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特許7581874液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B41J2/01 203
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020218965
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104007
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康成
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-201279(JP,A)
【文献】特開2016-010863(JP,A)
【文献】特開2010-253841(JP,A)
【文献】特開2007-185941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、
前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有し、
前記制御部は、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、
前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、
前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、
前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、
前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少なく、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記関数が前記傾斜部を有し、
前記第3記録処理における前記傾斜部の傾きは、前記第1記録処理における前記傾斜部の傾きよりも小さいことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
複数のノズルを有するヘッドと、
搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、
前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有し、
前記制御部は、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、
前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、
前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、
前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、
前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少なく、
前記第3記録処理において、記録媒体の単位領域に対する前記複数の吐出ステップは、第1吐出ステップと、第2吐出ステップと、を含み、
前記第1吐出ステップの前記関数は、前記傾斜部を有し、
前記第2吐出ステップの前記関数は、前記搬送方向の上流端と下流端とを結ぶ線分の傾きがゼロとなる平坦部を有することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項3】
前記第3記録処理において、記録媒体の単位領域に対する前記複数の吐出ステップは、1つの前記第2吐出ステップと、2以上の前記第1吐出ステップと、を含むことを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記2以上の第1吐出ステップにおける、前記傾斜部の傾きの絶対値が互いに同じであることを特徴とする、請求項記載の液体吐出装置。
【請求項5】
複数のノズルを有するヘッドと、
搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、
前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有し、
前記制御部は、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、
前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、
前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、
前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、
前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少なく、
前記ヘッドを前記搬送方向と直交する走査方向に移動させる走査機構をさらに備え、
前記制御部は、
前記記録処理において、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送させる搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させつつ記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる走査動作であって、前記吐出ステップに対応する走査動作と、を行わせ、
前記第1記録処理及び前記第2記録処理のそれぞれにおいて、前記所定量は、1回の前記走査動作に対応する記録媒体の領域を、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数で除した距離であり、
前記第3記録処理における前記所定量は、前記第2記録処理における前記所定量と同じであることを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項6】
