凸部の中心との間に占める透過側流路材の断面積との比である。横断面積比の算出には、例えばキーエンス社製高精度形状測定システムKS-1100を用い、任意の30カ所の平均値として算出することができる。
【0045】
透過側流路材(5)の厚みは、厚ければ圧力損失を小さくすることができるものの、分離膜エレメントの容器に充填できる膜面積が減少してしまう。薄ければ、分離膜エレメントに充填可能な膜面積は大きくなるものの、圧力損失は大きくなってしまう。それらのバランスから、透過側流路材(5)の厚みは、好ましくは0.1mm~0.5mmであり、より好ましくは0.2mm~0.4mmである。
【0046】
透過側流路材(5)の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することができる。
【0047】
透過側流路材(5)の素材は、有孔中心管(2)に容易に巻回できるものであればよく、透過側流路材(5)の圧縮弾性率は、0.1~5GPaであることが好ましい。圧縮弾性率がこの範囲内であれば、透過側流路材(5)を有孔中心管(2)に容易に巻回することができる。具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられる。
【0048】
透過側流路材(5)の圧縮弾性率は、精密万能試験機を用いて圧縮試験を行い、応力ひずみ線図を作成することにより、測定することができる。
有孔中心管(2)は、その中を透過流体が流れるように構成されていればよく、材質、形状は特に限定されない。有孔中心管(2)の径は、大きければ、分離膜エレメントの充填可能な膜面積が減少してしまい、小さければ、有孔中心管(2)の内部を透過流体が流れる際の流動抵抗が大きくなってしまう。有孔中心管(2)の径は、透過流体の流量に応じて適宜設計されるが、好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~40mmである。有孔中心管(2)としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が用いられる。
(分離膜エレメントB)
分離膜エレメントBにおいても、分離膜エレメントA同様に、分離膜は、供給側流路材と透過側流路材と分離膜対を形成する。分離膜は、供給側流路材を挟んで供給側の面が対向するように配置される。また、透過側の面の間には透過側流路材が配置される。
【0049】
分離膜エレメントBにおいては、分離膜の分離機能層を有する面と透過側の面の両方に流体を供給し、排出することができる構造を有する。分離膜エレメントBにおいては、分離膜の分離機能層を有する面を「供給側」または「分離機能層側」、分離膜の透過側の面を「透過側」と呼ぶ。
【0050】
分離膜エレメントBにおいては、供給側の流路と透過側の流路は、膜を介して表裏で略同一の膜面を流れることが好ましい。膜を介して表裏で同一の膜面を流れるとは、供給側における供給流体の供給部から排出部までに通過する膜面上の経路が、透過側における供給流体の供給部から排出部までに通過する膜面上の経路が、膜の表裏で概ね同一または概ね反対の過程をたどるということを意図する。
【0051】
上述の流路を形成するために、例えば、供給側流路および透過側流路は
図2に示されるような流路であることが好ましい。
図2は、分離膜エレメントの有孔中心管(2)および1対の分離膜対の展開図を示しており、
図2(a)は分離膜対の分離機能層側および有孔中心管(2)を、
図2(b)は分離膜対の透過側および有孔中心管(2)を示している。
図2(a)に示した供給側の流路は、分離膜の両端面において、分離膜エレメントの巻回方向の内周部が開口されており、中央部に内側から巻回方向外側にかけて連続的に封止(10)されており、外周部分は封止されておらず、流路が設けられている。すなわち、分離機能層側である供給側においては、供給液(61)が分離膜の一端面の内周部から流入し、有孔集水管(2)の長手方向中央部において巻回方向外側の流路を通り、もう一方の端面の内周部から濃縮液(72)が排出される。
図2(b)に示した透過側の流路は、分離膜対の巻回方向内側の一辺を除く三辺が全て封止されるとともに、分離膜対の中央部が、分離機能層側と同様に巻回方向の内側から外側にかけて連続的に封止(10)されており、外周部分は封止されておらず、流路が設けられている。また、有孔中心管(2)の中央部に仕切り(9)が設けられており、分離膜エレメントの透過側供給液(81)は有孔中心管(2)の端面から供給され、有孔中心管の孔から分離膜上の透過側流路を通り、中央部の封止部(10)が設けられていない巻回方向外側の流路を通って再び有孔中心管(2)の内部(仕切り(9)の反対側)を通り、もう一方の有孔中心管(2)の端面から、透過側排出液(82)として排出される。このような流路であることで膜を介して表裏で概ね反対の流路とすることができるうえ、分離膜エレメントの製作性という点においても好ましい。
【0052】
分離膜エレメントBにおける供給側流路材は、分離膜の供給側の面に挟まれるように配置され、分離膜に供給流体を供給する流路(すなわち供給側流路)を形成する。さらに供給流体の濃度分極を抑制するために、供給流体の流れを乱すような形状になっていることが好ましい。
【0053】
分離膜エレメントBにおける供給側流路材は、ネット、あるいは空隙を有するシートに凸状物が設けられたような連続形状を有している部材であってもよいし、あるいは分離膜に対して0より大きく1未満である投影面積比を示す不連続形状を有するものであってもよい。また、供給側流路材は分離膜と分離可能であってもよいし、分離膜に固着していてもよい。
【0054】
なお、供給側流路材の素材は特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であっても構わない。
【0055】
供給側流路材の厚みが大きいと圧力損失が小さくなるが、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜面積が小さくなる。厚みが小さいと流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や流体透過性能が低下してしまう。各性能のバランスや運転コストを考慮すると、供給側流路材の厚みは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは300~900μmである。
【0056】
供給側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することもできるし、あるいはマイクロスコープを用いて撮影した画像を解析することによって測定することもできる。
【0057】
供給側流路材がネットである場合、ネットは複数の糸により構成されている。複数の糸は、交点において互いに交差し、交点部分が最も厚みが大きくなる。
【0058】
ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、長さ方向に一様に増加または減少してもよく、増加と減少を繰り返すような形態であっても構わない。糸の径が長さ方向において増加と減少を繰り返すような形態である場合、糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差するような形態であることが好ましい。糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差することによって、供給側流路の圧力損失を低くすることができる。
【0059】
