(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20241106BHJP
B21F 15/06 20060101ALI20241106BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20241106BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B21F15/06
B25B25/00 A
E04C5/18 101
(21)【出願番号】P 2020219758
(22)【出願日】2020-12-29
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板垣 修
(72)【発明者】
【氏名】杉原 進平
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7427993(JP,B2)
【文献】特開平09-013679(JP,A)
【文献】国際公開第96/025330(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C 5/16- 5/20
B21F 1/00-45/28
B25B 25/00
B65B 13/00-13/34
B65B 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部と、
結束物が突き当てられる突き当て部と、
結束物に巻き付けられたワイヤを切断する切断部と、
結束物に巻き付けられ、前記切断部で切断されたワイヤを捩じる結束部
であって、
回転軸と、
前記回転軸の軸方向に移動してワイヤを係止し、前記回転軸と共に回転してワイヤを捩じるワイヤ係止体と、
前記ワイヤ係止体が前記回転軸の軸方向に沿って前記突き当て部から離れる方向に前記回転軸を付勢し、軸方向に沿った前記回転軸の位置を規制するバネとを備える結束部と、
前記切断部で切断されるワイヤに、結束物に巻き付けられたワイヤが緩む方向に掛かる
ワイヤの反力より大きな力で張力を付与する
、前記バネとは別体の張力付与部を備えた
結束機。
【請求項2】
前記張力付与部は、ワイヤを逆送りして結束物に巻き付ける動作でワイヤに掛かる張力を維持する
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記張力付与部は、ワイヤを逆送りして結束物に巻き付ける動作でワイヤに掛かる張力を維持する方向に、前記ワイヤ係止体と前記回転軸の少なくとも一方を付勢する
請求項1または請求項2に記載の結束機。
【請求項4】
前記張力付与部は、前記切断部でワイヤを切断してから、前記結束部でワイヤを捩じるまでの間に、ワイヤに張力を付与する
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の結束機。
【請求項5】
前記張力付与部は、前記突き当て部に突き当てられた結束物と、ワイヤを係止した前記結束部を、相対的に離れる方向に付勢する
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の結束機。
【請求項6】
前記張力付与部は、
ワイヤを逆送りして結束物に巻き付ける動作でワイヤに掛かる張力を維持する方向に、前記ワイヤ係止体と前記回転軸の少なくとも一方を付勢する第1の張力付与部と、
前記突き当て部に突き当てられた結束物と、ワイヤを係止した前記結束部を、相対的に離れる方向に付勢する第2の張力付与部を備えた
請求項1に記載の結束機。
【請求項7】
前記ワイヤ係止体が前記回転軸の軸方向に移動し、前記回転軸と共に回転してワイヤを捩じる動作域で、前記張力付与部によりワイヤに掛けられる張力は、ワイヤの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下である
請求項1
~請求項6の何れか1項に記載の結束機。
【請求項8】
前記ワイヤ係止体の回転を規制する回転規制部を備え、
前記ワイヤ係止体は、前記回転軸の軸方向に沿った第1の動作域で、前記回転規制部により回転が規制され、前記回転軸の軸方向に移動してワイヤを係止し、前記回転軸の軸方向に沿った第2の動作域で、前記回転軸の軸方向に移動し、前記回転軸と共に回転してワイヤを捩じり、
前記張力付与部は、前記第1の動作域で前記ワイヤ係止体により係止したワイヤに、前記第2の動作域で張力の付与を行い、ワイヤに掛けられる張力は、ワイヤの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下である
請求項
1~請求項6の何れか1項に記載の結束機。
【請求項9】
前記張力付与部は、前記ワイヤ係止体を前記回転軸の軸方向に沿って前記突き当て部から離れる方向に付勢する張力付与バネを含む
請求項1~請求項8の何れか1項に記載の結束機。
【請求項10】
前記ワイヤ係止体は、開閉動作でワイヤを係止するフックと、前記フックを開閉するスリーブを備え、
前記張力付与バネはコイルバネで、前記スリーブの外側に設けられる
請求項
9に記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋等の結束物をワイヤで結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている。
【0004】
鉄筋をワイヤで結束する場合、結束が緩いと、鉄筋同士がずれてしまうため、鉄筋同士を強固に保持することが求められている。そこで、鉄筋に巻いたワイヤを捩じる捩じり手段を鉄筋に接近または離間可能に設け、捩じり手段をコイルバネで鉄筋から離れる方向である後方向に付勢し、ワイヤに張力をかけながらねじることで、結束力を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、1本または複数本のワイヤを送ってワイヤを捩じる結束機において、ワイヤの余剰分を引き戻すことで、ワイヤを鉄筋に巻き付けた後、鉄筋に巻き付けたワイヤを捩じる構成では、ワイヤを捩じる前に、鉄筋に巻き付けたワイヤが緩むと、ワイヤを鉄筋に密着させるようにすることができない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、結束物である鉄筋に巻き付けられたワイヤを捩じる前に、ワイヤが緩むことを抑制できるようにした結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部と、結束物が突き当てられる突き当て部と、結束物に巻き付けられたワイヤを切断する切断部と、結束物に巻き付けられ、切断部で切断されたワイヤを捩じる結束部であって、回転軸と、回転軸の軸方向に移動してワイヤを係止し、回転軸と共に回転してワイヤを捩じるワイヤ係止体と、ワイヤ係止体が回転軸の軸方向に沿って突き当て部から離れる方向に回転軸を付勢し、軸方向に沿った回転軸の位置を規制するバネとを備える結束部と、切断部で切断されるワイヤに、結束物に巻き付けられたワイヤが緩む方向に掛かるワイヤの反力より大きな力で張力を付与する、バネとは別体の張力付与部を備えた結束機である。
【0010】
本発明では、切断部で切断されるワイヤに、結束部で捩じるより前に、ワイヤが緩む方向に掛かる力より大きな力で、張力付与部により張力が付与される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結束物に巻き付けられたワイヤが、捩じる前に緩むことが抑制される。これにより、ワイヤを捩じる動作で、ワイヤを結束物に密着させることができる。また、結束物に巻き付けられたワイヤに張力の付与を行って、このワイヤを捩じるに際し、ワイヤに掛けられる張力が、ワイヤの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下であることで、ワイヤの余剰分によるたるみを除去し、ワイヤを結束物に密着させることができると共に、ワイヤが不用意に切断されることを防ぐことができる。更に、ワイヤを送るモータ、結束部を動作させるモータの必要以上の高出力化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図である。
【
図2A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す側面図である。
【
図2B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す上面図である。
【
図2C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す上面断面図である。
【
図3A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図3B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図3C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図4A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図4B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図4C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図5A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図5B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図5C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図6A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図6B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図6C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図7A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図7B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図7C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図8A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図8B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図8C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図9A】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図9B】第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図9C】第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図10A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す側面図である。
【
図10B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の平面断面図である。
【
図11A】突き当て部及び張力付与バネの取付構造を示す斜視図である。
【
図11B】突き当て部及び張力付与バネの取付構造を示す分解斜視図である。
【