前記第2記録処理に含まれる前記複数の吐出ステップのうち、前記第3記録処理と連続する少なくとも1つの吐出ステップである第3吐出ステップの前記関数の前記傾斜部の傾きと、前記第3記録処理に含まれる前記複数の吐出ステップのうち、前記第3吐出ステップと連続する吐出ステップである第4吐出ステップの前記関数の前記傾斜部の傾きとが、互いに同じであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1記録処理における記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数に応じて、前記第2記録処理及び前記第3記録処理のそれぞれにおける記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が異なることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、記録媒体の種類に基づいて、前記第1記録処理、前記第2記録処理及び前記第3記録処理のそれぞれにおける、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数を決定することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、記録モードに基づいて、前記第1記録処理、前記第2記録処理及び前記第3記録処理のそれぞれにおける、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数を決定することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有する液体吐出装置を制御する制御方法であって、
画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、
前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、
前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、
前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、
前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少なく、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記関数が前記傾斜部を有し、
前記第3記録処理における前記傾斜部の傾きは、前記第1記録処理における前記傾斜部の傾きよりも小さいことを特徴とする、制御方法。
【請求項11】
複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有する液体吐出装置を、
画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行する手段として機能させるプログラムであって、
前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、
前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、
前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、
前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少なく、
前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記関数が前記傾斜部を有し、
前記第3記録処理における前記傾斜部の傾きは、前記第1記録処理における前記傾斜部の傾きよりも小さいことを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1支持部及び第2支持部を有する搬送機構を備え、第1支持部及び第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときと、第1支持部及び第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときとで、互いに異なる記録処理を実行する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1搬送手段及び第2搬送手段(第1支持部及び第2支持部)の両方によって記録媒体が支持されているときと、第1搬送手段及び第2搬送手段の一方によって記録媒体が支持されているときとで、記録制御を異ならせる技術が開示されている。具体的には、記録媒体の中央部に対する記録に用いる記録素子配列上の範囲よりも、記録媒体の先端部及び後端部の少なくとも一方に対する記録に用いる記録素子配列上の範囲を縮小して、記録走査を実行する。これにより、記録媒体の先端部及び/又は後端部における記録品質の悪化(搬送精度の低下によって白スジや黒スジ等の濃度ムラが生じること)が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-185941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、第1支持部及び第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときと、第1支持部及び第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときとの間の、遷移期間において、どのような記録処理を実行するかが示されていない。遷移期間を設けず、記録制御を急変させると、記録品質の悪化を抑制し難い。
【0005】