また、交差する複数の糸の径は同じであっても異なっていても構わない。交差する複数の糸の径が異なっている場合、厚みが一定であれば、径の小さい糸は圧力損失の低減効果が大きく、径の大きい糸は流れを乱す乱流効果が大きくなる。
【0060】
上述の圧力損失と乱流効果とのバランスから、ネットを構成する糸断面の径は、(最小部の径)/(最大部の径)が0.1以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.6以下である。
【0061】
ネットを構成する糸の傾斜角は、供給流体の流れる方向に対して平行方向であれば、圧力損失を低くすることができるが、濃度分極低減効果は小さくなり、垂直方向であれば、圧力損失は高くなるが、濃度分極低減効果を大きくすることができる。圧力損失と濃度分極低減効果のバランスから、糸の傾斜角度は供給流体の平均流れ角度に対して、-60°以上60°以下であることが好ましい。ここで、平均流れ角度とは、1枚の分離膜対の中での流れ角度の平均値である。しかし、分離膜エレメントBにおいて、供給側流路の流れの方向が
図2に示したように流路の途中にて90°変化する。したがって、糸の傾斜角度は、分離膜面上において、流れ方向に応じて、場所によって異なっていることが好ましい。
【0062】
複数の糸が交差する交点の間隔は、大きいほど圧力損失は小さくなり、小さいと圧力損失は大きくなる。それらのバランスから、交点間隔は、1mm以上10mm以下が好ましく、1.5mm以上8mm以下がより好ましく、2mm以上6mm以下がさらに好ましい。
【0063】
ネットを構成する糸の断面形状は特に限定されず、楕円、円、三角形、四角形、不定形などを用いることができるが、ネットと分離膜表面が接する部分の面積が小さいと分離膜表面とネットとの擦れによる分離膜性能の低下を抑制することができるうえ、流れのデッドゾーンを小さくすることができ、濃度分極を抑制することができるため、好ましい。ネットと分離膜表面が接する部分の分離膜に対する投影面積比は、0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.2以下がより好ましい。
【0064】
ネットを構成する糸の材質は、供給側流路材としての剛性を維持することができ、分離膜表面を傷つけないものであれば特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性エラストマーなどが好ましく用いられる。
【0065】
分離膜エレメントBにおける透過側流路材は、分離膜の透過側の面に挟まれるように配置され、透過水の流路を形成する点は分離膜エレメントAと同様であるが、分離膜エレメントBにおいては、透過水のみではなく、透過側に流体が供給されるため、透過側に供給される流体が透過水と混合し排出されるまでの流路を形成する役割を果たす。
【0066】
分離膜エレメントBにおける透過側流路材は、透過側流路の流動抵抗を低減し、かつ加圧ろ過下においても分離膜の透過流体流路への落ち込みを抑制し、流路を安定に形成される点で、透過側流路材の横断面積比が0.10~0.50であることが好ましく、0.20~0.40であることがより好ましい。透過側流路材の種類は限定されず、トリコットのような緯編物、不織布のような多孔性シートに突起物を配置したシート、フィルムや不織布を凹凸加工した凹凸加工シートなどを用いることができるが、
図2に示したように流路の途中で流れの向きが変化することから、断面積比や形態は流れの方向に応じて場所で異なる形態であることがより好ましい。
【0067】
透過側流路材の厚みは、厚ければ圧力損失を小さくすることができるものの、分離膜エレメントの容器に充填できる膜面積が減少してしまう。薄ければ、分離膜エレメントに充填可能な膜面積は大きくなるものの、圧力損失は大きくなってしまう。それらのバランスから、透過側流路材の厚みは、好ましくは0.2mm~1mmであり、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。
【0068】
透過側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することができる。
【0069】
透過側流路材の素材は、有孔中心管に容易に巻回できるものであればよく、透過側流路材の圧縮弾性率は、0.1~5GPaであることが好ましい。圧縮弾性率がこの範囲内であれば、透過側流路材を有孔中心管に容易に巻回することができる。具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられる。
【0070】
透過側流路材の圧縮弾性率は、精密万能試験機を用いて圧縮試験を行い、応力ひずみ線図を作成することにより、測定することができる。
図2に示したように、有孔中心管(2)は、内部中央部に仕切り(9)が設けられている構造のものを用いることができる。有効中心管(2)の形状は、その中を透過流体が流れるように構成されていればよく、材質、形状は特に限定されない。有孔中心管(2)の径は、大きければ、分離膜エレメントの充填可能な膜面積が減少してしまい、小さければ、有孔中心管(2)の内部を透過流体が流れる際の流動抵抗が大きくなってしまう。有孔中心管(2)の径は、透過流体の流量に応じて適宜設計されるが、好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~40mmである。有孔中心管(2)としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が用いられる。
流路の形成に用いられる封止部(10)は、巻回前に外周端部を接着剤やテープで封止する、もしくは端面については、巻回後に、端面を接着剤やテープで封止することによって封止することができる。接着剤等による封止は、接着剤またはホットメルト等による接着、熱またはレーザによる融着等により行うことができる。
接着剤の塗布量は、分離膜が有孔中心管に巻回された後に、接着剤が塗布される部分の幅が2~30mm以下であるような量であることが好ましい。これによって、有効膜面積も比較的大きく確保することができる。
(3)膜分離プロセス
以下、膜分離プロセスにおいて最上流の分離膜エレメントに供給される液体を「原液」と呼ぶ。
【0071】
本発明の膜分離プロセスは、分離膜エレメントA、分離膜エレメントBおよび供給ポンプを備え、さらに減圧弁などが備えられていても良い。
【0072】
本発明の膜分離プロセスにおいては、少なくとも1本の分離膜エレメントAおよび少なくとも2本の分離膜エレメントBを有する。
【0073】
以下、本発明の膜分離プロセスの実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0074】
図3は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが2本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。
図3において、原液(6)はまず第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。第1段目の分離膜エレメントA(11)において、分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは並流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、所定の量を濃縮液(7)として排出するものと、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給されるものに分けられる。なお、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給される液体は、減圧することによって、透過を生じさせることができる。第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
