IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両 図1
  • 特許-作業車両 図2
  • 特許-作業車両 図3
  • 特許-作業車両 図4
  • 特許-作業車両 図5
  • 特許-作業車両 図6
  • 特許-作業車両 図7
  • 特許-作業車両 図8
  • 特許-作業車両 図9
  • 特許-作業車両 図10
  • 特許-作業車両 図11
  • 特許-作業車両 図12
  • 特許-作業車両 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241106BHJP
   B62D 49/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303J
A01B69/00 303C
B62D49/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020217342
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102542
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068181(JP,A)
【文献】特開2006-017496(JP,A)
【文献】特開2018-113937(JP,A)
【文献】特開2019-170310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0118915(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110936955(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 49/00
G08G 1/16
G01S 17/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の後部に作業機(R)を備え、進行方向の障害物を検出する障害物検出センサ(24F,24R)を備え、測位装置(25)による測位結果に基づいて予め設定した予定走行経路に沿うように自動走行する自動運転モードを実行する制御部(C)を備えた作業車両において、前記障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲を調節する検範囲操作具(70)を設け、制御部(C)は走行車体(1)の幅(TW)及び作業機(R)の幅(RW)を読み込み、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅(SW)が走行車体(1)の幅(TW)又は作業機(R)の幅(RW)よりも小さい場合に、自動運転モードでの走行開始を制限することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
自動運転モードでの走行中に検範囲操作具(70)が操作された場合、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅(SW)は、走行車体(1)の幅(TW)又は作業機(R)の幅(RW)よりも大きい範囲で変更させる構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
装着作業機(R)の選択設定手段を備え、作業機(R)設定が変更されると障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲は最大値に変更される構成とした請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に関し、特に走行車体進行方向の障害物を検出する障害物センサに関する。
【背景技術】
【0002】
投射光と反射光との時間差から距離を測定する距離画像センサにより車両の前方に存在する障害物を検する障害物検装置を備え、障害物検範囲を車幅寸法とほぼ一致させた作業車両が公知である(先行文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-12394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術のような障害物検装置においては、検範囲の調整操作具を備えれば検範囲を自由に変更することが可能であるから、運転者によって検範囲を変更して作業を行いたいといったニーズに対応できる。
【0005】
しかしながら、任意の調整の結果作業幅よりも小さく設定してしまうと、走行中に障害物に接触してしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は上記に鑑み、障害物の検範囲を調整自在に構成した作業車両において、安全に作業できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0008】