図12A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図12B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図12C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図13A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図13B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図13C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図14A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図14B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図14C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図15A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図15B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図15C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図16A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図16B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図16C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図17A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図17B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図17C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図18A】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図18B】第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図18C】第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図である。
【
図19】第3の実施の形態の鉄筋結束機の平面断面図である。
【
図20A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図20B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図21A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図21B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図22A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図22B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図23A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図23B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図24A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図24B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図25A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図25B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【
図26A】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図である。
【
図26B】第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
【0014】
<第1の実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図1は、第1の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図である。鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部10Aとハンドル部11Aを備える。
【0015】
また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを矢印Fで示す正方向に送り、結束物である鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。
【0016】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWが収容されるマガジン2Aと、ワイヤWを送るワイヤ送り部3Aを備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部5Aと、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを切断する切断部6Aを備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7Aと、結束部7Aを駆動する駆動部8Aを備える。
【0017】
マガジン2Aは収容部の一例で、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が回転、着脱可能に収納される。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。リール20は、1本または複数本のワイヤWが図示しないハブ部に巻かれ、リール20から1本または同時に複数本のワイヤWを引き出せるようになっている。
【0018】
ワイヤ送り部3Aは、1本または並列された複数本のワイヤWを挟持して送る一対の送りギア30を備える。ワイヤ送り部3Aは、図示しない送りモータの回転動作が伝達されて送りギア30が回転する。これにより、ワイヤ送り部3Aは、一対の送りギア30の間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成では、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0019】
ワイヤ送り部3Aは、図示しない送りモータの回転方向の正逆を切り替えることで、送りギア30の回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
【0020】
カール形成部5Aは、ワイヤ送り部30で送られるワイヤWに巻き癖をつけるカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7Aに誘導する誘導ガイド51を備える。鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWの経路がカール形成部5Aで規制されることで、ワイヤWの軌跡が
図1に破線で示すようなループRuとなり、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0021】
切断部6Aは、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、結束部7Aの動作を可動刃部61に伝達する伝達機構62を備える。切断部6Aは、固定刃部60を支点軸とした可動刃部61の回転動作でワイヤWを切断する。伝達機構62は、軸62aを支点に回転する第1のリンク62bと、第1のリンク62bと可動刃部61を連結する第2のリンク83bを備え、第1のリンク62bの回転動作が、第2のリンク83bを介して可動刃部61に伝達される。
【0022】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70を備える。結束部7Aの詳細な実施形態は後述する。駆動部8Aは、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0023】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ係止体70で係止されるワイヤWの送り経路に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。また、鉄筋結束機1Aは、上述したカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51が、本体部10Aの前側の端部に設けられる。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91Aが、本体部10Aの前側の端部で、カールガイド50と誘導ガイド51との間に設けられる。
【0024】
また、鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aが本体部10Aから下方向に延在する。更に、ハンドル部11Aの下部にバッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。また、鉄筋結束機1Aは、マガジン2Aがハンドル部11Aの前方に設けられる。鉄筋結束機1Aは、上述したワイヤ送り部3A、切断部6A、結束部7A,結束部7Aを駆動する駆動部8A等が本体部10Aに収納される。
【0025】
鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aの前側にトリガ12Aが設けられ、ハンドル部11Aの内部にスイッチ13Aが設けられる。鉄筋結束機1Aは、トリガ12Aの操作で押されるスイッチ13Aの状態に応じて、制御部14Aがモータ80及び図示しない送りモータを制御する。
【0026】
図2Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す側面図、
図2Bは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す上面図、
図2Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す上面断面図である。次に、各図を参照して、結束部7Aの詳細、及び、結束部7Aと駆動部8Aの連結構造と、ワイヤWに張力を与えた状態で結束を行えるようにする第1の実施の形態の張力付与機構について説明する。
【0027】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させる回転軸72を備える。結束部7Aと駆動部8Aは、回転軸72とモータ80が減速機81を介して連結され、回転軸72が、減速機81を介してモータ80に駆動される。
【0028】
ワイヤ係止体70は、回転軸72と連結されるセンターフック70Cと、センターフック70Cに対して開閉する第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rと、回転軸72の回転動作と連動して、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rを作動させるスリーブ71とを備える。
【0029】