【0075】
図3において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)によって希釈され、分離膜エレメント内で透過液と混合し濃度が低減された液体が、第1段目の分離膜エレメントA(11)に供給される。原液(6)の供給流量に対して所定の回収率の透過液(8)を得る場合、これにより第1段目の分離膜エレメントA(11)に供給される流量を増加することができるため、第1段目の分離膜エレメントA(11)の回収率を低減することができる。また、分離膜エレメントB(21、22)によって、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液(濃縮液)をさらに濃縮していくことで、膜分離プロセスとしての回収率を向上させる一方で、第1段目の分離膜エレメントA(11)の回収率を低減することができるため、特に膜分離プロセスとして高い回収率を得ようとする場合において、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液の濃度を低下することができ、省エネ運転を達成することができる。
図3のプロセス構成は、より低圧運転が可能であり、さらに高い除去性能を有するという特徴を有する。
【0076】
図4は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが2本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。
図4において、原液(6)はまず第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。第1段目の分離膜エレメントA(11)において、分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、所定の量を濃縮液(7)として排出するものと、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給されるものに分けられる。なお、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給される液体は、減圧することによって、透過を生じさせることができる。第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
【0077】
図4のプロセス構成は、第1段目の分離膜エレメントBの流れを向流にすることにより、第1段目の分離膜エレメントBでの膜表裏での浸透圧差を
図3の構成に比べて適正化することができ、第2段目の分離膜エレメントBの膜面積を小さくすることができるという特徴を有する。
【0078】
図5は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが3本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。分離膜エレメントBのうち、第2段目の分離膜エレメントB(22)と第3段目の分離膜エレメントB(23)は直列に接続されている。
図5において、原液(6)はまず第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側から排出される液体は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給される。第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)と直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給されるものと、減圧されたうえで、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に供給されるものに分けられる。第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出される。第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
【0079】
図5のプロセス構成は、
図4のプロセス構成に対して、第3段目の分離膜エレメントBを追加することによって、分離膜エレメントの段数は増加し、運転圧力はやや高くなるものの、分離膜エレメントBの膜表裏の浸透圧差がより適正化され、プロセス全体での除去性能を向上させることができるという特徴を有する。
図6は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが2本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。
図6においては、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給されるものと分離膜の分離機能層側の面に供給されるものに分けられる。そのうち、分離膜の分離機能層側の面に供給される液体は、高圧ポンプ(31)で昇圧されることによって、第1段目の分離膜エレメントB(21)で透過を生じさせることができる。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)より排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側から排出される液体は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは並流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出されるものと、減圧されたうえで、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給されるものに分けられる。第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、原液(6)の一部と混合されて高圧ポンプ(31)で昇圧され、さらに第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
図6のプロセス構成は、原液の一部を第1段目の分離膜エレメントBの透過側にも供給することにより、
図3のプロセス構成に比べると、運転圧力はやや高くなるものの、分離膜エレメントAの膜面積を低減することができるという特徴を有する。
図7は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが4本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。分離膜エレメントBは、第1段目の分離膜エレメントB(21)と第2段目の分離膜エレメントB(22)、第3段目の分離膜エレメントB(23)と第4段目の分離膜エレメントB(24)がそれぞれ直列に接続されている。