請求項1に記載の発明は、走行車体(1)の後部に作業機(R)を備え、進行方向の障害物を検出する障害物検出センサ(24F,24R)を備え、測位装置(25)による測位結果に基づいて予め設定した予定走行経路に沿うように自動走行する自動運転モードを実行する制御部(C)を備えた作業車両において、前記障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲を調節する検範囲操作具(70)を設け、制御部(C)は走行車体(1)の幅(TW)及び作業機(R)の幅(RW)を読み込み、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅(SW)が走行車体(1)の幅(TW)又は作業機(R)の幅(RW)よりも小さい場合に、自動運転モードでの走行開始を制限する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、自動運転モードでの走行中に検範囲操作具(70)が操作された場合、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅(SW)は、走行車体(1)の幅(TW)又は作業機(R)の幅(RW)よりも大きい範囲で変更させる構成とした。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、装着作業機(R)の選択設定手段を備え、作業機(R)設定が変更されると障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲は最大値に変更される構成とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅が走行車両又は作業機の幅情報よりも小さい状態で自動運転を実行すると、障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲よりも外側で、作業機(R)の幅情報よりも内側に存在する障害物に接触してしまう可能性があるため、この状態での自動運転モードへの移行を制限することにより、安全に作業することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の効果に加え、走行中に障害物検出センサ(24F,24R)の検範囲の幅(SW)が走行車両又は作業機の幅(RW)よりも小さい状態になることを不可とするので安全に作業することができる。
【0013】
なお、請求項3に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、より広幅の作業機(R)に変更された場合であっても安全に作業走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクタの側面図である。
図2】トラクタの正面図である。
図3】キャビンを前方上方からみた斜視図である。
図4】キャビンを前方下方からみた斜視図である。
図5】ルーフを前方斜め上方からみた斜視図である。
図6】ルーフを後方斜め上方からみた斜視図である。
図7】キャビン前方上方の側面図である。
図8】車体右側の状態表示灯及びその支持構成を示す斜視図である。
図9】車体左側の状態表示灯及びその支持構成を示す斜視図である。
図10】測位ユニット・通信制御ユニット及び支持構成を斜め後方からみた斜視図である。
図11】トラクタ及び前方障害物検出センサの検出範囲を示す平面図である。
図12】フローチャートである
図13】後方障害物センサの作用を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、符号L,Rについて、左右一対の構成部材を示すときに、車体1の左側をL,右側をRを付して表記することとし、場合によってL,Rを省略して表記し説明する。
【0016】
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にディーゼルエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース8を備え、このシリンダケース8の左右両側には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム9が回動自在に取り付けられている。リフトアーム9は昇降用油圧シリンダ10の伸縮作動により上下動する。車体後部には、トップリンク11と左右のロアーリンク12からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構にロータリ作業機Rを装着し、リフトロッド13を介してロアーリンク12をリフトアーム9に連結することにより、作業機Rを昇降可能に構成している。
【0017】
前記ハンドル6や運転席7等は、キャビン16によって覆われている。キャビン16は、例えば防振ゴム等の弾性部材を介して車体に固定されてあり、車体の振動がキャビン16に伝達されにくくしている。