結束部7Aにおいて、センターフック70C及び第1のサイドフック70L、第2のサイドフック70Rが設けられた側を前側、回転軸72が減速機81と連結される側を後側とする。
【0030】
センターフック70Cは、回転軸72の一方の端部である前端に、回転軸72に対して回転可能、かつ、回転軸72と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0031】
第1のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して一方の側部に位置する。また、第1のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0032】
第2のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して他方の側部に位置する。また、第2のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0033】
これにより、ワイヤ係止体70は、軸71bを支点とした回転動作で、第1のサイドフック70Lの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2のサイドフック70Rの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。
【0034】
回転軸72は、減速機81と一体的に回転可能、かつ、減速機81に対して軸方向に移動可能とする構成を有した連結部72bを介して、他方の端部である後端が減速機81に連結される。連結部72bは、回転軸72を減速機81に近づく方向である後方へ付勢し、軸方向に沿った回転軸72の位置を規制するバネ72cを備える。これにより、回転軸72は、バネ72cにより後方へ押される力を受けながら、減速機81から離れる方向である前方へ移動可能に構成される。よって、回転軸72は、軸方向に沿ってワイヤ係止体70を前方に移動させる力が加わると、バネ72cにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動可能である。
【0035】
スリーブ71は、矢印A1で示す前方向の端部から、回転軸72の軸方向に沿った所定の長さの範囲が、径方向に2分割された形状で、第1のサイドフック70L、第2のサイドフック70Rが入る形状である。また、スリーブ71は、回転軸72の周囲を覆う筒状で、回転軸72が挿入される筒状の空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸72の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ72aの溝部に入る。スリーブ71は、回転軸72が回転すると、図示しない凸部と回転軸72の送りネジ72aの作用により、回転軸72の軸方向に沿った方向である前後方向へ、回転軸72の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ71は、回転軸72と一体的に回転する。
【0036】
スリーブ71は、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rを開閉する開閉ピン71aを備える。
【0037】
開閉ピン71aは、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rに設けられた開閉ガイド孔73に挿入される。開閉ガイド孔73は、スリーブ71の移動方向に沿って延在し、スリーブ71と連動して移動する開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸71bを支点とした第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0038】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A2で示す後方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cから離れる方向に移動する。
【0039】
これにより、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが、センターフック70Cに対して開き、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に、ワイヤWが通る送り経路が形成される。
【0040】
第1のサイドフック70L及び第2のサイドフックが、センターフック70Cに対して開いた状態では、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lの間を通る。センターフック70Cと第1のサイドフック70Lとの間を通るワイヤWは、カール形成部5Aに誘導される。そして、カール形成部5Aで巻き癖が付けられ、結束部7Aに誘導されたワイヤWは、センターフック70Cと第2のサイドフック70Rの間を通る。
【0041】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A1で示す前方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cに近づく方向に移動する。これにより、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが、センターフック70Cに対して閉じる。
【0042】
第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0043】
ワイヤ係止体70は、ワイヤWの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c1と、切断部6Aで切断されたワイヤWの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c2を備える。曲げ部71c1及び曲げ部71c2は、本例では、スリーブ71の矢印A1で示す前方向の端部に形成される。
【0044】
スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第2のサイドフック70Rで係止されたワイヤWの先端側を曲げ部71c1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を曲げ部71c2で押して、鉄筋S側へ曲げる。
【0045】
結束部7Aは、回転軸72の回転動作と連動したワイヤ係止体70及びスリーブ71の回転を規制する回転規制部74を備える。回転規制部74は、スリーブ71に回転規制羽根74aが設けられ、本体部10Aに回転規制爪74bが設けられる。
【0046】
回転規制羽根74aは、スリーブ71の外周から径方向に突出する複数の凸部を、スリーブ71の周方向に所定の間隔で設けて構成される。回転規制羽根74aは、スリーブ71に固定され、スリーブ71と一体的に移動、回転する。
【0047】
回転規制爪74bは、回転規制羽根74aが通過可能な間隔で対向する一対の爪部として第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2を備える。第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2は、回転規制羽根74aの回転方向に応じて回転規制羽根74aに押されることで、回転規制羽根74aの軌跡上から退避可能に構成される。
【0048】
回転規制部74は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けた後切断し、更に、スリーブ71の曲げ部71c1、71c2でワイヤWを折り曲げて成形する動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止される。回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されると、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制され、回転軸72の回転動作でスリーブ71が前後方向へ移動する。
【0049】
また、回転規制部74は、回転規制部74は、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域では、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。ワイヤ係止体70は、スリーブ71の回転と連動して、ワイヤWを係止したセンターフック70C、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが回転する。回転軸72の軸方向に沿ったスリーブ71及びワイヤ係止体70の動作域において、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する動作域を第1の動作域と称す。また、第1の動作域でワイヤ係止体70で係止されたワイヤWを捩じる動作域を第2の動作域と称す。
【0050】
結束部7Aは、移動部材83がスリーブ71と連動して移動可能に設けられる。移動部材83は、スリーブ71に対して回転可能に取り付けられ、スリーブ71の回転には非連動で、スリーブ71と連動して前後方向に移動する。
【0051】
移動部材83は、伝達機構62の第1のリンク62bに設けた被係合部62dと係合する係合部83aを備える。結束部7Aは、移動部材83がスリーブ71と連動して前後方向に移動すると、係合部83aが被係合部62dと係合し、第1のリンク62bを回転させる。伝達機構62は、第1のリンク62bの回転動作を、第2のリンク83bを介して可動刃部61に伝達し、可動刃部61を回転させる。これにより、スリーブ71が前方向に移動する動作で可動刃部61が所定の方向に回転し、ワイヤWが切断される。
【0052】
結束部7Aは、ワイヤWに張力を与えた状態で結束を行えるようにする張力付与バネ92を備える。張力付与バネ92は第1の実施の形態の張力付与機構である張力付与部の一例で、スリーブ71の外側に設けられ、スリーブ71及びワイヤ係止体70を、回転軸72の軸方向に沿って突き当て部91Aから離れる方向に付勢する。張力付与バネ92は、例えば、軸方向に伸縮するコイルバネで構成され、回転規制羽根74aと、スリーブ71を回転及び軸方向に摺動可能に支持する支持枠76dとの間で、スリーブ71の外周に嵌められる。張力付与バネ92がコイルバネで構成される場合、スリーブ71の外径より内径が大きく構成される。なお、張力付与バネ92は、軸方向に伸縮するコイルバネに限らず、スリーブ71を回転軸72の軸方向に沿って付勢する構成とした板バネ、捩じりコイルバネ、1枚または複数枚の皿バネ等でも良い。
【0053】
張力付与バネ92は、回転軸72の軸方向に沿ったスリーブ71の位置に応じて、支持枠76dと回転規制羽根74aとの間で圧縮され、スリーブ71を回転軸72の軸方向に沿って突き当て部91Aから離れる方向である後方へ付勢する。これにより、張力付与バネ92は、ワイヤWを逆方向に送り、鉄筋Sに巻き付ける動作でワイヤWに掛かる張力を維持する方向に、スリーブ71を備えたワイヤ係止体70を付勢する。また、回転軸72は、回転軸72を軸方向に移動可能とする構成を有した連結部72bを介して減速機81に連結される。
【0054】
これにより、張力付与バネ92は、スリーブ71が前方向に移動して圧縮されると、鉄筋Sに巻き付けられた後、切断部6Aで切断されるワイヤWに、鉄筋Sに巻き付けられる当該ワイヤWが緩む方向に掛かる力より大きな力で張力を付与する。
【0055】