図7において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給され、分離膜を透過した流体と混合し、さらに希釈されて第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液として排出される。第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側の面に供給される。この際、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第2の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給される。第3段目の分離機能層側排出液は、直列に接続された第4段目の分離膜エレメントB(24)の分離機能層側に供給されるものと、減圧され、第4段目の分離膜エレメントB(24)の透過側に供給されるものに分けられる。第4段目の分離膜エレメントB(24)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出される。第4段目の分離膜エレメントB(24)の透過側排出液は、直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に供給され、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給される。
図7のプロセス構成は、
図4のプロセス構成に対して、第3段目、第4段目の分離膜エレメントを追加することによって、分離膜エレメントBの段数が増加し、運転圧力がやや高くなるものの、分離膜エレメントBの膜表裏の浸透圧差がより適正化され、プロセス全体での塩除去性能を向上させることができ、さらに分離膜エレメントAの膜面積を低減することができるという特徴を有する。
図8は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが3本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。分離膜エレメントBは、第2段目の分離膜エレメント(22)と第3段目の分離膜エレメントB(23)が直列に接続されている。
図8において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。分離膜を透過しなかった濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメント(22)と直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給される。第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出されるものと、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に供給されるものに分けられる。第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
図8のプロセス構成は、
図5のプロセス構成に対して、第3段目の分離膜エレメントBの透過側に供給する液を、プロセス全体の濃縮液へと変更することによって、運転圧力がやや高くなり、プロセス全体での除去性能がやや低下するものの、分離膜エレメントBの膜面積を小さくすることができるという特徴を有する。
図9は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが2本、分離膜エレメントBが3本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。分離膜エレメントBは、第2段目の分離膜エレメント(23)と第3段目の分離膜エレメントB(23)が直列に接続されている。
図9において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液と分離膜を透過しなかった濃縮液とに分けられる。濃縮液は循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。一方、第1段目の分離膜エレメントA(11)の透過液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。第2段目の分離膜エレメントA(12)の濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側に供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側排出液と原液が混合され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側に供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントBと直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給される。第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出されるものと、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に、減圧されたうえで供給されるものに分けられる。第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
図9のプロセス構成は、
図8のプロセス構成に対して、分離膜エレメントAの段数が増加することによって、運転圧力はやや増加するものの、透過液を二段で処理するため、プロセス全体での除去性能を増加することができるという特徴を有する。
図10は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが2本、分離膜エレメントBが3本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。第1段目の分離膜エレメントA(11)と第2段目の分離膜エレメントA(12)、および第2段目の分離膜エレメントB(22)と第3段目の分離膜エレメントB(23)がそれぞれ直列に接続されている。
図10で示した形態においては、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側から排出される液体は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液と分離膜を透過しなかった濃縮液とに分けられる。第1段目の分離膜エレメントAの濃縮液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)と直列に接続された第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側に供給され、さらに透過液と濃縮液に分けられる。そして、第1段目の分離膜エレメントA(11)の透過液と第2段目の分離膜エレメントA(12)の透過液は混合され、透過液(8)として得られる。第2段目の分離膜エレメントA(12)の濃縮液は、循環され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側の面に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)と直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給される。第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出されるものと、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に、減圧されたうえで供給されるものに分けられる。第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側排出液と混合されて、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。