【0018】
尚キャビン16は、フロア17と、フロア17左右前部に立設した前支柱18と、運転席7の後部左右に立設した後部支柱20と、左右フェンダ19中間部に立設する中間支柱62と、これら支柱上端同士を接続する上フレーム21とによって一体化した枠組み構成とし、ルーフ22で覆われている。
【0019】
前記キャビン16のルーフ22には、監視カメラ、障害物センサ、測位コントローラ、カメラコントローラ等の運転支援に関する機器を備えている。以下これらの装着構成について詳述する。監視カメラ23はトラクタ車体の前方、後方及び側方を撮像し撮像データを取得し、また測位ユニットとしての測位コントローラ25は車体の位置を演算するための情報を、一方通信端末と通信を行う通信制御ユニットとしてのカメラコントローラ27を介して撮像情報を車体1に装備した制御部Cに送信出力するよう構成している。障害物センサ24は、例えば超音波センサあるいは赤外線センサとされ、車体1前後・左右の障害物を検出しうる。通信制御ユニットとして本実施例ではカメラコントローラ27を一例として挙げるが、車体1各部のセンサ情報を演算制御するコントローラに代替してもよい。
【0020】
測位装置の機能を備えた測位コントローラ25は、測位アンテナ(図示せず)、基地局(図示せず)情報受信アンテナ26、演算部(図示せず)、出力部(図示せず)を備えており、測位アンテナでGPS衛星等からの衛星信号を取得し、該衛星信号とアンテナ26で受信した基地局からの補正信号を演算部で処理することにより車体1の位置情報や走行方位等を演算する。これら位置情報等は出力部にて制御部Cに送信されるものである。
【0021】
また、カメラコントローラ27は、監視カメラ23の撮像データを演算処理する演算部、その演算結果を送信する送信回路(図示せず)、複数(図例では2本)の通信アンテナ28を備えた構成である。撮像データの演算結果は、車体1に搭載した制御部Cに送信される。
【0022】
なお、前記制御部Cに送信される位置情報や撮像データ等は、図外管理サーバーに送信できる構成とし、この管理サーバーと通信可能に通信端末(例えば、携帯端末器)を設けることによって、この通信端末で車体1の情報を入手して車体状態を確認したり、あるいは車体1を遠隔操作できる構成とすることもできる。
【0023】
カメラコントローラ27を内装する筐体27a及び測位コントローラ25の演算部等を内装する筐体25aは、前記ルーフ22の前部側上方に配置される。すなわち、前記前部支柱18又は上フレーム21に固定したブラケット部材30L,30R間に架け渡すよう水平姿勢に支持された帯板状前部フレーム31を設け、該前部フレーム31の左右中間部に、カメラコントローラの筐体27aを前位置とし測位コントローラ25の筐体25aを後位置として前後に配置し固定支持してなる。なお、前部フレーム31は車体1の側面視において、フロントガラス51上端よりもやや前方に位置すべく架設状とされている。
【0024】
詳細には、前部フレーム31の左右中央部前壁に平面視コ字状の前方突出枠32fを、後壁に同じくコ字状でやや長尺の後方突出枠32rをそれぞれ固着し、前後の突出体32f,32rの上面に平板32aを固定することにより、前部フレーム31を前後に跨いで制御ユニット用ブラケット32を構成する。そして、この制御ユニット用ブラケット32の上面に、カメラコントローラ27の筐体27aを前位置に及び測位コントローラ25の筐体25aを後位置に前後配置して固着する。例えば筐体側に形成したフランジ部を制御ユニット用ブラケット32に重合して該重合箇所をボルト止めする。
【0025】
そして、制御ユニット用ブラケット32の左右に、保護フレームとしての、アンテナガード33L,33Rを備える。すなわち、丸棒をコ型に成形し、前側脚部33Lf,33Rfのそれぞれ下端は、前記前部フレーム31の上端部から前方に突出状態に固定される小型受部34L,34Rに挿通してナット等によって固定される。一方アンテナガード33L,33Rの後側脚部33Lr,33Rrはキャビンルーフ22の上面に接近して接触しうるように設けられ、その下端部には緩衝用ゴム35を設ける。具体的には筒状ゴム35L,35Rを前記後側脚部33Lr,33Rr下端から穿かせる構成とし、このように構成すると、アンテナガード33L,33Rが車体振動や外力によって押圧されてキャビンルーフ22に接触してもこの上面を損傷しない。アンテナガード33L,33Rは測位コントローラ25のアンテナ26高さ、及びカメラコントローラ27の通信アンテナ28,28高さと同等かそれ以上の高さに設定される。測位コントローラ25の筐体25a及びカメラコントローラ27の筐体27aの左右幅よりもやや広く、かつアンテナ26,28,28よりもやや高く位置される状態となって筐体25a,27a及びアンテナ26,28,28をガードできる。
【0026】