すなわち、鉄筋SにワイヤWを巻き付ける動作により、ワイヤWに掛かる張力の反力で、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが緩む方向である軸方向に沿った前方向に、ワイヤ結束体70を移動させようとする力が掛かる。
【0056】
張力付与バネ92は、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWに掛かる張力の反力で、ワイヤ結束体70を移動させようとする力より、圧縮された張力付与バネ92が伸びる力の方が強い領域では、ワイヤ係止体70が前方向に移動することを抑制する。これにより、切断後のワイヤWに張力を与えた状態で結束を行えるようになる。
【0057】
また、ワイヤ結束体70は、スリーブ71が張力付与バネ92により後方へ押される力を受けると共に、回転軸72がバネ72cにより後方へ押される力を受けながら、前方へ移動可能に構成される。
【0058】
<第1の実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
図3Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図3Bは、
図3AのA-A線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図3Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤ送り時の動作を示す。
【0059】
図4Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図4Bは、
図4AのB-B線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図4Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤ係止時の動作を示す。
【0060】
図5Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図5Bは、
図5AのC-C線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図5Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの逆送り時の動作を示す。
【0061】
図6Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図6Bは、
図6AのD-D線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図6Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの切断時及び折り曲げ時の動作を示す。
【0062】
図7Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図7Bは、
図7AのE-E線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図7Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0063】
図8Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図8Bは、
図8AのF-F線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図8Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0064】
図9Aは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図9Bは、
図9AのG-G線断面による第1の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図9Cは、第1の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0065】
次に、各図を参照して、第1の実施の形態の鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0066】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが一対の送りギア30の間に挟持され、このワイヤWの先端が、送りギア30の挟持位置と、切断部6Aの固定刃部60との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機1Aは、待機状態では、スリーブ71及びスリーブ71に第1のサイドフック70L、第2のサイドフック70R、センターフック70Cが取り付けられたワイヤ係止体70が、矢印A2で示す後方向に移動し、
図2B等の示すように、第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して開き、第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して開いた状態である。更に、鉄筋結束機1Aは、待機状態では、回転規制羽根74aが張力付与バネ92から離れており、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されていない。
【0067】
鉄筋Sがカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、トリガ12Aが操作されると、図示しない送りモータが正回転方向に駆動され、
図3A~
図3Cに示すように、ワイヤ送り部3AでワイヤWが矢印Fで示す正方向に送られる。
【0068】
複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成の場合、図示しないワイヤガイドにより、2本のワイヤWが当該ワイヤWにより形成されるループRuの軸方向に沿って並列された状態で送られる。
【0069】
正方向に送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lの間を通り、カール形成部5Aのカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0070】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3Aで正方向に送られることで、誘導ガイド51によりセンターフック70Cと第2のサイドフック70Rの間に誘導される。そして、ワイヤWは、先端が送り規制部90に突き当てられるまで送られる。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、図示しない送りモータの駆動が停止される。
【0071】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動される。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、
図4A~
図4Cに示すように、スリーブ71は、モータ80の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印A1方向に移動する。
【0072】
スリーブ71が前方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0073】
また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。鉄筋結束機1Aは、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されておらず、スリーブ71及びワイヤ係止体70が前方向である矢印A1方向に移動する動作で、張力付与バネ92による負荷が掛からない。
【0074】
第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが閉じる動作でワイヤWを係止する位置までスリーブ71を前進させた後、モータ80の回転を一時停止し、図示しない送りモータを逆回転方向に駆動する。
【0075】
これにより、一対の送りギア30が逆転し、
図5A~
図5Cに示すように、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、矢印Rで示す逆方向に送られる。ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに巻き付けられる。
【0076】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、図示しない送りモータの逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を更に矢印A1で示す前方向に移動させる。
図6A~
図6Cに示すように、スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで可動刃部61が回転し、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cで係止されたワイヤWが、固定刃部60と可動刃部61の動作で切断される。鉄筋結束機1Aは、スリーブ71及びワイヤ係止体70を前方向に移動させて、ワイヤWを切断する動作域では、回転規制羽根74aが張力付与バネ92に接し、張力付与バネ92が支持枠76dと回転規制羽根74aとの間で圧縮されて、スリーブ71及びワイヤ係止体70が張力付与バネ92で後方へ付勢される。
【0077】
ワイヤWが切断されると、可動刃部61に掛かる荷重が無くなる。可動刃部61は、伝達機構62の第2のリンク62c、第1のリンク62b、被係止部62d、係合部83a、移動部材83を介してスリーブ71と連結されている。これにより、可動刃部61に掛かる荷重が無くなると、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下する。
【0078】
上述したワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける動作では、ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWに掛かる張力が増加する。これにより、ワイヤWに掛かる張力の反力で、スリーブ71を前方向に移動させようとする力がスリーブ71に掛かる。このため、ワイヤWが切断されて可動刃部61に掛かる荷重が無くなり、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下すると、スリーブ71が前方向に移動しようとする。
【0079】
スリーブ71が前方向に移動すると、スリーブ71にセンターフック70C、第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが取り付けられたワイヤ係止体70で係止されたワイヤWを、後方に引っ張る力が低下し、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが、捩じる前に緩む。
【0080】
これに対し、本実施の形態では、スリーブ71は、ワイヤWを切断する動作域では、スリーブ71が前方向に移動する動作によって、支持枠76dと回転規制羽根74aとの間で圧縮された張力付与バネ92により後方向に付勢されている。圧縮された張力付与バネ92が伸びることで、スリーブ71を後方に付勢する力は、鉄筋Sに巻き付けられることでワイヤWに掛かる張力の反力より強い。このため、ワイヤWが切断されて可動刃部61に掛かる荷重が無くなり、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下しても、スリーブ71の前方向への移動が抑制される。
【0081】