図10のプロセス構成は、
図8のプロセス構成に対して、分離膜エレメントAの段数が増加することによって、運転圧力はやや増加するものの、分離膜エレメントAの1段あたりの回収率を低減することができ、プロセス全体での除去性能を向上させることができるという特徴を有する。
図11は、本発明の膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが3本、分離膜エレメントBが4本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。第1段目の分離膜エレメントA(11)と第2段目の分離膜エレメントA(12)、第1段目の分離膜エレメントB(21)と第2段目の分離膜エレメントB(22)、第3段目の分離膜エレメントB(23)と第4段目の分離膜エレメントB(24)はそれぞれ直列に接続されている。
図12において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、さらに第1段目の分離膜エレメントBと直列に接続された第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側に供給される。第2段目の分離膜エレメントB(22)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液と分離膜を透過しなかった濃縮液とに分けられる。第1段目の分離膜エレメントA(11)の濃縮液は、第1段目の分離膜エレメントA(11)と直列に接続された第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側に供給され、さらに透過液と濃縮液に分けられる。第1段目の分離膜エレメントA(11)の透過液と第2段目の分離膜エレメントA(12)の透過液は混合され、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第3段目の分離膜エレメントA(13)の分離機能層側に供給される。一方、第2段目の分離膜エレメントA(12)の濃縮液は、循環され、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側の面に供給される。この際、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第3段目の分離膜エレメントA(13)の透過液は、透過液(8)として得られ、濃縮液は、第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側に循環供給される。すなわち、原液(6)と第3段目の分離膜エレメントA(13)の濃縮液が混合され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側に供給される。第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントB(22)と直列に接続された第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給され、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側排出液は、第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側に供給される。第3段目の分離膜エレメントB(23)の分離機能層側排出液は、第3段目の分離膜エレメントB(23)と直列に接続された第4段目の分離膜エレメントB(24)の分離機能層側に供給されるものと、減圧されたうえで、第4段目の分離膜エレメントB(24)の透過側に供給されるものに分けられる。第4段目の分離膜エレメントB(24)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出される。第4段目の分離膜エレメントB(24)の透過側排出液は、直列に接続された第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側に供給され、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧されて、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に循環供給される。すなわち、第3段目の分離膜エレメントB(23)の透過側排出液は、第2段目の分離膜エレメントA(12)の分離機能層側排出液と混合されて、第2段目の分離膜エレメントB(22)の分離機能層側に供給される。
図11のプロセス構成は、
図5のプロセス構成に対して、分離膜エレメントAおよび分離膜エレメントBの段数を増加させることにより、運転圧力はやや高くなるものの、プロセス全体での除去性能を大幅に向上させることができるという特徴を有する。
図12は、膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、分離膜エレメントBが1本、高圧ポンプ、減圧弁から構成されている。
図12において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離膜透過側の面に供給される。分離膜透過側の面に供給された原液(6)は、分離膜を透過した流体と混合し、希釈されて第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液として排出される。第1段目の分離膜エレメントB(21)の透過側排出液は、高圧ポンプ(31)で昇圧され、第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に供給され、透過液(8)が得られる。分離膜を透過しなかった濃縮液は第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側に供給される。この際、第1段目の分離膜エレメントB(21)の分離機能層側と透過側の流れは向流となるように供給される。第1段目の分離膜エレメントB(2)の分離機能層側排出液は、濃縮液(7)として排出される。
図13は、膜分離プロセスの一例を示す概略図である。本プロセスは、分離膜エレメントAが1本、高圧ポンプから構成されている。
図13において、原液(6)は第1段目の分離膜エレメントA(11)の分離機能層側に高圧ポンプ(31)で昇圧したうえで供給され、透過液(8)と濃縮液(7)に分けられる。
【0080】
本発明の膜分離プロセスにおいては、分離膜エレメントAを1本以上、分離膜エレメントBを2本以上有する。本発明の膜分離プロセスの分離膜エレメントの配置としては、(i)透過液を得るための分離膜エレメント、(ii)原液を希釈して低濃度化するための分離膜エレメント、(iii)分離膜エレメントAで排出される濃縮液をさらに濃縮するための分離膜エレメント、(iv)(i)で得られる透過液の除去対象成分の含有量をさらに低減するための分離膜エレメント、に大別される。(i)、(ii)、(iii)それぞれで少なくとも分離膜エレメント1本ずつを有し、(i)および(iv)に分離膜エレメントA、ii)および(iii)に分離膜エレメントBが適用される。
【0081】