側面視において、アンテナガード33L,33Rは測位コントローラ25のアンテナ26、及びカメラコントローラ27の通信アンテナ28,28位置と重複する位置関係となっており、車体を風雨から護るよう覆う幌部材を被せるときや取り外しのときにアンテナ26をガードでき、不測に干渉して破損する恐れが少ない。
【0027】
前記測位コントローラ25及びカメラコントローラ27は前後に接近して配置されるものであるから、ハーネス類36を束ねて前部フレーム31の後壁面に沿わせるなどしてまとめることができ、配策作業の容易化や仕上げのまとまり度を向上できる。
【0028】
前記前部フレーム31の前側には車体1の前方を撮像できる前方カメラ23fを配置している。すなわち、前部フレーム31の前側で左右中央部には一対からなるカメラブラケット37を設け、カメラ本体を上下に撮像角度調整可能に設けている。したがって、前方カメラ23fは、上方にある制御ユニット用ブラケット32及びカメラコントローラ27にて保護できる。なお測位ユニットとしての測位コントローラ25と通信制御ユニットとしてのカメラコントローラ27とは前後入れ替えて配置することも可能であるが、測位コントローラ25を前位置に配置する場合は、制御ユニット用ブラケット32及び測位コントローラ25にて保護できる。
【0029】
前記制御ユニット用ブラケット32の後端側において、キャビンルーフ22との間隙を一定に保つように、前後の突出体32f,32rの上面に平板32aを固定するものであるが、該ブラケット32の前部フレーム31との接点付近を中心に前後揺動する恐れがあるためルーフ22への接触に伴う損傷防止処理を施している。すなわち、制御ユニット用ブラケット32の後端側下方に緩衝材38を設けてなる。このように構成すると、キャビン16のルーフ22から伝達される振動を抑制でき、ルーフ22との接触による損傷を防止する。
【0030】
次いで、走行車体1を自律走行できるよう構成した場合に、この自律走行中の状況を表示する状態表示灯40の設置構成について説明する。状態表示灯40は、積層状で異なる警告色を点灯できる構成となっており、自律走行中の車体1状況を各種点灯方法によって、例えば通常作業走行を緑色点灯、異常有りを赤色点灯、障害物検出を黄色点灯、機体停止で点滅することで区別表示できる構成であり、キャビン16の前部左右に配置している。すなわち、キャビン16の前部支柱18に表示灯ブラケット41に支持座ブラケット42を固着し、この支持座ブラケット42に、上記状態表示灯40は、起立状態に固定して設けられる。そして、支持座プレート42に固定された状態表示灯40は、運転席7に着座するオペレータの頭部位置に対して前部支柱18を挟んで反対側に位置すべく配置されるもので、オペレータの各種操作による通常走行において、表示灯40はオペレータの視野の妨げになることなく前部支柱18に隠れることができる。
【0031】
表示灯ブラケット41は前部支柱16に溶接等によって固定されるが、この表示灯ブラケット41に対して支持座ブラケット42は角度変更調整自在に設けている。すなわち、表示灯ブラケット41に対して着脱自在に2か所でボルト43・ナット44の組み合わせで締結するが、2か所のうち一方43a,44aは、他方43b,44bを中心に、表示灯ブラケット41に形成する円弧状ガイド孔41aに沿って任意に位置変更して締結できる構成としている。したがって、支持座プレート42及び状態表示灯40とは一体的に後方に倒伏すべく角度変更可能であり、起立した作業中姿勢と倒伏した収納姿勢に切換えできる(図7)。そして、起立した作業中姿勢ではキャビンルーフ22よりも上方に突出し、倒伏する収納姿勢ではキャビンルーフ22よりも上方に突出しないよう支持座ブラケット42の高さおよび状態表示灯40の回動角度を設定(設計)している。これによって納屋収納等の非走行時には収納姿勢としておくことにより、収納納屋の省スペース化が図れ、さらに車体全体にカバーを掛ける場合に状態表示灯40が起立状態であると負荷が掛かって破損し易いが倒伏する収納姿勢では負荷を軽減できて破損を防止できる。
【0032】
収納姿勢の状態表示灯40は、キャビンドア50の上端よりも上方に、かつキャビンルーフ22よりも下位に位置すべく設定している(図7)。したがって、状態表示灯40を収納姿勢としてもキャビンドア50を開閉でき、昇降に支障がない。
【0033】
なお、前記のように、支持座ブラケット42は、表示灯ブラケット41に対して着脱自在にボルト43・ナット44で締結する2か所のうち一方43a,44aは、他方43b,44bを中心に、表示灯ブラケット41に形成する円弧状ガイド孔41aに沿って任意に位置変更して締結できる構成とするから、1本のボルト43bを緩めることで簡単に姿勢変更できる。
【0034】
前記支持座ブラケットは左右に配置され、左右支持座ブラケット42L,42Rの各下部外面に、カメラブラケット45L,45Rを介して監視カメラ23の一である側方カメラ23s,23sを配置している。カメラブラケット45L,45Rに対して側方カメラ23s,23sを上下角度調整自在に設けている。