本発明の目的は、記録品質の悪化を抑制できる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によれば、複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、制御部と、を備え、前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有し、前記制御部は、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少ないことを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によれば、複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有する液体吐出装置を制御する制御方法であって、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行し、前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少ないことを特徴とする、制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によれば、複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、前記搬送方向に互いに離隔し、前記搬送機構は、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の上流において記録媒体を支持する第1支持部と、前記複数のノズルに対して前記搬送方向の下流において記録媒体を支持する第2支持部と、を有する液体吐出装置を、画像データに基づいて、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に搬送させ、かつ、記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理を実行する手段として機能させるプログラムであって、前記記録処理は、前記第1支持部及び前記第2支持部の両方によって記録媒体が支持されているときに実行される第1記録処理と、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方によって記録媒体が支持されているときに実行される第2記録処理と、前記第1記録処理と前記第2記録処理との間に実行される第3記録処理と、を含み、前記第1記録処理は、記録媒体の単位領域に対し、前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出ステップを少なくとも1つ含み、前記第2記録処理及び前記第3記録処理は、それぞれ、記録媒体の単位領域に対し、複数の前記吐出ステップを含み、前記複数の吐出ステップにおいて、前記画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、前記複数のノズルから選択的に液体を吐出させ、前記複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、前記搬送方向における前記ノズルの位置に対する前記ノズルの吐出デューティの関数が、前記搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部を有し、前記第2記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、前記第3記録処理は、前記第1記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が多く、かつ、前記第2記録処理よりも、記録媒体の単位領域に対する前記吐出ステップの数が少ないことを特徴とする、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遷移期間に第3記録処理を実行することで、記録品質の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの平面図である。
図2図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図3図1のプリンタの制御部が実行するプログラムを示すフロー図である。
図4図1の矢印IV方向から見たヘッド周辺の側面である。
図5】第1~第3記録処理が実行される用紙の各領域を示す平面図である。
図6】第1~第3記録処理を示す模式図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る図3に対応するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリンタ(液体吐出装置)10は、図1に示すように、下面に複数のノズル11を有するヘッド1と、ヘッド1を保持するキャリッジ2と、キャリッジ2を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構3と、用紙(記録媒体)Pを下方から支持するプラテン4と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構5と、制御部9とを有する。
【0012】
ヘッド1は、制御部9の制御によりドライバIC1x(図2参照)が駆動されることで、ノズル11からインクを吐出する。ノズル11は、走査方向に並ぶ4つのノズル列を構成している。各ノズル列は、搬送方向に互いに離隔した複数のノズル11で構成されている。
【0013】
走査機構3は、キャリッジ2を支持する一対のガイド3a,3b、及び、キャリッジ2に連結されたベルト3cを含む。ガイド3a,3b及びベルト3cは、走査方向に延びている。制御部9の制御によりキャリッジモータ3x(図2参照)が駆動されると、ベルト3cが走行し、ガイド3a,3bに沿ってキャリッジ2が走査方向に移動する。
【0014】
プラテン4は、キャリッジ2及びヘッド1の下方に配置されている。プラテン4の上面に、用紙Pが載置される。
【0015】
搬送機構5は、2つのローラ5a,5bを有する。搬送方向においてローラ5aとローラ5bとの間に、ヘッド1、キャリッジ2及びプラテン4が配置されている。ローラ5aは、ヘッド1に対して搬送方向の上流に位置し、複数のノズル11に対して搬送方向の上流において用紙Pを支持する「第1支持部」に該当する。ローラ5bは、ヘッド1に対して搬送方向の下流に位置し、複数のノズル11に対して搬送方向の下流において用紙Pを支持する「第2支持部」に該当する。制御部9の制御により搬送モータ5x(図2参照)が駆動されると、ローラ5a,5bが用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
制御部9は、図2に示すように、ROM(Read Only Memory)9a、RAM(Random Access Memory)9b及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)9cを有する。ROM9aには、ASIC9cが各種動作を制御するためのプログラムやデータが格納されている。RAM9bは、ASIC9cがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。ASIC9cは、外部装置(図2に示すPC20等)から受信したデータに基づいて、ROM9aやRAM9bに記憶されているプログラムやデータにしたがい、記録処理等を実行する。