分離膜エレメントBは、分離膜の分離機能層側および透過側両方の面に供給口と排出口を有する。したがって、分離膜の分離機能層側に供給される液は、分離膜を透過することによって濃縮が生じる。一方、分離膜の透過側に供給される液は、分離膜を透過する液と混合されるため、希釈が生じる。すなわち、分離膜エレメントBにおいては、分離膜の分離機能層側の面で濃縮、透過側で希釈が生じる。分離膜エレメントBの透過側に供給される液は、浸透圧を有していることが好ましい。浸透圧を有しているとは、供給される液が純水ではなく、無機物や有機物が液中に溶解していることを言う。分離膜エレメントBの透過側に供給される液としては、例えばNaCl、MgCl2、Na2SO4、(NH4)2SO4などの無機塩、グリシンなどの有機塩、スクロース、フルクトースなどの有機物、炭酸水素ナトリウムなどの揮発性混合物、イオン液体などを用いることができるが、原液中に含まれている成分を活用することが好ましい。分離膜エレメントBの透過側に供給される液が浸透圧を有していることによって、分離機能層側から透過側へ透過する際の駆動力である有効圧力差を増加させることができるため、定流量運転を行う場合は、分離膜エレメントBの分離機能層側に供給する液の供給圧力を低下することができ、定圧運転を行う場合は、透過流量を増加することができる。また、分離膜エレメントBの分離機能層側と透過側の流れは上述の通り、膜を介して表裏で略同一の膜面を流れることが好ましく、流路が反対である方がより好ましい。分離膜エレメントBの分離機能層側と透過側の流路が反対(向流)であることによって、分離膜エレメントBの分離機能層側の供給入口および出口での分離機能層側と透過側の浸透圧差をより小さくすることができるため、分離膜エレメントBの分離機能層側と透過側の有効圧力差をより大きくすることができるため、好ましい。すなわち、定流量運転を行う場合は、分離膜エレメントBの分離機能層側に供給する液の供給圧力を低下することができ、定圧運転を行う場合には、透過流量を増加することができる。
(i)、(ii)、(iii)に適用される分離膜エレメントの本数は、処理流量によって適宜決定されるものであるが、本数が多くなると、分離膜エレメント1本あたりの透過量を小さくすることができるため、分離膜エレメントの寿命を増加させることができる。(ii)、(iii)に適用される分離膜エレメントBの本数が多くなると、分離膜エレメント1本あたりの透過量を小さくすることができるため、分離膜エレメントBの内部濃度分極を抑制することができる。また、(iv)に適用される分離膜エレメントAを1本以上有すると、透過液中の除去対象成分含有量は少なくなるが、必要な分離膜エレメント本数や運転所要動力が増加する。分離膜エレメントの本数は、処理流量や要求水質等によって適宜決定される。
【0082】
(i)において、分離膜エレメントAは少なくともa本直列に接続される。分離膜エレメントAが直列に接続されるとは、分離膜エレメントAの濃縮水が隣り合う別の分離膜エレメントAに供給されることを意味する。分離膜エレメントAが少なくともa本直列に接続されていれば、追加の分離膜エレメントAが、さらに並列に接続されていても良い。
【0083】
(ii)において、分離膜エレメントBは少なくともb本直列に接続される。分離膜エレメントBが直列に接続されるとは、分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の少なくとも一部が、隣り合う別の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、さらに分離膜エレメントBの透過側排出液の少なくとも一部が隣り合う別の分離膜エレメントBの透過側に供給されることを意味する。分離膜エレメントBが少なくともb本直列に接続されていれば、追加の分離膜エレメントBが、さらに並列に接続されていても良い。
【0084】
(iii)において、分離膜エレメントBは少なくともc本直列に接続される。分離膜エレメントBが直列に接続されるとは、分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の少なくとも一部が隣り合う別の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、さらに分離膜エレメントBの透過側排出液の少なくとも一部が隣り合う別の分離膜エレメントBの透過側に供給されることを意味する。分離膜エレメントBが少なくともc本直列に接続されていれば、追加の分離膜エレメントBが、さらに並列に接続されていても良い。
【0085】
(iv)に適用される分離膜エレメントAは、d本は直列に接続されていても、並列に接続されていても、それらの組み合わせであってもよい。
【0086】
本発明の膜分離プロセスにおいて、(i)に適用される分離膜エレメントAの本数がa本、(ii)に適用される分離膜エレメントBの本数がb本、(iii)に適用される分離膜エレメントBの本数がc本、(iv)に適用される分離膜エレメントAの本数がd本である。上述の各分離膜エレメントについて、a≧1、b≧1、c≧1、d≧0である。
本発明の膜分離プロセスにおいて、原液は、第1段目の分離膜エレメントBの少なくとも透過側に供給される。少なくとも透過側に供給されるとは、原液の全量が第1段目の分離膜エレメントBの透過側に供給されてもよく、原液の一部が透過側のみならず、分離膜エレメントBの分離機能層側に供給されてもよい。第1段目の分離膜エレメントBにおいては、透過側に原液が供給され、分離機能層側に原液と同等あるいはそれ以下の濃度を有する液が供給され、分離機能層側から透過側への透過が生じることによって、第1段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は原液よりも低濃度に希釈された液が排出される。(ii)に適用される分離膜エレメントBの本数bが2本以上の場合、第1段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第2段目の分離膜エレメントBの透過側に供給され、同様に第2段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第b段目の分離膜エレメントBまで連続的に排出と供給が行われる。
第b段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側に高圧ポンプで加圧して供給される。(i)に適用される分離膜エレメントAの本数aが2本以上の場合、第1段目の分離膜エレメントAと直列に(a-1)本接続され、第1段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が、第2段目の分離膜エレメントAに供給され、同様に第2段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液は、第a段目の分離膜エレメントAまで連続的に排出と供給が行われる。
第a段目の分離膜エレメントAの分離機能層側排出液は、第1段目または第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される。第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される場合、第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される液は、第1段目の分離膜エレメントBで濃縮され、第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、第2段目の分離膜エレメントBに供給され、同様に第2段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、第b段目の分離膜エレメントBまで連続的に排出と供給が行われる。第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される場合、第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される液は、第b段目の分離膜で濃縮され、第b段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、第(b-1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、同様に第(b-1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、第1段目の分離膜エレメントBまで連続的に排出と供給が行われる。