【0035】
前記キャビン16の前部支柱18において、前記表示灯40を支持する表示灯ブラケット41よりも下位にサイドミラー用ブラケット46を設け、このブラケット45の前端部に縦軸回りに回動調節自在にサイドミラー47を有するステー48を装着している。
【0036】
前記状態表示灯40は、起立姿勢の該状態表示灯40上端が前記アンテナガード33高さよりも下位にあり、起立姿勢の該状態表示灯40全体がサイドミラー47よりも機体内側に位置する関係に設定している。このように構成すると、車体にカバーを掛けるとき、アンテナガード33とサイドミラー47とで分散して受けることができ、状態表示灯40が作業中姿勢の起立姿勢であっても該状態表示灯40に掛かる負荷を低減できる。
【0037】
また、前記側方カメラ23sはキャビン16の前部支柱18に固定されるサイドミラー47よりも車体1内側でかつ状態表示灯40よりも下方に設けられることとなり、側方カメラ23sを状態表示灯40とサイドミラー47で保護できる。
【0038】
ボンネット2の前端部には、前方障害物検手段として機能する前方障害物センサ24Fが設けられており、作業車両は前方障害物センサ24Fによって走行中に車体1前方の障害物を検可能に構成されている。一方、キャビン16のルーフ22後部には後方障害物検手段として機能する後方障害物センサ24Rが設けられており、後方障害物センサ24Rは、車体1の後方の障害物を検可能に構成されている。
【0039】
前方障害物センサ24Fおよび後方障害物センサ24Rはそれぞれ、赤外線レーザ光源と赤外線を感知する二次元センサを備えており、二次元センサは、フォトダイオードで構成された複数の受光素子を備えているため、車体1の前方または後方に存在する障害物を検出し、その位置を算出可能に構成されている。
【0040】
具体的には、前方障害物センサ24Fおよび後方障害物センサ24Rは、赤外線レーザ光源からパルス状に変調を加えた赤外線レーザ光を車体1の前方または後方に向けて照射し、その照射先に存在する障害物によって反射された光を複数の受光素子を有する二次元センサによって感知し、前方障害物センサ24Fまたは後方障害物センサ24Rから赤外線を放出した時間と、障害物によって反射された光を二次元センサが検出した時間に基づいて、いわゆるToF(Time Of Flight)法により、二次元センサと対象物との距離を求め、こうして算出された障害物までの距離と、前方障害物センサ24Fまたは後方障害物センサ24Rに設けられた二次元センサのどの受光素子が対象物によって反射された光を受光したかによって、前方障害物センサ24Fまたは後方障害物センサ24Rに対する障害物の位置を算出するように構成されている。
【0041】
ところで、走行車体1に装着する作業機Rは、種々の作業機があり、その作業機幅も異なるものである。そこで、前方障害物センサ24F、後方障害物センサ24Rの検出幅を一定に、例えば走行車体1幅に揃えておくと、作業機R幅の広い作業機を装着した場合に、検範囲に入らずに走行中に障害物に接触する恐れがある。
【0042】
そこで、前方障害物センサ24F及び後方障害物センサ24Rの幅方向検範囲を調節する検範囲操作具として機能する検出範囲変更ダイヤル70を設け、これら障害物センサ24F,24Rの幅方向検範囲を調節設定できる構成とする。そして検出範囲変更ダイヤル70のごとき検範囲操作具を制御部Cに接続し、自動運転モード設定時及び自動運転中に幅方向検範囲を設定制御できるものである。図12に基づき説明すると、まず自動運転モードが選択されているか否か判定される(S101)。自動運転モードが選択されているときは、適宜の表示部に自動運転モード設定情報が表示される(S102)。圃場情報、圃場内走行経路情報、作業機情報等がある。作業機情報としては、装着作業機Rの種類、例えばロータリ耕耘作業機、播種機等の種類が判別されるよう構成している。そして走行車体1の幅TW及び予め記憶されている上記作業機Rの最大幅(作業機幅)RWを読み込む(S103,S104)。次いで障害物検出センサ24F,24Rの検出範囲SWを演算する(S105)。ここで、前方障害物検出センサ24Fと後方障害物検出センサ24Rの検出範囲は同じに設定し、前記検出範囲変更ダイヤル70による広狭設定も前方後方同時に同条件に設定するよう設けるものとする。
【0043】
次いで、前記走行車体幅TWと作業機幅RWが比較され(S106)、作業機幅RWの方が大きい場合、前記検出範囲SWと作業機幅RWとが比較される。つまりSW>RWか否か判定され(S107)、YESの場合は自動運転開始され走行するが(S108)、NOの場合は警報出力(S109)される。つまり、作業機幅RWよりも広い幅の検出範囲SW設定であるときは自動運転開始を許可し、その条件が成立しない場合には警報で調整を促すもので、自動運転モード中の走行開始は制限される。
【0044】