【0017】
記録処理において、制御部9は、PC20等から受信した記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ドライバIC1x、キャリッジモータ3x及び搬送モータ5xを駆動させ、搬送機構5により用紙Pを搬送方向に所定量搬送させる搬送動作と、走査機構3によりヘッド1を走査方向に移動させつつ用紙Pに対してノズル11からインクを吐出させる走査動作(以下、単に「走査」という場合がある。)とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0018】
次いで、制御部9が実行する記録処理について説明する。
【0019】
制御部9は、先ず、図3に示すように、PC20等から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、制御部9は、S1の処理を繰り返す。
【0020】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、制御部9は、用紙Pが厚紙であるか否かを判断する(S2)。このとき、制御部9は、例えば、プリンタ10の入力手段(液晶パネル等)を介してユーザが入力した情報に基づいて、上記判断を行ってよい。或いは、プリンタ10に用紙Pの厚みを検知するセンサが設けられた構成において、センサの検知結果に基づいて、上記判断を行ってもよい。上記センサは、例えば、透過型のセンサであり、用紙Pに対する透過光量に基づいて用紙Pの厚みを検知してよい。
【0021】
用紙Pが厚紙である場合(S2:YES)、制御部9は、記録処理を構成する第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップ(後に詳述する。)の数を、第1記録処理は「2」、第2記録処理は「4」、第3記録処理は「3」と決定する(S3)。
【0022】
用紙Pが厚紙でない(普通紙である)場合(S2:NO)、制御部9は、記録処理を構成する第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップ(後に詳述する。)の数を、第1記録処理は「1」、第2記録処理は「3」、第3記録処理は「2」と決定する(S4)。
【0023】
例えば、ROM9a(図2参照)に、用紙Pが厚紙である場合及び用紙Pが普通紙である場合それぞれにおける、上記吐出ステップの数を示すテーブルが記憶されている。制御部9は、S3,S4において、ROM9aに記憶された当該テーブルを参照し、上記吐出ステップの数を決定してよい。或いは、制御部9は、用紙Pが厚紙である場合及び用紙Pが普通紙である場合それぞれに応じた演算式により、上記吐出ステップの数を決定してもよい。つまり、「用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数を決定すること」は、ROM9aに記憶された当該テーブルを参照して上記吐出ステップの数を選択すること、演算式により上記吐出ステップの数を演算すること等を意味する。
【0024】
S3及びS4では、第1記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数に応じて、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が異なる。具体的には、S3では、第1記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「2」であり、これに応じて、第3記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「3(=2+1)」、第2記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「4(=2+2)」となっている。一方、S4では、第1記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「1」であり、これに応じて、第3記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「2(=1+1)」、第2記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が「3(=1+2)」となっている。
【0025】
ここで、記録処理を構成する第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理について説明する。
【0026】
用紙Pは、記録処理において、搬送方向に搬送されるのに伴い、先ず、図4(a)に示すように、ローラ5aに支持された状態となり、その後、図4(b)に示すように、ローラ5a,5bの両方に支持された状態となり、その後、図4(c)に示すように、ローラ5bに支持された状態となる。
【0027】
制御部9は、ローラ5a,5bの両方によって用紙Pが支持されているとき(図4(b)参照)に第1記録処理を実行し、ローラ5a,5bの一方によって用紙Pが支持されているとき(図4(a),(c)参照)に第2記録処理を実行し、さらに、第1記録処理と第2記録処理との間に第3記録処理を実行する。
【0028】
換言すると、制御部9は、用紙Pにおける搬送方向の上流端(先端)及び下流端(後端)の領域P2に対して第2記録処理を実行し、用紙Pにおける搬送方向の中央の領域P1に対して第1記録処理を実行し、用紙Pにおける搬送方向において領域P1,P2の間の領域P3に対して第3記録処理を実行する(図5参照)。1枚の用紙Pに対する記録処理では、第2記録処理、第3記録処理、第1記録処理、第3記録処理、第2記録処理が順次実行される。即ち、1枚の用紙Pに対し、先ず第2記録処理が実行され、その後第3記録処理が実行され、さらにその後第1記録処理が実行され、第3記録処理が実行され、最後に第2記録処理が実行される。
【0029】
第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理は、それぞれ、用紙Pの単位領域に対し、複数のノズル11からインクを吐出させる吐出ステップ(走査動作に対応するステップ)を1又は複数含む。例えば、第1記録処理は吐出ステップを1つ含み、第2記録処理及び第3記録処理は、吐出ステップを複数含む。単位領域は、搬送動作における搬送量(所定量)に対応する領域である。