そして、第b段目または第1段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給される。(iii)に適用される分離膜エレメントBの本数cが2本以上の場合、第(b+1)段目の分離膜エレメントBと直列に(c-1)本接続され、第(b+1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の少なくとも一部が、第(b+2)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側に供給され、同様に第(b+2)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の少なくとも一部は、第(b+c)段目の分離膜エレメントBまで連続的に排出と供給が行われる。
第(b+1)段目の分離膜エレメントBから第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液の一部は、第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給される。第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給される液は、第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液または第(b+c-1)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液であることが好ましい。これらの液が供給されることにより、第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側と透過側の浸透圧差を低減することができるため、好ましい。
また、第(b+c)段目の分離膜エレメントBの分離機能層側排出液は、少なくとも一部が系外に排出される。なお、第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給される液は、減圧弁(32)などによって減圧されてから供給することが好ましい。減圧されてから供給されることによって、分離膜エレメントBの分離機能層側と透過側の圧力差を生じさせることができ、透過を生じさせることができる。
【0087】
第(b+c)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第(b+c-1)段目の分離膜エレメントBの透過側に供給され、同様に第(b+c-1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第(b+1)段目の分離膜エレメントBまで連続的に排出と供給が行われる。
【0088】
そして、第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液は、第1段目の分離膜エレメントBから第b段目の分離膜エレメントBのいずれか一つの分離機能層側に循環供給される。この際第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液が循環供給される分離膜エレメントBは、第(b+1)段目の分離膜エレメントBの透過側排出液の濃度に近い液が供給される分離膜エレメントBであることが好ましく、例えば第b段目の分離膜エレメントBを選択することができる。
【0089】
一方、(i)において分離膜エレメントAの透過液は、(iv)に適用される分離膜エレメントAによってさらに加圧して分離機能層側に供給され、分離されることによって、より透過液中の除去対象物質量を低減することができる。また、(iv)に適用される分離膜エレメントAの分離機能層側排出液は、例えば、原液と混合して第1段目の分離膜エレメントBの少なくとも透過側に循環供給されることが好ましい。(iv)に適用される分離膜エレメントAの分離機能層側排出液が循環されることによって、膜分離プロセス全体としての回収率を向上させることができる。
【0090】
本発明の膜分離プロセスを用いることによって得られる透過液流量の、原液供給流量に対する割合(回収率)は、70%以上であることが好ましい。回収率が高くなると、必要な分離に必要な運転圧力が高圧になってしまうが、本発明の膜分離プロセスを用いると、高い回収率を得ようとする場合においても、より低圧で運転することができる。回収率は、さらに好ましくは95%以上である。
(4)膜分離プロセスの利用用途
本発明の膜分離プロセスは、例えば使用済み透析液を透析液として再利用するために用いることができる。透析液には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、重炭酸イオン等が含まれる。血液中の尿毒素が透析膜を介して透析液中に拡散およびろ過されることで、血液中から尿毒素が除かれる。したがって、透析装置を通過した透析液には、上述の物質に加え、尿素、クレアチニン、尿酸などの尿毒素および血液中から取り除かれるリン酸イオンなどが含まれる。使用済透析液のイオン濃度は1%程度であるため、使用済透析液から透過液を高い回収率で得ようとすると、運転圧力が高くなってしまう。本膜分離プロセスを用いることにより、より低圧での運転が可能となり、運転コストを低減することができる。
【0091】
本膜分離プロセスの他の利用用途としては、海水淡水化用途、下廃水再利用、ゼロリキッドディスチャージ(ZLD)などにおいて、より高い回収率で運転しようとする場合に適用すると高い効果が得られる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(原液)
原液として、塩化ナトリウム6728mg/L、塩化カリウム372.5mg/L、塩化カルシウム二水和物220.2mg/L、塩化マグネシウム六水和物100.4mg/L、炭酸水素ナトリウム2099.8mg/L、尿素630mg/Lの濃度になるように溶解させた水溶液を用いた。
(回収率)
分離膜エレメントAの透過水量の総量を1分間サンプリングし、重量測定を行った。測定した透過水量を1分間に供給した供給水量で除して100倍した数値を回収率とした。なお、分離膜エレメントAの透過水をさらに昇圧して別の分離膜エレメントAに供給する場合、最後に透過水として得られる透過水をサンプリング、重量測定を行った。
(塩除去率(TDS除去率))
上述の回収率の測定において1分間の運転で用いた供給水およびサンプリングした透過水について、TDS濃度を電気伝導率測定により求め、下記式からTDS除去率を算出した。
【0093】
TDS除去率(%)=100×{1-(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
(尿素除去率)
上述の回収率の測定において1分間の運転で用いた供給水およびサンプリングした透過水について、尿素濃度をTOC測定により求め、下記式から尿素除去率を算出した。
【0094】
尿素除去率(%)=100×{1-(透過水中の尿素濃度/供給水中の尿素濃度)}