スリーブ71の前方向への移動が抑制されることで、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWを後方に引っ張る力が低下することが抑制される。これにより、ワイヤWを逆方向に送り、鉄筋Sに巻き付ける動作でワイヤWに掛かる張力が維持され、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが、捩じる前に緩むことが抑制される。張力付与バネ92は、コイルバネがスリーブ71の外周に設けられる構成であるので、バネの径等の制約が少なく、付勢力を向上させることができる。
【0082】
鉄筋結束機1Aは、上述したように、ワイヤWを切断する動作域で、スリーブ71及びワイヤ係止体70が張力付与バネ92で後方へ付勢されることで、ワイヤWが切断されて可動刃部61に掛かる荷重が無くなり、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下しても、スリーブ71の前方向への移動を抑制することができる。一方、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域で、スリーブ71及びワイヤ係止体70が張力付与バネ92で後方へ付勢されると、モータ80に掛かる負荷が増加する。
【0083】
そこで、鉄筋結束機1Aは、上述したように、待機状態では、回転規制羽根74aが張力付与バネ92から離れており、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されていない。これにより、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、スリーブ71及びワイヤ係止体70が前方向である矢印A1方向に移動する動作で、張力付与バネ92がスリーブ71及びワイヤ係止体70を後方向へ付勢する荷重による負荷が掛からない。よって、張力付与バネ92による荷重が不要な領域でのモータ80に掛かる負荷の増加を抑制できる。
【0084】
一方、回転軸72は、減速機81と一体的に回転可能、かつ、減速機81に対して軸方向に移動可能とする構成を有した連結部72bを介して減速機81に連結される。待機位置からワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域で、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されていないことで、第1の動作域では、張力付与バネ92で回転軸72の軸方向の位置を規制できない。そこで、連結部72bは、回転軸72を減速機81に近づく方向である後方へ付勢するバネ72cを備える。これにより、回転軸72は、バネ72cによる付勢力を超えて、前方向に移動させる力が加わらなければ、バネ72cにより後方へ押される力を受けて位置が規制される。
【0085】
従って、バネ72cと独立して張力付与バネ92を設けることで、所望の領域で、ワイヤの緩みを抑制するために必要な荷重を掛けることができ、ワイヤWを切断する動作域では、スリーブ71及びワイヤ係止体70を張力付与バネ92で後方に付勢することができるので、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが、捩じる前に緩むことを抑制できる効果が得られる。この効果に加え、張力付与バネ92の付勢による荷重が不要な領域でのモータ80に掛かる負荷の増加を抑制することで、結束1サイクル全体でモータ80等に掛かる負荷が増加することを抑制でき、部品の耐久性の低下を抑制できる。更に、バネ72cを設けることで、張力付与バネ92による付勢力が掛からない領域で、回転軸72が不用意に移動することを抑制できる。なお、減速機81に対して軸方向に移動可能に連結された回転軸72をバネ72cで後方に付勢する力を、鉄筋Sに巻き付けられることでワイヤWに掛かる張力の反力より強くすることで、バネ72cを張力付与部としても良い。
【0086】
モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させてワイヤWを切断するとほぼ同時に、曲げ部71c1、71c2が鉄筋Sに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック70Cと第2のサイドフック70Rで係止されたワイヤWの先端側を、曲げ部71c1で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c1で挟まれた状態で保持される。
【0087】
また、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を、曲げ部71c2で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第1のサイドフック70Lとセンターフックとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c2で挟まれた状態で保持される。
【0088】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動することで、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域に到達すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。
【0089】
これにより、
図7A~
図7Cに示すように、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸72と連動してスリーブ71が回転し、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWが捩じられる。
【0090】
結束部7Aは、スリーブ71が回転してワイヤWを捩じる第2の動作域では、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWが捩じられることで、ワイヤ係止体70が回転軸72の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。一方、スリーブ71が回転可能となる位置まで前方向に移動することにより、張力付与バネ92が更に圧縮され、スリーブ71が張力付与バネ92により後方へ押される力を受ける。
【0091】
これにより、ワイヤ係止体70及び回転軸72は、軸方向に沿って前方に移動させる力がワイヤ係止体70に加わると、
図8A~
図8Cに示すように、スリーブ71が張力付与バネ92により後方へ押される力を受けると共に、回転軸72がバネ72cにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動し、前方へ移動しながらワイヤWを捩じる。
【0092】
よって、ワイヤWは、ワイヤ係止体70で係止された部位が後方に引っ張られ、鉄筋Sの接線方向に張力が加わり、鉄筋Sに密着するように引っ張られる。結束部7Aは、スリーブ71が回転してワイヤWを捩じる第2の動作域で、回転軸72と連動してワイヤ係止体70が更に回転すると、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなる方向である前方向にワイヤ係止体70及び回転軸72が移動しながら、ワイヤWを更に捩じる。
【0093】
ワイヤWを捩じる第2の動作域で、ワイヤ係止体70で係止された部位が後方に引っ張られることで、ワイヤWに掛けられる張力は、ワイヤWの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下となるように、張力付与バネ92及びバネ72cの付勢力等が設定される。ワイヤWに掛けられる張力が、ワイヤWの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下であれば、ワイヤの余剰分によるたるみを除去し、ワイヤWを鉄筋Sに密着させることができると共に、ワイヤWが不用意に切断されることを防ぐことができる。また、モータ80、図示しない送りモータの必要以上の高出力化を抑制することができ、モータの大型化、装置を頑丈にするための装置全体の大型化が抑制され、製品としての取り回し性が向上する。
【0094】
従って、
図9A~
図9Cに示すように、ワイヤWは、ワイヤ係止体70及び回転軸72が、張力付与バネ92及びバネ72cにより後方へ押される力を受けた状態で前方へ移動しながら捩じられることで、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなり、鉄筋Sに沿うような形態で鉄筋Sに密着する。これにより、ワイヤWを捩じる前の弛みを除去し、ワイヤWを鉄筋Sに密着させた状態で結束することができる。
【0095】
ワイヤWを捩じることで、モータ80に掛かる負荷が最大となったことが検知されると、モータ80の正転が停止される。次に、モータ80が逆回転方向に駆動されることで、回転軸72が逆回転し、回転軸72の逆回転に追従してスリーブ71が逆回転すると、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、スリーブ71は、後方向である矢印A2方向に移動する。
【0096】
スリーブ71が後方向に移動すると、曲げ部71c1、71c2がワイヤWから離れ、曲げ部71c1、71c2によるワイヤWの保持が解消される。また、スリーブ71が後方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。これにより、ワイヤ係止体70からワイヤWが抜ける。
【0097】
<第2の実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図10Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す側面図、
図10Bは、
図10AのH-H線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の平面断面図である。なお、第2の実施の形態の鉄筋結束機において、第1の実施の形態の鉄筋結束機と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0098】
第2の実施の形態の鉄筋結束機1Bは、鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91Bと、突き当て部91Bを付勢する張力付与バネ93を備える。突き当て部91B及び張力付与バネ93は、第2の実施の形態の張力付与機構である張力付与部の一例で、突き当て部91Bが、本体部10Bの前側の端部で、カールガイド50と誘導ガイド51との間に、矢印A1、A2で示す前後方向に移動可能に設けられる。また、突き当て部91Bは、矢印A1で示す前方向に張力付与バネ93で付勢される。
【0099】
図11Aは、突き当て部及び張力付与バネの取付構造を示す斜視図、
図11Bは、突き当て部及び張力付与バネの取付構造を示す分解斜視図である。
【0100】
本体部10Bは、左右方向に分割されたハウジング11Bを備える。各ハウジング11Bは、前側の端部の内側に、突き当て部91B及び張力付与バネ93の取付部16Bを備える。
【0101】
突き当て部91Bは、突き当て部91Bの移動方向を規制する第1のガイドプレート94aを介して第2のガイドプレート94bに取り付けられる。第1のガイドプレート94aは、突き当て部91Bの移動方向を規制する長孔部94cが設けられ、ハウジング11Bの取付部16Bに嵌められる。
【0102】
突き当て部91Bは、上下2箇所に設けた孔部96aに、ネジ95aが通された中空ピン95bがそれぞれ通され、突き当て部91Bに通されたネジ95a及び中空ピン95bが、ハウジング11Bに嵌められた第1のガイドプレート94aの長孔部94cに通される。そして、中空ピン95bから突出したネジ95aが、取付部16Bに入れられた第2のガイドプレート94bに通され、ナット95cに締結される。