【0030】
図6は、用紙Pが厚紙である場合における、用紙Pの中央の領域P1から後端の領域P2(図5参照)に対する第1~第3記録処理を示す。走査動作1~走査動作16が順次実行され、走査動作間に用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作が実行される。第1記録処理における所定量は、第3記録処理における所定量の2倍である。第2記録処理における所定量は、第3記録処理における所定量と同じである。
【0031】
図6の各走査動作1~16の範囲における、横軸は、搬送方向における複数のノズル11の位置を示し、縦軸は、各ノズル11の吐出デューティ(S1で受信した記録指令に含まれる画像データに基づく当該ノズル11の吐出必要量に対する、当該ノズル11の吐出量の割合)を示す。走査動作1~4では、吐出デューティの最高値が100%であり、走査動作5~16では、吐出デューティの最高値が50%である。各走査動作1~16において、搬送方向の両端に位置するノズル11の吐出デューティは0%である。走査動作1~4,7~16において、搬送方向の中央に位置するノズル11の吐出デューティは最高値(50%又は100%)である。
【0032】
連続する走査動作において、用紙Pに対するインクの吐出領域は、互いに重なる部分を有する(当該重なる部分が、単位領域に該当する)。連続する走査動作は、それぞれ、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップを構成する。
【0033】
例えば、図6において、走査動作1,2は、それぞれ、第1記録処理における、用紙Pの単位領域(所定量に対応する領域)に対する吐出ステップE1a,E1bを構成する。走査動作5~7は、それぞれ、第3記録処理における、用紙Pの単位領域(所定量に対応する領域)に対する吐出ステップE3a~E3cを構成する。走査動作5~8は、それぞれ、第2記録処理における、用紙Pの単位領域(所定量に対応する領域)に対する吐出ステップE2a~E2dを構成する。つまり、図6において、第1記録処理では、用紙Pの単位領域に対して2つ吐出ステップE1a,E1bが実行され、第2記録処理では、用紙Pの単位領域に対して4つ吐出ステップE2a~E2dが実行され、第3記録処理では、用紙Pの単位領域に対して3つ吐出ステップE3a~E3cが実行される。
【0034】
第1~第3記録処理それぞれの、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップにおいては、画像データを相補的なパターンに分解したデータに基づいて、複数のノズル11から選択的にインクが吐出される。つまり、通常は1回の走査動作で記録可能な画像データを、マスクを用いて分割し、各吐出ステップで異なるノズル11を用いて吐出を行う(シングリング法)。そして、複数の吐出ステップで、各ノズル11の吐出デューティが100%となる(即ち、ノズル11毎に、各吐出ステップの吐出デューティの値を合計すると100%となる)ように構成されている。なお、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップにおいて、吐出に用いられないノズル11が存在してよい。
【0035】
第1~第3記録処理それぞれの、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップのうちの少なくとも1つにおいて、搬送方向におけるノズル11の位置(横軸)に対するノズル11の吐出デューティ(縦軸)の関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加又は減少する傾斜部(グラデーション)を有する。
【0036】
例えば、図6において、吐出ステップE1aの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に減少する傾斜部I1aを有する。吐出ステップE1bの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加する傾斜部I1bを有する。吐出ステップE3aの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に減少する傾斜部I3aを有する。吐出ステップE3cの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加する傾斜部I3cを有する。吐出ステップE2aの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に減少する傾斜部I2aを有する。吐出ステップE2bの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に減少する傾斜部I2bを有する。吐出ステップE2cの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加する傾斜部I2cを有する。吐出ステップE2dの上記関数は、搬送方向の上流から下流に向けて漸進的に増加する傾斜部I2dを有する。
【0037】
なお、第3記録処理において、吐出ステップE3bの上記関数は、搬送方向の上流端と下流端とを結ぶ線分の傾きがゼロとなる平坦部Fを有する。第3記録処理の3つの吐出ステップE3a~E3cのうち、吐出ステップE3a,E3cが本発明の「第1吐出ステップ」に該当し、吐出ステップE3bが本発明の「第2吐出ステップ」に該当する。
【0038】
傾斜部I1a,I1bの傾きの絶対値は、互いに同じである。傾斜部I3a,I3cの傾きの絶対値は、互いに同じである。傾斜部I2a,I2bの傾きは互いに同じであり、傾斜部I2c,I2dの傾きは互いに同じであり、傾斜部I2a,I2bの傾きの絶対値と、傾斜部I2c,I2dの傾きの絶対値とは、互いに同じである。また、傾斜部I1a,I1bの傾きの絶対値は、傾斜部I3a,I3cの傾きの絶対値よりも大きい。傾斜部I3a,I3cの傾きの絶対値は、傾斜部I2a~I2dの傾きの絶対値と同じである。
【0039】