S109の警報を確認すると、作業者は検出範囲変更ダイヤル70を操作し検出範囲SWを拡大する(S110)。そしてその際の検出範囲変更ダイヤル70による変更設定値ω1を読み込み、この変更設定値ω1をΔSWに換算し、SW値を(SW+ΔSW1)に置換する(S111,S112)。そしてこの置換されたSW値をもってS107に戻り作業機幅RWと比較判定される。なお、S106で作業機幅RWが走行車体幅TWよりも小さい場合には、RW=TWに置換し(S113)、以下のS107における判定を実行する。
【0045】
S108における自動運転走行中は、測位装置としての前記測位コントローラ25により自己位置を確認しながら、予め設定された予定走行経路に沿って車体1が走行すべく、制御部Cに入力した車体1の前記位置情報や走行方位に基づいて、車体1の操舵装置や走行変速装置を制御して自動運転可能に構成している。
【0046】
この自動運転中、前記検出範囲変更ダイヤル70が操作されたと判定されると(S114)、その変更設定値ω2が読み込まれる(S115)。この変更設定値ω2による換算値ΔSW2を求め、検出範囲SWを(SW+ΔSW2)とする。そして、この検出範囲(SW+ΔSW2)が予め設定された作業機幅RWに安全幅αを加えた(RW+α)よりも大で検出範囲変更ダイヤル70を最大側に設定して得る検出範囲「最大値」未満にあるかを判定する(S116)。S116の範囲内にあればΔSW2変更設定を許可するが(S117)、そうでない場合には変更不可警報を発する(S118)。
【0047】
なお、S101で自動運転モードを選択しない場合、通常運転モードが実行される(S119)
前記のように、障害物検出センサ24F,24Rの検出範囲SWを任意に設定できる検出範囲変更ダイヤル70を設けたから、作業者が任意に検出範囲SWを設定できる。
【0048】
前記S109で障害物検出センサ24F,24Rの検出範囲SWが作業機幅RWに対し、狭い範囲になっている場合に警告表示を行うから危険回避できる。なおこの場合に、自動運転を禁止することでなお一層安全性を向上できる。
【0049】
前記S114において、自動運転中検出範囲変更ダイヤル70操作を許容したが、安全のため検出範囲SWの変更不可とすることで安全性を確保する構成としてもよい。
【0050】
作業機設定を変更した場合において、S105の検出範囲SWの読込については「最大値」に設定することで安全性を確保することもできる。
【0051】
自動運転走行中の検出範囲の幅SWの変更は、S116において、予め設定された作業機幅RWに安全幅αを加えた(RW+α)よりも大で検出範囲変更ダイヤル70を最大側に設定して得る検出範囲「最大値」未満にあるかを判定する構成とした、即ち、障害物検出センサ24F,24Rの検範囲の幅SWは、作業機幅RWよりも大きい範囲で変更させるから、作業機Rの幅より狭い検出範囲に設定することが無く安全に使用できる。
【0052】
自動運転モード設定前において、S102におけるように表示部に自動運転モード設定情報が表示される構成としたから、同一作業機にあっては再度の検出範囲設定の手間を省くことができる。
【0053】
一方、作業機R設定が変更されると、装着作業機Rの選択設定手段備えて設定を変更入力するが、この場合、障害物検出センサ24F,24Rの検範囲の幅は最大値に変更設定できるようにすると、より広幅の作業機(R)に変更された場合であっても安全に作業走行できる。
【0054】
検出範囲の幅SWを作業機変更のたびにリセットする仕様とするためには、ポテンショ式のダイヤルだと構成できないため、検出範囲変更ダイヤル70は、ロータリエンコーダとし、一方(例えば右側)に回すほど検出領域を広くし、他方(左側)に回すほど検出範囲を狭くする構成とすると操作し易い。
【0055】
ところで、後方障害物センサ24Rについて補足すると、赤外線レーザ光照射点を中心に走査角度を任意に設定可能に構成するのが良く、後方障害物センサ24Rはルーフ22上部後端から走査範囲を車体1後方側に向けるが、走査面が作業機Rと干渉しない角度とするのがのぞましい。図13において、作業機Rの後方にある障害物Xのうち、後方障害物センサ24Rの走査面が急な走査面T1の場合は作業機Rに干渉するので、やや緩い走査面T2となるように、上記後方障害物センサ24R角度を変更設定できる構成にするとよい。
【0056】
本実施例では、前方障害物検出センサ24Fと後方障害物検出センサ24Rの検出範囲の幅を同時に検出範囲変更ダイヤル70で調整する構成としたが、各別に検出範囲変更ダイヤルを備えて独立的に調整してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 走行車体
24F 前方障害物検出センサ(障害物検出センサ)
24R 後方障害物検出センサ(障害物検出センサ)
25測位コントローラ(測位装置)
70 検出範囲変更ダイヤル(検範囲操作具)
C 制御部
R 作業機
RW 作業機幅
SW 検範囲の幅
TW 走行車体幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13