【0103】
また、張力付与バネ93は、第2のガイドプレート94bにより押されて圧縮された状態で、取付部16Bに入れられる。そして、取付部16Bを覆う形態のカバー17Bが、ネジ18Bでハウジング11Bに取り付けられ、第1のガイドプレート94aがハウジング11Bに固定されると共に、第2のガイドプレート94bが移動可能に支持され、張力付与バネ93が圧縮、伸長可能に支持される。
【0104】
これにより、突き当て部91Bは、第1のガイドプレート94aの長孔部94cの形状に沿って、第2のガイドプレート94bと共に矢印A1、A2で示す前後方向に移動可能に支持される。また、突き当て部91Bは、矢印A1で示す前方向に張力付与バネ93で付勢される。
【0105】
従って、突き当て部91B及び張力付与バネ93は、鉄筋結束機1Bにおいて、突き当て部91Bに突き当てられた鉄筋Sを、前方向に付勢する。すなわち、張力付与バネ93は、突き当て部91Bに突き当てられた鉄筋Sと、係止部7AにおいてワイヤWを係止したワイヤ係止体70を、相対的に離れる方向に付勢する。そして、張力付与バネ93は、鉄筋Sに巻き付けられた後、切断部6Aで切断されたワイヤWに、鉄筋Sに巻き付けられる当該ワイヤWが緩む方向に掛かる力より大きな力で張力を付与することで、ワイヤWに張力を与えた状態で結束を行えるようにする。
【0106】
なお、第2の実施の形態の鉄筋結束機1Bにおいて、回転軸72は減速機81に対して軸方向への移動が規制されて連結される。
【0107】
<第2の実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
図12Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図12Bは、
図12AのI-I線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図12Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤ送り時の動作を示す。
【0108】
図13Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図13Bは、
図13AのJ-J線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図13Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤ係止時の動作を示す。
【0109】
図14Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図14Bは、
図14AのK-K線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図14Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの逆送り時の動作を示す。
【0110】
図15Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図15Bは、
図15AのL-L線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図15Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの逆送りによる張力付与時の動作を示す。
【0111】
図16Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図16Bは、
図16AのM-M線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図16Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの切断時及び折り曲げ時の動作を示す。
【0112】
図17Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図17Bは、
図17AのN-N線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図17Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0113】
図18Aは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図18Bは、
図18AのO-O線断面による第2の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図、
図18Cは、第2の実施の形態の鉄筋結束機の結束部及び駆動部の要部側面図であり、ワイヤの捩じりによる張力付与時の動作を示す。
【0114】
次に、各図を参照して、第2の実施の形態の鉄筋結束機1Bにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0115】
鉄筋結束機1Bは、ワイヤWが一対の送りギア30の間に挟持され、このワイヤWの先端が、送りギア30の挟持位置と、切断部6Aの固定刃部60との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機1Bは、待機状態では、第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して開き、第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して開いた状態である。
【0116】
鉄筋Sがカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、突き当て部91Bに突き当てられて、トリガ12Aが操作されると、図示しない送りモータが正回転方向に駆動され、
図12A~
図12Cに示すように、ワイヤ送り部3AでワイヤWが矢印Fで示す正方向に送られる。
【0117】
複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成の場合、図示しないワイヤガイドにより、2本のワイヤWが当該ワイヤWにより形成されるループRuの軸方向に沿って並列された状態で送られる。
【0118】
正方向に送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lの間を通り、カール形成部5Aのカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0119】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3Aで正方向に送られることで、誘導ガイド51によりセンターフック70Cと第2のサイドフック70Rの間に誘導される。そして、ワイヤWは、先端が送り規制部90に突き当てられるまで送られる。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、図示しない送りモータの駆動が停止される。
【0120】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動される。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、
図13A~
図13Cに示すように、スリーブ71は、モータ80の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印A1方向に移動する。
【0121】
スリーブ71が前方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0122】
また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0123】
第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが閉じる動作でワイヤWを係止する位置までスリーブ71を前進させた後、モータ80の回転を一時停止し、図示しない送りモータを逆回転方向に駆動する。
【0124】
これにより、一対の送りギア30が逆転し、
図14A~
図14Cに示すように、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、矢印Rで示す逆方向に送られる。ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに巻き付けられる。
【0125】
上述したワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける動作では、一対の送りギア30を更に逆転させると、ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWに掛かる張力が増加する。
【0126】
これにより、ワイヤWに掛かる張力の反力で、ワイヤWが巻き付けられた鉄筋Sを、突き当て部91Bに押し付ける方向の力が増加し、
図15A~
図15Cに示すように、突き当て部91Bが、第2のガイドプレート94bと共に矢印A2で示す後方向に移動しようとし、相対的な動きとして、鉄筋結束機1Bが、鉄筋Sに近づく方向である矢印A1で示す前方向に移動する。また、第2のガイドプレート94bに押されて張力付与バネ93が圧縮される。よって、ワイヤWが巻き付けられた鉄筋Sは、突き当て部91Bを介して前方向に張力付与バネ93で付勢され、相対的に、鉄筋結束機1Bが後方向に付勢される。
【0127】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける動作では、上述したように、ワイヤWに掛かる張力が増加することで、ワイヤWから一対の送りギア30に掛かる負荷が増加する。ワイヤWに掛かる張力が増加すると、張力付与バネ93で付勢される力を受けて、鉄筋結束機1Bが、鉄筋Sに近づく方向である矢印A1で示す前方向に移動することで、ワイヤWから一対の送りギア30に掛かる負荷の急激な増加を抑制することができる。これにより、ワイヤWが一対の送りギア30に対してスリップすることが抑制され、ワイヤWを巻き付ける際に安定した張力を掛けることができる。
【0128】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、図示しない送りモータの逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させる。
図16A~
図16Cに示すように、スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで可動刃部61が回転し、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cで係止されたワイヤWが、固定刃部60と可動刃部61の動作で切断される。
【0129】
ワイヤWが切断されて可動刃部61に掛かる荷重が無くなると、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWの反力で、鉄筋Sを突き当て部91Bに押し付ける力が低下し、張力付与バネ93で鉄筋結束機1Bを後方向に付勢する力が弱くなる。
【0130】
これにより、ワイヤWが切断されると張力付与バネ93を圧縮する力が弱くなり、張力付与バネ93が伸びることで、突き当て部91Bが、第2のガイドプレート94bと共に前方向に移動しようとし、相対的な動きとして、鉄筋結束機1Bが、鉄筋Sから離れる方向である後方向に移動する。
【0131】