傾斜部I3aの傾きは、傾斜部I2aの傾きと同じである。傾斜部I3cの傾きは、傾斜部I2cの傾きと同じである。即ち、第2記録処理に含まれる複数の吐出ステップのうち、第3記録処理と連続する(即ち、第3記録処理の直前又は直後に実行される)吐出ステップE2a,E2cの関数の傾斜部I2a,I2cの傾きと、第3記録処理に含まれる複数の吐出ステップのうち、各吐出ステップE2a,E2cと連続する吐出ステップE3a,E3cの関数の傾斜部I3a,I3cの傾きとが、互いに同じである。吐出ステップE2a,E2cがそれぞれ本発明の「第3吐出ステップ」に該当し、吐出ステップE3a,E3cがそれぞれ本発明の「第4吐出ステップ」に該当する。
【0040】
図3のS3,S4及び図6に示すように、第2記録処理は、第1記録処理よりも用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が多い。第3記録処理は、第1記録処理よりも用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が多く、かつ、第2記録処理よりも用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が少ない。用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数は、各吐出ステップの傾斜部の傾きや、吐出デューティの最高値に関連する。例えば、図6に示すように、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が、第1記録処理の「2」から第2記録処理の「4」へと、2倍になると、各吐出ステップの傾斜部の傾き小さくなり、吐出デューティの最高値が100%から50%へと減少する。
【0041】
なお、第1記録処理及び第2記録処理のそれぞれにおいて、所定量は、1回の走査動作に対応する用紙Pの領域を、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数で除した距離である。例えば、図6において、第1記録処理の所定量は、1回の走査動作に対応する用紙Pの領域を、吐出ステップの数「2」で除した距離である。第2記録処理の所定量は、1回の走査動作に対応する用紙Pの領域を、吐出ステップの数「4」で除した距離である。
【0042】
図3に戻り、S3又はS4の後、制御部9は、S1で受信した記録指令に含まれる画像データに基づいて、記録処理を実行する(S5)。S5では、記録対象となる1又は複数枚の用紙P毎に、第2記録処理、第3記録処理、第1記録処理、第3記録処理、第2記録処理を順次実行する。このとき、第1~第3記録処理のそれぞれにおいて、用紙Pの単位領域に対してS3又はS4で決定した数の吐出ステップを実行する。
【0043】
S5の後、制御部9は、当該ルーチンを終了する。
【0044】
以上に述べたように、本実施形態によれば、制御部9は、ローラ5a,5bの両方によって用紙Pが支持されているとき(図4(b)参照)に第1記録処理を実行し、ローラ5a,5bの一方によって用紙Pが支持されている場とき(図4(a),(c)参照)に第2記録処理を実行し、さらに、第1記録処理と第2記録処理との間に第3記録処理を実行する。このように、第1記録処理と第2記録処理との間の遷移期間に第3記録処理を実行することで、記録品質の悪化を抑制できる。
【0045】
用紙Pが厚紙である場合、第2記録処理及び第3記録処理のみならず、第1記録処理も、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が複数である(図3のS3、図6参照)。この場合、用紙Pの先端や後端近傍の領域P2,P3のみならず、用紙Pの中央の領域P1においても(図5参照)、所謂シングリング法を用いると共に、関数に傾斜部(グラデーション)を設けることで、記録品質の悪化を抑制できる。また、第3記録処理における傾斜部I3a,I3cの傾きを第1記録処理における傾斜部I1a,I1bの傾きよりも小さくすることで(図6参照)、吐出デューティの急変を回避し、濃度ムラを抑制できる。
【0046】
第3記録処理において、吐出ステップE3bの関数は、搬送方向の上流端と下流端とを結ぶ線分の傾きがゼロとなる平坦部Fを有する(図6参照)。この場合、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップで各ノズル11の吐出デューティが100%となることを、実効的に実現できる。
【0047】
第3記録処理において、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップは、関数が平坦部Fを有する1つの吐出ステップE3bと、関数が傾斜部I3a,I3cを有する2つの吐出ステップE3a,E3cと、を含む(図6参照)。仮に、関数が平坦部Fを有する吐出ステップを複数含む場合、濃度ムラの抑制効果が低下し得る。これに対し、本実施形態では、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップとして、関数が平坦部Fを有する吐出ステップを1つのみとし、それ以外は関数が傾斜部I3a,I3cを有する吐出ステップとすることで、濃度ムラの抑制効果が高まる。
【0048】
第3記録処理において、傾斜部I3a,I3cの傾きの絶対値は、互いに同じである(図6参照)。この場合、用紙Pの単位領域に対する複数の吐出ステップで各ノズル11の吐出デューティが100%となることを、実効的に実現できる。
【0049】
第2記録処理に含まれる複数の吐出ステップのうち、第3記録処理と連続する(即ち、第3記録処理の直前又は直後に実行される)吐出ステップE2a,E2cの関数の傾斜部I2a,I2cの傾きと、第3記録処理に含まれる複数の吐出ステップのうち、各吐出ステップE2a,E2cと連続する吐出ステップE3a,E3cの関数の傾斜部I3a,I3cの傾きとが、互いに同じである。この場合、吐出デューティの急変を回避し、濃度ムラを抑制できる。
【0050】
第1記録処理における用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数に応じて、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が異なる(図3のS3及びS4参照)。この場合、記録品質と記録速度とのバランスをとることができる。
【0051】
制御部9は、用紙Pが厚紙であるか普通紙であるか(即ち、用紙Pの種類)に基づいて、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数を決定する(図3のS2~S4参照)。この場合、用紙Pの種類に応じた記録品質及び記録速度を実現できる。
【0052】