(分離膜エレメントAの作製)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/s)上にポリスルホン(PSf)の16.0重量%DMF(dimethylformamide)溶液を200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって支持膜を作製した。
【0095】
上述の支持膜を、m-フェニレンジアミンの6.0重量%水溶液に2分間浸漬した後、該支持膜を引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、45℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.17重量%を含む45℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒間静置した。次に、140℃のオーブンに入れ、膜の裏面側に設けたノズルから100℃の水蒸気を供給しつつ、30秒間加熱して分離膜を得た。
【0096】
このように得られた分離膜を所定の長さ、幅に裁断し、折りたたみ、ネット(厚み0.71mm、ピッチ5.6mm×4.3mm)を供給側流路材、トリコット(厚み0.2mm)を透過側流路材とし、所定の巻囲径および長さの分離膜エレメントを作製した。本エレメントを分離膜エレメントAとした。
(分離膜エレメントBの作製)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/s)上にポリスルホン(PSf)の13.0重量%DMF(dimethylformamide)溶液を180μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって支持膜を作製した。
【0097】
上述の支持膜を、m-フェニレンジアミンの2.0重量%水溶液に2分間浸漬した後、該支持膜を引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、25℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.12重量%を含む25℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるようにし塗布して40秒間放置し、分離膜を得た。
【0098】
このようにして得られた分離膜を所定の長さ、幅に裁断し、折りたたみ、ネット(厚み0.86mm、ピッチ:5.6mm×4.3mm)を供給側流路材、トリコット(厚み0.6mm)を透過側流路材とし、所定の巻囲径および長さの分離膜エレメントを作製した。本エレメントを分離膜エレメントBとした。
(実施例1)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを2本(a=1、b=1、c=1、d=0)用いて、
図3に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
【0099】
【0100】
(実施例2)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを2本(a=1、b=1、c=1、d=0)用いて、
図4に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例3)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを3本(a=1、b=1、c=2、d=0)用いて、
図5に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例4)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを2本(a=1、b=1、c=1、d=0)用いて、
図6に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例5)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを4本(a=1、b=2、c=2、d=0)用いて、
図7に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例6)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを3本(a=1、b=1、c=2、d=0)用いて、
図8に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例7)
分離膜エレメントAを2本および分離膜エレメントBを3本(a=1、b=1、c=2、d=1)用いて、
図9に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例8)
分離膜エレメントAを2本および分離膜エレメントBを3本(a=2、b=1、c=2、d=0)用いて、
図10に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表1に示した通りであった。
(実施例9)
分離膜エレメントAを3本および分離膜エレメントBを3本(a=2、b=2、c=2、d=1)用いて、
図11に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表2に示した通りであった。
【0101】
【0102】
(実施例10、11)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを2本(a=1、b=1、c=1、d=0)用いて、
図4に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率70%および95%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表2に示した通りであった。
(比較例1~3)
分離膜エレメントAを1本および分離膜エレメントBを1本(a=1、b=1、c=0、d=0)用いて、
図12に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率70%、80%および95%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表2に示した通りであった。なお、回収率95%で運転する場合は、分離膜エレメントAの最大運転可能圧力を超えてしまうため、運転不可能であった。
(比較例4)
分離膜エレメントAを1本(a=1、b=0、c=0、d=0)用いて、
図13に示した膜分離プロセスを構成した。本膜分離プロセスについて、回収率80%となるように運転したところ、最大運転圧力、塩除去率、尿素除去率は表2に示した通りであった。
【0103】
以上の実施例および比較例において、同じ回収率で運転された結果を比較することにより、本発明の膜分離プロセスを用いると、特に高回収率で運転を行う際において、より低い運転圧力で高い除去性能を有する膜分離プロセスを提供することができることが明らかである。
【符号の説明】
【0104】
1 分離膜エレメント
2 有孔中心管
3 分離膜
4 供給側流路材
5 透過側流路材
6 原液
7 濃縮液
8 透過液
9 仕切り
10 封止部
11 第1段目の分離膜エレメントA
12 第2段目の分離膜エレメントA
13 第3段目の分離膜エレメントA
21 第1段目の分離膜エレメントB
22 第2段目の分離膜エレメントB
23 第3段目の分離膜エレメントB
24 第4段目の分離膜エレメントB
31 高圧ポンプ
32 減圧弁
61 分離機能層側供給液
72 分離機能層側排出液
81 透過側供給液
82 透過側排出液