よって、ワイヤ係止体70で係止され、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが切断されると、ワイヤWは、ワイヤ係止体70で係止された部位が、鉄筋Sから離れる方向である後方向に引っ張られた形態で張力が付与され、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWを後方に引っ張る力が低下することが抑制される。これにより、切断部6AでワイヤWを切断してから、結束部7AでワイヤWを捩じるまでの間に、ワイヤWに張力を付与され、ワイヤWを逆方向に送る動作で、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが、捩じる前に緩むことが抑制される。
【0132】
モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させてワイヤWを切断するとほぼ同時に、曲げ部71c1、71c2が鉄筋Sに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック70Cと第2のサイドフック70Rで係止されたワイヤWの先端側を、曲げ部71c1で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c1で挟まれた状態で保持される。
【0133】
また、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を、曲げ部71c2で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第1のサイドフック70Lとセンターフックとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c2で挟まれた状態で保持される。
【0134】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動することで、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域に到達すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。
【0135】
これにより、
図17A~
図17Cに示すように、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸72と連動してスリーブ71が回転し、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWが捩じられる。
【0136】
結束部7Aは、スリーブ71が回転してワイヤWを捩じる第2の動作域では、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWが捩じられることで、ワイヤ係止体70が回転軸72の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。
【0137】
これにより、捩じられるワイヤWが巻き付けられた鉄筋Sを、突き当て部91Bに押し付ける方向の力が増加し、突き当て部91Bが、第2のガイドプレート94bと共に後方向に移動しようとし、相対的な動きとして、鉄筋結束機1Bが、鉄筋Sに近づく方向である前方向に移動する。また、第2のガイドプレート94bに押されて張力付与バネ93が圧縮される。
【0138】
よって、ワイヤWは、ワイヤ係止体70で係止された部位が後方に引っ張られ、鉄筋Sの接線方向に張力が加わり、鉄筋Sに密着するように引っ張られる。ワイヤ係止体70が更に回転すると、鉄筋結束機1Bが、張力付与バネ93により後方へ押される力を受けながら、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなる方向である前方向に移動しながら、ワイヤWが更に捩じられる。
【0139】
従って、
図18A~
図18Cに示すように、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなり、鉄筋Sに沿うような形態で鉄筋Sに密着する。これにより、ワイヤWを捩じる前の弛みを除去し、ワイヤWを鉄筋Sに密着させた状態で結束することができる。
【0140】
ワイヤWを捩じることで、モータ80に掛かる負荷が最大となったことが検知されると、モータ80の正転が停止される。次に、モータ80が逆回転方向に駆動されることで、回転軸72が逆回転し、回転軸72の逆回転に追従してスリーブ71が逆回転すると、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、スリーブ71は、後方向である矢印A2方向に移動する。
【0141】
スリーブ71が後方向に移動すると、曲げ部71c1、71c2がワイヤWから離れ、曲げ部71c1、71c2によるワイヤWの保持が解消される。また、スリーブ71が後方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。これにより、ワイヤ係止体70からワイヤWが抜ける。
【0142】
<第3の実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図19は、第3の実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す平面断面図であり、
図19における切断面は、
図10AのH-H線と同じである、なお、第3の実施の形態の鉄筋結束機において、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の鉄筋結束機と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0143】
第3の実施の形態の鉄筋結束機1Cは、スリーブ71を矢印A2で示す後方向に付勢する張力付与バネ92と、鉄筋Sが突き当てられ、矢印A1、A2で示す前後方向に移動可能な突き当て部91Bと、突き当て部91Bを前方向に付勢する、相対的には、鉄筋結束機1Cを後方向に付勢する張力付与バネ93を備える。張力付与バネ92は、第1の張力付与部の一例で、突き当て部91B及び張力付与バネ93は、第2の張力付与部の一例である。
【0144】
回転軸72と減速機81を連結する連結部72bは、回転軸72を減速機81に近づく方向である後方へ付勢するバネ72cを備える。これにより、回転軸72は、バネ72cにより後方へ押される力を受けながら、減速機81から離れる方向である前方へ移動可能に構成される。
【0145】
<第3の実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
図20Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図20Bは、
図20AのP-P線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤ送り時の動作を示す。
【0146】
図21Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図21Bは、
図21AのQ-Q線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤ係止時の動作を示す。
【0147】
図22Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図22Bは、
図22AのR-R線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤの逆送り時の動作を示す。
【0148】
図23Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図23Bは、
図23AのS-S線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤの切断時及び折り曲げ時の動作を示す。
【0149】
図24Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図24Bは、
図24AのT-T線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0150】
図25Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図25Bは、
図25AのU-U線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤの捩じり時の動作を示す。
【0151】
図26Aは、第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部側面図、
図26Bは、
図26AのV-V線断面による第3の実施の形態の鉄筋結束機の要部平面断面図であり、ワイヤの捩じりによる張力付与時の動作を示す。
【0152】
次に、各図を参照して、第3の実施の形態の鉄筋結束機1Bにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0153】
鉄筋結束機1Cは、ワイヤWが一対の送りギア30の間に挟持され、このワイヤWの先端が、送りギア30の挟持位置と、切断部6Aの固定刃部60との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機1Cは、待機状態では、スリーブ71及びスリーブ71に第1のサイドフック70L、第2のサイドフック70R、センターフック70Cが取り付けられたワイヤ係止体70が、矢印A2で示す後方向に移動し、第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して開き、第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して開いた状態である。更に、鉄筋結束機1Cは、待機状態では、回転規制羽根74aが張力付与バネ92から離れており、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されていない。
【0154】
鉄筋Sがカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、突き当て部91Bに突き当てられて、トリガ12Aが操作されると、図示しない送りモータが正回転方向に駆動され、
図20A~
図20Bに示すように、ワイヤ送り部3AでワイヤWが矢印Fで示す正方向に送られる。
【0155】
複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成の場合、図示しないワイヤガイドにより、2本のワイヤWが当該ワイヤWにより形成されるループRuの軸方向に沿って並列された状態で送られる。
【0156】
正方向に送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lの間を通り、カール形成部5Aのカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0157】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3Aで正方向に送られることで、誘導ガイド51によりセンターフック70Cと第2のサイドフック70Rの間に誘導される。そして、ワイヤWは、先端が送り規制部90に突き当てられるまで送られる。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、図示しない送りモータの駆動が停止される。
【0158】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動される。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、