制御部9は、記録処理において、搬送機構5により用紙Pを搬送方向に所定量搬送させる搬送動作と、走査機構3によりヘッド1を走査方向に移動させつつ用紙Pに対してノズル11からインクを吐出させる走査動作とを、行わせる。このようにヘッド1がシリアル式の場合、特に遷移期間における記録品質の悪化の問題が生じ易く、本発明の効果が発揮される。
【0053】
<第2実施形態>
続いて、図7を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
【0054】
第1実施形態(図3)では、用紙Pが厚紙であるか普通紙であるか(即ち、用紙Pの種類)に基づいて、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が決定される(S2~S4参照)。これに対し、本実施形態(図7)では、記録モードが高画質モードであるか標準画質モードであるかに基づいて、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数が決定される(S22,S3,S4参照)。
【0055】
具体的には、記録指令を受信した場合(S1:YES)、制御部9は、記録モードが高画質モードであるか否かを判断する(S22)。このとき、制御部9は、例えば、プリンタ10の入力手段(液晶パネル等)を介してユーザが入力した情報に基づいて、上記判断を行ってよい。
【0056】
記録モードが高画質モードである場合(S22:YES)、制御部9は、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数を、第1記録処理は「2」、第2記録処理は「4」、第3記録処理は「3」と決定する(S3)。
【0057】
記録モードが高画質モードでない(標準画質モードである)場合(S22:NO)、制御部9は、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数を、第1記録処理は「1」、第2記録処理は「3」、第3記録処理は「2」と決定する(S4)。
【0058】
例えば、ROM9a(図2参照)に、記録モードが高画質モードである場合及び記録モードが標準画質モードである場合それぞれにおける、上記吐出ステップの数を示すテーブルが記憶されている。制御部9は、S3,S4において、ROM9aに記憶された当該テーブルを参照し、上記吐出ステップの数を決定してよい。或いは、制御部9は、記録モードが高画質モードである場合及び記録モードが標準画質モードである場合それぞれに応じた演算式により、上記吐出ステップの数を決定してもよい。
【0059】
以上に述べたとおり、本実施形態によれば、制御部9は、記録モードが高画質モードであるか標準画質モードであるかに基づいて、第1記録処理、第2記録処理及び第3記録処理のそれぞれにおける、用紙Pの単位領域に対する吐出ステップの数を決定する(図7のS21,S3,S4参照)。この場合、記録モードに応じた記録品質及び記録速度を実現できる。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0061】
第1実施形態では、記録媒体の種類として厚紙及び普通紙を例示したが、これに限定されない。例えば、記録媒体の種類として光沢紙及び普通紙を用い、記録媒体が光沢紙か普通紙かに基づいて、記録媒体の単位領域に対する吐出ステップの数を決定してもよい。
【0062】
第2実施形態では、記録モードとして高画質モード及び標準画質モードを例示したが、これに限定されない。例えば、記録モードとして高速モード及び低速モードを用い、記録モードが高速モードか低速モードかに基づいて、記録媒体の単位領域に対する吐出ステップの数を決定してもよい。
【0063】
上述の実施形態において、ローラ5a,5bは、それぞれ、材質、寸法等が互いに同じである1組の回転部材で構成されてもよいし、材質、寸法等が互いに異なる1組の回転部材で構成されてもよい。また、第1支持部及び第2支持部は、ローラに限定されず、記録媒体を支持することが可能な任意の部材(例えば、プレート等)であってよい。
【0064】
第1記録処理における、記録媒体の単位領域に対する吐出ステップの数は、1つであってもよい。
【0065】
第3記録処理において、記録媒体の単位領域に対する複数の吐出ステップは、関数が平坦部を有する吐出ステップを複数含んでもよい。
【0066】
平坦部は、搬送方向の上流端と下流端とを結ぶ線分の傾きがゼロであればよく、搬送方向の上流端と下流端と間に多少の起伏があってもよい。また、平坦部(例えば、図6の平坦部F)の代わりに、他の傾斜部(例えば、図6の傾斜部I3a,I3c)よりも傾きが小さい(例えば、傾きが概ねゼロである)傾斜部を設けてもよい。
【0067】
傾斜部は、上述の実施形態(図6)では搬送方向の上流端から下流端に亘って直線状であるが、これに限定されず、搬送方向の上流端と下流端と間に多少の起伏があってもよい。
【0068】
走査動作は、ヘッドを走査方向に沿って往路移動させるとき及び復路移動させるときのそれぞれで記録媒体に対して複数のノズルから液体を吐出させる「双方向」、ヘッドを走査方向に沿って往路移動させるとき及び復路移動させるときの一方で記録媒体に対して複数のノズルから液体を吐出させる「片方向」、のいずれであってもよい。
【0069】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。ライン式の場合、記録媒体の単位領域に対し、複数の吐出ステップが時間間隔をあけて実行される。
【0070】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0071】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0072】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0073】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 ヘッド
11 ノズル
3 走査機構
5 搬送機構
5a ローラ(第1支持部)
5b ローラ(第2支持部)
9 制御部
10 プリンタ(液体吐出装置)
I1a,I1b,I2a~I2d,I3a,I3c 傾斜部
F 平坦部
P 用紙(記録媒体)
E1a,E1b,E2a~E2d,E3a~E3c 吐出ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7