図21A~
図21Bに示すように、スリーブ71は、モータ80の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印A1方向に移動する。
【0159】
スリーブ71が前方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第1のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0160】
また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第2のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。鉄筋結束機1Cは、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、スリーブ71及びワイヤ係止体70が、張力付与バネ92で後方に付勢されておらず、スリーブ71及びワイヤ係止体70が前方向である矢印A1方向に移動する動作で、張力付与バネ92による負荷が掛からない。
【0161】
第1のサイドフック70L及び第2のサイドフック70Rが閉じる動作でワイヤWを係止する位置までスリーブ71を前進させた後、モータ80の回転を一時停止し、図示しない送りモータを逆回転方向に駆動する。
【0162】
これにより、一対の送りギア30が逆転し、
図22A~
図22Bに示すように、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、矢印Rで示す逆方向に送られる。ワイヤWの先端側が、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに巻き付けられる。
【0163】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、図示しない送りモータの逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させる。
図23A~
図23Bに示すように、スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで可動刃部61が回転し、第1のサイドフック70Lとセンターフック70Cで係止されたワイヤWが、固定刃部60と可動刃部61の動作で切断される。鉄筋結束機1Cは、スリーブ71及びワイヤ係止体70を前方向に移動させて、ワイヤWを切断する動作域では、回転規制羽根74aが張力付与バネ92に接し、張力付与バネ92が支持枠76dと回転規制羽根74aとの間で圧縮されて、スリーブ71及びワイヤ係止体70が張力付与バネ92で後方へ付勢される。
【0164】
ワイヤWが切断されると、可動刃部61に掛かる荷重が無くなる。上述したように、結束部7Aと切断部6Aが連動する構成では、可動刃部61に掛かる荷重が無くなると、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下する。
【0165】
これに対し、本実施の形態では、スリーブ71は、スリーブ71が前方向に移動する動作によって、支持枠76dと回転規制羽根74aとの間で圧縮された張力付与バネ92により後方向に付勢されている。圧縮された張力付与バネ92が伸びることで、スリーブ71を後方に付勢する力は、鉄筋Sに巻き付けられることでワイヤWに掛かる張力の反力より強い。このため、ワイヤWが切断されて可動刃部61に掛かる荷重が無くなり、可動刃部61に掛かる荷重によりスリーブ71の移動を規制する力が低下しても、スリーブ71の前方向への移動が抑制される。
【0166】
スリーブ71の前方向への移動が抑制されることで、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWを後方に引っ張る力が低下することが抑制される。これにより、ワイヤWを逆方向に送る動作で、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWが、捩じる前に緩むことが抑制される。なお、減速機81に対して軸方向に移動可能に連結された回転軸72をバネ72cで後方に付勢する力を、鉄筋Sに巻き付けられることでワイヤWに掛かる張力の反力より強くすることで、バネ72cを張力付与部としても良い。
【0167】
モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させてワイヤWを切断するとほぼ同時に、曲げ部71c1、71c2が鉄筋Sに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック70Cと第2のサイドフック70Rで係止されたワイヤWの先端側を、曲げ部71c1で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第2のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c1で挟まれた状態で保持される。
【0168】
また、センターフック70Cと第1のサイドフック70Lで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を、曲げ部71c2で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第1のサイドフック70Lとセンターフックとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c2で挟まれた状態で保持される。
【0169】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動することで、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域に到達すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。
【0170】
これにより、
図24A~
図24Bに示すように、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸72と連動してスリーブ71が回転し、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWが捩じられる。
【0171】
結束部7Aは、スリーブ71が回転してワイヤWを捩じる第2の動作域では、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWが捩じられることで、ワイヤ係止体70が回転軸72の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。一方、スリーブ71が回転可能となる位置まで前方向に移動することにより、張力付与バネ92が更に圧縮され、スリーブ71が張力付与バネ92により後方へ押される力を受ける。
【0172】
これにより、ワイヤ係止体70及び回転軸72は、軸方向に沿って前方に移動させる力がワイヤ係止体70に加わると、
図25A~
図25B、
図8Cに示すように、スリーブ71が張力付与バネ92により後方へ押される力を受けると共に、回転軸72がバネ72cにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動し、前方へ移動しながらワイヤWを捩じる。
【0173】
よって、ワイヤWは、ワイヤ係止体70で係止された部位が後方に引っ張られ、鉄筋Sの接線方向に張力が加わり、鉄筋Sに密着するように引っ張られる。結束部7Aは、スリーブ71が回転してワイヤWを捩じる第2の動作域で、回転軸72と連動してワイヤ係止体70が更に回転すると、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなる方向である前方向にワイヤ係止体70及び回転軸72が移動しながら、ワイヤWを更に捩じる。
【0174】
ワイヤWを捩じる第2の動作域で、ワイヤ係止体70で係止された部位が後方に引っ張られることで、ワイヤWに掛けられる張力は、ワイヤWの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下となるように、張力付与バネ92及びバネ72cの付勢力等が設定される。ワイヤWに掛けられる張力が、ワイヤWの最大引張荷重に対して、10%以上50%以下であれば、ワイヤの余剰分によるたるみを除去し、ワイヤWを鉄筋Sに密着させることができると共に、ワイヤWが不用意に切断されることを防ぐことができる。また、モータ80、図示しない送りモータの必要以上の高出力化を抑制することができ、モータの大型化、装置を頑丈にするための装置全体の大型化が抑制され、製品としての取り回し性が向上する。
【0175】
一方、捩じられるワイヤWが巻き付けられた鉄筋Sを、突き当て部91Bに押し付ける方向の力が増加し、突き当て部91Bが、第2のガイドプレート94bと共に後方向に移動しようとし、相対的な動きとして、鉄筋結束機1Bが、張力付与バネ93により後方へ押される力を受けながら、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなる方向である前方向に移動しながら、ワイヤWが更に捩じられる。
【0176】
従って、
図26A~
図26B、
図9Cに示すように、ワイヤWは、ワイヤ係止体70及び回転軸72が、張力付与バネ92及びバネ72cにより後方へ押される力を受けた状態で前方へ移動しながら捩じられる。更に、ワイヤWは、鉄筋結束機1Bが、張力付与バネ93により後方へ押される力を受けた状態で前方向に移動しながら捩じられる。よって、ワイヤWの捩じられた部位と鉄筋Sとの隙間が小さくなり、鉄筋Sに沿うような形態で鉄筋Sに密着する。これにより、ワイヤWを捩じる前の弛みを除去し、ワイヤWを鉄筋Sに密着させた状態で結束することができる。
【0177】
ワイヤWを捩じることで、モータ80に掛かる負荷が最大となったことが検知されると、モータ80の正転が停止される。次に、モータ80が逆回転方向に駆動されることで、回転軸72が逆回転し、回転軸72の逆回転に追従してスリーブ71が逆回転すると、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、スリーブ71は、後方向である矢印A2方向に移動する。
【0178】
スリーブ71が後方向に移動すると、曲げ部71c1、71c2がワイヤWから離れ、曲げ部71c1、71c2によるワイヤWの保持が解消される。また、スリーブ71が後方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。また、第2のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。これにより、ワイヤ係止体70からワイヤWが抜ける。
【符号の説明】
【0179】
1A、1B、1C・・・鉄筋結束機、10A、10B、10C・・・本体部、2A・・・マガジン、20・・・リール、3A・・・ワイヤ送り部、30・・・送りギア、5A・・・カール形成部、50・・・カールガイド、51・・・誘導ガイド、6A・・・切断部、60・・・固定刃部、61・・・可動刃部、62・・・伝達機構、7A・・・結束部、70・・・ワイヤ係止体、70L・・・第1のサイドフック、70R・・・第2のサイドフック、70C・・・センターフック、71・・・スリーブ、72・・・回転軸、72a・・・送りネジ、72b・・・連結部、72c・・・バネ、74・・・回転規制部、74a・・・回転規制羽根、74b・・・回転規制爪、76d・・・支持枠、8A・・・駆動部、80・・・モータ、81・・・減速機、91A・・・突き当て部、91B・・・突き当て部(張力付与部)、92・・・張力付与バネ(張力付与部、第1の張力付与部)、93・・・張力付与バネ(張力付与部、第2の張力付与部)、W・・・ワイヤ